JP4068481B2 - シミュレーション方法、シミュレーションプログラム、シミュレーション装置および表面反応装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被反応物の表面形状が、例えばエッチングプロセスや成膜プロセスなどにより1マイクロメートル程度のオーダで変化する過程をシミュレートするためのシミュレーション方法およびシミュレーションプログラムに関する。また本発明は、上記シミュレーション方法およびシミュレーションプログラムを組み込んだシミュレーション装置と、このシミュレーション装置を利用する表面反応装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSIなどの半導体デバイスを製造するプロセスには、プラズマ・プロセス、CVD、PVDなどがある。特にプラズマ・プロセスには、反応性イオンエッチング(RIE)などの手法がある。これらのプロセスによれば、半導体デバイスを1マイクロメートル以下のオーダで加工することができる。
【0003】
この種の微細加工技術が進展するにつれ、プロセス条件の決定にかかる費用や時間が大きくなってきている。これを受けて、気相シミュレーションにより反応装置の状況を擬似的に推定したいという要請が高まっている。また近年では、気相シミュレーションの結果に基づき形状シミュレーションを実施し、半導体デバイスの加工形状を擬似的に推定することが考えられている。
【0004】
反応装置の気相・プラズマ相のシミュレーションと、1マイクロメートル以下の微細形状シミュレーションとでは取り扱うスケールが大きく異なる。よって、ウェハ表面に到達する分子種やイオン種、電子などの気相またはプラズマ相の状態をシミュレートする部分と、ウェハ表面の1マイクロメートル以下の微細な形状をシミュレートする部分とに、計算処理を分けて実施することが有利である。このうち気相・プラズマ相のシミュレーションは、気相については流体解析技術を用いた方法やDSMC法による希薄気体解析手法を使うことが多い。プラズマ相については主として希薄気体解析に用いるモンテカルロ手法を利用することが多く、流体近似を行った計算手法がまれに適用される。
【0005】
これに対し形状シミュレーション方法には、代表的な物理的シミュレーション方法として、モンテカルロ・シミュレーション法(以下、モンテカルロ法と称する)と、ラジオシティ法とがある。モンテカルロ法は、主として原子、分子やラジカル種、プラズマによるイオン種、電子などを代表構成粒子とし、現象を確率論的にモデル化し扱う手法である。ラジオシティ法は、各種粒子種のフラックスを計算してラジオシティ行列を生成し、このラジオシティ行列を用いて表面への影響をシミュレートする手法である。
【0006】
下記非特許文献1に、気体やプラズマの構成粒子の移動軌跡などのシミュレーションを行うにあたり、気体やプラズマを構成する複数の粒子の中から代表粒子を選び、その代表粒子についての物理モデルを立て現象を確率論的にモデル化してモンテカルロ法による計算により結果を得る手法が記載されている。
【0007】
モンテカルロ法は、エネルギー分布、角度分布をもつ複数の粒子種をより自然に取り扱うことができるが、計算時間が膨大になるという欠点を有する。特に反応性イオンエッチング(RIE)などのエッチング手法においては、デポジションを行う種とエッチングを行う種が有るために、表面のエッチングレートや表面堆積物のデポジションレートは確率的粒子による加算と減算のせめぎ合いにより算出される。このため演算処理における揺らぎが大変大きく、モンテカルロ計算によっては安定した解を得ることが難しいことが知られている(例えば下記非特許文献2を参照)。
【0008】
一方、ラジオシティ法とは、熱輻射による温度解析の手法として開発された方法であり、他への応用としては光の軌跡の計算手法としてコンピュータ・グラフィクスの分野でも利用される。下記非特許文献3に、解析対象である表面を分割して、おのおのの部分の面関係を行列形式にまとめてラジオシティ法により表面現象を解析する手法が開示される。
【0009】
フラックス計算にラジオシティ法を利用する場合には、エネルギー成分に関しては単一のエネルギーのみを扱うのが従来からの主流となっている(例えば下記非特許文献4を参照)。
【0010】
【非特許文献1】
G. A. Bird著「Molecular Gas Dynamics and Direct Simulation of Gas Flows」, Oxford Science Publications, 1994, ISBN 0-19-856-195-4
【0011】
【非特許文献2】
“Microtrenching resulting from specular reflection during chlorine etching of silicon”, Robert J. Hoekstra and Mark J. Kushner et. al. Journal of Vacuum Science and Technology B 16(4) p.2102
【0012】
【非特許文献3】
James D. Foley, Andries van Dam, Steven K. Feiner, John K. Feiner, John F. Hughes著, Addison-Wesley Pub. Co.「Computer Graphics Principles and Practice 2nd Ed. In C, p.793 - p.806, 1997, ISBN 0-201-84840-6
【0013】
【非特許文献4】
“Analytical modeling of silicon etch process in high density plasma”, Saraswat et. al. Journal of Vacuum Science and Technology A 17(5) p.2485
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プラズマ・プロセスにおいてはイオン種のエネルギー分布と角度分布とがプロセス形状に大きく影響する。この現象をラジオシティ法によるフラックス計算により直接的にシミュレートしようとすると、エネルギー成分と角度成分についての積分を形状の微小部分ごとに実施することとなる。このため膨大な計算時間が必要となり、また得られた結果の精度も低くなりやすい。
【0015】
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、計算時間の短縮および精度の向上を図ったシミュレーション方法、シミュレーションプログラム、およびシミュレーション装置を提供することにある。また本発明の別の目的は、リアルタイム制御を可能とする表面反応装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係わるシミュレーション方法は、プラズマ状態の粒子種(例えば分子種、イオン種、電子など)を被反応物に衝突させて当該被反応物を加工するプロセスを、プラズマバルク部分の状態の変化をシミュレートする第1のシミュレーション(例えば気相・プラズマ相のシミュレーション)と、前記被反応物の表面形状の変化をシミュレートする第2のシミュレーション(例えば形状シミュレーションないしトポグラフィー・シミュレーション)とに分離してシミュレートするシミュレーション方法であって、前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する第1ステップと、この第1ステップにおける数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して、前記第2のシミュレーションを実施する第2のステップとを具備することを特徴とする。
【0017】
このような手段により、第1ステップにおいて、エッチング・イールドによる重み付けを加味した角度分布関数が、粒子種ごとに算出される。この角度分布関数はそれぞれの粒子種につき被反応物をエッチングする能力の角度分布を示すもので、その変数は角度θのみとなる。
【0018】
従って、表面形状の微小部分ごとに粒子種のエネルギー成分と角度成分についての積分を2次元的に考慮することなく、角度の次元のみに基づく演算処理により、例えばラジオシティ法によるフラックス計算を実施することが可能になる。
【0019】
これによりコンピュータの数値計算に係わるアルゴリズムを簡略化でき、また取り扱うべきデータ量を削減することができる。従ってコンピュータの数値計算速度を向上させることができ、計算時間の短縮および計算精度の向上を図ることが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる表面反応装置の構成を示すブロック図である。この装置は、反応処理装置100とシミュレーション装置200とを備える。このうち反応処理装置100は、パワー供給部101およびマッチング回路102により電極103,104間に高周波電圧を印加し、反応チャンバ105内のガスをプラズマ化する。ステージ106に載置される半導体ウェハ107の表面は、電極103,104間の電位差に応じたエネルギーで降り注ぐ粒子種によりエッチング加工される。
【0021】
シミュレーション装置200は、例えばパーソナルコンピュータに専用の制御ソフトウェアをロードとして実現され、入出力部201、表示部202、インタフェース(I/F)部203、記憶部204、および、制御部205を備える。入出力部201は、オペレータによる数値入力操作などを受け付ける。表示部202は、種々の解析情報を表示する。インタフェース部203は、図示しない温度センサや電流計、電圧計などを介して反応処理装置100から与えられる種々の計測データを受け付け、記憶部204または制御部205に伝達する。またインタフェース部203は、制御部205から与えられるフィードバックデータを反応処理装置100に伝達する。記憶部204は、種々の計測データや制御プログラムなどを記憶する。
【0022】
制御部205は、積分処理部205aと、シミュレーション処理部205bと、フィードバック処理部205cとを備える。積分処理部205aは、前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する。特に積分処理部205aは、エッチングプロセスの進行の度合いに応じて角度分布関数を粒子種ごとに複数算出し、予めテーブル化する。
【0023】
シミュレーション処理部205bは、積分処理部205aによる数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して形状シミュレーションを実施する。
【0024】
フィードバック処理部205cは、積分処理部205aおよびシミュレーション処理部205bにより算出される表面反応シミュレーションの結果に基づいて反応処理装置100をフィードバック制御する。
【0025】
なお積分処理部205a、シミュレーション処理部205b、およびフィードバック処理部205cは、専用の言語で記述され、例えばCPU(Central Processing Unit)などの計算機にロードされて実行される制御プログラムなどとして実現される。
【0026】
図2は、図1に示される反応処理装置100を用いる表面反応シミュレーション手順の既知の例を示す概念図である。先ず、反応チャンバ105内に封入されるガスの種類、ガス圧力の設定値、ガス流量の設定値、電源電力の設定値、電圧電源の設定値、および周波数の設定値などの装置条件が制御部205に与えられる(ステップS1)。その際、シミュレーション計算に使用するための気相・表面反応モデルが与えられる(ステップS2)。なおこの表面反応モデルについては、反復計算を実行することにより収束させるようにする。
【0027】
次に制御部205は、プラズマ状態に関するシミュレーション解析を、プラズマバルク、シース、およびウェハ表面ごとに実施する(ステップS3)。これにより、ガス種およびイオン種ごとに、イオン角度分布関数(Ion Angular Distribution Function:IADF)が求められる(ステップS4)。このIADFをもとに、例えばレベルセット法などの手法により表面反応計算、および表面の形状計算が実施される(ステップS5)。
【0028】
図3は、図2の手順などにより得られるシミュレーションの結果と実験結果とを比較して示す図である。図3(a)は、Al(アルミニウム)配線上にSiO2成膜を形成するシミュレーションの結果を示し、図3(b)は図3(a)と同様の条件のもとで形成された実基板の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。両者を比較するとシミュレーションと実験結果とが良く合致している事が分かるが、当業者らには、図3(a)のシミュレーション結果をより短時間に、望ましくは実時間で得たいというニーズがある。
【0029】
図4は、半導体ウェハ107の表面で生じる現象の例を示す模式図である。図4(a)は、ガス種としてのイオン20が半導体ウェハ107表面のトレンチ3の側壁に対して低角度で入射して高速なまま反射されるか、または直接入射することによりトレンチ3底部にマイクロトレンチ21が形成される現象を示す。図4(b)は、トレンチ3内の側壁よりも底部がチャージアップされることによりイオン20が底部に引き寄せられ、これによりマイクロトレンチ21が形成される現象を示す。図4(c)は、トレンチ3内の底部よりも側壁がチャージアップされることによりイオン20が側壁に引き寄せられ、これにより側壁がより深く掘られる現象を示す。このような形状はビア・ホールと称される。
このような微細な形状加工を実現するにあたり、反応物としてのイオン種の角度分布、およびエネルギー分布が重要な役割を果たす。
【0030】
図5は、半導体ウェハ107に入射する粒子種のエネルギー分布の一例を示すグラフである。この分布はイオンエネルギー分布関数(Ion Energy Distribution Function)と称される。このグラフに示されるように、イオン種のエネルギーは、低エネルギー側と高エネルギー側とにピークを持つ特徴的な分布を示す。このエネルギー分布は熱的に散乱され、図6に示されるような単位立体角あたりの角度分布をもたらす。
【0031】
図6は、半導体ウェハ107に入射する粒子種のシース部分における角度分布の一例を示すグラフである。各イオン種ともに低角度から高角度へと単調に減少する分布を示すが、その変化の割合、および最大値はイオン種ごとに異なる。
【0032】
図7は、図1のシミュレーション装置200により実施される表面反応シミュレーションの手順を示す概念図である。本実施形態においても、図2に例示したように、シミュレーションをプラズマシミュレーション部分と形状シミュレーション部分とキャリブレーション実行用の駆動部分とに分割して考える。
【0033】
プラズマ解析計算部分(ステップS3)では、バルク・プラズマ反応部、シース部、表面反応部を考慮し、プラズマ反応装置の運転条件を入力条件として直接入力する(ステップS1)。気相・表面反応モデルも同様に入力対象とする(ステップS2)。その際、キャリブレーション処理により、シミュレーティッド・アニーリングや、遺伝的アルゴリズム手法他の各種最適化手法で、実行結果とモデルとの差異を最小化すべく、気相・表面反応モデルを最適に設定する(ステップS6)。ステップS3による処理の結果は、特に中性種のフラックスと、イオン種のIAEDFまたはIEDFとなる(ステップS4)。
【0034】
形状シミュレーション部分(ステップS5)では、ステップS4で得られた計算結果をもとにフラックス法によるトポグラフィー・シミュレーションを実施する。フラックスの計算は、ラジオシティ法を利用する。等方性散乱については行列ラジオシティ法を使用する。非等方性散乱については反復ラジオシティ法を使用する。これらの手法をもとに、本実施形態では、イールドの影響を加味した上で、中性種、イオン種、表面サイトに関する表面反応計算を行う。これにより、モンテカルロ法と比較して高速かつ正確な精度で表面形状を計算することができる。
【0035】
ステップS5で得られた結果は、プロセスの設計(ステップS10)および成膜形状の制御(ステップS11)にフィードバックされ、反応処理装置100の制御に役立てられる(ステップS7)。またステップS5で得られた表面状態に関する計算値は、ステップS3におけるプラズマ解析計算にフィードバックされる(ステップS9)さらに、ステップS3におけるプラズマ解析計算の結果も装置制御に使用される(ステップS8)
ところで、本実施形態では、入射に関する異方性の強い粒子種(イオン他)によるプロセスに関して、イオン角度エネルギー分布関数(IAEDF)と、エッチング・イールドのエネルギー成分とを数値積分し、角度のみの次元を持つ関数をあらたに生成してこの関数をもとに表面反応計算を行う。この新たな関数を、エッチング・イールド・イオン角度エネルギー分布関数(Etching Yield Ion Angular Energy Distribution Function:EYIADF)と称する。EYIADFは、次式(1)に示されるようにIAEDFとイールドのエネルギー成分を数値積分することで算出される。
【数1】
【0036】
式(1)において、次式(2)の形にY(E,θ)が変数分離できることを仮定する。図8に、θとΨとの関係を示す。図8に示されるように、θは、イオン種の進行方向が鉛直方向に対してなす角として定義される。Ψは、イオン種の半導体ウェハ107への入射方向と半導体ウェハ107の表面とがなす角と、半導体ウェハ107の表面に垂直な方向との差として定義される。
【数2】
【0037】
Y(E,θ)の具体例として、例えば次式(3)に示されるような式が考えられる。
【数3】
【0038】
エッチングレートは、次式(4)に基づき計算することができる。なお式の係数はイオン種ごとに異なる。
【数4】
【0039】
以上の式において、EYIADFは、エッチング・イールドの重み付けが加味された角度分布関数を意味する。この関数を用いることで、エッチング・イールドの影響を加味した表面反応計算を、1次元の角度成分のみを考慮して実施することができる。
【0040】
エッチング・イールドの計算と別に、表面と相互作用した粒子種が散乱・反射するというメカニズムを通して、他に影響を与える成分を計算するためにはイオン角度分布関数(IADF)を利用することができる。特に、EYIADFをもとに、次式(5)に基づいて非等方性散乱の影響を計算することができる。
【数5】
【0041】
なお式(3)において、IAEDFの計算にあたりEth以下を使用しない。また、イオン角度エネルギー分布関数は図5のイオンエネルギー分布関数から導出することができる。また、イオンエネルギー分布関数は、一般に連続的な関数になるとは限らない。このような場合にはイオンエネルギー分布関数をいくつかに分割してモデル化し、離散点における計算結果をもとにEYIADFを算出するようにする。
【0042】
図9は、図1の装置により表面に成膜を形成する場合のシミュレーションの手順の一例を示すフローチャートである。図9において、まず、実施しようとするエッチング処理に係わる反応スキームを整理し、フラックス法におけるラジオシティ行列の計算の順序を決定したのち(ステップS21)、表面の形状を初期化する条件を入力する(ステップS22)。
【0043】
次に、ステップS23〜ステップS37のループを形成し、全ての成膜につきプラズマ・シミュレーションを実施して、半導体ウェハ107の表面に入射するエッチング・イールドを算出する(ステップS24)。次に、ステップS25〜ステップS36のループを形成し、ウェハの表面状態がステップS21で設定された状態に達するまで、ステップS26〜ステップS35の手順が繰り返される。
【0044】
ステップS26では、ウェハ表面に直接入射するフラックスの計算が実施され、次にステップS27〜ステップS33のループが形成される。すなわち膜厚が設定値を超えるまでステップS28〜ステップS32のループが繰り返される。このループ内において、ステップS29の分岐条件に則して、ラジオシティ行列が導出されたのち(ステップS30)、フラックス法に基づく行列計算が実施される(ステップS31)。またステップS35では、膜厚の変化などのウェハに関する状態が計算される。これらの手順が完了すると(ステップS32、S33)、半導体ウェハ107の表面が成長し(ステップS34)、次いでステップS36において成膜が終了し、ステップS37において全ての成膜につき計算処理が完了すると、手順の終了となる。
【0045】
図10は、図1の装置により表面に成膜を形成する場合のシミュレーションの手順の他の例を示すフローチャートである。図10において図9と同様の手順には同一の符号を付して示す。図10のフローチャートは、ステップS41〜ステップS43のループにおいて全ての成膜につきプラズマ・シミュレーションを実施して、半導体ウェハ107の表面に入射するエッチング・イールドを、ステップS25〜ステップS37のループとは別に算出する(ステップS42)ようにしている。このようにすることで計算処理を同時進行的に実施するとこができ、処理速度を更に早めることが可能になる。なおこのような処理は、プログラミングにおけるマルチスレッドとして実現できる。
【0046】
以上述べたように本実施形態では、入射に関する異方性の強いイオンなどの粒子種によるプロセスに関して、それぞれ角度θおよびエネルギーEの関数であるイオン角度エネルギー分布関数(IAEDF)と、表面との作用の係数としてのエッチング・イールドのエネルギー成分とを数値積分して、エッチング・イールドの重み付けのついたイオン角度分布関数(EYIADF)をあらかじめ作成する。そして、EYIADFを用いて表面計算における積分処理を一次元化し、これによりトポグラフィー・シミュレーションを高速実行できるようにしている。従って、シミュレーションの計算結果を得られるまでの時間を短縮できるとともに、プロセッサの処理速度如何では表面反応の進行と共にリアルタイムシミュレーションを実現することが可能になる。
【0047】
すなわち本実施形態のシミュレーション方法をコンピュータプログラム化し、TCADソフトウェアあるいは制御ソフトウェアとして装置に組み込むことで、プラズマおよび形状に対する制御性を増すことができる。すなわち表面計算シミュレーションにおける演算処理の一次元化により処理の高速化を実現できることから、本実施形態にかかるシミュレーション方法は、実時間シミュレーションによるプロセス制御に利用することができる。特に、エッチング装置、CVD装置、プラズマ酸窒化装置、スパタリング、ロングスロースパッタ、CDE、アッシャ、イオン・インプラ、イオン照射表面改質装置、MBE装置などの装置に適用することで、これらの外部装置の制御に役立てることができる。
【0048】
このほか本実施形態のシミュレーション方法は、電子エネルギー分布関数(EEDF)、電子角度分布関数(EADF)に適用して、EB、EPMA、EDX、SEMなどのような電子線利用装置の制御を高精度化するために利用することができる。
【0049】
また本実施形態のシミュレーション方法は、電磁波、光の計算においてスペクトル、偏光ほかに依存する量子収率の影響を先に積分した角度分布関数を用いてフラックス計算を行うために利用できる。具体的には、光の計算については、放射光、偏光光など異方的な強度、偏光、スペクトル分布を持つ光の反射、屈折、回折などのラジオシティについて計算を行うことができる。これは、スペクトル分布が影響を与える写真フィルムの感光、CCD、フォト・ダイオードの露光、クロロフィルほか化学物質の光感受性などの計算に利用する。蛍光管やLEDの光特性や温室などの照明設計に利用することができる。
【0050】
さらに本実施形態のシミュレーション方法は、FTP炉、SRTP炉などの熱輻射炉中の熱輻射解析について、Siウェハ等の吸収スペクトルを加味した昇降温制御に利用することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上詳しく述べたように本発明によれば、計算時間の短縮および精度の向上を図ったシミュレーション方法、シミュレーションプログラム、およびシミュレーション装置を提供することができる。また本発明によれば、リアルタイム制御を可能とする表面反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる表面反応装置の構成を示すブロック図。
【図2】 図1に示される反応処理装置100を用いる表面反応シミュレーション手順の既知の例を示す概念図。
【図3】 図2の手順などにより得られるシミュレーションの結果と実験結果とを比較して示す図。
【図4】 図1の半導体ウェハ107の表面で生じる現象の例を示す模式図。
【図5】 半導体ウェハ107に入射する粒子種のエネルギー分布の一例を示すグラフ。
【図6】 半導体ウェハ107に入射する粒子種のシース部分における角度分布の一例を示すグラフ。
【図7】 図1のシミュレーション装置200により実施される表面反応シミュレーションの手順を示す概念図。
【図8】 数式におけるθとΨとの関係を示す図。
【図9】 図1の装置により表面に成膜を形成する場合のシミュレーションの手順の一例を示すフローチャート。
【図10】 図1の装置により表面に成膜を形成する場合のシミュレーションの手順の他の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
3…トレンチ、20…イオン、21…マイクロトレンチ、100…反応処理装置、101…パワー供給部、102…マッチング回路、103.104…電極、105…反応チャンバ、106…ステージ、107…半導体ウェハ、200…シミュレーション装置、201…入出力部、202…表示部、203…インタフェース部、204…記憶部、205…制御部、205a…積分処理部、205b…シミュレーション処理部、205c…フィードバック処理部
Claims (10)
- プラズマ状態の粒子種を被反応物に衝突させて当該被反応物を加工するプロセスを、プラズマバルク部分の状態の変化をシミュレートする第1のシミュレーションと、前記被反応物の表面形状の変化をシミュレートする第2のシミュレーションとに分離してコンピュータによりシミュレートするシミュレーション方法であって、
前記第 1 のシミュレーションにより得られた前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する第1ステップと、
この第1ステップにおける数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して、フラックス法により前記第2のシミュレーションを実施する第2のステップとを具備することを特徴とするシミュレーション方法。 - 前記第1ステップにおいて、前記角度分布関数を前記プロセスの進行の度合いに応じて前記粒子種ごとに複数算出し、予めテーブル化することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
- 前記第1ステップにおいて、前記粒子種ごとに算出される角度分布関数の角度に関する近似式を生成し、
前記第2ステップにおいて、前記近似式に基づき前記第2のシミュレーションを実施することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。 - プラズマ状態の粒子種を被反応物に衝突させて当該被反応物を加工するプロセスを、プラズマバルク部分の状態の変化をシミュレートする第1のシミュレーションと、前記被反応物の表面形状の変化をシミュレートする第2のシミュレーションとに分離してコンピュータによりシミュレートするためのシミュレーションプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第 1 のシミュレーションにより得られた前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する第1ステップを実行させるための命令と、
前記第1ステップにおける数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して、フラックス法により前記第2のシミュレーションを実施する第2のステップを実行させるための命令とを含むことを特徴とするシミュレーションプログラム。 - さらに、前記コンピュータに、前記第1ステップにおいて、前記角度分布関数を前記プロセスの進行の度合いに応じて前記粒子種ごとに複数算出し、予めテーブル化するための命令を含むことを特徴とする請求項4に記載のシミュレーションプログラム。
- さらに、前記コンピュータに、
前記第1ステップにおいて、前記粒子種ごとに算出される角度分布関数の角度に関する近似式を生成するための命令と、
前記第2ステップにおいて、前記近似式に基づき前記第2のシミュレーションを実施するための命令とを含むことを特徴とする請求項4に記載のシミュレーションプログラム。 - プラズマ状態の粒子種を被反応物に衝突させて当該被反応物を加工するプロセスを、プラズマバルク部分の状態の変化をシミュレートする第1のシミュレーションと、前記被反応物の表面形状の変化をシミュレートする第2のシミュレーションとに分離してコンピュータによりシミュレートするシミュレーション装置であって、
前記第 1 のシミュレーションにより得られた前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する積分手段と、
この積分手段における数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して、フラックス法により前記第2のシミュレーションを実施する表面反応シミュレート手段とを具備することを特徴とするシミュレーション装置。 - 前記積分手段は、前記角度分布関数を前記プロセスの進行の度合いに応じて前記粒子種ごとに複数算出し、予めテーブル化することを特徴とする請求項7に記載のシミュレーション装置。
- 前記積分手段は、前記粒子種ごとに算出される角度分布関数の角度に関する近似式を生成し、
前記表面反応シミュレート手段は、前記近似式に基づき前記第2のシミュレーションを実施することを特徴とする請求項7に記載のシミュレーション装置。 - プラズマ状態の粒子種を被反応物に衝突させて当該被反応物を加工するプロセスを、プラズマバルク部分の状態の変化をシミュレートする第1のシミュレーションと、前記被反応物の表面形状の変化をシミュレートする第2のシミュレーションとに分離してコンピュータによりシミュレートするシミュレーション部と、
このシミュレーション部により算出される前記被反応物の状態に基づき制御される被制御部とを具備し、
前記シミュレーション部は、
前記第 1 のシミュレーションにより得られた前記粒子種の角度エネルギー分布関数と前記粒子種の前記被反応物に対するエッチング・イールドのエネルギー成分との積を、前記粒子種ごとにエネルギーに関して数値積分する積分手段と、
この積分手段における数値積分計算により前記粒子種ごとに算出される角度分布関数を利用して、フラックス法により前記第2のシミュレーションを実施する表面反応シミュレート手段と、
前記第1および第2のシミュレーションにより算出される被反応物の状態をもとに前記被制御部をフィードバック制御するフィードバック処理手段とを備えることを特徴とする表面反応装置。
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