JP4079607B2 - 高電気抵抗を有する磁気抵抗膜 - Google Patents
高電気抵抗を有する磁気抵抗膜 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu(ルテニウム),Rh(ロジウム),Pd(パラジウム),Os(オスミウム),Ir(イリジウム),Pt(白金)から,MはCa(カルシウム),Mg(マグネシウム),MgとW(タングステン),MgとMo(モリブデン),MgとNd(ネオジム),MgとCe(セリウム),Al(アルミニウム)とBa(バリウム)のうちから選択される1種または2種の元素からなり,高電気抵抗を有し,室温で大きな磁気抵抗効果を示す磁気抵抗膜に関するものである.
【0002】
【従来の技術】
種々の磁界検出のために,ホール素子,フラックスゲート素子,磁気インピーダンス効果(MI)素子,または磁気抵抗(MR)素子などが用いられている.これらの磁界センサは,サーボモーター,ステッピングモーター,ロータリーエンコーダー,水道流量計などの回転磁界センサ,あるいは地磁気センサとしても広く利用されている.また,磁気記録の分野では記録密度の高密度化を実現するために,異方的磁気抵抗効果(AMR)を利用した読み出し用ヘッドや,金属人工格子の巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したスピンバルブヘッドが用いられている.
【0003】
電池を電源とする磁界センサは,電池の消耗を避けるために,なるべく小さな電流で駆動する必要がある.しかし,ホール素子は,素子に流す電流値に比例して感度が大きくなるため,小さな電流では十分な感度は得られない.一方,パーマロイなどのAMR材料や金属人工格子は電気比抵抗が小さく,電池の供給する電圧に対し大きな電流が流れてしまうので,電池の消耗が早い.電池の長寿命化のためには,素子の電気抵抗を上げて電流値を抑える必要があり,極めて精度よく微細パターンに加工するなどの工夫が必要となっている.
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電池を電源とする省電力型の磁界センサでは,大きな電流値でなければ出力の得られないホール素子は用いることはできない.このため,MR材料が用いられているが,電気比抵抗が小さいために,微細パターンに加工するなどの工程が必要となる.MR材料の電気比抵抗が大きければ,素子に流す電流は少なくなり,電池の消耗が押さえられる.また,微細加工の必要も無くなり,磁界センサの製造工程が大幅に簡略化されることが考えられる.そこで,本発明者らは,大きな電気比抵抗を有し,なお且つ大きなMR比を有する材料を得ようとするものである.
【0005】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたもので,大きな電気比抵抗を有し,且つ大きなMR比を有する,磁気抵抗薄膜材料を提供することを目的とする.
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は,上記の事情を鑑みて鋭意努力した結果であり,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素と少量の不純物からなり,前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素である磁気抵抗膜は,室温において大きな磁気抵抗効果を示すことを見出した.これらの薄膜はスパッタ法によって作製されるが,例えばRFスパッタ成膜装置を用い,純Fe,純Ni,純Coあるいは合金円板上にRu,Rh,Pd,Pt,酸化物あるいはフッ化物等のチップを均等に配置した複合ターゲットを用いて行なうか,金属ターゲットと酸化物あるいはフッ化物ターゲットを同時にスパッタして行う.この際導入されるガスは,純Ar(アルゴン)あるいはAr+O等の混合ガスを用いる.また,基板温度を100〜800℃の範囲の適当な温度に保ちながら成膜することによって,MR特性を改善することが出来る.
【0007】
本発明の特徴とするところは次の通りである.
第1発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下であることを特徴とする磁気抵抗膜を提供する.
【0009】
第2発明は,薄膜の構造がグラニュラー構造であり,膜中に超常磁性成分が存在することを特徴とする第1発明に記載の磁気抵抗膜を提供する.
【0011】
第3発明は,前記磁気抵抗膜を作製する際に,基板の温度を100℃以上800℃以下の温度に設定して作製することを特徴とする,第1発明または第2発明に記載の磁気抵抗膜を提供する.
【0012】
第4発明は,100℃以上800℃以下の温度で焼鈍したことを特徴とする,第1発明ないし第3発明のいずれか1つに記載の磁気抵抗膜を提供する.
【0013】
第5発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁界センサ素子を提供する.
【0014】
第6発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁界センサを提供する.
【0015】
第7発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁気記録読出し用磁気ヘッドを提供する.
【0016】
第8発明は,一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁気メモリーを提供する.
【0017】
【作用】
本発明の磁気抵抗膜は,ナノサイズの金属微粒子(グラニュール)が主にFe,Co,Niあるいはそれらの合金とLの合金からなり,それを取り囲む酸化物あるいはフッ化物からなる絶縁体の薄い粒界相からなるナノグラニュラー構造膜になっていることが必要である.これらのナノグラニュラー膜のMRは,絶縁性粒界相を通過するトンネル電流が,粒界相を挟んで隣り合う磁性グラニュールの磁化の向きによって変化するスピン依存トンネル伝導によって発現する.膜の電気比抵抗が104μΩcm未満の場合では,電流は部分的につながった金属粒子を自由に流れ,トンネル伝導は起こらないので,MRは生じない.また,電池の消耗を考慮すると,電気比抵抗がより大きい方が電流を小さく押さえることが可能で,電池の寿命が長くなる.このことから膜中の絶縁相成分であるMx,OyおよびFzの量が,それぞれx<10,y=0およびz=0で,且つx+y+z<30である場合は,膜の電気比抵抗が104μΩcm未満となり,適当でない.一方,非磁性元素のLwがw>50,絶縁相成分Mx,OyおよびFzが,それぞれx>40,y>50およびz>50で,且つx+y+z>70である場合は,膜の磁性が失われMRは発現しない.
【0018】
これらの膜に発現するスピン依存トンネル伝導に起因するMRでは,MR比は用いる磁性体のスピン分極率が大きいほど大きな値を示すことが知られている.Fe−Pd,Fe−Pt,Co−Pt合金あるいはホイスラー合金などは,大きなスピン分極率を有することが計算によって求められている(V.I.anisimov
et al,Phys.Met.Metal.68(1989)53).このように本発明では,スピン分極率の大きな磁性体を用いることによって,大きなMR比を有する磁気抵抗膜が実現できる.また,Niは強磁性元素であり,MR比を大きくする効果がある.
磁化曲線とMR特性の磁場依存性が密接に関係しているために,本発明の磁気抵抗膜の磁化曲線の保磁力は,30Oe以下であることが望ましい.保磁力が30Oe以上では,低磁場での磁気抵抗の磁場感度が小さくなり,適切でない.
【0019】
一方,本発明の磁性薄膜は単層の厚い膜でも十分磁気抵抗効果を示すが,他の絶縁物(例えばAlN,SiO2,BN,ZrO2,Al2O3,MgF2,CaF2,BaF2等),非磁性物質(例えばCr,Cu,Ag等)あるいは強磁性物質(例えばFe,Co,Ni,Fe−Co,Fe−Ni,Co−Ni,Fe−Co−Ni等)からなる層と交互に積層してもよい.積層する中間層の物質や膜厚の組み合わせによって,膜応力の軽減,柱状構造の発達の抑制,磁性層間の静磁結合による軟磁性の改善と,それに基づく磁気抵抗の磁場感度の向上などの様々な効果が現われる.同様な特性の改善が成膜中の基板加熱や熱処理を施す事により行なわれる.具体的には,磁界中あるいは無磁界中において100℃以上800℃以下の温度で基板を加熱するかまたは熱処理することにより,内部応力の緩和と相分離の促進がおき,特性の改善がなされる.
【0020】
【実施例】
本発明を具体的に図を用いてさらに詳しく説明する.
〔実施例〕薄膜の作製と評価
コンベンショナルタイプのRFスパッタ装置あるいはRFマグネトロンスパッタ装置を用い,直径80〜100mmの純Fe,純Co,純Niあるいは合金円板上に金属チップをのせたターゲットと酸化物あるいはフッ化物ターゲットを同時にスパッタすることにより,薄膜を作製した.スパッタ成膜に際しては純ArあるいはAr+O混合ガスを用いた.膜厚のコントロールは成膜時間を加減することによって行い,約1μmになるように調節した.基板には,約0.5mm厚のコーニング社製#7059ガラスを用いた.尚,基板は間接水冷あるいは100〜800℃の任意の温度に加熱した.成膜時のスパッタ圧力は1〜60mTorrで,スパッタ電力は100〜200Wである.スパッタガスにAr+O混合ガスを用いる場合は,アルゴンに対する酸素の流量比を1〜10%の範囲で種種選択し,膜中の酸素濃度を変えた.さらに,作製した薄膜試料には,100〜800℃の温度で種々の熱処理を施した.
【0021】
前記のようにして作製した薄膜試料は,直流4端子法を基本とする電気比抵抗の測定装置を用いて,電気比抵抗値と(ρ)と0〜15kOeの磁界中での磁気抵抗効果(MR比)を測定した.また磁化曲線は試料振動型磁化測定装置(VSM)で測定し,膜組成はラザフォード後方散乱法(RBS)あるいはエネルギー分散型分光分析法(EDS)によって決定した.また,膜の構造は,Cu−Kα線を用いたX線回折法によって決定した.前記の方法で作製した薄膜と諸特性を表1および表2に示す.
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
図1には,実施例1の条件下で,基板温度を100℃〜850℃の温度範囲で変えて作製した試料番号21および155の膜のMR比と,基板温度の関係を示す.MR比は,基板温度100℃以上で増加し約500℃で最大値を示す.そして約600℃以上の温度では減少するが,800℃においても基板加熱しない場合よりも大きな値を示す.850℃以上の温度でMR比が大きく減少するのは,成膜中に原子の拡散が起こり,グラニュラー構造が得られないためである.図1から明らかなように,100℃以上800℃以下の温度範囲で基板温度を上げて成膜することによって,膜のMR比が向上する.
【0026】
熱処理は,実施例1に示す方法で作製した膜を,無磁界中および1×10−6Torr以下の真空中で,850℃以下の任意の温度で約1時間保持した.図2には,試料番号21および155の単層膜と多層膜の熱処理温度とMR比の関係を示す.MR比は,熱処理温度100℃以上で増加し,約500℃で最大値を示す.そして約600℃以上の温度では減少するが,800℃においても熱処理しない場合よりも大きな値を示す.850℃以上の温度でMR比が大きく減少するのは,膜中の原子が拡散しグラニュラー構造が壊れるためである.また,単層膜と多層膜を比較すると700℃以下の熱処理温度範囲において,多層膜の方が大きなMR比を示すことがわかる.図2から明らかなように,成膜後100℃以上800℃以下の温度範囲で熱処理することによって,膜のMR比が向上し,さらに多層化することによってMR比が向上する.
【0027】
表2に示す通り,これらのサンプルのMR比はいずれも3%以上で,比較例として挙げた実用材料であるパーマロイの値を上回る.そして,電気比抵抗はいずれも104μΩcm以上であり,トンネル伝導に起因したMRを示すことがわかる.また,保磁力(Hc)はパーマロイと比較すると若干大きいが,30Oeを大きく下回っている.図3に試料番号18の膜のX線回折図形を示す.2θが27°付近には主にMgF2からなるフッ化物相からのピーク,また2θが44°付近には膜中の磁性金属グラニュールに対応するブロードなピークが観察される.以上のことから,この膜が微細なFe−Co−Ni合金微粒子とフッ化物相の2相からなるグラニュラー構造を有していることがわかる.
【0028】
本発明の高電気抵抗磁気抵抗膜は,MR比が大きく電気抵抗も高いので,磁界センサ素子および当該磁界センサ素子からなる磁界センサ,または磁気記録読出し用磁気ヘッドならびに磁気メモリーに好適である.
【0029】
尚,希土類元素とは,Sc(スカンジウム),Y(イットリウム)およびランタン系元素を表し,磁気抵抗効果に対する添加効果は均等である.
【0030】
【発明の効果】
本発明の高電気抵抗磁気抵抗膜は,絶縁物マトリックスにナノメーターサイズの磁性グラニュールが分散したナノグラニュラー合金薄膜であり,室温で7.3%以上の磁気抵抗比を示し,且つ0.7×10 9 μΩcm以上の高い電気比抵抗を有する.このため,素子に流れる電流値を低減することができるので省電力であり,各種MR磁界センサに好適で,その工業的意義は大きい.
【図面の簡単な説明】
【図1】 基板温度を変えて作製した,(Fe0.4Co0.4Ni0.2)26Pt6Ir4Mg12Nd7O22F23合金膜(A)および(Fe0.5Co0.3Ni0.2)39Rh5Pd6Sr1Y2Ba2O20F25合金膜(B)のMR比と基板温度との関係を示す特性図である.
【図2】 (Fe0.4Co0.4Ni0.2)26Pt6Ir4Mg12Nd7O22F23合金膜(A)および(Fe0.5Co0.3Ni0.2)39Rh5Pd6Sr1Y2Ba2O20F25合金膜(B)について,単層膜と,SiO2を介して10層積層した多層膜のMR比と熱処理温度との関係を示す特性図である.
【図3】 (Fe0.4Co0.4Ni0.2)36Mg19F45合金膜の構造を示すX線回折図形である.
Claims (8)
- 一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下であることを特徴とする磁気抵抗膜. - 薄膜の構造がグラニュラー構造であり,膜中に超常磁性成分が存在することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗膜.
- 前記磁気抵抗膜を作製する際に,基板の温度を100℃以上800℃以下の温度に設定して作製することを特徴とする,請求項1または請求項2に記載の磁気抵抗膜.
- 100℃以上800℃以下の温度で焼鈍したことを特徴とする,請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の磁気抵抗膜
- 一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁界センサ素子. - 一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁界センサ. - 一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁気記録読出し用磁気ヘッド. - 一般式(Fel−a−bCoaNib)100−w−x−y−zLwMxOyFzで表わされ,LはRu,Rh,Pd,Os,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはCa,Mg,MgとW,MgとMo,MgとNd,MgとCeまたはAlとBaのうちから選択される1種または2種の元素であり,かつ組成比a,b,w,x,y,zは原子比率で,
0≦a≦0.7
0.1<b≦0.5
0≦w≦50
10≦x≦40
0≦y≦50
23≦z≦45
30≦x+y+z≦70
である組成からなり,
前記一般式中、a=0.4,b=0.2であり,LはPd,Ir,Ptのうちから選択される1種または2種以上の元素であり,MはMgであるか、またはMgとNdもしくはCeとの組合せから選択される元素であり,かつ室温で13.3%以上15.8%以下の磁気抵抗効果を示し,かつ,0.7×10 9 μΩcm以上1.0×10 9 μΩcm以下の電気比抵抗を有し、保磁力が30Oe以下である磁気抵抗膜よりなる磁気メモリー.
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