JP4063118B2 - 接着性ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高飽和ニトリルゴムを含む接着性ゴム組成物、および、該ゴム組成物を塗布して加熱した繊維または金属とゴムとの複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムと繊維との複合体は、ベルトやゴムホース、ダイアフラムなどの多くの分野で使用されている。ゴム繊維複合体ベルトの分野では、タイミングベルト、ポリリブドベルト、ラップドベルト、Vベルト、工業用コンベアベルト、産業機器等の送り用平ベルトおよび各種機器における伝達ベルト等があり、通常、基材の織布とゴムとが貼り合わさった複合体として形成されている。これらのゴム層には、近年、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(以下、「ニトリルゴム」と記すことがある。)の持つ炭素−炭素二重結合を水素化した高飽和ニトリルゴムが耐熱性と耐油性とに優れるので使用されるようになっている。
【0003】
上記ゴム繊維複合体には、歯車との噛み合いによる摩耗を軽減するために、また、基材の織布と高飽和ニトリルゴムとの接着力を高めるために、ゴムを有機溶剤に溶解させた溶剤系ゴム糊を織布に塗布して加熱する処理が施されてきたが、最近は、有機溶剤による環境汚染を防止する観点等から水系ゴム糊での処理技術が要求されるようになった。
水系ゴム糊としては、高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着剤組成物が提案された(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着性ゴム組成物で処理した繊維は、溶剤系ゴム糊で処理した繊維と比較して、耐摩耗性が必ずしも十分ではなかった。
これに対して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂と芳香族系エポキシ樹脂とを配合してなる接着性ゴム組成物が提案された(特許文献3参照)。その結果、耐油性、耐熱性および耐摩耗性に優れたゴム繊維複合体を、有機溶剤による環境汚染を懸念することなく製造できるようになった。しかしながら、要求水準が高くなって、ゴム繊維複合体ベルトには、今や、耐熱性及び耐摩耗性のなお一層の向上が求められている。
【0004】
一方、ゴム糊を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板や、ゴム糊を金属板に塗布して加熱し、得られた被膜にゴムを積層してなるゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性などに優れたガスケット、ゴムライニング金属部品などとして使用されている。しかし、これらのゴム被覆金属板やゴム金属複合体に対しても堅牢性、耐摩耗性等の向上が要請されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−248879号公報
【特許文献2】
特開平3−167239号公報
【特許文献3】
特開平8−333564号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、ゴム繊維複合体に優れた耐熱性および耐摩耗性を付与することができる、水系の接着性ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該ゴム組成物を用いてなるゴム繊維複合体を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記ゴム組成物を金属やゴム金属複合体に適用することにより、優れた堅牢性および耐摩耗性を有するゴム被覆金属板およびゴム金属複合体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アミノ基及び/又はイミノ基含有単量体単位を特定量有し、かつ、水素添加率が特定値以上であり、特定の溶媒不溶解分を特定量含有する高飽和ニトリルゴムラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合してなる接着性ゴム組成物が、上記目的を達することを見出し、さらに広く検討して得た知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、以下1〜4の発明がそれぞれ提供される。
1. ニトリルゴムラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合してなる接着性ゴム組成物であって、
前記ニトリルゴムが、アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体単位を0.1〜10重量%含有し、
その炭素−炭素二重結合の60%以上が水素添加されており、かつ、
メチルエチルケトン不溶解分を30〜95重量%含有するものである接着性ゴム組成物。
2. 上記1記載の接着性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴムを積層してなるゴム繊維複合体。
3. 上記1記載の接着性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板。
4. 上記3記載のゴム被覆金属板のゴム被膜に、ゴムを積層してなるゴム金属複合体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の接着性ゴム組成物は、ニトリルゴムラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合してなり、前記ニトリルゴムが、アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体単位を0.1〜10重量%含有し、その炭素−炭素二重結合の60%以上が水素添加されており、かつ、メチルエチルケトン不溶解分を30〜95重量%含有するものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の接着性ゴム組成物の中のニトリルゴムラテックスは、ゴム分子中の炭素−炭素二重結合の60%以上が水素添加されたニトリルゴム(以下、「アミノ基等含有高飽和ニトリルゴム」と記すことがある。)のラテックスである。水素添加される前のニトリルゴム(以下、「ベースニトリルゴム」と記すことがある。)は、アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体、共役ジエン単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体並びに必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体を、共重合することによって得られる。
ベースニトリルゴム中の各単量体単位の構成比率は、アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体単位が、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、より好ましくは1〜2重量%;共役ジエン単量体単位が、通常、20〜90重量%、好ましくは35〜80重量%、より好ましくは45〜75重量%;α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位が、通常、8〜60重量%、好ましくは15〜58重量%、より好ましくは23〜53重量%;および、必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体の単位が、通常、0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%である。
【0011】
アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体は、具体的には下記一般式〔1〕、〔2〕又は〔3〕で表わされる化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R1 およびR2 は水素、塩素、臭素又は炭素数1〜12のアルキル基;R3 は水素又は炭素数1〜4のアルキル基;R4 は水素又は炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基;R5 は水素又は炭素数1〜4のアルキル基;Xは下記一般式〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕又は〔8〕を表わす。ただし、nは1〜8の整数である。
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
一般式〔1〕で表わされる化合物の例としては、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−〔4−(4−メチルアニリノ)フェニル〕アクリルアミド、N−〔4−(4−メチルアニリノ)フェニル〕メタクリルアミド,3−N−(4−アニリノフェニル)アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、(メタ)アクリル酸−10−N−(4−アニリノフェニル)アミノ−9−ヒドロキシ−10−n−オクチルデシル、(メタ)アクリル酸−5−N−(4−アニリノフェニル)アミノ−2−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸−2−N−(4−アニリノフェニル)アミノエチルなどが挙げられる。
【0022】
また、一般式〔2〕で表わされる化合物の例としては、N−(4−アニリノフェニル)マレインイミド、N−〔4−(4−メチルアニリノ)フェニル〕マレインイミドなどが挙げられる。
【0023】
また、一般式〔3〕であらわされる化合物の例としては、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−3−(N,N−ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0024】
ベースニトリルゴム中のアミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体単位の含有量が少なすぎると耐熱性に劣るおそれがあり、逆に、多すぎると機械的特性に劣る可能性がある。
【0025】
共役ジエン単量体としては、炭素数4〜12の脂肪族共役ジエン化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、1,3−ブタジエン、ハロゲン置換1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。不飽和ニトリルゴム中の共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると硬化物がもろくなるおそれがあり、逆に、多すぎると耐油性が劣る可能性がある。
【0026】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有する炭素数3〜18のα,β−エチレン性不飽和化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。不飽和ニトリルゴム中のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると硬化物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0027】
前記必要に応じて加えられる共重合可能な単量体としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、非共役ジエン、α−オレフィン、芳香族ビニル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル、フルオロオレフィンなどが挙げられる。中でもα,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、架橋物の接着性及び耐摩耗性の向上に有効なので好ましい。
【0028】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、炭素数3〜18のカルボキシル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物であり、かかる化合物には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルのほか、重合反応時にカルボキシル基を有する化合物に変化するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が含まれる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0029】
非共役ジエンとしては、炭素数5〜12の非共役ジエンが使用され、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが例示される。α−オレフィンは、炭素数2〜12の末端の炭素とそれに隣接する炭素との間に二重結合を有する鎖状モノオレフィンで、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
【0030】
芳香族ビニルには、スチレンおよび炭素数8〜18のスチレン誘導体が含まれる。該誘導体の例としてはα−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族アルコールとのエステルであり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピルなどが例示される。
フルオロオレフィンは、炭素数2〜12の不飽和フッ化化合物で、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニルなどが例示される。
【0031】
ベースニトリルゴムには、必要に応じて自己架橋性単量体単位を存在させてもよい。自己架橋性単量体単位を存在させることによって、耐水性を改良することができる。必要に応じて加えられる自己架橋性単量体の具体例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド等が例示される。特に、接着性ゴム組成物を塗布し、加熱することによって硬化した繊維の耐摩耗性を改良する観点からはN−メチロール基を有するN−メチロール(メタ)アクリルアミドが好適である。
かかる自己架橋性単量体単位のベースニトリルゴム中の量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。該単量体単位の量が過度に多いと、接着性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維の屈曲性が損なわれるので好ましくない。
【0032】
ベースニトリルゴムは、上記のアミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体、共役ジエン単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体並びに必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体を共重合することにより製造される。共重合の方法としては、公知の乳化重合法や溶液重合法によれば良いが、本発明の接着性ゴム組成物が水系組成物であるので、生産性及び製造コストの観点から乳化重合による製造が好ましい。
【0033】
ベースニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、特に好ましくは30以上である。ムーニー粘度が小さすぎると硬化物の機械的特性が低下するおそれがある。
【0034】
アミノ基等含有高飽和ニトリルゴムは、上記のベースニトリルゴムの分子構造中の炭素−炭素二重結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上水素添加(水素化)することによって得ることができる。水素化率が低すぎると接着性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維の耐熱性が低下するおそれがある。
【0035】
上記水素化には、乳化重合法で製造されたベースニトリルゴムの水性ラテックスを用いて該ゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化する水層水素化法と、ベースニトリルゴムを有機溶媒に溶解した溶液中で該ゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化した後、該溶液の溶媒を転相法により水に変換して水性ラテックスにする油層水素化法がある。生産性および製造コストの観点からは水層水素化法が好ましい。さらに、水層水素化法には、酸化剤、還元剤及び活性剤により水素化する(a)法と、水素化触媒存在下に水素を添加して水素化する(b)法とがある。
【0036】
水層水素化(a)法では、仕込みのベースニトリルゴムラテックスの固形分濃度は、1〜70重量%、好ましくは1〜40重量%である。ベースニトリルゴムラテックスに対して、酸化剤、還元剤および活性剤を加えて0℃から還流温度まで加熱することにより水素化する。反応温度は、通常、0〜250℃、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜80℃である。
酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素などが用いられる。酸化剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比が、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1である。
還元剤としてはヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩およびヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類、または、ヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比が、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1である。
活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズなどの金属のイオンが用いられる。活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比が、好ましくは1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2である。
【0037】
水層水素化(b)法では、仕込みのベースニトリルゴムラテックスの固形分濃度は、凝集化を防止するため20重量%以下であることが好ましい。ベースニトリルゴムのラテックスおよび水素化触媒を攪拌機付きのオートクレーブに仕込み、溶存酸素を減圧、不活性ガスパージ等で除去した後、反応温度、通常、0〜300℃、好ましくは20〜150℃にて、水素を、通常、0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPaの圧力で封入して水素化反応を行う。反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率等を勘案して選定される。
水層水素化(b)法における水素化触媒は、水で分解しにくいパラジウム化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、安息香酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ジクロロ(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、ベースニトリルゴム重量当たり、好ましくは5〜6,000ppm、より好ましくは10〜4,000ppmである。
水層水素化(b)法の反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
【0038】
油層水素化法におけるベースニトリルゴムの有機溶媒溶液は、溶液重合によって該ゴムを得て、必要により、有機溶媒で濃度を整えて調製するか、乳化重合で得た該重合体のラテックスを凝固、乾燥した後、有機溶媒に溶解して調製する。油層でベースニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相してラテックスを調製する方法は、特開昭63−248879号公報に記載されている、油層のニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相する方法を準用することができる。
【0039】
本発明で使用するアミノ基等含有高飽和ニトリルゴムは、メチルエチルケトン(MEK)不溶解分を30〜95重量%、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%含有する。MEK不溶解分が少なすぎると耐摩耗性が不十分になるおそれがあり、逆に、多すぎると柔軟性に劣る可能性がある。MEK不溶解分の量は、反応温度や自己架橋性単量体の共重合量を変更することによって調節することができる。
【0040】
アミノ基等含有高飽和ニトリルゴムのラッテクスの固形分濃度は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。該ラテックスの固形分濃度が高すぎると繊維部材への塗布が困難になるおそれがあり、逆に低すぎると塗膜の厚みが薄くなりすぎて接着性が低下する可能性がある。
【0041】
本発明の接着性ゴム組成物は、上記アミノ基等含有高飽和ニトリルゴムラテックスに、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合して調製される。ここで、本発明組成物にはレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の「前駆体」を用いるのであるが、慣例により「樹脂」の表現を用いる。
レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されず、例えば特開昭55−142635号公報などに記載されたものであり、レゾルシンとホルムアルデヒド水溶液を水中で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒として反応させたレゾール型、又は、シュウ酸、塩酸等の酸性触媒下でメチロール化反応させたノボラック型のどちらでも使用できる。レゾルシンとホルムアルデヒドの比率は、モル比で1/1〜1/5が好ましく、1/1.2〜1/3がより好ましい。
ノボラック型の樹脂としては、スミカノール700(住友化学工業社製)、アドハ−RF(保土ヶ谷化学社製)などが挙げられる。ノボラック型レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を用いる場合には、必要に応じてホルムアルデヒド水溶液を添加しても良い。
本発明においては、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂として、レゾルシンメチロール化物を用いても、レゾルシンメチロール化物の初期縮合体を用いても良い。
【0042】
レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の配合量は、アミノ基等含有高飽和ニトリルゴムラテックスの固形分100重量部あたり、通常、5〜30重量部、好ましくは8〜20重量部である。レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の配合量が少なすぎると接着性ゴム組成物の接着性が不十分となるおそれがあり、逆に、多すぎると接着性ゴム組成物を塗布して加熱、硬化した繊維の基布が硬くなりすぎて耐摩耗性に劣る可能性がある。
【0043】
本発明の接着性ゴム組成物には、さらに、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫黄などの架橋剤や、架橋促進剤、老化防止剤、カーボンブラックの水分散体などを本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0044】
また、本発明の接着性ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、不飽和のニトリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、天然ゴムラテックス、アクリルゴムラテックス等の1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
本発明のゴム繊維複合体は、上記の接着性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴム(以下、「被着ゴム」と記すことがある。)を積層してなるものである。ここで、該組成物を繊維に塗布すると、該組成物はしばしば繊維に含浸するが、「塗布」は含浸も含むものとする。
また、塗布する方法には限定はなく、ロール、ローラ、コーター等で展延する方法、該組成物中に繊維を浸漬して取り出す方法などがある。
複合の形態は繊維層と被着ゴム層とを各一層積層する形態、繊維層を上下から被着ゴム層で挟む形態、被着ゴム層と繊維層とを交互に複数層積層する形態などがある。
【0046】
本発明のゴム繊維複合体において、上記接着性ゴム組成物を塗布する繊維の形態は、特に限定されず、ステープル、フィラメント、コード、ロープ、網状または布帛状の織布等、種々の形態の繊維に適用できる。また、繊維の種類も特に限定されず、綿、ビニロン、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ウレタン弾性糸等種々の繊維に対して適用できる。特に、ゴム繊維複合ベルトを得る場合には、帆布等の織布状の基材を使用することが好ましい。
【0047】
繊維に接着性ゴム組成物を塗布し、加熱する(以下、本発明組成物を塗布して加熱する処理を「硬化処理」と記すことがある。)方法には特に制限がないが、一例を示せば以下の通りである。先ず、繊維に接着性ゴム組成物を塗布して、必要ならば、好ましくは100〜150℃で0.5〜10分間乾燥した後、加熱する。加熱条件は、塗布により付着した接着性ゴム組成物を硬化させるのに十分な、例えば130〜250℃で数分〜数十分間の温度と時間である。
硬化処理した繊維において、接着性ゴム組成物の固形分の付着量は特に限定されないが、好ましくは、繊維100重量部に対して2〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部である。
【0048】
本発明のゴム繊維複合体において被着ゴムは、特に限定されないが、分子構造の不飽和結合部を水素化した高飽和型のゴム、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位含有ゴムなどが好ましい。これらの具体例としては、高飽和ニトリルゴム、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム、高飽和イソプレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和イソプレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−エチレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、アクリル酸ブチル−アクリル酸エトキシエチル−ビニルノルボルネン−アクリロニトリル共重合体ゴム等が挙げられる。
特に、ゴム繊維複合体ベルト用の被着ゴムとしては、耐油性、耐熱性の観点から、高飽和ニトリルゴムが好ましい。
【0049】
該高飽和ニトリルゴムの水素化率は、通常、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。水素化率が低すぎると、繊維に接着性ゴム組成物を硬化処理して被着ゴムを積層してなるゴム繊維複合体の耐熱性が低下するおそれがある。
該高飽和ニトリルゴムのアクリロニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは12〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。アクリロニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると架橋物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
また、該高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜300、より好ましくは20〜250、特に好ましくは30〜200である。ムーニー粘度が小さすぎると成形加工性や機械的特性が低下するおそれがあり、大きすぎると成形加工性が低下する可能性がある。
かかる高飽和ニトリルゴムの例としてはZetpol 2010H、同2020、同1020、同2010(いずれも日本ゼオン社製)などがある。
【0050】
上記被着ゴムには、硫黄加硫剤、過酸化物加硫剤などの加硫剤のほか、ゴム加工に際して通常配合される、カーボンブラック、短繊維などの補強剤;シリカなどの充填剤;老化防止剤;可塑剤;顔料;粘着付与剤;加工助剤;スコーチ防止剤;などの配合剤を適宜添加することができる。
【0051】
本発明のゴム繊維複合体を得るには、硬化処理をした繊維に、加硫剤等を添加したゴム配合物を展延し、次いで加圧および加熱する方法を採ると好ましい。ゴム配合物の展延、加圧は圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行うことができる。
【0052】
加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaであり、加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃で、操作時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。この方法により、被着ゴムの加硫および成形、並びに、硬化処理した繊維と被着ゴム間の接着を同時に行うことができる。
圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とするゴム繊維複合体の被着ゴムの所望の表面形状を実現する型を形成させておく。
【0053】
本発明のゴム被覆金属板は、本発明の接着性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるものである。また、本発明のゴム金属複合体は、該ゴム被覆金属板に形成された被膜にゴムを積層してなるものである。
金属としては、ステンレス鋼、スチール鋼、アルミニウムなどが使用される。金属板への接着性ゴム組成物の塗布は、ロール、コーター、ローラ塗り、はけ塗りなど公知の方法で行えばよい。塗布量は、ゴム組成物を加熱、硬化させて得られる被膜の厚さが、通常、1μm〜1mm、好ましくは10〜500μmとなる量である。加熱は、限定されないが、通常、130〜250℃で数分〜数十分行う。
こうして得られたゴム被覆金属板は、その状態でガスケット、ゴムライニング金属部品などに利用することができる。また、さらにゴムを積層してなるゴム金属複合体は、バルブや弁などとして有用である。積層する被着ゴムとしては、上記のゴム繊維複合体の説明において被着ゴムとして例示したゴムを好適に使用することができる。被着ゴムの積層方法は上記ゴム繊維複合体の場合と同様に行うことができる。
【0054】
本発明のゴム繊維複合体は、接着性ゴム組成物で硬化処理された繊維の耐熱性および耐摩耗性に優れる。そのため本発明のゴム繊維複合体は、特にベルト、ホース、チューブ、ダイアフラムなどに好適に使用できる。
ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルトなどが挙げられる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホースなどが挙げ挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラムなどが挙げられる。
本発明のゴム繊維複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロールなどの工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動などの運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータなどが挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケットなどが挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器などのOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロールなどの繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロールなどの製鉄用ロール;などが挙げられる。
【0055】
また、本発明のゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性に加えて耐摩耗性に優れるので、気体又は液体用バルブ、弁、シール、ワッシャー、ロール、防振ゴム部品等に好適に使用される。また、ゴム被覆金属板も耐油性、耐熱性に、堅牢性などに優れるので、シリンダーガスケットやインテークマニホールドガスケットなどの自動車用ガスケット、空気圧機器、冷凍機、ポンプなどのコンプレッサーガスケット、シールワッシャー、その他配管フランジ用ガスケットなどのメタルコーティングガスケット;化学薬品や海水などの配管、熱交換器、貯槽、反応槽、タンクローリなどのゴムライニング部品;等に好ましく利用される。
【0056】
【実施例】
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。部および%は、特に記載のない限り、重量基準である。なお、試験は下記によった。
【0057】
(1)共重合体組成
ベースニトリルゴムラテックス100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥した。乾燥したゴムを重水素クロロホルムに溶解し、NMR分析により共重合組成を算出した。
(2)水素添加率(水素化率)
ラテックス100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥した。乾燥したゴムをISO14558のIR測定法に準じて測定した。
(3)メチルエチルケトン(MEK)不溶解分
固形分35重量%のラテックス100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥した。乾燥したゴムを100メッシュの金網製のカゴに0.3グラム精秤して入れた状態でMEK100ccに2日間浸漬した後、金網製のカゴをドラフトで風乾し、次いでカゴごと60℃で一晩真空乾燥してから乾燥重量を精秤、金網に溶解せずに残った不溶解分の上記精秤乾燥ゴムに対する重量百分率を求め、MEK不溶解分とした。
【0058】
(4)接着性ゴム組成物の硬化物の破断伸び及び100%引張応力
水平に置かれたステンレス鋼製の内面が平滑な深さ5mmの平皿状の型枠内に接着性ゴム組成物を流し込み、20℃、湿度65%で72時間静置した。乾燥した接着性ゴム組成物を枠から剥がして得た厚さ0.5mmの塗膜を空気循環式オーブンにて160℃で30分間加熱し、得られた硬化物のシートからダンベル7号形の試験片を切り出した。JIS K6251に規定の試験法に準じて、インストロン型の引張試験機を用いて300mm/分の速度で引張り試験を行い、破断伸びEb(1)(単位%)および100%引張応力M100(1)(単位MPa)を測定した。
次に、上記硬化物の残部をさらに空気循環式オーブンにて140℃で72時間加熱し、上記と同様にして破断伸びEb(2)および100%引張応力M100(2)を測定し、熱による老化の度合いを〔Eb(2)−Eb(1)〕/Eb(1)及び〔M100(2)−M100(1)〕/M100(1)の百分率で表した。これら百分率の値が小さいほど熱老化が少ない。マイナス値の場合は強度が増加したことを意味する。
【0059】
(5)ゴム繊維複合体の耐摩耗性試験
接着性ゴム組成物を20℃、24時間静置して熟成させた後、ナイロン66からなる布を浸漬し、引き上げることによりこれを塗布した。該ナイロン66の基材100部に対して固形分が20部付着するように接着性ゴム組成物を塗布した後、引き上げて空気循環式オーブンにて110℃で10分間、次いで150℃で3分間加熱し、硬化処理ナイロン基材を得た。次に、表1記載の配合処方でバンバリーミキサーにより15分間混練して調製したゴム配合物を前記硬化処理ナイロン基材15cm×15cmの上にロールにて厚さ1mmに展延した後、圧縮機で圧力0.1MPa、温度160℃で30分間プレスしてゴムナイロン基材複合体を得た。
ゴムナイロン基材複合体について、カーペット用テーバ摩耗試験機を用いて耐摩耗性を試験した。試験条件は荷重1kg、摩耗表面温度120℃(赤外線ランプ照射)、ディスク回転数1万回で行った。評価の基準は、下記の通り。
5:摩耗が認められない、または、摩耗が認められるものの、ナイロンの表面積の25%以下である。
4:ナイロン基材の表面積の26〜50%に摩耗が認められる。
3:ナイロン基材の表面積の51〜75%に摩耗が認められる。
2:ナイロン基材の表面積の76〜90%に摩耗が認められる。
1:ナイロン基材の表面積の90%超に摩耗が認められる。
【0060】
【表1】
【0061】
(注)
*1:高飽和ニトリルゴム、ヨウ素価11、アクリロニトリル単量体単位含有量36%、ムーニー120以上(日本ゼオン社製)。
*2:Zetpol2010H(上記*1参照)に、ジメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム組成物(日本ゼオン社製)。
*3:シーストF(東海カーボン社製)。
*4:参加亜鉛(正同化学工業社製)。
*5:ナウガード445(ユニロイヤル社製)。
【0062】
(参考例1)ゴムラテックスAの調製
内容積1リットルの耐圧ボトルに、水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル35部、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド2部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、ブタジエン63部を圧入した。過硫酸アンモニウム0.25部を添加し、反応温度40℃で反応率80%まで重合反応してベースニトリルゴムラテックスを得た。
次に、全固形分濃度24重量%に調整した400ミリリットル(全固形分96グラム)のベースニトリルゴムを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに投入し、硫酸銅(CuSO4)0.2グラムおよびヒドラジン水和物100グラムを添加した。次いで、攪拌しながら30%の過酸化水素水を添加した、60℃で3時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて、固形分濃度が約40%となるまで濃縮して、水素化率90%、MEK不溶解分75重量%のイミノ基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(ゴムラテックスA)を得た。
【0063】
(参考例2)ゴムラテックスBの調製
参考例1で得たベースニトリルゴムラテックスの全固形分濃度12重量%に調整した400ミリリットル(全固形分48g)を攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した。次いで、水素化触媒として酢酸パラジウムをその4倍モルの水240ミリリットルに溶解して添加した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態で、内容物を50℃とし、6時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて、固形分濃度が約40%となるまで濃縮して水素化率90%、MEK不溶解分0重量%のイミノ基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(ゴムラテックスB)を得た。
【0064】
(参考例3)ゴムラテックスCの調製
上記ゴムラテックスA80%とゴムラテックスB20%とを混合して、水素化率90%、MEK不溶解分60重量%のイミノ基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(ゴムラテックスC)を得た。
【0065】
(参考例4)ゴムラテックスDの調製
上記参考例1において、ベースアクリルゴムの重合を、アクリロニトリル98部とし、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミドを添加しなかったほかは参考例1と同様に行い、反応率95%まで重合反応させてベースニトリルゴムラテックスを得た。次いで水素化反応として該ラテックスを用いたほかは参考例1と同様に行って水素化率65%、MEK不溶解分50重量%の高飽和ニトリルゴムラテックス(ラテックスD)を得た。
【0066】
(参考例5)ゴムラテックスEの調製
上記参考例1において、水素化反応をしなかったほかは参考例1と同様に行って水素化率0%、MEK不溶解分5重量%のイミノ基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(ゴムラテックスE)を得た。
【0067】
(参考例6)レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の調製
レゾルシン6.5部、ホルムアルデヒド(濃度37%)9.4部および水酸化ナトリウム(濃度10%)3部を水139.6部に溶解し、撹拌下25℃で6時間反応させ、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂液(RF液)を得た。
【0068】
(実施例1)
250部のラテックスA(濃度40%)、RF液(濃度6.25%)160部、アンモニア水(濃度14%)22.6部及び水120.4部を混合して25℃で20時間攪拌し、接着性ゴム組成物Aを得た。
接着性ゴム組成物Aについて測定した破断伸びEb(1)、Eb(2)およびその変化率、引張応力M100(1)、M100(2)およびその変化率、ならびに、接着性ゴム組成物を用いて作製したゴム繊維複合体について測定した耐摩耗性試験の結果を表2に示す。
【0069】
(実施例2、比較例1〜3)
実施例1においてラテックスAに代えてラテックスC、B、DまたはEをそれぞれ用いたほかは実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2が示すように、イミノ基を有する不飽和化合物単量体単位を0.1〜10重量%含有し、炭素−炭素二重結合の60%以上が水素添加されており、かつ、MEK不溶解分を30〜95重量%含有するニトリルゴムにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合してなる接着性ゴム組成物の硬化膜は、熱老化させてもいずれも破断伸びEb(1)及び100%引張応力M100(1)は大きく変化することなく、また、それらの組成物を用いて得られるゴム繊維複合体の耐摩耗性は極めて良好であった(実施例1、2)。
これに対して、MEK不溶解分のないニトリルゴムを用いた接着性ゴム組成物の硬化膜は、M100(2)が熱老化試験で大きく増加する変化を起こし、また、ゴム繊維複合体の耐摩耗性が極めて低かった(比較例1)。
イミノ基を有する単量体単位を持たないニトリルゴムを用いた接着性ゴム組成物の硬化膜は、Eb(2)が著しく低下した上に、M100(2)が熱老化試験で大きく増加する変化を起こした(比較例2)。
炭素−炭素二重結合を水素化率していないニトリルゴムを用いた接着性ゴム組成物の硬化膜は、Eb(2)が著しく低下し、また、ゴム繊維複合体の耐摩耗性が極めて低かった(比較例3)。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、ゴム繊維複合体に優れた耐熱性および耐摩耗性を付与することができる、水系のゴム組成物が提供される。
Claims (4)
- ニトリルゴムラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合してなる接着性ゴム組成物であって、
前記ニトリルゴムが、アミノ基及び/又はイミノ基を有する不飽和化合物単量体単位を0.1〜10重量%含有し、
その炭素−炭素二重結合の60%以上が水素添加されており、かつ、
メチルエチルケトン不溶解分を30〜95重量%含有するものである接着性ゴム組成物。 - 請求項1記載の接着性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴムを積層してなるゴム繊維複合体。
- 請求項1記載の接着性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板。
- 請求項3記載のゴム被覆金属板のゴム被膜に、ゴムを積層してなるゴム金属複合体。
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