JP4070809B2 - インターフェロン−ガンマインヒビター含有医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、創傷または線維性疾患の治癒、特に瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための医薬組成物、および慢性創傷の治癒を促進するための医薬組成物に関する。
“創傷または線維性疾患”とは、結果的に瘢痕組織が形成されうる状態のいずれをも意味する。特に、皮膚創傷の治癒、腱損傷の回復、挫傷の治癒、中枢神経系(CNS)損傷の治癒、中枢神経系に瘢痕組織が形成される状態、打撃による瘢痕組織の形成、および損傷または外科手術の結果として起こる組織の癒着(これには、腱治癒および腹部狭窄および癒着などを含めてもよい)が包含される。線維性疾患の例としては、肺線維症、糸球体腎炎、肝硬変および増殖性硝子体網膜症が挙げられる。
“瘢痕の形成の減少”とは、非処置の創傷または線維性疾患と比較した場合の瘢痕の減少のレベルを意味する。
特に、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための組成物が欠如している。瘢痕組織の形成は、治癒した創傷に機械的強度を与えるものではあるが、醜いものとなりえるものであり、かつ組織の機能を損なう可能性もある。
このことは、特にCNSにおける瘢痕組織が形成される創傷が該当し、該瘢痕組織は損傷を受けるかまたは再成長した神経末端を阻害し、その機能に非常に重大な影響を及ぼす。
また、たとえば、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍および床ずれ(褥瘡性潰瘍)(特に高齢かつ車椅子使用患者におけるもの)といったような慢性創傷の治療および治癒を促進する組成物が欠如している。このような組成物は、創傷の治癒が遅いかまたは創傷の治癒過程がまだ開始していない患者において極めて有用である。このような組成物を用いて、創傷の治癒を“キックスタート”させ、次いで、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進する組成物(たとえばPCT/GB93/00586)と組み合わせて用いることができる。したがって、慢性創傷が治癒されるのみならず、瘢痕の形成も減少して治癒されうることになる。
本発明にしたがって、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するのに用いるIFN−γ(インターフェロンγ)のインヒビターを提供する。
IFN−γ(II型または免疫インターフェロン)は、主としてTリンパ球をマイトジェンまたは抗原で刺激することにより産生される(Trinchieriら、1985、Immunology Today,6:131)。IFN−γ(マウスおよびヒトの両方)は、繊維芽細胞、内皮細胞および単球/マクロファージといったような種々の細胞に見られる単一のクラスの高親和性レセプターに対する特異的、飽和可能な結合を介して影響を及ぼす。
IFN−γは広範に研究されている(Kovacs,E.J.、1991、Immunology Today,12(1):17-23を参照、IFN−γが繊維芽細胞増殖および結合組織の産生を減少することを述べている)。創傷部位におけるIFN−γの効果に関する過去の研究(Pittel,B.ら、1994、Plastic and Reconstructive Surgery,93:1224-1235)には、肥厚性瘢痕に対するIFN−γの病変内局注の効果について、総コラーゲン含量には変化はなかったが、ほとんど(6/7)の患者において症状の軽減が見られ、すべての患者において治療中に瘢痕の大きさが減少したことが示されている。Duncanら(1985、J.Exp.Med.162:516-527)およびAmentoら(1985、J.Clin.Invest.,76:836-848)には、IFN−γが、皮膚および滑膜繊維芽細胞によるI型およびIII型コラーゲンならびにフィブロネクチンの合成、ならびに軟骨細胞によるII型コラーゲンの合成を用量依存的に阻害することが示されている。Murrayら(1985、J.Immunol.,134:1619-1622)にも、IFN−γが、インビボにおいてマクロファージの活性化に関与していることが示されている。Tamaiら(1995、J.Invest.Dermatol.,104:384-390)には、IFN−γが、メタロプロテアーゼ(MMP)の調節に関与しており、インビトロでの細胞培養においてメタロプロテアーゼのインヒビターであることが示されている。
IFN−γは、それが加えられる環境条件に応じた多数の機能をもつ多能性分子であると考えられる。幾つかのグループが、IFN−γを培養物に添加することによりコラーゲンの合成が減少することを報告しており、Gransteinら(1989、J.Invest.Dermatol.,93:18-27)には、IFN−γで処置された創傷においてコラーゲンの定着が阻害され、それによって瘢痕の形成の減少をともなって創傷が治癒されることが示されている。これらの結果から、(創傷または線維性疾患の)部位をIFN−γで処置することにより、瘢痕の形成の減少をともなって創傷が治癒すると考えられる。
行った実験例(後記実験例を参照)では、非常に驚くべきことに、先行技術の教示にもかかわらず、実に、IFN−γを阻害することにより、瘢痕の形成の減少をともなって治癒が促進されることが示された。
該インヒビターは、たとえば中和抗体である。該インヒビターは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージ誘導抗体、遺伝子工作された抗体(ダイアボディなど)またはトランスジェニックマウスから誘導された抗体である。
また、インヒビターは、レセプターとの相互作用からIFN−γを阻害する(すなわち、IFN−γレセプターの活性化を遮断する)ものまたはレセプターの活性化を阻害するものであればいずれでもよい。たとえば、IFN−γレセプター結合配列に類似しており、該レセプターに結合するが、レセプターを活性化せず、そのことによってIFN−γのレセプターへの結合を競合的に阻害し、レセプターの活性化を阻害する分子である。
該インヒビターは、医薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤とともに用いることができる。
該インヒビターは、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための組成物とともに用いることができる。
該インヒビターは、慢性の創傷の治癒を促進するための組成物とともに用いることができる。
また本発明に従って、IFN−γを阻害することを特徴とする、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進する方法が提供される。
該阻害は、IFN−γのインヒビターを部位に投与することによって達成しうる。“部位”とは創傷形成または線維性疾患の部位を意味する。該インヒビターは、本発明のインヒビターである。
約300〜約30,000IUのIFN−γを阻害することができる。
IFN−γは、創傷形成/発症(“発症”は、線維性疾患の発症を意味する)の直前に阻害することができる。IFN−γは、創傷形成/発症の直後に阻害してもよいが、たとえば、創傷形成/発症後約3または7日以内に阻害することもできる。
該方法は、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための方法とともに用いることができる。
該方法は、慢性の創傷の治癒を促進するための方法とともに用いることができる。
本発明のさらに別の態様では、慢性創傷の治癒を促進するために用いるIFN−γのスティミュレーターが提供される。
実験例(後記実験例を参照)では、非常に驚くべきことに、実に、IFN−γで部位を処置することにより、コラーゲンの定着が促進され、瘡痕の形成の増加をともなって治癒が促進され、したがって、慢性創傷の治癒が促進されることが示された。
“スティミュレーター”は、部位における活性IFN−γの量または効能、もしくはIFN−γレセプターの活性化を刺激しうる(すなわち作動させる)ものを意味する。このスティミュレーターは、IFN−γそれ自体またはIFN−γの一部修飾体であってよい。IFN−γの一部修飾体としては、たとえば、IFN−γより半減期の長いものなどが挙げられる。別のスティミュレーターは、IFN−γ代謝のインヒビターであってもよい。
一部修飾としては、アミノ酸残基の付加、欠失または置換などによるものが挙げられる。たとえば、置換は、保存された置換である。したがって、一部修飾体分子は、それが誘導されたもとの分子の相同体である。たとえば、それが誘導されたもとの分子と少なくとも40%の相同性、たとえば、50、60、70、80、90または95%の相同性をもつことができる。
該スティミュレーターは、医薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤とともに用いることができる。
該スティミュレーターは、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための組成物とともに用いることができる。
該スティミュレーターは、慢性の創傷の治癒を促進するための組成物とともに用いることができる。
また本発明に従って、部位においてIFN−γを刺激することを特徴とする、慢性創傷の治癒を促進する方法が提供される。“刺激する”とは、部位における活性IFN−γの量または効能、もしくはIFN−γレセプターの活性化を増加することを意味する。
該刺激は、IFN−γのスティミュレーターを部位に投与することによって達成しうる。該スティミュレーターは、本発明のスティミュレーターである。
約7,500〜約15,000IUのIFN−γを部位に投与することができる。
IFN−γは、創傷形成の直前に刺激することができる。IFN−γは、創傷形成の直後に刺激してもよいが、たとえば、創傷形成後約3または7日以内に刺激することもできる。
該方法は、瘢痕の形成の減少をともなって創傷または線維性疾患の治癒を促進するための方法とともに用いることができる。
該方法は、慢性の創傷の治癒を促進するための方法とともに用いることができる。
本発明を、IFN−γの阻害の態様、および瘢痕の形成の減少をともなう創傷または線維性疾患の治癒の促進、並びに慢性創傷の治癒の促進を示す、以下の実施例によりさらに明らかにするが、これは例示にすぎない。
実験例
方法:
12〜15週齢の成体の雄性CD1マウス(チャールズ・リバー)84匹に等量のハロタン、酸素および酸化窒素を用いて麻酔を施した。1cm全厚切開(皮筋層の深さのもの)を、頭蓋底から3cm、背面正中線の両側1cmの部分に2箇所作成した。
使用した試験溶液は、抗IFN−γ、IFN−γおよびPBSであった。抗IFN−γは、マウスIFN−γ(MuIFN−γ=ラットIgG'2a)に対する抗体を含んでいる。抗体は、F3ハイブリド−マクローン(J.Immunol.,1987,138:4178)を接種された無胸腺ヌードマウスの腹水として入手し、抗ラットκ鎖mAbを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。抗体の中和ポテンシャルは、30U/mlのMuIFN−γに対して1/1,000,000であり、1.25ng/mlの内毒素を含んでいた。IFN−γは、抗IFN−γmAbを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞誘導組換えMuIFN−γを使用した。IFN−γの初期濃度は、3000,000IU/mlであった(内毒素73pg/ml)。
実験動物を次のようなグループに分けた。
Aグループ:実験動物に、創傷形成前に100μlの希釈しない抗IFN−γ抗体を1回の腹腔内(IP)注入によって処置した。
Bグループ:実験動物に、創傷形成前に50μlまたは25μlの抗IFN−γ抗体(PBSで希釈)を1回の皮内(ID)注入によって処置した。
Cグループ:実験動物に、創傷形成前にIFN−γ(15,000または7,500IU)を1回のID注入によって処置した。
Dグループ:実験動物に、創傷形成前および創傷形成後第3日と第7日に、IFN−γ(15,000または7,500IU)をID注入によって処置した。
Eグループ:実験動物に、創傷形成前第0日に、PBS(リン酸緩衝食塩水)を1回のコントロールIP注入によって処置した(コントロール)。
Fグループ:実験動物に、創傷形成前第0日に、PBSを1回のコントロールID注入によって処置した。
Gグループ:実験動物に、創傷形成前第0日および創傷形成後第3日と第7日に、PBSをID注入によって処置した。
創傷形成後、第7日、14日、70日および120日の時点でクロロホルムの過剰投与により実験動物を屠殺した。厚さ7μmのワックス切片を切り出し、ヘモトキシリンおよびエオシンにて着色して細胞浸潤および再上皮形成を評価し、マッソンのトリクロムにて着色してコラーゲンの定着および方向性を評価した。
結果:
抗IFN−γ抗体
IP注入にて1回処置した動物ではどの時点においてもコントロール創傷と処置創傷の間に差異は観察されなかった。
抗IFN−γ抗体をID注入にて1回処置した動物では、第7日と第14日ではコントロールとの差異はなかった。しかし、第70日と第120日では、処置創傷内のコラーゲン繊維の方向性において差異が観察された。先行技術の知見にもかかわらず、抗IFN−γ処置には、抗瘢痕形成効果、皮膚構造の質の向上効果がある。繊維は依然として相対的に小さく、表皮の直下でぎっしり詰まっており、方向性はランダムであるが、皮膚の中層および深層では、コラーゲン繊維の密度は低下し、方向性は“篭の網目”様になった。コントロール創傷(瘢痕形成)では、コラーゲン繊維の方向性は、創傷のどの領域でも平行に詰まっていた。
IFN−γ
早期の時点(第7日および第14日)では、すべてのIFN−γ処置創傷(2つの注入法の両方とも)において、炎症および血管形成は、用量依存的に増加した、すなわち、低用量では、コントロールよりは悪いけれども、高用量のIFN−γで処置した創傷ほどには悪くはなかった。
第70日および第120日までに、高用量のIFN−γで創傷形成後第0、3および7日に処置した創傷は、著しい線維症(すなわち、瘢痕形成)を示した。創傷は、巨視的には、膨らみ、微視的には、創傷縁内の大きな渦を巻いている束の中に密に充填されたコラーゲンが観察された。これらの処置創傷には、コントロール創傷と比較して、創傷の底部に余分の炎症も見られた。この瘢痕形成もまた、用量依存性、すなわち、IFN−γの用量が多いと瘢痕形成も大きくなるものであった。
検討:
先行の研究では、IFN−γを創傷に投与するとコラーゲンの合成が阻害されることが示されており、それはIFN−γが抗瘢痕形成剤として有用である可能性を示唆するものであった。他の研究では、IFN−γを用いてケロイドまたは肥大性瘢痕を処置すると、瘢痕の大きさが減少することが示された。
これらの発見に反して、本発明の実験例では、非常に驚くべきことに、IFN−γで早期処置すると、コラーゲンが密に充填されている膨れた瘢痕をもつ線維症が引き起こされるが、IFN−γに対する抗体で切開創傷を処置すると、治癒状態が改善されて、コラーゲン線維が“篭の網目”様の方向性をもつ(すなわち、瘢痕形成が減少する)ようになることが示された。

Claims (12)

  1. 瘢痕の形成の減少をともなって皮膚創傷の治癒を促進するための皮内注入用薬剤の製造におけるIFN−γの中和抗体であるインヒビターの使用。
  2. インヒビターが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージ誘導抗体、遺伝子工作された抗体およびトランスジェニックマウスから誘導された抗体のいずれかひとつから選ばれる請求項に記載のIFN−γインヒビターの使用。
  3. インヒビターが、IFN−γとそのレセプターとの相互作用を阻止する請求項1または2のいずれかに記載のIFN−γインヒビターの使用。
  4. 医薬的に許容しうる担体、希釈剤または賦形剤とともに用いる、前記請求項のいずれかひとつに記載のIFN−γインヒビターの使用。
  5. 請求項1に記載の薬剤とは別の瘢痕の形成の減少をともなって創傷の治癒を促進するための組成物とともに用いる、前記請求項のいずれかひとつに記載のIFN−γインヒビターの使用。
  6. IFN−γインヒビターが、瘢痕中の皮膚構造の質を改善するのに十分な量で提供される、前記請求項のいずれかひとつに記載のIFN−γインヒビターの使用。
  7. 前記請求項のいずれかひとつに記載のIFN−γの中和抗体であるインヒビターを含む、瘢痕の形成の減少をともなって皮膚創傷の治癒を促進するための皮内注入用医薬組成物。
  8. 創傷形成の部位に投与するための請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 約300〜約30,000IUのIFN−γを阻害するための請求項7または8のいずれかひとつに記載の医薬組成物。
  10. 創傷形成の直前または直後のいずれかに用いるための請求項7〜9のいずれかひとつに記載の医薬組成物。
  11. 請求項1に記載の薬剤とは別の瘢痕の形成の減少をともなって創傷の治癒を促進するための組成物とともに用いる請求項7〜10のいずれかひとつに記載の医薬組成物。
  12. IFN−γインヒビターが、瘢痕中の皮膚構造の質を改善するのに十分な量で提供される、請求項7〜11のいずれかひとつに記載の医薬組成物。
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