JP4078944B2 - 流体継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原動機の回転トルクを伝達するための流体継手(フルードカップリング)の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体継手(フルードカップリング)は船舶用、産業機械用、自動車用の動力伝達継手として従来から用いられている。流体継手は、環状のポンプシェルと該ポンプシェル内に放射状に配設された複数個のインペラとを有するポンプと、環状のタービンシェルと該タービンシェル内に放射状に配設された複数個のランナとを有し上記ポンプと対向して配設されたタービンとからなっており、ポンプおよびタービン内に作動流体が充填されている。このように構成された流体継手は、ポンプが原動機である例えばディーゼルエンジンのクランクシャフト(流体継手としての入力軸)に連結され、タービンが入力軸と同一軸線上に配置された出力軸に取り付けられる。
また、上記ポンプシェルおよびタービンシェルに、作動流体を整流するための環状のコアリングを設けた流体継手も使用されている。
【0003】
図11は、一般的な流体継手の特性を示すもので、横軸はポンプとタービンとの速度比(e)、縦軸は流体継手の入力容量係数(τ)である。図11から判るように流体継手は、ポンプとタービンとの速度比(e)が零(0)即ちポンプが回転しタービンが停止している状態において、入力容量係数(τ)が最大となる。このような特性を有する流体継手を車両の駆動装置に装備した場合、車両停止状態でエンジンが駆動され変速機の変速ギヤが投入されている状態、即ち入力軸が回転し出力軸が停止している状態では、その特性上ドラッグトルクを有する。ドラッグトルクは、一般的にエンジンがアイドリング回転数(例えば、500rpm)で運転されている状態での伝達トルクをいう。ドラッグトルクが大きいと、エンジンのアイドリング運転が著しく不安定となるとともに、この不安定な回転が駆動系に異常振動を発生させる原因となる。また、ドラッグトルクが大きいことにより、アイドリング運転時の燃費が悪化する原因にもなっている。
【0004】
上述したドラッグトルクを低減するための対策として、ポンプとタービンとの間にバッフルプレートを配設する技術が知られている。
バッフルプレートを配設したドラッグトルク低減対策について、図12および図13を参照して説明する。図12に示す流体継手は、ポンプPとタービンTとの間に出力軸OSに取り付けられた環状のバッフルプレートBPを配設したものである。一方、図13に示す流体継手は、ポンプPの外周部に環状のバッフルプレートBPを配設したものである。
【0005】
図12のおよび図13に示す流体継手は固定のバッフルプレートであるため、ポンプとタービンとの速度比(e)に対する入力容量係数(τ)の特性を変化させる効果はあるが、入力回転数に対してτ特性を変化させることができない。即ち、ドラッグトルク対策を行うためにτ(e=0)を低くすると、アイドリング時のドラッグトルクはバッフルプレートのないものと比較すると低くなるが、発進時の伝達トルク自体も同様に低くなってしまい、エンジン回転数を必要以上に上昇させないと発進できなくなり、燃費の悪化をまねく等の問題がある。一方、発進時の伝達トルクを上げるためにτ(e=0)を高くすると、発進トルクは得られるが、アイドリング時のドラッグトルクが大きくなり、アイドリング時の燃費が悪化するという問題がある。このように、固定のバッフルプレートを用いた流体継手は、アイドリング時のドラッグトルクと燃費がトレードオフの関係にあり、これを解決することができない。
【0006】
また、ドラッグトルクを低減するための対策として、ポンプシシェルのコアリングまたはタービンシェルのコアリングの内周または外周に環状のバッフルプレートを装着した流体継手も提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0007】
【特許文献1】
特開2001−50309号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
流体継手を車両の駆動装置に装備する場合、その特性としては、ドラッグトルクを低減するために所定の入力回転速度(アイドリング回転速度)まではバッフルプレートによる有効邪魔面積が大きいことが望ましく、所定の回転速度を越えたらエンジンの回転速度に対応した伝達トルクを得るためにバッフルプレートによる有効邪魔面積が減少することが望ましい。しかるに、上記特開2001−50309号公報に開示された流体継手においては、バッフルプレートによる有効邪魔面積を回転速度に対応して変化させることができない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その主たる技術的課題は、バッフルプレートによる有効邪魔面積を回転速度に対応して変化することがでできるバッフル機構を備えた流体継手を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するために、ポンプシェルと該ポンプシェル内に配設された複数個のインペラとを有するポンプと、
該ポンプと対向して配設されたタービンシェルと該タービンシェル内に配設された複数個のランナとを有するタービンと、該ポンプシェルと該タービンシェルによって形成される流体循環路内に配設されたバッフル機構と、を具備する流体継手において、
該バッフル機構は、周方向に複数の第1の開口を備え該ポンプまたは該タービンと一体的に構成された環状の第1のバッフルプレートと、周方向に複数の第2の開口を備え該第1のバッフルプレートに対して相対回転可能に重合して配設された環状の第2のバッフルプレートと、該第1のバッフルプレートの回転速度に対応して該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して相対的に回動せしめる遠心力作動手段とを具備しており、
該遠心力作動手段は、該第1のバッフルプレートおよび該第2のバッフルプレートにそれぞれ径方向に形成された第1の長穴および第2の長穴と、該第1の長穴および第2の長穴に挿通して配設された錘部材と、該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して所定方向に回動するように付勢する弾性付勢手段とからなるとともに、該第1の長穴と該第2の長穴の少なくとも一方が中心を通る径方向直線に対して傾斜して形成されており、該第1のバッフルプレートの回転速度が遅いときは該第1の開口と該第2の開口との重合量が小さくなるように該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して位置付け、該第1のバッフルプレートの回転速度が速くなると該第1の開口と該第2の開口との重合量が大きくなるように該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して相対的に回動せしめる、ことを特徴とする流体継手が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従って構成された流体継手の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成された流体継手を自動車用エンジンと摩擦クラッチとの間に配設した駆動装置の一実施形態が示されている。図示の実施形態における駆動装置は、原動機としての内燃機関2と本発明に従って構成された流体継手4および摩擦クラッチ7とによって構成されている。内燃機関2は図示の実施形態においてはディーゼルエンジンからなっており、クランク軸21の端部には流体継手4の後述するポンプ側が取り付けられる。
【0014】
流体継手4は、ディーゼルエンジン2に装着されたハウジング22にボルト23等の締結手段によって取り付けられた流体継手ハウジング40内に配設されている。図示の実施形態における流体継手4は、ポンプ41と該ポンプ41と対向して配設されたタービン42および上記ポンプ41と連結されたケーシング43を具備している。
【0015】
流体継手4を構成するポンプ41は環状のコアリング411を備えた椀状のポンプシェル412と、該ポンプシェル412内に放射状に配設された複数個のインペラ413とを備えており、ポンプシェル412が上記ケーシング43に溶接等の固着手段によって取り付けられている。なお、ケーシング43は、上記クランク軸21にボルト24によって内周部が装着されたドライブプレート44の外周部にボルト441、ナット442等の締結手段によって装着されている。このようにして、ポンプ41のポンプシェル412は、ケーシング43およびドライブプレート44を介してクランク軸21に連結される。従って、クランク軸21は流体継手4の入力軸として機能する。なお、上記ドライブプレート44の外周には、図示しないスタータモータの駆動歯車と噛合する始動用のリングギヤ45が装着されている。
【0016】
上記タービン42は、上記ポンプ41のポンプシェル412と対向して配設され環状のコアリング421を備えた椀状のタービンシェル422と、該タービンシェル422内に放射状に配設された複数個のランナ423とを備えている。タービンシェル421は、上記入力軸としての上記クランク軸21と同一軸線上に配設された出力軸46にスプライン嵌合されたタービンハブ47に溶接等の固着手段によって取り付けられている。
【0017】
図1の実施形態における流体継手4は、ポンプシェル412とタービンシェル422によって形成される流体循環路400内に配設され、回転速度に対応して有効邪魔面積が変化するバッフル機構5を具備している。なお、バッフル機構5については後で詳細に説明する。
【0018】
図示の実施形態における流体継手4は油圧ポンプ60を具備している。この油圧ポンプ60は、上記流体継手ハウジング40に装着された摩擦クラッチ7の後述するクラッチハウジング70にボルト61等の固着手段によって取り付けられたポンプハウジング62に配設されている。この油圧ポンプ60は、上記ポンプ41のポンプシェル412に取り付けられたポンプハブ48によって回転駆動されるように構成されており、図示しない流体経路を介して作動流体を上記ポンプ41およびタービン42内に供給する。なお、ポンプハブ48は上記タービンハブに軸受49によって回転可能に支持されている。
【0019】
次に、上記摩擦クラッチ7について説明する。
摩擦クラッチ7は、上記流体継手ハウジング40にボルト71によって装着されたクラッチハウジング70内に配設されている。図示の実施形態における摩擦クラッチ7は、上記流体継手4の出力軸46に装着されたクラッチドライブプレート72と、出力軸46と同一軸線上に配設された伝動軸73(図示の実施形態においては、図示しない変速機の入力軸)と、該伝動軸73にスプライン嵌合されたクラッチハブ74に取り付けられ外周部にクラッチフェーシング75が装着されているドリブンプレート76と、該ドリブンプレート76をクラッチドライブプレート72に押圧するプレッシャープレート77と、該プレッシャープレート77をクラッチドライブプレート72に向けて付勢するダイアフラムスプリング78と、該ダイアフラムスプリング78の内端部に係合してダイアフラムスプリング78の中間部を支点781として作動するレリーズベアリング79と、該レリーズベアリング79を軸方向に作動せしめるクラッチレリーズフォーク80とを具備している。このように構成された摩擦クラッチ7は、図示の状態においてはダイアフラムスプリング78のばね力によってプレッシャープレート77がクラッチドライブプレート72に向けて押圧されており、従って、ドリブンプレート76に装着されたクラッチフェーシング75がクラッチドライブプレート72に押圧されて流体継手4の出力軸46に伝達された動力がクラッチドライブプレート72およびドリブンプレート76を介して伝動軸73に伝達される。この動力伝達を遮断する場合は、図示しないスレーブシリンダに油圧を供給してクラッチレリーズフォーク80を作動し、レリーズベアリング79を図1において左方に移動すると、ダイアフラムスプリング78が図において2点鎖線で示すように作動せしめられ、プレッシャープレート77への押圧力を解除することにより、クラッチドライブプレート72からドリブンプレート76への動力伝達が遮断される。
【0020】
図示の実施形態における流体継手を装備した駆動装置は以上のように構成されており、以下その作動について説明する。
ディーゼルエンジン2のクランク軸21(入力軸)に発生した駆動力は、ドライブプレート44を介して流体継手4のケーシング43に伝達される。ケーシング43とポンプ41のポンプシェル412は一体的に構成されているので、上記駆動力によってポンプ41が回転せしめられる。ポンプ41が回転するとポンプ41内の作動流体は遠心力によりインペラ413に沿って外周に向かって流れ、矢印で示すようにタービン42側に流入する。タービン42側に流入した作動流体は、内周側に向かって流れ矢印で示すようにポンプ41に戻される。このように、ポンプ41およびタービン42内の作動流体がポンプ41とタービン42内を循環することにより、ポンプ41側の駆動トルクが作動流体を介してタービン42側に伝達される。タービン42側に伝達された駆動力は、タービンシェル421およびタービンハブ47を介して出力軸46に伝達され、更に上記摩擦クラッチ6を介して図示しない変速機に伝達される。
【0021】
次に、上記バッフル機構5の第1の実施形態について、図2乃至図7を参照して説明する。
第1の実施形態におけるバッフル機構5は、ポンプシェル412とタービンシェル422との間に配設された環状の第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52を具備している。第1のバッフルプレート51は、図3に示すように周方向に形成された複数(図示の実施形態においては6個)の第1の開口511と、該各第1の開口511間に形成され中心を通る径方向直線に対して所定の角度傾斜して形成された複数(図示の実施形態においては6個)の第1の長穴512を備えている。このように形成された第1のバッフルプレート51は、その内周がポンプハブ48に嵌合され、その外周部が上記ポンプシェル412のコアリング411とタービンシェル422のコアリング421によって形成される空間内に配置されている。この第1のバッフルプレート51は、ポンプシェル412と適宜の固着手段によって固着されており、ポンプ41と一体的に回転するように構成されている。
【0022】
第2のバッフルプレート52は、図4に示すように上記第1のバッフルプレート51と同様に周方向に形成された複数(図示の実施形態においては6個)の第2の開口521と、該各第2の開口521間に形成され中心を通る径方向直線に対して所定の角度傾斜して形成された複数(図示の実施形態においては6個)の第2の長穴522を備えている。なお、第2の長穴522は、中心を通る径方向直線に対して第1のバッフルプレート51に形成された第2の長穴512と反対方向に所定角度傾斜して形成されている。このように形成された第2のバッフルプレート52は第1のバッフルプレート51のタービン側(図2において左側)に第1のバッフルプレート51と軸方向に重合して配設される。この第2のバッフルプレート52は、その内周がポンプハブ48に嵌合され、その外周部が上記ポンプシェル412のコアリング411とタービンシェル422のコアリング421によって形成される空間内に配置されている。このように第1のバッフルプレート51と軸方向に重合して配設された第2のバッフルプレート52は、第1のバッフルプレート51に対して相対回転可能に構成されている。なお、第2のバッフルプレート52は、ポンプハブ48に装着されたスナップリング481によって図2において左方への軸方向移動が規制されている。
【0023】
上記第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512と第2のバッフルプレート52に形成された第2の長穴522には、該両長穴に沿って移動可能な錘部材53が挿通して配設されている。この錘部材53は、比重の重い金属材によって形成された段付きボルト531とナット532とからなっている。段付きボルト531は上記第1の長穴512および第2の長穴522の幅寸法より大径に形成された頭部531aと、第1の長穴512および第2の長穴522の幅寸法より僅かに小径に形成された大径部531bと、該大径部531bより小径に形成され外周にネジを備えた小径部531cとからなっており、大径部531bの軸方向長さは第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52の厚さを合計した寸法より僅かに長く形成されている。このように形成された段付きボルト531は、第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512と第2のバッフルプレート52に形成された第2の長穴522に挿通し、小径部531cに形成されたネジにナット532を螺合することによって、両長穴に沿って移動可能に配設される。この段付きボルト531とナット532とからなる錘部材53は、ポンプ41と一体的に回転する第1のバッフルプレート51とともに回転し、この回転により遠心力が生ずる。この遠心力の大きさに対応して錘部材53は、第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512と第2のバッフルプレート52に形成された第2の長穴522に沿って内径端位置から外形端に向けて移動する。
【0024】
第1の実施形態におけるバッフル機構5は、上記第2のバッフルプレート52を第1のバッフルプレート51に対して所定方向に回動するように付勢する弾性付勢手段54を具備している。図示の弾性付勢手段54は、図7に示すように第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52の外周部に周方向に所定の間隔をおいて3個配設されている。この弾性付勢手段54は、第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52との間に配設された圧縮コイルバネ541からなっている。即ち、圧縮コイルバネ541は、第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52の互いに対向する位置に外方へ膨出して形成された断面が半円形状のバネ収容部513と523内に配設されている。この圧縮コイルバネ541の一端は第1のバッフルプレート51に形成された係合突起514に嵌合され、圧縮コイルバネ541の他端第2は第2のバッフルプレート52に形成された係合突起524に嵌合されている。従って、第2のバッフルプレート52は圧縮コイルバネ541のバネ力によって図5において矢印で示す方向に回動すべく付勢されている。この結果、第1のバッフルプレート51即ちポンプ41が所定の回転速度に達し、錘部材53に所定の遠心力が作用するまでは、図5に示すように第1のバッフルプレート51に形成された長穴512と第2のバッフルプレート52に形成された長穴522の内径端が重合する位置に位置付けられている。この状態においては、第1のバッフルプレート51に形成された第1の開口511と第2のバッフルプレート5に形成された複数の第2の開口521の重合量が最も小さくなるように、即ちバッフルプレートによる邪魔面積が最も大きくなるように設定されている。従って、図5に示す状態においてはバッフル機構5における作動流体の流路面積が最小となる。
【0025】
一方、第1のバッフルプレート51即ちポンプ41が所定の回転速度以上になり錘部材53に所定以上の遠心力が作用すると、錘部材53は圧縮コイルバネ541のバネ力に抗して第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512に沿って外形端に向けて移動する。この結果、錘部材53が嵌合している第2の長穴522を備えた第2のバッフルプレート5は、図6に示すように圧縮コイルバネ541のバネ力に抗して矢印で示す方向に回動せしめられる。錘部材53に所定以上の遠心力が作用した図6に示す状態においては、第1のバッフルプレート51に形成された第1の開口511と第2のバッフルプレート52に形成された複数の第2の開口521の重合量が最も大きくなるように(図示の実施形態においては両開口が完全に重合するように構成されている)、即ちバッフルプレートによる邪魔面積が最も小さくなるように設定されている。従って、図6に示す状態においてはバッフル機構5における作動流体の流路面積が最大となる。以上のように、第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52に形成された第1の長穴512および第2の長穴522と、錘部材53および弾性付勢手段54は、第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52との間に配設され第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52に作用する遠心力対応して第2のバッフルプレート52を回動せしめる遠心力作動手段として機能する。
【0026】
以上のように第1の実施形態におけるバッフル機構5によれば、ポンプ41の回転速度が所定値(例えば、ディーゼルエンジンのアイドリング回転速度である500rpm)に達するまでは図5に示すようにバッフルプレートによる邪魔面積が最も大きく、バッフル機構5における作動流体の流路面積が最小となるので、第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52に衝突する作動流体の量が増大し作動流体の流速が減衰するため、伝達トルクが減少する。従って、ポンプとタービンとの速度比(e)が零(0)即ちポンプが回転しタービンが停止している状態であるエンジンのアイドリング運転時におけるドラッグトルクを低減することができる。一方、ポンプ41即ち第1のバッフルプレート51の回転速度が所定値より高速になると錘部材53に作用する遠心力が増大するため、図6に示すようにバッフルプレートによる邪魔面積が小さく、バッフル機構5における作動流体の流路面積が大きくなるので、循環する作動流体は第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52による邪魔作用を大きく受けることなくポンプ41に流入するので、エンジンの高速運転時においては伝達効率の低下を招くことがない。
【0027】
図10は上記バッフル機構5を装備した流体継手の特性線図である。図10において横軸はポンプとタービンとの速度比(e)、縦軸は流体継手の入力容量係数(τ)である。図10において、破線はディーゼルエンジンのアイドリング回転速度(例えば、500rpm)時の特性、1点鎖線は発進時のエンジン回転速度(例えば、1000rpm)時の特性、実線はエンジンの最大トルク時(例えば、1500rpm)の特性である。即ち、実施形態におけるバッフル機構5を装備した流体継手は、エンジンの運転状態に対応した特性が得られるので、アイドリング運転時におけるドラッグトルクを低減することができるとともに、運転者の運転感覚に合致した伝達トルクが得られ車両の発進を円滑にすることができる。
【0028】
次に、バッフル機構の第2の実施形態について、図8および図9を参照して説明する。なお、第2の実施形態におけるバッフル機構5aにおいては、上記図1乃至図7の実施形態におけるバッフル機構5の構成部材と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
第2の実施形態におけるバッフル機構5aは、第2のバッフルプレート52を第1のバッフルプレート51に対して所定方向に回動するように付勢する弾性付勢手段54aとして引っ張りコイルバネ541aを用いたものである。この引っ張りコイルバネ541aを配設するために、第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52には、その外周部に3個の切欠部514および524が形成されている。この3個の切欠部514および524にそれぞれ配設された引っ張りコイルバネ541aは、その一端が第1のバッフルプレート51に係止され、その他端が第2のバッフルプレート52に形成されている。従って、第2のバッフルプレート52は引っ張りコイルバネ541aのバネ力によって図8において矢印で示す方向に回動すべく付勢されている。この結果、第1のバッフルプレート51即ちポンプ41が所定の回転速度に達し、錘部材53に所定の遠心力が作用するまでは、図8に示すように第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512と第2のバッフルプレート52に形成された第2の長穴522の内径端が重合する位置に位置付けられている。この状態においては、第1のバッフルプレート51に形成された第1の開口511と第2のバッフルプレート5に形成された複数の第2の開口521の重合量が最も小さくなるように、即ちバッフルプレートによる邪魔面積が最も大きくなるように設定されている。従って、図8に示す状態においてはバッフル機構5における作動流体の流路面積が最小となる。
【0029】
一方、第1のバッフルプレート51即ちポンプ41が所定の回転速度以上になり錘部材53に所定以上の遠心力が作用すると、錘部材53は圧縮コイルバネ541aのバネ力に抗して第1のバッフルプレート51に形成された第1の長穴512に沿って外形端に向けて移動する。この結果、錘部材53が嵌合している長穴522を備えた第2のバッフルプレート5は、図9に示すように引っ張りコイルバネ541aのバネ力に抗して矢印で示す方向に回動せしめられる。錘部材53に所定以上の遠心力が作用した図9に示す状態においては、第1のバッフルプレート51に形成された第1の開口511と第2のバッフルプレート52に形成された複数の第2の開口521の重合量が最も大きくなるように、即ちバッフルプレートによる邪魔面積が最も小さくなるように設定されている。従って、図9に示す状態においてはバッフル機構5における作動流体の流路面積が最大となる。従って、第2の実施形態におけるバッフル機構5aも上述した第1の実施形態におけるバッフル機構5と同様の作用効果を奏する。
【0030】
上述した第1の実施形態および第2の実施形態においては、バッフル機構5および5aを構成する第1のバッフルプレート51をポンプ41と一体的に回転するように構成したが、第1のバッフルプレート51をタービン42と一体的に回転するように構成しても同様の効果を奏する。また、上述した第1の実施形態および第2の実施形態においては、第1のバッフルプレートと51第2のバッフルプレートとの間に配設され第1のバッフルプレート51および第2のバッフルプレート52に作用する遠心力対応して第2のバッフルプレート52を回動せしめる遠心力作動手段を構成する第1のバッフルプレート51と第2のバッフルプレート52に形成された第1の長穴512と第2の長穴522は、中心を通る径方向直線に対して互いに反対方向に所定の角度傾斜して形成した例を示したが、第1の長穴512と第2の長穴522の少なくとも一方が中心を通る径方向直線に対して傾斜して形成されていればよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明による流体継手は以上のように構成されているので、以下に述べる作用効果を奏する。
【0032】
即ち、本発明においては、ポンプシェルとタービンシェルによって形成される流体循環路内に配設されたバッフル機構は、周方向に複数の第1の開口を備えポンプまたはタービンと一体的に構成された環状の第1のバッフルプレートと、周方向に複数の第2の開口を備え第1のバッフルプレートに対して相対回転可能に重合して配設された環状の第2のバッフルプレートと、第1のバッフルプレートの回転速度に対応して第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して相対的に回動せしめる遠心力作動手段とを具備している。そして、遠心力作動手段は、それぞれのバッフルプレートの径方向に、少なくとも一方が中心を通る径方向直線に対して傾斜して形成された第1の長穴および第2の長穴と、これらの長穴に挿通して配設された錘部材と、第2のバッフルプレートを第1のバッフルプレートに対して所定方向に回動するように付勢する弾性付勢手段とから構成されており、この遠心力作動手段が、第1のバッフルプレートの回転速度が遅いときは第1の開口と第2の開口との重合量が小さくなるように第2のバッフルプレートを第1のバッフルプレートに対して位置付け、第1のバッフルプレートの回転速度が速くなると第1の開口と第2の開口との重合量が大きくなるように第2のバッフルプレートを第1のバッフルプレートに対して相対的に回動させる。したがって、本発明によれば、簡便かつ確実な手段によってバッフル機構を作動させ、回転速度に応じた流路面積の調整が可能であって、流体継手の高速回転時における伝達トルクを低下させることなく、ドラッグトルクを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って構成された流体継手を装備した駆動装置の一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明に従って構成された流体継手の実施形態を示す断面図。
【図3】図2に示す流体継手に装備されるバッフル機構の第1の実施形態を構成する第1のバッフルプレートの正面図。
【図4】図2に示す流体継手に装備されるバッフル機構を構成する第2のバッフルプレートの正面図。
【図5】図2に示す流体継手に装備されるバッフル機構の第1の作動状態を示す説明図。
【図6】図2に示す流体継手に装備されるバッフル機構の第2の作動状態を示す説明図。
【図7】図5におけるA−A線断面図。
【図8】本発明に従って構成された流体継手に装備されるバッフル機構の第2の実施形態を示すもので、第1の作動状態を示す説明図。
【図9】本発明に従って構成された流体継手に装備されるバッフル機構の第2の実施形態を示すもので、第2の作動状態を示す説明図。
【図10】本発明に従って構成された流体継手の特性線図。
【図11】従来用いられている流体継手の特性線図。
【図12】従来用いられている流体継手の一例における流体継手内部の作動流体の流れを示す説明図。
【図13】従来用いられている流体継手の他の例における流体継手内部の作動流体の流れを示す説明図。
【符号の説明】
2:内燃機関
21:クランク軸
4:流体継手
40:流体継手ハウジング
41:ポンプ
411:ポンプのコアリング
412:ポンプシェル
413:インペラ
5:
42:タービン
421:タービンのコアリング
422:タービンシェル
423:ランナ
43:ケーシング
44:ドライブプレート
45:リングギヤ
46:出力軸
47:タービンハブ
48:ポンプハブ
5:バッフル機構
51:第1のバッフルプレート
511:第1の開口
512:第1の長穴
52:第2のバッフルプレート
521:第2の開口
522:第2の長穴
53:錘部材
54:弾性付勢手段
541:圧縮コイルバネ
54a:弾性付勢手段
541a:引っ張りコイルバネ
60:油圧ポンプ
62:ポンプハウジング
7:摩擦クラッチ
70:クラッチハウジング
72:クラッチドライブプレート
73:伝動軸
74:クラッチハブ
75:クラッチフェーシング
76:ドリブンプレート
77:プレッシャープレート
78:ダイアフラムスプリング
79:レリーズベアリング
80:クラッチレリーズフォーク
Claims (1)
- ポンプシェルと該ポンプシェル内に配設された複数個のインペラとを有するポンプと、
該ポンプと対向して配設されたタービンシェルと該タービンシェル内に配設された複数個のランナとを有するタービンと、該ポンプシェルと該タービンシェルによって形成される流体循環路内に配設されたバッフル機構と、を具備する流体継手において、
該バッフル機構は、周方向に複数の第1の開口を備え該ポンプまたは該タービンと一体的に構成された環状の第1のバッフルプレートと、周方向に複数の第2の開口を備え該第1のバッフルプレートに対して相対回転可能に重合して配設された環状の第2のバッフルプレートと、該第1のバッフルプレートの回転速度に対応して該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して相対的に回動せしめる遠心力作動手段とを具備しており、
該遠心力作動手段は、該第1のバッフルプレートおよび該第2のバッフルプレートにそれぞれ径方向に形成された第1の長穴および第2の長穴と、該第1の長穴および第2の長穴に挿通して配設された錘部材と、該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して所定方向に回動するように付勢する弾性付勢手段とからなるとともに、該第1の長穴と該第2の長穴の少なくとも一方が中心を通る径方向直線に対して傾斜して形成されており、該第1のバッフルプレートの回転速度が遅いときは該第1の開口と該第2の開口との重合量が小さくなるように該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して位置付け、該第1のバッフルプレートの回転速度が速くなると該第1の開口と該第2の開口との重合量が大きくなるように該第2のバッフルプレートを該第1のバッフルプレートに対して相対的に回動せしめる、ことを特徴とする流体継手。
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