JP4063658B2 - 固体電解質型炭酸ガスセンサ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雰囲気中の炭酸ガス濃度を測定するための固体電解質型炭酸ガスセンサ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住環境、特に室内環境に対する関心が高まっており、例えば室内の炭酸ガス濃度をモニタリングし、炭酸ガス濃度が高くなった場合に自動的に換気を行なうような炭酸ガスセンサ素子を搭載した空気清浄装置が開発されている。また、公害防止或いはその対策の観点から、環境中の炭酸ガス濃度変化を常時測定するいわゆる環境測定の重要性も高まっている。これら空気清浄装置等の制御装置或いは警報装置、または環境測定装置などに組み込まれる炭酸ガスセンサ素子としては、ガス選択性が高く小型化が容易で作動条件が広く、更に保守性に優れるという特長を有する固体電解質型炭酸ガスセンサ素子が適している。
【0003】
固体電解質型炭酸ガスセンサ素子は、一般に、(a)イオン伝導体である“固体電解質層”に、(b)電子伝導物質、及び被測定ガスである炭酸ガスとの平衡反応を引き起こすことができる物質として金属炭酸塩を含む“作用電極”、並びに(c)電子伝導物質を含む“参照電極”が接合された基本構造を有している。このような炭酸ガスセンサ素子においては、付属するヒータによって450℃〜600℃の一定温度に加熱された状態で被測定ガスを含む雰囲気中に放置されると、作用電極層に含まれる金属炭酸塩と被測定ガスである炭酸ガスとの間で解離平衡反応が平衡に達するまで進行して作用電極層付近で固体電解質層の可動イオン濃度に変化が生じ、結果として固体電解質層を介して作用電極層と参照電極層との間に被測定ガス濃度に応じたある一定の起電力が正確に発生するので、該起電力を測定することによって被測定ガス濃度を知ることができる。
【0004】
従来、一般的に知られている固体電解質型炭酸ガスセンサ素子においては、固体電解質層を形成する固体電解質としてNASICON(Na1+AZr2SiAP3−AO12、但し0≦A≦3)、β−Al2O3等のナトリウムイオン伝導性物質やLi2TiSiO5、LiTi2(PO4)3等のリチウムイオン伝導性物質などが、作用電極および参照電極に含まれる電子伝導物質(該物質は起電力を検出するために必要な物質である)としては、金や白金など耐熱、耐酸化性に優れた貴金属材料が、更に作用電極に含まれる金属炭酸塩としてはアルカリ金属炭酸塩やアルカリ土類金属炭酸塩が一般に用いられている。
【0005】
しかし、上記の金属炭酸塩としてアルカリ金属炭酸塩やアルカリ土類金属炭酸塩を用いた固体電解質型炭酸ガスセンサは、加熱を中断して作動を止めた状態で高湿度雰囲気や結露雰囲気などのように水分濃度の高い雰囲気中に放置されると、その後再び作動を開始した時に起電力が放置前の値に比べて著しく低下する(以下、このような現象が起こり易いことを非加熱時耐湿性が低いともいう。)という問題を有していた。
【0006】
このような問題点を解決する方法として、作用電極に希土類金属の炭酸酸化物を添加する方法が知られており(特許文献1参照)、作用極にLa2O2CO3、Nd2O2CO3等の希土類金属の炭酸酸化物を添加することにより、非加熱の状態で高湿度の雰囲気中に長時間放置しても起電力が放置前と殆ど変化しないようにすることが出来、しかも作動開始から起電力が安定するまでの時間を2時間以内とすることが可能となっている。
【0007】
さらに、作用電極にUSY、ZSM−5などのゼオライトを添加する方法(特許文献2参照)、および作用電極にLa2O3、Nd2O3等の希土類金属酸化物とゼオライトを添加する方法(特許文献3参照)においても、上記と同様の効果が得られている。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−153576号公報
【特許文献2】
特開平11−174024号公報
【特許文献3】
特開平11−271261号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、固体電解質型炭酸ガスセンサにおいては、上記非加熱時耐湿性の問題とは別に、省エネルギーの観点から、作動温度を低減することが望まれている。作動温度を低減することで消費電力が少なくなり、センサの部品点数削減によるコストダウンや、動力源を商用電源から乾電池に変換することが可能になる。
【0010】
ところが、上記刊行物に開示されている固体電解質型炭酸ガスセンサにおいては非加熱時耐湿性の問題は良好に解決されているものの、その作動温度は従来の固体電解質型炭酸ガスセンサと同様であり、必ずしも満足のいくものではなかった。例えば、作動温度を200℃〜300℃の低温域に設定すると、感度が低下し今一歩信頼性のある測定を行なうことは困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、動作温度がこれまでよりも低い温度、特に200℃〜300℃という温度域でも、炭酸ガス濃度を精度よく計測できる固体電解質型炭酸ガスセンサを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、固体電解質層表面に形成される作用電極に特定の化合物を添加した場合には、上記の要求性能を全て満足する固体電解質型炭酸ガスセンサが得られることを見出し、本発明を提案するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、固体電解質層表面に、電子伝導物質と金属炭酸塩とを含む作用電極層及び電子伝導物質を含む参照電極層が形成されてなる固体電解質型炭酸ガスセンサ素子において、該作用電極層が希土類元素の炭酸酸化物とゼオライトとを含むことを特徴とする固体電解質型炭酸ガスセンサ素子である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の固体電解質型炭酸ガスセンサ素子の構成について詳細に説明する。
【0015】
本発明の固体電解質型炭酸ガスセンサ素子においては、希土類元素の炭酸酸化物とゼオライトとを含有する作用電極を使用することが重要である。これら両物質を併用し、これらを相乗的に作用させることにより、本発明の固体電解質型炭酸ガスセンサ素子では、作動温度が200〜300℃の低温域でも高い感度で精度良く炭酸ガス濃度を測定することができる。作用電極層がこれらの物質のどちらか一方でも含まない場合に作動温度を300℃以下にすると、十分な感度が得られなくなり炭酸ガス濃度の計測の正確性が大きく低下する。また、希土類金属酸化物とゼオライトとを含有させた場合も同様である。さらに、両物質とも含有しない場合は、高湿度環境下で非加熱の状態で放置されると起電力の値が放置前と比較して著しく低下してしまう。
【0016】
本発明で使用する希土類元素の炭酸酸化物とは、R2O2CO3、R2O(CO3)2及びその水和物(R2O(CO3)2・xH2O(xは0より大きい任意の数))、RAOL(CO3)M(OH)T(A、L、M、Tは任意の整数)等の一般式で表される炭酸酸化物を意味する。ここでRは希土類金属元素であり、Sc;Y;及びLa、Ce、Pr、Nd、Pm等原子番号57〜71のランタノイドを挙げることができる。
【0017】
上記一般式で表わされる希土類元素の炭酸酸化物のうち、希土類元素がランタノイドである希土類元素の炭酸酸化物が、固体電解質型炭酸ガスセンサ素子の作動開始から起電力が安定化するまでの時間短縮の点で好ましく、特に希土類元素がLa、Ndである希土類元素の炭酸酸化物が好ましい。
【0018】
また、希土類元素の炭酸酸化物の中でも、R2O2CO3、R2O(CO3)2、で表される希土類元素の炭酸酸化物が、高湿度環境下での作動開始から起電力が安定化するまでの時間短縮の点で好ましい。特に、R2O2CO3を用いるのが最も好ましい。
【0019】
作用電極層中の希土類元素の炭酸酸化物の含有量は特に制限されないが、作用電極の全重量100重量%中に占める割合で0.5〜80重量%であることが好ましく、特に1〜60重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明において使用されるゼオライトは、公知のものが何ら制限なく用いられる。例えば、A型、X型、Y型、USY、ZSM−5などに加え、これらのゼオライトに含まれる陽イオンを他の陽イオンと交換したものを挙げることができる。
上記のゼオライトのうち、Na+を含むUSY(以下、Na−USYと略す。)およびNa−USYに含まれるNa+を、Li+やK+で置き換えたもの、或いはZSM−5が本発明の効果をより発揮しやすいことから好ましく、特にNa−USYに含まれるNa+をLi+で置き換えたもの(以下、Li−USYと略す。)およびZSM−5が最も好ましい。
【0021】
ゼオライトに含まれる陽イオンを他の陽イオンと交換する方法は特に制限されるものではないが、代表的な方法を例示すると、イオン交換される前のゼオライト粉末を、交換しようとする陽イオンを含んだ水溶液中に浸漬、攪拌した後、乾燥、焼成する方法を挙げることができる。
本発明において、ゼオライトに含まれる陽イオンが他の陽イオンに交換される割合は特に制限されるものではないが、本発明の効果をより発揮させるためには、交換前の陽イオン100%に対して、70%以上が交換されることが好ましい。
【0022】
作用電極層中のゼオライトの含有量は特に制限されないが、作用電極の全重量100重量%中に占める割合で0.1〜8重量%であることが好ましく、特に0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0023】
本発明において、作用電極層に含まれる金属炭酸塩は、炭酸ガスが含まれる雰囲気中で、炭酸ガスとの平衡反応を引き起こすことができるものであり、公知の材料が制限なく使用される。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩およびこれらの混合物、もしくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩およびこれらの混合物などが採用されるが、炭酸ガスとの平衡反応を起こしやすいことからアルカリ金属炭酸塩、特に、炭酸ナトリウムや炭酸リチウムを用いることが好ましい。
【0024】
希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトと、金属炭酸塩との組み合わせは特に制限されないが、希土類元素がランタノイドである希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトのUSYと、アルカリ金属炭酸塩との組み合わせが、高湿度環境下での作動開始から起電力が安定化するまでの時間短縮の点で好ましく、特に、炭酸酸化ランタンもしくは炭酸酸化ネオジムおよびゼオライトのLi−USYと、炭酸ナトリウムもしくは炭酸リチウムとの組み合わせが好ましい。
【0025】
作用電極層中の金属炭酸塩の含有量は特に制限されないが、作用電極の全重量100重量%中に占める割合で1〜70重量%であることが好ましく、特に5〜50重量%であることが連続使用時におけるセンサ素子の起電力のふらつきを少なくすることから好ましい。
【0026】
本発明において、作用電極層に含まれる電子伝導物質は、後述する参照電極層に含まれる電子伝導物質と同様に、センサ素子の起電力を出力するために必要な物質であり、公知の材料が制限なく使用される。例えば、白金、金、パラジウム、銀などの貴金属元素およびこれらの合金、もしくは上記の貴金属元素の2種類以上を混合したものが採用されるが、特に、白金、金およびこれらの混合物や合金が耐腐食性に優れていることから好適である。
【0027】
作用電極層中の電子伝導物質の含有量は特に制限されないが、作用電極の全重量100重量%中に占める割合で10〜95重量%であることが好ましく、特に25〜90重量%であることが好ましい。
【0028】
本発明において、電子伝導物質、金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトを含む作用電極層の構造は、特に制限されるものではない。代表的な構造を例示すると、電子伝導物質、金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトが固体電解質層表面に層状に積み重なる構造、作用電極層の電子伝導物質中に金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトが分散して存在する構造、固体電解質層表面に形成された金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトの混合物層の一部又は全部を電子伝導物質が被覆する構造などが挙げられるが、特に、電子伝導物質中に金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトが分散して存在する構造が作用電極層を簡便に形成できることから好ましい。
【0029】
上記の作用電極層の形成方法としては、公知の方法が特に制限なく使用される。例えば、上記の電子伝導物質、金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトを単独で、もしくは混合した後に溶媒およびバインダーと混練してペースト化し、該ペーストをスクリーン印刷法などによって固体電解質表面に焼き付ける方法、電子伝導物質、金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトをスパッタリングや蒸着などの薄膜形成技術によって形成する方法が好適に採用される。
【0030】
作用電極層の厚みは特に制限されないが、一般には0.001〜0.03mmの範囲から採用される。
【0031】
本発明において、参照電極層に含まれる電子伝導物質は、前述の作用電極層に含まれる電子伝導物質と同様に、センサ素子の起電力を出力するために必要な物質であり、公知の材料が制限なく使用される。例えば、白金、金、パラジウム、銀などの貴金属元素およびこれらの合金、もしくは上記の貴金属元素の2種類以上を混合したものが採用されるが、特に、白金、金およびこれらの混合物や合金が耐腐食性に優れていることから好適である。
【0032】
上記の参照電極層の形成方法としては、公知の方法が特に制限なく使用される。例えば、既述の作用電極層の製造方法で示したような方法を用いることができる。
【0033】
参照電極層の厚みは特に制限されないが、一般には0.001〜0.03mmの範囲から採用される。
【0034】
本発明において、上記作用電極層および参照電極層の配置は、作用電極層および参照電極層が固体電解質層に接触していれば、特に制限されない。例えば、固体電解質層の片方の表面に作用電極層、他方の面に参照電極層が形成されている構造を有するもの、固体電解質の片方の表面に作用電極層と参照電極層の両層が一定の距離をおいて形成されている構造を有するものでも良い。
【0035】
本発明において、固体電解質層には、公知の固体電解質が制限なく使用される。例えば、前述のNASICON、β―Al2O3などが挙げられる。
【0036】
固体電解質層の形成方法は、公知の方法が特に制限なく採用される。代表的な形成方法としては、固体電解質の合成原料を焼成し、成形した後に加熱する方法、固体電解質の合成原料を成型した後、焼結する方法、及び、固体電解質の合成原料を溶媒およびバインダーと混練してペースト化し、該ペーストをスクリーン印刷法などによってセラミックスやガラスの基板上に印刷して焼き付ける方法などが挙げられる。
【0037】
固体電解質層の厚みは特に制限されないが、一般には0.02mm〜2.0mmの範囲から採用される。
【0038】
固体電解質型炭酸ガスセンサ素子は、金属炭酸塩と炭酸ガスとの間で解離平衡反応を起こさせるため、通常400℃〜600℃の一定温度に加熱して使用される。本発明においては、それよりも低い200℃〜400℃未満の一定温度で使用しても、高い感度で精度良く測定を行うことができる。特に、200℃〜300℃の温度で使用した場合において、より顕著に効果が発揮される。上記センサ素子を加熱する方法としては、センサ素子の外部の熱源からの加熱によっても良いし、ヒータが形成されたセラミックスやガラス基板をセンサ素子に接合し、該ヒータに直流または交流電圧を印加して加熱してもよい。センサ素子に接合するヒータの装着位置は、参照電極層の上のように、センサ素子の作動を阻害しない位置であれば特に制限されない。
【0039】
【実施例】
本発明を具体的に説明するために以下の実施例を挙げて説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
(1)起電力と感度の作動温度依存性試験方法
固体電解質型炭酸ガスセンサ素子を作製した直後に炭酸ガス濃度が自由に制御できるチャンバー内に入れ、電源よりヒータに直流電圧を印加することで素子を作動温度の200℃に加熱し、センサ素子を該温度に保持したまま、チャンバー内の炭酸ガス濃度を350ppmに調整して起電力を測定した。次いで、チャンバー内の炭酸ガス濃度を2000ppmに調整し、同一温度で起電力を測定した。その後、素子温度(作動温度)を300℃、及び450℃に上げて、各温度で同様にして350ppm及び2000ppmにおける起電力を測定した。また、各温度における350ppmのときと2000ppmの時の起電力差を求め、この値を各作動温度における感度とした。
(2)非加熱時耐湿性試験方法
上記(1)の試験の測定後直ちに、固体電解質型炭酸ガスセンサ素子を炭酸ガス濃度が自由に制御できるチャンバー内に入れ、電源よりヒータに直流電圧を印加することで素子を450℃に加熱し、センサ素子の温度を450℃に保持したまま、チャンバー内の炭酸ガス濃度を350ppmおよび2000ppmに調整し、それぞれの濃度での起電力を測定して、これを初期の起電力とした。また、350ppmの時の起電力値と2000ppmの時の起電力値との差を求め、これを素子温度450℃における初期の感度とした。素子温度450℃時における初期感度を測定後、センサ素子をチャンバー内から取り出し、これを温度60℃、湿度90%に保持された恒温槽内に入れて、非加熱の状態で7日間放置した後に恒温槽から取り出し、素子温度が450℃時における350ppmと2000ppmにおける起電力(試験後起電力)を同様にして測定し、感度(試験後感度)を算出した。
【0040】
実施例1〜6
固体電解質型炭酸ガスセンサとして、図1に示されるような断面構造を有する素子を作製した。この固体電解質型ガスセンサ素子は、固体電解質層2の片面に作用電極層1が、反対面に参照電極層3が形成され、参照電極層3の上にはセラミックス板4が接着剤5によって接合されたものであった。さらに、参照電極層3が接合している面とは反対側のセラミックス板4の表面にはヒータ6が形成されおり、電源7から電気の供給を受けるものであった。また、作用電極層1および参照電極層3からはリード線が引き出されており、電圧計8に接続して起電力が測定されるものであった。
【0041】
固体電解質層2を形成するための固体電解質粉末は、ケイ酸ジルコニウムとリン酸ナトリウムをNa3Zr2SiPO12の組成になるように混合し、1100℃の大気雰囲気で6時間、焼成することによって得た。
【0042】
固体電解質層2は、上記固体電解質粉末を一軸成形後、1200℃の大気雰囲気で10時間焼結して円盤状のペレットとした。
【0043】
作用電極層は、5重量%エチルセルロースを溶解したテルピネオールに、電子伝導物質としての金粉末、金属炭酸塩、希土類元素の炭酸酸化物およびゼオライトを表1に示す割合で混練してペーストとし、これを上記固体電解質層の片面にスクリーン印刷、乾燥、650℃の大気中で30分焼成して形成した。このようにして、膜厚が0.015mmの作用電極層を得た。
【0044】
希土類元素の炭酸酸化物は、該希土類元素の金属炭酸塩であるLa2(CO3)3またはNd2(CO3)3を700℃の大気中で30分焼成することによって得た。
ゼオライトのうち、Li−USYは、Na−USYを25℃の硝酸リチウム水溶液中で12時間攪拌して水洗した後、500℃の大気中で8時間焼成することによって得た。この処理により、Na−USY中のNa+の90%がLi+に交換されたLi−USYが得られていることが、蛍光X線分析装置によって確認された。
【0045】
他の材料は、市販のものをそのまま用いた。
【0046】
参照電極層は、電子伝導物質としての金粉末と、5重量%エチルセルロースを溶解したテルピネオールとを混練してペーストとし、これを上記固体電解質層の作用電極層を形成した面とは反対の表面にスクリーン印刷、乾燥、650℃の大気中で30分焼成して形成した。このようにして、膜厚が0.015mmの参照電極層を得た。
【0047】
上記の参照電極層の上には、市販の白金ペーストでスクリーン印刷法によって形成した白金ヒータを搭載するアルミナ基板を、ヒータが形成されていない面が接合面になるようにガラスよりなる接着剤で接合した。
【0048】
以上の方法によって作製した固体電解質型炭酸ガスセンサ素子に対し、作動温度依存性試験および非加熱時耐湿性試験を行った。その結果を表2に示した。
【0049】
比較例7〜15
比較例7〜15の固体電解質型炭酸ガスセンサ素子は、作用電極層の構成成分を表1に示す割合とした他は、実施例1〜6と同様の方法で作製した。
【0050】
作製したセンサ素子に対し、作動温度依存性試験および非加熱時耐湿性試験を行い、その結果を表2に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型炭酸ガスセンサ素子は、加熱されて一定の温度に保たれた条件下で被検出ガスである炭酸ガスを含み得る雰囲気下に放置することによって使用され、被測定ガス濃度に応じて発生する起電力に基づいて雰囲気中の炭酸ガス濃度を測定することができる。そして、作用電極層に希土類金属元素の炭酸酸化物とゼオライトとを含むことにより、非加熱時耐湿性が高いばかりでなく、動作温度を300℃程度の低温域に下げても高精度での計測が可能である。
このため、省エネルギー運転が求められる炭酸ガスセンサ素子として特に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、固体電解質型炭酸ガスセンサ素子の代表的な態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1.作用電極層
2.固体電解質層
3.参照電極層
4.セラミックス板
5.接着剤
6.ヒータ
7.電源
8.電圧計
Claims (1)
- 固体電解質層表面に、電子伝導物質と金属炭酸塩とを含む作用電極層及び電子伝導物質を含む参照電極層が形成されてなる固体電解質型炭酸ガスセンサ素子において、該作用電極層が希土類元素の炭酸酸化物とゼオライトとを含むことを特徴とする固体電解質型炭酸ガスセンサ素子。
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