JP4070870B2 - 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料を形成させるための組成物およびその製造法 - Google Patents

高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料を形成させるための組成物およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、窒化ホウ素を含有する高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料を形成させるための組成物およびその製造法に関するものである。
【0002】
技術背景
成形組成物は、エレクトロニクス工業において、電気部品をカプセルに包み込み、電気的および環境的な原因による損傷から保護するのに有用である。しかし、組成物の熱伝導率が低過ぎると、そのカプセル包含材料自体が熱バリヤーとして作用し、電気部品の温度を、その部品に対する許容温度より高い温度に上昇させることがあるので、有害となる場合がある。このために、特に半導体の様な部品に関しては、カプセルに収容された電気部品の耐用寿命が短くなる。マイクロエレクトロニクスにおける熱発散問題は、高密度、高速度の回路に対する需要が高まるにつれて益々重要になっている。熱伝導率の高い重合体コンパウンドは、コンピュータケース、バッテリーケース、電子制御装置ハウジングの様な他の製品、および熱の除去が重要な問題となる他の包装容器にも有用である。
【0003】
従来の成形組成物は、溶融シリカまたは結晶性シリカを充填したエポキシ系重合体を包含する。シリカは、その低コスト、低熱膨脹、および低導電性のために、熱成形コンパウンドとして現在使用されている主要充填材である。しかし、これらの種類のシリカはどちらも、シリカを充填すべき重合体に関係なく熱伝導性が乏しい。酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および窒化ホウ素の様なセラミック充填材を包含する他の充填材も研究されている。現在、市販されている材料の最高熱伝導率は、充填材および/またはエポキシ樹脂組成物に関係なく、約5W/mKを大幅に下回っている。事実、プラスチックマイクロエレクトロニクス実装に現在使用されているほとんどの市販成形コンパウンドの熱伝導率は約0.7W/mKである。より高い熱伝導率は、例えば1988 IEEE にBujardによる、「Thermal Conductivity of Boron Nitride filled Epoxy Resins 、Temperature Dependence and Influence of Sample Preparation」と題する文献中に報告されているが、そこではアルミナを充填したビスフェノールFエポキシ樹脂が4.5W/mKまでの熱伝導率を有することが報告されている。
【0004】
窒化ホウ素は、溶融シリカ(SiO2 )の公知の代替品であり、低熱膨脹性および高電気抵抗を与える。窒化ホウ素ならびに窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムは、理論的に高充填濃度で溶融シリカよりも高い熱伝導率を与える筈である。しかし、現在エポキシ樹脂に対する窒化ホウ素充填材に関して得られる最も高い充填率は約65〜75重量%であり、それもコンパウンドの流動特性を改良するために添加剤および/または変性剤を含む場合だけである。添加剤および変性剤はコストを増加し、強度の様な他の特性に影響することがある。これに関して、加工を容易にするために添加剤を使用した、熱伝導率が5W/mK〜13W/mKまでの範囲にある窒化ホウ素エポキシ組成物が報告されている。
【0005】
【発明の概要】
本発明により、5W/mKを優に超え、37.5W/mK以上もある熱伝導率が、窒化ホウ素の粒子を充填したポリベンゾオキサジンの重合体系材料で得られることが分かった。驚くべきことに、その様な高水準の熱伝導率は、本発明により、ベンゾオキサジン樹脂を少なくとも部分的に窒化ホウ素で充填した時に得られる。すなわち充填材は窒化ホウ素だけである必要は無く、シリカ、酸化アルミニウム、または窒化アルミニウムの様な他の充填材を包含し得るので、コストを下げる、および/または組成物を所望の熱伝導性に適合することができる。しかし、窒化ホウ素を酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、またはシリカで完全に置き換えると、ポリベンゾオキサジン組成物の熱伝導率は、80体積%を超える高充填量でも非常に低いままである。しかし、ベンゾオキサジン樹脂は、2種類以上のベンゾオキサジンモノマーを包含することができ、コモノマー、添加剤、またはそれらの混合物を含む共反応体を包含することもできる。
【0006】
従って、本発明により、高熱伝導率を有するポリベンゾオキサジン系材料の形成に使用する重合体組成物であって、少なくとも1種のベンゾオキサジン樹脂および窒化ホウ素粒子を包含する充填材を含んでなり、充填材を少なくとも約60重量%の含有量で充填する組成物が見出された。充填材中の窒化ホウ素の濃度は、約3W/mK〜37W/mKの範囲にわたって所望の熱伝導率を得る様に調整することができる。最大熱伝導率を得るための好ましい組成物は、少なくとも1種のベンゾオキサジン樹脂および窒化ホウ素の粒子から本質的になる。
【0007】
本発明により、さらに、高熱伝導率を有するポリベンゾオキサジン系材料の製造法であって、窒化ホウ素の粒子を含有する充填材を少なくとも1種のベンゾオキサジン樹脂と混合し、充填材の含有量が少なくとも約60重量%である組成物を形成させる工程、および該組成物を硬化させる工程を含んでなる製造法も見出された。この組成物は、好ましくは高圧および/または高温で成形加工する。
【0008】
【発明の具体的な説明】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の利点を詳細に説明する。
本発明のコンパウンドは、ポリベンゾオキサジン系重合体および窒化ホウ素の粒子を含んでなる充填材からなる。ポリベンゾオキサジンは、多官能性複素環式化合物を含むフェノール樹脂状の熱硬化性樹脂であり、多官能性ベンゾオキサジン基は、好ましくは多官能性フェノール、ホルムアルデヒド、および第1級アミンの縮合により製造される。反応は、芳香族オキサジン開環重合により行なわれる。本発明のポリベンゾオキサジンは、ビスフェノールA、メチルアミン、およびホルムアルデヒドを使用し、以下に「Bm」と呼ぶ下記の化学構造(化6)を有するモノマー前駆物質を形成させることができる。
【0009】
【化6】
Figure 0004070870
ビスフェノールAの代わりにビスフェノールFを使用する類似のベンゾオキサジンモノマー前駆物質を、以下に「BF」として示す(化7)。
【0010】
【化7】
Figure 0004070870
別の2官能性ベンゾオキサジンモノマーは、アニリンおよびビスフェノールAを使用し、以下に「Ba」と呼ぶ(化8)下記の前駆物質構造を形成させることにより、製造することができる。
【0011】
【化8】
Figure 0004070870
ビスフェノールFおよびアニリンを使用するもう一つの類似のベンゾオキサジンモノマー前駆物質構造を以下に「BaF」と呼ぶ(化9)。
【0012】
【化9】
Figure 0004070870
これらの化合物は、下記の式(化10)〜(化14)により表すことができる。
【0013】
【化10】
Figure 0004070870
【0014】
【化11】
Figure 0004070870
【0015】
【化12】
Figure 0004070870
【0016】
【化13】
Figure 0004070870
【0017】
【化14】
Figure 0004070870
「Ba」および「Bm」型のベンゾオキサジンモノマーの物理的および機械的特性は、「Journal of Polymer Science Vol. 34, 1019-1030 (1996)」で、本願の発明者であるHatsuo Ishida およびDouglas J. Allenにより開示、説明されている。ポリベンゾオキサジンおよびそのモノマー製造に関するより詳細な説明は、「Polymer Composites October 1996 Vol. 17, No. 5」でShayn ShenおよびHatsuo Ishidaにより記載されている。
【0018】
【実施例】
本発明により、ベンゾオキサジン樹脂および窒化ホウ素の粒子を包含する充填材を含有する組成物において、ベンゾオキサジン樹脂に窒化ホウ素を60重量%を優に超え、90重量%までの含有量で充填できることが見出された。圧力および/または熱を加えることにより、窒化ホウ素含有量に応じて、高い熱伝導率を有するポリベンゾオキサジン系材料が形成される。37W/mKまでの高い熱伝導率を達成することができる。これは下記の表IおよびIIのデータにより確認される。
表I
窒化ホウ素を充填したBm型ポリベンゾオキサジンコンパウンドの熱伝導率
Figure 0004070870
表II
窒化ホウ素を充填した代表的なポリベンゾオキサジンコンパウンドの熱伝導率
Figure 0004070870
【0019】
下記の表 IIIは、窒化ホウ素以外の従来の代表的な充填材を充填したポリベンゾオキサジン組成物の熱伝導率を鮮明に対比して示すものである。
表 III
代表的な充填材を充填したBm型ポリベンゾオキサジンコンパウンドの熱伝導率試料 充填材 充填材 重合体 充填材 熱伝導率
番号 の種類 重量% 重量% 体積% W/mK
6 シリカ 89.8 10.1 83 0.7
7 窒化アルミニウム 83 7.0 83 7.4
8 酸化アルミニウム 94.1 5.9 83 3.4
【0020】
窒化ホウ素を様々な量で充填したBm型ポリベンゾオキサジンコンパウンドの熱伝導率を表Iに示すのに対し、表IIには、窒化ホウ素を充填した他の種類のポリベンゾオキサジンコンパウンドの熱伝導率を示す。これらの表の両方から、ベンゾオキサジン前駆物質に関係なく、非常に高い熱伝導率が得られることは明らかである。異なった種類のベンゾオキサジン前駆物質の混合物を使用できること、およびポリベンゾオキサジン材料の熱伝導率を37W/mKまでの範囲で調整すると共に、強度および粘度を含む物理的特性を最適化するために、共反応体および/または添加剤も同様に、窒化ホウ素の粒子を含有する充填材と組み合わせた、重合体系組成物に包含しうることも明らかである。好適な共反応体としては、エポキシ系化合物、フェノール系化合物またはアミンがある。共反応体は、粘度を下げる、および/または網目構造を変えるための反応性希釈剤として作用することができる。ベンゾオキサジンエポキシ共重合は、ここに参考として含める、本願の発明者であるHatsuo Ishida およびDouglas J, Allenにより、「Mechanical characterization of copolymers based on benzoxazine and epoxy」と題する「Journal of Polymer Science Vol. 37, No. 20, 1966, pp. 4487-4499 」に記載されている。潤滑剤および非重合性希釈剤の様な他の添加剤も含むことができる。
【0021】
表IおよびIIの試験データから、1種または2種以上のベンゾオキサジンを窒化ホウ素と組み合わせて使用し、窒化ホウ素の充填百分率に応じた水準の熱伝導率を有する本発明の高熱伝導率ポリベンゾオキサジン系材料を製造できることが確認される。使用した窒化ホウ素は、通常等級の粒子形態の六方晶窒化ホウ素であり、1ミクロン未満〜ミリメートルの粒子径を有することができるが、好ましい平均粒子径は10〜700ミクロンであり、20〜300ミクロンがより好ましい。約5W/mKを超える熱伝導率を得るには、窒化ホウ素を約50重量%を超える含有量で充填する必要がある。ビスフェノールA−メチルアミン型のベンゾオキサジンが好ましく、Hatsuo Ishida による上記の文献「Journal of Polymer Science Vol. 34, 1019-1030 (1996)」に開示されている教示にしたがって合成することができる。
【0022】
図1は、窒化ホウ素を充填したポリベンゾオキサジン複合材料の密度と充填材含有量の関係を示す。これによって、窒化ホウ素を充填したポリベンゾオキサジン複合材料の密度の増加と、約90体積%までの充填材含有量との間に直線的な関係があることが確認される。したがって、ベンゾオキサジン前駆物質および窒化ホウ素の使用には相乗効果があり、そのために非常に高い含有量の窒化ホウ素を使用することで非常に高い熱伝導率を達成することができる。図1および2から、熱伝導率は主として充填材の含有量により決定され、図2に示す様に、55〜80体積%の充填材のが含有量で直線関係にあることから、窒化ホウ素の粒子を含有するいずれかの充填材組成物を使用することにより、組成物を調整し、特定の熱伝導率を達成できることが容易に確認できる。したがって、窒化ホウ素充填材を他のいずれかのセラミック充填材と組み合わせて、約5W/mKを超える高熱伝導率に最低必要な最低の含有量の窒化ホウ素が存在しさえすれば、コストを最適化する、および/または他の物理的特性を最大限に強化することができる。
【0023】
図3は、室温で24時間での本複合材料の吸水量は非常に低く、充填材含有量が増加するにつれて吸水量が減少する、という本発明の別の利点を示す。24時間での吸水量は0.1%未満であり、充填材含有量が85重量%では約0.02%に過ぎない。この吸水量は、電子部品の実装に使用される代表的な複合材料に対する現在の標準値0.2%よりはるかに少ない。
【0024】
本発明の方法では、1種または2種以上のベンゾオキサジンモノマーを調整した窒化ホウ素の粒子と組み合わせ、これを硬化させ、好ましくは約3W/mKを超え、37W/mKまでの熱伝導率を有するポリベンゾオキサジン複合材料を形成させるものである。前に述べた様に、共反応体、添加剤、またはそれらの混合物を加えることで、複合材料の機械的強度およびその粘度を始めとする機械的特性をコントロールすることができる。ベンゾオキサジン樹脂は、フェノール誘導体および第1級アミンを好適な溶剤に溶解させるか、またはここに参考として含める本発明者の同時係属出願である米国出願第08/245,478号明細書、1996年8月6日付けの米国特許第5,543,516号明細書に教示されている様に、ベンゾオキサジン化合物の無溶剤合成方法を使用して合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の窒化ホウ素充填したポリベンゾオキサジン複合材料に関する密度と充填材含有量の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のポリベンゾオキサジン重合体複合材料における、熱伝導率と窒化ホウ素充填材の体積%の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のポリベンゾオキサジン複合材料の、充填材含有量60重量%〜85重量%における吸水量を示すグラフである。

Claims (14)

  1. 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料の製造に使用する組成物であって、
    少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂モノマーと、窒化ホウ素の粒子を包含する充填材とを含んでなり、
    前記組成物中における前記充填材の量が少なくとも60重量%であり、
    前記ベンゾオキサジン樹脂モノマーが、下記一般式で表される群から選択されるいずれか一種の構造を有するものである、組成物。
    Figure 0004070870
  2. 前記窒化ホウ素の粒子径が10〜700ミクロンである、請求項1に記載の組成物
  3. 前記充填材が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、およびシリカからなる群から選択される粒子をさらに含んでなる、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 潤滑剤、カップリング剤、界面活性剤、および非重合性希釈剤からなる群から選択される添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂モノマー及び窒化ホウ素の粒子からなるものである、請求項1に記載の組成物。
  6. 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料の製造に使用する組成物であって、
    少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂モノマーと、窒化ホウ素の粒子を包含する充填材とを含んでなり、
    前記窒化ホウ素を少なくとも68体積%まで充填し、前記ポリベンゾオキサジン系材料の熱伝導率を20W/mK超過とするものであり、
    前記ベンゾオキサジン樹脂モノマーが、下記一般式で表される群から選択されるいずれか一種の構造を有するものである、組成物。
    Figure 0004070870
  7. 前記窒化ホウ素を少なくとも72体積%まで充填して、ポリベンゾオキサジン系材料の熱伝導率を25W/mK超過するものである、請求項6に記載の組成物。
  8. 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料の製造法であって、
    少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂モノマーと、窒化ホウ素の粒子を包含する充填材とを混合し、
    前記充填材の含有量が少なくとも60重量%である組成物を形成し、
    前記組成物を硬化させることを含んでなるものであり、
    前記ベンゾオキサジン樹脂モノマーが、下記一般式で表される群から選択されるいずれか一種の構造を有するものである、製造法。
    Figure 0004070870
  9. 前記硬化させる工程を昇圧下で行なう、請求項8に記載の製造法。
  10. 前記ベンゾオキサジン樹脂モノマーが、溶剤無しに合成されたものである、請求項9に記載の製造法。
  11. 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料であって、
    少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂と、窒化ホウ素の粒子を包含する充填材とを含んでなり、
    前記ポリベンゾオキサジン系材料中における前記充填材の量が少なくとも60重量%であり、
    前記ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式で表される群から選択されるいずれか一種のベンゾオキサジン樹脂モノマーの開環重合により得られるものである、材料。
    Figure 0004070870
  12. 高熱伝導性ポリベンゾオキサジン系材料であって、
    少なくとも一種のベンゾオキサジン樹脂と、窒化ホウ素の粒子を包含する充填材とを含んでなり、
    前記窒化ホウ素を少なくとも68体積%まで充填し、前記ポリベンゾオキサジン系材料の熱伝導率を20W/mK超過とするものであり、
    前記ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式で表される群から選択されるいずれか一種のベンゾオキサジン樹脂モノマーの開環重合により得られるものである、材料。
    Figure 0004070870
  13. 前記窒化ホウ素を少なくとも72体積%まで充填して、ポリベンゾオキサジン系材料の熱伝導率を25W/mK超過とするものである、請求項12に記載の材料。
  14. 前記ポリベンゾオキサジン系材料が、前記ベンゾオキサジン樹脂モノマーと、前記充填材を含んでなる組成物を昇圧下で硬化させることにより得られる、請求項12又は13に記載の材料。
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