JP4069269B2 - ボールジョイント - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば自動車の懸架装置及び操舵装置等に使用されるボールジョイントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の懸架装置及び操舵装置の連結部にはボールジョイントが頻繁に使用されてきた。このようなボールジョイントは、図2に示す如く、球状の球頭部104と球頭部104から延出する柄部103とを有するボールスタッド102と、そのボールスタッド102の球頭部104を揺動回動自在に包持し、一端にベアリング開口部107を有する合成樹脂製のベアリング106と、そのベアリング106を内包し、一端にハウジング開口部114内周側からボールスタッド102の柄部103を突出させる略カップ状のハウジング111と、ハウジング111のハウジング開口部114内周に配置される環状の抜け止めリング122と、ブーツ小開口部118がボールスタッド102の柄部103外周に、ブーツ大開口部117がリング外周に装着されるゴム状弾性体からなるブーツ116とを備えていた。
【0003】
ここで、近年自動車の環境への悪影響が問題となり、自動車の燃費向上への取り組みが盛んに行われるようになってきた。そのため、自動車部品の軽量化の要求が高まり、上記ボールジョイント101においても、ハウジング111に軟質軽量の金属材、例えばアルミニウム材を使用することが増えてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようにアルミニウム材よりなるハウジング111を備えたボールジョイント101を使用することにより、確かに軽量化につながる。しかし、アルミニウム材は鉄鋼材に比べ強度が低いため、ボールジョイント101のハウジング111に使用すると、ボールスタッド102から受ける荷重によりハウジング111が歪み、ボールスタッド102にガタツキが発生してしまうということがある。そこでボールスタッド102のガタツキを抑制するため、ハウジング111の肉厚を厚くすることも考えられる。しかし、ハウジング111の肉厚を厚くして強度を高めると、ハウジングの体積が増加し、結局、ボールジョイントの軽量化が充分に達成できないということがある。
【0005】
従って本発明は上述の如き課題を解決し、軽量かつ強度が高く、更にガタツキの発生を抑えるボールジョイントを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の如き構成である。
【0007】
1 球状の球頭部と球頭部から延出する柄部とを有するボールスタッドと、ボールスタッドの球頭部を包持する合成樹脂製のベアリングと、ベアリングを保持する金属製のハウジングとを備えるボールジョイントにおいて、ハウジングは、アルミニウム材よりなる外カップと、カップの内周側に配置され鉄鋼材よりなる内カップとから構成され、ハウジングは、内カップの開口側端部が外カップの開口側端部に圧入され、内カップに、開口側端部に隣接し欠肉部が凹設されるとともに、欠肉部の径方向に薄肉の連結部が形成される。
【0008】
2 ハウジングは、外カップ内周に軸線に対し略垂直に形成される内周突当て面を有し、内カップ外周に内周突当て面に当接する外周突当て面を有する。
【0009】
3 ハウジングは、外カップの内周側に内カップが圧入され、外カップの閉じた外底部と内カップの閉じた内底部との間に間隙が形成される。
【0010】
4 ハウジングは、内カップの両端端部が外カップの両端端部に圧入され、その両端端部間に空間を形成する逃げ部を設ける。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例によるボールジョイント1を表す。このボールジョイント1は、球状の球頭部4と、球頭部4から延出し反球頭部側端部に雌ねじ5を有する柄部3からなるボールスタッド2と、ボールスタッド2の球頭部4を揺動回動自在に包持し、一端端部が開口するベアリング開口部7、他端が円弧状に閉じる曲底部9を有するベアリング6と、ベアリング6を内包し、一端にベアリング開口部7側端部が開口するハウジング開口部14を有するハウジング11とを備える。
【0013】
ハウジング11は、軟質軽量金属材、例えば、アルミニウム材よりなる外カップ31と、強度を高めるために外カップ31内周側に配置される硬質金属材、例えば鉄鋼材よりなる内カップ41より構成される。外カップ31は、一端開口側端部38に軸心側に曲成されるカシメ部15、他端端部に閉口する外底部32を有し、外底部32の内周側には凹状のエア溜り36が形成される。このエア溜り36に連続し、軸線に対し略垂直方向に延びる内周突当て面33がエア溜り36に隣接して形成される。また内カップ41は、一端開口側端部48に受端部44、他端端部に閉口する内底部42を有し、この内底部42の外周側に、軸線に対し略垂直方向に延び外カップ31の内周突当て面33に当接する外周突当て面43が形成される。内カップ41には開口する開口側端部48に隣接し、その外周に周状の欠肉部46が凹設される。この欠肉部46が凹設されることにより、その径方向内周側に薄肉の連結部47が形成される。そして外カップ31の内周側に内カップ41が配置された状態で、外カップ31の内周突当て面33が内カップ41の外周突当て面43に当接するとともに、外カップ31のエア溜り36と内カップ41の内底部42との間に間隙S1、外カップ31及び内カップ41の両端端部間に空間を形成する逃げ部S2が設けられる。更に内カップ41の受端部44側内周付近に段状の段部45が形成され、段部45には、ベアリング6の外周に形成したフランジ8が着座し、受端部44には、ハウジング開口部14内周に配置される環状の抜け止めリング22の外周に形成した鍔部23が着座する。
【0014】
抜け止めリング22の内周は、所望するベアリング6のベアリング開口部7外周曲率と同一曲率の曲内面25を有し、その外周には鍔部23に連続し軸線方向に延びる立壁部24が形成される。そしてゴム状弾性体からなるブーツ16の、補強環19が内部に埋設されるブーツ大開口部17が抜け止めリング22の立壁部24に固定され、補強環20が内部に埋設され断面コの字状のフェルール21が装着されるブーツ小開口部18がボールスタッド2の柄部3外周に固定される。
【0015】
次に上記ボールジョイント1の組付方法について説明する。
【0016】
まず、外カップ31の内周側に内カップ41を圧入する。このとき、圧入前の外カップ31の両端端部内径は内カップ41の対向する両端端部外径より若干小径に形成されており、圧入時、内カップ41の両端端部を外カップ31の両端端部に圧入し、両端端部間に空間を形成する逃げ部S2を設ける。続いて、ハウジング11のハウジング開口部14側から、予めベアリング開口部7付近を軸線に沿って平行に形成したベアリング6を挿入し、ベアリング6の曲底部9をハウジング11の内周面に、ベアリング6のフランジ8をハウジング11の段部45に着座させる。
【0017】
次に、ベアリング6のベアリング開口部7側からボールスタッド2の球頭部4を挿入後、ハウジング11のハウジング開口部14内周側に抜け止めリング22を挿入後し、ベアリング6のベアリング開口部7を抜け止めリング22の曲内面25に倣って内周側に折曲させるとともに、抜け止めリング22の鍔部23をハウジング11の受端部44に着座させる。この状態でハウジング11のカシメ部15をかしめ加工し、組付ける。
【0018】
そして最後に、ブーツ16のブーツ大開口部17が抜け止めリング22の立壁部24に、ブーツ小開口部18がボールスタッド2の柄部3外周に圧入されて、図1に示す如く、ボールジョイント1の組付が完了する。
【0019】
よって上述の如きボールジョイントは、金属製のハウジング11が、アルミニウム材よりなる外カップ31と、外カップ31の内周側に配置され鉄鋼材よりなる内カップ41とから構成され、ハウジング11は、内カップ41の開口側端部48が外カップ31の開口側端部38に圧入され、内カップ41に、開口側端部48に隣接し欠肉部46が凹設されるとともに、欠肉部46の径方向側に薄肉の連結部47が形成されるため、このボールジョイントが自動車の懸架装置及び操舵装置の連結部に使用されたとき、ボールスタッド2からかかる主荷重は鉄鋼製の内カップ41が受け、アルミニウム製の外カップ31が受ける荷重を低減できる。また、内カップ41は、その開口側端部48が外カップ31の開口側端部38に圧入され、外カップ31の内周側に内カップ41が配置される。このとき、内カップ41の開口側端部48は、圧入に伴う軸心側への変形(歪)が発生する。しかし、内カップ41には開口側端部48に隣接し、その外周に周状の欠肉部46が凹設されるとともに、その欠肉部46の径方向内周側に薄肉の連結部47が形成されるため、圧入に伴う変形を薄肉の連結部47を支点に開口側端部48のみの変形に抑えることができるので、変形がボールスタッド2の球頭部4を保持する内カップ41全体に影響することはない。
【0020】
尚、ハウジング11が、外カップ31内周に軸線に対し略垂直に形成される内周突当て面33を有し、内カップ41外周に内周突当て面33に当接する外周突当て面43を有する構造とすると、軸線方向の荷重に対しても内周突当て面33及び外周突当て面43で受けることができる。
【0021】
また、ハウジング11が、外カップ31の内周側に内カップ41が圧入され、外カップ31の閉じた外底部32と内カップ41の閉じた内底部42との間に間隙S1が形成される構造とすると、外カップ31と内カップ41との間に発生する密閉空間が広がり、最終的にエアを間隙S1に封入することがてきるので、内カップ41圧入に伴うエアの反発力を低減できる。
【0022】
また、ハウジング11が、外カップ31の両端端部が内カップ41の両端端部に圧入され、その両端端部間に空間を形成する逃げ部S2を設ける構造とすると、圧入に伴う内カップ41の軸線垂直方向の寸法変化が、開口部側端部48では抜け止めリング22によりボールスタッド2の球頭部4への影響が緩和され、内底部42側端部ではボールスタッド2の球頭部4に対しほとんど影響しない。
【0023】
尚、上記実施例では、周状の欠肉部46を内カップ41の開口側端部48の外周側に凹設し、連結部47を径方向内周側に形成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、欠肉部46を開口側端部48の内周側に凹設し、連結部47を径方向外周側に形成しても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明のボールジョイントによれば、球状の球頭部と球頭部から延出する柄部とを有するボールスタッドと、ボールスタッドの球頭部を包持する合成樹脂製のベアリングと、ベアリングを保持する金属製のハウジングとを備えるボールジョイントにおいて、ハウジングは、アルミニウム材よりなる外カップと、外カップの内周側に配置され鉄鋼材よりなる内カップとから構成され、ハウジングは、内カップの開口側端部が外カップの開口側端部に圧入され、内カップに、開口側端部に隣接し欠肉部が凹設されるとともに、欠肉部の径方向に薄肉の連結部が形成されるため、ボールスタッドからかかる主荷重は鉄鋼製の内カップが受け、アルミニウム製の外カップが受ける荷重を低減できるので、軽量かつ強度が高く、ハウジングの歪みにともなうガタツキの発生を抑制できる。またハウジングは、圧入に伴う変形を薄肉の連結部を支点に開口側端部のみの変形に抑えることができるので、変形がボールスタッドの球頭部を保持する内カップ全体に影響することはなく、揺動・回動のトルクの変化を抑えることができる。
【0025】
尚、ハウジングが、外カップ内周に軸線に対し略垂直に形成される内周突当て面を有し、内カップ外周に内周突当て面に当接する外周突当て面を有する構造とすると、軸線方向の荷重に対しても内周突当て面及び外周突当て面で受けることができるため、軸線方向の耐荷重を高く設定できる。
【0026】
また、ハウジングが、外カップの内周側に内カップが圧入され、外カップの閉じた外底部と内カップの閉じた内底部との間に間隙が形成される構造とすると、外カップと内カップとの間に発生する密閉空間が広がり、最終的にエアを間隙に封入することがてきるので、内カップ圧入に伴うエアの反発力を低減でき、内カップをより確実に所定位置に配置できる。
【0027】
更に、ハウジングが、内カップの両端端部が外カップの両端端部に圧入され、その両端端部間に空間を形成する逃げ部を設ける構造とすると、圧入に伴う内カップの軸線垂直方向寸法変化が、開口側端部では抜け止めリングによりボールスタッドの球頭部への影響が緩和され、内底部側端部ではボールスタッドの球頭部に対しほとんど影響しないため、所定の揺動・回動のトルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるボールジョイントを表す部分断面正面図である。
【図2】 従来のボールジョイントを表す部分断面正面図である。
【符号の説明】
2 ボールスタッド
3 柄部
4 球頭部
6 ベアリング
11 ハウジング
31 外カップ
32 外底部
33 内周突当て面
38 (カップの)開口側端部
41 内カップ
42 内底部
43 外周突当て面
46 欠肉部
47 連結部
48 (カップの)開口側端部
S1 間隙
S2 逃げ部

Claims (4)

  1. 球状の球頭部(4)と該球頭部(4)から延出する柄部(3)とを有するボールスタッド(2)と、該ボールスタッド(2)の球頭部(4)を包持する合成樹脂製のベアリング(6)と、該ベアリング(6)を保持する金属製のハウジング(11)とを備えるボールジョイントにおいて、前記ハウジング(11)は、アルミニウム材よりなる外カップ(31)と、該外カップ(31)の内周側に配置され鉄鋼材よりなる内カップ(41)とから構成され、前記ハウジング(11)は、前記内カップ(41)の開口側端部(48)が前記外カップ(31)の開口側端部(38)に圧入され、前記内カップ(41)に、開口側端部(48)に隣接し欠肉部(46)が凹設されるとともに、該欠肉部(46)の径方向側に薄肉の連結部(47)が形成されることを特徴とするボールジョイント。
  2. 前記ハウジング(11)は、外カップ(31)内周に軸線に対し略垂直に形成される内周突当て面(33)を有し、内カップ(41)外周に該内周突当て面(33)に当接する外周突当て面(43)を有することを特徴とする請求項1記載のボールジョイント。
  3. 前記ハウジング(11)は、外カップ(31)の内周側に内カップ(41)が圧入され、前記外カップ(31)の閉じた外底部(32)と前記内カップ(41)の閉じた内底部(42)との間に間隙(S1)が形成されることを特徴とする請求項1及び2記載のボールジョイント。
  4. 前記ハウジング(11)は、内カップ(41)の両端端部が外カップ(31)の両端端部に圧入され、該両端端部間に空間を形成する逃げ部(S2)を設けることを特徴とする請求項1乃至3記載のボールジョイント。
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