JP4071402B2 - 皮膚バリアー機能回復促進剤、およびその評価方法 - Google Patents

皮膚バリアー機能回復促進剤、およびその評価方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚バリアー機能回復促進剤、ならびにその評価方法特にその有効成分の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年手軽に利用でき、副作用が比較的少ない治療法としてアロマテラピー(芳香療法)に対する関心が高まっており、特にストレス素因に基づく不定愁訴、自律神経失調症等の心身症に有効な治療方法として注目されている。この中で、多様な香料が様々な症状改善のためのアロマ療法剤として存在し、この内、皮膚の改善に対して有効とされる香料も存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、その効果は多分に経験的判断に基づく漠然としたものであり、通常の薬剤のように、はっきりした特定の薬理効果を知られている香料は少なく、まして皮膚バリアー機能を回復促進させるのに特に有効な薬剤としての提供はなされていなかった。
【0004】
また、香料の精神的作用ついての研究は比較的為されてきたが、香料の香気吸入により皮膚機能を改善しようとする研究は少なく、その客観的評価方法も存在していなかったため、皮膚バリアー機能の回復促進剤として有効な香料を見出すことは困難であった。
本発明は、香料を含む皮膚バリアー機能回復促進剤、およびその簡易な評価方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、モデル実験小動物に所定のストレスを負荷した後、該動物の皮膚バリアー機能を低下させた場合、その皮膚バリアー機能の回復能が、香料を吸入させない対照動物と特定香料を吸入させた被検動物で有意に差があることを見出し、該特定香料が皮膚バリアー機能回復促進剤として優れていることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明にかかる皮膚バリアー機能回復促進剤は、テルピニルアセテート、フェネチルアルコール、ジメトキシメチルベンゼン、バレリアン香料、ニオイスミレ香料、バラ香料の群より選ばれる香料を0.01重量%以上含み、前記香料を吸入により体内に吸収させ、経表皮水分損失量を軽減させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は、皮膚バリアー機能回復促進剤、およびその評価方法を提供しようとするものである。そこで、皮膚バリアー機能回復促進剤と、その評価方法に分けて説明することとする。
【0013】
<皮膚バリアー機能回復促進剤>
本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤は、有効量吸入し嗅覚受容体を刺激もしくは経気道的に体内に吸収されることにより、皮膚バリアー機能を回復促進し、皮膚バリアー機能の低下に基づく皮膚状態の悪状況を改善するのに有効な特定香料を配合したものである。特定香料としては、単一化合物では、テルピニルアセテート、フェネチルアルコール、ジメトキシメチルベンゼンを挙げることができる。これらは、複数用いても、他の香料と組み合わせて多成分系の香料組成物として用いてもよい。
【0014】
また、多成分系の香料組成物としては、バレリアン、ニオイスミレ、バラ香料を挙げることができ、これらは天然組成物またはその分析結果に基づき再現した人工組成物によっても本発明の皮膚バリアー機能回復または促進の効果が得られる。
【0015】
本発明のバレリアン香料としては、セイヨウカノコソウや、その近縁種であるカノコソウ(Valeriana officinalis L. var latifolia Miq.(V. japonica Makino))、エゾカノコソウ(V. fauriei forma yezoensis)、インドカノコソウ(V. wallichii D.C.)等の根茎等から公知の方法、例えば水蒸気蒸留や溶媒抽出等の方法で得た精油を用いることができる。また、これらセイヨウカノコソウ及びその近縁種から採油された精油がバレリアンオイル(Valerian oil)やカノコソウ油、吉草根油(Kesso root oil, Japanease valerian oil)として市販されており、これらは日本産、中国産、欧州産等産地に関わらず用いることができる。
【0016】
そして、特開平1−254628号公報に開示されるような天然組成物から減圧蒸留により得られるバレリアン油分画部も本発明にかかるバレリアン香料として用いることができる。
さらにはつぎに挙げるような不快臭の原因である脂肪酸等の酸性成分を除去した改質バレリアン油も本発明にかかるバレリアン香料として用いることができる。
【0017】
改質バレリアンオイルは、バレリアンオイルからアルカリ処理によって脂肪酸を含む酸性成分を除去することにより得ることができる。一般に天然バレリアンオイルは、少なくとも1種以上、通常数種類以上の脂肪酸を含んでおり、特に酢酸やイソ吉草酸を含んでいる。
【0018】
改質バレリアンオイルの製造方法としては、まず、このような脂肪酸含有バレリアンオイルを有機溶媒、好ましくはエーテルに溶解し、これにアルカリ水溶液を加えて抽出操作を行い、脂肪酸を含む酸性成分を抽出除去する。アルカリ水溶液としては、通常抽出操作で汎用されるものであれば無機塩基、有機塩基を問わず用いることができるが、好ましくは炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液であり、特に炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出後、さらに水酸化ナトリウム水溶液で抽出することが好ましい。得られた有機溶媒層を無水硫酸マグネシウム等で乾燥後、有機溶媒を減圧留去し、脂肪酸が除去された改質バレリアンオイルを得る。
【0019】
本発明にかかる改質バレリアンオイルの皮膚バリアー機能回復促進効果はアルカリ処理によって損なわれることがなく、処理前のバレリアンオイル以上の効果を有する。従って、本方法によればバレリアンオイルの皮膚バリアー機能回復促進効果をさらに高めることができる。また、この製造方法によればこのような改質バレリアンオイルを容易且つ安価に製造することが可能であり、有用性の高い皮膚バリアー機能回復促進剤を提供できる。
【0020】
また、本発明にかかるニオイスミレ香料としては、ニオイスミレ(Viola odorata L.)の葉または花から公知の方法、例えば水蒸気蒸留や溶媒抽出等の方法で得た精油やヘッドスペースによる捕集物を用いることができる。また、ニオイスミレはフランス産、日本産等産地に関わらず用いることが可能である。また、本発明においては天然由来のニオイスミレ精油あるいはヘッドスペースによる捕集物の分析成分に基づいて人工的に再現したニオイスミレ香料を用いてもよい。
【0021】
また、本発明にかかるバラ香料としては、公知の精油であり、標準商業品種が本発明に用い得る。そして、天然のバラの花から蒸留、抽出等の方法により得られた精油も本発明に用いることができる。また、天然のバラの花から得た精油の分析成分に基づき人工的に組成を再現したバラ香料を用いてもよい。
【0022】
上記特定香料を含む皮膚バリアー機能回復促進剤は、香料製品に通常使用されている担体、希釈剤または他の活性成分をともに含めて製品化することができる。形態は、香水、コロン、室内芳香剤等のフレグランス製品の他、ローション、クリーム、石鹸、歯磨剤、エアゾール製品等の化粧料、その他の香料一般に用いられるいずれの形態であってもよい。さらに吸入薬などの医薬品にも用いることができる。また、前記皮膚バリアー機能回復促進剤における特定香料の配合量は、吸入により皮膚バリアー機能回復または促進の効果が充分得られる量であればよい。使用形態および薬剤(香料)によって異なるが概ね0.01重量%以上配合されていることが必要である。これら配合量より少ないと皮膚バリアー機能回復促進効果がえられない場合がある。
【0023】
本発明に従う、有効成分としてこれらの香料を含有する組成物は、皮膚バリアー機能低下やそれに基づく皮膚疾患等の処置に適する。また、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤は副作用の問題なく連用することができる。
【0024】
なお、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤は、つぎの評価方法によりその有効性を確かめることができる。
【0025】
<評価方法>
本発明で使用しうるモデル実験小動物は、ヒト以外の各種試験の実験動物として常用されており、かつ本発明の目的に沿うものであれば、いかなる動物であってもよいが、通常、ラット、モルモット、ウサギ等を挙げることができる。
【0026】
これらの小動物に対して負荷するストレスは、当該技術分野で有効な手段として確立されている拘束ストレス、過密ストレスおよび新奇環境ストレスを挙げることができる。拘束ストレスの負荷方法は、例えば、Pare,W.P.Glavin,G.B.,(1986)、Neurosci.Biobehav−Rev.10、p.339〜370に記載の方法に準じて行うことができる。ラットを使用する場合を概述すれば、個別に動物を柔軟な金網等で全身をくるみ、皮膚に損傷を与えないよう留意しながら所定期間固定することにより、ストレスを負荷できる。
【0027】
一方、過密ストレスは、マウスの場合通常、1ケージ(17×28cm)当り5匹で飼育しているが、同ゲージにおける動物の飼育数を、増加、特に、10匹とすることによりストレスを負荷することができる。
また、新奇環境ストレスは、通常の環境から新奇の環境、例えばマウスでいえば1ケージ(17×28cm)当り通常5匹で飼育しているマウスを、1ケージ当り1匹の環境へ移すことによりストレスを負荷することができる。
【0028】
これらのストレスの負荷は、動物をストレス状態にするのに十分な期間行えばよい。ただし、ストレスの負荷が十分でない場合には皮膚バリアーの回復能を、対照動物のそれと有意に識別できないときがあるので注意を要する。
【0029】
こうしてストレスの負荷された動物は、ストレス状態(ストレスの影響がみられる状態)に到った後、皮膚バリアー機能を低下する手段にかけられる。かかる手段は、効率よく皮膚バリアー機能を低下できる方法であれば、その手段の様式を問うこともなく使用することができる。このような低下をもたらすには、皮膚のテープストリッピングによる角質層除去や界面活性剤[例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)]もしくはアセトン等の有機溶媒処理による脂質の除去によることが都合よい。この処理時期は、ラットの場合、ストレス負荷終了後から約12時間以降に行うのが、実験動物に十分なストレス状態をもたらす上で好ましい。
【0030】
以上による皮膚バリアーの低下部位における皮膚バリアー機能の回復度を経時的にまたは所定期間後に検出する。前記低下をもたらす部位は、皮膚バリアー機能の回復度を検出できる部位であれば、実験動物のいかなる部位でもよいが、通常、耳介を選ぶのが好ましい。
【0031】
検出方法は、一般に、皮膚バリアー機能の指標とされている経表皮水分損失または経皮不感知蒸泄量(以下、TEWLという)を測定するのがよいが、上記指標としうる他のファクターも使用できるかも知れない。TEWLの測定は、それ自体常用されている市販の機器によって行うことができる。機器の典型的なものとしては、エバポリメーター、テヴァメーター、ミーコ水分測定機などを挙げることができる。
【0032】
本発明によれば、上記操作をストレスが負荷されていない実験動物に繰り返し、同様にして得られるTEWL値と、ストレスが負荷された実験動物の前記TEWL値が比較される。なお、例えば、実験動物として、ラットを使用する場合、皮膚バリアー低下前の実験動物では、ストレスを負荷したものと負荷しないものとのTEWLおよび皮表温度には、有意差が認められなかったことを付記しておく。また、実験動物のTEWL値について性差は認められない。
【0033】
すなわち、ストレスと実験動物のTEWL値との間には相関性が認められるのである。具体的には、前記TEWL値は、本発明に従ってストレスを負荷した動物では、対照動物に比べて、TEWL値の回復度が有意に遅延する。したがって、本発明によればこのような回復度の遅延現象に基づいて、皮膚バリアー機能の回復能を評価することができる。
【0034】
さらに、本発明によれば、前記評価方法の系に香料を組み合わせて使用し、その香料による皮膚バリアー機能の回復度を評価することにより、香料が皮膚バリアー機能の促進または回復の促進に役立ちうるかを評価することができる。被検香料のマウスへの適用方法は影響を与えうる充分な量を充分な時間吸入させればよいが、具体的には例えば前記新奇環境ストレスでいえば、シャーレ内に置いたろ紙に香料を滴下し、金網で覆ってマウスケージに置きマウスを新奇環境に移す前後それぞれ24時間マウスに香料を吸入させればよい。なお、必要に応じて香料を追加することが望ましい。この評価方法によれば、ある一定の香料が特にストレスにより皮膚バリアー機能の低下を回復、さらには促進する作用を有するか、否かが評価でき、皮膚状態の改善に有用な香料を評価することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を具体例を挙げてさらに詳細に説明する。まず、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤の評価方法の例を次に述べる。
【0036】
例1 新奇環境ストレスの負荷
ヘアレスマウスを5匹同じケージ(17×28cm)で10日間飼育する。9日目の朝、香料を含ませたろ紙をステンレスの網で覆ってケージに入れる。翌朝、同じ大きさの新しいケージに1匹ずつマウスを分けて移す。新しいケージには同じ香料を同様に前もって入れておく。
【0037】
例2 皮膚バリアーの低下とその回復率
新しいケージに移して1日後、麻酔したヘアレスマウスの耳介のTEWLをエバポリメーターEP−1(サーボメッド社)で測定する(A)。つぎに皮膚バリアー機能をテープストリッピングにより低下させる。すなわち、動物のそれぞれの耳介に、粘着性テープ片(耳の場合:1×1cm、胴部場合2×3cm)を貼付し、そのテープ片を慎重に剥がすことにより(テープストリッピング)、表皮を損傷させることなく皮膚バリアー機能を低下させる。その時点でもう一度TEWLの測定を行う(B)。3時間後、TEWLの測定を行う(C)。そして以下の式でバリアー回復率を算出した。
バリアー回復率(%)=(B−C)/(B−A)×100
A:皮膚バリアー機能低下処理(テープストリッピング)直前のTEWL値
B:皮膚バリアー機能低下処理(テープストリッピング)直後のTEWL値
C:皮膚バリアー機能低下処理(テープストリッピング)から一定時間後のTEWL値
【0038】
つぎに、上記例1、2の方法に準じて、新奇環境によるストレス負荷の皮膚バリアー機能回復度への影響について調べた。ケージ当り1匹で飼育し続けた動物(対照動物)、5匹で飼育し続けた動物(対照動物)および5匹から1匹に移した動物(ストレス負荷動物)の皮膚バリアー機能の低下処理後3時間経過したときの、換算した皮膚バリアー回復率を図1に示す。なお、これらは香料を除いた系で試験を行った。
図1より、ストレス負荷動物の皮膚バリアー機能の回復度が、対照動物の回復度から有意に遅延することが認められる。
【0039】
例3 香料の皮膚バリアー機能回復度への影響
被験香料の存在下で、ヘアレスマウスを例1のストレス負荷にかけ、例2の皮膚バリアーの回復率において、香料の皮膚バリアー機能回復促進に対する有効性を評価した。
【0040】
なお、対照実験として、香料が存在しない系において、1ケージ当たり5匹で飼育し続けたストレス負荷をしない正常マウス、およびストレス負荷後香料を吸入させなかった無処置のマウスについても同様にバリアー回復率を測定した。
つぎに、上記記載の評価方法により有効性が確認された香料を有効成分として含む皮膚バリアー機能回復促進剤について記載する。
【0041】
単一化合物
例3の評価方法によって得られた単一化合物香料における皮膚バリアー回復率を図2に示し、結果を表1に示す。なお、比較対照実験として、ジャスミン香料の主成分フィトールについて行った。マウスの香料の吸入量は各単一化合物そのもの200μlをシャーレ内のろ紙に塗布することによってほぼ統一した。
【0042】
【表1】

香料(単一化合物) 皮膚バリアー機能回復促進効果

テルピニルアセテート 有り
フェネチルアルコール 有り
ジメトキシメチルベンゼン 有り
フィトール 無し

【0043】
図2より明らかなように、テルピニルアセテート、フェネチルアルコールおよびジメトキシメチルベンゼンにおいては、無処置のマウスと比較して皮膚バリアー機能の回復促進効果が得られた。また、ジャスミン香料の主成分フィトールに関しては皮膚バリアー機能回復効果が得られなかった。
したがって、テルピニルアセテート、フェネチルアルコールおよびジメトキシメチルベンゼンは皮膚バリアー機能回復促進剤として有効であることがわかる。
【0044】
香料組成物
つぎに、例3の評価方法によって得られた多成分系の香料組成物における皮膚バリアー回復率を図3に示し、結果を表2に示す。なお、マウスの香料吸入量は各香料組成物200μlをシャーレ内のろ紙に塗布することによってほぼ統一した。比較対照実験としてフィトールを主成分としてもつ(14〜15%)ジャスミンについて評価を行った。
【0045】
【表2】

香料(組成物) 皮膚バリアー機能回復促進効果

天然バレリアン 有り
改質バレリアン 有り
天然ニオイスミレ 有り
人工ニオイスミレ 有り
天然バラ 有り
人工バラ 有り
天然ジャスミン 無し

【0046】
表2中、バレリアン香料に関しては、天然精油と、前記で述べた改質バレリアンを用いた。
また、天然ニオイスミレ香料は花由来のニオイスミレ精油を用い、人工ニオイスミレ香料はその天然精油のガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)の分析を基に含まれる単一化合物を組合せ再現した組成物を用いた。図4に示すのは、その再現香料組成物のガスクロマトグラフィーのチャートであり、表3に示すのはその結果得られた組成である。なお、GC−MS測定条件は次のとおりである。
【0047】
<GC−MS測定条件>
機種 :G1800A GCD(Hewlett-Packard社製)
カラム :HP-INNOWAX(60m×0.25mm)(Hewlett-Packard社製)
カラム温度 :70→245℃(4℃/min昇温)
キャリアーガス:He(1.0ml/min)
【0048】
【表3】

化合物名 GC含有率(%)

リモネン 0.16
トランス−2−ヘキセナール 0.18
1−ヘキシルアセテート 0.23
シス−3−ヘキセニルアセテート 3.09
トランス−2−ヘキセニルアセテート 0.11
1−ヘキサノール 0.28
p−シメン 0.16
シス−3−ヘキセノール 0.78
1−オクテン−3−オール 4.36
2−エチルヘキサノール 0.34
リナロール 0.21
トランス,シス−2,6−ノナジエナール 0.21
1,4−ジメトキシベンゼン 23.01
ネリルアセトン 0.12
ジヒドロ−β−イオノン 0.87
α−ロノン 13.29
2−フェニルエタノール 0.67
β−ロノン 22.23
シス−ジャスモン 3.73
メチルジャスモネート 2.09
ベンジルベンゾエート 4.56

合 計 80.70

【0049】
また、天然バラ香料は天然の一般的な市販のバラ精油を用い、人工バラ香料としては前記皮膚バリアー機能回復促進効果が認められる化合物ジメトキシメチルベンゼンおよびフェネチルアルコールを含んだ香料組成物を用いた。人工バラ香料はつぎの組成よりなる。なお、配合量は重量部で示す。
【0050】
【表4】

人工バラ香料

ジメトキシメチルベンゼン 5
フェネチルアルコール 200
シス−3−ヘキセノール 1
シス−3−ヘキニルアセテート 2
ベンジルアルコール 15
シトロネロール 100
ネロール 25
ゲラニオール 600
ゲラニルアセテート 20
シトロネリルアセテート 4
シトラール 3
オイゲノール 5
ファルネゾール 40

合 計 1020

【0051】
図3より明らかなように、バレリアンおよびニオイスミレ、そしてバラの香料組成物は香料を吸入させない無処置のマウスと比較して、皮膚バリアー回復率が高いことがわかる。また、ニオイスミレ、およびバラ香料に関する結果を参酌すれば、皮膚バリアー機能回復に有効な香料組成物は、天然、人工を問わず皮膚バリアー回復率が得られることがわかる。さらに、バレリアンに関していえば、改質バレリアンは正常マウスと同程度まで皮膚バリアー回復率が高くなっており、特に優れていることがわかる。なお、アロマテラピーにおいて皮膚疾患にも効果があることが知られているジャスミンにおいては、皮膚バリアー機能回復効果が得られなかった。
【0052】
したがって、バレリアンおよびニオイスミレ、そしてバラの香料組成物は皮膚バリアー機能回復促進剤として優れていることわかる。また、ニオイスミレ、バラ香料から示されるように、これらは天然人工を問わず効果があることがわかる。一方、ジャスミンを参酌すると、アロマテラピーにおいて皮膚に対して有効性を示す香料であっても必ずしも皮膚バリアー機能回復効果が得られるわけではないことがわかる。
【0053】
つぎに、本発明者らはヒトに対する皮膚バリアー機能回復促進剤の影響を調べた。他香料無添加で通常の場合と、他香料添加で通常の場合と、他香料添加で皮膚バリアーの回復率を低下させる処置をした場合の3種類について行った。
【0054】
他香料無添加で通常の場合(ストレス負荷なし)
男性6名(非喫煙者)を被験者とし、3名づつ「香りあり」と「香りなし」の2群に分けて測定を行った。一通り測定した後、「香りあり」と「香りなし」の群の被験者を入れ替えて同様な測定を行った。香りの呈示方法は下記試料1の溶液80μlを含む綿片を鼻下に貼付することにより行い、「皮膚バリアー回復促進剤なし」は綿片のみを貼付した。
【0055】
(試料1)
ジメトキシメチルベンゼン(DMMB) 2.0重量部
エタノール(ブルシン変性95%エタノール) 98.0

合計 100.0
【0056】
<測定手順>
「香りあり」の群の測定手順は、香りの呈示を開始し、22℃、湿度50%の環境下に1時間おき、テープストリッピングにより皮膚バリアー破壊後、1.5時間後、3時間後に皮膚バリアー回復率を前記例2に準じて測定した。香りの呈示及び環境の維持は最後まで行った。
「香りなし」の群の測定手順は、「香りあり」の群の測定手順に準じて香りの呈示を行わずに皮膚バリアー回復率を測定した。
結果を次の表5に示す。
【0057】
【表5】
Figure 0004071402
【0058】
上記表5の結果より、皮膚バリアー破壊から1.5時間後、3時間後ともにDMMBの香りありのほうが、皮膚バリアー回復率が高いことがわかる。したがって、DMMBの皮膚バリアー回復促進効果が明らかである。
【0059】
他香料添加で通常の場合(ストレス負荷なし)
20〜22歳の健常人女子10名(非喫煙者、生理サイクル確認)を被験者とし、5名づつ「香料あり」と「香料なし」の2群に分けて測定を行った。一通り測定した後、「香りあり」と「香りなし」の群の被験者を入れ替えて同様な測定を行った。香りの呈示方法は下記試料2の溶液80μlを含む綿片を鼻下に貼付し、香りなしは綿片のみを貼付した。
【0060】
(試料2)
シトロネロール 5.0重量部
リナロール 4.0
リナリルアセテート 4.0
ジメトキシメチルベンゼン(DMMB) 2.0
ゲラニルアセテート 1.0
ジヒドロメチルジャスモネート 35.0
フローラルベース香料 49.0

合計 100.0
【0061】
<測定手順>
「香りあり」の群の測定手順は、香りの呈示を開始し、22℃、湿度50%の環境下に1時間おき、テープストリッピングを行い皮膚バリアー破壊後、1.5時間後、3時間後に皮膚バリアーの回復率を前記例2に準じて測定した。香りの呈示及び環境の維持は最後まで行った。
「香りなし」の群の測定手順は、「香りあり」の群の測定手順に準じて香りの呈示を行わずに皮膚バリアー回復率を測定した。
結果を表6及び図5に示す。
【0062】
【表6】
Figure 0004071402
【0063】
表6及び図5に示されるようにDMMBを含む香料組成物を供した「香りあり」の群は、「香りなし」と比較して、皮膚バリアー機能の回復率が向上していることがわかる。
つぎにDMMBを含む香料組成物のストレスレベルへの影響を主観的ストレス度(General Activity Check List)により調べた。
その結果を図6に示す。図6に示されるようにスコアに「香りなし」と比較して「香りあり」のストレス低下がまったく見られない。したがって、皮膚バリアー機能回復促進剤は主観的ストレスにはあまり影響しないことがわかる。
【0064】
皮膚バリアー機能を低下させた場合(ストレス負荷あり)
20〜22歳の健常人女子8名(非喫煙者、生理サイクル確認)を被験者とし、下記表7に示すように(A)コントロールと、(B)ストレス負荷と、(C)香り+ストレスの3群に分けて測定を行った。一通り測定した後、各群の被験者を入れ替えて同様な測定を行い、最終的に被験者は(A)(B)(C)の全ての測定を行った。
【0065】
【表7】

群名 ストレス 香り

(A)コントロール なし なし
(B)ストレス負荷 あり なし
(C)香り+ストレス あり あり(試料2:DMMB2%)

【0066】
香りの呈示方法は前記「他香料添加で通常の場合」と同様である。なお、すべての試験は22℃、湿度50%の環境下を維持し行われた。
【0067】
<測定手順>
(A)の群の測定手順は、前記「他香料添加で通常の場合」の「香りなし」の群に準ずる。
(B)の群の測定手順は、前記「他香料添加で通常の場合」の「香りなし」の群の測定手順に準ずるが、テープストリッピングにより皮膚バリアーを破壊して1.5時間後の皮膚バリアー回復率測定の1時間前から1時間の間ストループテストを行いストレス負荷をかけてから皮膚バリアー回復率を測定した。
(C)の群の測定手順は、前記「他香料添加で通常の場合」の「香りなし」の群の測定手順に準ずるが、テープストリッピングにより皮膚バリアーを破壊して1.5時間後の皮膚バリアー回復率測定の1時間前から1時間の間ストループテストを行いストレス負荷をかけてから皮膚バリアー回復率を測定した。
結果を表8及び図7に示す。
【0068】
【表8】
Figure 0004071402
【0069】
表8及び図7に示されるようにストレス負荷をかけDMMBを含む香料組成物を供した「(C)香り+ストレス」の群は、「(B)ストレス負荷」の群と比較して、皮膚バリアーの回復率が向上していることがわかる。また、「(C)香り+ストレス」の群は、ストレスを負荷していない「(A)コントロール」の群と比較しても皮膚バリアー回復率が高いことから本発明にかかる皮膚バリアー回復促進剤が優れていることが理解できる。
【0070】
つぎにDMMBを含む香料組成物のストレスレベルへの影響を主観的ストレス度(General Activity Check List)により調べた。
その結果を図8に示す。図8に示されるようにスコアに「(B)ストレス負荷」の群と比較して「(C)香り+ストレス」の群のストレス低下がまったく見られない。したがって、皮膚バリアー機能回復促進剤は主観的ストレスにはあまり影響しないことがわかる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる皮膚バリアー機能回復促進剤は、特定の香料を含むこととしたので、皮膚バリアー機能の回復および促進の優れた効果を得ることができる。
また、本発明の評価方法によれば、香料における皮膚バリアー機能の客観的、かつ簡易な評価方法が提供される。この評価方法は、皮膚状態改善香料の開発に利用できる。
また、この評価方法で有効性が確認された香料は皮膚バリアー機能回復促進剤として効果が得られ、皮膚バリアー機能の低下に基づく皮膚疾患を改善するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】新奇環境によるストレス負荷の皮膚バリアー機能回復度への影響を示す、グラフである。
【図2】皮膚バリアー機能の低下が香料(単一化合物)により回復、さらに回復能が促進する結果を示すグラフである。
【図3】皮膚バリアー機能の低下が香料(組成物)により回復、さらに回復能が促進する結果を示すグラフである。
【図4】人工ニオイスミレ香料のガスクロマトグラフィーのチャートである。
【図5】ストレスの負荷をかけない場合における、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤の効果を示す図である。
【図6】ストレス負荷をかけない場合における、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤のストレスレベルへの影響を示す図である。
【図7】ストレス負荷をかけた場合における、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤の効果を示す図である。
【図8】ストレス負荷をかけた場合における、本発明の皮膚バリアー機能回復促進剤のストレスレベルへの影響を示す図である。

Claims (1)

  1. テルピニルアセテート、フェネチルアルコール、ジメトキシメチルベンゼン、バレリアン香料、ニオイスミレ香料、バラ香料の群より選ばれる香料を0.01重量%以上含み、前記香料を吸入により体内に吸収させ、経表皮水分損失量を軽減させることを特徴とする皮膚バリアー機能回復促進剤。
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