JP4078500B2 - ソフトな中間水分食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、藻類、野菜または茸類を原料としたソフトな食感の中間水分食品、特にはふりかけの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乾燥原料に水分を加えて中間水分食品に加工する場合、水に浸漬するかまたはボイルして一旦目的の水分以上に吸水させ、十分に膨潤した状態に水戻しした後に、熱風乾燥などの長時間の乾燥を行って目的の水分にまで低下させる方法(以降、水戻し乾燥方法)が一般に行われている。これは、目的の水分にするために必要な量だけの水を加えて乾燥原料を水戻し加工した場合、膨潤が不十分で縮れた外観を示し、芯が残ったり、食感が締まった硬いものとなってしまったりするためである。また、水の代わりに糖液や調味液を加えた場合は、さらにその傾向が強くなってしまう。従って、特にソフトな食感が重要となるウエットタイプのふりかけの製造では、水戻し乾燥方法が必須となっている。
【0003】
水戻し乾燥方法における調味は、乾燥した後に必要な調味料を添加混合している。この際、調味料の水分が加わったり、逆に調味料が水分を吸収したりするため、前工程の乾燥工程において乾燥度合いが適宜調整され、最終製品の水分や水分活性が設計されている。また、中間水分状態の食品には、調味料が急速に浸透しないため、数日という長時間をかけて調味料の浸透と均一化、いわゆる熟成を行っている。
【0004】
一方、糖置換を用いた中間水分食品としては、糖果および甘納豆があげられる。糖果はリンゴ、モモ、パイナップルといった果実を、低濃度の糖液で加熱した後1〜2日間漬け込み、その糖液のみを煮詰め、必要に応じて加糖して糖度を5〜10%高め、果実をもどしてさらに漬け込み、糖度が70〜75%になるまでこの操作を繰り返す方法で、長時間をかけて果実の風味が濃縮された糖を浸透させ、同時に水分を除く方法で製造されている。このようなバッチ式の他に、糖液を循環させ連続的に糖度をあげていく方法も行われている。甘納豆は、小豆、隠元豆、空豆などを水に浸漬して水戻しした後に、低濃度の糖液で煮、その糖液のみを煮詰めて糖度を少し高めたものに豆を戻してさらに煮る操作を繰り返し、徐々に糖度を高め、長時間をかけて豆の風味が濃縮された糖を浸透させ、同時に水分を除き、最後に砂糖を付着させる方法で製造されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
水戻し乾燥法では、水戻しされた原料を目的の水分にまで除水するために乾燥が必要である。乾燥に先立って、遠心式脱水や圧搾式脱水などによって水切りされるが、品質を妨げないためには完全に除水することはできず、多量の水分が残ったままである。加えて、高温での急激な乾燥は製品の低質化を招くため、長時間をかけた低温での乾燥が行われている。一般には熱風乾燥が行われているが、処理時間が長く乾燥コストが高いこと、大型の装置が必要なこと、腐敗の進行や乾燥の不均一などといった問題点がある。
【0006】
水戻し乾燥法における調味は、乾燥後に調味料を加える方法が採用されている。これは乾燥前の水分の多い状態で調味料を加えると水の分離が起こり、取り扱いが困難なために、水の分離が起こりにくい乾燥後の状態で調味する方法が必然的に採用されているためである。しかし、この方法は調味料が製品全体に浸透して均一化するまでに長時間の熟成期間が必要となる問題点がある。
【0007】
本発明は、ソフトな食感の中間水分食品を製造するにするにあたり、簡便に短時間で水分と水分活性を調整し、同時に調味を均一化させる製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のソフトな中間水分食品の製造方法は、乾燥藻類、乾燥野菜及び乾燥茸類からなる原料を、水戻しする第1工程、糖類を加えて水を短時間で常温分離させる第2工程、分離した水を取り除く第3工程からなる中間水分食品の製造方法であって、前記第2工程及び第3工程を交互に繰り返すことによって水分を取り除き、簡便に短時間で水分と水分活性を調整し、同時に調味を均一化させ、好ましい食感の中間水分食品を製造することを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において中間水分食品とは、水分含量が20〜60%で、水分活性が0.7〜0.9の範囲にあり、十分な可塑性があって水を加えなくても食べることができる食品を指す。
【0010】
本発明の対象となる乾燥藻類は、特に限定されるものではないが、ひじき、こんぶ、わかめ、とさかのりなどの可食部が厚みのあるものの乾燥品が適している。また、同様に乾燥野菜は、キャベツ、白菜、きゅうり、ごぼう、だいこん、たかな、たまねぎ、なす、ニンジン、ピーマン、ふき、ほうれんそう、もやしなどの可食部が厚みのあるものの乾燥品が適している。また、同様に乾燥きのこ類は、きくらげ、しいたけ、しめじ、なめこ、ひらたけ、まいたけ、マッシュルーム、まつたけなどの可食部が厚みがあり組織のしっかりしたものの乾燥品が適している。また、何れも、乾燥方法が特に限定されるものではないが、水戻しが容易で、水戻し後の外観や色がしっかりしているものが最終製品の品質を高めるために好ましい。また本発明の対象となる糖類は、しょ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、オリゴ糖、水飴、ハチミツ、メープルシュガー、糖アルコール、還元糖、転化糖、異性化糖、またはこれらが混合された形態などの食用の糖類があげられる。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、乾燥藻類、乾燥野菜および乾燥茸類からなる乾燥原料は、流水で洗浄した後、水か低温のお湯に浸漬し、十分に吸水させる。吸水は、最大吸水量まで吸水させてもよいし、原料の全体が膨潤し軟らかくなる範囲で、吸水させる時間や浸漬に使用する水の量を調整して吸水量を制限してもよい。高温のお湯に浸漬するかボイルすることで給水時間を短縮させることも可能であるが、原料によっては食感が脆弱化したり中心部まで水戻しできなかったりするため好ましくない。
【0012】
十分に吸水した原料は、水切りを行う。水切りは、ザルなどを用いた静置による簡便な水切りを選択することが望ましい。遠心式脱水器や圧搾式脱水器などを使って機械的な水切りを行うことも可能であるが、操作が煩雑で簡便性を損なうことになるし、過度の機械的な水切り処理は原料の形状や食感を劣化させるため、好ましくない。
【0013】
水切りした原料は、必要に応じて細断する。粒径が細かくなりすぎると、ソフトな食感が得られないし、保水性が高くなって次工程の離水させる操作が困難となるため、好ましくない。原料の細断は、水戻しする前に行ってもよい。
【0014】
水切りした原料は、糖類を加えて水分を調整する。加えた糖類は、等張液となるまで水切りした原料に含まれていた水分と置換され、水分と糖類が混合した糖液(以降、分離糖液)が、分離する。本発明において使用する原料は、一旦乾燥されたものであるため、その後に吸水させた水分は本方法によって容易に短時間で分離する。加えた糖類の濃度が高いほど、加えた糖類の量が多いほど分離糖液の濃度が高く、同時に処理された原料の糖濃度も高くなる。加える糖類の濃度と量を調整することで、目的の水分に調整することが可能である。
【0015】
分離糖液は取り除く。取り除く方法は、前述の水切りと同様の方法で行うことが可能であり、ザルなどを用いた静置による簡便な水切りを選択することが望ましい。
【0016】
分離糖液を取り除いた後に、更に糖類を加えて分離糖液を取り除き、処理された原料の糖濃度を高める操作を繰り返す。理論的には、同じ総量の糖類を使った場合でも、一度に加える糖類の量を少なくし、多回数で処理した方が処理された原料の最終的な糖濃度は高くすることができる。しかし、操作の煩雑性などから、2〜3回の処理で終了させることが望ましい。
【0017】
加える糖類の形態は特に限定されるものではなく、粉糖でも液糖でもかまわない。また、粉糖を水に溶解したものでもかまわない。本発明においては分離糖液は取り除くため、安価で濃度の高いもの、また加えた糖類は最終製品の調味の役割も担うため、異味や異臭、着色などの無いものが好ましく、水飴が最も好ましい。加える糖類は調味して使用することが可能である。加える糖類を調味するとは、糖類と調味料を予め混合して使用する形態でも、糖類と調味料を同時又は交互に使用する形態でも良い。本発明においては分離糖液は取り除くため、安価な食塩や化学調味料を用いて調味することが望ましい。調味した糖類は、水分を調整する過程で原料の内部にまで急速に浸透するため、均一な調味を短時間で終えることが可能である。また、糖類の調味が例えば食塩のみであっても、甘味と塩味の基礎調味を施すことができる。
【0018】
加える糖類を調味する食塩の濃度を調整することで、水分を調整すると同時に水分活性を調整することが可能である。水分活性を低下させる効果は、同じ濃度であれば糖類よりも食塩の方が高いため、糖類に食塩を加えることで効率的に水分活性を低下させることが可能である。
【0019】
以上の操作で目的の水分と水分活性まで調整を行うことで、本発明の中間水分食品が得られる。得られた中間水分食品は、必要に応じて更に調味することが可能である。使用する調味料は、風味原料や香辛料といった最終製品を特徴づけるシーズニング類で、粉末のものが好ましい。また、製品の品質設計によってドライ感が求められる場合は、乾燥を行うことも可能である。本発明の中間水分食品は水分含量が少ないため、短時間の乾燥で水分の除去量がわずかでも十分な効果が得られる。
【0020】
本発明の方法で得られた中間水分食品は、ソフトな食感で、糖分や調味料が均一に浸透しているために味も良く、そのままでふりかけとしても優れたものである。また、製造が簡便で短時間に大量の製品を得ることが可能である。
【0021】
【実施例1】
熱風乾燥した芽ヒジキ1.0kgを十分量の水で水戻しし、ザルで水切りして、水戻しヒジキ9.0kgを得た。水戻しヒジキに糖度75の水飴5.0kgを加えて混合した後しばらく静置し、ザルを用いて分離糖液約6.0kgを取り除いた。更に糖度75の水飴2.0kgと食塩0.5kgを混合した調味した糖を加えて混合した後しばらく放置し、ザルを用いて分離糖液約3.4kgを取り除いて、ヒジキの中間水分食品約7.0kgを得た。得られたヒジキの中間水分食品の水分は47%、水分活性は0.88であった。
【0023】
【実施例2】
遠赤外線乾燥されたスライスピーマン1.0kgを十分量の水で水戻しし、ザルで水切りして、水戻しピーマン8.0kgを得た。水戻しピーマンに糖度75の水飴2.5kgを加えて混合した後しばらく静置し、ザルを用いて分離糖液約2.5kgを取り除いた。更に糖度75の水飴2.5kgと食塩0.5kgを混合した調味した糖を加えて混合した後しばらく放置し、ザルを用いて分離糖液約3.0kgを取り除いて、ピーマンの中間水分食品約8.0kgを得た。得られたピーマンの中間水分食品の水分は51%、水分活性は0.89であった。
【0025】
【実施例3】
天日乾燥した椎茸1.0kgを十分量の水で水戻しし、ザルで水切りして、水戻し椎茸6.0kgを得た。水戻し椎茸をフードカッターで粒径5mm程度に細断し、糖度75の水飴2.0kgを加えて混合した後しばらく静置し、ザルを用いて分離糖液約2.0kgを取り除いた。更に糖度75の水飴2.0kgと食塩0.5kgを混合した調味した糖を加えて混合した後しばらく放置し、ザルを用いて分離糖液約2.5kgを取り除いた。更に糖度75の水飴2.0kgと食塩0.5kgおよびグルタミン酸ナトリウム0.1kgを混合した調味した糖を加えて混合した後しばらく放置し、ザルを用いて分離糖液約2.0kgを取り除いて、椎茸の中間水分食品約6.0kgを得た。得られた中間水分食品の水分は28%、水分活性は0.79であった。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、ソフトな食感の中間水分食品を製造するにあたり、一旦水戻しすることで糖類を容易に浸透させることができる乾燥藻類、乾燥野菜または乾燥茸類からなる乾燥原料を選定し、かつ、水戻しした原料に高濃度の糖類を加えて急速に糖置換せしめて水を分離させ、分離した水を取り除くことで、短時間に糖類を均一に含浸さて水分と水分活性を調整する方法を用いた優れた製造方法である。
【0028】
本発明の方法に従って製造した中間水分食品は、糖類が全体に均一に高濃度に浸透しているため、しっとりとしており、ソフトな食感である。また、一旦水戻しした原料を使用するため、外観もふっくらとしていてボリューム感があり、ふりかけとして製造した場合も品質の優れた製品が得られる。組織構造においても、水戻し乾燥法で作られたものに比べて本発明の方法によるものは、組織の粗密が少なく均一性の高いものである。
【0029】
加えて、本発明の方法は長時間の乾燥や熟成期間が不用なため、短時間に製造を終えるることができるし、その方法も簡便であることから製造設備の要求が少なく、製造コストを低くする効果がある。
Claims (1)
- 乾燥藻類、乾燥野菜及び乾燥茸類からなる原料を、水戻しする第1工程、糖類を加えて水を短時間で常温分離させる第2工程、分離した水を取り除く第3工程からなる中間水分食品の製造方法であって、前記第2工程及び第3工程を交互に繰り返すことによって水分を取り除くことを特徴とする中間水分食品の製造方法。
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