JP4070365B2 - 振動型ジャイロスコープ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動型ジャイロスコープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、自動車の車体回転速度フィードバック式の車両制御方法に用いる回転速度センサーに、振動型ジャイロスコープを使用することが検討されている。こうしたシステムにおいては、操舵輪の方向自身は、ハンドルの回転角度によって検出する。これと同時に、実際に車体が回転している回転速度を振動ジャイロスコープによって検出する。そして、操舵輪の方向と実際の車体の回転速度を比較して差を求め、この差に基づいて車輪トルク、操舵角に補正を加えることによって、安定した車体制御を実現する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こうした振動型ジャイロスコープにおいては、回転軸に対して垂直な方向へと向かって延びるように、振動子を配置することが望ましい。こうした振動型ジャイロスコープを提供するために、本出願人は、特願平10−306434号明細書において、基部と、基部の周縁から径方向に突出する複数の駆動振動系と、基部の周縁から径方向に突出する複数の検出振動系とを備える平面型振動子を開示した。
【0004】
しかし、本発明者がこの振動子を製作し、振動子の主面に所定の配線パターンを形成し、更に検波回路を設けて回転角速度の検出を行ってみると、特に矩形波の駆動電圧信号を使用して振動子を駆動したときなどに、次の問題が生ずることがあった。即ち、振動子に二つの検出振動系を設け、各検出振動系からの検出信号をそれぞれ検出し、二つの検出信号の差をとり、検波前の検出信号を得た(図5の下側のグラフに示す)。この検出信号には、矩形波の立ち上がり時の雑音パルス(図5の上側のグラフの参照信号に現れている)に応答してノイズピークが現れている。ノイズの大きさは、ノイズピークの面積に比例する。そして、検波後のノイズ信号のノイズレベルは、例えば3.2mVとなった。出力を20mV/(°/sec)に合わせたときに、これは、0.16°/secの回転角速度に相当する。
【0005】
本発明の課題は、振動型ジャイロスコープが、所定面内に延びる振動子を備えており、振動子が、この振動子の重心が位置する基部、この基部の周縁部から突出する複数の駆動振動系および前記基部の周縁部から突出する少なくとも一つの検出振動系を備えており、更に振動型ジャイロスコープが、各駆動振動系にそれぞれ形成されている各駆動電極、基部の主面上の配線パターンおよび電力供給パッドを備えている場合に、交流電圧信号の立ち上がり時の雑音に応答して検波前の検出信号に生ずるノイズピークを抑制することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定面内の回転角速度を測定するための振動型ジャイロスコープであって、この振動型ジャイロスコープが所定面内に延びる振動子を備えており、この振動子が、この振動子の重心が位置する基部、この基部の周縁部から突出する複数の駆動振動系および前記基部の周縁部から突出する二つの検出振動系を備えており、各駆動振動系を構成する二つの駆動振動片が同位相で共振し、各検出振動系からの検出信号の差をとって検出信号を得る構成であり、前記振動型ジャイロスコープが、前記各駆動振動系にそれぞれ形成されている各駆動電極、前記基部の少なくとも一方の主面上に、前記各駆動電極に対応してそれぞれ形成されている配線パターンおよび各配線パターンに接続されている電力供給パッドを備えており、前記各配線パターンおよび前記各電力供給パッドが互いに接続されておらず、前記各配線パターンに対して独立して電力が供給されており、前記基部内において、前記各配線パターンおよび前記各電力供給パッドが、さらに、各検出振動系の各検出電極に対応してそれぞれ形成された配線パターンおよび各配線パターンに接続されている各パッドが、前記重心を中心として略回転対称の位置に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明者は、前記した、交流電圧信号、特に著しくは矩形波信号電圧の立ち上がり時の雑音に応答して、検波前の検出信号に現れるノイズピークを検討しているうちに、このノイズピークが、二つの検出振動系のうち、特に駆動電極からの配線パターンに近い方の検出振動系上の検出電極からの検出信号において特に大きいことを見いだした。この理由は明確ではないが、何らかの空間的な電気−機械的結合が生じているものと思われる。
【0008】
本発明者は、この知見を出発点とし、各駆動電極に対応して、別個に、各配線パターンおよび各電力供給パッドをそれぞれ設け、各配線パターンおよび各電力供給パッドを互いに接続せず、各配線パターンに対して独立して電力を供給することを想到した。この結果、信号電圧波の立ち上がり時の雑音に応答して検波前の検出信号に生ずるノイズピークが、著しく抑制され、例えば10分の1程度に減少することを見いだした。
【0009】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について述べる。
【0010】
本発明の好適な実施形態においては、基部内において、各配線パターンおよび各電力供給パッドが、振動子の重心を中心として反対側に設けられている。これによって、検出振動系への電気機械的影響を一層低減できる。
【0011】
更に好ましくは、基部内において、各配線パターンおよび各電力供給パッドが、振動子の重心を中心として略回転対称(略中心対称)の位置に設けられている。これは、一つの配線パターンおよび一つの電力供給パッドを、振動子の重心を中心として所定角度回転させると、他の配線パターンおよび電力供給パッドの位置に位置することを意味している。
【0012】
この実施形態において特に好ましくは、振動子が二つの駆動振動系、各駆動振動系にそれぞれ対応する二つの配線パターンおよび各駆動振動系に対応する二つの電力供給パッドを備えており、各配線パターンおよび各電力供給パッドが、振動子の重心を中心として略点対称の位置に設けられている。
【0013】
本発明の特に好適な実施形態においては、各駆動振動系が、それぞれ、基部から延びる細長い支持部と、この支持部から支持部に対して交差する方向に延びる少なくとも一片の駆動振動片とを備えており、駆動振動片がその支持部への付け根を中心として所定面内で屈曲振動し、振動子が所定面内で回転したときに支持部がその基部への付け根を中心として所定面内で屈曲振動する。こうした形態の振動子を使用した場合には、本発明の作用効果が著しく増幅される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る振動型ジャイロスコープ1を、振動子2の一方の主面2a側から見た概略平面図であり、図2は、ジャイロスコープ1を、振動子2の他方の主面2b側から見た概略平面図である。
【0015】
振動子2は、基部9、一対の駆動振動系3A、3Bおよび一対の検出振動系4A、4Bを備えている。本例の基部9は、振動子の重心GO(振動子が振動していないときの重心)を中心として四回対称の略正方形をなしており、各駆動振動系3A、3B、各検出振動系4A、4Bは、それぞれ、基部9の周縁部9aの各辺から突出している。なお、本例では、基部9の中央部分に支持孔10が形成されており、支持孔10の中に重心GOが位置している。
【0016】
各駆動振動系3A、3Bは、それぞれ、基部9の周縁部9aから径方向に突出する細長い支持部6A、6Bと、支持部6A、6Bの長手方向に直交する方向に向かって延びる各一対の駆動振動片5A、5B、5C、5Dとを備えている。8は、各駆動振動片と各支持部との連結部分である。6aは支持部の付け根であり、6bは支持部の先端部分である。
【0017】
各検出振動系4A、4Bは、それぞれ、基部9の周縁部9aから径方向に突出して延びる細長い検出振動片7A、7Bからなっている。
【0018】
駆動振動片5A、5B、5C、5Dの一方の主面2a上には、図1に示すように、駆動電極11A、11B、11C、11Dが形成されており、各駆動振動片の他方の主面2b上には、図2に示すように、駆動電極11E、11F、11G、11Hが形成されている。駆動振動片5A、5B、5C、5Dの各側面上には、駆動電極11J、11K、11L、11M、11N、11P、11Q、11Rが形成されている。本例においては、各駆動振動片において、一方の主面上の駆動電極11A、11B、11C、11Dと、他方の主面上の駆動電極11E、11F、11G、11Hとを電気的に接続し、同電位とする。これと共に、各駆動振動片において、側面上の各駆動電極を同電位とする。そして、主面上の駆動電極と側面上の駆動電極との間に、交流電圧信号を印加することによって、矢印A、Bに示すように、各駆動振動片に屈曲振動を励振する。
【0019】
この際、駆動振動片5Aと5Bとが同位相で共振し、駆動振動片5Cと5Dとが同位相で共振し、屈曲振動片5A−5Dの駆動振動の全体の重心GDが、振動子の重心GO上か、またはその近傍に位置するようにする。
【0020】
駆動振動の全体の重心GDが、振動子の重心GOの近傍領域に位置しているとは、具体的には、実質的に重心GO上に位置していてもよいが、重心GOから直径1mmの円内に存在していることを意味する。
【0021】
この状態で、振動子1を所定面(X−Y面)内でωのように回転させると、回転中にコリオリ力が振動子1に作用する結果、各支持部6A、6Bは、矢印C、Dのように、その付け根6aを中心として屈曲振動する。この際、支持部6Aと6Bとの各屈曲振動の位相は、重心GOを中心として周方向に見たときに反対向きになる。これに対応して、各検出振動片7A、7Bは、矢印E、Fに示すように、その付け根を中心として屈曲振動する。支持部6Aと検出振動片7A、支持部6Bと検出振動片7Bとは、重心GOを中心として周方向に見たときに、任意の時点において互いに逆方向へと屈曲している。
【0022】
各検出振動片7A、7Bの一方の主面2a上には、検出電極14A、14Bが形成されており、各検出振動片の他方の主面2b上には、検出電極14C、14Dが形成されており、各検出振動片の側面上には、検出電極14E、14F、14G、14Hが形成されている。
【0023】
振動子の一方の主面2a上には、側面上の駆動電極11J、11K、11L、11M用の配線パターン12Aが形成されており、その末端が電力供給パッド13Aに接続されている。配線パターン12Aは、12d、12c、駆動電極11Kおよび11Mに接続するための接続部12b、および駆動電極11J、11Lに接続するための接続部12aを備えている。これによって、駆動振動片5A、5Bの側面上のすべての駆動電極は同電位となる。
【0024】
振動子の他方の主面2b上には、一方の主面2a上および他方の主面2b上の駆動電極11A、11B、11E、11F用の配線パターン38Bが形成されており、その末端が電力供給パッド13Fに接続されている。配線パターン38Bは、38c、38b、および駆動電極11E、11Fに接続するための接続部38aを備えている。各駆動電極11E、11Fは、更に、主面上の先端接続部40および側面上の接続部41を通して、一方の主面2a上の駆動電極11A、11Bにそれぞれ接続されている。電力供給パッド13Fと13C(図1)とは接続されている。
【0025】
従って、電力供給パッド13Aと13Cとの間で、所定の交流電圧信号を印加することによって、駆動電極11A、11B、11E、11Fと、駆動電極11J、11K、11L、11Mとの間に交流電圧信号を印加し、駆動振動片5A、5Bを屈曲振動させることができる。
【0026】
振動子の他方の主面2b上には、側面上の駆動電極11P、11N、11R、11Q用の配線パターン12Bが形成されており、その末端が電力供給パッド13Eに接続されている。電力供給パッド13Eは、一方の主面2a上の電力供給パッド13Dに接続されている。配線パターン12Bは、12d、12c、駆動電極11Qおよび11Nに接続するための接続部12b、および駆動電極11R、11Pに接続するための接続部12aを備えている。これによって、駆動振動片5C、5Dの側面上のすべての駆動電極は同電位となる。
【0027】
振動子の一方の主面2a上には、一方の主面2a上および他方の主面2b上の駆動電極11C、11D、11G、11H用の配線パターン38Aが形成されており、その末端が電力供給パッド13Bに接続されている。配線パターン38Aは、38c、38b、および駆動電極11C、11Dに接続するための接続部38aを備えている。各駆動電極11C、11Dは、主面上の先端接続部40および側面上の接続部41を通して、他方の主面2b上の駆動電極11G、11Hにそれぞれ接続されている。
【0028】
従って、電力供給パッド13Bと13Dとの間で、所定の交流電圧信号を印加することによって、駆動電極11C、11D、11G、11Hと、駆動電極11Q、11R、11N、11Pとの間に交流電圧信号を印加し、駆動振動片5C、5Dを屈曲振動させることができる。
【0029】
また、検出振動片7Aの主面上の各検出電極14A、14Cは、それぞれパッド35B、35Hに接続されている。検出振動片7Aの側面上の各検出電極14E、14Fは、それぞれ、パッド35C、35I、35A、35Gに接続されている。
【0030】
検出振動片7Bの主面上の各検出電極14B、14Dは、それぞれパッド35E、35Jに接続されている。検出振動片7Bの側面上の各検出電極14G、14Hは、それぞれ、パッド35F、35J、35D、35Kに接続されている。
【0031】
各検出振動片7A、7Bが屈曲振動すると、主面上の検出電極14A、14C、14B、14Dと、側面上の検出電極14E、14F、14G、14Hとの間で信号電圧が発生する。
【0032】
本例では、各配線パターンおよび電力供給パッドが、重心GOを中心として互いに略点対称の位置にある。
【0033】
本発明において特に好ましくは、各駆動振動系が、重心GOを中心として回転対称の位置にある。これは、重心GOを中心として、問題とする複数の駆動振動系が、それぞれ所定面内で同じ所定角度離れている状態を意味する。従って、一つの駆動振動系を所定面内で所定角度回転させる操作を行うと、他の振動系の位置に位置する。例えば、図1、図2においては、振動系3Aと3Bとは、180°離れているので、振動系3Aを180°回転させる操作を行うと、振動系3Bの位置にくる。
【0034】
回転対称は、具体的には2回対称、3回対称、4回対称であることが好ましい。
【0035】
本発明の振動子においては、複数の振動系が所定面内に延びているが、これは厚さにして1mm以下の範囲内に複数の振動系が形成されている場合を含む。
【0036】
本発明の振動子の変位は、所定面内で生ずる。このため、振動子の全体を、同一の圧電単結晶によって形成することができる。この場合には、まず圧電単結晶の薄板を作製し、この薄板をエッチング、研削により加工することによって、振動子を作製できる。振動子の各部分は、別の部材によってそれぞれ形成することもできるが、一体で構成することが特に好ましい。
【0037】
振動子の材質は特に限定するものでないが、水晶、LiNbO3 、LiTaO3 、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体(Li(Nb,Ta)O3 )単結晶、ホウ酸リチウム単結晶、ランガサイト単結晶等からなる圧電単結晶を使用することが好ましい。
【0038】
圧電単結晶を使用すると、検出感度を良好にすることができるとともに、検出ノイズを小さくできる。しかも、圧電単結晶を使用すると、温度変化に対して特に鈍感な振動子を作製でき、このような振動子は、温度安定性を必要とする車載用として好適である。
【0039】
なぜなら、本発明におけるように振動子の全体を所定面内で振動するようにし、かつ振動子を圧電単結晶によって形成することで、単結晶の最も温度特性の良い結晶面のみを振動子において利用できるようになった。
【0040】
即ち、振動子の全体が所定平面内で振動するように設計されていることから、圧電単結晶のうち振動周波数の温度変化がほとんどない結晶面のみを利用して、振動子を製造することができる。これによって、きわめて温度安定性の高い振動型ジャイロスコープを提供できる。
【0041】
本発明の振動子を圧電性材料によって形成した場合には、この振動子に駆動電極および検出電極を設ける。圧電性材料としては、圧電単結晶の他に、PZT等の圧電セラミックスがある。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係る振動型ジャイロスコープ31を示す概略平面図である。
【0043】
振動子32は、基部33、合計3つの駆動振動系3A、3B、3C、および合計3つの検出振動系4A、4B、4Cを備えている。本例の基部33は、振動子の重心GOを中心として三回対称の形状を有しており、中央部33dと、突出部33a、33bおよび33cからなる。振動系3A、4Aは突出部33aから突出しており、振動系3B、4Bは突出部33bから突出しており、振動系3C、4Cは突出部33cから突出している。
【0044】
各駆動振動系3A、3B、3Cは、それぞれ、基部33の周縁部から径方向に突出する細長い支持部6A、6B、6Cと、支持部6A、6B、6Cの長手方向に直交する方向に向かって延びる各一対の駆動振動片5A、5B、5C、5D、5E、5Fとを備えている。8は、各駆動振動片と各支持部との連結部分である。
【0045】
各検出振動系4A、4B、4Cは、それぞれ、基部33の周縁部から突出する細長い検出振動片7A、7B、7Cからなっている。
【0046】
各駆動振動片を、矢印A、Bのように所定面内で振動させ、この状態で、振動子32を所定面(X−Y面)内でωのように回転させると、回転中にコリオリ力が振動子32に作用する結果、各支持部6A、6B、6Cは、矢印C、Dのように、その付け根6aを中心として屈曲振動する。これに対応して、各検出振動片7A、7B、7Cは、矢印E、Fに示すように、その付け根を中心として屈曲振動する。
【0047】
駆動振動片5A、5B、5C、5D、5E、5Fの一方の主面上には、駆動電極11A、11B、11C、11D、11E、11Fが形成されている。本例においては、図1、図2に示したような、駆動振動片の側面上の駆動電極および他方の主面上の駆動電極、およびこれらに関係する配線パターンについては図示せず、もっぱら一方の主面上の駆動電極11A−11Fへの配線について述べる。
【0048】
振動子32の一方の主面上には、駆動電極11A、11B用の配線パターン38C、駆動電極11C、11D用の配線パターン38D、駆動電極11E、11F用の配線パターン38Eが形成されている。各配線パターンの末端が、それぞれ電力供給パッド13A、13B、13Cに接続されている。配線パターン38C、38D、38Eは、それぞれ、電力供給パッドへの接続部38c、38bおよび駆動電極への接続部38aを備えている。
【0049】
本例では、各駆動振動系が、振動子の重心GOを中心として三回の回転対称の位置にある。また、各駆動振動系に対応する各配線パターンおよび各電力供給パッドが、重心GOを中心として三回の回転対称の位置にある。
【0050】
図1、図2に示す形態の振動型ジャイロスコープを作製した。具体的には、厚さ0.3mmの水晶のZ板のウエハーに、スパッタ法によって、所定位置に、厚さ200オングストロームのクロム膜と、厚さ5000オングストロームの金膜とを形成した。ウエハーの両面にレジストをコーティングした。
【0051】
このウエハーを、ヨウ素とヨウ化カリウムとの水溶液に浸漬し、余分な金膜をエッチングによって除去し、更に硝酸セリウムアンモニウムと過塩素酸との水溶液にウエハーを浸漬し、余分なクロム膜をエッチングして除去した。温度80℃の重フッ化アンモニウムに20時間ウエハーを浸漬し、ウエハーをエッチングし、振動子の外形を形成した。メタルマスクを使用して、厚さ2000オングストロームのアルミニウム膜を電極膜として形成した。
【0052】
得られた振動子の基部2の各辺の長さは6.0mmとした。また、各支持部6A、6Bの長さ、検出振動片7A、7Bの長さは、6.0mmとした。各支持部、各屈曲振動片の幅は1.0mmとした。各検出電極の寸法は、幅0.6mm×長さ2.8mmであり、検出振動片の付け根から1.2−4.0mmの位置に形成されていた。各駆動電極の寸法は、幅0.6mm×長さ2.8mmであった。
【0053】
振動子2の中央部に、0.75mm×0.75mmの正方形の支持孔10を形成し、支持孔10に直径0.6mmの金属ピンを通し、金属ピンに対して振動子をシリコーン樹脂接着剤によって接着した。
【0054】
この振動子に対して、4ボルトの矩形波による自励振発振駆動を行い、駆動振動を生じさせ、振動子2を所定面内で回転させた。駆動振動の固有共振周波数は22.2kHzであり、検出振動モードの固有共振周波数は23.0kHzである。回転角速度の検出感度を測定した結果、20mV/°/secの信号が得られた。
【0055】
このとき、参照信号の波形と、得られた検出信号(検波前)の波形とを、それぞれ図4に示す。検出信号のノイズピークの面積は、0.3mVとなった。これは、0.015°/secの差となる。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、振動型ジャイロスコープが、所定面内に延びる振動子を備えており、振動子が、この振動子の重心が位置する基部、この基部の周縁部から突出する複数の駆動振動系および基部の周縁部から突出する少なくとも一つの検出振動系を備えており、更に振動型ジャイロスコープが、各駆動振動系の少なくとも一方の主面上にそれぞれ形成されている各駆動電極、基部の主面上の配線パターンおよび電力供給パッドを備えている場合に、信号電圧波の立ち上がり時の雑音に応答して検波前の検出信号に生ずるノイズピークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動型ジャイロスコープ1を、振動子2の一方の主面2a側から見た概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る振動型ジャイロスコープ1を、振動子2の他方の主面2b側から見た概略平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る振動型ジャイロスコープ31を、振動子の主面側から見た概略平面図である。
【図4】図1、図2の振動型ジャイロスコープにおいて、検波前の検出信号の波形を示すグラフである。
【図5】振動型ジャイロスコープにおいて、検波前の検出信号の波形の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1、31 振動型ジャイロスコープ 2、32 振動子 2a、33a 一方の主面 2b 他方の主面 3A、3B、3C 駆動振動系 4A、4B、4C 検出振動系 5A、5B、5C、5D、5E、5F 駆動振動片 6A、6B、6C 支持部 7A、7B、7C 検出振動片 9、33 基部 11A−11R 駆動電極 12A、12B、38A、38B、38C、38D、38E 配線パターン 13A−13F 電力供給パッド 14A−14H 検出電極

Claims (4)

  1. 所定面内の回転角速度を測定するための振動型ジャイロスコープであって、
    この振動型ジャイロスコープが所定面内に延びる振動子を備えており、この振動子が、この振動子の重心が位置する基部、この基部の周縁部から突出する複数の駆動振動系および前記基部の周縁部から突出する二つの検出振動系を備えており、各駆動振動系を構成する二つの駆動振動片が同位相で共振し、各検出振動系からの検出信号の差をとって検出信号を得る構成であり、前記振動型ジャイロスコープが、前記各駆動振動系にそれぞれ形成されている各駆動電極、前記基部の少なくとも一方の主面上に、前記各駆動電極に対応してそれぞれ形成されている配線パターンおよび各配線パターンに接続されている電力供給パッドを備えており、前記各配線パターンおよび前記各電力供給パッドが互いに接続されておらず、前記各配線パターンに対して独立して電力が供給されており、前記基部内において、前記各配線パターンおよび前記各電力供給パッドが、さらに、各検出振動系の各検出電極に対応してそれぞれ形成された配線パターンおよび各配線パターンに接続されている各パッドが、前記重心を中心として略回転対称の位置に設けられていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
  2. 前記振動子が二つの前記駆動振動系、各駆動振動系にそれぞれ対応する二つの配線パターンおよび各駆動振動系に対応する二つの電力供給パッドを備えており、各配線パターンおよび各電力供給パッドが前記重心を中心として略点対称の位置に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の振動型ジャイロスコープ。
  3. 前記各駆動振動系が、それぞれ、前記基部から延びる細長い支持部と、この支持部から支持部に対して交差する方向に延びる少なくとも一片の駆動振動片とを備えており、前記駆動振動片がその支持部への付け根を中心として前記所定面内で屈曲振動し、前記振動子が前記所定面内で回転したときに前記支持部がその基部への付け根を中心として前記所定面内で屈曲振動することを特徴とする、請求項1または2に記載の振動型ジャイロスコープ。
  4. 前記検出振動系が前記基部から突出する少なくとも一片の検出振動片を備えており、前記振動子が前記所定面内で回転したときに、前記支持部の前記所定面内の屈曲振動に共振して、前記検出振動片がその基部への付け根を中心として屈曲振動することを特徴とする、請求項3記載の振動型ジャイロスコープ。
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