現在広く普及している金融システムにおいて、キャッシュカード、クレジットカード、銀行員のIDカード等の磁気カードと、預金通帳等の磁気ストライプを有する通帳は、同時に処理されることが多い。これらの磁気カードはおもに、専用の磁気カードリーダに挿入され、磁気ストライプの読取が行われる。一方、通帳は、専用の通帳プリンタに挿入され、通帳の表面に設けられた磁気ストライプの読取り・書込みや、印字面への文字・数字等の印字が行われていた。
従って、磁気カードの磁気ストライプの読取と、通帳の磁気ストライプの読取り、書込み、文字・数字等の印字を行うことのできる処理装置においては、磁気カードを処理する機構と、通帳を処理する機構の双方を有しており、夫々の機構において、磁気ストライプを行うためのヘッドや、磁気カードまたは通帳を搬送するための機構が必要となっていた。このことは、コストの増大や、小型軽量化が図れないという問題が発生していた。また、独立した機構を制御する必要から、制御プログラムも冗長なものとなっていた。
かかる問題点を解決する手段として、OLIVETTI社のPR50("OLIVETTI"及び"PR50"はOLIVETTI社の商標)において、磁気カードの磁気ストライプの読取と、通帳の磁気ストライプの読取、文字・数字等の印字を1つの機構で行う技術が採用されている。
しかし、この技術においても、種々の問題点を有していた。第1の問題点は、幅85.6mm、長さ54.0mmの磁気カードを直接挿入、搬送し、磁気ヘッドに磁気カードの磁気ストライプを近接させる必要が生ずるため、従来型の通帳プリンタ機構よりも、1つのローラ組付部材310に搬送ローラ311,313,315を従来の通帳プリンタよりも高密度で配置する必要があり(図14参照)、また、ローラ組付部材自体も従来の通帳プリンタよりも高密度で配置する必要が生ずるという設計上の問題である。このような設計上の制約は部品数の増加によるコストの増大や、小型軽量化が図れないという結果となる。
第2の問題点は、磁気カードを直接挿入、搬送すると、磁気カードの多くに設けられているエンボスの凹凸形状の影響で、斜行する可能性が高くなるという問題である。この磁気カードのエンボスは常に一定個所に設けられているのではなく、1つのローラ組付部材に複数の搬送ローラが設けられている場合は、特に各々の搬送ローラが受ける抵抗値等が均一でないため、磁気カードを斜行させるモーメントが働くためである。この斜行を防止するためには、特別な設計上の配慮や、特別な機構を追加する必要が生ずる結果となっていた。このことも、コストの増大や、小型軽量化が図れないという結果につながる。また、この磁気カード上のエンボスは磁気ヘッドと磁気ストライプとの密着を妨害する可能性もあるため、設計上の制約となる可能性もある。
第3の問題点は、各々の搬送ローラに加える圧力を上げる設計にしなければならないという問題である。磁気カードは、ISO等の規格に基づいて設計されており(ISO 7811等)、そのサイズは、幅85.6mm、長さ54.0mmである。従って、磁気ヘッドによる磁気ストライプの読取時に、この磁気カードを保持する搬送ローラの数は減少させざるを得ない。この減少した数の搬送ローラで、読取時に磁気ヘッドが磁気ストライプを擦る力に耐えるためには、各々の搬送ローラに加える圧力を上げる設計にする必要が生ずる。しかし、各々の搬送ローラに加える圧力を上げる設計にすると、帳票等の印字に際しては、カーボン等の複写感圧紙が反応してしまい、ローラの跡が転写してしまう恐れが生ずる。また、通帳や帳票の印字に際しては、印字個所の搬送の際、搬送ローラに付着したインクが搬送ローラの回転ごとに再度付着する現象(当業者で「烏の足跡」という俗称が付けられている)が生ずる可能性が高くなる。さらに、搬送ローラに加える圧力を上げつつ、送り精度を高めるためには搬送ローラの径を大きく設計する必要が生ずる。従って、この第3の問題点は、通帳プリンタの印字能力、搬送能力の低下や、コストの増大や、小型軽量化が図れないという結果につながる。
第4の問題点は、通帳プリンタの誤動作、誤作動が増大する可能性があるという問題である。現在ほとんどの通帳プリンタにおいて、帳票や通帳の挿入の検出や、帳票や通帳の長さの検出には、反射式光学センサが用いられている。透過型光学センサは、光源と光学センサを挿入される帳票等のほぼ法線方向に、帳票等をはさむように配置しなければならず、通常、通帳等は地面に対し水平に挿入されるため、光源と光学センサは上下方向に配置される。従って、下に配置された光源または光学センサにはほこり等が付着し、その機能を発揮できなくなる。これに対し、反射式光学センサは、帳票の上方向に光源と光学センサを配置することができ、ほこり等の付着の影響が少ない。このことが通帳プリンタにおいて、帳票等の挿入・長さ検出に反射式光学センサが用いられている所以である。この反射式光学センサは、感度良く設定し過ぎると、誤った検出による、誤動作や、誤作動の原因となるため、検出範囲を設定されている。この範囲は通常挿入されるであろう帳票や、通帳の色(白色に近い色)を基準に設定されているため、さまざまな色で作成される磁気カードや光カードの全てを検出することは難しい(例えば、カードがつや消しの黒色であった場合、その反射光の検出は難しい)という問題がある。従って、磁気カードを直接挿入方式を採るには、通帳プリンタの誤動作、誤作動の可能性を増大させるか、ほこり等の影響を受けやすい透過型光学センサを採用するか、反射の少ない色のカードは使用できないようにするか選択しなければならない。
第5の問題点は、磁気ヘッドの可動範囲を増大させる設計にしなければならないという問題である。ISO規格における通帳の磁気ストライプに対する書き込みは、通帳端より最小85mm幅であるが、通帳の最小幅を120mmと規定した場合は、通帳の左側35mmの範囲は磁気ヘッドを可動させる必要はない。従って、現在多くの通帳プリンタにおいて、採用されているレフト・アライン方式(通帳や、帳票等の媒体をレフト・アライン(左寄せ)して印字する方式、OLIVETTI社のPR50、IBM9055,IBM4772等で採用されている)においては、通帳プリンタの搬送経路におけるレフトガイドから35mmの範囲は磁気ヘッドを可動させる必要はない。しかし、このレフトアライン方式において、磁気カードを直接挿入し、その磁気ストライプを読み取るためには、図2に示すようにcの幅は最大2.92mmとなっており、データが実際書き込まれている位置は、右端(ストライプは下側にして読まれる)から7.44mm(ISO規格.7811/4)であるため、レフトガイド一杯に磁気ヘッドを移動させる必要がある。さらに、通帳と磁気カードを同一方式で読み取るとすると、磁気ヘッドは必要のない通帳の左側35mmの範囲を接触移動(空読み)することとなり、磁気ヘッドの劣化の原因となる(この範囲は磁気ストライプの領域でなく、クロスである場合がある)。これを回避するためには、磁気ヘッドによる磁気ストライプの読取を行う前に、通帳か磁気カードかの判別を行う必要が生ずる。従って、この第5の問題点は、通帳プリンタの磁気ヘッドの劣化や、追加機構によるコストの増大や、小型軽量化が図れないという結果につながる。
第6の問題点は、磁気カードがスキュー補正センサに反応しない確立が高くなるという問題である。特に、本願出願時において開発中の中央挿入方式のプリンタ(この記載はこの方式のプリンタが出願時において公知であるとの自白には当たらない)は、搬送された媒体がスキューしている(傾いている)場合、スキューの補正を行うため、問題が大きい。この前提として、スキューしているか否かの判断は、ローラ取付部材に平行に、一定間隔で設けられた2つの光学センサによって行われる。この2つの光学センサが予め決められた時間内に双方ともオンになれば、媒体がスキューしていないと判断され、一方のセンサがオンになった後、一定時間内に他方のセンサがオンにならない場合は、媒体にスキューが発生していると判断される。このとき、磁気カードを直接挿入、搬送したとすると、磁気カードは通常、85.6mm幅であるため、一方または双方のセンサの位置を通過しない可能性がある。また、2つのセンサの間隔を狭く設定すると、検出感度が低くなってしまう。
かかる通帳プリンタの問題点は、IDカードを搬送する機構が必要であるIDカードの表面に印刷を行うIDカードプリンタ、IDカードの磁気ストライプへのデータ書き込みを行うIDカードエンコーダ、IDカードの表面への印刷、磁気ストライプへのデータ書き込みを行うIDカード製造装置においても生じていた。
本発明は、記録保持媒体をホルダにセットした後に処理することによって、上記問題を解決する。本発明の好適な実施例においては、磁気カードと、磁気ストライプを有する通帳の双方の磁気ストライプを読み取り可能な通帳プリンタに応用される(以下磁気カード対応通帳プリンタと呼ぶ)。磁気カードは、専用のカードホルダにセットされた後、磁気カード対応通帳プリンタに挿入され処理される。
本発明の好適な実施例においては、この専用の磁気カードホルダにより、設計上の制約が少なく、小型軽量化した磁気カード対応通帳プリンタを設計することを可能とする。
本発明の好適な実施例においては、読取を行う記憶媒体の形状の影響を緩和する記憶媒体ホルダを提供する。
本発明の好適な実施例においては、通帳プリンタの印字能力、搬送能力を低下させることない、磁気カード対応通帳プリンタを提供する。
本発明の好適な実施例においては、通帳プリンタの誤動作、誤作動の可能性を増大させることのない、磁気カード対応通帳プリンタを提供する。
本発明の好適な実施例においては、磁気カードの種類によって影響を受けない磁気カード対応通帳プリンタを提供する。
本発明の好適な実施例においては、磁気ヘッドの可動範囲の設計において制約の少ない磁気カード対応通帳プリンタを提供する。
本発明の好適な実施例においては、スキュー補正センサに影響を与えない磁気カード対応通帳プリンタを提供する。
本発明は上記課題を解決するために、磁気ストライプ及びエンボスを有する磁気カードを保持する第1の開口部と、第1の開口部の底面に設けられたエンボスをカバーする第2の開口部と、磁気カードが第1の開口部から脱落することを防止する脱落防止シートとを有し、磁気カードの長辺よりも大きく、磁気記録媒体読取装置の搬送経路よりも小さい幅と、磁気カードの短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有するほぼ長方形板状のカードホルダを提供する。この記録媒体読取装置は、磁気カードの読み取り装置、磁気カードの読み取り及び書き込み装置、光カードの読み取り装置、光カードの読み取り及び書き込み装置、磁気カード対応通帳プリンタを含む概念である。本発明のカードホルダの長さについて「磁気カードの長辺よりも大きい」とのみ記載し、上限を設けていないのは、連続用紙を印字するプリンタのように、理論上無限大の長さを有する媒体を処理可能な装置も存在するためである。なお、上記連続用紙を印字するプリンタの場合、印字する連続用紙をループ状に繋げると、無限長の媒体と仮想できる。
このカードホルダは、磁気記録媒体を読取るための磁気ヘッドと磁気記録媒体を搬送するための搬送ローラとを有する磁気記録媒体読取装置の搬送経路に挿入され、その搬送ローラによって搬送される。
本発明の他の形態によれば、カードホルダは長方形の形状であり、カードホルダの対角線長さは、搬送経路幅より大きく、カードホルダの幅は、搬送経路幅より小さい。このような形状により、搬送経路内でカードホルダがスキューすることを防止できる。
本発明の他の形態によれば、脱落防止シートは、磁気カードがセットされた場合、11.0mm〜20.0mmの幅で、磁気カードの上部が露出するように設けられている。これにより、磁気ストライプが脱落防止シートから露出し、脱落防止シートが磁気ヘッドの走行を妨害することがなくなる。また、磁気カードのサイン記載部を保護することができる。
本発明の他の形態によれば、カードホルダは、搬送された媒体の長さを検出する光学センサに認識される長さを調節するための光反射率が15%以下である光学的切欠き部を有している。これにより、磁気記録媒体読取装置に認識されるカードホルダの長さを調節することができる。
本発明の他の形態によれば、カード状記録媒体を保持する開口部を有し、カード状記録媒体の短辺よりも大きく、読取装置の搬送経路よりも小さい幅と、カード状記録媒体の長辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有するカードホルダが提供される。このカードホルダは、記録媒体処理装置の搬送経路に挿入され、記録媒体処理装置の搬送ローラによって搬送される。このカードホルダは、主に搬送方向と平行に記録媒体の読み取り、書き込み等が行われる記録媒体処理装置において使用される。また、この記録媒体処理装置は、磁気カードの読み取り装置、磁気カードの書き込み装置、光カードの読み取り装置、光カードの書き込み装置、磁気カード対応通帳プリンタ、磁気カードまたは光カードの表面に印刷を行うカードプリンタ、磁気カード製造装置、光カード製造装置を含む概念である。
本発明の他の形態によれば、カード状記録媒体を保持する開口部を有し、カード状記録媒体の長辺よりも大きく、読取装置の搬送経路よりも小さい幅と、カード状記録媒体の短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有するカードホルダが提供される。このカードホルダは、記録媒体処理装置の搬送経路に挿入され、記録媒体処理装置の搬送ローラによって搬送される。
本発明の他の形態によれば、磁気カードをその第1の開口部に保持し、磁気カードのエンボスを第1の開口部の底面に設けられた第2の開口部でカバーし、磁気カードが第1の開口部からの脱落を防止する脱落防止シートとを有しており、磁気カードの長辺よりも大きく、通帳プリンタの搬送経路よりも小さい幅と、磁気カードの短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有する板状カードホルダが通帳プリンタの搬送経路へ挿入されたことを検出する段階と、搬送経路への挿入の検出に応答して、通帳プリンタの搬送ローラの回転を開始する段階と、カードホルダを読取装置の搬送ローラを用いて搬送する段階と、カードホルダに保持された磁気カードの磁気ストライプのデータが記録されているトラックと磁気ヘッドの位置を合わせる段階と、磁気ヘッドを移動させ、磁気ストライプに記録されたデータを読み取る段階とを含む、磁気ヘッドと各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材とを備える通帳プリンタにおいて、エンボスを有する磁気カードの磁気ストライプに記録されたデータを磁気ヘッドを用いて読み取る方法が提供される。
本発明の他の形態によれば、本発明の方法は、読み取られたデータが磁気カードの磁気ストライプに記録されたデータであるか通帳の磁気ストライプに記録されたデータであるかを判別する段階をさらに含む。具体的には挿入された媒体の長さ又は幅を検出し、予め設定された値と比較することや、読み取ったデータのフォーマットから判別することによって実施可能である。
本発明の他の形態によれば、カード状記録媒体をその開口部に保持し、カード状記録媒体の長辺よりも大きく、読取装置の搬送経路よりも小さい幅と、カード状記録媒体の短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有している板状のカードホルダの記録媒体処理装置の搬送経路への挿入に応答して、カードホルダを記録媒体処理装置の搬送ローラを用いて搬送する段階と、カードホルダに保持されたカード状記録媒体を記録媒体処理位置で停止する段階とを含む、各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材とを備える記録媒体処理装置において、カード状記録媒体を搬送する方法が提供される。この記録媒体処理位置は、磁気カードの読み取り位置、磁気カードの書き込み位置、光カードの読み取り位置、光カードの書き込み位置、磁気カードまたは光カードの表面に印刷を行う位置を含む概念である。
本発明の他の形態によれば、カード状記録媒体をその開口部に保持し、カード状記録媒体の長辺よりも大きく、記録媒体処理装置の搬送経路よりも小さい幅と、カード状記録媒体の短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有している板状のカードホルダが記録媒体処理装置の搬送経路へ挿入されたことに応答して、カードホルダを記録媒体処理装置の搬送ローラを用いて搬送する段階と、カードホルダに保持されたカード状記録媒体のデータ記憶位置とヘッドの位置を合わせる段階と、このヘッドを用いて、カード状記録媒体に記録されたデータの読取り、または、カード状記録媒体へのデータの書込みを行う段階とを含む、読取または書込を行うヘッドと、各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材とを備える記録媒体処理装置において、カード状記録媒体に記録されたデータの読取り、または、カード状記録媒体へのデータの書込みを行う方法が提供される。
本発明の他の形態によれば、磁気カードをその開口部に保持し、磁気カードの長辺よりも大きく、通帳プリンタの搬送経路よりも小さい幅と、磁気カードの短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有している板状のカードホルダが通帳プリンタの搬送経路へ挿入されたことを検出する段階と、搬送経路への挿入の検出に応答して、通帳プリンタの搬送ローラの回転を開始する段階と、カードホルダを読取装置の搬送ローラを用いて搬送する段階と、カードホルダに保持された磁気カードの磁気ストライプのデータが記録されているトラックと磁気ヘッドの位置を合わせる段階と、磁気ヘッドを移動させ、磁気カードに記録されたデータを読み取る段階とを含む、磁気ヘッドと各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材とを備える通帳プリンタにおいて、磁気カードの磁気ストライプに記録されたデータを磁気ヘッドを用いて読み取る方法が提供される。
本発明の他の形態によれば、磁気ストライプをその表面に有する磁気カードをその開口部に保持し、磁気カードの長辺よりも大きく、通帳プリンタの搬送経路よりも小さい幅と、磁気カードの短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有している板状のカードホルダと、磁気ストライプをその表紙に設けている通帳が通帳プリンタの搬送経路へ挿入されたことを夫々検出可能な光学センサと、各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材であって、複数のローラ組付部材は磁気カードの短辺よりも長い間隔で配置されており、共同して前記通帳及び前記カードホルダを搬送することが可能である前記搬送ローラを制御して、カードホルダに保持された磁気カードの磁気ストライプのデータが記録されているトラックと磁気ヘッドの位置を合わせる搬送ローラ制御手段と、磁気カードに記録されたデータを読み取るための磁気ヘッドと、磁気ヘッドを移動させるための磁気ヘッド移動用モータと、磁気ヘッドで読み取ったデータが前記磁気カードのものか通帳のものかを判別する手段とを含む、磁気ストライプを有する通帳の磁気ストライプに記憶されたデータを磁気ヘッドにより読取が可能な通帳プリンタが提供される。
本発明の他の形態によれば、磁気ヘッドで読み取ったデータが前記磁気カードのものか通帳のものかの判別は、読み取られたデータのフォーマットを基準に行われる。
本発明の他の形態によれば、磁気ストライプをその表面に有する磁気カードをその開口部に保持し、磁気カードの長辺よりも大きく、通帳プリンタの搬送経路よりも小さい幅と、磁気カードの短辺よりも大きい長さと、搬送経路に挿入可能な厚さを有している板状のカードホルダと、磁気ストライプをその表紙に設けている通帳と、帳票の3種類の媒体の通帳プリンタの搬送経路への挿入を夫々検出可能な光学センサと、搬送経路に挿入された媒体がカードホルダまたは通帳のいずれかであるか、または、帳票であるかを判別するためのユーザ入力を検出する手段と、ユーザ入力が、カードホルダまたは通帳のいずれかであることを示す信号であった場合、各々がローラ軸に複数の搬送ローラを有する複数のローラ組付部材であって、複数のローラ組付部材は磁気カードの短辺よりも長い間隔で配置されており、共同して前記通帳及びカードホルダを搬送することが可能である搬送ローラを制御して、カードホルダに保持された磁気カードの磁気ストライプのデータが記録されているトラックと磁気ヘッドの位置を合わせる搬送ローラ制御手段と、磁気ヘッドを移動させ、磁気カードに記録されたデータを読み取るための磁気ヘッド移動用モータと、磁気ヘッドによって読み取られたデータが磁気カードの磁気ストライプに記憶されたデータであるか、通帳の磁気ストライプに記憶されたデータであるかを判別する手段と、を含む、印字ヘッドによる通帳への印字及び磁気ヘッドによる通帳の表紙に設けられた磁気ストライプの読取が可能な通帳プリンタが提供される。
以上説明したように、本発明によれば、専用の磁気カードホルダにより、設計上の制約が少なく、小型軽量化した磁気カード対応通帳プリンタを設計することを可能とする。また、読取を行う記憶媒体の形状の影響を緩和する。さらに、本発明の磁気カード対応通帳プリンタは、通帳プリンタの印字能力、搬送能力を低下させることがなく、通帳プリンタの誤動作、誤作動の可能性を増大させることもない。また、磁気カードの種類によって影響を受けず、磁気ヘッドの可動範囲の設計において制約の少ないという利点を有している。
図1及び図2は本発明において処理される情報記録媒体の1実施例を示すものである。カード状情報記録媒体には、磁気的に情報を記録再生可能な磁気ストライプ部を有する磁気カードや、光学的に情報を記録再生可能な光記録再生部を有する光カードや、磁気的に情報を記録再生可能な磁気ストライプ部と光学的に情報を記録再生可能な光記録再生部の双方を有する光・磁気併用カードが存在する。また、板状の媒体に、バーコードを印刷したものや、バーコードシールを貼付したものもある。またその形状も、長方形に限定されるものではなく、さまざまな形状(厚み方向での変化を含む)を有する媒体に本願発明を応用する事も可能である。しかし、読者の発明理解の便宜に資するべく、以下この情報記録媒体を磁気カードに特定して説明を行うこととする。
磁気カードの規格には、クレジットカード等で採用されているISO規格や、日本の都市銀行等で採用されているJISII型の規格等がある。図1、2に示す磁気カードはISO規格に準拠した磁気カード100が示されている。ISO規格に準拠した磁気カードは、図1に示すように表面の下部に、カード番号、所有者の氏名、有効期限等を表示するエンボス領域101が存在する。ISO規格による磁気カード100の寸法は、幅85.47〜85.72mm、長さ53.92〜54.03mm、厚み0.76mm±0.08mm、コーナーエッジR3.18mmのほぼ長方形の形状を有している。エンボスの高さは最大0.48mmである。
また、図2に示すように、磁気ストライプ105は、裏面に設けられており(JISII型規格では表面に磁気ストライプとエンボス領域が存在する)、そのISO規格に於けるサイズ情報は、図2に示す。
図3は、本発明のカードホルダの1実施例を示す図である。このカードホルダ200は、前記ISO規格に準拠した磁気カードを保持し、236mmの搬送経路幅を有し、そのローラ組付部材を69mm間隔で配置する磁気カード対応通帳プリンタに挿入される。本発明の好適な実施例においては、図4に示すように、このカードホルダ200を、3つのカードホルダ構成部材201,203,205を貼り合わせる事によって容易に作成することができる。本実施例においては、カードホルダ構成部材201,203は0.2mm厚の貼り合わせ用接着テープによって貼り合わされている。このカードホルダ200は、モールドや、エッチング等によっても作成することができることは当業者に容易に理解できる事項であろう。
このカードホルダの幅は、235.5mmであり、前述の搬送経路幅よりも僅かに小さいサイズになっている。このため、搬送経路内で左右にずれることや、スキューすることを防止することができる。このカードホルダの長さ、90.0mmであり、前述のローラ組付部材の設置間隔よりも長いサイズになっている。このため、搬送経路内で搬送不能になることを防止することができる。カードホルダ200のサイズが、従来の通帳プリンタの最小処理サイズのよりも大きいことは以下に示す従来の通帳プリンタのサンプルから容易に理解できるであろう。
この表はIBM9055通帳プリンタ、IBM4772通帳プリンタ、及びIBM4009通帳プリンタの帳票及び通帳の最小処理サイズを示す表である。表において、その通帳プリンタで処理することのできる帳票及び通帳の最小サイズはIDカードの幅85.6mm,長さ54.0mmに比べいずれの方向に関しても大きなものとなっている。特に、磁気ストライプ処理可能な通帳の最小処理サイズはIDカードサイズよりも幅34〜41mm、長さで45mm大きくなっている。従って、これらの通帳プリンタに直接IDカードを挿入した場合、搬送経路の途中で残留する恐れがある。
「REMS(READ/ENCODE MAGNETIC STRIPE:磁気ストライプ読み取り/書き込み)なし」に比べ「REMSあり」の最小処理サイズ(幅)が大きくなる理由は、磁気ヘッド305の着地地点をあまりレフトガイドに近づけたくないためであり、かりに、レフトガイド近くから着地せざるを得ない場合、レフトガイド面に切欠を設ける必要が生じ、スムーズに媒体をガイドする目的に反する事となってしまうのである。
再び図3を参照すると、カードホルダ200には、磁気カード100を保持するための開口部255が設けられている。図4に示されている本発明の好適な1実施例であるカードホルダ200は、前述の中央挿入方式のプリンタで使用されることを前提に設計されている。図において、開口部255は、搬送経路に対し横方向に磁気ヘッドを駆動する通帳プリンタ(図12参照)に適用するため、ホルダ200に対し磁気カード100が横にセットされるが、搬送経路に対し、縦方向に磁気ストライプの読取を行う場合は、カードホルダ200に対して磁気カード100が縦にセットされるように開口部255が設けられる。
開口部235は、開口部235は磁気カード100のエンボス領域101をカバーする。カードホルダ構成部材205は、脱落防止シートであり、磁気カード100が開口部255から脱落することを防止する。
図5,6は、夫々ホルダ構成部材201,203を示す図である。本発明の好適な実施例においては、ホルダ構成部材201及びホルダ構成部材203は、共に白色のポリカーボネートが使用されている。白色は反射率が高く、反射型光学センサによって容易に検出されるためである(但し、本願の好適な実施例においては、ホルダ構成部材203側にのみ反射型光学センサが存在するため、ホルダ構成部材201は白色である意義はない)。従って、磁気カード自体を搬送しようとする場合、磁気カード表面に対しては他の媒体(帳票や通帳)に求めているのと同様の高反射率(たとえば60%以上)を要求できない(磁気カードは既存のものであり、図柄やデザインの面からも高反射率にすることは要求できない。)が、本発明のカードホルダを用いることで反射型光学センサはカードホルダの表面を検出することになるので、正確な検出が可能となる。なお、紙に多少事前印刷が合ってもよい様に、紙の反射率は普通60%以上としており、その印刷部分は15%以上になるようにしている。
ホルダ構成部材201及びホルダ構成部材203は、ポリカーボネート以外にも、種々の合成樹脂や、紙、木等によって作成することができる。但し、磁気ヘッドが擦った場合、磁気ヘッドに悪影響が生ずるような素材は好ましくなく、繰り返しの搬送や磁気ヘッドの擦りに耐えられる素材が好ましい。
ホルダ構成部材201は、磁気カード100のエンボス領域101をカバーし、搬送時の影響を回避する機能を有している。ホルダ構成部材201は厚さ約0.5mmに設計されているため、最大高さ0.48mmのエンボスよりも高く搬送時のエンボスの影響を軽減できる。但し、ホルダ構成部材201の厚さを常にエンボスよりも高く設計する必要はなく、エンボスの高さよりも低くても、搬送ローラが乗り上げる段差は小さくなるため、搬送時のエンボスの影響を軽減できる。
ホルダ構成部材203は、磁気カード100を保持するための開口部255を有している。この開口部は磁気カード100よりも僅かに大きいサイズであるため、磁気ヘッドによる読取に際して、磁気カード100は大きく移動することはない。このホルダ構成部材203の厚みは、約0.5mmに設計されおり、貼り合わせ用接着テープの厚さが約0.2mmであるから、合計0.7mmであり、約ISO規格の磁気カード厚0.76mm±0.08mmとほぼ同じか、それよりも僅かに薄い。これは、ホルダ構成部材203が磁気カードよいるも十分厚い場合、ホルダ構成部材203が磁気ヘッドの走行の妨げとなる可能性があるためである。この一方、ホルダ構成部材203が十分な厚みを有していない場合、磁気ヘッドによる読取に際して、磁気ヘッドによる摩擦に耐えることができず、磁気カード100は、カードホルダから脱落する可能性が高くなる。
本発明の好適な実施例においては、開口部255は、カードホルダ左端から74.8mmの位置に設けられている。これは磁気ヘッドの駆動位置を考慮して設計されている。この開口部255のカードホルダ200の左端からの距離は、以下に示す通帳の磁気ストライプ読取時の磁気ヘッド駆動状況を考慮して設計することが望ましい。
図に示すカードホルダ200は、開口部255がカードホルダ200の下端から13.5mmに設けられている。この距離は、図10に示す通帳400の磁気ストライプ405のデータ記憶位置(トラック位置)を考慮した設計となっている。
現在多くの磁気カード及び通帳で採用されているデータ記憶位置の規格を以下に示す。
多くのISO規格の磁気カードには、トラック−1とトラック−2をカバーする範囲に磁気ストライプがあり、Diners, VISA("Diners"はDiners International社の商標、"VISA"はVISA International社の商標)等のクレジットカードでは両トラックにそれぞれ別のデータが書き込まれている。一方、通帳ではIBM (Track-2) あるいはISO/DIN (Track-3)のどちらかのトラックを使用して、1種類のデータが書き込まれる。なお、正規の位置から10mmずらしたトラックもユーザの便宜のため従来の通帳プリンタでは用意している。
磁気ヘッド305の位置に通帳400の磁気ストライプ405の読み取り位置に合わせることは、事前に通帳400の磁気ストライプ405のどのトラックを使用するか通帳プリンタ300に設定されている(または、ユーザが設定変更している)ため可能であるが、カードホルダ200に保持された磁気カード100を正規位置に自動停止させるには以下の方法がある。
(a).挿入前に、通帳と磁気カードを区別する方法
ユーザが媒体の挿入前に、挿入される媒体が通帳であるか、磁気カードであるかの入力を行う。この場合、カードホルダの大きさは予め設定され、通帳プリンタは認識しており、通帳の読み取り位置に合わせてカードホルダを停止することができる。例えば、磁気カードの読み取り位置がトラック2であり、通帳でトラック3が使用されている場合、カードホルダの開口部255がカードホルダ下端より13.5mmに設けられているとすると、通帳の読み取り位置は下端から13.9mm、磁気カードの読み取り位置は下端から23.9(13.5+10.4)mmであるため、10mmの差がある。従って、カードホルダが挿入された場合センサがカードホルダ下端を検出後、カードホルダ200は10mm分手前で停止される。
(b).挿入後、磁気ストライプの読み取り迄の間に通帳と磁気カードを区別する方法
(b−1).カードホルダの長さを最小通帳長さより小さく設定し、または、カードホルダの長さを最大通帳長さより大きく設定し、挿入後センサで媒体の長さを測定し、予め設定した閾値と判定することで、通帳と磁気カードを区別することができる。区別さえつけば、予めアプリケーションで指定しておいた位置に停止させる事は可能である。なお、カードホルダの物理的な長さを最小通帳長さより小さくしたくない場合は、カードホルダ200の先端又は下端に、黒等の反射率の低い色のラベルを貼る、または、顔料を塗布することでセンサの判定長さを意図的に小さくする事もできる。この閾値の設定や、最小通帳長さか最大通帳長さで判別するかは、入力パネルからユーザに入力させることも可能である。
(b−2).媒体の横方向の位置や幅を検出できるセンサを有する通帳プリンタの場合には、カードホルダの幅を最小通帳幅より小さく設定する、または、カードホルダの幅を最大通帳幅より大きく設定することで、通帳と磁気カードを区別する。カードホルダの幅を最小通帳幅より小さく設定する場合は、搬送に影響を与えるため、287,289の部分等のセンサに反応する部分に黒等の反射率の低い色のラベルの貼付や、反射率の低い色の顔料の塗布を行う方が望ましい。この閾値の設定や、最小通帳幅か最大通帳幅で判別するかは、入力パネルからユーザに入力させることも可能である。
(c).カードホルダの下端を通帳でのトラックに応じて細工する方法
事前に通帳でなく磁気カードである事を入力する場合や、搬送された媒体が磁気カードホルダか通帳かを判別する機構が存在する場合は、別の停止制御が使用できるので問題はないが、事前入力や、判別する特別な機構なしに、停止制御できれば便利である。磁気ストライプ読み取り位置への媒体(通帳または磁気カード)の停止は、通常媒体下端を光学センサで検出することにより行なわれるが、カードホルダ200を用いた場合、磁気カード100を保持する開口部255の下端とカードホルダ200の下端に位置するカードホルダ200の縁取りにより、通帳に対してこの縁取り分伸びて認識される。例えば、通帳400と同様の設定でカードホルダ200を通帳プリンタ300に挿入すると(磁気カード100、通帳400ともにトラック−2を使用すると仮定すると)、停止位置は、カードホルダ200の下側の縁取りの影響で、縁取り分(13.5mm)行き過ぎてしまう。これを解決するには以下の方法が存在する。
(c−1).カードホルダの縁取りを、通帳の読み取り位置−磁気カードの読み取り位置にする
例えば、通帳がトラック−3を使用しており、磁気カードがトラック−2を使用している場合は、縁取りを3.5mm(13.9−10.4)に設定することにより、磁気カードであるという特別の設定なしに磁気カード読み取り位置にカードホルダ200を停止できる。通帳下端からの読み取り位置が、磁気カード下端からの読み取り位置よりも長い場合に有効である。
(c−2).カードホルダに光学的切欠部分を設ける
前述のように、磁気ストライプ読み取り位置への媒体の停止は、通常媒体下端を光学センサで検出することにより行なわれる。従って、カードホルダ200に、光学センサで認識されない部分を設ければ、見かけ上の媒体長さを調整できる。すなわち、センサ検出位置に相当する位置の下端をカットする(透過型光学センサにも有効である)か、黒ラベル(Matte処理が望ましい)を適用すれば反射型光学センサに検出されない。図3に示すカードホルダ200のように、その幅を搬送経路幅に合わせる場合や、レフトアライン方式の通帳プリンタの場合は検出位置が既知であるので、この処理は、図11に示す下端処理を行えばよい。中央挿入方式等においては、センサ検出位置が不定なので、黒ラベル等を下端の全幅に適用することが望ましい。
図11は、磁気カード100がトラック−2を使用ていると想定して設計されたカードホルダ200の実施例である。通帳400がトラック−3,10mmシフト(23.9mm)を使用している場合、磁気カード100のトラック−2(10.4mm)との差は13.5mmであるため、カード後端のカットは行わない。通帳400がトラック−2,10mmシフト(20.4mm)を使用している場合、磁気カード100のトラック−2(10.4mm)との差は10.0mmであるため、281の部分がカットされる。同様に、通帳400がトラック−3(13.9mm)を使用している場合、磁気カード100のトラック−2(10.4mm)との差は3.5mmであるため、281と283の部分がカットされる。さらに、通帳400もトラック−2(10.4mm)を使用している場合、磁気カード100のトラック−2(10.4mm)との差は0mmであるため、281,283,285の部分がカットされる。
光学センサで認識されない部分を設け、見かけ上の媒体長さを調整する手法としては、カットする他、黒等反射率の低い色のラベルを貼る、顔料を塗布する、逆に、281,283,285等を黒色(または透過する素材)で作っておき、285に白等光反射率の高い色のシールを貼る(または、281,283,285等を黒色で作っておき、281,283,285に白色のシールが貼ってあり、281のシールだけはがす)、受けた光をセンサと異なる方向に反射する等が考えられる。このように、光学センサで検出不能になる部分を光学的切欠と呼ぶこととする。なお、黒ラベル等による光学的切欠は、下端をカット方法に比べ通帳下端からの読み取り位置が、磁気カード下端からの読み取り位置よりも短い場合に有効である。これは、反射型光学センサは図11に示すカードホルダ200の裏側から検出を行うため、開口部255に想到する部分にも光学的切欠部を設けることが出来るためである。従って、このような光学的切欠部によって、磁気ストライプの読み取りに際し、通帳と磁気カードの区別を機械への挿入前に行なわずとも、通帳で使用するトラックと磁気カードで使用するトラックが異なっても、それぞれに要求される位置に媒体を停止させることが可能となる。
このように、通帳と磁気カードの区別なく読取を行う場合、通帳と磁気カードの判別は読み取ったデータのデータフォーマットから判別することができ、係る判断手法は、特開平1−154217号公報に記載されているように当業者において公知の技法である。
図7は、ホルダ構成部材205を示す図であり、ホルダ構成部材203に貼り合わされることによって、磁気カード100の脱落防止シートとして機能する。脱落防止シートはカードホルダ200から磁気カード100が脱落することを防止するものであるが、カードホルダ200は、搬送経路309のベッドプレートに沿って搬送されるため、この脱落防止シートが無ければ、搬送によって必ず磁気カード100がカードホルダ200の開口部255から脱落するというものではない。また、下側搬送ローラ365(図13参照)が大きく突出している場合は搬送経路309下側に磁気カード100をカードホルダ200に押しつけるような弾性体(図示せず)を設ければ、搬送によって必ず磁気カード100がカードホルダ200の開口部255から脱落するということはない。さらに、磁気ヘッドを搬送経路の上部に配置する設計を行えば、磁気カード100の自重により、磁気カードが脱落する可能性は低くなる。従って、脱落防止シート205は、本発明の必須の構成要素ではなく、また、必ずしも図3に示すように配置する必要はない。例えば、開口部255の底面に、接着層を設け、容易に脱落しないように構成することや、スライド式の板等を用いてカードの脱落を防止することも可能である。
この脱落防止シートは、前記磁気カードがセットされた場合、11.0mm〜20.0mmの幅で、前記磁気カードの上部が露出するようにすると、磁気カードの磁気ストライプが露出し、磁気ヘッドによる読取時に、磁気ヘッドの移動の邪魔にならない。また、クレジットカード等で多く用いられているサイン記載部に搬送ローラに付着したインクを転写することを防止する事ができる。
本願の好適な実施例においては、ホルダ構成部材205は、シート状のポリカーボネートが用いられている。その他塩化ビニール、ポリエチレン等のビニール、合成樹脂や、布、紙等の素材でもよい。但し、磁気カード100の挿入を行うため、ある程度弾力性があり、搬送に影響を与えないように、薄いシート状の素材が好ましい。弾力性のある素材である場合は、磁器ストライプとエンボス部が同一面に存在するJISII型規格の磁気カードであっても、エンボス部の凹凸をこの脱落防止シートが吸収する役割を担う。
次に、図16を用いて、磁気カード100の磁気ストライプ105が磁気ヘッド305によって読み取られる一連の手順を説明する。この磁気ヘッド305は、通帳の磁気ストライプの読み取り、通帳への印字、帳票への印字ができる。まず、処理はブロック501で開始し、まずユーザにより、磁気カード100がカードホルダ200にセットされる(ブロック503)。このときの磁気カード100をカードホルダ200にセットする方法は、ISO規格準拠の磁気カードの場合、図8に示すように、磁気カード100の裏面(磁気ストライプ105の存在する面)を上にして、図のようにカードホルダ200に挿入する。このときエンボス部101は開口部235でカバーされる。第9図はカードホルダ200に磁気カード100がセットされた状態におけるA方向から見た断面図である。
次に、ブロック505において、ユーザは、カードの磁気ストライプ側を下面にしてカードホルダを挿入する(以下適宜図12及び図13を参照されたい)。本発明の好適な実施例である通帳プリンタ300においては、磁気ヘッド305は搬送経路309の下側に設けられているためである。なお、本発明の好適な実施例である通帳プリンタ300は、通帳400の他、各種帳票を印字可能である。帳票については、磁気ストライプの読み取りを行なわないため、事前キー入力にて磁気ストライプの読み取りを行なう通帳/磁気カードと区別することが望ましい。帳票に対し、磁気ストライプの読み取りを行うと、磁気ヘッドにより帳票を痛めてしまう可能性があるためである。但し、前述のように、媒体のサイズによって判別することも可能である。
カードホルダ200が挿入口307に挿入されると、ブロック507において、挿入口センサ341がカードホルダ200を検知する。すなわち、挿入口センサ341がオンの状態になる。カードホルダ200は磁気カード100に比べ、十分な幅を有しているため、このセンサに確実に検出される。また、カードホルダ200は反射率の高い色(白色)でできており、挿入口センサ314の検出漏れは極めて少ない。この挿入口センサ341が検出した信号は制御手段に伝達される。制御手段はブロック509において、搬送ローラ311,321,331等を順方向に回転させる。搬送ローラの回転は、図15に示すように、モータの回転が伝達されることによってなされる。この搬送ローラの回転により、ブロック511において、カードホルダ200が順方向に搬送される。このとき、ローラ組付部材310とローラ組付部材320は磁気カード100の長さよりも広い幅で設置されているが、カードホルダ200の長さよりも狭い幅であるため、磁気カード100自体の搬送はできないがカードホルダ200の搬送は可能である。また、磁気カード100自体を搬送する時よりも多くの搬送ローラ311,313,315,317,319,321,323,325,327,328を使用してカードホルダ200を搬送することができるため、また、エンボス領域101がカードホルダ200の開口部235でカバーされているため、媒体がスキューする可能性が低い。
その後、カードホルダ200が搬送され、挿入口センサ341の位置をカードホルダ200の下端が通過すると、挿入口センサ341がオフの状態になる。このようにして、ブロック512において、挿入口センサ341がカードホルダ200の下端を検知する。制御手段は、この挿入口センサ341がオンになり、その後オフになるまでの搬送距離で、その媒体の長さを検出することができる。前述のように、カードホルダ200は反射率の高い色(白色)でできており、磁気カード100の露出している開口部235も挿入口センサ341の下を通過しないため、媒体の長さを誤って検出することは極めて少ない。
その後、カードホルダ200は、トップセンサ343または、アラインセンサ345に到達する(カードホルダ200は十分な幅を有しているため、トップセンサ343及び、アラインセンサ345に確実にヒットすることができる)。制御手段は、カードホルダ200がトップセンサ343と、アラインセンサ345に到達する差を検出することにより、カードホルダ200の上端の傾きを検知する(ブロック513)。制御手段は、傾きが予め設定された基準以上か否かを判断する(ブロック515)。傾きが基準以上の場合、制御手段は搬送ローラを逆回転させ、カードホルダ200を排出する(ブロック521)。傾きが基準以内の場合、ブロック512で検出したカードホルダ200の長さを基準として、磁気ストライプ105の読み取りの為の所定位置までカードホルダ200を搬送する(ブロック517)。カードホルダ200の下端が検出された状態で、既に磁気ストライプ105が磁気ヘッド305よりも先行している場合は、制御手段は搬送ローラを逆回転させ、磁気ストライプ105の位置を磁気ヘッド305の位置に合わせる(サイド光学センサがオンになり、その後の搬送距離で制御される)。
そして、磁気ヘッド305が駆動され、磁気ストライプの読み取りが実行される(ブロック519)。磁気カード100を直接挿入し、読取を行う方式をレフトアライン方式の通帳プリンタで実現するためには、図12に示す磁気ヘッド305は搬送経路のレフトガイドを超えて、右側(図13においてはレフトガイドが右側に、ライトガイドが左側に示されている)に移動可能でなければならない。しかし、本願発明の好適な実施例においては、カードホルダ200のため、かかる設計上の制約はない。なお、本発明の好適な実施例においては、磁気ヘッド移動用モータ(図示せず)により、搬送方向に対して垂直方向(矢印方向)に、磁気ヘッド305が駆動され、磁気ストライプの読取が行われる。図12に示すように、磁気ヘッド305による読取時において、カードホルダ200を保持する搬送ローラは、321,323,325,327,328の5コであり、各搬送ローラに加わる応力及びモーメントは、磁気カード100自体を搬送し、読み取るときの応力及びモーメントよりも小さいことが容易に理解できるであろう。従って、各ロータ組付部材310,320,330には、搬送ローラ311等を密に設ける必要や、搬送ローラに加える圧力を高い値に設定する必要がない。
なお、搬送方向に対して平行の方向に、磁気ストライプがある場合、磁気ヘッドを磁気ストライプ位置に駆動し(または、磁気ヘッドを上下方向に移動するのみで、垂直方向の移動はしないで)、搬送ローラによってカードホルダ200を移動させ、磁気ストライプの読取を行うこともできる。読取が行われた後、制御手段が搬送ローラを逆方向に回転し、カードホルダを排出し(ブロック521)、処理は終了する(ブロック523)。
次に、図17において、本発明の好適な実施例である通帳プリンタ300のブロック図を示す。601は電源であり、通帳プリンタ300に電力を供給する。603は、メインカードであって、各種センサ、モータ、制御手段629を電気的に接続している。本実施例においては、制御手段629は、メインカード603上のマイクロプロセッサユニットであり、MPU、ROM、RAM等で構成されている。但し、この制御手段629は、通帳プリンタに接続するコンピュータであってもよい。この制御手段629は、各種センサ607,609,611,613からの信号を受け取り、ユニットに格納した制御プログラムに従い、各種モータ615,617,627、各種カード605,619,623の制御を行う。制御手段629は、同一の磁気ヘッド625で読み取ったデータをそのフォーマットによって磁気カードのデータか、通帳のデータか判別することができる。
605は、オペレータパネルカードであり、ユーザの入力や表示パネルへの表示を行う。607乃至613は各種センサであって、607は、挿入口センサ、609は、トップセンサ、611は、アラインセンサ、613、ジャム検知センサである。615,617,627はモータを表し、615は、印字ヘッドを移動するキャリアモータ、617は、搬送ローラを回転させるフィードモータ(搬送用モータ)、627は、磁気ヘッドを駆動するための磁気ヘッドモータである。印字ヘッド621は、コネクタカード619を介してメインカード603に接続する。磁気ヘッド(REMS)625は、REMSカード623を介してメインカード603に接続している。
以上に説明した、本発明の好適な実施例では、通帳の横方向磁気ストライプの処理を行なう通帳プリンタで磁気カード上の磁気ストライプを読み取る場合を記載しているが、本発明を縦方向磁気ストライプの処理を行なう通帳プリンタに応用した場合、 本カードホルダ上でのカードのセット方向を90度変更したものとすれば読み取りが可能である。通帳の縦方向ストライプについては、媒体の左端基準(一部右端基準もある)で磁気記録トラック位置が設定されており、媒体は装置搬送系の左ガイドに沿って搬送される。したがって本カードホルダの左端からカード上の磁気記録トラックまでの寸法を、通帳の左端から通帳上の磁気記録トラックまでの寸法を一致させることで読み取りが可能となる。通帳において、左端から磁気記録トラックのセンタまでの距離が10.4mm(すなわち、Track−2)である場合には、カードのTrack−2と一致する為、カードホルダの左端面とカードの磁気ストライプ側の端面を一致させるようにカードを収納しなければならない。この場合、カードは左方向にホルダーから外れる自由度を持つことになるが、(1)搬送方向は上下方向であること(2)搬送中は、カードの左端は装置搬送系の左ガイドで拘束されることの2点で問題はない。