JP4066785B2 - シートのヘッドレスト - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両用シートのヘッドレストに関し、より詳しくは格納位置にあるときのヘッドレストの一部がシートバックの前側表面に重合する形式のヘッドレストに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のヘッドレストについては、例えば特許文献1に開示されている技術が既に知られている。この技術のヘッドレストは、頂面構成部と、この頂面構成部の前面側から一体に下方へ延びる前面構成部とにより構成されている。また、頂面構成部には、その下面から下方に延びる一対のステーが設けられている。両ステーの上端部は、頂面構成部の内部においてヘッドレストフレームに固定されている。そして、格納位置にあるときのヘッドレストは、その前面構成部がシートバックの前側表面に重合し、これによってヘッドレストのシートバック上部からの突出量を小さくしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−290154号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ヘッドレストを、その格納位置から使用位置に操作する場合、ステーをシートバック内から上方へ引き出し、その引き出し量によって高さを調整する。このときのヘッドレストは、格納位置からステーの軸線に沿って真っ直ぐ上方へ移動する。この結果、格納位置においてシートバックの前側表面に重合していたヘッドレストの前面構成部が、使用位置でもシートバックの前側表面から前方へ張り出した状態になる。したがって、シートバックの前側表面とヘッドレストとの間に段差が生じ、座り心地がわるくなる。
本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、使用位置にあるヘッドレスト本体の前面構成部とシートバックの前側表面とが、ほぼ面一になるようにして座り心地の向上を図ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、ヘッドレスト本体が、下部にステーを備えた頂面構成部と、この頂面構成部から前記ステーの前面側において下方へ延びる前面構成部とにより構成されたシートのヘッドレストであって、前記ヘッドレスト本体が、前記ステーをシートバック内に押し入れた格納位置にあるときは、前記前面構成部が前記シートバックの前側表面に重合する。また、前記ヘッドレスト本体が、前記ステーを前記シートバック内から上方へ引き出した使用位置にあるときは、前記前面構成部と前記シートバックの前側表面とが、ほぼ面一になるように構成されている。
これにより、ヘッドレスト本体を例えば後部シートに用いた場合、格納位置にあるときのヘッドレスト本体は、前部シートからの後方視野の妨げにならず、また後部シートのシートバックを前へ倒したときでも、前部シートとの干渉を解消できる。特に重要な点は、ヘッドレスト本体が使用位置にあるとき、その前面構成部とシートバックの前側表面とはほぼ面一になるので、シートバックとヘッドレスト本体との間の段差がなくなり、座り心地が向上する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたシートのヘッドレストであって、ヘッドレスト本体は、その前面構成部がシートバックの前後方向へ移動するように、ステーに対して回動可能に構成されている。
したがって、ヘッドレスト本体がステーに対して回動するだけで、このヘッドレスト本体が格納位置あるいは使用位置におけるそれぞれの姿勢に対応できる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されたシートのヘッドレストであって、ステーとヘッドレスト本体内のフレームとが所定角度の範囲を回動できるように結合され、かつこのフレームは、前記ヘッドレスト本体の前面構成部を常にシートバックの後方向へ移動させるように付勢されている。
この付勢により、特にヘッドレスト本体を格納位置から使用位置に操作する場合、ステーをシートバック内から上方へ引き出すだけで、ヘッドレスト本体の前面構成部が、シートバックの前側表面に重合した状態からほぼ面一の状態に自動的に変化する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載されたシートのヘッドレストであって、シートバックの上部に窪み部が設けられており、ヘッドレスト本体が格納位置にあるときは、その頂面構成部が前記窪み部にはまり込み、ヘッドレスト本体が使用位置にあるときは、その前面構成部の下部が前記窪み部に嵌り込むようになっている。
これにより、格納位置にあるヘッドレスト本体は、シートバックの上部からほとんど突出せず、またヘッドレスト本体が使用位置にあるときは、シートバックの窪み部が前面構成部で隠されて外観を保つことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、車両用シートを表した外観斜視図である。図2は、同じく車両用シートを一部断面で表した側面図である。シートは、シートクッション10とシートバック12とによって構成されており、シートバック12はヘッドレスト(ヘッドレスト本体14)を備えている。ヘッドレスト本体14は、図面の実線で示す使用位置あるいは仮想線で示す格納位置に昇降移動させることができる。
【0010】
ヘッドレスト本体14が格納位置にあるとき、その一部(後述する前面構成部14B)がシートバック12の前側表面12aに重合するようになっている。また、シートバック12の上部12b中央には、ヘッドレスト本体14の幅とほぼ同じ寸法の窪み部12cがある。この窪み部12cに、格納位置にあるヘッドレスト本体14の一部(後述する頂面構成部14A)がはまり込み、ヘッドレスト本体14がシートバック12の上部12bから突出しないようになっている。
【0011】
図3は、ヘッドレストのみを拡大して表した断面図である。図4は、ヘッドレストの内部構造を表した斜視図である。これらの図面で明らかなようにヘッドレスト本体14は、ヘッドレストパッド15によって一体に成形されている。このヘッドレストパッド15は、ウレタン樹脂などを成形型内で発泡成形することによって成形される。そして、ヘッドレスト本体14は、その上部を構成する頂面構成部14Aと、頂面構成部14Aの前側からほぼ直角に下方へ延長された前面構成部14Bとで構成されている。
【0012】
図2からも明らかなように、ヘッドレスト本体14は、シートバック12に対し、ヘッドレストステー24によって高さ調整可能に支持されている。つまり、ヘッドレスト本体14が図1,2の実線で示す使用位置にあるとき、ステー24はシートバック12における窪み部12cの箇所から上方へ引き出され、その引き出し量によってヘッドレスト本体14の上下位置が調整される。またヘッドレスト本体14が図1,2の仮想線で示す格納位置にあるとき、ステー24は窪み部12cの箇所からシートバック12内に押し入れられている。
【0013】
ヘッドレスト本体14(前面構成部14B)の内部には、ヘッドレストステー24とは別体のヘッドレストフレーム16が位置している。このフレーム16とステー24とは、個々のブラケット18,26によって回動可能に結合されている。そこで、フレーム16とステー24との結合構造について説明する。
【0014】
図5は、ヘッドレストフレーム16とヘッドレストステー24とを分離させた状態の斜視図である。図3〜図5から明らかなように、ヘッドレストフレーム16は、パイプ材を矩形の枠状に形成したもので、その上部中央にブラケット18が固定されている。このブラケット18は、フレーム16に固定(溶接)された部分の両側から一対の板片が突出した形状をしている。このブラケット18の両側には、下向きに開放された軸支部18aがそれぞれ形成されている。両軸支部18aにおける開放部の両側は、次に説明するブラケット26のストッパー26b,26cに受け止められる端面18b,18cとなっている。
【0015】
ヘッドレストステー24は、パイプ材を門型に形成したもので、その上部中央にブラケット26が固定されている。このブラケット26は、その全体形状が矩形枠状をしており、枠の一辺に相当する部分がステー24に固定(溶接)されている。このブラケット26の両側にも、下向きに開放された軸支部26aがそれぞれ形成されている。また、ブラケット26は、軸支部26aを挟んで相対応する箇所において、ブラケット18の端面18b,18cを受け止めるためのストッパー26b,26cを備えている。
【0016】
ブラケット18,26を回動可能に結合するための支持軸20は、大径部20aの両端部に小径部20bを備えた形状になっている。大径部20aの軸上にはコイル状のトーションバネ22が組み付けられる。また、小径部20bはブラケット18,26の軸支部18a,26aに入り込むことが可能な外径に設定されている。なお、トーションバネ22の両端部22a,22bは、コイルの外方向へそれぞれ延びている。
【0017】
両ブラケット18,26は、ブラケット18を内側にし、かつ相互の軸支部18a,26aを一致させた状態で組み付けられる。これらの軸支部18a,26aに対し、トーションバネ22が組み付けられた支持軸20の小径部20bを、軸支部18a,26aの開放側(下側)から入れ、かつトーションバネ22の両端部22a,22bをブラケット18,26の上面に個別に係合させる。
【0018】
これにより、ブラケット18,26が支持軸20の軸線回りに回動できるように結合され、かつこれらのブラケット18,26の間には、トーションバネ22によって回動方向への付勢力が働いている。この付勢力が働いているとき、図3の実線で示すように、ブラケット18における一方の端面18bが、ブラケット26のストッパー26bに接触して受け止められている。結果として、ブラケット18における他方の端面18cは、ブラケット26のストッパー26cから離れている。つまり、トーションバネ22は、ヘッドレスト本体14を図3における反時計回り方向へ付勢している。
【0019】
このような構成において、図1,2の仮想線で示すようにヘッドレスト本体14が格納位置にあるとき、頂面構成部14Aがシートバック12の窪み部12cに嵌り込んでいる。また、前面構成部14Bはシートバック12の前側表面12aに重合している。ヘッドレスト本体14が格納位置にあるときは、この格納位置と対応する状態を表した図3の仮想線で明らかなように、ブラケット18の端面18cがブラケット26のストッパー26cに受け止められている。
【0020】
格納位置にあるヘッドレスト本体14は、シートバック12の上部12bと同じ高さに収まっている。したがって、ヘッドレスト本体14が前部シートからの後方視野の妨げにならず、またシートバック12を前へ倒したときに、ヘッドレスト本体14が前部シートと干渉することも解消される。
【0021】
図1,2の実線で示すようにヘッドレスト本体14が使用位置にあるとき、前面構成部14Bがシートバック12の前側表面12aから離れる。このため、ヘッドレスト本体14はトーションバネ22の付勢力により、図3の仮想線で示す状態から実線で示す状態に回動する。このときの回動位置は、ブラケット18の端面18bがブラケット26のストッパー26bに受け止められることで規制される。
【0022】
使用位置にあるヘッドレスト本体14は、トーションバネ22の付勢力による回動により、前面構成部14Bがシートバック12の前側表面12aに対し、ほぼ面一になる。このとき、前面構成部14Bの下部がシートバック12の窪み部12cに対し、上下および左右ともに隙間なく入り込んでいる。したがって、シートバック12とヘッドレスト本体14との間の段差がなくなり、座り心地が向上する。また、ヘッドレスト本体14が使用位置にあっても、その前面構成部14Bによって窪み部12cが隠されることから、外観が良好に保たれる。
【0023】
この種のシートは、軽量化や低コストを実現するために小型であり、シートバック12の高さも低く抑えられている。しかし、ヘッドレスト本体14を使用位置に操作したときは、低いシートバック12の前側表面12aを、これと一連に続くヘッドレスト本体14の前面構成部14Bで補うことになり、シートバック12の低さを感じさせない座り心地が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用シートを表した外観斜視図
【図2】車両用シートを一部断面で表した側面図
【図3】ヘッドレストのみを拡大して表した断面図
【図4】ヘッドレストの内部構造を表した斜視図
【図5】ヘッドレストフレームとヘッドレストステーとを分離させた状態の斜視図
【符号の説明】
12 シートバック
12a 前側表面
12b 上部
12c 窪み部
14 ヘッドレスト本体
14A 頂面構成部
14B 前面構成部
16 フレーム(ヘッドレストフレーム)
24 ステー(ヘッドレストステー)
Claims (4)
- ヘッドレスト本体が、下部にステーを備えた頂面構成部と、この頂面構成部から前記ステーの前面側において下方へ延びる前面構成部とにより構成されたシートのヘッドレストであって、
前記ヘッドレスト本体が、前記ステーをシートバック内に押し入れた格納位置にあるときは、前記前面構成部が前記シートバックの前側表面に重合し、前記ヘッドレスト本体が、前記ステーを前記シートバック内から上方へ引き出した使用位置にあるときは、前記前面構成部と前記シートバックの前側表面とが、ほぼ面一になるように構成されているシートのヘッドレスト。 - 請求項1に記載されたシートのヘッドレストであって、
ヘッドレスト本体は、その前面構成部がシートバックの前後方向へ移動するように、ステーに対して回動可能に構成されているシートのヘッドレスト。 - 請求項2に記載されたシートのヘッドレストであって、
ステーとヘッドレスト本体内のフレームとが所定角度の範囲を回動できるように結合され、かつこのフレームは、前記ヘッドレスト本体の前面構成部を常にシートバックの後方向へ移動させるように付勢されているシートのヘッドレスト。 - 請求項1に記載されたシートのヘッドレストであって、
シートバックの上部に窪み部が設けられており、ヘッドレスト本体が格納位置にあるときは、その頂面構成部が前記窪み部に嵌り込み、ヘッドレスト本体が使用位置にあるときは、その前面構成部の下部が前記窪み部に嵌り込むようになっているシートのヘッドレスト。
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