JP4075216B2 - 正帯電性トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機やプリンターなどに用いられる静電荷像現像用の正帯電性トナー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電荷像現像用正帯電性トナーの製法としては、結着樹脂に着色剤、帯電制御剤、ワックス等を加えて溶融混練し、粉砕、分級する、いわゆる粉砕法が従来から行われている。一方、複写機やプリンターに対する近年の画像品質の向上要求をトナーサイドから達成するにはトナーの小粒径化が必要であるが、粉砕法では生産性や性能などの点から小粒径化に制約がある。即ち、粉砕法で小粒径トナーを生産するにはエネルギーコストの増大や収率の低下が起こり、また小粒径化に伴って粉体流動性が低下したり帯電性制御が難しくなる、という物性上の問題が生じる。
【0003】
そのようなことから、正帯電性トナーの湿式製法が検討され、例えば、着色剤、帯電制御剤、ワックス等を分散させた重合性単量体を液媒体中で重合させてトナー粒子を製造する、いわゆる重合法や、特開平5−265247号公報に記載されているような、第3級アミノ基含有樹脂を結着樹脂成分とし、該樹脂を中和することで親水性をあげ、水性媒体中に転相乳化することでトナー粒子を製造する、いわゆる転相乳化法などが知られている。このような湿式製法では、小粒径トナー粒子を作ること自体には問題ないが、重合法では、添加した帯電制御剤の大部分はトナー粒子内部に内包されてしまい、粒子表面に一部の帯電制御剤が不均一に露出するなどするために安定した帯電性を得ることが難しいという問題があり、また前記転相乳化法では、トナーの正帯電性は確保されるが、多量に含有されているアミノ基に起因する臭気の発生が避けられないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平10−293427では、このような問題点を改善すべく、少量の正帯電性帯電制御剤を含有する塩基性基含有樹脂を、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子の表面に均一に固着した正帯電性トナー及びその製造方法が開示されている。しかしながら、このようにして得られたトナーの帯電立ち上がり性や帯電の経時安定性は必ずしも十分満足できるレベルではなかった。
【0005】
本発明では、帯電の立ち上がり性や帯電の経時安定性に優れ、過解像性や階調性などの画像品質に優れる小粒径の正帯電性トナーおよびその製造法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述した如き発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意検討を重ねた結果、トナー粒子構造として、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子の表面に、カーボンブラックを必須成分として含有する塩基性基含有樹脂が固着されたトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子が外添された正帯電性トナーが、上記した課題を解決することを見い出した。
【0007】
特に、転相乳化法で得られる負帯電性樹脂粒子表面に、カーボンブラックを必須成分(カーボンブラック、あるいはカーボンブラックと正帯電性帯電制御剤)として含有する塩基性基含有樹脂を固着したトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子を外添したトナーが、帯電特性に優れた正帯電性トナーとなることを見出した。
【0008】
そして、その様な粒子構造の正帯電性トナーを得る方法の一例として、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)に、中和により自己水分散性/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックとを必須成分とする混合物を転相乳化して得られる、粒径が樹脂粒子(I)よりも小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)を加えて、樹脂粒子(I)の表面にカーボンブラックを必須成分として含有した塩基性基含有樹脂を固着させて得られるトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子を外添する方法が効果的であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、次の発明を提供するものである。
着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、カーボンブラックを必須成分として含有した塩基性基含有樹脂が固着されたトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子が外添された正帯電性トナー(以下、第1発明という)。
【0010】
着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)と、中和により自己水分散性/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックを必須とする混合物を、中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)を、均一に混合して、前記中和剤と逆の極性の中和剤で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去し乾燥させる、トナー粒子表面に、カーボンブラックを必須成分として含有した塩基性基含有樹脂が固着された、正帯電性トナーの製造方法(以下、第2発明という)。
【0011】
そして上記第2発明は、好適には、次の方法で行われる。
すなわち、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂と着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に、水性媒体中に転相乳化して得られた、着色剤が内包された、球形の樹脂粒子(I)を用いることを特徴とする、正帯電性トナーの製造方法(以下、第3発明という)。
【0012】
あるいは、着色剤の分散した重合性モノマーを、液媒体中で重合させて得られる着色剤と結着樹脂を必須成分とする球形の樹脂粒子(I)を用いることを特徴とする、正帯電性トナーの製造方法(以下、第4発明という)。
【0013】
第1発明のトナーは、その粒子構造に、例えば以下の特徴を有する。
1.カーボンブラック、あるいはカーボンブラックと正帯電性帯電制御剤が、塩基性基含有樹脂中に均一に微分散している。
2.カーボンブラック、あるいはカーボンブラックと正帯電性帯電制御剤を含有する塩基性基含有樹脂が、サブミクロンの粒子状で、樹脂粒子(I)表面に固着している。
3.塩基性基含有樹脂の塩基性基が、好ましくは第3級アミノ基である。
4.樹脂粒子(I)が、好ましくは酸性基を含有し、更に好ましくは、該酸性基がカルボキシル基である。
5.樹脂粒子(I)の形状は限定されないが、好ましくは、ワーデルの実用球形度(粒子の投影面積に等しい面積を持つ円の直径と粒子の投影像に外接する最小円の直径との比)が0.95〜1.00の球形である。
6.トナー粒子表面に、負帯電性の無機微粒子が外添されている。好ましくは外添された無機微粒子がシリカである。
【0014】
上記構造上の特徴を有することにより、以下の効果が発現する。
1.カーボンブラックが塩基性基含有樹脂中に微分散しているために、トナー粒子表面に適度な導電性が付与され、帯電量レベルが低下するとともに、トナーの帯電立ち上がり性と均一帯電性が向上する。
2.樹脂粒子(I)のワーデルの実用球形度が、0.95以上である球形粒子の場合には、均一に表面処理がされるため、より一層、個々のトナー粒子の均一帯電性が達成される。
3.樹脂粒子(I)が、酸性基、好ましくはカルボキシル基を有する場合には、カーボンブラック含有の塩基性基含有樹脂の微粒子(II)が、酸ー塩基相互作用により、より強固に、樹脂粒子(I)表面に固着し、剥離による現像特性の劣化が低減する。
4.負帯電性の無機微粒子が外添されていることにより、帯電の経時安定性が向上する。
【0015】
上記した第1発明のトナーを得るには、各種の製造方法が考えられるが、例えばその一例として、上記第2発明の製造方法が挙げられる。
【0016】
上記第2発明では、カーボンブラックを必須成分として含む塩基性基含有樹脂の微粒子(II)を固着させる樹脂粒子(I)の水性分散液(A)は 、いかなる製法によって得られたものでも使用できる。たとえば、粉砕法で得られた樹脂粒子を分散安定剤を含有する水性媒体中に分散した樹脂粒子の水性分散液、あるいは、転相乳化法や重合法などの湿式法により得られるような樹脂粒子の水性分散液を使用することができる。
【0017】
上記第3発明では、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂と着色剤を必須成分とする混合物を、中和剤の存在下に、水性媒体と混合し転相乳化して得られる樹脂粒子(I)の水性分散液(A)を用いることを特徴としている。本転相乳化法で得られる樹脂粒子(I)は、ワーデルの実用球形度が0.95以上であり、分散安定剤を使用しないで粒子を形成することが可能なため、該分散安定剤による帯電特性への影響が少なく、本発明に最も好適な粒子である。
【0018】
樹脂粒子(I)として、分散安定剤を使用して転相乳化をする方法によって得られる球形着色樹脂粒子を使うこともできるが、この場合には、該粒子を十分に洗浄してから微粒子(II)を固着させることがトナーの環境安定性などの点から好ましい。
【0019】
上記第4発明では、着色剤、重合性モノマーおよびその重合触媒を必須成分とする混合物を、液媒体中で重合させて得られる球形の樹脂粒子(I)の水性分散液を用いることを特徴としている。この方法による樹脂粒子(I)の製造は、樹脂種に制約があるものの、重合反応と球形化が同時に行われ生産性に優れるが、液媒体中での重合反応には分散安定剤が使用されるので、微粒子(II)の水性分散液を加える前に、樹脂粒子(I)を十分に洗浄しておく必要がある。
【0020】
また、上記第2発明は、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)と、別途調整した、中和により自己水分散性/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックを必須成分とする混合物を、酸性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、カーボンブラックあるいはカーボンブラックと正帯電性帯電制御剤が均一に微分散された、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)とを、均一に混合して、塩基性中和剤で樹脂粒子(I)表面に析出させる製造方法であり、第1発明の特徴を有する正帯電性トナーを容易に製造することができる。
【0021】
本発明の工程を説明する前に本発明で使用する各成分の説明をする。
本発明の樹脂粒子(I)に使用しうる結着樹脂は、トナーバインダー樹脂として使用しうる樹脂であればいずれでもよいが、トナーとしての粉体流動性や定着性等のバランスが比較的容易に得られやすいスチレンアクリル樹脂あるいはポリエステル樹脂が特に好適である。
【0022】
また、本発明の微粒子(II)に使用しうる中和により自己水分散性/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂としては、特に限定はされないが、塩基性基含有のスチレンアクリル樹脂が好適である。
【0023】
本発明において、中和により自己水分散性となりうる樹脂とは、分子内に有する、中和により親水性が増加しうる官能基の作用により、水性媒体の作用下で、乳化剤や分散安定剤を実質的に用いることなく、安定な水性分散体あるいは水溶液を形成する能力を有する樹脂である。中和により自己水分散性となりうる樹脂(中和により親水性が増加しうる酸性あるいは塩基性の官能基を分子鎖中に有する樹脂)に、当該樹脂が酸性基を有しているならば塩基を、塩基性基を有しているならば酸を用いて中和することで、当該官能基を塩構造にして親水性を高めることができる。
【0024】
この中和の度合い(中和率)により、親水性の度合いが適宜調節できる。この際の親水性の程度は、当該樹脂自体が水に分散できる程度でなければならない。この様な自己水分散性樹脂は、水性媒体と混合することで、転相乳化が起こり、粒子を形成する。
【0025】
酸基あるいは塩基性基を含有する、中和により自己水分散性となりうる樹脂の親水性は、中和により親水性が増加しうる官能基の量或いは中和量(中和率)により制御できる。一定の中和率以上に中和すると水溶性となりうる樹脂を用いて、中和率を減じることにより、自己水分散性樹脂とすることもできる。
【0026】
本発明の製法では、塩基性基含有樹脂は、一定の中和率以上に中和すると水溶性となりうる樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
さらにはかかる親水性により、転相乳化においての、分散時の粒子の大きさが決定される。つまり中和率のコントロールにより任意の粒径を容易に得ることが可能である。
【0028】
当該樹脂が樹脂中に有する中和により親水性の増加しうる官能基としては、たとえば 、酸性基としては、カルボキシル基、燐酸基、スルホン基、硫酸基などがあり、中でもカルボキシル基が好ましい。また、塩基性基としては、1級、2級3級アミノ基、4級アンモニュウム基などが挙げられるが、中でも3級アミノ基が好ましい。
樹脂が自己水分散性、あるいは水溶性を発現するために適切な中和率は、モノマー組成や分子量などにより樹脂そのものの親水性が異なるので、各々の樹脂により異なる。
【0029】
中和により自己水分散性あるいは水溶性となりうる樹脂としては、トナーとしての粉体流動性や定着性等のバランスが比較的容易に得られ易い、スチレンアクリル樹脂あるいはポリエステル樹脂が好適である。
【0030】
当該中和により自己水分散性となりうる、酸性基含有スチレンアクリル樹脂としては、酸基を含有したラジカル重合性単量体類と、この酸基含有のラジカル重合性単量体類以外のラジカル重合性単量体類を、重合開始剤存在下で、ラジカル重合させて得られるものが使用できる。
【0031】
当該中和により自己水分散性/又は水溶性となりうる、塩基性基含有樹脂としては、塩基性基を含有した重合性単量体類と、この塩基性基を含有した重合性単量体類以外の重合性単量体類を、ラジカル開始剤存在下で、ラジカル重合させて得られるものが使用できる。これらを得るための重合反応は、溶液重合でも、懸濁、乳化重合でも適宜利用できる。
【0032】
こうした酸性基含有重合性単量体類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。また、塩基性基含有重合性単量体類としては、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジブチルアミノエチル、N−エチル−N−フェニルアミノエチルなどのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体が挙げられる。また、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物も挙げられる。
【0033】
酸性基あるいは塩基性基含有重合性単量体類以外の重合性単量体類としては、例えば、
(1)スチレン系モノマー:スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレン
(2)アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アルファクロルアクリル酸メチル
(3)メタクリル酸エステル:メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、アルファクロルメタクリル酸メチル
(4)アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、
(5)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、
(6)ビニルケトン:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン
(7)N−ビニル化合物:N−ビニルピロール、Nービニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0034】
また、前記樹脂を得る場合には、溶液重合の場合には、汎用の有機溶剤を使用できる。使用する有機溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンの如き各種炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tーブタノールの如きアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等の如きエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如き各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルの如き各種エステル類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの如き各種エーテルエステル類;テトラヒドロフランの如き各種環状エーテル類;塩化メチレンの如き各種ハロゲン化炭化水素類;など、各種の有機溶媒が使用できる。
【0035】
また、使用する重合開始剤としては、公知慣用の各種の有機過酸化物系の開始剤、アゾ系の開始剤が使用できる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂粒子(I)の結着樹脂に使用する酸性基含有スチレンアクリル樹脂としては、酸価30〜150(mgKOH/g)、重量平均分子量6000〜300000、ガラス転移温度45〜70℃のような組成のものが好適である。
【0037】
本発明の微粒子(II)に使用する塩基性基含有スチレンアクリル樹脂としては、アミン価20〜100(mgHCl/g)、重量平均分子量2000〜400000、好ましくは6000〜300000、ガラス転移温度30〜120℃のものが好ましい。
【0038】
本発明の樹脂粒子(I)の結着樹脂に使用する酸性基含有の別な樹脂としてはポリエステル樹脂が挙げられ、トナー用としての公知慣用のポリエステル系樹脂が使用できる。このようなポリエステル樹脂は多塩基酸と多価アルコールとを触媒の存在下に脱水重縮合を行って製造できる。多塩基酸の一部は、それのエステル形成性誘導体のひとつである、そのメチルエステル化物を使用して脱メタノール重縮合を行ってもよい。
【0039】
多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多塩基酸を1種又は2種以上用いることができる。
【0040】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。これらの多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。
【0041】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は50〜75℃であるのが好ましく、より好ましくは55〜70℃である。ガラス転移温度が50℃未満であるとトナーとしての耐熱凝集性が不良となり、75℃を越えると定着性が不良となるので好ましくない。
【0042】
ポリエステル樹脂の酸基の含有量は、上記の多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは多塩基酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。ポリエステル樹脂の酸基の含有量は、酸価として1〜30mg・KOH/gが好適である。
【0043】
本発明で用いる中和剤は、以下のように使い分けをする必要がある。酸性基含有樹脂を、自己水分散性に変換するためには、塩基性中和剤が、また、塩基性基含有樹脂を、自己水分散性/又は水溶性に変換するためには、酸性中和剤が使用される。また、中和により塩構造となった、酸性基含有樹脂を、元の酸性基に戻すためには、酸性中和剤が使用される。また、中和により塩構造となった、塩基性基含有樹脂を、元の塩基性基に戻し、樹脂粒子表面に、析出させるためには、塩基性中和剤が使用される。
【0044】
塩基性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機金属類、アンモニア等の無機アルカリ、また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第二級アミン、トリエチルアミン等の第三級アミン、ヒドラジン等の有機アミン類が挙げられ、酸性中和剤としては、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、琥珀酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0045】
樹脂粒子(I)の結着樹脂である非水溶性樹脂として、それ自体で水に分散しない、即ち自己水分散性を有しない非水溶性樹脂を用いる場合には、樹脂溶液及び/又はそれと混合する水性媒体(水性媒体とは、水または水を主成分とした液媒体をいう)に、乳化剤及び/又は分散安定剤を添加して用いることが必要である。
【0046】
その分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が好ましく、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また乳化剤としては、例えばポリオキエチレンアルキルフェノールエーテル等のノニオン系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系、或いはカチオン系の各種界面活性剤が挙げられる。勿論、乳化剤の2種以上を併用してもよいし、分散安定剤の2種以上を併用してもよいし、乳化剤と分散安定剤とを併用してもよいが、分散安定剤を主体にして乳化剤を併用するのが一般的である。
【0047】
この場合、乳化剤や分散安定剤を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜3重量%程度となる様にするのが適当である。
【0048】
更に、前述した中和することにより自己水分散性となりうる樹脂を使用する場合であっても、必要であれば、本発明の効果を損なわない限りにおいて、乳化剤及び/叉は分散安定剤を使用してもよい。
【0049】
なお、乳化させてトナー用等の球形着色粒子を形成させるには、USP5,843,614に記載されているような、有機溶媒を用いずに行う方法でも良く、本発明の樹脂粒子(I)として使用できる。
【0050】
次に、本発明に使用する樹脂粒子(I)を、着色剤を分散させた重合性モノマーを、液媒体中で重合させて形成する所謂重合法に関して述べる。
【0051】
これは、例えば分散安定剤や乳化剤の存在下に、着色剤と、結着剤樹脂を形成しうる重合性単量体とを液媒体中に懸濁もしくは乳化分散させ、重合開始剤の存在下、撹拌しながら、ラジカル重合によるポリマー化反応を行って、球形の、結着用樹脂中に着色剤を内包したトナー粒子の水性分散液を得るものである。
【0052】
ラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオンビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシルアクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルメタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、エチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリート、テトラメチレンエーテルグリコールモノアクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルプロペニルケトン等のビニルケトン類等のアクリルモノマーが挙げられ、これらは、それぞれ単独で、もしくは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
前記した結着樹脂を構成する単量体組成は、重合体のガラス転移温度が50〜80℃となる様に調製される。
【0054】
必要に応じて、少量の、2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する反応性モノマーをそれに併用しても良い。2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する反応性モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
尚、こうしたポリマー樹脂を得るのに使用される重合開始剤としては、勿論、通常の油溶性又は水溶性のものが使用できるが、例えば過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシドもしくは2−エチルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物;またはアゾビスイソブチロニトリルもしくはアゾビスイソバレロニトリルの如き、各種のアゾ化合物などが挙げることができる。
【0056】
懸濁重合に際しては、重合に用いる液媒体に不溶かつ単量体可溶の重合開始剤を必須として選択して用い、乳化重合に際しては、水溶性重合開始剤を必須として選択して使用される。重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全重合性単量体100重量部当たり、0.01〜5重量部である。
【0057】
重合によって形成される結着樹脂は、重合条件等により任意に調製することができるが、重量平均分子量として、10,000〜500,000となる様にするのが好ましい。
【0058】
懸濁重合時に使用できる、前記分散安定剤としては、一般的には、水溶性高分子化合物が用いられ、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガム、ラムザンガム等が挙げられる。
【0059】
さらには水不溶性で粒径が0.01〜5μmの無機微粉末も、懸濁分散安定剤として使用でき、例えばリン酸三カルシウム、タルク、ベントナイト、カオリン、酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性ケイ酸マグネシウム、水酸化チタン、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0060】
これら分散安定剤は、単独使用でもよいし、2種以上の併用でもよい。その使用量は、全反応性モノマー100重量部当たり、通常0.1〜10重量部である。
【0061】
乳化重合に使用できる前記乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンニニルフェノールエーテル等の非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。これらは単独使用でもよいし、2種以上の併用でもよい。その使用量は、全反応性モノマー100重量部当たり、通常0.01〜5重量部である。
【0062】
懸濁重合に当たって、分散安定剤に乳化剤を一部併用してもよいし、乳化重合に当たって、乳化剤に分散安定剤を一部併用してもよい。また、上記分散安定剤や乳化剤に代えて、自己乳化性エポキシ樹脂や自己乳化性ポリウレタン樹脂を用いることもできる。
【0063】
重合性単量体、着色剤、分散安定剤及び前記単量体不溶の液媒体、前記液媒体に不溶かつ前記単量体に可溶の重合開始剤を同時に加えて、撹拌して単量体液滴を重合してもよいが、重合性単量体及び着色剤を、例えばボールミルやコロイドミル等で、予め充分に混合して、次いでそれを重合開始剤、分散安定剤を含む前記液媒体に加えて、例えばホモジナイザー、ローターステーター式ミキサー、スタティックミキサー等により撹拌を行い、重合性単量体を必須とする単量体液滴を液媒体中に懸濁させ、撹拌を続けながら、所定の粒子径のトナー粒子が形成されるまで重合を行うことが好ましい。
【0064】
このような重合を行うに当たって使用できる液媒体としては、蒸留水、イオン交換水等の水の他、例えばトルエン、キシレンもしくはベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種のアルコール類;セロソルブもしくはカルビトールの如き、各種のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンの如き、各種のケトン類;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルの如き、各種のエステル類;またはブチルセロソルブアセテートの如き、各種のエーテルエステル類などが挙げられる。
【0065】
尚、いずれの重合方法においても、コア−シェル重合処方、パワーフィード重合処方、グラフト重合処方を採用することにより、粒子の化学構造・層構造等に変化をつけることもできる。上記各発明の各懸濁重合法及び乳化重合法における、反応条件は、特に制限されるものではなく、いずれの方法においても、通常室温〜80℃で、15分〜24時間である。
【0066】
本発明における着色剤としてはカーボンブラックが最も好適に用いられるが、トナー用として公知慣用の他の着色剤も使用できる。例えば磁性粉、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガラ、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントブルー15、四三酸化鉄、三二酸化鉄、鉄粉、酸化亜鉛、セレン等を挙げることができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0067】
着色剤の使用量は、通常樹脂固形分100重量部当たり、3〜15重量部の範囲から選択される。
【0068】
塩基性基含有樹脂に分散され、樹脂粒子(I)の表面に固着するのに使用されるカーボンブラックとしては、特に限定はなく、市販の黒色顔料用カーボンブラックあるいは導電性カーボンブラックなどが好適である。本発明では、カーボンブラックは塩基性基含有樹脂溶液にできるだけ微分散させることが好ましい。
【0069】
カーボンブラックを含有する塩基性基含有樹脂の樹脂粒子(I)表面への添加量は、樹脂粒子固形分に対して、カーボンブラックが0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、塩基性基含有樹脂が0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%なる範囲が好適である。カーボンブラックと正帯電性制御剤を含有する塩基性基含有樹脂の場合には、樹脂粒子(I)に対し、正帯電性制御剤が0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、カーボンブラックが0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、塩基性基含有樹脂が0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%なる範囲が好適である。帯電制御剤と塩基性基含有樹脂の添加量がこれらの範囲を越えて多すぎる場合には、帯電量が高くなり過ぎるとともに帯電の経時安定性が低下するので好ましくない。また、カーボンブラックの添加量が上記範囲を超え多すぎると、帯電量が低くなり過ぎ好ましくない。これら各成分の適正な添加量は、樹脂粒子(I)の樹脂特性、外添剤の特性、キャリヤの特性などによって変わるため、場合場合に応じて適宜決められる。
【0070】
本発明において樹脂粒子(I)あるいは微粒子(II)を転相乳化で作る場合に用いる有機溶剤は、使用する樹脂を溶解するものであれば、いずれの有機溶剤でもよい。また、樹脂合成で用いた有機溶剤を、そのまま使用してもよい。前述した様な、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤が使用される。この場合、例えばアセトン、ブタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性、若しくは部分水溶性の有機溶剤を併用することにより、転相乳化における粒子の生成が容易になる。
【0071】
好ましくは、容易に脱溶剤され得るアセトン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの、いわゆる低沸点溶剤の使用が適切である。
【0072】
樹脂粒子(I)の、他の構成成分(添加剤成分)としては、離型剤等各種の助剤類が挙げられ、その使用目的および使用条件に応じて、適宜、選択して使用することが出来る。例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、金属石鹸、ステアリン酸亜鉛の如き滑剤等があげられるが、中でも、フィッシャートロプシュ法により合成された合成ワックスの水分散体、もしくはエマルジョタイプのものを、転相乳化前の樹脂溶液中に添加し、転相乳化後、粒子内に内包させることができる。
【0073】
次に本発明の製造方法の工程について説明する。本発明は大まかに4つの工程に分けることができる。すなわち、着色剤と結着樹脂を必須の成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)を得る工程(1)と、カーボンブラックを必須成分として含有した塩基性基含有樹脂の微粒子(II)の水性分散液(B)を、別途調製する工程(2)と、(A)と(B)とを均一に混合し、樹脂粒子(I)の表面に、カーボンブラックを必須成分として含有する塩基性基含有樹脂の微粒子(II)を析出させる工程(3)と、その後、液媒体を除去、乾燥させてトナー粉末を得る工程(4)である。もちろん工程(1)、工程(2)はどちらが先に行われても、同時に行われてもよい。説明は各工程ごとに述べていく。
【0074】
工程(1)は、 結着樹脂と着色剤を必須の成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)を得る工程である。
【0075】
この樹脂粒子(I)は前述のとおりいかなる製法によって得られたものでもよい。場合によっては粒子を水媒体中に分散するために分散安定剤等を使用することもできる。特に重合法や転相乳化法などの湿式法による、粒子が水性分散液として得られるものを使用する場合は、粒子の水媒体への分散の工程が省略できる点で好ましい。
【0076】
とりわけ、分散安定剤や乳化剤等を使用しない、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂と、着色剤を必須成分として含む混合物を、中和剤の存在下に、水性媒体と混合し転相乳化して得られる、着色剤が内包された球形樹脂粒子(I)を含む水性分散液を用いる方法が、本発明では最も好適である。次いで、分散安定剤や乳化剤等を併用して行う、重合法や転相乳化法で得られる、着色剤が内包された球形樹脂粒子(I)を含む水性分散液を用いる方法が、本発明では好適である。
【0077】
分散安定剤や乳化剤等を併用しない転相乳化法による樹脂粒子(I)を用いる場合は、中和により自己水分散性となりうる酸性基含有樹脂を、中和剤で中和して得られる塩構造を有する酸性基含有樹脂と、着色剤とを必須の成分とした、必要に応じて樹脂を溶解する有機溶剤を含む混合物を、水性媒体と混合して転相乳化することにより得られる、着色剤が内包された、一部塩構造を有する、酸性基含有樹脂からなる樹脂粒子(I)の分散液(A)を得る。
【0078】
この場合では、はじめに、例えば、中和剤により、酸性基の一部が塩構造となった酸性基含有樹脂と、着色剤とを、必要に応じて有機溶剤とを、公知慣用の手段で混合分散して混合物を調製する。例えばボールミル、サンドミル、モーターミル等の公知慣用の手段が採用できる。
【0079】
また前記混合物を調製する際に用いる有機溶媒としては、上記したものがいずれも使用できる。樹脂を溶液重合した場合には、その時に用いた有機溶媒と同一のものを使用することが出来る。上記した通り、当該溶液重合時に用いた有機溶媒と混合物調製に用いる有機溶媒の各々の種類を変えて用いる様にしてもよい。
【0080】
混合物の調製に当たっては、そこに例えばアセトン、ブタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性、若しくは部分水溶性の有機溶剤を含ませることにより、本工程における樹脂粒子の生成が容易になる。本混合物中の不揮発分は、通常20〜80重量%の範囲内に調整される。
【0081】
中和剤により、酸性基の一部が塩構造となった酸性基含有樹脂 を得るに当たっては、中和により自己水分散性となりうる酸性基含有樹脂と中和剤とを混合し中和すればよい。
【0082】
尚、中和により自己水分散性となりうる酸性基含有樹脂と、着色剤とを必須成分として、必要に応じて有機溶剤を含む混合物を調製することも出来る。
【0083】
この場合には、転相乳化に用いる水性媒体としては、酸性基含有樹脂を自己水分散性とするのに必要な量の中和剤を含む水性媒体を用いるか、又は転相直前までの任意の段階で、中和を行う。好ましくは、水性媒体を添加する直前までに、中和剤を添加しておく。
【0084】
いずれにせよ、前記混合物を前記対応する水性媒体と混合し転相乳化することにより、着色剤が内包された樹脂粒子(I)の分散液を得る。その場合、前記混合物に前記対応する水性媒体を加える様にして転相乳化しても、前記混合物を前記対応する水性媒体に加える様にして転相乳化してもよい。
【0085】
工程(1)では、通常平均粒子径が3〜12μmの樹脂粒子(I)を含む水性分散液を得る。
【0086】
上記した樹脂粒子(I)は、転相乳化後の水性分散液から有機溶剤を除去したものでもよい。また、本発明の製法では、樹脂粒子(I)は、転相乳化後の水性分散液から有機溶剤を除去し、水性媒体を濾別、ウエットケーキを洗浄した後、水性媒体中に再分散し、塩酸水溶液により、酸性基含有樹脂中に含まれる塩部分を、元の酸性基に戻す事が好ましい。
【0087】
これにより、樹脂粒子表面に酸性基が露出し、第3工程で粒子表面に析出されるカーボンブラックを必須成分として含んだ塩基性基含有樹脂の微粒子(II)と、酸ー塩基相互作用により、強固に固着する。
【0088】
工程(2)は、中和により自己水分散性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックを必須成分とする混合物を、中和剤の存在下、水性媒体と混合して転相乳化して得られる、カーボンブラック等が1μm以下に分散され内包又は吸着された、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)を得る工程である。
ここで重要なポイントの一つは、カーボンブラック等を十分に微分散することである。
【0089】
ここで用いられる、中和剤により塩構造となった塩基性基含有樹脂及び該樹脂を溶解する有機溶剤としては、上述したようなアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、あるいはエーテル系溶剤の中から選ばれるものであればいずれの有機溶剤でもよいが、中でも、本発明の目的にはテトラヒドロフランを用いることが好ましい。この場合、単独使用でも、あるいは混合溶剤として使用してもよい。
【0090】
水性分散液(B)中の微粒子(II)は、工程(1)の樹脂粒子(I)と同様の操作で得られる。微粒子(II)の平均粒子径としては、樹脂粒子(I)よりも小さい必要があり、0.1〜2μm、特に好ましくは0.1〜1μmである。
【0091】
水性分散液(B)は、転相乳化後の分散液から有機溶剤を除去する事が好ましい。
【0092】
工程(3)は、工程(1)および工程(2)で得られた水性分散液(A)と(B)を均一に混合して、塩基性基の一部、あるいは全部を塩構造に変換され、親水性を高められた塩基性基含有樹脂に、塩基性の中和剤を加えて、元の中和されていない状態(未中和状態)の塩基性基に戻す工程であり、その様に処理することにより、カーボンブラックを含有した樹脂の親水性が低下して、微粒子(II)が樹脂粒子(I)の表面に析出される。この時、微粒子(II)は樹脂粒子(I)の表面に強固に固着される。
【0093】
この場合、微粒子(II)の析出速度が速すぎると、微粒子同士が凝集して、樹脂粒子(I)の表面に均一に析出しないばかりか、樹脂粒子(I)同士をも凝集させることになり好ましくない。
【0094】
本発明の製法では、塩基性基として第三級アミノ基を有する樹脂を使用し、該樹脂を強酸で中和した後、弱塩基である、アンモニアで処理することによって、析出速度が遅く、微粒子同士の凝集がしにくく、均一に樹脂粒子表面に固着することができる。
【0095】
微粒子(II)の樹脂粒子(I)への添加量は、樹脂粒子(I)の固形分に対し、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜6重量%とすることが好ましい。
【0096】
析出工程は、撹拌下で行うのが一般的である。攪拌翼としては、特に制限はないが、ファウドラー翼のごとき空気の巻き込みの少ないものが好ましい。
【0097】
析出させる際に使用する塩基性中和剤は、分散液(A)と分散液(B)の混合物の固形分含有量が20重量%、水温20℃で、PH9〜10となるまで添加すればよい。所定のPHにあわせた後、30分間ほど攪拌を行い、微粒子(II)を樹脂粒子(I)の表面に完全に固着させる。
【0098】
工程(4)は、工程(3)で得られた、カーボンブラックを必須成分として含む塩基性基含有樹脂が表面に固着されたトナー粒子を、液媒体から分離、乾燥し、粉体トナーを得る工程である。
【0099】
液媒体から分離されたトナー粒子は、乾燥してトナー粉末を得る。この乾燥は、公知慣用の手法がいずれも採用でき、例えばトナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱乾燥してもよいし、凍結乾燥するという方法が挙げられる。また、連続瞬間気流式乾燥機やスプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行うという方法もある。
【0100】
本発明で用いるトナー粒子は、乾燥後に、ヘンシェルミキサーやハイブリダイザーなどの公知慣用の粉体の攪拌混合機を用いて攪拌混合し、粒子表面の安定化・均一化を図ることが好ましい。この際、トナー粒子の凝集が発生しない温度範囲に加温しながら攪拌混合すると安定化の効果が促進され、より好適である。
【0101】
本発明で用いるトナー粒子の粒径としては、トナーとしての実用的レベル内で任意の大きさを選定できる。現状のマシンとのマッチング性からは、その体積平均粒子径が3〜15μmの範囲のものが好適である。
特に体積平均粒径が3〜8μm程度の小粒径トナーが解像度や階調性などの画像品質に優れ好ましい。
【0102】
上記のような方法で得られたトナー粒子には、静電荷像現像剤として適切な流動性や帯電性を確保するために、通常、無機微粒子を外添する。このような無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。
【0103】
本発明者らは、これら無機微粒子の中でも、負帯電性の無機微粒子、特に負帯電性の疎水化表面処理を施されたシリカを使用すると、帯電の経時安定性に優れた正帯電性トナーが得られることを見出した。本発明で使用するシリカの表面処理剤としては、各種の有機珪素化合物やフッ素系有機化合物、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、フルオロ(メタ)アクリレート(共)重合体などが挙げられる。これらの内でも、有機珪素化合物で表面処理されたシリカが入手が容易なことなどから実用上好適であり、そのような有機珪素化合物としては、各種シリコーンオイルおよびオルガノクロルシラン(トリクロルメチルシラン、ジクロルジメチルシラン、クロルトリメチルシラン、トリクロルエチルシラン、ジクロルジエチルシラン、クロルトリエチルシラン、クロルトリフエニルシラン等)、オルガノシラザン(トリエチルシラザン、トリフエニルシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等)やオルガノアルコキシシラン(ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン等)などのシランカップリング剤が挙げられる。
【0104】
本発明に使用するシリカの一次粒子径としては、5〜200ナノメーター程度、特に好ましくは5〜50ナノメーター程度であり、このような条件に合致する市販のシリカとしては、AEROSIL R972,R976,RX200,NAX50,RY200;WACKER HDK H1018,H1303VP、H2000/4、H2000,H3004,SLM50650、H15,H20,H30;Nipsil SSー10、SSー15,SSー20,SS−50、SSー60,SSー100,SSー40,SS−70 などが挙げられる。
【0105】
シリカの外添量は、トナー粒子に対し、0.1〜5重量%程度、特に好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0106】
なお、本発明の正帯電性トナーでは、上記のような負帯電性シリカに、その他の無機微粒子や有機微粒子を併用して外添することでも良い。
【0107】
本発明の製造方法で得られるトナーは、非磁性一成分トナーあるいは磁性一成分トナーとして、又、キャリアと組み合わせることにより二成分現像剤として使用することができ、良好な帯電特性発現により高品質の画像を得ることができる。
【0108】
キャリアとしては、公知慣用のものがいずれも使用できる。例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物、表面処理されたガラス、シリカ等の粉末が使用でき、それらのアクリル樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、フッ素/アクリル樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア等の樹脂被覆キャリアが、本発明の正帯電性トナーに用いるのにより好適である。キャリアの平均粒径としては、特に限定はないが、20〜200ミクロン程度のものが好適に使用される。
【0109】
【発明の実施形態】
1。 着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、カーボンブラックを必須成分として含有する塩基性基含有樹脂が固着されたトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子が外添された正帯電性トナー。
2。 無機微粒子がシリカである上記1記載のトナー。
3。 塩基性基が3級アミノ基である上記1記載のトナー。
4。 トナー粒子がワーデル実用球形度0.95以上の球形である上記1記載のトナー。
5。 トナー粒子が、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)と、中和により自己水分散性及び/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックを必須とする混合物を、酸性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)を、均一に混合して、塩基性中和剤で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去し乾燥させることに得られる、上記1記載のトナーの製造方法。
6。 樹脂粒子(I)が、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂と着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、着色剤が内包された球形粒子である、上記5記載の製造方法。
7。 樹脂粒子(I)が、着色剤の分散した重合性モノマーを、液媒体中で重合させてえられる球形粒子である、上記5記載のトナーの製造方法。
【0110】
本発明の実施形態としては、樹脂粒子(I)として湿式法で製造される球形粒子を使用し、カーボンブラックを必須成分として含有する塩基性基含有樹脂の微粒子(II)を樹脂粒子(I)の表面に固着させたトナー粒子を作り、そのトナー粒子を乾燥後に、負帯電性シリカを外添したトナーが本発明に最も好適である。
【0111】
【実施例】
次に、本発明を比較例及び実施例により具体的に説明する。以下において部および%はすべて重量基準である。尚、水は全て脱イオン水の意である。
【0112】
(参考例1) カルボキシル基を有するスチレンアクリル樹脂の合成例
滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール/水の114/12/24部を仕込んでから、80℃に昇温し、組成1の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を一括して仕込み反応を開始した。
【0113】
【0114】
ついで、3時間後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がP−Qとなる時点で、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコールの567/63部を添加し、温度が80℃になってから、組成2に示されるような割合の混合物を1時間にわたって滴下した。なお、この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーで定量することで1段目の重合率を計算すると60%であった。
【0115】
【0116】
滴下終了後、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。この樹脂は、酸価(樹脂固形分1gを中和するのに要するKOHのmg数)70,重量平均分子量124000、Tg61℃であった。
【0117】
(参考例2) 3級アミノ基を有するスチレンアクリル樹脂の合成例
滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトンの670部を仕込んでから、80℃に昇温し、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を、2時間かけて滴下した。
【0118】
スチレン 732部
アクリル酸ブチル 100部
メタクリル酸ジメチルアミノエチル 168部
「パーブチルO」 8部
【0119】
ついで、滴下を終了してから、3時間後から3時間おきに4回、各々重合触媒のパーブチルOの2部を添加した。次に、パーブチルOを添加してからさらに、4時間反応を継続してから終了した。最後に、不揮発分が50%になるようにメチルエチルケトンで調整して樹脂溶液を得た。この樹脂は、アミン価(樹脂固形分1gを中和するのに要するHClのmg数)39,重量平均分子量142000、Tg68℃であった。
【0120】
(参考例3)転相乳化法による樹脂粒子(I)の作製例
参考例1で調製した樹脂溶液900部と、ELFTEX8(キャボット社製カーボンブラック)の50部とを、アイガーモーターミルM−250(アイガージャパン社製ビーズミル)を使用して混練した。このミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は90/10になる。
【0121】
得られたカーボンブラック分散樹脂溶液に、H808(中京油脂社製エマルジョン型ワックス、フィッシャートロプシュワックス、粒子径0.5μm、固形分含有量30%)45部を添加し、アイガー・モーターミル M−250によって混合・分散してから、メチルエチルケトンで不揮発分濃度を51%に調整しミルベースを作製した。
【0122】
次いで、この混合物300部に対して、1規定水酸化ナトリウム水溶液20.7部、イソプロピルアルコール34部、メチルエチルケトン30部、水90部を加え、良く混合した後、内温を30℃に保持し、撹拌しながら、水(30℃)を加えて転相乳化させ樹脂粒子(I)を形成し、30分後に水300部を加えて希釈した。
【0123】
次に、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、液媒体より樹脂粒子(I)を濾別し、該粒子を水中に再分散させた。続いてこの分散液に、1N塩酸水溶液を加えてPH2.5に調整し、30分間撹拌し、樹脂粒子中の樹脂を、元のカルボキシル基含有樹脂に変換した。
【0124】
得られた樹脂粒子を濾別した後、さらに水中に再分散し、固形分含有量を20%となるよう調整し、着色剤が内包された樹脂粒子(I)の水分散体溶液を調整した。この樹脂粒子の水分散体溶液のPHは4.9であった。
【0125】
ここで得られた樹脂粒子の平均粒子径は、コールター・マルチサイザーを用いた測定で7.8μmであった。また、ワーデルの実用球形度は0.96以上の球形であった。乾燥して得られた樹脂粒子を、樹脂包埋しミクロトームで切断した断面をルテニウム酸化物で染色後、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、着色剤及びワックス微粒子がトナー粒子内に内包されているのが確認された。
【0126】
(参考例4)転相乳化法による樹脂粒子(I)の作製例
酸価が4mg・KOH/g、重量平均分子量が12000,ガラス転移点が61℃、100℃における溶融粘度が40000ポイズであるポリエステル樹脂1200部に、メチルエチルケトンの800部を加え、よく溶解した樹脂溶液に、カーボンブラック(ELFTEX8)80部を加えて攪拌混合して十分に分散した。分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分含有量を50%に調整しミルベースとした。
【0127】
このミルベース200部に、メチルエチルケトン86部、1規定アンモニア水4部を加え、攪拌しながら水225部を加えて転相乳化させ、樹脂粒子を形成した。希釈水として水150部と、分散安定性を増すために1規定アンモニア水4部を添加した。
【0128】
次いで、減圧蒸留により有機溶剤を除去し、水性分散液を得た。これに1規定塩酸水溶液を加えてPHを2.5とし、水スラリーを遠心分離機で処理して微粉を除去し、ついで水スラリーをフイルター(チッソフイルター(株)製)に通過させて粗大粒子を除去した。濾過・水洗して得られたウエットケーキを水で20%スラリーとし、樹脂粒子(I)の水分散液を得た。この水分散液のPHは5.3であった。
【0129】
この樹脂粒子は、体積平均粒子径が7.6μmで、ワーデルの実用球形度が0.96以上の球形であった。この粒子を樹脂包埋しミクロトームで切削した断面をTEMで観察したところ、顔料は粒子に内包されて均一に分散していた。
【0130】
(参考例5)重合法による樹脂粒子(I)の作製例
スチレン 240部
アクリル酸ブチル 60部
エチレングリコールジメタアクリレート 3部
アゾビスイソブチロニトリル 6部
ドデシルメルカプタン 3部
カーボンブラック 21部
ビスコール550P 3 g
[三洋化成工業(株)製ポリプロピレンワックス]
【0131】
上記混合物をT.K.ロボミクス(特殊機化工業(株)社製ホモミクサー)で分散させた後、ポリアクリル酸ソーダの18部を溶解したイオン交換水1500gを加え、分散懸濁させた。この混合液をファウドラー翼の付いた3Lのフラスコに入れ、窒素気流下、80℃で10時間懸濁重合を行い、着色剤が内包された樹脂粒子の水分散液を調製した。得られた樹脂粒子の平均粒径は7.7μmであった。また、ワーデルの実用球形度は0.96以上の球形であった。
【0132】
この樹脂粒子水性分散液を濾過し、再度水に分散するという洗浄作業を数回繰り返し、最後に、固形分含有量を20%となるよう調整し、着色剤の内包された、樹脂粒子(I)の水分散体溶液を調整した。なお、樹脂粒子の水分散体溶液のPHは5.3であった。
【0133】
(参考例6)カーボンブラック含有の微粒子(II)の調製例
1Lの広口ポリ瓶に、参考例2で調製した樹脂液100部、テトラヒドロフラン150部及び1N塩酸水溶液50部を秤り採り均一に混合し、次いでカーボンブラック(Elftex8)33.5部を加えてからペイントコンデショナー(直径1mmのガラスビーズの400部を使用)により30分間分散を行う。
【0134】
この樹脂溶液を2Lのセパラブルフラスコに移し、攪拌しながら水1500部を添加し転相乳化を行った。ここで得られる微粒子(II)の分散液から、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、カーボンブラックを含有する塩基性基含有樹脂の微粒子(II)の水性分散液を得た。得られた水溶液の固形分含有量は7.5%であり、樹脂/カーボンブラックの重量比は60/40である。
【0135】
(実施例1)
10Lフラスコに、参考例3で作製した樹脂粒子(I)の水分散体溶液の3000部(固形分600部)を仕込み、攪拌しながら、参考例6で調製したカーボンブラックを含有する微粒子(II)の水性分散液の144部(固形分10.8部)を添加してから、0.1Nアンモニア水を、PHが9〜9.5となるまで加え、微粒子(II)を、樹脂粒子(I)の表面に析出させた。
【0136】
次に濾過・水洗し、ウェットケーキを分離し、乾燥することで、カーボンブラックを含有する塩基性基含有樹脂微粒子が表面に固着したトナー粒子を得た。樹脂粒子(I)に対するカーボンブラックと塩基性基含有樹脂の添加量は、それぞれ0.6重量%、0.9重量%である。得られたトナー粒子の体積平均粒子径は7.8μであり、SEM(走査型電子顕微鏡)により粒子表面を観察したところ、微粒子(II)が、樹脂粒子(I)の表面に固着しているのが確認された。また、ワーデルの実用球形度は、0.96以上であった。
【0137】
このトナー粒子を、ジャケットに60℃の温水を通じたヘンシェルミキサーに仕込んで攪拌混合し、トナー粒子表面を安定化・均一化してから、ヘンシェルミキサー内を常温に戻し、負帯電性シリカRY200(日本アエロジル製)の0.4重量%を外添し正帯電性トナーを得た。
【0138】
(実施例2)
10Lフラスコに、参考例4で作成した樹脂粒子(I)の水分散体溶液の3000部(固形分600部)を仕込み、攪拌しながら、参考例6で調製したカーボンブラック含有の微粒子(II)の水性分散液の160部(固形分12部)を加え、 以下実施例1と同様の操作にて、カーボンブラックを含有した塩基性基含有樹脂が表面に固着されたトナー粒子を得た。このトナー粒子の体積平均粒子径は7.6μmであり、SEMにより粒子表面を観察したところ、微粒子(II)が樹脂粒子(I)の表面に固着しているのが確認された。また、ワーデルの実用球形度は、0.96以上であった。このトナー粒子に対し、実施例1と同様な攪拌混合処理および外添を行い正帯電性トナーを得た。
【0139】
(実施例3)
10Lフラスコに、参考例5で作成した樹脂粒子(I)の水分散体溶液の3000部(固形分600部)を仕込み、攪拌しながら、参考例6で調製したカーボンブラック含有の微粒子(II)の水性分散液の144部(固形分10.8部)を加え、以下実施例1と同様の操作にて、カーボンブラックを含有した塩基性基含有樹脂で表面処理されたトナー粒子を得た。このトナー粒子の体積平均粒子径は7.7μmであり、SEMで粒子表面を観察したところ、微粒子(II)が樹脂粒子(I)の表面に固着しているのが確認された。また、ワーデルの実用球形度は、0.96以上であった。このトナー粒子に対し、実施例1と同様な攪拌混合処理および外添を行い正帯電性トナーを得た。
【0140】
(比較例1,2,3)
外添剤の種類を正帯電性のシリカHDK H3050(ワッカー社製)に変えた以外は、実施例1,2,3と同様にして比較例1,2,3の正帯電性トナーを得た。
【0141】
(トナーの評価試験)
実施例および比較例で作製したトナー各4部と、フッ素・アクリル樹脂コートマグネタイトキャリアー(平均粒径80μm)96部をボールミルを用いて混合し、混合時間10分、30分、60分後の帯電性を測定したところ、表ー1のようであった。帯電性につては、E−SPARTアナライザー(ホソカワミクロン社製)を用いて帯電量(μC/g)と逆帯電比率(個数%)の測定を行った。
【0142】
【表1】
【0143】
負帯電性のシリカを外添した実施例1,2,3のトナーは、正帯電性のシリカを外添した比較例1,2,3のトナーに比べ、帯電の経時安定性が改善されている。
【0144】
また、実施例で作製した3種のトナーを、市販の複写機(シャープ社製Z−52)に使用して画出し試験を行ったところ、いずれも良好な画像が得られた。
【0145】
【発明の効果】
結着樹脂と着色剤を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液と、別途調整したカーボンブラックを必須成分として含有した塩基性基含有樹脂微粒子(II)の水性分散液を混合し、樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、これを乾燥後、加温下に攪拌混合してトナー粒子表面を安定化・均一化してから、負帯電性の無機微粒子を外添することにより、経時安定性や帯電量分布に優れた正帯電性を有する球形トナーを得ることができる。
Claims (7)
- 着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、カーボンブラックを必須成分として含有する塩基性基含有樹脂が固着されたトナー粒子に、負帯電性の無機微粒子が外添された正帯電性トナー。
- 無機微粒子がシリカである請求項1記載のトナー。
- 塩基性基が3級アミノ基である請求項1記載のトナー。
- トナー粒子がワーデル実用球形度0.95以上の球形である請求項1記載のトナー。
- トナー粒子が、着色剤と結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の水性分散液(A)と、中和により自己水分散性及び/又は水溶性となる塩基性基含有樹脂とカーボンブラックとを必須とする混合物を、酸性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さい、微粒子(II)の水性分散液(B)とを、均一に混合して、塩基性中和剤で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去し乾燥させることによって得られる、請求項1記載のトナーの製造方法。
- 樹脂粒子(I)が、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂と着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、着色剤が内包された球形粒子である、請求項5記載の製造方法。
- 樹脂粒子(I)が、着色剤の分散した重合性モノマーを、液媒体中で重合させてえられる球形粒子である、請求項5記載のトナーの製造方法。
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