JP4075511B2 - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2001−12334号公報には、燃料噴射装置において、放射状に形成された各噴孔入口の上流部に重複するように環状溝を形成し、弁体のリフト量を小さくすることによって燃料が主に環状溝を介して噴孔へ流入するようにし、それにより、環状溝において燃料を旋回流として各噴孔に導き、旋回流となった燃料を噴射することにより、燃料を中空円錐状に噴射することが提案されている。
【0003】
中空円錐状に噴射された燃料は微粒化が促進されるが、その一方で、貫徹力が弱くなる。それにより、燃料の貫徹力を高めるためには、弁体のリフト量を大きくして燃料が直接的にも噴孔へ流入するようにし、燃料を旋回流とすることなく柱状に噴射するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の燃料噴射装置において、噴孔は、燃料を中空円錐状に噴射するために、環状溝で旋回させた燃料を良好に通過させなければならず、噴孔径は比較的大きなものとなる。それにより、燃料を直接的に噴孔へ流入させて燃料を柱状に噴射しても、燃料の貫徹力をそれほど高めることはできない。こうして、機関高負荷時にように多量の吸気が気筒内へ供給されて圧縮行程末期の筒内圧力が高い時には、それほど高くない貫徹力によって意図ように燃料を噴射することはできず、この時の燃焼が悪化してしまう。
【0005】
従って、本発明の目的は、機関低負荷時には燃料を中空円錐状に噴射し、機関高負荷時には貫徹力を十分に強くして燃料を柱状に噴射することができる内燃機関の燃料噴射装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置は、燃料を旋回させることなく噴射するための第一噴孔と、燃料を旋回させて噴射するための第二噴孔とを具備し、前記第一噴孔は前記第二噴孔より燃料噴射装置の先端側に位置し、機関低負荷時には前記第二噴孔だけを使用して燃料噴射を実施し、機関高負荷時には前記第一噴孔だけを使用して燃料噴射を実施することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射装置は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置において、前記機関低負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射も前記第二噴孔だけを使用して実施され、前記機関高負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射も前記第一噴孔だけを使用して実施されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による請求項に記載の内燃機関の燃料噴射装置は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置において、前記機関高負荷時と前記機関低負荷時との間には機関中負荷時が存在し、前記機関中負荷時には前記第一噴孔だけ又は前記第一噴孔と前記第二噴孔との両方を使用して燃料噴射を実施することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による請求項に記載の内燃機関の燃料噴射装置は、請求項に記載の内燃機関の燃料噴射装置において、前記機関中負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射は前記第二噴孔だけを使用して実施されることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による燃料噴射装置の噴孔近傍を示す概略断面図である。1は燃料噴射装置本体である。燃料噴射装置本体1内の噴孔近傍における空間は、分離壁2によって半径方向に内側空間と外側空間とに分割されている。内側空間には第一弁体3が挿入されており、外側空間には、分離壁2に対して摺動するように中空の第二弁体4が挿入されている。
【0012】
内側空間において、燃料噴射装置本体1の第一弁体3に対する第一シート部1aより内側には、燃料噴射装置本体1の中心軸線に対して放射状に複数の第一噴孔5が形成されている。また、外側空間において、燃料噴射装置本体1の第二弁体4に対する第二シート部1bより内側には、燃料噴射装置本体1の中心軸線対して放射状に複数の第二噴孔6が形成されている。
【0013】
内側空間及び外側空間には高圧の燃料が供給されており、第一弁体3が開弁して第一シート部1aが開放されれば、第一噴孔5によって燃料が噴射され、また、第二弁体4が開弁して第二シート部1bが開放されれば、第二噴孔6によって燃料が噴射される。こうして、本燃料噴射装置によれば、第一噴孔5及び第二噴孔6のいずれによっても燃料を噴射することが可能である。
【0014】
図2は第二噴孔6近傍の拡大断面図であり、図3は第二噴孔6を燃料噴射装置の内側から見た正面図である。図2及び図3に示すように、第二噴孔6が形成された燃料噴射装置本体1の内壁には、各第二噴孔6に対して偏心して燃料導き溝7が形成されている。この燃料導き溝は、例えば、V字形又はU字形断面の切歯を燃料噴射装置本体の軸線に対して平行に移動させて切削加工される。
【0015】
第二弁体4は、図2に示すように、開弁に際して僅かしかリフトせず、燃料噴射装置本体1の内壁に対して僅かな隙間しか形成されない。それにより、第二弁体4の開弁時において、外側空間内の高圧燃料は、この僅かな隙間から直接的に第二噴孔6へは流入し難く、先ずは燃料導き溝7へ流入し、その後に第二噴孔6へ流入する。こうして、燃料は、周囲部から第二噴孔6へ流入するために、図2及び図3に点線で示すように、第二噴孔6内を旋回して噴射され、中空円錐状の燃料噴霧となる。このように中空円錐状に燃料を噴射することにより、噴射燃料は容易に微粒化される。
【0016】
これに対して、第一噴孔5には、燃料導き溝のような加工はされておらず、また、第一弁体3の開弁に際してのリフト量は比較的大きくされる。それにより、第一弁体3の開弁時において、内側空間内の高圧燃料は、直接的に第一噴孔5へ流入して柱状に噴射される。第一噴孔5は、第二噴孔6のように旋回する燃料を通過させる必要がないために、燃料の旋回を妨げないように噴孔径を大きくしなくても良く、噴孔径を比較的小さくして柱状として噴射される燃料の貫徹力を十分に高めることができる。
【0017】
図4は、機関回転数Nと機関負荷Lとによって定まる九つの機関運転領域を示している。九つの運転領域において、Aは低回転低負荷領域であり、Bは中回転低負荷領域であり、Cは高回転低負荷領域であり、Dは低回転中負荷領域であり、Eは中回転中負荷領域であり、Fは高回転中負荷領域であり、Gは低回転高負荷領域であり、Hは中回転高負荷領域であり、Iは高回転高負荷領域である。
【0018】
本燃料噴射装置は、例えば、ディーゼルエンジンに使用され、気筒上部略中心からピストン頂面に形成されたキャビティ内へ複数の噴孔から燃料を放射状に噴射する。前述の九つの運転領域における領域A及びBにおいては、第二弁体4だけをリフトさせて各第二噴孔6によって燃料を中空円錐状に噴射する。この時には、燃料噴射量が比較的少なく、キャビティ内に広範囲に燃料を分散させると、良好に着火燃焼しない。それにより、貫徹力を低くして燃料をあまり分散させないようにすると共に、中空円錐状の噴霧によって燃料の微粒化を促進することにより、燃料を良好に着火燃焼させることができる。
【0019】
また、その他の領域C、D、E、F、G、H、及びIにおいては、燃料噴射量が比較的多くなるために、キャビティ内に広範囲に燃料を分散させた方が空気利用率が高まって燃焼を良好なものとすることができる。それにより、第一弁体3だけをリフトさせて各第一噴孔5によって燃料を柱状に噴射する。本燃料噴射装置においては、前述したように、第一噴孔5は、旋回する燃料を通過させる必要がないために、貫徹力を十分に高めるように噴孔径が設定されている。こうして、第一噴孔5によれば貫徹力の高い柱状の燃料噴射が可能であり、吸気量が多くて燃料噴射時期である圧縮行程末期の気筒内圧力が非常に高くても、噴射燃料をキャビティの広範囲に分散させることができると共に、噴射燃料は、高い貫徹力によって吸気との間で大きな摩擦力が発生し、この摩擦力によって十分に微粒化されるために、良好な燃焼を実現することができる。
【0020】
ところで、噴射された燃料が、一度に着火燃焼すると大きな騒音が発生するために、パイロット燃料噴射として、必要量の燃料を分割して先に噴射することが公知である。前述した各運転領域において、このようなパイロット燃料噴射が実施される場合には、領域A及びBでは、パイロット燃料噴射も前述した主燃料噴射と同様に、第二噴孔6を使用して燃料を中空円錐状に噴射する。この時には、パイロット燃料噴射及び主燃料噴射を合わせた必要量の燃料はそれほど多くはなく、確実な着火燃焼を実現するためには、パイロット噴射燃料と主噴射燃料とを互いに分散させないようにしなければならず、それにより、パイロット燃料噴射も主燃料噴射に合わせて貫徹力の低い中空円錐状に噴射されるようになっている。
【0021】
また、領域C、D、E、及びFでは、パイロット燃料噴射は、前述した主燃料噴射とは異なり、第二噴孔6を使用して燃料を中空円錐状に噴射する。この時には、必要量の燃料が増大するために、キャビティ内に広範囲に燃料を分散させて空気利用率を高めることが好ましく、それにより、パイロット燃料噴射は、貫徹力の低い中空円錐状として燃料を噴射し、キャビティ内の燃料噴射装置近傍に良好に微粒化した燃料を位置させ、その後の主燃料噴射では、貫徹力の高い柱状として燃料を噴射し、燃料噴射装置から離間するキャビティ内の周囲近傍に吸気との大きな摩擦力により良好に微粒化した燃料を位置させて、燃料をキャビティ内に広範囲に分散させるようにしている。
【0022】
また、領域G、H、及びIでは、パイロット燃料噴射も、前述した主燃料噴射と同様に、第一噴孔5を使用して燃料を柱状に噴射する。この時には、多量の吸気が気筒内へ供給されるために、燃料噴射時における筒内圧力が非常に高く、パイロット燃料噴射を貫徹力の低い中空円錐状として燃料を噴射すると、燃料は燃料噴射装置の極近傍に集中してしまう。また、この時には、パイロット噴射燃料と主噴射燃料とを合わせた必要量の燃料が多く、パイロット噴射燃料量も比較的多くなる。それにより、本燃料噴射装置では、パイロット噴射燃料も貫徹力の高い柱状に噴射され、飛行中における吸気との大きな摩擦力によって微粒化された燃料をキャビティの周囲壁に衝突させて跳ね返してキャビティの中央部に位置させ、その後、主噴射燃料も同様に貫徹力の高い柱状に噴射され、吸気との摩擦力によって微粒化させた燃料を、キャビティの周囲壁に衝突させた前後において、キャビティの周囲壁近傍に位置させることができる。こうして、多量の燃料をキャビティ内に広範囲に分散させることができ、空気利用率の高い良好な燃焼が実現可能となる。
【0023】
高回転高負荷領域Iにおいては、多量の必要燃料を、高回転に伴う短時間で噴射しなければならず、パイロット燃料噴射と主燃料噴射との間に時間間隔を設けることが困難である場合には、パイロット燃料噴射を実施しないようにしても良い。
【0024】
本燃料噴射装置において、第一噴孔5によって燃料を貫徹力の高い柱状で噴射する際には、同時に第二噴孔6によって燃料を噴射しても良い。パイロット燃料噴射又は主燃料噴射において、燃料を柱状に噴射する時には、噴射燃料量は比較的多く、第一噴孔5に加えて第二噴孔6により燃料が噴射されることにより、短時間でパイロット燃料噴射又は主燃料噴射における必要量の燃料を噴射することができ、それにより、例えば、高回転高負荷領域Iにおいてもパイロット燃料噴射を確実に実施することができる。この第二噴孔6による燃料噴射は、第二弁体4のリフト量を小さくして中空円錐状に燃料を噴射しても、第二弁体4のリフト量を大きくして燃料導き溝7を介することなく直接的に第二噴孔6へ燃料が流入するようにして燃料を柱状に噴射するようにしても良い。
【0025】
このように、本燃料噴射装置では、第一噴孔5を使用する柱状の燃料噴射と、第二噴孔6を使用する中空円錐状の燃料噴射とがそれぞれに実施可能としたが、これは本発明を限定するものではなく、少なくとも第二噴孔6を使用する中空円錐状の燃料噴射だけを独立に実施可能であれば良い。例えば、一つの弁体しか有しておらず、この弁体を小さくリフトさせることにより、本燃料噴射装置の第一噴孔5に対応する柱状燃料噴射噴孔は依然として閉鎖されているが、本燃料噴射装置の第二噴孔6に対応する円錐状燃料噴射噴孔は開放されて燃料が中空円錐状に噴射され、弁体をさらにリフトさせることにより、円錐状燃料噴射噴孔と共に柱状燃料噴射噴孔も開放され、燃料が円錐状燃料噴射噴孔に加えて柱状燃料噴射噴孔によって貫徹力の高い柱状に噴射されるような燃料噴射装置を本発明に適用することも可能である。この燃料噴射装置において、円錐状燃料噴射噴孔が、第二噴孔6と同様な燃料導き溝7を有するものである場合には、弁体を大きくリフトさせて柱状燃料噴射噴孔によって燃料を噴射する時には、円錐状燃料噴射噴孔によっても燃料は柱状に噴射されることとなる。
【0026】
このような燃料噴射装置を使用する場合には、前述した実施形態において、第一噴孔5によって燃料を柱状に噴射する時には、弁体を大きくリフトさせて、円錐状燃料噴射噴孔による燃料噴射に加えて柱状燃料噴射噴孔によって燃料を貫徹力の高い柱状に噴射することとなる。このような燃料噴射に際して、弁体を大きくリフトさせる途中において弁体が小さくリフトされた時には、円錐状燃料噴射噴孔から燃料が中空円錐状に噴射され、その後に、弁体が大きくリフトされて柱状燃料噴射噴孔から燃料が柱状に噴射されることとなる。
【0027】
前述したように、燃料を貫徹力の高い柱状に噴射するのは、パイロット燃料噴射及び主燃料噴射においても、燃料をキャビティ内の全体に広範囲に分布させるためである。こうして、燃料噴射の当初において貫徹力の低い中空円錐状に燃料が噴射されれば、この燃料は燃料噴射装置の近傍に位置し、また、その後の噴射燃料が高い貫徹力によってキャビティの周囲部へ位置することとなり、燃料をキャビティ内全体に分布させるのに有利となる。
【0028】
【発明の効果】
このように、本発明による内燃機関の燃料噴射装置によれば、燃料を旋回させることなく噴射するための第一噴孔と、燃料を旋回させて噴射するための第二噴孔とを具備し、第一噴孔は第二噴孔より燃料噴射装置の先端側に位置し、機関低負荷時には第二噴孔だけを使用して燃料噴射を実施し、機関高負荷時には第一噴孔だけを使用して燃料噴射を実施するようになっている。それにより、機関低負荷時には第二噴孔だけを使用して燃料を中空円錐状に噴射することができると共に、機関高負荷時には第二噴孔とは別に設けられた第一噴孔だけが使用され、第一噴孔により貫徹力を十分に高くして燃料を柱状に噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料噴射装置の噴孔近傍における概略断面図である。
【図2】図1の第二噴孔近傍における拡大断面図である。
【図3】第二噴孔の燃料噴射装置の内側から見た正面図である。
【図4】機関回転数と機関負荷とによって定まる九つの運転領域を示すマップである。
【符号の説明】
1…燃料噴射装置本体
3…第一弁体
4…第二弁体
5…第一噴孔
6…第二噴孔
7…燃料導き溝

Claims (4)

  1. 燃料を旋回させることなく噴射するための第一噴孔と、燃料を旋回させて噴射するための第二噴孔とを具備し、前記第一噴孔は前記第二噴孔より燃料噴射装置の先端側に位置し、機関低負荷時には前記第二噴孔だけを使用して燃料噴射を実施し、機関高負荷時には前記第一噴孔だけを使用して燃料噴射を実施することを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
  2. 前記機関低負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射も前記第二噴孔だけを使用して実施され、前記機関高負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射も前記第一噴孔だけを使用して実施されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記機関高負荷時と前記機関低負荷時との間には機関中負荷時が存在し、前記機関中負荷時には前記第一噴孔だけ又は前記第一噴孔と前記第二噴孔との両方を使用して燃料噴射を実施することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
  4. 前記機関中負荷時には前記燃料噴射に先だってパイロット燃料噴射が実施され、前記パイロット燃料噴射は前記第二噴孔だけを使用して実施されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
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