JP3764316B2 - レンズ用レイアウト・ブロック装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡レンズの縁摺り加工のためにレンズの加工中心等を決定し、この加工中心に加工治具を取付けるためのレンズ用レイアウト・ブロック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
眼鏡レンズ(以下、単にレンズともいう)は、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進多焦点レンズ等の種類があり、またそのレンズ種毎に径、外径、レンズ度数等が異なるために多種類のレンズを製作する必要がある。
【0003】
従来、このようなレンズの縁摺り加工は、以下の手順にしたがって行なっていた。すなわち、例えば単焦点レンズの加工の場合、まず第1に処方レンズが決定すると、通常の処方の場合は、ストックレンズ(常備在庫の量産品)の中から処方レンズを選択し、ストックレンズ中にないレンズ(常備在庫外の特注品)の場合は、工場側で注文に応じて製造する。ストックレンズは、所定のレンズ度数になるように光学設計に基づいて表面(凸側レンズ面)および裏面(凹側レンズ面)が所定のレンズ曲率(カーブ)に仕上げられ、さらに耐摩耗コートや反射防止コートなどの表面処理までの最終工程まで行われているものである。一方、特注品の場合は、予めレンズ材料が半製品(セミレンズ)の状態で用意され、これを注文の処方度数に応じて荒削り、研磨加工等を行った後、表面処理が施され処方レンズとして用いられるものである。
【0004】
処方レンズが製造されると、そのレンズを加工指示票とともにレンズ収納トレイに凹側レンズ面を下にして水平に収納し、縁摺り加工ラインへ搬送する。そして、作業者はこの処方レンズをトレイから取り出し、レンズメータ等の所定の検査装置の検査台に載置し、処方レンズのレンズ度数や乱視軸等を確認し、このレンズ情報とレンズ枠形状データおよび装用者の処方データから加工中心およびレンズに対する加工治具(以下、レンズホルダという)の取付角度等を決定する(光学的レイアウト)。次に、これに基づいてレンズホルダをレンズの加工中心に取付ける(ブロック)。そして、このレンズホルダを縁摺り加工装置にレンズとともに装着し、砥石またはカッタによりレンズを縁摺り加工し、眼鏡フレームの枠形状に合った形状にする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来はレンズの縁摺り加工のための前工程であるレンズのレイアウトおよびブロックを、作業者が専用の装置を用いて行っていた。しかしながら、このような作業は非能率的で生産性が低く、省力化の大きな障害となっている。また、レンズを汚したり、傷つけたり、破損したりしないようにその取扱いに細心の注意を払う必要があるために作業者の負担が大きいばかりか、処方レンズの曲率に合ったレンズ保持面を有するレンズホルダを選択する際に、作業者が異なった種類のレンズホルダを選択するといったミスが発生し易いという問題もあった。
【0006】
このため、最近ではレンズのレイアウトとレンズホルダによるレンズのブロックを自動的に行うことにより作業能率を向上させるようにした、単焦点レンズ用と多焦点レンズ用の装置(ABS;Auto Blocker for Single Visoion Lens、ABM;Auto Blocker for Multifocus Lens)の開発が要請されている。以下、本発明においては、このような装置をレイアウト・ブロック装置という。
【0007】
本発明は上記した従来の問題および要請に応えるためになされたもので、その目的とするところは、レンズの縁摺り加工を行うためのレンズのレイアウトおよびブロックを自動的に行い、作業性および生産性を向上させるとともに省力化を可能にしたレンズ用レイアウト・ブロック装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明は、レンズの凸側レンズ面の曲率に応じて異なった曲率のレンズ保持面を有する複数種のレンズホルダをその種別毎に供給するホルダ供給機構と、このホルダ供給機構から供給されるレンズホルダを受取り支持し芯出しするホルダ支持機構とを備え、前記ホルダ供給機構は、レンズホルダの種別毎に傾斜して並設された複数のシュートと、これらのシュートの終端部にそれぞれ配設されて通常はシュートの排出口を閉じており、供給信号によって駆動することにより前記排出口を開いて1番目のレンズホルダを排出するシャッタ機構とを有し、前記ホルダ支持機構は、ホルダ装着位置と前記各シュートの終端位置の間を往復移動するステージと、このステージに設けられシュートから供給されるレンズホルダを保持するホルダハンドと、このホルダハンドによって保持されたレンズホルダを芯出しする芯出し機構とを有するものである。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、シュートにはレンズホルダを収納するカセットが装着され、このカセットの内部で排出側開口部付近には通常レンズホルダを係止し、前記シュートに装着されると開いてレンズホルダを解放する脱落防止用ピンを設けたものである。
【0010】
本発明において、レンズホルダはその種別毎に専用のシュートからホルダ支持機構に自動的に供給される。したがって、作業者によるホルダの選択ミスが防止される。シャッタ機構はレンズホルダを一つずつ順次ホルダ支持機構に供給する。ホルダ支持機構は、レンズホルダを保持するとホルダ装着位置に搬送する。芯出し機構は、レンズホルダを芯出しする。脱落防止用ピンはレンズホルダがカセットから脱落するのを防止する。
【0011】
レンズの種類は、1つのレンズ度数D(ディオプター)に対して凸面カーブと凹面カーブの組み合わせにより無限ともいえるほど多く、実際は光学的収差と在庫管理などを考慮して決定される。具体的には、凸面カーブの種類を少なくして凹面カーブを違えるレンズ設計を採用することにより、例えば累進多焦点レンズでは2カーブから9カーブの8種類くらいまで用意され、単焦点レンズの場合には一般的に対応する度数範囲が広いので、例えば0カーブから11カーブまでの12種類が用意される場合がある。なお、0カーブのレンズは凸側レンズ面がフラットなレンズである。
【0012】
レンズ度数Dは凸面カーブD1 と凹面カープD2 との曲率の差で表されるが、単焦点レンズや累進多焦点レンズのセミフィニッシュレンズの場合は、凸面カーブD1 のみでレンズ度数の種類分けをしている。例えば凸面のレンズ度数Dが4の単焦点レンズの場合、4カーブのレンズと呼んでおり、その曲率半径はD=(N−1)×1000/R(mm)によって求められる。この場合、Nはレンズの屈折率で、最も汎用的なプラスチックレンズ材料であるジエチレングリコールビスアリルカーボネートの場合、1.50である。Rは凸側レンズ面の曲率半径である。したがって、4カーブの場合は、前記式に代入すると、4=(1.5−1)×1000/Rから、R=125mmとなる。同様に、7カーブの場合は曲率半径に換算すると、約71mm、11カーブの場合は約45mmとなる。
【0013】
レンズホルダとしては、レンズの安定した保持のためにレンズ度数が異なる個々のレンズに対して専用のものを用いることが最も望ましいが、そうするとホルダ自体の種類が著しく増加するため、実際には1種類のレンズホルダで凸面カーブの異なる何種類かのレンズをカバーできるように、レンズ保持面の曲率を段階的に異ならせたものを数種類用意しておき、凸面カーブに応じて選択して使用している。例えば、0〜11カーブまでの12種の単焦点レンズの場合は、レンズ保持面が4カーブ、7カーブ、11カーブの3種類のレンズホルダを用意し、0〜3カーブのレンズを4カーブのレンズホルダで保持し、4〜6カーブのレンズを7カーブのレンズホルダで保持し、7〜11カーブのレンズを11カーブのレンズホルダで保持する。このようなレンズホルダは、筒状体に形成されて一端側に凹球面状のレンズ保持面を有し、この保持面に貼着される薄い弾性シールを介してレンズの凸側レンズ面を保持するものである(例:実開平6−24854号公報、特願平11−224598号等)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)、(b)はレンズホルダの正面図および背面図、図2はレンズホルダにレンズを弾性シールを介して保持させた状態を示す断面図、図3(a)、(b)、(c)は図1のIII −III 線拡大断面図、レンズ保持面を示す図およびレンズ保持面の拡大断面図、図4は単焦点レンズ用ABS装置の正面図、図5は同ABS装置の平面図、図6(a)、(b)、(c)はホルダ収納用カセットの断面図、シュートに装着する前の状態を示す図および装着した状態を示す図、図7はピン位置から離れたカセット中央部の断面図、図8はレンズホルダのシャッタ機構を示す図、図9(a)、(b)はホルダ支持機構の平面図および正面図、図10および図11はホルダ支持機構によるレンズの保持動作を示す図、図12(a)、(b)は芯出し機構によるレンズホルダの芯出し動作を示す図、図13(a)、(b)はホルダ保持装置へのレンズホルダの受け渡しを示す図である。
【0015】
先ず、単焦点レンズ用ABS装置によって処理されるレンズとレンズホルダの構造を図1〜図3に基づいて説明する。
これらの図において、1はプラスチック製の眼鏡用単焦点レンズ(以下、単にレンズという)で、凸側レンズ面1aおよび凹側レンズ面1bを備え、外周面が縁摺り加工装置によってレンズ枠形状と一致するように縁摺り加工される。また、このレンズ1は、単焦点レンズの場合、上記したとおり一般的に対応する度数範囲が広いので、例えば0カーブから11カーブまで12種類用意されているが、レンズホルダ2の共通化を図るために、カーブの大、中、小によって3つのレンズ群、例えば0〜3カーブの第1レンズ群、4〜6カーブの第2レンズ群および7〜11カーブの第3レンズ群に分類されている。3はレンズホルダ2に貼着される弾性シールで、この弾性シール3を介してレンズ1の凸側レンズ面1aがレンズホルダ2によって保持される。
【0016】
前記レンズホルダ2は、ステンレス等の金属によって鍔付の筒状体に形成されることにより、嵌合軸部4と、この嵌合軸部4の外周で先端寄りと先端部に一体に設けられたフランジ5およびレンズ保持部6を備えている。嵌合軸部4は、例えば長さが35mm、外径が14mmφ程度で、中心孔7の穴径が10mmφ程度である。
【0017】
前記フランジ5は、縁摺り加工装置のクランプ軸に嵌合軸部4が嵌合する嵌合量を規定するもので、厚さが5mm程度、外径が20mmφ程度である。また、フランジ5の周面には、前記クランプ軸に対するレンズホルダ2の回転を防止する回転防止部としての切欠き溝8が形成されている。この切欠き溝8のレンズ保持部6側とは反対側の開放部は、クランプ軸への嵌合を容易にするために外側に開いたテーパ面8aを形成している。
【0018】
前記レンズ保持部6は、嵌合軸部4の先端側外周に設けられて前記フランジ5と厚さおよび外径が略等しく、フランジ5との間に5mm程度の間隔が設定されている。このレンズ保持部6の前記弾性シール3が密接される面は、レンズ1の凸側レンズ面1aに対応した凹球面状のレンズ保持面9を形成している。
【0019】
この場合、レンズ毎にその凸面カーブに応じたレンズ保持面9を形成すると、レンズホルダ2自体の種類が増加するため、レンズ保持面9の曲率半径を段階的に異ならせることにより、レンズホルダ2の種類を少なくし、1種類のレンズホルダ2で凸面カーブの異なる何種類かのレンズ1を保持するようにしている。具体的には、前記第1、第2、第3レンズ群毎にレンズ保持面9の曲率半径を異ならせることにより、3種類のレンズホルダ2が用意される。
【0020】
レンズ保持面9の曲率半径は、凸側レンズ面1aの曲率半径より大きいとレンズ保持面9の中心部のみが凸側レンズ面1aに接触して外周部が非接触となるため、不安定な保持となり、反対に小さいとレンズ保持面9の外周部のみが凸側レンズ面1aに接触して中心部が非接触となるため、安定した保持となる。したがって、レンズホルダ2は、レンズ保持面9の曲率半径を当該ホルダに対応するレンズ群中の各レンズの曲率半径のうち最も小さい曲率半径より小さいかこれと略等しい値に設定され、これによりレンズ保持面9の外周部による安定したレンズ保持を可能にしている。ただし、両者の曲率半径の差が大きいと、レンズ保持面9と凸側レンズ面1aの密着度が低くなるため、差は小さいことが望ましい。
【0021】
このため、本実施の形態においてはレンズ保持面9が4カーブ、7カーブ、11カーブの3種類のレンズホルダ2を用意し、4カーブのレンズホルダを0〜3カーブのレンズからなる第1レンズ群用として、7カーブのレンズホルダを4〜6カーブのレンズからなる第2レンズ群用として、11カーブのレンズホルダを7〜11カーブのレンズからなる第3レンズ群用としてそれぞれ用いるようにしている。なお、4カーブ、7カーブ、11カーブからなる3種類のレンズホルダ2は、レンズ保持面9の曲率半径Rのみが異なるだけで、その他の構造は全く同一である。
【0022】
また、前記レンズ保持面9には、前記弾性シール3との密着結合力を高めるために、多数の微小な突状体10が全周にわたって放射状に形成されている。突状体10は、断面形状が二等辺三角形に形成されることにより、その頂点10aを境に、レンズホルダ2の回転方向側の壁面10bと反対側の壁面10cとが同一の傾斜角度(例えば45°)の斜面に形成されている。このように同一角度にすると、両方の斜面に均等に弾性シール3が密着することになり、接触面積の増大により、シートの適当な可撓性や変形性が生かされ、レンズ保持力を増大させることができる。また、同じ傾斜角度の両斜面に均等に弾性シール3が圧接するので、アンバランスな回転力が相殺されて発生しなくなり、弾性シール3が回転ずれしてレンズの保持精度が低下することもなくなる。
【0023】
前記フランジ5とレンズ保持部6の周面には、レンズホルダ2を収納する後述するホルダ収納用カセットの係合部と係合する回転防止部11が形成されている。この回転防止部11は、フランジ5とレンズ保持部6の周面の一部を軸線と直交する方向から切削して形成した溝からなり、前記回転防止部8とは背中合わせになるように180°位相を異ならせて形成されている。
【0024】
さらに、レンズホルダ2の内部で嵌合軸部4の基端部側には、レンズホルダ2の種類を識別するための部材13が圧入されており、その一端面がレンズホルダ2の基端面と略同一面を形成している。この部材13は、合成樹脂によって所要の色に着色された筒状体に形成されている。部材13の色は、例えば4カーブのホルダの場合は白色に、7カーブのホルダの場合は赤色に、11カーブのホルダの場合は青色にそれぞれ着色されている。したがって、部材13の色を見ることにより、レンズホルダ2が4カーブのものか、7カーブのものかあるいは11カーブのものかを一目で識別することができる。
【0025】
前記弾性シール3は、厚さが0.5〜0.6mm程度の薄いゴムによって、外径が前記レンズ保持面9の外径より大きく(22mmφ程度)、内径がレンズホルダ2の穴径より小さい(8mm程度)リング状に形成され、両面に粘着剤を塗布したものが用いられる。
【0026】
次に、単焦点レンズ用ABS装置の構成等を図4〜図13に基づいて説明する。
図4および図5において、単焦点レンズ用ABS装置20は、縁摺り加工装置に隣接して設置されるもので、基台21に設けられたホルダ搬送装置22と、ホルダ保持装置23と、シール供給装置24と、レンズ供給装置25と、レンズメータ26等を備え、凸面カーブが異なる12種類(0〜11カーブ)の単焦点レンズをランダムに順次処理するバッチ方式を採用している。
【0027】
前記ホルダ搬送装置22は、4カーブ、7カーブおよび11カーブの3種類のレンズホルダ2を処方レンズに応じてホルダ保持装置23に順次供給するためのもので、ホルダ供給機構28と、ホルダ支持機構29とを備えている。
【0028】
前記ホルダ供給機構28は、ホルダ供給方向(図5の矢印27方向)にレンズホルダ2が自重によって滑動可能な角度(例えば、20°)傾斜して幅方向に並設された3つのシュート30を備え、これらのシュート30の上流側には所要個数(例えば42個)のレンズホルダ2をその種類毎に収納した3本のホルダ収納用カセット31がシュート30と同一角度でそれぞれ着脱自在に設置されている。
【0029】
図6において、前記カセット31は、金属、合成樹脂等によって両端が開放する細長い矩形の中空体に形成されることにより、レンズホルダ2を一列に整列させてかつ回転防止部11の向きを一定に揃えて収納するもので、上板32に開口部33が全長にわたって形成されており、この開口部33からレンズホルダ2のフランジ5より基端部側をカセット31の上方に突出させている。したがって、部材13をカセット31の上方から視認することができ、カセット31内に異なった種類のレンズホルダ2が混入して収納されている場合は、一目で確認することができる。また、カセット31の装着ミスを防止することができる。すなわち、カセット31自体も部材13の色によって識別されるため、あるカセットを本来設置すべきシュート以外のシュートに設置したり、あるいは同一種のレンズホルダを収納する複数のカセットを複数のシュートに設置したりするといったミスを防止できる。
【0030】
前記開口部33の幅は、レンズホルダ2の嵌合軸部4の外径より若干大きく設定されており、この開口部33によってフランジ5の下面を摺動自在に支持している。また、前記上板32は、開口部33を挾んでその一方の板部32aが他方の板部32bよりカセット31の板厚分程度高くなるように段違いに形成されている。一方の板部32aの端縁部32a1 は、レンズホルダ2の回転防止部11に差し込まれ、さらにこの板部32aの下面側にも前記回転防止部11に差し込まれる逆L字型のブラケット34が固定され、これらによってレンズホルダ2の向きを揃え、自由な回転を防止している。また、カセット31の内部で下流側開口部付近には、レンズホルダ2の脱落を防止する一対の脱落防止用ピン35が左右方向に移動自在に配設されている。これらのピン35は、下端が引張りコイルばね36によって互いに連結され互いに接近する方向に付勢されていることにより、通常はレンズ保持部6に接触してレンズホルダ2の脱落を防止している。そして、カセット31が前記シュート30に装着されると、引張りコイルばね36に抗して互いに離間する方向に移動してレンズホルダ2の係止を解除するように構成されている。なお、ピン35の離間方向の移動は、シュート30側に設けた適宜な部材37によって行われる。
【0031】
図7はピン位置から離れたカセット中央部の断面図で、一対の脱落防止用ピン35を備えていない点で異なっている。
【0032】
このようなカセット31内のレンズホルダ2は、自重によりカセット31およびシュート30を滑動し、シャッタ機構38によって1つずつ順次排出されると前記ホルダ支持機構29によって支持される。
【0033】
図4および図8において、前記シャッタ機構38は、シュート30の排出口30aを通常閉塞することにより1番目のレンズホルダ2Aを係止する一対のストッパピン39と、これらのストッパピン39を上下動させるエアシリンダ40とを備え、制御部からの供給信号によってエアシリンダ40が駆動することによりシュート30からのレンズホルダ2の排出が行われる。すなわち、エアシリンダ40の駆動によってストッパピン39が下降してシュート30の通路から退出すると、前記1番目のレンズホルダ2Aはストッパピン39から解放されるため、自重によってシュート30の排出口30aから出て終端部30b上に移動する。この終端部30bは、レンズホルダ2の滑動速度を遅くし前記ホルダ支持機構29の後述するストッパ47に当たったときの衝撃を小さくするために傾斜角度が小さく設定されている。前記1番目のレンズホルダ2Aが通過するとストッパピン39は上昇して再び元の状態に復帰する。このため、2番目のレンズホルダ2Bはストッパピン39の位置までシュート30上を滑動し、ストッパピン39によって係止されることにより1番目のレンズホルダとなる。そして、このような動作を繰り返すことにより、レンズホルダ2は1つずつ自動的に供給される。なお、シュート30もカセット31と略同一に形成され、前記基台21上に固定されている。また、このシュート30の下流側および中間部の2箇所には、レンズホルダ2の有無を検出するセンサ(図4)41が取付けられている。上流側のセンサ41は、シュート30内にレンズホルダ2が残り9個となったときにONし、補給を促すためのものである。下流側のセンサ41はシュート30内にレンズホルダ2が残り1個になったときにONし、装置を停止させるためのものである。
【0034】
図5、図8および図9において、前記ホルダ支持機構29は、前記シュート30の終端と対向するように前記基台21上に配設されるもので、ABS装置20の前後方向(図5の矢印Y方向)に移動自在で前記各シュート30の終端位置A1 ,A2 ,A3 とホルダ装着位置A4 との間を往復移動するステージ43を備えている。このステージ43は、前記基台21上に設置された左右一対のレール44とボールねじ45によって移動自在に保持されており、駆動モータ46の駆動によってボールねじ45が回転すると、レール44およびボールねじ45に沿って移動するように構成されている。前記各シュート30の終端位置A1 ,A2 ,A3 には、シュート30の終端部30bが位置付けられている。
【0035】
また、前記ステージ43の上面には、前記シュート30の終端部30bに供給されるレンズホルダ2を受け止めるストッパ47と、レンズホルダ2を支持する一対のホルダハンド48A,48Bと、これらのホルダハンド48A,48Bを互いに接近離間する方向に同期して作動させるエアシリンダ49が配設されている。一方のホルダハンド48Aは、断面形状が円形の棒状体からなり、先端部の周面でレンズホルダ2の回転防止部11を保持する。他方のホルダハンド48Bは断面形状が矩形の棒状体からなり、先端部でレンズホルダ2と対向する側面にV字状の凹部50が形成されており、この凹部50によってレンズホルダ2の前記回転防止部11とは反対側でフランジ5とレンズ保持部6の外周面を保持する。このようなステージ43は、レンズホルダ2の供給時に3つのシュート30のうちレンズホルダ2を供給しようとするシュートの終端位置、例えばA1 位置に予め移動してホルダハンド48A,48Bを開いた状態で待機しており(図10)、レンズホルダ2がシュート30の終端部30b上に供給されると、ストッパ47がレンズホルダ2を受け止め、一対のホルダハンド48A,48Bが閉じることによりレンズホルダ2を挟持する(図11)。しかる後、この挾持したレンズホルダ2をホルダ装着位置A4 に搬送し、レンズホルダ2の芯出しを行った後にホルダ保持装置23へのレンズホルダ2の受け渡しが行われる。
【0036】
図12において、前記ホルダ装着位置A4 には、前記ホルダハンド48A,48Bによって支持されているレンズホルダ2の芯出しを行う芯出し機構53が配設されている。この芯出し機構53は、昇降テーブル54と、この昇降テーブル54を昇降させるエアシリンダ55とで構成されている。昇降テーブル54の上面には、前記レンズホルダ2のレンズ保持部6の外径より若干大きい穴径で比較的浅い凹部56が形成されている。また、この凹部56の中央には円形の凸部57が設けられており、その外径はレンズホルダ2の中心孔7(図3)より僅かに小さく設定されている。このような昇降テーブル54は、通常レンズホルダ2の略真下に離間して位置し(図12(a))、レンズホルダ2の芯出しに際してエアシリンダ55の駆動によって上昇すると(図12(b))、凹部56がレンズホルダ2のレンズ保持部6を受け止め、凸部57が中心孔7に嵌合することにより、レンズホルダ2の中心と凸部57の中心が一致して芯出しされる。この時、一対のホルダハンド48A,48Bは芯出しを可能にするためにエアシリンダ49を開放し融通性をもたせてあり、レンズホルダ2を左右、前後方向に移動可能に保持している。レンズホルダ2が芯出しされると、続いて昇降テーブル54が下降して元の初期位置に復帰することにより芯出しが終了する。
【0037】
図5および図13において、前記ホルダ保持装置23は、前記ホルダ支持機構29の一側で前記シール供給装置24とレンズ供給装置25の間の空間に配設されている。このホルダ保持装置23は、前記ホルダ支持機構29から芯出しされたレンズホルダ2を受け取ると、そのレンズホルダ2のレンズ保持面9に前記弾性シール3を貼着した後、レンズホルダ2に弾性シール3を介してレンズ1を保持させるものである。このようなホルダ保持装置23は、回動アーム60と、この回動アーム60の先端部に取付けられたクランプ装置61と、回動アーム60を回動させる駆動機構(図示せず)およびクランプ装置61を上下動させる駆動機構(図示せず)等を備えている。
【0038】
前記回動アーム60は、回転中心Oを中心として水平面内において回動されるように構成されている。前記クランプ装置61は、前記回動アーム60の回動によって前記ホルダ装着位置A4 、シール貼着位置A5 、レンズ保持位置A6 およびホルダ受け渡し位置A7 間を往復移動するように駆動制御される。このため、クランプ装置61、前記ホルダ装着位置A4 、シール貼着位置A5 、レンズ保持位置A6 およびホルダ受け渡し位置A7 は、前記回動アーム60の回転中心Oを中心とする同一円周上に位置している。ホルダ装着位置A4 は、前記クランプ装置61が前記ホルダ支持機構29からレンズホルダ2を受け取って保持する位置で、この位置からシール貼着位置A5 が反時計方向に120°ずれ、ホルダ受け渡し位置A7 が230°ずれ、レンズ保持位置A6 が270°ずれている。シール貼着位置A5 は、クランプ装置61に保持されているレンズホルダ2に前記弾性シール3を貼着する位置である。レンズ保持位置A6 は、クランプ装置61によって保持されているレンズホルダ2にレンズ1を前記弾性シール3を介して保持させる位置である。ホルダ受け渡し位置A7 は、レンズ1を保持しているレンズホルダ2(クランプ装置61によって保持されている)を縁摺り加工装置に供給するための搬送ロボットに受け渡す位置である。なお、ホルダ装着位置A4 とレンズ保持位置A6 との間には、クランプ装置61を待機させる待機位置A8 が設けられている。
【0039】
また、クランプ装置61は、図13に示すようにホルダ装着位置A4 の上方に移動して停止すると(a図)、下降して前記ホルダ支持機構29によって保持されているレンズホルダ2を受け取り保持するように駆動制御される(b図)。さらに、レンズホルダ2をホルダ支持機構29から受け取ると、回動アーム60の回動により前記シール貼着位置A5 の上方に移動してレンズホルダ2のレンズ保持面9に弾性シール3を貼着させ、しかる後レンズ保持位置A6 に移動して下降することによりレンズ1を弾性シール3に密着させるように駆動制御される。
【0040】
図4および図5において、前記シール供給装置24は、弾性シール3をシール貼着位置A5 に間欠的に供給するためのもので、前記ホルダ支持機構29を挟んでホルダ供給機構28と対向するように配設されている。前記弾性シール3は、軸63に巻回されたロール64の形態でロール装填部65に装填される。このロール64は、台紙上に弾性シール3を所定の間隔をおいて一列に配列し、表面を保護紙によって覆ったもので、シール貼着位置A5 には保護紙が剥離された状態で供給される。
【0041】
弾性シール3がシール貼着位置A5 に供給されて停止すると、前記クランプ装置61は前記回動アーム60の回動によってシール貼着位置A5 の上方に移動して停止する。次いで、下降してレンズホルダ2のレンズ保持面9を弾性シール3の上面に押し付けることにより突状体10を弾性シール3に食い込ます。したがって、弾性シール3は台紙から剥離してレンズ保持面9に貼着される。レンズ保持面9に弾性シール3が貼着されると、クランプ装置61は再び上昇して回動アーム60の回動によりレンズ保持位置A6 に移動する。そして、下降してレンズホルダ2に貼着されている弾性シール3をレンズ保持位置A6 に供給されているレンズ1に押し付けて密着させる。このため、レンズ1はレンズホルダ2に弾性シール3を介して保持される。図2はこの状態を示す。
【0042】
前記レンズ供給装置25は、2本のガイドレール70と、ボールねじ71によってY軸方向に移動自在なYテーブル72と、このYテーブル72上に2本のガイドレール73とボールねじ74を介して設置されることによりX軸方向に移動自在なXテーブル75と、このXテーブル75に設置されたZ軸方向に移動自在なZテーブル76と、これらのテーブルを駆動する図示しない駆動モータ等を備えている。また、前記Zテーブル76は、左右一対のハンド77A,77Bを備え、これらのハンドによってレンズ供給装置25に供給されるレンズ1の外周縁を4点保持するように構成されている。一対のハンド77A,77Bはレンズ供給装置25に供給されるレンズ1を受け取って保持すると、前記レンズメータ26に搬送し、レンズの測定が行われる。測定が終了するとレンズ1を前記レンズ保持位置A6 に搬送してレンズ支持台上に載置し、この後クランプ装置61によってレンズ1が保持される。
【0043】
前記レンズメータ26は、レンズ供給装置25に供給されたレンズ1のレンズ度数、光学中心、乱視軸等を測定し、光学レイアウトを行い、レンズ枠形状データに基づいてレンズホルダ2のレンズ1に対する取付位置、角度等を算出し決定する。そして、その結果を制御部に出力するように構成されている。
【0044】
レンズ保持位置A6 において、レンズホルダ2はレンズ1を保持すると、ホルダ受け渡し位置A7 に搬送されて停止し、前記クランプ装置61から取り外されると、適宜な搬送ロボットによって縁摺り加工装置に搬送される。そして、レンズ1はレンズ枠形状データに基づいた加工プログラムにしたがってヤゲン加工等の縁摺り加工が施され、最終的にフレーム枠の形状と略一致する輪郭形状のレンズが製作される。
【0045】
このようなABS装置20によれば、レンズホルダ2をシュート30に供給し、レンズ1をレンズ供給装置25に供給し、レンズ枠形状データをキーボード、タッチパネル等の端末機器によって制御部に入力すると、レンズホルダ2の供給、芯出し、レンズホルダ2への弾性シール3の貼着、レンズホルダ2によるレンズ1の保持、レンズ1の測定、レイアウト等の一連の工程を全て自動的に行うことができるので、作業者の負担が著しく軽減され、作業能率および生産性を向上させるとともに省力化することができる。また、ホルダ供給機構28はシャッタ機構38を備え、処方レンズに応じた種類のレンズホルダ2をホルダ支持機構29に供給するので、種類の異なったレンズホルダを供給するといったミスが発生するようなおそれがない。さらに、カセット31は脱落防止用ピン35を備えているので、排出側開口部を下にしてもレンズホルダ2が脱落するようなことがなく、しかもカセット31をシュート30に装着すると、脱落用防止ピン35が自動的に開いてレンズホルダ2を解放するため、作業者がその都度ピン35を操作する必要がなく、カセット31の取扱い容易である。
【0046】
なお、上記した実施の形態においては、単焦点レンズ用のABS装置に適用した例を示したが、これに限らず多焦点レンズ用のABM装置にも適用することが可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るレンズ用レイアウト・ブロック装置によれば、レンズホルダをその種類毎に供給するレンズ供給機構を備えているので、作業者が処方レンズに対して種類の異なったレンズホルダを供給するといったミスを防止することができる。また、シャッタ機構を備えているので、レンズホルダの供給を自動的に行うことができる。さらに、芯出し機構を備えているので、ホルダ支持機構によって支持されているレンズホルダの芯出しを自動的に行うことができる。したがって、レンズを汚したり、傷つけたりするといったおそれがなく、作業者の負担が著しく軽減され、作業能率および生産性を向上させるとともに省力化することができる。
【0048】
また、本発明はカセットに脱落防止用ピンを設けているので、レンズホルダの脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)はレンズホルダの正面図および背面図である。
【図2】 レンズホルダにレンズを弾性シールを介して保持させた状態を示す図である。
【図3】 (a)、(b)、(c)は図1のIII −III 線拡大断面図、レンズ保持面を示す図およびレンズ保持面の拡大断面図である。
【図4】 単焦点レンズ用ABS装置の正面図である。
【図5】 同装置の平面図である。
【図6】 (a)、(b)、(c)はホルダ収納用カセットの断面図、シュートに装着する前の状態を示す図および装着した状態を示す図、ホルダ収納用カセットの断面図である。
【図7】 ピン位置から離れたカセット中央部の断面図である。
【図8】 レンズホルダのシャッタ機構を示す図である。
【図9】 (a)、(b)はホルダ支持機構の平面図および正面図である。
【図10】 ホルダ支持機構によるレンズの保持動作を示す図である。
【図11】 ホルダ支持機構によるレンズの保持動作を示す図である。
【図12】 (a)、(b)は芯出し機構によるレンズホルダの芯出し動作を示す図である。
【図13】 (a)、(b)はホルダ保持装置へのレンズホルダの受け渡しを示す図である。
【符号の説明】
1…レンズ、2…レンズホルダ、3…弾性シール、20…ABS装置、21…基台、22…ホルダ搬送装置、23…ホルダ保持装置、24…シール供給装置、25…レンズ供給装置、26…レンズメータ、28…ホルダ供給機構、29…ホルダ支持機構、30…シュート、31…カセット、35…脱落防止用ピン、38…シャッタ機構、43…ステージ、48A,48B…ホルダハンド、53…芯出し機構、A1 ,A2 ,A3 …終端位置、A4 …ホルダ装着位置。
Claims (2)
- レンズの凸側レンズ面の曲率に応じて異なった曲率のレンズ保持面を有する複数種のレンズホルダをその種別毎に供給するホルダ供給機構と、このホルダ供給機構から供給されるレンズホルダを受取り支持し芯出しするホルダ支持機構とを備え、
前記ホルダ供給機構は、レンズホルダの種別毎に傾斜して並設された複数のシュートと、これらのシュートの終端部にそれぞれ配設されて通常はシュートの排出口を閉じており、供給信号によって駆動することにより前記排出口を開いて1番目のレンズホルダを排出するシャッタ機構とを有し、
前記ホルダ支持機構は、ホルダ装着位置と前記各シュートの終端位置の間を往復移動するステージと、このステージに設けられシュートから供給されるレンズホルダを保持するホルダハンドと、このホルダハンドによって保持されたレンズホルダを芯出しする芯出し機構とを有する、
ことを特徴とするレンズ用レイアウト・ブロック装置。 - 請求項1記載のレンズ用レイアウト・ブロック装置において、シュートにはレンズホルダを収納するカセットが装着され、このカセットの内部で排出側開口部付近には通常レンズホルダを係止し、前記シュートに装着されると開いてレンズホルダを解放する脱落防止用ピンを設けたことを特徴とするレンズ用レイアウト・ブロック装置。
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