JP4072295B2 - 育苗装置及び育苗方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は果菜苗、葉菜苗、草花、樹木等を育苗する時に使用する育苗装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にこれらの植物を育苗する場合、小径の鉢に育苗用土を入れ、これに播種したり果菜の小苗を植えて育苗し、植栽したり、販売したり、一般にポリポットと呼ばれている合成樹脂製のポットに育苗用土を入れ、これに播種したり果菜の小苗を植えて育苗される。ポリポットで育てられた植物はポリポットにいれたままの状態で販売されたり、ポリポットから取り出して植栽されたりする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように小径の鉢やポリポットで育苗した果菜苗、葉菜苗、草花、樹木は、植栽の際にはその小径の鉢やポリポットから取り出されて植付けられる。
ところがこうしたものでは植栽時に鉢やポリポットから取り出される時に手間が掛かるだけでなく、後述するように特にポリポットで育苗したものでは根がポリポット外に出ず、育苗時に主根が根回りしており、植栽後の発育が悪く、果菜苗の活着不良を起こしやすいという問題があった。
【0004】
また、ポリポットで育苗されると、通気性がなくポリポット内の土壌より蒸発した水分がポリポットの内壁に結露することから、ポリポットの内壁面に到達した果菜苗、葉菜苗、草花、樹木の根がポリポットから外方にでることができず、ポリポットの内壁に沿って伸長し、いわゆる主根の根回りを生じてしまい細根が少なくなるという問題もあった。その結果、植栽された果菜苗、葉菜苗、草花、樹木の生育も優れず、活着不良を起こし易いものとなる。
【0005】
斯かる従来の育苗に用いられる育苗用ポリポットは、例えば合成樹脂を溶融し、鉢状に成形したものであって、この果菜苗、葉菜苗、草花、樹木を取り出した後のポットは回収したり、産業廃棄物として処理しなくてはならず、回収の手間が掛かるうえ、運送や焼却の費用も必要となるという問題もあり、焼却処分する場合にはダイオキシン等の有害物質を発生させ公害の原因にもなるという問題がある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、主根の根回りを防止しし、細根が多い活着のよい果菜苗、葉菜苗、草花、樹木を安価に生産できる育苗装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にかかる育苗装置は、少なくとも1つのポット収納部を設けてなるポットケースと、該ポット収納部に収納され、内方に栽培用土が充填されるポットとを備えてなる育苗装置であって、ポット収納部の内周面の一部に、ポットケースの底部から2〜10センチメートルの範囲の高さ位置にポット受け部を形成し、該ポット受け部にポットを載置した時に、そのポットの底部とポットケースの底面との間に空間を形成するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、ポットが通気性並びに通水性を有する板状部材と、この板状部材に載置される筒状部材とからなり、板状部材がポット受け部に固定するようにしたことや、生分解性プラスチック及び生分解性プラスチック製製繊維若しくは腐食性繊維でシート状素材により、筒状部材を形成するようにしたことも特徴の一つである。
【0008】
そして、本発明にかかる育苗方法は、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に固定されたポットの底部とその上方に挿抜自在に設置された生分解性プラスチック繊維若しくは腐食性を有する繊維からなるポット側壁部とで育苗用ポットを形成し、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に設置された育苗用ポットで育苗することにより、ポット内での植物の根回りを防止し、育苗時ポット下に根が出なく、細根の多い植物を育苗するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の育苗装置及び育苗方法にかかる実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は育苗装置の分解斜視図を示し、図中符号1は育苗装置を全体的に示す。
この育苗装置1は、平面視で矩形に形成されたポットケース2と、このポットケース2内に形成された複数のポット収納部3・3・3・・・に収納されて後述する底板部材8とともにポット4を形成するポット側壁部材(筒状部材)5とからなる。
上記ポット収納部2は図2及び図3に示すように、ポットケース2の表面側から等間隔で垂下した例えば4本より10本までの側壁形成用板材6と、この側壁形成用板材6の下端を連結する環状部材部分7とを一体に形成して構成されており、側壁形成用板材6の中間高さ位置にはポット4の底板部材(板状部材)8を受け止めるポット受け部9が形成されている。
【0010】
このポット受け部9は図2乃至図4に示すように、側壁形成用板材6の中間高さ位置に底板受け用突出部10と、その上方の底板押さえ用突出部11とで形成されており、底板受け用突出部10と底板押さえ用突出部11との間に上記のポット4の底板部材8が嵌合固定されている。
本例ではポット受け部9の高さ位置をポットケース2の底部から5センチメートル開くようにしてあるが、これは2〜10センチメートルの範囲で任意に設定できる。これは2センチメートル以下にするとポット4の底部の空間が少なく空気層が無いに等しくなること、10センチメートルにすると全体が嵩高くなり、実用上望ましくないことによるものである。
ポット4の底板部材8は、比較的硬質の合成樹脂製の板状網を底板受け用突出部10部分の内径と略同径に形成されており、この編目の荒さは栽培用土12が漏れ出ない大きさとなっている。
【0011】
上記底板部材8とともにポット4を形成するポット側壁部材5は、腐食性を有する目の粗い麻布をポリビニルアルコール(PVA)等でシート状に固結してシート素材を形成し、このシート素材を扇形に形成するとともに、扇形の重ね合わせた端部同士をステップル(例えばホッチキス(マックス社登録商標)等)14で固定してポット収納部2に挿入可能な下窄まりテーパー状の筒体に形成してある(図1及び図6参照)。
尚、ポット側壁部材5は上記の粗い麻布のものに限られず、腐食性繊維や、例えば、生分解性プラスチックを繊維に紡出し、これをラップ状にして固結し目付が約60g〜150g/m2 にした不織布からなるシート素材を扇形に形成したり、更には和紙や洋紙、無数の孔を設けた生分解性プラスチックシート等もシート素材として使用することができる。
この場合、通気性及び通水性を保つために10000〜50000個/1平米の孔を開けることが望ましい。また、ステップル14は接着剤による接合や縫製さらには溶着することにより縫着に代えることもできる。
【0012】
上記のように構成される育苗装置1を用いて植物の育成から植栽に至るまでを次に説明する。
図1に示すように、先ず、上記のようにして形成された下窄まりテーパー状のポット側壁部材5を底板部材8に載置してポット4を形成する。
ポット4が形成されると、このポット4に栽培用土12を充填し、この栽培用土12に例えば果菜苗の種を播種し、または植物の小苗を植付けして灌水し、育苗する。
この時、ポット4はポットケース2内のポット収納部3の中間高さ位置に位置していることから、灌水された余分の水はポット4の周囲から外方に流れ出てポット4内に溜まったり結露することがない。
【0013】
これにより、育苗される果菜苗15の根がポット4の周壁にそって回る所謂“根回り”が発生しない上に主根より細根が多くなる。また、底板部材分8の下方に空間16が形成されていることから、果菜苗15の根がポット4の底板部材分8から下方に伸びることがなくなる。
しかして図5に示すように、果菜苗15が所定の大きさに生育した後、これを移植する場合、育苗した果菜苗15を入れたポット4をポット収納部3に入れた状態のまま、移植する所望の場所に運ぶ。
所望の場所に運ばれた後、果菜苗15を入れたポット4を上方に引き抜く。すると、ポット4の底板部材8はポット収納部3の中間高さ位置にとり残された状態で果菜苗15がポット側壁部材5と、育苗した栽培用土12とともにポット収納部3から取り出される。
【0014】
こうしてポット収納部3から取り出された果菜苗15のポット4部分の底部は育苗用土12が露出した状態になっている(図6参照)。
従って、この状態で果菜苗15をポット側壁部材5とともに所望の場所に埋設すると、ポット4部分の底部は開放された状態であるので、果菜苗15の根はストレス無く伸びるので、移植後の活着が良く、根が深く侵入するので、樹勢が旺盛となる。
因みに、本発明の育苗装置で育苗した植物は主根のポット4内での根回りがなく、主根より細根が従来のポリポットで育苗したものに比べて、2〜3倍出ており、活着の良いものになったのが確認できた。
また、一緒に植栽されたポット側壁部材5は、徐々に腐食して消滅するので、根の発達を阻害することはない。
【0015】
尚、上記実施の形態ではポット4の底板部材分8をポット収納部3の中間高さ位置に設けるようにしてあるが、この高さ位置の範囲は必ずしもポット収納部3の中間高さに限られるものでは無く、要するにポット4が形成された時にその底板部材8の下方に空間が形成される高さであれば本発明を実施することができるのである。
また、底板部材8は通水性を有する板状部材、例えばステンレス製のパンチングメタルやエキスパンドメタル、あるいは格子状に組まれた丸形や角形の他の部材等で形成することもできるのは勿論のことである。要は、ポット4の栽培用土12が漏れでない程度の格子もしくは目を形成できるものであれば実施することができる。
更に、ポットケース2に形成するポット収納部3の数は図示したものに限られないことは勿論のこと、ポット収納部3の平面視の形状は丸形にかえて角形や楕円等に変更することができるのは言うまでもないことである。
加えて、本例では果菜苗15を育苗するのを例にしてあるが、こうしたものに限られず、葉菜苗、草花、樹木を育成する時にも使用することができるのは言うまでもないことである。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも1つのポット収納部を設けてなるポットケースと、該ポット収納部に収納され、内方に栽培用土が充填されるポットとを備えてなる育苗装置であって、ポット収納部の内周面の一部に、ポットケースの底部から2〜10センチメートルの範囲の高さ位置にポット受け部を形成し、該ポット受け部にポットを載置した時に、そのポットの底部とポットケースの底面との間に空間を形成するようにしてあるので、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に設置された育苗用ポットで育苗することにより、ポット内での植物の根回りを防止して主根より細根を多くすることができるとともに、植物を移植する場合にはポット側壁部材を栽培用土とともに埋設するようにしてあるので、従来の小径の鉢やポリポットで育苗した果菜苗を、植栽の際にはその小径の鉢やポリポットから取り出されて移植する手間を無くして短時間で且つ簡単に移植することができるだけでなく、取り外したポリポットの回収の手間をなくせるとともに、ポリポットを産業廃棄物として処理することに伴う諸々の問題、例え運搬や焼却の手間や費用、焼却時のダイオキシンの公害の発生等の問題をなくすことが出来る利点がある。
【0017】
また、植物を育苗する場合、ポットの周囲に空間が形成されていることから、ポット内の結露が無く、ポット内の結露による根回りを防止し、主根より細根が多く、活着のよい植物にする事が出来るという利点もある。更に、移植時にはポットの底部が開放された状態で埋設されるために、その移植後の根の発達もよくなる。
更に、ポットの底部は繰り返し使用することができ、消耗品はポット側壁部材だけなので、経済的であり、育苗費用も安価にすることができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】は本発明の育苗装置の全体斜視図である。
【図2】は本発明の育苗装置にかかるポット収納部の縦断側面図である。
【図3】は本発明の育苗装置にかかるポット収納部の平面図である。
【図4】は本発明の育苗装置にかかるポット受け部の部分拡大図である。
【図5】は本発明の育苗装置の使用状態の斜視図である。
【図6】は本発明の育苗装置で育苗された苗木の仰観図である。
【符号の説明】
1・・・育苗装置
2・・・ポットケース
3・・・ポット収納部
4・・・ポット
8・・・ポットの底板部材
9・・・ポット受け部
12・・・栽培用土
16・・・空間
Claims (4)
- 少なくとも1つのポット収納部を設けてなるポットケースと、該ポット収納部に収納され、内方に栽培用土が充填されるポットとを備えてなる育苗装置であって、ポット収納部の内周面の一部に、ポットケースの底部から2〜10センチメートルの範囲の高さ位置にポット受け部を形成し、該ポット受け部にポットを載置した時に、そのポットの底部とポットケースの底面との間に空間を形成するようにしたことを特徴とする育苗装置。
- ポットが通気性並びに通水性を有する底板部材と、この底板部材に載置される筒状部材とからなり、底板部材がポット受け部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の育苗装置。
- 筒状部材が生分解性プラスチック及び生分解性プラスチック製繊維若しくは腐食性繊維でシート状素材からなる請求項2に記載の育苗装置。
- ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に固定されたポットの底部とその上方に挿抜自在に設置された生分解性プラスチック繊維若しくは腐食性を有する繊維からなるポット側壁部とで育苗用ポットを形成し、ポットケースのポット収納部の中間高さ位置に設置された育苗用ポットで育苗することにより、ポット内での植物の根回りを防止して主根より細根が多い植物を育苗するようにしたことを特徴とする育苗方法。
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