JP4079326B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液電池に関し、さらに詳しくは、中負荷以下の用途に適した高容量かつ安全で信頼性の高い円筒形の非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒形の非水電池には、メモリーバックなどの高容量ではあるが軽負荷用のボビンタイプの電池と、カメラの電源など重負荷対応の捲回式電池とが広く知られている。前者のボビンタイプの電池は、CRやER電池が製品化されているが、構造が簡単で低コストでの製造が可能であり、多くの活物質を充填することができる反面、電極面積が小さく負荷特性に劣ることから、大きな電流での放電を行おうとすると、容量が低下する不利がある。
【0003】
後者の重負荷特性の捲回式電池は、CRやBRの構成で製品化されている。この種の電池は、薄い長尺の電極を捲回してなる渦巻電極体を電池要素とするため、大きな電極面積を確保でき、大電流で放電しても大きな容量を取り出すことができる。但し、電池特性向上に直接的に寄与しないセパレータや集電体を電極体内に多く備えるため、活物質の充填量が低くならざるを得ず、電池容量が低下することは避けられない。また、大電流が取り出せる反面、短絡等の異常が起こった場合には発熱が激しく、発火の危険性があり、種々の安全対策が必要で、電池構造が複雑で製造コストの上昇を招く不利もある。
【0004】
最近の応用機器の多様化により、メモリーバックなどの軽負荷用途、カメラ用などの重負荷用途だけでなく、データの発信、受信など中負荷での用途が増加しつつあり、中負荷で特徴を発揮する電池の開発が要望されていた。そこで、特許文献1および2には、厚い電極を数回巻いた電極捲回体を電池要素とする電池が提案されている。かかる電極捲回体を電池要素とする電池によれば、厚い電極を用いることで、従来の重負荷特性の電池に比べて、セパレータや集電体などの使用量を減らして活物質の充填性の向上を図ることができ、従って高容量な電池を得ることができる点で有利である。また、極端な大電流を流せなくすることで、安全性、信頼性に優れ、中負荷特性に優れた電池を得ることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−267583号公報(段落番号0017、図1、図3)
【特許文献2】
特開平9−190836号公報(段落番号0019、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
但し、特許文献1および特許文献2に記載の電池の正極は、ニッケル発泡体からなる集電体の空隙に活物質合剤を充填してなる形態を採るため、可撓性や柔軟性に乏しい。このため厚み寸法を大きくとると、捲回時に電極の割れや切断、活物質の脱落が生じて短絡や導電不良を生じやすい不利がある。
【0007】
そこで本発明者等は図7に示すごとく、正極3を、正極活物質をシート状に成形してなる2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とからなるものとし、これらを捲回して電極捲回体6を作製した。そこでは、電極捲回体6の作成時において、正極シート20・21と集電体22とを捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回するようにした。これによれば、正極3を2枚の正極シート20・21に分割することで、発泡金属製の集電体の空隙に活物質を充填してなる従来形態に比べて、正極3の可撓性や柔軟性の向上を図ることができるため、捲回時における正極3の割れや切断、活物質の脱落などの発生を効果的に解消できる。
【0008】
但し、図7に示すごとく、捲回末端部Eにおける2枚の正極シート20・21が揃っていると、外周側の正極シート21の捲回末端部Eが外方向に大きく張り出すために、電極捲回体6を円筒状の外装缶2内に挿入する際に、捲回末端部Eに係る外周側の正極シート21の端面エッジ部21aがセパレータ5を損傷して、短絡を引き起こしやすい。
【0009】
本発明の目的は、厚み寸法が大きく且つ短いシート状の正極を、負極およびセパレータとともに捲回してなる電極捲回体を電池要素とする非水電解液電池において、正極シートの捲回末端部の端面エッジ部がセパレータを損傷することに起因する短絡の発生を抑えて、安全性、信頼性に優れる非水電解液電池を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図2に示すごとく、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2内に、シート状の正極3と負極4とをセパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池を対象とする。図1および図4に示すごとく、電極捲回体6は、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されている。正極3は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とを含み、電極捲回体6の作成時において、該正極シート20・21と集電体22は、捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回する。各正極シート20・21は、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものである。
【0011】
そのうえで、請求項1記載の本発明は、図1および図4に示すごとく、電極捲回体6の最外周において、正極3を構成する2枚の正極シート20・21は、その捲回末端部Eが不揃いの位置ずれ状態とされており、両正極シート20・21の捲回末端部Eのずれ幅Wが、正極シート20・21の厚み寸法Lの1/2以上、2倍以下に設定されていることを特徴とする。
【0012】
図1に示すごとく、電極捲回体6の最外周において、内周側に位置する正極シート20の捲回末端部Eが、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eよりも長く延出された位置ずれ状態にあることがより好ましい。
【0013】
また本発明は、図2に示すごとく、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2内に、シート状の正極3と負極4とをセパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池を対象とする。電極捲回体6は、図5に示すごとく、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されている。正極3は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とを含み、電極捲回体6の作成時において、該正極シート20・21と集電体22は、捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回する。各正極シート20・21は、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものである。
【0014】
そのうえで、請求項3記載の本発明は、図5に示すごとく、電極捲回体6の最外周において、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eに、他よりも厚みの薄い薄肉部27を形成してあることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、図2に示すごとく、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2内に、シート状の正極3と負極4とをセパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池を対象とする。電極捲回体6は、図6に示すごとく、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されている。正極3は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とを含み、電極捲回体6の作成時において、該正極シート20・21と集電体22は、捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回する。各正極シート20・21は、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものである。
【0016】
そのうえで、請求項4記載の本発明は、図6に示すごとく、前記電極捲回体6の最外周において、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eの外側縁が、面取り形成されていることを特徴とする。
【0017】
【発明の作用効果】
薄く且つ長いシート状の正・負極をセパレータを介して捲回してなる渦巻状の電極体を電池要素とする電池においては、正・負極の厚み寸法は極めて小さいため、電極体を円柱状に成形することは容易である。つまり、正・負極の捲回末端部の外方向への張り出し幅は、無視できるほどに僅かであるため、円筒状の外装缶内へ電極体を装填する際に捲回末端部を無理込むような事態は生じず、捲回末端部に係るセパレータが正・負極で損傷されて、短絡を起こすような不具合は生じない。
【0018】
これに対して、本発明に係る非水電解液電池のごとく、厚み寸法が大きく、且つ長さ寸法の小さな正極を捲回してなる電極捲回体を電池要素とする場合には、電極捲回体を円柱状に成形することが難しく、正・負極の捲回末端部の外方向への張り出し幅が、外装缶内へ装填する際の問題となる。すなわち、図5に示すごとく、正極シート20・21の捲回末端部Eが揃っていて、該正極3の捲回末端部Eが外方向へ不用意に大きく張り出した形態となっていると、円筒状の外装缶2内へ電極体6を装填する際に、捲回末端部Eを無理込まなければならず、その結果、捲回末端部Eに係るセパレータ5が外周側に位置する正極シート21のエッジ部21aで損傷されて、短絡が生じるおそれがある。
【0019】
そこで本発明の非水電解液電池においては、図1および図4に示すごとく、正極3を構成する2枚の正極シート20・21を、その捲回末端部Eが不揃いの位置ずれ状態となるようにしてある。このように、正極シート20・21に段差を設けることで、外周側の正極シート21の捲回末端部Eの外方向への張り出し幅を小さく抑えることができるので、図7に示すごとく両正極シート20・21を位置ずれさせずに揃えた場合に不可避であった、外周側の正極シート21の捲回末端部Eのエッジ部21aが外方向に大きく張り出すことに起因するセパレータ5の損傷を解消でき、短絡の発生を効果的に防ぐことができる。とくに、図1に示すように、内周側に位置する正極シート20の捲回末端部Eを、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eよりも長く延出してあると、外装缶2の内部スペースを無駄なく有効利用できるので、デッドスペースを最小限に抑えて、放電容量の向上が期待できる。
【0020】
そのうえで、両正極シート20・21の捲回末端部Eのずれ幅Wは、正極シートの厚み寸法Lの1/2以上、2倍以下に、より好ましくは0.7以上、1.5倍以下に設定する。ずれ幅Wが正極シートの厚み寸法Lの1/2未満となると、正極シート20・21をずらした効果が得られず、外装缶2への電極捲回体6の装填時に、セパレータ5を傷つけて短絡を引き起こすおそれがある。ずれ幅Wが正極シート20・21の厚み寸法Lの2倍を超えると、集電体22が正極シート20・21の捲回末端部Eから突出して、短絡を引き起こすおそれがある。また、集電体22の片面に正極シート20・21がない部分の密着性が劣るため、中負荷での電池特性(放電容量)が低下する。
【0021】
図5に示すごとく、電極捲回体6の最外周において、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eに、他よりも厚みの薄い薄肉部27を形成してあると、捲回末端部Eに係る外周側の正極シート21とセパレータ5との接触を抑えることができるので、セパレータ5の損傷に起因する短絡の発生を抑えることができる。
【0022】
図6に示すごとく、前記電極捲回体6の最外周において、外周側に位置する正極シート21の捲回末端部Eの外側縁を面取り形成して、正極シート21の捲回末端部Eに係る外周側のエッジ部を削ってあると、セパレータ5の損傷を確実に抑えて、短絡の発生をよく防ぐことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態) 図1ないし図3に、本発明の第1実施形態に係る非水電解液電池を示す。図2において、非水電解液電池1は、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶2と、外装缶2内に装填された正極3および負極4と、外装缶2の上方開口部を封止する封口構造とからなる。正極3および負極4は、セパレータ5を介して捲回してなる電極捲回体6として、電解液とともに外装缶2内に収容されている。外装缶2は、鉄やステンレスを素材とする。
【0024】
封口構造は、外装缶2の上方開口部の内周縁に固定された蓋板8と、蓋板8の中央部に開設された開口に、ゴム製の絶縁パッキン9を介して装着された端子体10と、蓋板8の下部に配置された絶縁板11とからなる。絶縁板11は、円盤状のベース部12の周縁に環状の側壁13を立設した上向きに開口する丸皿形状に形成されており、ベース部12の中央にはガス通口14が開設されている。蓋板8は、側壁13の上端部に受け止められた状態で、外装缶2の上方開口部の内周縁に、レーザ溶接若しくはパッキングを介したクリンプシールで固定されている。蓋板8もしくは外装缶2の缶底2aには薄肉部を設け、内圧が急激に上昇したときの対策としてのベントを設けることができる。正極3と端子体10の下面とは、正極リード体15で接続されており、負極端子4と外装缶2の内面とは負極リード体16で接続されている。
【0025】
図1に示すごとく、電極捲回体6は、正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が、1.6周以上、2.5周以下となるように正・負極3・4およびセパレータ5を捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に形成される。なお、図1には捲回数が1.6周程度の形態を示す。正極3は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シート20・21と、これら正極シート20・21の間に介在された集電体22とを含み、電極捲回体6の作成時においては、正極シート20・21と集電体22は、捲回始端部Sのみを固定した状態で捲回される(図3(c)参照)。
【0026】
正極シート20・21は、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法Lを有するシート状に成形してなる。正極活物質としては、例えば二酸化マンガン、フッ化カーボン、リチウムコバルト複合酸化物、スピネル形リチウムマンガン複合酸化物などを挙げることができる。
【0027】
正極3の電導助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックから選択される一種、または2種以上の複合物を用いることができるが、主成分としてケッチェンブラックを用いることが好ましい。正極3のバインダとしては、テフロンディスパージョンや、粉末のテフロン(登録商標)、ゴム系バインダなどを用いることができるが、テフロンディスパージョンを用いることが好ましい。
【0028】
正極リード体15としては、ステンレス316や、430、444などからなる平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、箔などを用いることができる。
【0029】
負極4は、薄い板状(箔状)に形成されており、その材料としては、リチウム金属、リチウムとアルミニウムなどの合金、黒鉛などの炭素材料を挙げることができる。負極4は、図1および図3(b)に示すごとく、短尺と長尺の2枚の負極4a・4bを、張り合わしてなるものであり、これらを正極3、セパレータ5とともに捲回して電極捲回体6を作製する。負極リード体16としては、ニッケルリボン、ステンレス平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタルなどを用いることができる。
【0030】
電解液としては、溶質としてLiPF6 、LiClO4 、LiCF3 SO3 、(CF3 SO2 )2 NLiなどを0.3〜1.5M/l溶解した溶媒として、PC、ECなどの環状カルボネートにDMEなどの鎖状エーテル、ジメチルカルボネートなどの鎖状カルボネートを混合した電解液が用いられる。
【0031】
セパレータ5としては、PP、PE、PET、PBT、PPSなどの不織布、微孔性フィルムなどを用いることができる。
【0032】
電極捲回体は、図3に示すような手順で作製することができる。まず、図3(a)に示すごとく、セパレータ5を2つ割の巻芯25に挟んで1周巻く。次に、図3(b)に示すごとく、負極4を短尺4aのみの一層部分から巻芯25に向けて挿入して、セパレータ5とともに1周巻き込む(図3(c)参照)。続いて、図3(c)に示すごとく、正極3をセパレータ5を介して負極4上に載置して巻芯25で捲回する。ここでは、正極3は、両正極シート20・21および集電体22を固定した巻始端Sの側から捲回されるようにしてあり、長尺の負極4b上にセパレータ5を介して載置された状態で捲回される。捲回終了後は、セパレータ5が最外周を覆う形となり、このセパレータ5の捲回末端部Eを固定テープで固定する。以上より、図1に示すような形態の電極捲回体6を得ることができる。
【0033】
内外周に位置する2枚の正極シート20・21の長さ寸法を調整することで、捲回末端部Eに係る正極3の形態を適宜に変化させることができる。ここでは、図1に示すごとく、捲回末端部Eに係る内周側の正極シート20が、外周側の正極シート21よりも長く延出された、両正極シート20・21が不揃いの位置ずれ状態となるように、両正極シート20・21の長さ寸法を調整してある。これにより、外周側の正極シート21の捲回末端部Eの外方向への張り出し幅を小さく抑えることができるので、図7に示すごとく両正極シート20・21を位置ずれさせずに揃えた形態では不可避であった、外周側の正極シート21の捲回末端部Eのエッジ部が外方向に大きく張り出すことに起因するセパレータ5の損傷を抑えて、短絡の発生を効果的に防ぐことができる。すなわち、外周側の正極シート21の捲回末端部Eの外方向への張り出し幅を小さく抑えることにより、電極捲回体6の外装缶2内への装填時に、正極シート21の捲回末端部Eのエッジ部21aと外装缶2の内周面とが強く擦れて、介在するセパレータ5が損傷されることをよく防ぐことができる。
【0034】
そのうえで、両正極シート20・21の捲回末端部Eのずれ幅Wは、正極シート20・21の厚み寸法Lの1/2以上、2倍以下に、より好ましくは、0.7以上、1.5倍以下に設定する。ずれ幅Wが正極シート20・21の厚み寸法の1/2未満となると、正極シート20・21をずらした効果が得られず、セパレータ5の損傷して短絡が生じやすい。ずれ幅Wが正極シート20・21の厚み寸法Lの2倍を超えると、集電体22が正極シート20・21の捲回末端部Eから突出して、短絡を引き起こすおそれがある。また、集電体22の片面に正極シート20・21がない部分の密着性が劣るため、中負荷での電池特性(放電容量)が低下する。
【0035】
(第2実施形態) 図4に、本発明の第2実施形態に係る非水電解液電池を示す。この場合の非水電解液電池は、捲回末端部Eに係る内周側の正極シート20が、外周側の正極シート21よりも短くなっている点が、先の第1実施例と相違する。これによっても、外周側の正極シート21の捲回末端部Eの外方向への張り出し幅を抑えることができるので、外装缶2への装填時におけるセパレータ5の損傷を抑えて、短絡の発生をよく防ぐことができる。
【0036】
(第3実施形態) 図5に、本発明の第3実施形態に係る非水電解液電池を示す。この場合の非水電解液電池1は、両正極シート20・21の捲回末端部Eを、他よりも厚みの薄い薄肉部27としてある点が、先の第1実施例と相違する。この薄肉部27は、例えば、正極シート20・21の捲回末端部Eに対してプレス加工を施すことにより形成できる。このように正極シート20・21の捲回末端部Eに薄肉部27を設けることで、捲回末端部Eに係る外周側の正極シート21とセパレータ5との接触を抑えることができるので、セパレータ5の損傷に起因する短絡の発生を抑えることができる。なお、図5には、両正極シート20・21の捲回末端部Eに対して薄肉部27を設けた例を示したが、外周側の正極シート21のみに薄肉部27を設けてもよい。
【0037】
(第4実施形態) 図6に本発明の第4実施形態に係る非水電解液電池を示す。この場合の非水電解液電池1は、両正極シート20・21の捲回末端部Eに係る外周側のエッジ部を削って、R状に面取りしてある点が、先の第1実施例と相違する。図6において符号28は、面取り部分を示す。これによっても、セパレータ5の損傷を抑えて、短絡の発生を効果的に防ぐことができる。なお、外周側の正極シート21にのみ、面取り処理を行った形態であってもよい。
【0038】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、この実施例においては、CR電池を例にして説明する。
【0039】
《実施例1》
〈正極の製法〉
(配合) ケッチェンブラック3%と、二酸化マンガン(東ソー社製)92%の比率でプラネタリーミキサーを用いて乾式で5分間混合したのち、水を重量比で固形分の20%添加して5分間混合した。テフロンディスパージョン(D−1ダイキン工業社製)を固形分として5%を残りの水に希釈した状態で添加し、5分間混合した。配合剤中の水分は、固形分100に対し25〜30に調整した。
【0040】
(シート化) 混合した配合剤を直径250mmの2本ロールを用い、ロール温度を130±5℃に調整し、プレス圧7トン/cm、ロール間隔0.4mm、回転速度10rpmで、ロールによる圧延、シート化を行った。ロールを通過した配合剤(予備シート)を105℃±5℃で残水分が2%以下になるまで乾燥した。次いで乾燥後の予備シートを粉砕器を用いて粉砕した。ここでは、プレスされた予備シートが、元の見かけ体積の2倍以上になるまでコーヒーミルで粉砕した。粉砕された粒子径は、大部分が1mm以下であり、バインダとして添加したテフロン(登録商標)の繊維も1mm以下の長さに切断されていた。
【0041】
粉砕された材料に対して、再度ロールによるシート化を行った。ロールの間隔は0.6±0.05mmに調整し、ロール温度は120±10℃、プレス圧7トン/cm、回転速度10rpmでシート化を行い、正極シートを得た。正極シートは、厚さが1.0mm、密度が2.6g/cm3 であった。
【0042】
以上のようにして、内周用と外周用の2枚の正極シート20・21(図1、図3(c)参照)を作成した。内周用の正極シート20は、幅37mm、長さ51mmに切断した。外周用の正極シート21は、幅37mm、長さ62mmに切断した。
【0043】
(集電体) ステンレス316からなるラス網(日建ラス社製)を集電体22として用いた。このラス網は、幅35mm、長さ56mmに切断し、その長さ方向の中央部に、厚さ0.3mm、幅3mmのステンレスリボン製の正極リード体15を抵抗溶接により取り付けた。集電体22にカーボンペースト(日本黒鉛社製)を網の目をつぶさない程度に塗布したのち、105℃±5℃の加熱温度条件で2時間以上乾燥した。尚、ここでは4mg/cm2 となるようにカーボンペーストを塗布した。
【0044】
次に、図3(c)に示すごとく、2枚の正極シート20・21を、その間に集電体22を介装した状態で長さ方向の一端部のみを固定して三者を一体化した。具体的には、内・外周用の2枚の正極シート20・21は、長さ方向の一端を揃えるとともに、集電体22の端部が正極シート20・21からはみ出さないようにセットし、その状態で長さ方向の端部から3〜10mmをプレスにより圧着することで、3者を一体化した。続いて、これら正極シート20・21および集電体22を250℃±10℃で6時間熱風乾燥して正極3を得た。尚、ここで正極シート20・21と集電体22とを一体化したのは、作業上の問題であり、尤も独立した正極シート20・21と集電体22とを、捲回時に一体化しても特性上の問題はない。
【0045】
〈負極の製法〉
負極4は、幅37mm、厚さ0.3mmのリチウム箔を36mmと96mmに切断し、短尺側の箔4aの一端から10mmを除き、36mmを長尺側の箔4bと重ねて圧着した。負極リード体16は、厚さ0.1mm、幅3mmのニッケルリボンの一端をエンボス加工してなるものとし、2枚の箔の間に挟んで圧着して固定した。
【0046】
〈組立方法〉
幅44mm、厚さ0.025mmのPEからなる微孔性セパレータ(旭化成社製 ハイポア)を220mmに切断し、図3(a)に示すごとく2つ割の直径4mmの巻芯25に挟んで1周巻いた。次いで、図3(b)・(c)に示すごとく、負極4のリチウム金属箔の一重長さが10mmの方を巻芯25側にして、セパレータ5と同時に1周巻き込んだのち、正極シート20・21を固定した方を巻芯25側に載置して捲回した。捲回終了後は、セパレータ5が最外周を覆う形となり、セパレータ5の巻き終わり部を固定テープで固定した。捲回末端部Eに係るセパレータ5を折り曲げ、該セパレータ5で正極シート20・21が被覆されるようにした。以上より、図1に示すような電極捲回体6を得た。
【0047】
ニッケルメッキした鉄缶からなる外装缶2の底に、厚さ0.2mmのPP製絶縁板を挿入し、その上に電極捲回体6を正負極のリード体15・16が上側に向く姿勢で挿入した。負極リード体16は、外装缶2の上部内面に抵抗溶接した。正極リード体15は、絶縁板11を挿入したのち、端子体10の下面に抵抗溶接した。この時点で絶縁抵抗を測定し、短絡がないことを確認した。
【0048】
電解液は、0.5M LiClO4 /(PC+DME=1:2)を、外装缶2内に3.3±0.1ml注入した。注入は3度に分け、最終工程で減圧にして全量を注入した。電解液の注入後、蓋体8を嵌合・レーザ溶接により封口した。以上により、実施例1に係る非水電解液電池を得た。
【0049】
(後処理:予備放電、エージング)
封口した電池は、1Ωの抵抗で30秒間予備放電し、45℃で24時間保管した後、1Aの低電流で3分間2次予備放電を行った。予備放電後の電池を、室温で7日間エージングし、開路電圧を測定した。
【0050】
《実施例2》
内周側の正極シートの長さ寸法を51.5mm、外周側の正極シートの長さ寸法を61.5mmとした以外は、実施例1と同様にして電極捲回体を得て、これを外装缶内に装填して実施例2に係る非水電解液電池を得た。電極捲回体の形態は、図1に示すごとくであった。
【0051】
《実施例3》
内周側の正極シートの長さ寸法を49.5mm、外周側の正極シートの長さ寸法を63.5mmとした以外は、実施例1と同様にして電極捲回体を得て、これを外装缶内に装填して実施例3に係る非水電解液電池を得た。電極捲回体の形態は、図4のごとくであった。
【0052】
《実施例4》
内周側の正極シートの長さ寸法を50.5mm、外周側の正極シートの長さ寸法を62.5mmとし、両正極シートの捲回末端部にプレス加工を施して、厚み寸法が0.5mmの薄肉部を形成した。すなわち得られた電極捲回体は、図5に示すごとくであった。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る非水電解液電池を得た。
【0053】
《比較例1》
内周側の正極シートの長さ寸法を52mm、外周側の正極シートの長さ寸法を61mmとした以外は、実施例1と同様にして電極捲回体を得て、これを外装缶内に装填して比較例1に係る非水電解液電池を得た。
【0054】
《比較例2》
内周側の正極シートの長さ寸法を49mm、外周側の正極シートの長さ寸法を64mmとした以外は、実施例1と同様にして電極捲回体を得て、これを外装缶内に装填して比較例2に係る非水電解液電池を得た。
【0055】
《比較例3》
内周側の正極シートの長さ寸法を50.5mm、外周側の正極シートの長さ寸法を62.5mmとした以外は、実施例1と同様にして電極捲回体を得て、これを外装缶内に装填して比較例3に係る非水電解液電池を得た。
【0056】
上記実施例1〜4および比較例1〜3の非水電解液電池の捲回末端部のずれを測定した。外周側が短く、内周側が長い場合を正、短い場合を負と定義した。ここでは、各実施例および比較例に係る電池を100個ずつ作製して、その捲回末端部のずれ幅を測定した。また、23℃、10mAと300mAで2.0Vまで放電させ放電容量を比較した。10mAでの放電を電池の軽負荷容量、300mAを中負荷容量と定義した。
【0057】
組立時の短絡の発生個数を比較した。これは、電池に電極捲回体を挿入した後の絶縁抵抗値(1Ω以下)と、予備放電後のエージング中の開路電圧変化(平均値より50mV以上低下)により調べた。
【0058】
上記実施例1〜4および比較例1〜3の電池についての捲回末端部のずれ幅、短絡発生率、および放電特性を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す結果から明らかなように、比較例3に係る電池は短絡の発生率が高く、その点に不具合があることがわかる。これは図7に示すごとく、両正極シート20・21の捲回末端部Eが揃っているため、外装缶2内への電極捲回体6の装填時に、捲回末端部Eに係るセパレータ5が、外方向に大きく張り出した正極シート21のエッジ部21aで損傷されたことに拠る。
【0061】
比較例1および比較例2より、捲回末端部Eに係る内外周の正極シート20・21の位置ずれ幅Wが、正極シート20・21の厚み寸法Lの2倍以上と大きいと、短絡を引き起こすおそれがあることがわかる。これは集電体22が正極シート20・21の端から突出することに拠る。また、比較例1および比較例2に係る非水電解液電池は、実施例に係る非水電解液電池と比較して、軽負荷での特性は遜色ないが、中負荷での特性は明らかな低下が認められる。これは集電体22の片面に正極シート20・21がない部分では、正極シート20・21と集電体22との密着性が多少劣るため、集電効率が低下したことに拠る。
【0062】
これに対して、実施例1、2、3の非水電解液電池のごとく、捲回末端部に係る内外周の正極シート20・21を、ずれ幅Wが正極シートの厚み寸法Lの1/2以上、2倍以下の範囲で位置ずれさせた形態では、短絡は一切生じなかった。これは、正極シート20・21を位置ずれさせることで、外周側の正極シート21の捲回末端部Eの外方向への張り出し幅を小さく抑えて、セパレータ5の損傷を良好に解消できたことに拠る。また、実施例2、3より、ずれ幅Wが正極シート20・21の厚み寸法Lの1/2以上、2倍以下の範囲であれば、中負荷の特性も問題ないことがわかる。
【0063】
実施例4より、内外周の正極シート20・21の捲回末端部Eが、揃っている場合でも、図5に示すごとく薄肉部27を設けておけば、短絡は生じず、電池特性も良好であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る非水電解液電池の横断平面図である。
【図2】本発明の非水電解液電池の縦断正面図である。
【図3】電極捲回体の作製方法を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る非水電解液電池の横断平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る非水電解液電池の横断平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る非水電解液電池の横断平面図である。
【図7】従来形態に係る非水電解液電池の横断平面図である。
【符号の説明】
1 非水電解液電池
2 外装缶
3 正極
4 負極
5 セパレータ
6 電極捲回体
20 内周側に位置する正極シート
21 外周側に位置する正極シート
22 集電体
S 正極の捲回始端部
E 正極の捲回末端部
W ずれ幅
L 正極シートの厚み寸法
Claims (4)
- 上方開口部を有する有底円筒状の外装缶内に、シート状の正極と負極とをセパレータを介して捲回してなる電極捲回体と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池であって、
前記電極捲回体は、前記正極の捲回始端部と捲回末端部とで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極およびセパレータを捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されており、
前記正極は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シートと、これら正極シートの間に介在された集電体とを含み、電極捲回体の作成時において、該正極シートと集電体は、捲回始端部のみを固定した状態で捲回されており、
各正極シートは、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものであり、
前記電極捲回体の最外周において、前記正極を構成する2枚の正極シートは、その捲回末端部が不揃いの位置ずれ状態とされており、
両正極シートの捲回末端部のずれ幅が、正極シートの厚み寸法の1/2以上、2倍以下に設定されていることを特徴とする非水電解液電池。 - 前記電極捲回体の最外周において、内周側に位置する正極シートの捲回末端部が、外周側に位置する正極シートの捲回末端部よりも長く延出された位置ずれ状態にある請求項1記載の非水電解液電池。
- 上方開口部を有する有底円筒状の外装缶内に、シート状の正極と負極とをセパレータを介して捲回してなる電極捲回体と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池であって、
前記電極捲回体は、前記正極の捲回始端部と捲回末端部とで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極およびセパレータを捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されており、
前記正極は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シートと、これら正極シートの間に介在された集電体とを含み、電極捲回体の作成時において、該正極シートと集電体は、捲回始端部のみを固定した状態で捲回されており、
各正極シートは、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものであり、
前記電極捲回体の最外周において、外周側に位置する正極シートの捲回末端部に、他よりも厚みの薄い薄肉部を形成してあることを特徴とする非水電解液電池。 - 上方開口部を有する有底円筒状の外装缶内に、シート状の正極と負極とをセパレータを介して捲回してなる電極捲回体と、非水電解液とを収容してなる円筒形の非水電解液電池であって、
前記電極捲回体は、前記正極の捲回始端部と捲回末端部とで規定される捲回数が1.6周以上、2.5周以下となるように正負極およびセパレータを捲回してなるものであって、全体として略円柱形状に成形されており、
前記正極は、同一の厚み寸法を有する2枚の正極シートと、これら正極シートの間に介在された集電体とを含み、電極捲回体の作成時において、該正極シートと集電体は、捲回始端部のみを固定した状態で捲回されており、
各正極シートは、正極活物質を0.5mm以上、2mm以下の厚み寸法を有するシート状に成形してなるものであり、
前記電極捲回体の最外周において、外周側に位置する正極シートの捲回末端部の外側縁が、面取り形成されていることを特徴とする非水電解液電池。
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