JP4069413B2 - 遠赤外線偽装材および遠赤外線偽装衣 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視光線のみならず、遠赤外線に対しても優れた偽装効果を有する材料および衣服に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、人体に装着する偽装方法として、迷彩色模様の服を着用したり、または迷彩服に草、木の葉を装着して偽装することは行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、迷彩服では可視、近赤外線に対する偽装効果は十分付与されていたが、遠赤外線に対して偽装効果を有するものは存在しなかった。迷彩服だけでは衣服の表面温度が高くなり、遠赤外線探査装置で容易に発見されることがあった。そのため草、木の葉によりカバーし、遠赤外線に対して偽装する方法がとられていたが、この方法では時間の経過につれて草、木はしぼみ、偽装効果が低下するため、草、木の葉を取り替える必要があった。また、草、木を装着していては動きにくく、動けば音が発生し、その上、草、木の葉の切り口で体や顔面を損傷する場合があるなど、着用感が著しく悪いという問題があった。本発明は、可視光線及び近赤外線に対する偽装はもとより、遠赤外線領域まで偽装効果があり、良好な着用感を有する遠赤外線偽装衣を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。即ち、自重の5倍以上の吸水性を有する吸水性繊維と疎水性繊維を含む繊維集合体からなり、繊維集合体の吸水性がJIS(L−1907)滴下法で50秒以下であることを特徴とする遠赤外線偽装材である。また吸水性繊維がアクリル系である遠赤外線偽装材。該吸水性繊維が繊維集合体の3重量%以上含まれている遠赤外線偽装材。疎水性繊維がポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリベンズアゾールの少なくとも1種が使用されている事を特徴とする遠赤外線偽装材。繊維集合体が親水化加工されている遠赤外線偽装材。8〜13μmの波長領域内において偽装性を有する遠赤外線偽装材。繊維集合体がニット、織物、不織布、網等の布帛の少なくとも一部に用いられている遠赤外線偽装材。上記遠赤外線偽装材を、身頃もしくは袖もしくは裾の、少なくとも一部に用いたことを特徴とする遠赤外線偽装衣である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、水を保持し得る吸水性繊維が草や木の葉の役割を果たし、草や木の葉を取り付けなくとも遠赤外線に対して偽装できる衣服となる。もちろん可視光線、近赤外線に対する偽装は、布帛に従来からの迷彩用顔料を付与することにより達成できる。従って、着用しても違和感のない優れた可視光線、近赤外線および遠赤外線に対して偽装効果を有する衣服となる。
【0006】
本発明の遠赤外線偽装材は、少なくとも自重の5倍の吸水性を有する繊維からなる繊維集合体からなり、望ましくは10倍以上である。吸水性が自重の5倍未満の場合水分が不足し、十分な遠赤外線偽装効果を得ることができない。吸水性が高すぎた場合は、繊維の耐水性等の耐久性能が低下するため、吸水性は5000倍未満であることが望ましい。
【0007】
またさらに、上記吸水性を有する繊維としては、自重の5倍以上の吸水性を有する繊維であれば各種の素材の物が使用可能であるが、中でもアクリル系の繊維が高い吸水性を有する事から有効に使用可能である。特開平6−280110号公報に記載のあるような、加水分解アクリロニトリル系複合繊維や、ポリアクリロニトリル繊維のニトリル基をヒドラジン架橋処理した後に加水分解を行なってカルボキシル基およびアミド基を含有させた変性アクリロニトリル系親水性繊維等が好ましく使用できる。上記アクリル系繊維は、アクリル繊維で形成された芯となる内層と、その内層を囲繞するように配設されている高吸水性で吸水後膨潤するように加工処理された外層を有する、二重構造の水膨潤性繊維を持たせる事が可能であり本発明に好的に使用可能である。上記構造のアクリル系の吸水性繊維を使用した場合、特に高性能な遠赤外線偽装材を得る事が可能となる。
【0008】
また、上記に記載の吸水性を有する繊維を使用する場合においても、使用量が極端に少ないと効果は少なく、繊維集合体の3重量%以上が必要であり、望ましくは5%以上である。3重量%以下の含有率の場合、水分が不足し、遠赤外線偽装効果が低下する。
【0009】
本発明でいう疎水性繊維はポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、ポリベンズアゾール等であり、複数の繊維が混合されても良い。疎水性繊維は繊維集合体の布帛が吸水している時、濡れた感触を抑制するのに有効である。また、本発明の目的である遠赤外線偽装性以外に、布帛強力や軽量性、難燃性等が必要な場合、それらの特性に応じて、ポリエステル系繊維、芳香族ポリアミド系繊維、ポリベンズアゾール系繊維、さらには高分子量ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン,ポリプロピレン)が有効に用いることができる。
【0010】
また本発明の遠赤外線偽装材は、繊維集合体の布帛は水分の吸収、拡散が高いほど、水が吸水性を有する繊維に迅速かつ効率よく吸収され、偽装効果を向上させることができる。吸水性がJIS(L−1907)の滴下法において50秒以下であることが望ましく、さらに望ましくは40秒以下である。
【0011】
上記吸水性を高める、具体的手法として、繊維集合体に親水化加工を施すこと事が有効である。親水化加工として、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、水溶性シリコーン、非イオン、アニオン、カチオン、両性の界面活性剤等を有効に利用可能である。
【0012】
遠赤外線探査装置によれば、各種物体の表面温度にあわせてコントラスト画像が形成され、該画像によって探査物体が何であるかを認識する。従って、かかる画像認識に対して偽装するには対象物体の表面温度を周辺環境の表面温度に合わせて偽装する、つまり遠赤外線偽装性能が必要である。かかる性能は、対象物体の表面温度を周辺環境の表面温度に近似した温度に制御するために、背景の草や木の葉の蒸散作用と同様な作用するシート類を対象物体に被覆させることで達成される。この遠赤外線探査装置に対しては、8〜13μm、好ましくは3〜18μmの波長領域における偽装性が必要であり、前記、吸水性繊維を含む布帛に1種または2種以上の液体を付与することにより、より効率よく達成される。
【0013】
使用する液体としては、取り扱いの容易性、安全性から水が望ましい。ただし使用する温度環境によっては水以外の液体を使用することにより偽装効果を高めることができる。冬季など低温環境においては、効率的に衣服表面の熱を奪う必要があり、イソプロピルアルコール やエタノールなど低沸点の液体を使用することにより偽装効果を高めることができる。また、これら液体と水との混合液 とすることにより、熱を奪う速度と効果の持続時間を調節することができ偽装効果をさらに高めることができる。高温環境においては逆に沸点の高いエチレングリコール、グリセリンなどやこれら液体と水との混合液を使用することにより同様に効果的な偽装性を得ることができる。これらの液体を遠赤外線偽装材に付与する方法は、特に限定されるものではないが、例えば噴霧による均一付与などが考えられる。
【0014】
吸水性繊維と疎水性繊維を含む繊維集合体はニット、織物、不織布、網からなる布帛に加工され、少なくともその一部に用いられている。例えば、織物において、経糸あるいは緯糸に交織しても良いし、編地では交編して用いても良い。但し、布帛の一部に用いる場合でも、上記に記載の吸水性を有する繊維は、布帛の3重量%以上が必要であり、望ましくは5%以上である。また、該布帛にコーティングあるいはラミネートによってフィルム層を設けることもできる。上記加工により偽装材の、強度が高まりハンドリング性,耐久性などが向上する。
【0015】
本発明は衣服表面が周辺環境の温度と近似することにより、遠赤外線探査に対しての偽装性を示している。本発明の偽装材を用いて衣服となす場合、身頃もしくは袖もしくは裾の、少なくとも一部に用いていればその部分が周辺環境の温度と近似し、偽装効果が現れる。また、本偽装材を、衣服表面が人体の熱の影響を受けにくい構造となるように裁断、縫製したり、部位によっては付属品を用いて服とすると、より効果が高い。
【0016】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1
下記の測定で50ml/gの吸水性能を有する吸水性アクリル系繊維10%とポリエステル繊維90%の織物(14/1×14/1/86×57)に、可視光線および近赤外線に対する偽装効果のある顔料を葉形状柄にプリントした。この織物の吸水性は、JIS(L−1907)の滴下法で35秒であった。この織物を縫製し、遠赤外線偽装衣を作製した。
*吸水量の測定
0.4gの吸水性アクリル繊維を300mlの純水(蒸留水)に浸漬し、時々攪拌しながら30分間放置し、その後32メッシュの金属ふるいの上に注ぎ10分間水切りをする。メッシュ上に残ったゲル状の吸水性アクリル繊維の量を次式により計算する。
吸水量(ml/g)= (ゲル重量−0.4)/0.4
【0017】
実施例2
実施例1のプリント後仕上げ工程で、ポリエステル系樹脂による親水化加工を施した。この織物の吸水性は、JIS(L−1907)の滴下法で18秒であった。この織物を実施例1と同様に縫製し、遠赤外線偽装衣を作製した。
【0018】
比較例1
ポリエステル繊維100%で実施例1と同様の規格の織物とし、実施例1と同じプリント加工を施し、比較例1の衣服を得た。
【0019】
実施例3
ポリエステル繊維100%の織物(20/1×20/1/90×55)に、可視光線および近赤外線に対する偽装効果のある顔料を葉形状柄にプリントし、外層材とした。次いで、上記の50ml/gの吸水性能を有する吸水性アクリル系繊維50%とポリエステル繊維50%の短繊維不織布をウォーターパンチ法で作製し、中間材とした。さらにこの不織布を挟んで最内層にポリエステル繊維からなるトリコットを配し、3層の積層体を得た。積層体のうち、吸水アクリル系繊維の重量は13%であり、吸水性は、JIS(L−1907)の滴下法で45秒であった。この積層体を縫製し、遠赤外線偽装衣を作製した。
【0020】
実施例1,2、及び比較例1には水を吸収させた後に着用して、背景に樹木がある森林に立ち、検出波長8〜13μmの遠赤外線画像装置(サーモトレーサTH3102;日本電気三栄社製)を用いて、60mの距離から観察した。
【0021】
まず、樹木背景のみの赤外線画像を観察し、次に実施例1、実施例2、比較例1の偽装衣を着用した人体の赤外線画像を観察して比較した結果、実施例の偽装衣は衣服全体が樹木背景のみの遠赤外線画像に近く、人としての識別が不可能であり、遠赤外線偽装効果に優れたものであった。これに対して比較例1は遠赤外線画像において、時間の経過とともに人体としての識別が、特に肩のあたりからできるようになった。また、実施例2は実施例1と比較して、より高温部の画像がなくさらに偽装性能が高いものであった。
【0022】
次に、実施例3の偽装衣を、実施例1、実施例2、比較例1と同様の条件で実験して、その偽装性を調べた。その結果、実施例3の偽装衣も赤外線画像で識別できるものではなく、優れた偽装性が示された。また、実施例3に水を吸収させて同様に実験すると、より偽装性能に優れたものであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、遠赤外線探査による画像認識が困難であり、また、可視での認識および赤外線検出器を用いる計器にも検知されにくく、かつ、着用性に優れた遠赤外線偽装衣を容易に提供することができる。
Claims (8)
- 自重の5倍以上5000倍未満の吸水性を有する吸水性
繊維と疎水性繊維を含む繊維集合体からなり、繊維集合体の吸水性がJIS(L−1907)滴下法で50秒以下であることを特徴とする遠赤外線偽装材。 - 吸水性繊維がアクリル系である請求項1に記載の遠赤外線偽装材。
- 該吸水性繊維が繊維集合体の3重量%以上含まれている請求項1又は2に記載の遠赤外線偽装材。
- 疎水性繊維がポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリベンズアゾールの少なくとも1種が使用されている事を特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の遠赤外線偽装材。
- 繊維集合体が親水化加工されている請求項1乃至4いずれかに記載の遠赤外線偽装材。
- 8〜13μmの波長領域内において偽装性を有する請求項1乃至5いずれかに記載の遠赤外線偽装材。
- 繊維集合体が、ニット、織物、不織布又は網からなる布帛の形状に加工されている事を特徴とする、請求項1乃至6いずれかに記載の遠赤外線偽装材。
- 請求項1乃至7いずれかに記載の遠赤外線偽装材を、身頃もしくは袖もしくは裾の、少なくとも一部に用いたことを特徴とする遠赤外線偽装衣。
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