JP4070591B2 - 作業車の変速操作構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、該ギヤ式変速装置に対して直列に接続される油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するとともに、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記油圧クラッチが急激に昇圧し、かつ、前記設定時間の経過後は前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように、前記弁機構に供給する弁開度調節用の電流値を制御する制御手段とを備えた作業車の変速操作構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような作業車の変速操作構造においては、ギヤ式変速装置を変速操作するアクチュエータの作動に連動して油圧クラッチが一時的に切り状態に切り換えられることから、変速操作の際に伝動を一時的に遮断するクラッチ操作を人為的に行う手間を無くすことができ、又、油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は、制御手段が、弁機構に供給する開度調節用の電流値を所定の大きい値に維持し、その開度を大きい開度に維持して油圧クラッチを急激に昇圧させることから、油圧クラッチの入り作動開始から油圧クラッチを徐々に昇圧させる場合に比較して、油圧クラッチの入り操作に要する時間を短縮することができ、更に、その設定時間の経過後は、制御手段が、弁機構に供給する弁開度調節用の電流値を一旦低下させてその開度を小さくした後、徐々に弁開度調節用の電流値を増大させて弁機構の開度を大きくすることで、油圧クラッチが徐々に昇圧されて入り状態に切り換えられるようになることから、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制できるようになっている。
【0003】
従来、このような作業車の変速操作構造においては、油圧クラッチを急激に昇圧させる油圧クラッチの入り作動開始からの設定時間(所謂イニシャル時間)の人為的な設定変更を可能にしたものがあった。(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−208595号公報(段落番号0013−0017、図4−10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、前記設定時間の人為的な設定変更を行うことで、油圧クラッチの個体差などに起因したクラッチ接続時間のばらつきを吸収できるようになっている。
【0006】
ところで、作業車においては、装備する作業装置の種類などの使用条件によって車体重量が変化した場合や経年変化などに起因して、油圧クラッチの入り操作時に駆動車輪の駆動が開始されるクラッチ圧が変化し、その変化後のクラッチ圧と、予め設定されている設定時間経過直後のクラッチ圧との差に応じてクラッチ接続時に発生するショックが大きくなることから、使用条件の違いや経年変化などに応じて設定時間経過直後のクラッチ圧を調節する必要があり、このようなクラッチ圧の調節をも前記設定時間の人為的な設定変更で対処することが一般的に行われている。
【0007】
しかしながら、前記設定時間は、切り状態の油圧クラッチを急激に昇圧させるための時間であり、その変更に伴って設定時間経過直後の油圧クラッチの圧力も大きく変化するようになることから、その変更によって、その時間の経過後に使用条件の違いや経年変化などを考慮した適切なクラッチ圧を得ることが難しく、その時間が長すぎても短すぎてもクラッチ接続時に大きなショックが発生するようになる。又仮に、ある変速段への変速操作における設定時間の設定変更を適切に行うことができて、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制することができたとしても、異なる変速段や同じ変速段でも変速操作時間が異なる場合には、逆にクラッチ接続時に発生するショックが大きくなることもあることから、使用条件の違いや経年変化などに応じた変速ショックの調節にかなりの手間を要するようになっていた。
【0008】
本発明の目的は、使用条件の違いや経年変化などに応じた変速ショックの人為調節を容易に行えるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
上記目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、該ギヤ式変速装置に対して直列に接続される油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するとともに、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記油圧クラッチが急激に昇圧し、かつ、前記設定時間の経過後は前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように、前記弁機構に供給する弁開度調節用の電流値を制御する制御手段とを備えた作業車の変速操作構造において、前記設定時間の経過直後に前記制御手段から前記弁機構に供給される弁開度調節用の電流値が人為的な設定変更によってオフセットできるように構成するとともに、前記オフセットの変更は前記設定時間経過直後において前記弁機構の弁の開度を一旦小さくする際の弁開度を決定すべく設定時間経過直後において弁開度調節用の電流値を大小に設定変更するものである。
【0010】
〔作用〕
上記請求項1に記載の発明によると、油圧クラッチを急激に昇圧させる設定時間の経過直後に弁機構に供給される弁開度調節用の電流値は、設定時間経過後に油圧クラッチを徐々に昇圧させる上において、弁機構の開度を一旦小さくする際の弁開度を人為的に決定するものであり、設定時間が経過した直後の弁開度調節用の電流値を人為的に大小に設定変更するもので、その設定変更に伴って設定時間経過直後に油圧クラッチに付加される圧力が小さく変化するようになることから、その設定変更によって設定時間経過直後のクラッチ圧を微調整できるようになる。
【0011】
しかも、その電流値を大きくすればクラッチ接続時間が短くなってショックが大きくなり、逆に、その電流値を小さくすればクラッチ接続時間が長くなってショックが小さくなることから、その設定変更に伴って発生するショックの変化も把握し易くなり、又、異なる変速段や同じ変速段で変速操作時間が異なる場合であっても、その設定変更に伴って発生するショックの変化が全て同じ傾向となり、結果、変速段や変速操作時間にかかわらず、その設定変更によってクラッチ接続時におけるショックの発生を抑制できるようになる。
【0012】
その設定変更によって設定時間経過直後に弁機構に供給される弁開度調節用の電流値を大小に変更してオフセットするだけであって、設定時間経過後の電流値の変化は同じであることから、設定時間経過後の電流値の変化をも変更する場合に比較して、制御構成の簡素化を図れるとともに、使用条件の違いや経年変化などに応じた適切なクラッチ圧の設定が行い易くなる。
【0014】
〔効果〕
従って、油圧クラッチを急激に昇圧させる設定時間の経過直後に弁機構に供給される弁開度調節用の電流値を、使用条件の違いや経年変化などを考慮して人為的に大又は小に設定変更しておくことで、その設定時間経過直後には、変速段や変速操作時間にかかわらず、使用条件の違いや経年変化などに応じた適切なクラッチ圧を得ることができて、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制することができるのであり、もって、使用条件の違いや経年変化などに応じた変速ショックの人為調節を容易に行えるようになった。
【0015】
又、制御構成の簡素化を図りながらも、使用条件の違いや経年変化などに応じた変速ショックの人為調節を容易に行えるようになった。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1には作業車の一例であるトラクタの全体側面が、図2及び図3にはその伝動系が示されており、このトラクタは、機体前部に搭載したエンジン1からの動力が主クラッチ2を介してギヤ式変速装置3に伝達され、このギヤ式変速装置3による変速後の走行用動力で前輪4及び後輪5が駆動され、又、ギヤ式変速装置3による変速後の作業用動力で機体後部の動力取出軸6が駆動されるように構成されている。
【0017】
ギヤ式変速装置3の後部には、油圧式のリフトシリンダ7の作動で昇降揺動する左右一対のリフトアーム8及びリンク機構9を介して作業装置の一例であるロータリ耕耘装置10が駆動昇降可能に連結されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ギヤ式変速装置3は、主クラッチ2を介して伝達された動力を、4段の変速が可能な走行用の主変速機構11と、正逆転切り換えと正転3段の変速が可能な作業用変速機構12とに分配供給し、主変速機構11による変速後の動力を、走行用の油圧クラッチ13を介して前後進切換機構14に伝達し、前後進切換機構14による切り換え後の前進動力は、小さい伝動比による高低2段の変速が可能な前進用変速機構15を介して、又、前後進切換機構14による切り換え後の後進動力は、その前進用変速機構15を介さずに、大きい伝動比による高低2段の変速が可能な副変速機構16に伝達し、副変速機構16による変速後の動力を、微速走行を可能にする超減速機構17に経由させた後に、前輪用差動機構18に伝動軸19を介して連動連結される出力軸20と後輪用差動機構21とに分配供給し、一方、作業用変速機構12による変速後の動力を動力取出軸6に伝達するように構成されている。
【0019】
そして、前輪用差動機構18からの動力で左右の前輪4が駆動され、後輪用差動機構21からの動力で左右の後輪5が駆動され、動力取出軸6からの動力でロータリ耕耘装置10が駆動されるようになっている。
【0020】
図3に示すように、主変速機構11は、機体後方側の第1シフトスリーブ22を中立位置よりも機体後方側の1速位置に、かつ、機体前方側の第2シフトスリーブ23を中立位置に位置させた状態が1速状態であり、第1シフトスリーブ22を中立位置よりも機体前方側の2速位置に、かつ、第2シフトスリーブ23を中立位置に位置させた状態が2速状態であり、第1シフトスリーブ22を中立位置に、かつ、第2シフトスリーブ23を中立位置よりも機体後方側の3速位置に位置させた状態が3速状態であり、第1シフトスリーブ22を中立位置に、かつ、第2シフトスリーブ23を中立位置よりも機体前方側の4速位置に位置させた状態が4速状態であり、その第1シフトスリーブ22は、シーケンス弁を兼用する油圧式の第1変速シリンダ24によって変位操作され、第2シフトスリーブ23は、シーケンス弁を兼用する油圧式の第2変速シリンダ25によって変位操作されるようになっている。
【0021】
前後進切換機構14は、シフトスリーブ26を機体前方側の前進位置に位置させた状態が前進状態であり、機体後方側の後進位置に位置させた状態が後進状態であり、そのシフトスリーブ26は、ステアリングホイール27の左側方に配備した第1切換レバー28に連係されている。
【0022】
前進用変速機構15は、シフトスリーブ29を機体前方側の低速位置に位置させた状態が低速状態であり、機体後方側の高速位置に位置させた状態が高速状態であり、その高低変速による伝動比は、主変速機構11における各変速段の間での伝動比よりも小さくなるように設定されている。又、シフトスリーブ29は、シーケンス弁を兼用する油圧式の第3変速シリンダ30によって変位操作されるようになっている。
【0023】
副変速機構16は、シフトスリーブ31を機体前方側の低速位置に位置させた状態が低速状態であり、機体後方側の高速位置に位置させた状態が高速状態であり、その高低変速による伝動比は、主変速機構11における各変速段の間での伝動比よりも大きくなるように設定されている。又、シフトスリーブ31は、シーケンス弁を兼用する油圧式の第4変速シリンダ32によって変位操作されるようになっている。
【0024】
超減速機構17は、シフトスリーブ33を機体前方側の非減速位置に位置させた状態が非減速状態であり、機体後方側の減速位置に位置させた状態が減速状態であり、そのシフトスリーブ33は、運転座席34の左側後方に配備した第2切換レバー35に連係されている。
【0025】
図4に示すように、油圧クラッチ13に対する作動油の流動は、電磁比例制御弁36とパイロット式の切換弁37とからなる弁機構38によって調節され、第1変速シリンダ24に対する作動油の流動は電磁式の第1切換弁39と第2切換弁40によって調節され、第2変速シリンダ25に対する作動油の流動は電磁式の第3切換弁41と第4切換弁42によって調節され、第3変速シリンダ30に対する作動油の流動は電磁式の第5切換弁43によって調節され、第4変速シリンダ32に対する作動油の流動状態は電磁式の第6切換弁44によって調節され、電磁比例制御弁36及び第1切換弁39〜第6切換弁44は、運転座席34の左側前方に配備した変速レバー45の変速位置に応じて変化するポテンショメータ46からの出力電圧に基づく制御装置(制御手段の一例)47の制御作動で作動するように構成されている。
【0026】
つまり、変速レバー45の操作に基づく制御装置47の制御作動で、主変速機構11、前進用変速機構15、及び副変速機構16が変速操作され、この変速操作によって前進12段、後進8段の変速を行えるようになっている。
【0027】
図5に示すように、変速レバー45を1速位置に操作すると、主変速機構11の1速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を2速位置に操作すると、主変速機構11の2速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を3速位置に操作すると、主変速機構11の3速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の低速状態とが現出され、変速レバー45を4速位置に操作すると、主変速機構11の3速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を5速位置に操作すると、主変速機構11の4速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の低速状態とが現出され、変速レバー45を6速位置に操作すると、主変速機構11の4速状態と副変速機構16の低速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を7速位置に操作すると、主変速機構11の1速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の低速状態とが現出され、変速レバー45を8速位置に操作すると、主変速機構11の1速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を9速位置に操作すると、主変速機構11の2速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の低速状態とが現出され、変速レバー45を10速位置に操作すると、主変速機構11の2速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を11速位置に操作すると、主変速機構11の3速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出され、変速レバー45を12速位置に操作すると、主変速機構11の4速状態と副変速機構16の高速状態と前進用変速機構15の高速状態とが現出されるようになっている。
【0028】
そして、上述したように、第1切換レバー28を前進位置に操作して前後進切換機構14の前進状態を現出した場合には、前後進切換機構14からの前進動力が前進用変速機構15を介して副変速機構16に伝達されるようになり、これによって、前進用変速機構15の変速状態が有効になることから、図5の(イ)に示すように、変速レバー45の12段の各変速位置に対応して12段の前進変速状態が現出されるようになる。一方、第1切換レバー28を後進位置に操作して前後進切換機構14の後進状態を現出した場合には、前後進切換機構14からの後進動力が前進用変速機構15を介さずに副変速機構16に伝達されるようになり、これによって、前進用変速機構15の変速状態が無効になることから、図5の(ロ)に示すように、変速レバー45の12段の各変速位置に対応して8段の後進変速状態が現出されるようになる。
【0029】
ちなみに、後進時においては、変速レバー45の1速位置が後進1速位置に、変速レバー45の2速位置が後進2速位置に、変速レバー45の3速位置と4速位置とが後進3速位置に、変速レバー45の5速位置と6速位置とが後進4速位置に、変速レバー45の7速位置と8速位置とが後進5速位置に、変速レバー45の9速位置と10速位置とが後進6速位置に、変速レバー45の11速位置が後進7速位置に、変速レバー45の12速位置が後進8速位置になる。
【0030】
変速レバー45の操作に基づく変速作動について説明すると、例えば、図4に示す状態は、主変速機構11の1速状態、副変速機構16の低速状態、及び前進用変速機構15の高速状態を現出した前進1速状態であり、このとき、油圧クラッチ13はポンプ48からの作動油によって入り状態が現出されている。この状態から、変速レバー45を1速位置から2速位置に移動させると、その操作に基づく制御装置47の制御作動で、第1切換弁39が第1変速シリンダ24に作動油を供給する状態に、第2切換弁40が第1変速シリンダ24から作動油を排出する状態に切り換えられて、第1変速シリンダ24が収縮作動を開始するようになる。
【0031】
第1変速シリンダ24が収縮作動を開始すると、それに伴って、対応するチェック弁49が機械的に開放されて油路50の圧力が低下し、この油路50の圧力をパイロット圧とする切換弁37が油圧クラッチ13から作動油を排出する状態に切り換わり、油圧クラッチ13が切り状態に切り換えられることで、第1変速シリンダ24による第1シフトスリーブ22の変位操作が円滑に行われるようになる。
【0032】
第1変速シリンダ24の収縮作動によって第1シフトスリーブ22が所定の変速位置まで変位すると、第1変速シリンダ24に対応するチェック弁49が機械的に閉塞されて油路50の圧力が上昇し、切換弁37が油圧クラッチ13に作動油を供給する状態に切り換わり、油圧クラッチ13が入り状態に切り換えられることで、主変速機構11を1速状態から2速状態に切り換えた前進2速状態又は後進2速状態での伝動が開始されるようになる。このとき、制御装置47は、油路50の圧力を検出する圧力センサ51からの検出情報に基づいて、油圧クラッチ13の入り作動開始から設定時間tの間は油圧クラッチ13が急激に昇圧し、かつ、設定時間tの経過後は油圧クラッチ13が徐々に昇圧するように、電磁比例制御弁36に供給する弁開度調節用の電流値を制御するように構成されており(図6参照)、もって、変速操作時での油圧クラッチ13の入り操作に要する時間を短縮しながらも、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制できるようになっている。
【0033】
尚、説明は省略するが、他の変速操作においても基本的には上記と同様に、対応するシフトスリーブ22,23,29,31の変位操作が行われる間は油圧クラッチ13が切り操作され、対応するシフトスリーブ22,23,29,31が所定の変速位置まで変位すると、前述した所定の昇圧特性で油圧クラッチ13が入り操作されるようになっている。
【0034】
上記のように構成された変速操作構造においては、その構造上、そのときの変速操作に使用する変速シリンダ24,25,30,32やその数量などによって変速操作時間が異なるようになり、その変速操作時間が長くなるほど、油圧クラッチ13から排出される作動油量が多くなって、油圧クラッチ13の入り操作の初期に必要となる作動油量も多くなる。一方、作動油は、その温度が低くなるほど粘度が高くなって流動し難くなる。
【0035】
そこで、制御装置47は、圧力センサ51からの検出情報に基づいて、そのときの変速操作に対応する変速シリンダ24,25,30,32の作動開始を検知するとともにタイマ52による計測を開始させ、そのときの変速操作に対応する変速シリンダ24,25,30,32の作動停止を検知するとともにタイマ52による計測を終了させることで、そのときの変速操作に要した変速操作時間を計測し、その変速操作時間から、その後の油圧クラッチ13の入り操作の初期において必要となる作動油量を得られるようにするための設定時間tを算出し、更に、作動油の温度を検出する油温計53からの検出温度に基づいて設定時間tを補正するように構成されており、これによって、変速段の違いなどに起因して変化する変速操作時間や、作動油の温度に起因した粘度の変化にかかわらず、油圧クラッチ13の入り操作に要する時間を短縮しながらも、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制できるようになっている。
【0036】
尚、制御装置47は、油圧クラッチ13から全ての作動油を排出するのに要する所定時間が経過した場合には、タイマ52による計測を停止するとともに、設定時間tを、走行開始時の変速操作において適用される、作動油が抜けきった状態の油圧クラッチ13の入り操作初期に必要な作動油量が得られる長さに変更するように構成されている。又、制御装置47は、ポテンショメータ46からの検出情報に基づいて、走行開始時の変速操作であるか走行中の変速操作であるかを判別するようになっている。
【0037】
ところで、トラクタなどの作業車においては、装備する作業装置の種類などの使用条件によって車体重量が変化した場合や経年変化などに起因して、油圧クラッチ13の入り操作時に前後の車輪4,5の駆動が開始されるクラッチ圧が変化し、その変化後のクラッチ圧と、予め設定されている設定時間t経過直後のクラッチ圧との差に応じてクラッチ接続時に発生するショックが大きくなることから、使用条件の違いや経年変化などに応じて設定時間t経過直後のクラッチ圧を調節する必要がある。
【0038】
そこで、このトラクタにおいては、図6に示すように、設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値の人為的な設定変更が可能となるように構成され、この設定変更によって設定時間t経過直後のクラッチ圧を調節できるようになっている。又、この設定変更によって、設定時間tの経過後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値がオフセットするようになっている。
【0039】
この構成によると、設定時間tの経過直後に電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値は、設定時間tの経過後に油圧クラッチ13を徐々に昇圧させる上において、電磁比例制御弁36の開度を一旦小さくする際の弁開度を決定するものであり、その設定変更に伴って設定時間tの経過直後に油圧クラッチ13に付加される圧力が小さく変化するようになることから、その設定変更によって設定時間tの経過直後のクラッチ圧を微調整できるようになる。
【0040】
しかも、その電流値を大きくすればクラッチ接続時間が短くなってショックが大きくなり、逆に、その電流値を小さくすればクラッチ接続時間が長くなってショックが小さくなることから、その設定変更に伴って発生するショックの変化も把握し易くなり、又、異なる変速段や同じ変速段で変速操作時間が異なる場合であっても、その設定変更に伴って発生するショックの変化が全て同じ傾向となり、結果、変速段や変速操作時間にかかわらず、その設定変更によってクラッチ接続時におけるショックの発生を抑制できるようになる。
【0041】
つまり、油圧クラッチ13を急激に昇圧させる設定時間tの経過直後に電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値を、使用条件の違いや経年変化などを考慮して人為的に設定変更することで、その設定時間tの経過直後には、変速段や変速操作時間にかかわらず、使用条件の違いや経年変化などに応じた適切なクラッチ圧を得ることができて、クラッチ接続時におけるショックの発生を抑制することができるのであり、もって、使用条件の違いや経年変化などに応じた変速ショックの人為調節を容易に行えるようになる。
【0042】
ちなみに、設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値の手動による設定変更は、機体に装備された各種スイッチのうちの所定のものを操作して調節モードに移行し、この調節モードにおいて所定のスイッチを操作すれば、予め設定された基準値に対してプラスマイナス9段階の設定変更を行えるようになっている。
【0043】
そして、例えば、装備する作業装置の変更によって、車体重量が重くなって前後の車輪4,5の駆動が遅れる場合には、その程度に応じて設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値をプラス側に変更し、逆に、車体重量が軽くなって前後の車輪4,5の駆動が早くなる場合には、その程度に応じて設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値をマイナス側に変更すれば、使用条件の違いによる変速ショックの発生を抑制できるようになる。
【0044】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)本発明をトラクタ以外の作業車に適用するようにしてもよい。
(2)設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値の手動による設定変更を無段階で行えるように構成してもよい。
(3)設定時間tの経過直後に制御装置47から電磁比例制御弁36に供給される弁開度調節用の電流値の手動による設定変更に伴って、設定時間t経過後の電流値の変化をも設定変更されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】伝動構成を示すブロック図
【図3】伝動構成を示す概略図
【図4】変速制御構造を示す油圧制御回路図
【図5】(イ)変速レバーの変速位置と前進変速状態との関係を示す図
(ロ)変速レバーの変速位置と後進変速状態との関係を示す図
【図6】電磁比例制御弁に供給する電流値の変化を示す図
【符号の説明】
3 ギヤ式変速装置
13 油圧クラッチ
24 アクチュエータ
25 アクチュエータ
30 アクチュエータ
32 アクチュエータ
38 弁機構
47 制御手段
t 設定時間
Claims (1)
- アクチュエータの作動で変速操作されるギヤ式変速装置と、該ギヤ式変速装置に対して直列に接続される油圧クラッチと、該油圧クラッチの作動状態を切り換える弁機構と、前記アクチュエータの作動開始に基づいて前記油圧クラッチが減圧による切り作動を開始し、かつ、前記アクチュエータの作動終了に基づいて前記油圧クラッチが昇圧による入り作動を開始するとともに、前記油圧クラッチの入り作動開始から設定時間の間は前記油圧クラッチが急激に昇圧し、かつ、前記設定時間の経過後は前記油圧クラッチが徐々に昇圧するように、前記弁機構に供給する弁開度調節用の電流値を制御する制御手段とを備えた作業車の変速操作構造であって、
前記設定時間の経過直後に前記制御手段から前記弁機構に供給される弁開度調節用の電流値が人為的な設定変更によってオフセットできるように構成するとともに、前記オフセットの変更は前記設定時間経過直後において前記弁機構の弁の開度を一旦小さくする際の弁開度を決定すべく設定時間経過直後において弁開度調節用の電流値を大小に設定変更するものである作業車の変速操作構造。
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