JP4070359B2 - 高分子固体電解質の製造法およびリチウム二次電池 - Google Patents

高分子固体電解質の製造法およびリチウム二次電池 Download PDF

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    • C08F20/28Esters containing oxygen in addition to the carboxy oxygen containing no aromatic rings in the alcohol moiety

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子固体電解質の製造方法及び製造された高分子固体電解質を用いたリチウム二次電池に関するものである。詳しくは、放電特性などに優れた固体電解質を短時間で効率的に製造する方法及びサイクル特性などが優れたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リチウム塩等の支持電解質を非水系溶媒に溶解した電解液をポリマーによって保持させたゲル状の固体電解質が、リチウム電池などに使用された場合、液漏れを原理上完全に抑制できる固体電解質として期待され、種々検討が行われている。この様な固体電解質の製法として、不飽和二重結合を有するモノマーとリチウム塩及び溶媒を含む組成物を、重合、硬化させる方法が知られている。その際の重合方法としては、熱分解してラジカルを発生させる開始剤を添加して加熱する方法(熱硬化法)、光増感剤を添加して紫外線を照射する方法、開始剤を加えることなく直接電子線やγ線などの放射線を照射する方法などが知られている。特に熱硬化法は特別な装置を必要とせず簡便であることからこれまで広く適用されている。その際の開始剤としては過酸化ベンゾイルに代表されるジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類などの有機過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物が用いられる。
【0003】
パーオキシエステル類は他の開始剤に比べて、分解時のガス発生が少ないこと、液体であるために溶解工程が不要であることなどのメリットがあり、t−ブチルパーオキシ2―エチルヘキサノエート、tーブチルパーオキシピバレートの使用が提示されている(特公平6−96699、特公平7−25838等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明者の検討によれば、従来用いられているt−ブチルパーオキシ2―エチルヘキサノエートは、硬化速度が遅く、高生産性が期待できるレベルには到達していなかった。またパーオキシエステルの中には調液後しばらく発泡を続ける場合があり、生産性を落としていた。そこで、本発明の目的は、残存気泡を持たない均一な高分子固体電解質を極めて高い効率で製造する方法及び得られた固体高分子電解質を用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のパーオキシエステル類を開始剤として用いることで気泡のない固体電解質を短時間で製造できること、又、得られた電解質を用いると性能が優れたリチウム二次電池が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は、(A)エチレン性不飽和二重結合を有するアルキレングリコール系モノマーを、(B)リチウム塩及び(C)溶媒の存在下で重合させて高分子固体電解質を製造するに当たり、重合時に下記一般式(I)で表されるパーオキシエステルを存在させることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法及び得られた固体高分子電解質を用いたリチウム二次電池に存する。
【0006】
【化4】
Figure 0004070359
【0007】
(式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素残基であり、R4 〜R6 は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を示す。但し、R4 〜R6 のうち少なくとも1つは、炭素数2以上のアルキル基またはアリール基である。)
本発明方法に使用される一般式(I)のパーオキシエステルは、R4 〜R6 の少なくとも1つが炭素数2以上であり、従来より用いられてきたt―ブチルパーオキシピバレート(R4 〜R6 すべてがメチル基)と比較して飛躍的に高い硬化速度が達成される。また一般に有機過酸化物系開始剤は、分解過程において二酸化炭素を発生しやすいために、多量の泡を含んだゲルを与えるとされてきた。しかしながら本発明者はエステル系溶媒を使用することにより、泡のないゲルが得られることを見出した。エステル系溶媒中では二酸化炭素の溶解度が高いためにこれらの開始剤を用いても高度に気泡を分散させることが可能となり、二酸化炭素の発生・分散とモノマー硬化の進行具合とのバランスが微妙に釣り合った結果、生成したゲル中に気泡が実質的に認められなくなったものと考えられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明における(A)エチレン性不飽和二重結合を有するアルキレングリコール系モノマーとは、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を有しさらに分子内にアルキレングリコールユニットを含有するものである。モノマーとしては、不飽和二重結合を1個有する単官能モノマーや不飽和二重結合を2個以上有する多官能モノマーを使用することができる。
【0009】
単官能モノマーとしては、2ーメトキシエチルアクリレート、2ーエトキシエチルアクリレートなどの2ーアルコキシエチルアクリレート類、ジエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレートなどのジエチレングリコールアルキルエーテルアクリレート類、ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルアクリレートなどのポリエチレングリコールアリールエーテルアクリレート類が挙げられる。特に2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレートなどのアクリレートは好適に使用される。
【0010】
多官能モノマーとしては、(ポリ)アルキレングリコールジアクリレート、(ポリ)アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能モノマー、トリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシレートトリアクリレートなどの3官能モノマー、ペンタエリスリトールアルコキシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンアルコキシレートテトラアクリレートなどの4官能以上のモノマーなどが挙げられる。
【0011】
3官能以上のモノマーの場合には、重合させた後でも未反応二重結合が残存しやすい傾向にある。ゲル電解質中の残存二重結合は内部抵抗の高い界面を形成するのに寄与する場合があるので、存在しないことが望ましい。従って、多官能モノマーのなかでも特に2官能モノマーが好ましい。特に好ましい2官能モノマーとしては、アクリロイル基またはメタクリロイル基のようなアクリル系官能基を2個有するアルキレングリコール系2官能モノマーである。具体的には、下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0012】
【化5】
Figure 0004070359
【0013】
(式中、R′、R″は、それぞれ独立に、水素原子又は低級アルキル基である。nは1〜50の整数である。)
一般式(III)において、R′、R″としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に水素原子又はメチル基が好ましい。nは好ましくは6以下であり、特に好ましくは4以下である。
【0014】
このような構造を持つモノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどのポリエチレングリコールジアクリレート類及びポリエチレングリコールジメタクリレート類、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどのポリプロピレングリコールジアクリレート類及びポリプロピレングリコールジメタクリレート類などが挙げられる。この中でも、特にアクリレートは反応速度が格段に早く電解質の生産性向上につながるので好ましい。特にジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートは入手が容易で安価であることから好適に用いられる。
【0015】
使用するモノマーは、上記単官能モノマーと多官能モノマーの併用など各種モノマーを複数含んでいてもよい。重合速度が速いので、好ましくは、多官能モノマーを使用する。又、多官能モノマーと単官能モノマーとを併用する場合、単官能モノマーの上記多官能モノマーに対する重量比は通常0〜500%、好ましくは0〜300%、更に好ましくは0〜100%である。単官能モノマーの割合が多すぎると強度が低下し、ゲル化を起こさない場合すらあり得る。
本発明においては、モノマー成分として上記エチレン性不飽和二重結合を有するアルキレングリコール系モノマーの他に他のモノマーを共存させてもよい。特に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を有する基を有するモノマーを共存させると強度が向上するので好ましい。このようなモノマーとしては、アクリル酸2−(メチルチオ)エチル等のアクリレートやメタクリレートなどの不飽和エステル類、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどのビニル化合物などが挙げられる。中でもアクリレート及びメタクリレートなどの不飽和エステル類はラジカル重合がしやすい点で通常使用される。上記他のモノマーは、通常、モノマー全体の50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。
モノマーの使用量は硬化(重合)前の組成物全体に対して通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。モノマー量が多すぎるとイオン伝導度は低下する。また少なすぎると強度が低下し、固体を形成しない場合すらあり得る。
【0016】
本発明で用いるリチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF6 、LiAsF6 、LiBF4 、LiSbF6 、LiAlCl4 、LiClO4 、CF3 SO3 Li、C49 SO3 Li、CF3 COOLi、(CF3 CO)2 NLi、(CF3 SO22 NLi、(C25 SO2 )NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、CF3 SO3 Li及び(CF3 SO22 NLiからなる群から選ばれる少なくとも一種が好適に用いられる。
【0017】
リチウム塩の量は、硬化前の組成物全量に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上である。また、通常は30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。リチウム塩の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下する傾向にある。また、リチウム塩の液成分に対する濃度は通常0.5〜2.5mol/L程度である。
【0018】
本発明で用いる溶媒としては、リチウム塩を溶解させるものであれば特に限定されないが、パーオキシエステルによる発泡を抑制する為にはエステル系溶媒が好ましい。特に、高いイオン導電性を得るために通常ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルまたはアルキレンカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ―バレロラクトンなどのラクトン類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチルなどの脂肪族エステル、安息香酸メチル、などが挙げられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。特に好ましくはカーボネート類またはラクトン類である。またこれらの溶媒に予め所定量のリチウム塩を溶解させたものが市販されており、これらを用いてもよい。溶媒の量は、固体電解質全量に対して通常40重量%以上、好ましくは70重量%以上である。一方、通常は95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。溶媒が少なすぎるとイオン導電度が低下し、多すぎると電解質の強度が弱くなる傾向にある。
【0019】
本発明における電解質には、必要に応じて他の成分を含有させることができる。例えば、電池としての安定性や性能、寿命を高めるために、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−Dioxaspiro[4,4]nonane−2,7−dione(スピロジラクトン)、12−クラウン−4−エーテル等の添加剤を使用できる。
【0020】
本発明の電解質は少なくとも上記(A)、(B)、(C)を含有する組成物を、前記一般式(I)で表されるパーオキシエステルの存在下、重合硬化させる。前記一般式(I)において、R1 〜R3 としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、iープロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、tーブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル等の炭素数1〜10の分岐を有していても良い鎖状アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソボルニル、1−アダマンタンメチル、メチルシクロヘキシル等の炭素数4〜13の環状アルキル基、フェニル、トリル、キシリル、t−ブチルフェニル、ナフチル等の炭素数6〜18のアリール基等が挙げられる。R4 〜R6 としては、上記と同様のアルキル基、アリール基が挙げられるが、少なくとも1つは、水素原子、メチル基以外の基である。
好ましくは、下記一般式(II)で表されるパーオキシエステル類である。
【0021】
【化6】
Figure 0004070359
【0022】
(式中、R11は少なくとも1つ以上の水素と結合した炭素のみで構成される炭素数2以上のアルキル基またはアリール基であり、R41〜R61は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基であり、そのうち少なくとも一つは炭素数が2以上のアルキル基又はアリール基である。)
一般式(II)において、R11としては、上述のアルキル基、アリール基と同様の基が例示されるが、ネオペンチル基の様な、4級炭素原子(水素と結合しない炭素原子)を有するものであることはない。R41〜R61としては、前記R4 〜R6 と同様の基が挙げられる。
【0023】
好ましいパーオキシエステルの具体例としては、例えば、t―ブチルパーオキシネオデカノエート、α―クミルパーオキシネオデカノエート、t―ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシルー1―メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t―アミルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシネオデカノエート類、t―ブチルパーオキシネオヘプタノエート、α―クミルパーオキシネオヘプタノエート、t―ヘキシルパーオキシネオヘプタノエート、1−シクロヘキシルー1―メチルエチルパーオキシネオヘプタノエート、t―アミルパーオキシヘプタノエートなどのパーオキシネオヘプタノエート類などが挙げられる。
パーオキシエステルの量は硬化前の組成物全量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上である。一方、通常は2重量%以下、好ましくは1重量%以下である。パーオキシエステルの量が少なすぎると硬化に長時間を有し、多すぎると生成した固体電解質中に気泡が生じる傾向にある。
【0024】
本発明方法は、一般式(I)のパーオキシエステル類の存在下、(A)、(B)及び(C)を重合硬化させるが、先ず、モノマー類とパーオキシエステルとを混合した後で、通常3分以上、好ましくは15分以上熟成させてから熱硬化させるのがよい。熟成させることにより、硬化前の固体電解質形成組成物自身の発泡が抑制される。特にリチウム二次電池用の固体電解質を製造する場合には均一で気泡のないものが要求されるので、電極活物質に未硬化電解液を塗布した際の発泡は好ましくない。発泡が収まってから熱硬化させる必要があるためロスタイムが生じ生産性低下へとつながる。
【0025】
熟成させる温度は0℃以上40℃以下が好ましい。熟成温度が低すぎると効果がなく、温度が高いと熟成中にゲル化してしまうので好ましくない。
重合(硬化処理)の温度は、使用するパーオキシエステルによっても異なるが、通常50℃以上150℃以下であり、好ましくは70℃以上120℃以下である。温度が低すぎると硬化速度が遅くなり固体電解質の生産性が低下する。また温度が高すぎると、リチウム塩の分解及びエステル系溶媒の揮散を招く。
重合時間は通常10秒以上20分以下である。好ましくは30秒以上10分以下である。処理時間が短いと硬化が不十分となる結果、短絡しやすい電解質を与える。また処理時間が長すぎても特に意味はなく生産性が低下するだけである。
【0026】
本発明で使用する各原料は、予め脱水しておくのが好ましい。水分量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下がよい。水が多量に存在すると、水の電気分解及びリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解などが起こる可能性があり電池用の電解質として不適当な場合がある。脱水の手段としては特に制限はないが、モノマー、溶媒などの液体の場合はモレキュラーシーブ4A等を用いればよい。特にリチウム置換したモレキュラーシーブを用いるのが好ましい。またリチウム塩などの固体の場合は分解が起きる温度以下で乾燥すればよい。
上記各原料の調合方法については、水分、酸素、二酸化炭素を極力排除した雰囲気で行うのが望ましい。特に水分については前述のように注意が必要である。また酸素及び二酸化炭素が組成物中に多量存在すると重合する際に、これらの分子がポリマー鎖中に取り込まれ電気化学的に不安定なマトリックスが形成される可能性がある。
【0027】
以上の如き本発明方法により得られる高分子固体電解質はリチウム二次電池に使用されるのが好ましい。具体的には、電池の電解質層の構成材料として有用である。また、活物質と共に、電極の構成成分として使用することも有効である。好ましくは、本発明方法で得られた高分子固体電解質を電解質層に使用し、且つ正極及び/又は負極にも使用する。本発明方法の高分子固体電解質を使用することによって、サイクル特性にもレート特性にも優れたリチウム二次電池を得ることができる。
以下、本発明のリチウム二次電池について説明する。
【0028】
本発明方法で得られる高分子固体電解質を適用できるリチウム二次電池の基本的構成は、従来公知の電池と同様であり、通常正極と負極とが電解質層を介して積層されてなる単セルをケースに収納してなる。もちろん単セルをさらに積層してケースに入れることも可能である。
先ず、正極及び負極について説明する。正極及び/又は負極は、通常集電体とその上に形成された活物質と電解液とを含有する活物質含有層とを有する。
集電体としては、通常、アルミ箔や銅箔などの金属箔が使用され、その厚さは適宜選択されるが、通常1〜50μm、好ましくは1〜30μmである。集電体の厚さが薄過ぎる場合は、機械的強度が弱くなり、生産上問題になり、厚過ぎる場合は、電池全体としての容量が低下する。集電体は、活物質含有層の接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、活物質含有層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
【0029】
リチウムイオンの吸蔵放出可能な正極活物質は、無機化合物と有機化合物とに大別される。無機化合物から成る正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、MnO、V25 、V613、TiO2 等の遷移金属酸化物、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS2 、FeS、MoS2 等の遷移金属硫化物が挙げられる。これらの化合物は、その特性を向上させるため、部分的に元素置換したものであってもよい。
【0030】
有機化合物から成る正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。
正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。正極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1〜30μm、好ましくは1〜10μmとされる。
リチウムイオンの吸蔵放出可能な負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素系活物質が挙げられる。かかる炭素系活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用できる。負極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、初期効率、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1μm以上、好ましくは15μm以上であり、また通常50μm以下、好ましくは30μm以下とされる。
活物質含有層に含有される電解液には、前記高分子固体電解質の製造で使用したリチウム塩及び溶媒と同様のものを使用することができる。
【0031】
活物質含有層中には、必要に応じ、導電材料、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含有させることが出来る。導電材料としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。また、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、スピロジラクトン、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。更に、補強材として、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
【0032】
活物質含有層は、活物質を固定するため及び電解液を保持するために1種以上のバインダーを含有するのが好ましい。この場合、バインダーとして、本発明方法で得られる高分子固体電解質を構成する重合体、すなわち(A)のモノマーを一般式(I)のパーオキシエステルの存在下重合したものを使用すれば、本発明の高分子固体電解質を使用した電極となる。また、2種類のバインダーを使用して、活物質を固定するための機能と電解液を保持するための機能とを分けることもでき、好ましい。この場合、電解液を保持するためのポリマーとして本発明で得られる高分子固体電解質を構成する重合体を使用するのが好ましい。
【0033】
本発明方法で得られる高分子固体電解質と共に活物質含有層に使用できる他のバインダーとしては、シリケートやガラスの様な無機化合物や各種の樹脂が挙げられる。バインダー用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル系ポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。また、上記のポリマーの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの樹脂の分子量は、通常10000〜3000000、好ましくは100000〜1000000とされる。分子量が低過ぎる場合は活物質含有層の強度が低下する傾向にあり、高過ぎる場合は、粘度が高くなり活物質含有層の形成が困難になることがある。
【0034】
上記2種類のバインダーを使用する場合、活物質及び上記他のバインダーを含有する電極用塗料を集電体上に塗布して乾燥することにより空隙を有する層を形成し、当該層に本発明の高分子固体電解質用のモノマーを含有する電解液(リチウム塩及び溶媒)を塗布して空隙中に含浸させた後に、モノマーを重合させて本発明の高分子ゲル電解質を形成させて活物質含有層とすることができる。この場合、電解液の粘度が低いため、活物質層の空隙中に電解液を含浸させるのが容易である。また、本発明方法により製造した高分子固体電解質を加熱して粘度を下げた状態で前記空隙を有する層に含浸させた後、冷却して再び固体(ゲル)とする方法も採用できる。さらに、活物質、上記他のバインダー、電解液及びモノマーの混合物を集電体上に塗布した後に重合してモノマーを重合する方法も採用することができる。さらにまた、2種類のバインダーと活物質とを含有する電極用塗料を集電体上に塗布して乾燥することにより空隙を有する層を形成し、当該層に電解液を塗布して空隙中に含浸させる方法によって得ることも可能である。なお、前記空隙を有する層は、活物質とバインダーとの混合物を加熱により軟化させた状態で集電体上に圧着または吹き付ける方法によっても形成することができる。
【0035】
何れの方法による場合もいずれかの製造段階においてカレンダー処理を加えることにより、圧密して活物質の充填量を高めることができる。
また、活物質100重量部に対する前記他のバインダーの配合量は、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部とされる。バインダーの配合量が少な過ぎる場合は電極の強度が低下し、多過ぎる場合は電解液を含浸させることが困難となる傾向にある。
活物質含有層の厚さは、通常1μm以上、好ましくは20μmであり、また通常1000μm以下、好ましくは200μm以下である。厚すぎるとレート特性が悪化する傾向にあり、薄すぎると電池全体としての容量が低下する傾向にある。
次に、電解質層について説明する。電解質層は、本発明の高分子固体電解質で構成することができる。この際、電解質を、その強度を高め、短絡を防止するために空隙を有するスペーサに含浸、保持させることが好ましい。
【0036】
上記のスペーサは、電解質層の保液性を一層高めるため圧縮に対する初期弾性率が1×105 (N/m2 )以上であることが好ましい。かかる初期弾性率は、応力−歪み曲線における、応力0近傍の線形応答領域の直線の傾きから求められる。そして、初期弾性率の値が高いことは、荷重が小さい段階からスペーサの変形が少ないことを意味する。従って、初期弾性率の値が高い構造体の使用により、高分子ゲル電解質に加わる圧力を効果的に支えることが可能となる。
【0037】
また、上記のスペーサの空隙は、イオン移動度を高めるため、大部分が垂直方向(電極方向)に通じた構造になっていることが好ましい。スペーサの空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは40体積%以上であり、また、通常95体積%以下、好ましくは90体積%、さらに好ましくは80体積%以下である。空隙率が小さすぎる場合は、イオンが拡散しにくくなるために伝導度が低下する傾向にある。また空隙率が大きすぎる場合は、スペーサとしての機能を発揮しにくくなる。上記の空隙率は、体積と重さから見掛け比重を算出し、構造体の材質の真比重との比較から算出することが出来る。
上記スペーサの材質としては、例えば、洋紙、和紙などの紙類、各種の天然、合成繊維から作られる布類、分離精製などに使用される市販のフィルター類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。スペーサは電解液との親和性を制御するために表面処理されていても良い。
【0038】
スペーサに電解質を含有させる方法は、正極および負極の活物質層における電解質の形成方法と同様の方法を採用することが出来る。
電解質層の電解質は、その全てがスペーサの内部に取り込まれていなくてもよい。スペーサと高分子固体電解質とからなる電解質層の表面に、ある程度の厚みの高分子固体電解質単独層が存在することは、電解質層と電極との積層界面の抵抗の低減にも寄与し得る。従って、電解質層全体としての液保持性に支障が生じない限り、電解質の全てがスペーサの内部に取り込まれていなくてもよい。
電解質層の厚みは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また通常200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。厚みが小さすぎる場合は、強度が低下し安全上問題になり、しかも、製造時の位置決め等が困難になる傾向にある。また、厚みが大きすぎると、電解質層部分の抵抗が高くなると共に電池全体としての容量が低下する傾向にある。
【0039】
単セルは、通常正極と負極とが電解質層を介して積層されてなるが、この際、高分子固体電解質の形成方法として、モノマーを含有する電解液を使用して該モノマーを重合させる方法を採用し、且つ正極と負極との積層後に前記重合を行えば、電極及び電解質層中の高分子ゲル電解質が界面のない状態で連続して存在することとなるので、レート特性やサイクル特性に優れ好ましい。
次に、電池を収納するケースについて説明する。リチウム二次電池においては、通常前記の様に構成された正極と負極とが電解質層を介してケースに収納される。多くの場合は高容量を達成するために単セルを積層してケースに入れる。ケースとしては、柔軟性、屈曲性、可撓性などを有する形状可変性のケースが好適に使用される。その材質としては、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、ゴム、薄い金属板などが挙げられる。ケースの具体例としては、ビニール袋の様な高分子フィルムから成る袋、高分子フィルムから成る真空包装用袋もしくは真空パック、金属箔と高分子フィルムのラミネート素材から成る真空包装用袋もしくは真空パック、プラスチックで形成された缶、または、プラスチック板で挟んで周囲を溶着、接着、はめ込み等で固定したケース等が挙げられる。
【0040】
上記の中では、気密性および形状可変性の点で高分子フィルムから成る真空包装用袋もしくは真空パック、または、金属箔と高分子フィルムのラミネート素材から成る真空包装用袋もしくは真空パックが好ましい。これらのケースは、金属缶の様な重量や剛性がなく、柔軟性、屈曲性、可撓性であるため、電池の収納後に曲げたり出来る形状自由性があると共に軽量化が図れるという利点を有する。本発明のリチウム二次電池は、円筒型、箱形、ペーパー型、カード型など種々の形状を軽量で実現できる。勿論、電池の機器への装着などの利便を図るため、形状可変性のケースに電池を封入して好ましい形状に変形した後、剛性の外装ケースに収納することも可能である。
好ましい一態様としては、正極と電解質層と負極が平板的に積層され且つ形状可変性のケースに真空シールされて収納されているリチウム二次電池が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」とあるは「重量部」を表す。
実施例1
テトラエチレングリコールジアクリレート(東亜合成化学社製:商品名アロニックスM―240)4.67部、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(東亜合成化学社製:商品名アロニックスM―370)2.33部、スピロジラクトン(アルドリッチ社製)4.65部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiPF6 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)88.35部、t―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23―C70)0.2部をサンプル瓶に秤取し不活性な雰囲気下で混合した。調液直後に気泡が発生したが、15分間室温で放置し熟成させたところ発泡は止まっていた。ついでこの組成物の一部をポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムの型枠(厚さ125ミクロン、縦20mm、横20mm)に秤取し密閉した後、オーブンに入れ90℃で3分間熱処理した。得られた固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合は観測されず(検出限界3%)、ほぼ完全に反応が進行していることが確認された。また目視で観察した結果、固体中に気泡は認められなかった。
【0042】
実施例2
実施例1で使用したt―ブチルパーオキシネオデカノエート0.2部の代わりに、α―クミルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルCND)0.2部を用いた以外は実施例1と同様に調液―熟成―硬化を行ったところ、薄膜状の固体が得られた。固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合は観測されず(検出限界3%)、ほぼ完全に反応が進行していることがわかった。また目視で観察した結果、固体中に気泡は認められなかった。
【0043】
実施例3
実施例1で使用したt―ブチルパーオキシネオデカノエート0.2部の代わりに、t―ブチルパーオキシネオヘプタノエート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルNH−70)0.2部を用いた以外は実施例1と同様に調液―熟成―硬化を行ったところ、薄膜状の固体が得られた。固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合は観測されず(検出限界3%)、ほぼ完全に反応が進行していることがわかった。また目視で観察した結果、固体中に気泡は認められなかった。
【0044】
比較例1
実施例1で使用したt―ブチルパーオキシネオデカノエート0.2部の代わりに、t―ブチルパーオキシピバレート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルP―70)0.2部を用いた以外は実施例1と同様に調液―熟成―硬化を行ったところ、薄膜状の固体が得られた。固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合が7%存在していることがわかった。
【0045】
比較例2
実施例1で用いたt―ブチルパーオキシネオデカノエート0.2部の代わりに、t―ブチルパーオキシ2―エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルO)0.2部を用いた以外は実施例1と同様に調液―熟成―硬化を行ったところ、極少量の液体を伴う固体が得られた。固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合が23%存在していることがわかった。
【0046】
実施例4
テトラエチレングリコールジアクリレート(東亜合成化学社製:商品名アロニックスM―240)4.0部、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート(アルドリッチ社製)8.0部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiPF6 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)88部、t―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23―C70)0.2部をサンプル瓶に秤取し不活性な雰囲気下で混合した。調液直後に気泡が発生したが、15分間室温で放置し熟成させたところ発泡は止まっていた。ついでこの組成物の一部をPETフィルムの型枠(厚さ125ミクロン、縦20mm、横20mm)に秤取し密閉した後、オーブンに入れ90℃で3分間熱処理した。得られた固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合は観測されず(検出限界2%)、ほぼ完全に反応が進行していることがわかった。また目視で観察した結果、固体中に気泡は認められなかった。
【0047】
比較例3
実施例4で使用したt―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23―C70)0.2部の代わりに、t―ブチルパーオキシ2―エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルO)0.2部を用いた以外は実施例4と同様に調液―熟成―硬化を行ったところ、極少量の液体を伴う固体が得られた。固体をFT―ラマン分析装置にて分析したところ、未反応のC=C結合が14%存在していることがわかった。
以上の結果を表−1及び表−2にまとめて表示した。
【0048】
【表1】
Figure 0004070359
【0049】
【表2】
Figure 0004070359
【0050】
実施例5
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO2 (本荘化学社製)を90部、導電材であるアセチレンブラック(電気化学工業製)を5部、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製)を5部、さらに溶剤としてのN−メチルピロリドン80部を混合し、サンドミルで0.5時間混練・分散処理を行った。この混合物を厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布し、120℃で乾燥して溶剤を除去した後にカレンダー工程を加えて厚さが約80μmの正極を得た。
<負極の作製>
負極活物質であるグラファイト(大阪ガス社製)を95部、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製)を5部、溶剤としてのN−メチルピロリドン80部を混合し、サンドミルで0.5時間混練・分散処理を行った。この混合物を厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布し、120℃で乾燥して溶剤を除去した後にカレンダー工程を加えて厚さが約100μmの負極を得た。
【0051】
<モノマー含有電解液の調製>
テトラエチレングリコールジアクリレート(東亜合成社製: 商品名アロニックスM―240)4.67部、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート東亜合成社製:表品名アロニックスM―370)2.33部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiClO4 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)88.35部、スピロジラクトン(アルドリッチ社製)4.65部、t―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23−C70)0.1部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合した。調液直後に気泡が発生したので、15分間室温で放置し熟成させ発泡を抑制させた。
【0052】
<電池の作製及び充放電試験>
正極、ポリエチレン製多孔膜、負極にそれぞれ硬化前電解質組成物を塗布し、活物質層内に含浸させた後に、正極と負極でポリオレフィン多孔膜を挟み、90℃で5分加熱して硬化させることにより正極/高分子ゲル電解質/多孔膜/高分子ゲル電解質/負極で構成された電池を作製した。これらの電池を用いて25℃で充放電サイクル試験を行った。充電電流密度0.96mA/cm2 で4.1Vまで充電した後、放電電流密度1.92mA/cm2 で2.7Vまで放電させる充放電を20回繰り返した。20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、97.3%であった。
【0053】
実施例6
テトラエチレングリコールジアクリレート(東亜合成社製: 商品名アロニックスM―240)6.00部、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート東亜合成社製:商品名アロニックスM―370)3.00部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiClO4を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)86.45部、スピロジラクトン(アルドリッチ社製)4.55部、t―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23−C70)0.1部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合したものを用いた以外は実施例5と同様の手法により電池を作製した。実施例5と同様に充放電サイクル試験を行い、20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、96.6%であった。
【0054】
実施例7
テトラエチレングリコールジアクリレート(東亜合成社製: 商品名アロニックスM―240)9.00部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiClO4 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)86.45部、スピロジラクトン(アルドリッチ社製)4.55部、t―ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:商品名トリゴノックス23−C70)0.1部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合したものを用いた以外は実施例5と同様の手法により電池を作製した。実施例5と同様に充放電サイクル試験を行い、20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、96.4%であった。
【0055】
比較例4
t―ブチルパーオキシネオデカノエート0.1部の代わりにt―ブチルパーオキシー2―エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製:商品名カヤエステルO)0.5部を用いた以外は実施例5と同様の手法により電池を作製した。実施例5と同様に充放電サイクル試験を行い、20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、93.6%であった。
【0056】
以上の結果を表−3にまとめて表示した。
【0057】
【表3】
Figure 0004070359
【0058】
【発明の効果】
本発明方法によれば、特定の構造を有するパーオキシエステルの存在下、ポリアルキレングリコール系モノマー、リチウム塩及び溶媒を含む組成物を重合、硬化させることにより、残存気泡を持たない均一な固体電解質を極めて高い効率で製造することができる。また、この電解質を材料として使用すると、高負荷充放電特性やサイクル特性に優れ、容量、レート特性にも優れた安全なリチウム二次電池を得ることが出来る。

Claims (8)

  1. (A)エチレン性不飽和二重結合を有するアルキレングリコール系モノマーを、(B)リチウム塩及び(C)カーボネート類またはラクトン類である溶媒の存在下で重合させて高分子固体電解質を製造するに当たり、重合時に下記一般式(I)で表されるパーオキシエステルを存在させ、少なくとも(A)モノマー、(C)溶媒及びパーオキシエステルを混合した後、3分以上熟成させた後、50℃以上150℃以下で加熱硬化させることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
    Figure 0004070359
    (式中、R1 〜R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であり、R4 〜R6 は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を示す。但し、R4〜R6 のうち少なくとも1つは、炭素数2以上のアルキル基またはアリール基である。)
  2. パーオキシエステルが、下記一般式(II)で表されるエステルから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質の製造方法。
    Figure 0004070359
    (式中、R11は少なくとも1つ以上の水素と結合した炭素のみで構成される炭素数2以上のアルキル基またはアリール基であり、R41〜R61は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基であり、そのうち少なくとも一つは炭素数が2以上のアルキル基又はアリール基である。)
  3. (A)モノマーが下記一般式(III)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子固体電解質の製造方法。
    Figure 0004070359
    (式中、R′、R″は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、nは1〜50の整数である。)
  4. (A)モノマーがジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3に記載の高分子固体電解質の製造方法。
  5. (B)リチウム塩が、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4、CF3 SO3 Li、及び(CF3SO22 NLiからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子固体電解質の製造方法。
  6. 請求項1乃至の何れか1つに記載の方法で高分子固体電解質を製造し、その高分子固体電解質を用いることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法
  7. 高分子固体電解質を電解質層に使用することを特徴とする請求項記載のリチウム二次電池の製造方法
  8. 高分子固体電解質を、正極及び/又は負極に使用することを特徴とする請求項又はに記載のリチウム二次電池の製造方法
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