JP4067810B2 - 基板搬送装置及びそのアーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタ用のガラス基板等を上下方向に多段に保管する基板保管装置の各段に対して、基板を出し入れするための基板搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種のディスプレイのカラーフィルタに使用されるガラス基板の保管装置には、基板を立てた状態で水平方向に並べて保管する縦型と、基板を上下方向に並べて保管する横型とが存在する。横型の基板保管装置は、基板を水平状態のまま出し入れできる利点がある。しかし、ガラス基板はその面積に比して著しく薄いため、その保管装置の内部では、各段の基板の中央部が下方に比較的大きく撓む。一方、保管装置に対して基板を出し入れする際には、基板の幅方向のほぼ中央を搬送装置のハンドで保持するので、基板の両側部が下向きに撓む。つまり、保管状態の基板と、出し入れ途中の基板とで撓み方向が互いに逆向きになる。従って、出し入れ途中の基板と、保管中の基板との接触を避けるには、保管装置の上下方向に関する基板の収納ピッチ(基板が並ぶ間隔)を拡大する必要がある。これにより、保管装置の収納効率が悪化し、装置が大型化したり、基板の最大収納枚数が低下する。
【0003】
特開平11ー5627号公報にはこのような水平保管タイプの保管装置に適合させた基板搬送装置が開示されている。この搬送装置は、基板の中央部を吸着保持するパッドを備えた固定アームの両側に、その固定アームとは別体の可動アームを平行に配置したものである。この搬送装置によれば、基板は自重による撓みが生じた状態で3本のアームにより保持されつつ保管装置に対して出し入れされる。これにより、保管装置内に保管された基板と出し入れ途中の基板との干渉を防ぎつつ、上下方向に関する基板の収納ピッチを小さくして収納効率を高めることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の搬送装置においては、互いに平行な3本のアームを利用して基板を支持するので、1本のアームで基板を支える従来の搬送装置に対して変更点が多く、既存の搬送装置に適用するにはその搬送装置を大きく改造する必要が生じる。
【0005】
また、基板の保管装置の左右に設けられる基板支持手段を、基板の内側に大きく突出するピン又は軸状に形成して、基板の支持位置を従来の基板支持手段よりも基板の中央部に移した場合、その基板支持手段と搬送装置の両側のアームとの干渉を避けるために両側のアームの位置を基板支持手段よりも内側に制限する必要があり、搬送装置において基板の周辺部を十分に支持できない。
【0006】
そこで、本発明は、単一のアームのみが設けられた既存の搬送装置にも簡単に適用でき、基板保管装置に設けられるピン又は軸状の基板支持手段との干渉を避けつつ基板の周辺部を十分に支持することが可能な基板搬送装置及びそのアームを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明は、基板(2)を出し入れするための開口(4)と、その開口からみて左右に配置されて前記基板をそれぞれ支持可能な基板支持手段(5)とを有し、前記基板支持手段が上下方向に複数段に亘って設けられた基板保管装置(1)に対して前記基板を出し入れするための基板搬送装置(10)において、前記基板保管装置に対して相対的に進退可能かつ昇降可能な基板支持用のアーム(13)を有し、前記アームには、当該アームの進退方向に延び、各段の前記基板支持手段同士の隙間に挿入可能な主アーム部(15)と、前記進退方向に間隔を開けた状態で前記主アーム部上に配置されてその主アーム部の両側方に均等に突出する複数の副アーム部(16)とが設けられ、前記副アーム部間には、前記基板支持手段が通過できる隙間が設けられ、前記主アーム部には前記基板を吸着する吸着パッド(21)が配置され、前記吸着パッドは、吸着面(21a)及びその吸着面に開口する吸引孔(21b)を有する弾性材料製の部材であって、該吸着パッドには、当該パッドを吸着面の裏面側から支えるばね(22)が内蔵され、吸引力を作用させて前記吸着パッドで前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置よりも前記副アーム部の両端部の非吸着型の支持部材(30)による前記基板の支持位置が高く設定され、かつそれらの支持位置の高さの差(δ)が、前記副アーム部の両端部の前記支持部材による支持位置を基点として前記基板に自重に基づく撓みを与えたときに前記吸着パッドの位置にて見込まれる撓み量以下に設定され、それにより、前記吸着パッドにて前記基板を吸着する前の状態では前記基板の撓み量が自重による撓み量よりも小さくなるように構成されていることにより、上述した課題を解決する。
【0009】
この発明によれば、主アーム部上に配置された副アーム部の両端部によって基板の両側部を十分に支持することができる。副アーム部が主アーム部上に配置されているので、単一のアームしか存在しない既存の搬送装置に対しても、その単一のアームを主アーム部として利用し、これに副アーム部を追加することで容易に本発明の搬送装置へと改造することができる。副アーム部がアームの進退方向に関して互いに間隔をおいて配置されるので、アームと基板保管装置の基板支持手段との間で基板を受け渡す際に、アームの相対的な昇降動作によって副アーム部同士の隙間を基板支持手段が通過するように基板保管装置と副アーム部とをアームの進退方向に関して互いにずらして配置することができる。これにより、基板保管装置においては基板支持手段を基板のより内側まで延ばして基板の支持状態を安定させ、基板搬送装置においては副アーム部の両端部を外側に延ばして基板の周辺部を十分に支持できる。
【0011】
前記副アーム部の両端部の支持部材における前記基板の支持位置が、前記主アーム部上における前記基板の支持位置よりも高く設定されているため、基板をその中央を下にして撓んだ状態でアームにて支持することができる。その撓み方向は基板保管装置に収納されている基板と同一方向であるため、基板を出し入れする際に、その基板が既に保管されている上下の基板と干渉するおそれが減少し、それにより基板保管装置の上下方向に関する基板の収納ピッチを小さくすることができる。
【0013】
吸着パッドにて基板を吸着する前の状態では、基板がその自重によって撓んだときよりも撓みが小さい状態でアーム上に支持される。従って、吸着パッドには基板の撓み量の不足分に相応した荷重が加わり、その荷重により基板と吸着パッドとが良好に密着する。この結果、吸着パッドにより基板を確実に吸着できる。しかも、自重による撓み量を越えて基板が撓むことによる復元力が生じない。
【0014】
前記主アーム部及び前記副アーム部に支持された前記基板の撓み形状が前記基板保管装置の各段の基板支持手段間に支持されているときの撓み形状とほぼ一致するように、前記副アーム部の両端部の前記支持部材における前記基板の支持位置と、前記主アーム部上の前記吸着パッドにて前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置との高さの差が設定されてもよい。
【0015】
この場合には、基板を出し入れする際に、その基板が既に保管されている上下の基板とほぼ同一形状で撓んでいるため、基板保管装置の各段に確保すべき上下方向のスペースを最小限に設定することができる。
【0016】
前記副アーム部の両端部の支持位置を上下方向に調整可能としてもよい。これにより、アーム上に支持される基板に適切な撓みを与えることができる。特に基板の厚さや縦弾性係数が変化した場合には撓み量が変化するが、その場合でもアームを交換することなく対応することができる。
【0017】
前記副アーム部は2本以上設けられてもよい。この場合には基板を安定して支持できかつその基板の撓みをより小さく抑えることができる。また、特に副アーム部を3本以上設けた場合には、アームの進退方向に関して基板をその両端と少なくともそれらの中間位置とで支持することができる。従って、副アーム部の間における基板の撓みを抑えることができる。
【0019】
また、本発明の基板支持用のアーム(13)は、水平方向に延びる主アーム部(15)と、前記主アーム部の長手方向に間隔を開けた状態で当該主アーム部上に配置されてその主アーム部の両側方に均等に突出する複数の副アーム部(16)とを具備し、前記主アーム部上には前記基板を吸着する吸着パッド(21)が配置され、前記副アーム部の両端には前記基板を支持する非吸着型の支持部材(30)が配置され、前記吸着パッドは、吸着面(21a)及びその吸着面に開口する吸引孔(21b)を有する弾性材料製の部材であって、該吸着パッドには、当該パッドを吸着面の裏面側から支えるばね(22)が内蔵され、前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置が、吸引力を作用させて前記吸着パッドで前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置よりも高く設定され、前記吸着パッドにて前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置と、前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置との高さの差(δ)が、前記副アーム部の前記支持部材による支持位置を基点として前記基板に自重に基づく撓みを与えたときに前記吸着パッドの位置にて見込まれる撓み量以下に設定され、それにより、前記吸着パッドにて前記基板を吸着する前の状態では前記基板の撓み量が自重による撓み量よりも小さくなる、ことを特徴とするものである。
【0020】
このアームをロボットや各種のハンドリング装置に取り付けて昇降可能かつ主アーム部の長手方向に進退可能とすることにより、本発明の基板搬送装置を構成することができる。
【0021】
なお、本発明の基板支持用アームにおいては、上述した搬送装置の好ましい態様を備えることができる。すなわち、前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置を上下方向に調整可能としてもよい。前記副アーム部は2本以上設けられてもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る基板搬送装置10を利用して、基板保管装置1に対して基板2を出し入れしている様子を示す斜視図である。なお、ここでは基板2として、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタに使用されるガラス基板を想定している。
【0023】
図2にも示したように、基板保管装置1は、複数の基板2…2を上下方向に所定の間隔で並べて保管する横型の保管装置として構成されている。基板保管装置1は概ね箱型の外郭3を有しているが、その外郭3の各面は壁によって閉じられていなくてもよい。つまり、外郭3は箱型の保管領域を規定するものであればよく、密閉性までは要しない。従って、外郭3は柱や梁を組み合わせた骨組み構造としてもよいし、平板状のパネルを組み合わせて構成してもよい。
【0024】
基板保管装置1の一面(図1では基板搬送装置10と対向する面)には、基板2を出し入れするための開口4が設けられている。また、開口4からみて基板保管装置1の内部の左右の面には、基板支持手段としての基板支持ピン5…5が上下方向に複数段に亘って設けられている。基板支持ピン5は、基板保管装置1の片面につき開口4からみて前後方向に少なくとも2列(図では3列)設けられている。つまり、基板保管装置1の各段には少なくとも4本の基板支持ピン5が存在し、基板2の両側部2a、2aはそれらの基板支持ピン5にて支持される。各基板支持ピン5の先端には円筒型のパッド6が取り付けられ、基板2はパッド6と接触して支持される。パッド6は基板2に対してすり傷等の物理的損傷を与えるおそれがなく、かつ基板2の接触に対して化学的に安定している材料にて構成される必要がある。好適にはピーク樹脂がパッド6の素材として使用される。
【0025】
以上のような基板保管装置1においては、基板2の両端部2a、2aをピン5にて支持しているだけなので、保管中の基板2は、図2に示したように自重で下に撓む。本実施形態の基板搬送装置10は、こうした撓みを考慮して基板2を支持する構造を有している。以下、基板搬送装置10の詳細を説明する。
【0026】
図1に示すように、基板搬送装置10は、基部11と、その基部11に支持された可動部12と、その可動部12に支持されたアーム13とを有している。基部11は工場の床面等に固定される。可動部12は、不図示の駆動機構により基部11に対して上下方向に駆動可能、かつ水平方向に旋回駆動可能とされる。このような基部11及び可動部12の構成は、工業用ロボットや各種のハンドリング装置において慣用されており、本実施形態の基板搬送装置10においてもそうした慣用技術を適宜採用してよい。
【0027】
アーム13は主アーム部15と副アーム部16とを有している。主アーム部15は、可動部12に対してその長手方向に移動自在に取り付けられ、不図示の直動機構によりその長手方向に往復駆動される。直動機構には例えばモータの回転をねじやチェーンによって直線運動に変換する機構、リニアモータや油圧シリンダのように直線運動を発生する機構等を用いることができる。なお、主アーム部15の直線運動の方向は水平面と平行である。
【0028】
副アーム部16…16は、主アーム部15の先端(図1において手前側)から長手方向(進退方向に相当)に沿って適宜の間隔を開けて少なくとも3本設けられる。主アーム部15及び各副アーム部16は、可動部12とともに昇降可能かつ旋回可能であるとともに、可動部12に対して長手方向に往復運動可能である。
【0029】
図3はアーム13の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。また、図4(a),(b)はアーム13の正面図である。これらの図に示すように、主アーム部15は水平方向に関してやや扁平な形状を有している。主アーム部15は、その後端部15aが不図示の直線案内機構を介して可動部12に連結される。つまり、主アーム部15は、その後端部が可動部12の先端部12a(図1参照)と一致する程度まで可動部12の前方へ突出可能である。その突出量は、図1に想像線で示すように、アーム13を基板保管装置1内の所定の受け渡し位置P1まで挿入するに十分な程度に設定される。主アーム部15の上面には適宜間隔をおいて4つの凹部15b…15bが形成され、各凹部15bには吸着パッド装置20が取り付けられている。
【0030】
吸着パッド装置20は、基板2に吸引力を作用させてこれを吸着保持する装置である。吸着パッド装置20は例えば図5に示す構成を有している。図5の吸着パッド装置20は、吸着面21a及びそこに開口する吸引孔21bを有する弾性材料性の吸着パッド21と、その吸着パッド21に内蔵されて当該パッド21を吸着面21aの裏面側から支えるコイルばね22と、装置全体の台座23とを有している。パッド21の外周は台座23と気密に接合されている。台座23には吸引孔23aが形成され、その吸引孔23aはさらに主アーム部15に形成された通気路15c(図3(a)参照)と連通する。
【0031】
主アーム部15の通気路15cは不図示の排気ブロワーと適当な開閉手段、例えば電磁弁、を介して接続されている。その電磁弁が開かれると、図5に矢印で示したように通気路15c及び吸引孔23aを介して吸着パッド21内の空気が吸引される。それにより吸着面21aとその上に載置される基板2との間に吸引力が作用して基板2がパッド21に吸着保持される。このとき、基板2から受ける負荷に応じてばね22が撓む。通気路15cと接続された電磁弁が閉じられて吸引孔23aからの吸引力が失われると、ばね22の力でパッド21が元の状態に復元し、基板2が吸着面21aから容易に離脱する。このような吸着パッド装置20は吸着面21aがばね22によって弾性的に支持されているため、フローティング構造と呼ばれることがある
【0032】
図3に示すように、主アーム部15の上面には、凹部15bに隣接して、主アーム部15の長手方向と直交する方向に延びる3本の溝15d…15dが形成されている。副アーム部16は各溝15dに嵌め合わされてその長手方向が主アーム部15と直交するように位置決めされ、さらにボルト17…17にて主アーム部15に固定される。副アーム部16は溝15dの深さとほぼ同一の厚さに形成され、それにより主アーム部15の上面と副アーム部16の上面とはほぼ面一に維持される。
【0033】
副アーム部16は主アーム部15の両側方に均等に突出する。副アーム部16の両端には、基板2を支持するための支持駒30が1個ずつ取り付けられている。基板2は、各支持駒30と上述した吸着パッド21とに接触して支持される。
【0034】
支持駒30は、一例として、図6(a)に示すように、副アーム部16の取付孔16aに差し込まれる軸部31aを有する本体31と、その本体31の上面に接合されるパッド32とを備えている。パッド32は、基板保管装置1のパッド6と同様に、基板2に対してすり傷等の物理的損傷を与えるおそれがなく、かつ基板2の接触に対して化学的に安定している材料にて構成される必要がある。好適にはピーク樹脂がパッド32の素材として使用される。
【0035】
副アーム部16には、軸部31aを任意の位置で固定するセットスクリュー33が設けられてもよい。これにより、支持駒30による基板2の支持高さを調整することができる。支持高さを調整可能とするためには、高さが異なる複数の支持駒30を用意し、求められる支持高さに応じて最適な支持駒30を選択して副アーム部16に装着するようにしてもよい。さらに、図6(b)に示すように、軸部31aを取付孔16aにねじ込む構造に変更し、両者のねじ込み量を調整して支持駒30を所望の高さに設定した後に、ナット34を締め付けて位置を固定してもよい。なお、図6(a)に示したように、パッド32の上面は、全体が一様に湾曲した形状、例えば半球面又はそれに近い形状に形成してもよい。パッド32には吸着機能を付加してもよい。但し、吸着パッド21の吸着動作に伴って基板2を円滑に撓み変形させるためにはパッド32は非吸着型とすることが望ましい。
【0036】
次に、図3及び図4を参照してアーム13の各部の寸法等を説明する。まず、図3から明らかなように、副アーム部16の全長Lは保持すべき基板2の幅Aよりも小さく設定される。一本の主アーム部15に設けるべき副アーム部16の本数は基板2の大きさに応じて適宜設定してよいが、少なくとも3本の副アーム部16を設けることが望ましい。このようにすれば、図3に示したように、主アーム部15の長手方向に関して、基板2をその両端付近とその中間とで保持できる。従って、主アーム部15の長手方向に関する基板2の撓みを中間の副アーム部16にて効果的に抑えることができる。
【0037】
主アーム部15の長手方向に関する副アーム部16の位置は、基板保管装置1の基板支持ピン5の位置を考慮して定めることができる。例えば、図7に示すように基板支持ピン5の先端が副アーム部16の両端よりも内側まで突出している場合には、アーム13を基板保管装置1内の受け渡し位置(基板支持ピン5とアーム13との間で基板2の受け渡しが行われる位置)P1まで進入させた状態において、基板支持ピン5と副アーム部16とが主アーム部15の長手方向に関して互いにずれるように副アーム部16の位置を設定すればよい。このようにすれば、基板保管装置1内の受け渡し位置P1に配置されたアーム13を上下に移動させることにより、基板支持ピン5と副アーム部16とを干渉させることなく、それらのピン5とアーム13との間で基板2を受け渡すことができる。これに対して、主アーム部15の幅Bに関しては、各段の左右の基板支持ピン5同士の間に生じる隙間Cよりも必ず小さく設定して当該隙間Cに挿入可能としておく必要がある。主アーム部15の上下動に伴うピン5との干渉を防止するためである。
【0038】
基板2の吸着パッド21による支持位置と支持駒30による支持位置とは、図4に示すように支持駒30側の支持位置が吸着パッド21による支持位置よりも高くなるように設定する。なお、ここでいう吸着パッド21の支持位置とは、吸引力を作用させた状態における支持位置をいう
【0039】
図4に示す例では、基板2がその中央を下にして撓んだ状態で保持される。図4の支持状態において、支持駒30による支持位置を基点としたときに吸着パッド21上で生じる基板2の撓み量δは、支持駒30のみで基板2を支持したときに吸着パッド21の位置にて見込まれる撓み量以下に設定する。このように設定すれば、基板2を吸着パッド21で吸着しても、基板2にはその自重で発生する撓み量を超える過剰な撓みが生じるおそれがない。また、その過剰な撓みに伴って発生する復元力によって基板2の吸着力が低下するおそれがない。また、吸着パッド21にて基板2を吸着する前の状態では基板2の撓み量が自重による撓み量よりも小さくなるから、その撓みの不足分に相当する荷重が基板2から吸着パッド21に作用する。この荷重により基板2と吸着パッド21とが確実に密着し、パッド21による吸着保持の信頼性が高まる。
【0040】
さらに、図4の例においては、基板保管装置1による保管時に生じる撓み形状と同一形状で基板2が撓むように支持駒30と吸着パッド21のそれぞれの支持位置を設定することが理想的である。このためには、左右の支持駒30の支持位置間の距離を、基板保管装置1の左右の基板支持ピン5による支持位置間の距離と一致させ、かつ基板2の撓み量δを、支持駒30のみで基板2を支持したときに吸着パッド21の位置にて見込まれる撓み量と同一に設定すればよい。
【0041】
以上のように構成された基板搬送装置10によれば、基板保管装置1の特定の段に基板2を収納する際には、その段の基板支持ピン5よりも基板2を幾らか高い位置に支持した状態でアーム13を基板保管装置1内の受け渡し位置P1まで進入させ、その後、吸着パッド21による基板2の吸着を解除しつつアーム13を下降させてアーム13から基板支持ピン5へと基板2を受け渡し、その後にアーム13を後退させて基板保管装置1から引き抜けばよい。
【0042】
反対に、基板保管装置1の特定の段から基板2を取り出す際には、その段の基板2よりも低い位置からアーム13を基板保管装置1内の受け渡し位置P1まで進入させ、その後、吸着パッド21にて基板2を吸着しつつアーム13を上方させて基板支持ピン5からアーム13へと基板2を受け渡し、その後、アーム13を後退させて基板保管装置1から引き抜けばよい。取り出した基板2は可動部12の旋回運動や昇降運動を利用して基板保管装置1とは異なる場所へと搬送することができる。なお、図7に示すように、副アーム部16の両端が基板支持ピン5よりも外側に突出している場合には、アーム13の進退時において副アーム部16の上下方向の位置を基板支持ピン5と干渉しない位置に設定する必要がある。基板支持ピン5の先端よりも副アーム部16の両端が内側(主アーム部15側)に後退しているときにはその必要はない。
【0043】
図8は、基板搬送装置10により基板2を基板保管装置1に対して出し入れする際に、その出し入れ途中の基板2Aと上下に隣接する基板2B,2Cとの関係を示す。上記の説明から明らかなように、基板搬送装置10においては、アーム13上に支持された基板2Aが、水平か又は上下に隣接して保管されている基板2B、2Cと同一方向に撓んでいる(図8は同一形状の撓みが与えられた状態である)。これに対して、従来通りに主アーム部15のみで基板2を支持した場合には、図8に想像線2′で示したように、基板2Aの撓みが上下の基板2B,2Cの撓みに対して反対となる。従って、基板2Aを出し入れする際に上下の基板2B、2Cとの間に確保されるべき隙間は、基板搬送装置10によって顕著に小さくすることができる。この結果、基板保管装置1の収納ピッチを圧縮し、それにより基板保管装置1の収納効率を最大限に確保できる。
【0044】
本実施形態の基板搬送装置10においては、主アーム部15に相当する単一のアームしか存在しない既存の搬送装置であっても、そのアームに副アーム部16相当の部品を取り付けるだけで本発明の基板搬送装置として改造できる。なお、基板搬送装置10の可動部12を駆動する際の負荷を軽減するため、主アーム部15及び副アーム部16は軽量でかつ高剛性が得られる材料にて構成することが望ましく、例えばアルミニウム又はカーボンファイバがこれらの材料として好適に選択される。
【0045】
本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の形態にて実施してよい。例えば、吸着パッド装置20や支持駒30の個数は適宜変更してよい。基板は液晶ディスプレイ用のガラス基板に限定されることなく、撓みが問題となる各種の基板の搬送装置として本発明は利用できる。本発明の基板搬送装置と組み合わされる基板保管装置は、ピンによって基板を支持するものに限定されず、例えば壁面に形成された溝に基板の側縁をはめ込んで支持するタイプの基板保管装置に対しても本発明の基板搬送装置は適用できる。基板搬送装置10においては、アーム13が基板保管装置1に対して昇降しかつ進退するものとしたが、それらの動作の一部又は全部を基板保管装置1側で実現してもよい。つまり、基板搬送装置と基板保管装置との間の動作はあくまで相対的なものでよい。
【0046】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の基板搬送装置によれば、主アーム部上に配置された副アーム部の両端部によって基板の両側部を十分に支持できるので、基板を水平又は中央が下に凹むように撓んだ状態で安定的に支持できる。しかも、副アーム部が主アーム部上に配置されているので、単一のアームしか存在しない既存の搬送装置に対しても、その単一のアームを主アーム部として利用し、これに副アーム部を追加することで容易に本発明の搬送装置へと改造することができる。副アーム部がアームの進退方向に関して互いに間隔をおいて配置されるので、アームと基板保管装置の基板支持手段との間で基板を受け渡す際に、アームの相対的な昇降動作によって副アーム部同士の隙間を基板支持手段が通過するように基板保管装置と副アーム部とをアームの進退方向に関して互いにずらして配置することができる。これにより、基板保管装置においては基板支持手段を基板のより内側まで延ばして基板の支持状態を安定させ、基板搬送装置においては副アーム部の両端部を外側に延ばして基板の周辺部を十分に支持できる。
【0047】
また、本発明のアームを利用すれば、これをロボットやハンドリング装置等に取り付けて本発明の基板搬送装置を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る搬送装置を利用して、基板保管装置に対して基板を出し入れしている様子を示す斜視図。
【図2】基板保管装置を開口側からみた正面図。
【図3】アームの詳細を示す図。
【図4】アームの正面図。
【図5】主アーム部に設けられる吸着パッド装置の断面図。
【図6】副アーム部に設けられる支持駒の取付状態を示す図。
【図7】基板保管装置の基板支持ピンを避けて副アーム部を配置した状態を示す図。
【図8】出し入れ途中の基板と、その上下に隣接して保管されている基板とを示す図。
【符号の説明】
1 基板保管装置
2 基板
2a、2a 基板の両側部
4 基板保管装置の開口
5 基板支持ピン(基板支持手段)
6 パッド
10 基板搬送装置
11 基部
12 可動部
13 アーム
15 主アーム部
16 副アーム部
20 吸着パッド装置
21 吸着パッド
21a 吸着面
22 コイルばね
30 支持駒(支持部材)
32 パッド

Claims (7)

  1. 基板を出し入れするための開口と、その開口からみて左右に配置されて前記基板をそれぞれ支持可能な基板支持手段とを有し、前記基板支持手段が上下方向に複数段に亘って設けられた基板保管装置に対して前記基板を出し入れするための基板搬送装置において、
    前記基板保管装置に対して相対的に進退可能かつ昇降可能な基板支持用のアームを有し、
    前記アームには、当該アームの進退方向に延び、各段の前記基板支持手段同士の隙間に挿入可能な主アーム部と、前記進退方向に間隔を開けた状態で前記主アーム部上に配置されてその主アーム部の両側方に均等に突出する複数の副アーム部とが設けられ、
    前記副アーム部間には、前記基板支持手段が通過できる隙間が設けられ、
    前記主アーム部には前記基板を吸着する吸着パッドが配置され、
    前記吸着パッドは、吸着面及びその吸着面に開口する吸引孔を有する弾性材料製の部材であって、該吸着パッドには、当該パッドを吸着面の裏面側から支えるばねが内蔵され、
    吸引力を作用させて前記吸着パッド前記基板吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置よりも前記副アーム部の両端部の非吸着型の支持部材による前記基板の支持位置が高く設定され、かつそれらの支持位置の高さの差が、前記副アーム部の両端部の前記支持部材による支持位置を基点として前記基板に自重に基づく撓みを与えたときに前記吸着パッドの位置にて見込まれる撓み量以下に設定され、それにより、前記吸着パッドにて前記基板を吸着する前の状態では前記基板の撓み量が自重による撓み量よりも小さくなる、
    ことを特徴とする基板搬送装置。
  2. 前記主アーム部及び前記副アーム部に支持された前記基板の撓み形状が前記基板保管装置の各段の基板支持手段間に支持されているときの撓み形状とほぼ一致するように、前記副アーム部の両端部の前記支持部材における前記基板の支持位置と、前記主アーム部上の前記吸着パッドにて前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置との高さの差が設定されていることを特徴とする請求項に記載の基板搬送装置。
  3. 前記副アーム部の両端部の支持位置を上下方向に調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板搬送装置。
  4. 前記副アーム部が2本以上設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
  5. 基板を支持するためのアームであって、
    水平方向に延びる主アーム部と、
    前記主アーム部の長手方向に間隔を開けた状態で当該主アーム部上に配置されてその主アーム部の両側方に均等に突出する複数の副アーム部とを具備し、
    前記主アーム部上には前記基板を吸着する吸着パッドが配置され、
    前記副アーム部の両端には前記基板を支持する非吸着型の支持部材が配置され、
    前記吸着パッドは、吸着面及びその吸着面に開口する吸引孔を有する弾性材料製の部材であって、該吸着パッドには、当該パッドを吸着面の裏面側から支えるばねが内蔵され、
    前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置が、吸引力を作用させて前記吸着パッド前記基板吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置よりも高く設定され、
    前記吸着パッドにて前記基板を吸着した時の当該吸着パッドによる支持位置と、前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置との高さの差が、前記副アーム部の前記支持部材による支持位置を基点として前記基板に自重に基づく撓みを与えたときに前記吸着パッドの位置にて見込まれる撓み量以下に設定され、それにより、前記吸着パッドにて前記基板を吸着する前の状態では前記基板の撓み量が自重による撓み量よりも小さくなる、ことを特徴とする基板支持用のアーム。
  6. 前記副アーム部の前記支持部材による前記基板の支持位置を上下方向に調整可能としたことを特徴とする請求項に記載の基板搬送装置。
  7. 前記副アーム部が2本以上設けられていることを特徴とする請求項 又は6に記載の基板支持用のアーム。
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