JP2004256713A - 硬化性ゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、ゴム繊維複合体に優れた耐摩耗性および耐動的疲労性を付与することができる、水系のゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にある硬化性ゴム組成物。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
【選択図】 なし
【解決手段】ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にある硬化性ゴム組成物。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを含む硬化性ゴム組成物、並びに、該ゴム組成物を塗布し、加熱した繊維または金属に、ゴムを積層してなる、ゴム繊維複合体およびゴム金属複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムと繊維との複合体は、ベルトやゴムホース、ダイアフラムなどの多くの分野で使用されている。ゴム繊維複合体ベルトの分野では、タイミングベルト、ポリリブドベルト、ラップドベルト、Vベルト、工業用コンベアベルト、産業機器等の送り用平ベルトおよび各種機器における伝達ベルト等があり、通常、織布状基材とゴムとが貼り合わさった複合体として形成されている。これらのゴム層に、従来、耐油性ゴムであるクロロプレンゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(以下、「ニトリルゴム」と記すことがある。)が用いられていたが、近年、ニトリルゴムの持つ炭素−炭素二重結合を水素化した高飽和ニトリルゴムが耐熱性と耐油性とに一層優れているとして用いられるようになっている。
【0003】
上記のゴム繊維複合体は、歯車との噛み合いによる摩耗を軽減するために、また、織布状基材と高飽和ニトリルゴムとの接着力を高めるために、ゴムを有機溶剤に溶解させた溶剤系ゴム糊を織布状基材に塗布して加熱する処理が施されていたが、最近は、有機溶剤の環境汚染を防止する観点等から水系ゴム糊での処理技術が要求されるようになった。
水系ゴム糊としては、ヨウ素価が120以下の高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着剤組成物が提案された(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着剤組成物で処理した繊維は、溶剤系ゴム糊で処理した繊維と比較して、耐摩耗性が必ずしも十分ではなかった。
これに対して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂と芳香族系エポキシ樹脂とを配合してなる接着剤組成物が提案された(特許文献3参照)。その結果、耐油性、耐熱性および耐摩耗性に優れたゴム繊維複合体を環境汚染の懸念なく製造できるようになった。しかしながら、ゴム繊維複合体ベルトには、今や、高速走行性、耐久性のなお一層の向上が要求されており、そのためには、ゴム繊維複合体が耐摩耗性に加えて高い耐動的疲労性を備えていることが求められる。この要請に応えられるゴム組成物はいまだ出現していない。
【0004】
一方、ゴム糊を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板や、ゴム糊を金属板に塗布して加熱し、得られた被膜にゴムを積層してなるゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性などに優れたガスケット、ゴムライニング金属部品などとして使用されている。しかし、これらのゴム被覆金属板やゴム金属複合体に対しても堅牢性、耐久性等の向上が要請されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−248879号公報
【特許文献2】
特開平3−167239号公報
【特許文献3】
特開平8−333564号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、形成されるゴム繊維複合体に優れた耐摩耗性および耐動的疲労性を付与することができる、水系の硬化性ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該ゴム組成物を用いてなるゴム繊維複合体を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記ゴム組成物を金属やゴム金属複合系に適用することにより、優れた耐久性および堅牢性を有するゴム被覆金属板およびゴム金属複合体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、特定の接着剤樹脂を配合してなる硬化性ゴム組成物が、その硬化物の引張強度と伸びの4乗との積、および、引張弾性率がそれぞれ特定値以上となる場合に、該硬化性ゴム組成物を繊維に塗布して加熱し、次いでゴムと接着させると、得られるゴム繊維複合体の耐摩耗性および耐動的疲労特性が飛躍的に向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、以下1〜4の発明がそれぞれ提供される。
1. ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にある硬化性ゴム組成物。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
2. 請求項1記載の硬化性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴムを積層してなるゴム繊維複合体。
3. 上記1記載の硬化性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板。
4. 上記3記載のゴム被覆金属板のゴム被膜に、ゴムを積層してなるゴム金属複合体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の硬化性ゴム組成物は、ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にあることを特徴とする。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
【0010】
本発明で使用するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムとしては、共役ジエン、α,β−エチレン性不飽和ニトリル、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体を共重合して得られるニトリルゴムが後述のヨウ素価の基準を満たせば、それを使用することができる。しかし、ヨウ素価の基準を満たさない場合は、該ニトリルゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化することにより調製することができる。該ゴム中のこれらの単量体単位の構成比率は、共役ジエン単量体単位が、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%;α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位が、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%;α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位が、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%;および、必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体の単位が、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%である。
【0011】
共役ジエンとしては、炭素数4〜12の脂肪族共役ジエン化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、1,3−ブタジエン、ハロゲン置換1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ニトリルとしては、ニトリル基を有する炭素数3〜18のα,β−エチレン性不飽和化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。カルボキシル基含有ニトリルゴム中のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると架橋物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、炭素数3〜18のカルボキシル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物であり、かかる化合物には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルのほか、重合反応時にカルボキシル基を有する化合物に変化するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が含まれる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の導入によるカルボキシル基含有ニトリルゴム中のカルボキシル基の量は、接着性および耐摩耗性を向上させるためには、該ゴム100重量部当たり好ましくは1×10−4当量(ephrと記す)以上であり、より好ましくは1×10−3〜2×10−1ephrの範囲である。
【0014】
前記必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体としては、非共役ジエン単量体、α−オレフィン、芳香族ビニル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル、フルオロオレフィン、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
非共役ジエンとしては、炭素数5〜12の非共役ジエンが使用され、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが例示される。α−オレフィンは、炭素数2〜12の末端の炭素とそれに隣接する炭素との間に二重結合を有する鎖状モノオレフィンで、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
【0015】
芳香族ビニルは、スチレンおよび炭素数8〜18のスチレン誘導体であり、該誘導体の例としてはα−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族アルコールとのエステルであり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、イタコン酸モノエチル、フマル酸モノブチルなどが例示される。
フルオロオレフィンは、炭素数2〜12の不飽和フッ化化合物で、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニルなどが例示される。
【0016】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが例示される。
【0017】
本発明で使用するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムには、必要に応じて自己架橋性単量体単位を存在させてもよい。自己架橋性単量体単位を存在させることによって、耐水性を改良することができる。必要に応じて加えられる自己架橋性単量体の具体例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド等が例示される。特に、硬化性ゴム組成物を塗布して加熱することによって硬化処理した繊維の耐摩耗性を改良する観点からはN−メチロール基を有するN−メチロール(メタ)アクリルアミドが好適である。
かかる自己架橋性単量体単位のカルボキシル基含有ニトリルゴム中の量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。該単量体単位の量が過度に多いと、硬化性ゴム組成物を塗布し、硬化した繊維の屈曲性が損なわれるので好ましくない。
【0018】
上記カルボキシル基含有ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、特に好ましくは30以上である。ムーニー粘度が小さすぎると硬化物の機械的特性が低下するおそれがある。
【0019】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、上記の単量体を共重合して、あるいは必要により得られた共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することによって得ることができる。共重合の方法としては、公知の乳化重合法や溶液重合法によれば良い。尚、共役ジエンとして1,3−ブタジエン等を用いた場合においては、その共重合割合が前述の好ましい範囲であるときは、共重合体のヨウ素価が通常は120を超えるため、ヨウ素価120以下の高飽和とするために、通常は後述するように共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化する。
【0020】
ニトリルゴムの炭素−炭素二重結合を水素化する方法としては、上記単量体を用いて乳化重合を行って製造したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを用い、該ゴム中の炭素−炭素不飽和結合に対して水素化反応を行う水層水素化法と、カルボキシル基含有ニトリルゴムを有機溶媒に溶解した溶液中で、該ゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化した後、該溶液から転相法により溶媒を水に変換してラテックスにする油層水素化法がある。生産性および製造コストの観点からは水層水素化法が好ましい。
【0021】
水層水素化法では、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび水素化触媒を攪拌機付きのオートクレーブに仕込み、溶存酸素を減圧や不活性ガスによるパージで除去した後、水素を加圧状態で封入して水素化反応を行う。
仕込みの原ラテックスの固形分濃度は、凝集化を防止するため20重量%以下であることが好ましい。
【0022】
水層水素化法における水素化触媒は、水で分解しにくいパラジウム化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、安息香酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ジクロロ(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、ゴム重合体重量当たり、好ましくは5〜6,000ppm、より好ましくは10〜4,000ppmである。
【0023】
水層水素化法の反応温度は、0〜300℃、好ましくは20〜150℃である。また、水素圧は、0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜10MPaである。
水素化の反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率等を勘案して選定される。
【0024】
水素化反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
【0025】
油層水素化法におけるカルボキシル基含有ニトリルゴムの有機溶媒溶液は、溶液重合によって該ゴムを得て、必要により、有機溶媒で濃度を整えて調製するか、乳化重合で得た該重合体のラテックスを凝固、乾燥した後、有機溶媒に溶解して調製する。
油層でカルボキシル基含有ニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相してラテックスを調製する方法は、特開昭63−248879号公報に記載されている、油層のニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相する方法を準用することができる。
【0026】
上記方法で得られるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの水素化率は、ヨウ素価で120以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。ヨウ素価が大きすぎると硬化性ゴム組成物の硬化物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0027】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスには、本発明によって得られる効果が損なわれない範囲で、ヨウ素価が120より大のニトリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、天然ゴムラテックス、アクリルゴムラテックス等の1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラッテクスの固形分濃度は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%である。該ラテックスの固形分濃度が高すぎると繊維部材への塗布が困難になるおそれがあり、逆に低すぎると塗膜の厚みが薄すぎて接着性が低下する可能性がある。
【0029】
本発明の硬化性ゴム組成物においては、上記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、接着剤樹脂としてメラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が配合される。ここで、これら3種は、樹脂の前駆体であってまだ樹脂ではないが、慣例により「樹脂」の表現を用いる。
【0030】
メラミン樹脂は、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)の3つのアミノ基の1、2または3個をそれぞれメチロール化したメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどのメラミンメチロール化物を70〜90℃に加熱してメチレン化反応を行わせて縮合、硬化させてできる樹脂である。メラミンメチロール化物は、pH7〜8にてメラミンに対して3〜6倍モルのホルムアルデヒドを反応させて得られる。
本発明組成物において、メラミン樹脂を配合する場合は、上記のメラミンメチロール化物を用いても、メラミンメチロール化物の初期縮合体を用いても良い。いずれの場合も縮合を進展させるために酸性の硬化剤を添加し、pH5以下にすることが好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂は、特に限定されず、芳香族系エポキシ樹脂、脂環族系エポキシ樹脂および脂肪族系エポキシ樹脂のいずれも使用できるが、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。芳香族系エポキシ樹脂は、多価フエノールとエピクロルヒドリンとの縮合反応生成物である。かかる芳香族系エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下で反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下で反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、あるいはこれらの樹脂の臭素化樹脂ならびにウレタン変性樹脂が実用的である。また、ノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂も使用することができる。
【0032】
本発明組成物において、エポキシ樹脂を配合する場合は、上記縮合反応生成物の2量体以上である液状のものを使用する。また、液状エポキシ樹脂と共に硬化剤を配合するのが好ましい。
【0033】
これらの液状エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、通常、3000以下、好ましくは50〜2000であると硬化性ゴム組成物の硬化物の耐摩耗性が顕著に改良される。
【0034】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、ジシアンジアミド;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;2−n−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体;イソフタル酸ジヒドラジド;N,N−ジアルキル尿素誘導体;N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体;無水フタル酸、ドデシルコハク酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロペンタジエン無水マレイン酸付加物、無水ピロメリット酸、クロルエンジック酸無水物のような酸無水物;イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンのようなポリアミン;ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンのようなアミノアルキル環状化合物;三フッ化ホウ素錯化合物;各種ダイマー酸とジアミンの付加物よりなるポリアミドアミンなどが挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
該硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、通常、1〜120重量部、好ましくは3〜100重量部である。この量が少なすぎると硬化不良を起こして、各種強度を著しく低減させる原因となり、逆に多すぎると加熱時に過剰の発熱反応による熱劣化を起こし、硬化物の機械的強度の顕著な低下や変色を惹起する。
【0035】
イソシアネート樹脂は、−N=C=O基を2〜4個有する有機化合物(有機イソシアネート)を架橋、硬化させて得られる樹脂で、該有機イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと略)、2,6−トリレンジイソシアネート(以下2,6−TDIと略)、及びこれらの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略)、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水添MDI、ベンゼントリイソシアネ−ト、リジンエステルトリイソシアネ−ト、1,6,11−ウンデカントリイソシアネ−ト、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネ−ト、ビシクロヘプタントリイソシアネ−トなど及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、MDI、2,4−TDI及びこれらの混合物が好適である。
【0036】
有機イソシアネートを硬化させるためには、通常、活性水素化合物の硬化剤を存在させる。かかる硬化剤としては、ポリオール類、多価アミン類、ポリチオール類、水などがある。
ポリオ−ル類としては、2〜4個の水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、分子量60〜300のものが好ましい。かかるポリオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコ−ル)、ジエチレングリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−メタノールなどの低分子量グリコール類;これらのポリオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、またはブチレンオキサイドを付加したポリエチレンエーテルポリオール、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリブチレンエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオール類;ハイドロキノンにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどを2〜4モル付加したジオール類などが例示される。これらは1種単独または2種以上併せて使用される。
【0037】
多価アミンの例としては、脂肪族多価アミン、芳香族多価アミンなどが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。
脂肪族多価アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメ−ト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミンとしては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらは1種単独または2種以上併せて使用される。
【0038】
イソシアネート樹脂100重量部に対する上記硬化剤の配合量は、通常、0〜120重量部、好ましくは0〜100重量部である。この量が多すぎると加熱時に過剰の発熱反応による熱劣化を起こし、各種強度が低下したり変色したりする可能性がある。
本発明組成物において、イソシアネート樹脂配合の場合は、上記の硬化剤を配合しなくても、環境に存在する湿気が硬化剤の作用をして尿素結合を形成して硬化させることが可能である。
【0039】
メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスの固形分100重量部に対して、硬化剤を除いた乾燥重量基準で、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部の割合で配合される。該配合量が少なすぎると硬化性ゴム組成物の接着強度が低下する可能性がある。逆に、該配合量が多すぎると接着剤層が硬くなり過ぎて柔軟性が損なわれるために繊維の耐摩耗性が低下するおそれがある。
接着剤樹脂として、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂に加えて、式(I)および式(II)を満たす範囲で、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール、エチレン尿素などのその他の接着剤樹脂を配合することは可能である。
また、本発明の硬化性ゴム組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、充填剤、可塑剤、老化防止剤、増粘剤等の添加剤を添加しても良い。
【0040】
本発明の硬化性ゴム組成物の調製法は、特に限定されず、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスと、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂とを均一に混合すれば良い。混合方法は、容器内のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスに撹拌下で上記の少なくとも1種の樹脂を少量づつ混入させる方法、ラテックスを移送する流路に上記少なくとも1種の樹脂をラテックスの流量に大略比例した流量で注入する方法等がある。
【0041】
本発明の硬化性ゴム組成物においては、該組成物そのものを加熱して接着剤樹脂を架橋させた硬化物において、その引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係を有する必要がある。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
ここで、該組成物の硬化物試料の作製法は以下の通りである。先ず、水平に置かれたステンレス鋼製などの内面が平滑な深さ5mmの平皿状の型枠内に該組成物を流し込み、20℃、湿度65%で48〜120時間静置して乾燥させる。次いで、型枠から剥がして得た厚さ0.5±0.1mmの塗膜をオーブンにて120〜300℃で数分〜数時間熱処理してシートを得る。該シートからダンベル7号形の試験片を切り出す。引張強度、伸びおよび100%引張応力の試験法は、JIS K6251に準拠する方法による。
式(I)の左辺の値が1,000より小さいとゴム繊維複合体の耐動的疲労性が低下するおそれがある。また、式(II)で、M100 が1より小さいと、ゴム繊維複合体の耐摩耗性が低下する可能性がある。
【0042】
本発明のゴム繊維複合体は、上記の硬化性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴム(以下、「被着ゴム」と記すことがある。)を積層してなるものである。ここで、該組成物を繊維に塗布すると、該組成物はしばしば繊維に含浸するが、「塗布」は含浸も含むものとする。
また、塗布する方法には限定はなく、ロール、ローラー、コーター等で展延する方法、該組成物中に繊維を浸漬して取り出す方法などがある。
複合の形態は繊維層と被着ゴム層とを各一層積層する形態、繊維層を上下から被着ゴム層で挟む形態、被着ゴム層と繊維層とを交互に複数層積層する形態などがある。
【0043】
本発明のゴム繊維複合体において、上記硬化性ゴム組成物を塗布する繊維の形態は、特に限定されず、ステープル、フィラメント、コード、ロープ、網状または布帛状の織布等、種々の形態の繊維に適用できる。また、繊維の種類も特に限定されず、綿、ビニロン、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ウレタン弾性糸等種々の繊維に対して適用できる。特に、ゴム繊維複合ベルトを得る場合には、帆布等の織布状の基材を使用することが好ましい。
【0044】
繊維に硬化性ゴム組成物を塗布し、加熱する(以下、本発明組成物を塗布して加熱する処理を「硬化処理」と記すことがある。)方法には特に制限がないが、一例を示せば以下の通りである。先ず、繊維に硬化性ゴム組成物を塗布して、必要ならば、好ましくは100〜150℃で0.5〜10分間乾燥した後、加熱する。加熱条件は、塗布により付着した硬化性ゴム組成物を硬化させるのに十分な、例えば130〜250℃で数分〜数十分間の温度と時間である。
硬化処理した繊維において、硬化性ゴム組成物の固形分の付着量は特に限定されないが、好ましくは、繊維100重量部に対して2〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部である。
【0045】
本発明のゴム繊維複合体において被着ゴムは、特に限定されないが、分子構造の不飽和結合部を水素化した高飽和型のゴム、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位含有ゴムなどが好ましい。これらの具体例としては、高飽和ニトリルゴム、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム、高飽和イソプレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和イソプレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−エチレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、アクリル酸ブチル−アクリル酸エトキシエチル−ビニルノルボルネン−アクリロニトリル共重合体ゴム等が挙げられる。
特に、ゴム繊維複合体ベルト用の被着ゴムとしては、耐油性、耐熱性の観点から、高飽和ニトリルゴムが好ましい。
【0046】
該高飽和ニトリルゴムの水素化率は、ヨウ素価で120以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。ヨウ素価が大きすぎると繊維に硬化性ゴム組成物を処理してなるゴム繊維複合体の耐熱性が低下するおそれがある。
該高飽和ニトリルゴムのアクリロニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは12〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。アクリロニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると架橋物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
また、該高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜300、より好ましくは20〜250、特に好ましくは30〜200である。ムーニー粘度が小さすぎると成形加工性や機械的特性が低下するおそれがあり、大きすぎると成形加工性が低下する可能性がある。
かかる高飽和ニトリルゴムの例としてはZetpole 2010H、同2020、同1020、同2010(いずれも日本ゼオン社製)などがある。
【0047】
上記被着ゴムには、硫黄加硫剤、過酸化物系加硫剤などの加硫剤のほか、ゴム加工に際して通常配合される、カーボンブラック、短繊維などの補強剤;老化防止剤;可塑剤;顔料;粘着付与剤;加工助剤;スコーチ防止剤;などの配合剤を適宜添加することができる。
【0048】
本発明のゴム繊維複合体を得るには、硬化処理をした繊維に、加硫剤等を添加したゴム配合物を展延し、次いで加圧および加熱する方法を採ると好ましい。ゴム配合物の展延、加圧は圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行うことができる。
【0049】
加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaであり、加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃で、操作時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。この方法により、被着ゴムの加硫および成形、並びに、硬化処理した繊維と被着ゴム間の接着を同時に行うことができる。
圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とするゴム繊維複合体の被着ゴムの所望の表面形状を実現する型を形成させておく。
【0050】
本発明のゴム被覆金属板は、本発明の硬化性ゴム組成物を金属板等の金属部品に塗布して加熱してなるものである。また、本発明のゴム金属複合体は、該ゴム被覆金属板に形成された被膜にゴムを積層してなるものである。
金属としては、ステンレス鋼、スチール鋼、アルミニウムなどが使用される。金属板等の金属部品への硬化性ゴム組成物の塗布は、ロール、コーター、ローラ塗り、はけ塗りなど公知の方法で行えばよい。塗布量は、ゴム組成物を加熱、硬化させて得られる被膜の厚さが、通常、1μm〜1mm、好ましくは10〜500μmとなる量である。加熱は、限定されないが、通常、130〜250℃で数分〜数十分行う。
こうして得られたゴム被覆金属板は、その状態でガスケット、ゴムライニング金属部品などに利用することができる。また、さらにゴムを積層してなるゴム金属複合体は、バルブや弁などとして有用である。積層する被着ゴムとしては、上記のゴム繊維複合体の説明における被着ゴムとして例示したゴムを好適に使用することができる。被着ゴムの積層方法は上記ゴム繊維複合体の場合と同様に行うことができる。
【0051】
本発明のゴム繊維複合体は、硬化性ゴム組成物で硬化処理された繊維の耐摩耗性および耐動的疲労性に優れる。そのため本発明のゴム繊維複合体は、特にベルト、ホース、チューブ、ダイアフラムなどに好適に使用できる。
ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルトなどが挙げられる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホースなどが挙げ挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラムなどが挙げられる。
本発明のゴム繊維複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロールなどの工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動などの運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータなどが挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケットなどが挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器などのOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロールなどの繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロールなどの製鉄用ロール;などが挙げられる。
【0052】
また、本発明のゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性に加えて堅牢性および耐久性に優れるので、気体又は液体用バルブ、弁、シール、ワッシャー、ロール、防振ゴム部品等に好適に使用される。また、ゴム被覆金属板も耐油性、耐熱性に、堅牢性などに優れるので、シリンダーガスケットやインテークマニホールドガスケットなどの自動車用ガスケット、空気圧機器、冷凍機、ポンプなどのコンプレッサーガスケット、シールワッシャー、その他配管フランジ用ガスケットなどのメタルコーティングガスケット;化学薬品や海水などの配管、熱交換器、貯槽、反応槽、タンクローリなどのゴムライニング部品;等に好ましく利用される。
【0053】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。部および%は、特に記載のない限り、重量基準である。なお、試験および操作は下記によった。
【0054】
(1)硬化性ゴム組成物の硬化物の引張強度、伸びおよび100%引張応力
水平に置かれたステンレス鋼製の内面が平滑な深さ5mmの平皿状の型枠内に硬化性ゴム組成物を流し込み、20℃、湿度65%で72時間静置した。乾燥した硬化性ゴム組成物を枠から剥がして得た厚さ0.5mmの塗膜を空気循環式オーブンにて160℃で30分間加熱し、得られた硬化物のシートからダンベル7号形の試験片を切り出した。JIS K6251に規定の試験法に準じて、インストロン型の引張試験機を用いて300mm/分の速度で引張り試験を行い、引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)を測定した。
【0055】
(2)ゴム繊維複合体の耐摩耗性試験
硬化性ゴム組成物を20℃、24時間静置して熟成させた後、ナイロン66からなる布に浸漬して塗布し、該基材100部に対して固形分が20部付着するように硬化性ゴム組成物を含浸させた後、引き上げて空気循環式オーブンにて110℃で10分間、次いで150℃で3分間加熱し、硬化処理ナイロン基材を得た。次に、表1記載の配合処方でバンバリーミキサーにより15分間混練して調製したゴム配合物を前記硬化処理ナイロン基材15cm×15cmの上にロールにて厚さ1mmに展延した後、圧縮機で圧力0.1MPa、温度160℃で30分間プレスしてゴムナイロン基材複合体を得た。
ゴムナイロン基材複合体について、カーペット用テーバ摩耗試験機を用いて耐摩耗性を試験した。試験条件は荷重1kg、摩耗表面温度120℃(赤外線ランプ照射)、ディスク回転数1万回で行った。評価の基準は、下記の通り。
5:摩耗が認められない、または、摩耗が認められるものの、ナイロンの表面積の25%以下である。
4:ナイロン基材の表面積の26〜50%に摩耗が認められる。
3:ナイロン基材の表面積の51〜75%に摩耗が認められる。
2:ナイロン基材の表面積の76〜90%に摩耗が認められる。
1:ナイロン基材の表面積の90%超に摩耗が認められる。
【0056】
【表1】
【0057】
(注)
*1:高飽和ニトリルゴム ヨウ素価11、アクリロニトリル単量体単位含有量36%、ムーニー120以上(日本ゼオン社製)。
*2:Zetpol2010H(上記*1参照)に、ジメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム組成物(日本ゼオン社製)。
【0058】
(3)ゴム繊維複合体の耐動的疲労性試験
上記(2)と同様にして得たゴムナイロン基材複合体についてJIS K6260の方法によりゴムナイロン基材複合体が破壊するまでの屈曲回数を測定した。評価の基準は、下記の通り。
○:屈曲回数が10万回以上。
×:屈曲回数が10万回未満。
【0059】
(4)カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスの調製
内容積1リットルの耐圧ボトルに、水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル35部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、ブタジエン60部を圧入した。過硫酸アンモニウム0.25部を添加し、反応温度40℃で重合反応してカルボキシル基含有アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックスを得た。次に、全固形分濃度12重量%に調整したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス400ミリリットル(全固形分48g)を攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した後、水素化触媒として酢酸パラジウムをその4倍モルの水240ミリリットルに溶解して添加した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態で、内容物を50℃とし、6時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて、固形分濃度が約40%となるまで濃縮してヨウ素価28のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスを得た。
【0060】
(5)メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂
(a)メラミン樹脂:Sumitex Resin M−3(住友化学社製)
硬化剤:Sumitex Accelerator ACX(住友化学社製)
(b)エポキシ樹脂:エピレッツ 5003W55(ジャパンエポキシレジン社製)
硬化剤:エピキュア 3255(ジャパンエポキシレジン社製)、
(c)イソシアネート樹脂:アクアネート200(日本ポリウレタン工業社製)
【0061】
(実施例1)
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス50部(濃度40%)、メラミン樹脂の水性分散液(濃度80%)2.5部、メラミン樹脂硬化剤の水性分散体(濃度35%)0.57部および水20.93部を加えて攪拌し、硬化性ゴム組成物を得た。
硬化性ゴム組成物について測定した引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)、100%引張応力M100 (MPa)および(Tb ×Eb 4)/108 の値、ならびに、硬化性ゴム組成物を用いて作製したゴム繊維複合体について測定した耐摩耗性試験および耐動的疲労性試験の結果を表2に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)50部に対してエポキシ樹脂の水性分散体(濃度55%)1.82部、エポキシ樹脂硬化剤の水性分散体(濃度50%)2部および水26.18部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)50部に対してエポキシ樹脂の水性分散体(濃度55%)3.64部、エポキシ樹脂硬化剤の水性分散体(濃度50%)4部および水22.36部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(40%濃度)75部に対してイソシアネート樹脂3部および水3部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0065】
(比較例1)
レゾルシノール(和光純薬製)11部、ホルムアルデヒド(和光純薬製、濃度37%)8.1部および水酸化ナトリウム(濃度10%)3.0部を水194部に溶解し、20℃、湿度65%で6時間静置して熟成させた。得られたレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液12.3部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)1.46部および水33.84部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0066】
(比較例2)
比較例1と同様にして調製したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液12.3部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)0.58部および水34.72部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0067】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で調製したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液24.6部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)0.58部および水22.42部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2が示すように、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスに、接着剤樹脂としてメラミン樹脂、エポキシ樹脂またはイソシアネート樹脂を配合してなる、式(I)および式(II)を充足する硬化性ゴム組成物は、いずれも耐摩耗性および耐動的疲労性に優れたゴム繊維複合体を与えた(実施例1〜4)。
これに対して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスの固形分100部に対して、接着剤樹脂としてエポキシ樹脂5部(ただし硬化剤を添加せず。)およびレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂5部を添加して得た、M100 が1未満で式(II)を充足せず、かつ、(Tb ×Eb 4)/108 の値が1,000未満で式(I)も充足しない硬化性ゴム組成物を用いると、ゴム繊維複合体の耐摩耗性および耐動的疲労性は共に不十分であった(比較例1)。
比較例1の硬化性ゴム組成物のうちエポキシ樹脂を2部に減じて、式(II)を充足しないが式(I)を充足するようにした硬化性ゴム組成物は、耐動的疲労性に優れるが耐摩耗性に大きく劣るゴム繊維複合体を与えた(比較例2)。
また、比較例2の硬化性ゴム組成物のうちレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を倍の10部として、式(I)を充足しないが式(II)を充足するようにした硬化性ゴム組成物は、耐摩耗性に優れるが耐動的疲労性に劣るゴム繊維複合体を与えた(比較例3)。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、ゴム繊維複合体に優れた耐摩耗性および耐動的疲労性を付与することができる、水系のゴム組成物が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを含む硬化性ゴム組成物、並びに、該ゴム組成物を塗布し、加熱した繊維または金属に、ゴムを積層してなる、ゴム繊維複合体およびゴム金属複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムと繊維との複合体は、ベルトやゴムホース、ダイアフラムなどの多くの分野で使用されている。ゴム繊維複合体ベルトの分野では、タイミングベルト、ポリリブドベルト、ラップドベルト、Vベルト、工業用コンベアベルト、産業機器等の送り用平ベルトおよび各種機器における伝達ベルト等があり、通常、織布状基材とゴムとが貼り合わさった複合体として形成されている。これらのゴム層に、従来、耐油性ゴムであるクロロプレンゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(以下、「ニトリルゴム」と記すことがある。)が用いられていたが、近年、ニトリルゴムの持つ炭素−炭素二重結合を水素化した高飽和ニトリルゴムが耐熱性と耐油性とに一層優れているとして用いられるようになっている。
【0003】
上記のゴム繊維複合体は、歯車との噛み合いによる摩耗を軽減するために、また、織布状基材と高飽和ニトリルゴムとの接着力を高めるために、ゴムを有機溶剤に溶解させた溶剤系ゴム糊を織布状基材に塗布して加熱する処理が施されていたが、最近は、有機溶剤の環境汚染を防止する観点等から水系ゴム糊での処理技術が要求されるようになった。
水系ゴム糊としては、ヨウ素価が120以下の高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着剤組成物が提案された(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、高飽和ニトリルゴムラテックスとレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む接着剤組成物で処理した繊維は、溶剤系ゴム糊で処理した繊維と比較して、耐摩耗性が必ずしも十分ではなかった。
これに対して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂と芳香族系エポキシ樹脂とを配合してなる接着剤組成物が提案された(特許文献3参照)。その結果、耐油性、耐熱性および耐摩耗性に優れたゴム繊維複合体を環境汚染の懸念なく製造できるようになった。しかしながら、ゴム繊維複合体ベルトには、今や、高速走行性、耐久性のなお一層の向上が要求されており、そのためには、ゴム繊維複合体が耐摩耗性に加えて高い耐動的疲労性を備えていることが求められる。この要請に応えられるゴム組成物はいまだ出現していない。
【0004】
一方、ゴム糊を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板や、ゴム糊を金属板に塗布して加熱し、得られた被膜にゴムを積層してなるゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性などに優れたガスケット、ゴムライニング金属部品などとして使用されている。しかし、これらのゴム被覆金属板やゴム金属複合体に対しても堅牢性、耐久性等の向上が要請されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−248879号公報
【特許文献2】
特開平3−167239号公報
【特許文献3】
特開平8−333564号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、形成されるゴム繊維複合体に優れた耐摩耗性および耐動的疲労性を付与することができる、水系の硬化性ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該ゴム組成物を用いてなるゴム繊維複合体を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記ゴム組成物を金属やゴム金属複合系に適用することにより、優れた耐久性および堅牢性を有するゴム被覆金属板およびゴム金属複合体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、特定の接着剤樹脂を配合してなる硬化性ゴム組成物が、その硬化物の引張強度と伸びの4乗との積、および、引張弾性率がそれぞれ特定値以上となる場合に、該硬化性ゴム組成物を繊維に塗布して加熱し、次いでゴムと接着させると、得られるゴム繊維複合体の耐摩耗性および耐動的疲労特性が飛躍的に向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、以下1〜4の発明がそれぞれ提供される。
1. ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にある硬化性ゴム組成物。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
2. 請求項1記載の硬化性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴムを積層してなるゴム繊維複合体。
3. 上記1記載の硬化性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板。
4. 上記3記載のゴム被覆金属板のゴム被膜に、ゴムを積層してなるゴム金属複合体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の硬化性ゴム組成物は、ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にあることを特徴とする。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
【0010】
本発明で使用するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムとしては、共役ジエン、α,β−エチレン性不飽和ニトリル、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸および必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体を共重合して得られるニトリルゴムが後述のヨウ素価の基準を満たせば、それを使用することができる。しかし、ヨウ素価の基準を満たさない場合は、該ニトリルゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化することにより調製することができる。該ゴム中のこれらの単量体単位の構成比率は、共役ジエン単量体単位が、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%;α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位が、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%;α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位が、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%;および、必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体の単位が、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜25重量%である。
【0011】
共役ジエンとしては、炭素数4〜12の脂肪族共役ジエン化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、1,3−ブタジエン、ハロゲン置換1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ニトリルとしては、ニトリル基を有する炭素数3〜18のα,β−エチレン性不飽和化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。カルボキシル基含有ニトリルゴム中のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると架橋物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、炭素数3〜18のカルボキシル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物であり、かかる化合物には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルのほか、重合反応時にカルボキシル基を有する化合物に変化するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が含まれる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどが例示される。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の導入によるカルボキシル基含有ニトリルゴム中のカルボキシル基の量は、接着性および耐摩耗性を向上させるためには、該ゴム100重量部当たり好ましくは1×10−4当量(ephrと記す)以上であり、より好ましくは1×10−3〜2×10−1ephrの範囲である。
【0014】
前記必要に応じて加えられるその他の共重合可能な単量体としては、非共役ジエン単量体、α−オレフィン、芳香族ビニル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル、フルオロオレフィン、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
非共役ジエンとしては、炭素数5〜12の非共役ジエンが使用され、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが例示される。α−オレフィンは、炭素数2〜12の末端の炭素とそれに隣接する炭素との間に二重結合を有する鎖状モノオレフィンで、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
【0015】
芳香族ビニルは、スチレンおよび炭素数8〜18のスチレン誘導体であり、該誘導体の例としてはα−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸と炭素数1〜12の脂肪族アルコールとのエステルであり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、イタコン酸モノエチル、フマル酸モノブチルなどが例示される。
フルオロオレフィンは、炭素数2〜12の不飽和フッ化化合物で、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニルなどが例示される。
【0016】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが例示される。
【0017】
本発明で使用するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムには、必要に応じて自己架橋性単量体単位を存在させてもよい。自己架橋性単量体単位を存在させることによって、耐水性を改良することができる。必要に応じて加えられる自己架橋性単量体の具体例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド等が例示される。特に、硬化性ゴム組成物を塗布して加熱することによって硬化処理した繊維の耐摩耗性を改良する観点からはN−メチロール基を有するN−メチロール(メタ)アクリルアミドが好適である。
かかる自己架橋性単量体単位のカルボキシル基含有ニトリルゴム中の量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。該単量体単位の量が過度に多いと、硬化性ゴム組成物を塗布し、硬化した繊維の屈曲性が損なわれるので好ましくない。
【0018】
上記カルボキシル基含有ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、特に好ましくは30以上である。ムーニー粘度が小さすぎると硬化物の機械的特性が低下するおそれがある。
【0019】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、上記の単量体を共重合して、あるいは必要により得られた共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することによって得ることができる。共重合の方法としては、公知の乳化重合法や溶液重合法によれば良い。尚、共役ジエンとして1,3−ブタジエン等を用いた場合においては、その共重合割合が前述の好ましい範囲であるときは、共重合体のヨウ素価が通常は120を超えるため、ヨウ素価120以下の高飽和とするために、通常は後述するように共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化する。
【0020】
ニトリルゴムの炭素−炭素二重結合を水素化する方法としては、上記単量体を用いて乳化重合を行って製造したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを用い、該ゴム中の炭素−炭素不飽和結合に対して水素化反応を行う水層水素化法と、カルボキシル基含有ニトリルゴムを有機溶媒に溶解した溶液中で、該ゴム中の炭素−炭素二重結合を水素化した後、該溶液から転相法により溶媒を水に変換してラテックスにする油層水素化法がある。生産性および製造コストの観点からは水層水素化法が好ましい。
【0021】
水層水素化法では、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび水素化触媒を攪拌機付きのオートクレーブに仕込み、溶存酸素を減圧や不活性ガスによるパージで除去した後、水素を加圧状態で封入して水素化反応を行う。
仕込みの原ラテックスの固形分濃度は、凝集化を防止するため20重量%以下であることが好ましい。
【0022】
水層水素化法における水素化触媒は、水で分解しにくいパラジウム化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、安息香酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ジクロロ(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、ゴム重合体重量当たり、好ましくは5〜6,000ppm、より好ましくは10〜4,000ppmである。
【0023】
水層水素化法の反応温度は、0〜300℃、好ましくは20〜150℃である。また、水素圧は、0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜10MPaである。
水素化の反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率等を勘案して選定される。
【0024】
水素化反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
【0025】
油層水素化法におけるカルボキシル基含有ニトリルゴムの有機溶媒溶液は、溶液重合によって該ゴムを得て、必要により、有機溶媒で濃度を整えて調製するか、乳化重合で得た該重合体のラテックスを凝固、乾燥した後、有機溶媒に溶解して調製する。
油層でカルボキシル基含有ニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相してラテックスを調製する方法は、特開昭63−248879号公報に記載されている、油層のニトリルゴムを水素化し、次いで媒体を水系に転相する方法を準用することができる。
【0026】
上記方法で得られるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの水素化率は、ヨウ素価で120以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。ヨウ素価が大きすぎると硬化性ゴム組成物の硬化物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0027】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスには、本発明によって得られる効果が損なわれない範囲で、ヨウ素価が120より大のニトリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックスおよびその変性ラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、天然ゴムラテックス、アクリルゴムラテックス等の1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラッテクスの固形分濃度は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%である。該ラテックスの固形分濃度が高すぎると繊維部材への塗布が困難になるおそれがあり、逆に低すぎると塗膜の厚みが薄すぎて接着性が低下する可能性がある。
【0029】
本発明の硬化性ゴム組成物においては、上記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、接着剤樹脂としてメラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が配合される。ここで、これら3種は、樹脂の前駆体であってまだ樹脂ではないが、慣例により「樹脂」の表現を用いる。
【0030】
メラミン樹脂は、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)の3つのアミノ基の1、2または3個をそれぞれメチロール化したメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどのメラミンメチロール化物を70〜90℃に加熱してメチレン化反応を行わせて縮合、硬化させてできる樹脂である。メラミンメチロール化物は、pH7〜8にてメラミンに対して3〜6倍モルのホルムアルデヒドを反応させて得られる。
本発明組成物において、メラミン樹脂を配合する場合は、上記のメラミンメチロール化物を用いても、メラミンメチロール化物の初期縮合体を用いても良い。いずれの場合も縮合を進展させるために酸性の硬化剤を添加し、pH5以下にすることが好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂は、特に限定されず、芳香族系エポキシ樹脂、脂環族系エポキシ樹脂および脂肪族系エポキシ樹脂のいずれも使用できるが、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。芳香族系エポキシ樹脂は、多価フエノールとエピクロルヒドリンとの縮合反応生成物である。かかる芳香族系エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下で反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下で反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、あるいはこれらの樹脂の臭素化樹脂ならびにウレタン変性樹脂が実用的である。また、ノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂も使用することができる。
【0032】
本発明組成物において、エポキシ樹脂を配合する場合は、上記縮合反応生成物の2量体以上である液状のものを使用する。また、液状エポキシ樹脂と共に硬化剤を配合するのが好ましい。
【0033】
これらの液状エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、通常、3000以下、好ましくは50〜2000であると硬化性ゴム組成物の硬化物の耐摩耗性が顕著に改良される。
【0034】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、ジシアンジアミド;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;2−n−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体;イソフタル酸ジヒドラジド;N,N−ジアルキル尿素誘導体;N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体;無水フタル酸、ドデシルコハク酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロペンタジエン無水マレイン酸付加物、無水ピロメリット酸、クロルエンジック酸無水物のような酸無水物;イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンのようなポリアミン;ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンのようなアミノアルキル環状化合物;三フッ化ホウ素錯化合物;各種ダイマー酸とジアミンの付加物よりなるポリアミドアミンなどが挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
該硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、通常、1〜120重量部、好ましくは3〜100重量部である。この量が少なすぎると硬化不良を起こして、各種強度を著しく低減させる原因となり、逆に多すぎると加熱時に過剰の発熱反応による熱劣化を起こし、硬化物の機械的強度の顕著な低下や変色を惹起する。
【0035】
イソシアネート樹脂は、−N=C=O基を2〜4個有する有機化合物(有機イソシアネート)を架橋、硬化させて得られる樹脂で、該有機イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと略)、2,6−トリレンジイソシアネート(以下2,6−TDIと略)、及びこれらの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略)、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水添MDI、ベンゼントリイソシアネ−ト、リジンエステルトリイソシアネ−ト、1,6,11−ウンデカントリイソシアネ−ト、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネ−ト、ビシクロヘプタントリイソシアネ−トなど及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、MDI、2,4−TDI及びこれらの混合物が好適である。
【0036】
有機イソシアネートを硬化させるためには、通常、活性水素化合物の硬化剤を存在させる。かかる硬化剤としては、ポリオール類、多価アミン類、ポリチオール類、水などがある。
ポリオ−ル類としては、2〜4個の水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、分子量60〜300のものが好ましい。かかるポリオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコ−ル)、ジエチレングリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−メタノールなどの低分子量グリコール類;これらのポリオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、またはブチレンオキサイドを付加したポリエチレンエーテルポリオール、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリブチレンエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオール類;ハイドロキノンにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどを2〜4モル付加したジオール類などが例示される。これらは1種単独または2種以上併せて使用される。
【0037】
多価アミンの例としては、脂肪族多価アミン、芳香族多価アミンなどが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。
脂肪族多価アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメ−ト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミンとしては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらは1種単独または2種以上併せて使用される。
【0038】
イソシアネート樹脂100重量部に対する上記硬化剤の配合量は、通常、0〜120重量部、好ましくは0〜100重量部である。この量が多すぎると加熱時に過剰の発熱反応による熱劣化を起こし、各種強度が低下したり変色したりする可能性がある。
本発明組成物において、イソシアネート樹脂配合の場合は、上記の硬化剤を配合しなくても、環境に存在する湿気が硬化剤の作用をして尿素結合を形成して硬化させることが可能である。
【0039】
メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスの固形分100重量部に対して、硬化剤を除いた乾燥重量基準で、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜50重量部の割合で配合される。該配合量が少なすぎると硬化性ゴム組成物の接着強度が低下する可能性がある。逆に、該配合量が多すぎると接着剤層が硬くなり過ぎて柔軟性が損なわれるために繊維の耐摩耗性が低下するおそれがある。
接着剤樹脂として、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂に加えて、式(I)および式(II)を満たす範囲で、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール、エチレン尿素などのその他の接着剤樹脂を配合することは可能である。
また、本発明の硬化性ゴム組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、充填剤、可塑剤、老化防止剤、増粘剤等の添加剤を添加しても良い。
【0040】
本発明の硬化性ゴム組成物の調製法は、特に限定されず、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスと、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂とを均一に混合すれば良い。混合方法は、容器内のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスに撹拌下で上記の少なくとも1種の樹脂を少量づつ混入させる方法、ラテックスを移送する流路に上記少なくとも1種の樹脂をラテックスの流量に大略比例した流量で注入する方法等がある。
【0041】
本発明の硬化性ゴム組成物においては、該組成物そのものを加熱して接着剤樹脂を架橋させた硬化物において、その引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係を有する必要がある。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II)
ここで、該組成物の硬化物試料の作製法は以下の通りである。先ず、水平に置かれたステンレス鋼製などの内面が平滑な深さ5mmの平皿状の型枠内に該組成物を流し込み、20℃、湿度65%で48〜120時間静置して乾燥させる。次いで、型枠から剥がして得た厚さ0.5±0.1mmの塗膜をオーブンにて120〜300℃で数分〜数時間熱処理してシートを得る。該シートからダンベル7号形の試験片を切り出す。引張強度、伸びおよび100%引張応力の試験法は、JIS K6251に準拠する方法による。
式(I)の左辺の値が1,000より小さいとゴム繊維複合体の耐動的疲労性が低下するおそれがある。また、式(II)で、M100 が1より小さいと、ゴム繊維複合体の耐摩耗性が低下する可能性がある。
【0042】
本発明のゴム繊維複合体は、上記の硬化性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴム(以下、「被着ゴム」と記すことがある。)を積層してなるものである。ここで、該組成物を繊維に塗布すると、該組成物はしばしば繊維に含浸するが、「塗布」は含浸も含むものとする。
また、塗布する方法には限定はなく、ロール、ローラー、コーター等で展延する方法、該組成物中に繊維を浸漬して取り出す方法などがある。
複合の形態は繊維層と被着ゴム層とを各一層積層する形態、繊維層を上下から被着ゴム層で挟む形態、被着ゴム層と繊維層とを交互に複数層積層する形態などがある。
【0043】
本発明のゴム繊維複合体において、上記硬化性ゴム組成物を塗布する繊維の形態は、特に限定されず、ステープル、フィラメント、コード、ロープ、網状または布帛状の織布等、種々の形態の繊維に適用できる。また、繊維の種類も特に限定されず、綿、ビニロン、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ウレタン弾性糸等種々の繊維に対して適用できる。特に、ゴム繊維複合ベルトを得る場合には、帆布等の織布状の基材を使用することが好ましい。
【0044】
繊維に硬化性ゴム組成物を塗布し、加熱する(以下、本発明組成物を塗布して加熱する処理を「硬化処理」と記すことがある。)方法には特に制限がないが、一例を示せば以下の通りである。先ず、繊維に硬化性ゴム組成物を塗布して、必要ならば、好ましくは100〜150℃で0.5〜10分間乾燥した後、加熱する。加熱条件は、塗布により付着した硬化性ゴム組成物を硬化させるのに十分な、例えば130〜250℃で数分〜数十分間の温度と時間である。
硬化処理した繊維において、硬化性ゴム組成物の固形分の付着量は特に限定されないが、好ましくは、繊維100重量部に対して2〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部である。
【0045】
本発明のゴム繊維複合体において被着ゴムは、特に限定されないが、分子構造の不飽和結合部を水素化した高飽和型のゴム、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位含有ゴムなどが好ましい。これらの具体例としては、高飽和ニトリルゴム、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム、高飽和イソプレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和イソプレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−アクリル酸−アクリロニトリル共重合体ゴム、高飽和ブタジエン−エチレン−アクリロニトリル共重合体ゴム、アクリル酸ブチル−アクリル酸エトキシエチル−ビニルノルボルネン−アクリロニトリル共重合体ゴム等が挙げられる。
特に、ゴム繊維複合体ベルト用の被着ゴムとしては、耐油性、耐熱性の観点から、高飽和ニトリルゴムが好ましい。
【0046】
該高飽和ニトリルゴムの水素化率は、ヨウ素価で120以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。ヨウ素価が大きすぎると繊維に硬化性ゴム組成物を処理してなるゴム繊維複合体の耐熱性が低下するおそれがある。
該高飽和ニトリルゴムのアクリロニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは12〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。アクリロニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると架橋物の耐油性が劣るおそれがあり、逆に多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
また、該高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜300、より好ましくは20〜250、特に好ましくは30〜200である。ムーニー粘度が小さすぎると成形加工性や機械的特性が低下するおそれがあり、大きすぎると成形加工性が低下する可能性がある。
かかる高飽和ニトリルゴムの例としてはZetpole 2010H、同2020、同1020、同2010(いずれも日本ゼオン社製)などがある。
【0047】
上記被着ゴムには、硫黄加硫剤、過酸化物系加硫剤などの加硫剤のほか、ゴム加工に際して通常配合される、カーボンブラック、短繊維などの補強剤;老化防止剤;可塑剤;顔料;粘着付与剤;加工助剤;スコーチ防止剤;などの配合剤を適宜添加することができる。
【0048】
本発明のゴム繊維複合体を得るには、硬化処理をした繊維に、加硫剤等を添加したゴム配合物を展延し、次いで加圧および加熱する方法を採ると好ましい。ゴム配合物の展延、加圧は圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行うことができる。
【0049】
加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaであり、加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃で、操作時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。この方法により、被着ゴムの加硫および成形、並びに、硬化処理した繊維と被着ゴム間の接着を同時に行うことができる。
圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とするゴム繊維複合体の被着ゴムの所望の表面形状を実現する型を形成させておく。
【0050】
本発明のゴム被覆金属板は、本発明の硬化性ゴム組成物を金属板等の金属部品に塗布して加熱してなるものである。また、本発明のゴム金属複合体は、該ゴム被覆金属板に形成された被膜にゴムを積層してなるものである。
金属としては、ステンレス鋼、スチール鋼、アルミニウムなどが使用される。金属板等の金属部品への硬化性ゴム組成物の塗布は、ロール、コーター、ローラ塗り、はけ塗りなど公知の方法で行えばよい。塗布量は、ゴム組成物を加熱、硬化させて得られる被膜の厚さが、通常、1μm〜1mm、好ましくは10〜500μmとなる量である。加熱は、限定されないが、通常、130〜250℃で数分〜数十分行う。
こうして得られたゴム被覆金属板は、その状態でガスケット、ゴムライニング金属部品などに利用することができる。また、さらにゴムを積層してなるゴム金属複合体は、バルブや弁などとして有用である。積層する被着ゴムとしては、上記のゴム繊維複合体の説明における被着ゴムとして例示したゴムを好適に使用することができる。被着ゴムの積層方法は上記ゴム繊維複合体の場合と同様に行うことができる。
【0051】
本発明のゴム繊維複合体は、硬化性ゴム組成物で硬化処理された繊維の耐摩耗性および耐動的疲労性に優れる。そのため本発明のゴム繊維複合体は、特にベルト、ホース、チューブ、ダイアフラムなどに好適に使用できる。
ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルトなどが挙げられる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホースなどが挙げ挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラムなどが挙げられる。
本発明のゴム繊維複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロールなどの工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動などの運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータなどが挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケットなどが挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器などのOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロールなどの繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロールなどの製鉄用ロール;などが挙げられる。
【0052】
また、本発明のゴム金属複合体は、耐油性、耐熱性に加えて堅牢性および耐久性に優れるので、気体又は液体用バルブ、弁、シール、ワッシャー、ロール、防振ゴム部品等に好適に使用される。また、ゴム被覆金属板も耐油性、耐熱性に、堅牢性などに優れるので、シリンダーガスケットやインテークマニホールドガスケットなどの自動車用ガスケット、空気圧機器、冷凍機、ポンプなどのコンプレッサーガスケット、シールワッシャー、その他配管フランジ用ガスケットなどのメタルコーティングガスケット;化学薬品や海水などの配管、熱交換器、貯槽、反応槽、タンクローリなどのゴムライニング部品;等に好ましく利用される。
【0053】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。部および%は、特に記載のない限り、重量基準である。なお、試験および操作は下記によった。
【0054】
(1)硬化性ゴム組成物の硬化物の引張強度、伸びおよび100%引張応力
水平に置かれたステンレス鋼製の内面が平滑な深さ5mmの平皿状の型枠内に硬化性ゴム組成物を流し込み、20℃、湿度65%で72時間静置した。乾燥した硬化性ゴム組成物を枠から剥がして得た厚さ0.5mmの塗膜を空気循環式オーブンにて160℃で30分間加熱し、得られた硬化物のシートからダンベル7号形の試験片を切り出した。JIS K6251に規定の試験法に準じて、インストロン型の引張試験機を用いて300mm/分の速度で引張り試験を行い、引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)を測定した。
【0055】
(2)ゴム繊維複合体の耐摩耗性試験
硬化性ゴム組成物を20℃、24時間静置して熟成させた後、ナイロン66からなる布に浸漬して塗布し、該基材100部に対して固形分が20部付着するように硬化性ゴム組成物を含浸させた後、引き上げて空気循環式オーブンにて110℃で10分間、次いで150℃で3分間加熱し、硬化処理ナイロン基材を得た。次に、表1記載の配合処方でバンバリーミキサーにより15分間混練して調製したゴム配合物を前記硬化処理ナイロン基材15cm×15cmの上にロールにて厚さ1mmに展延した後、圧縮機で圧力0.1MPa、温度160℃で30分間プレスしてゴムナイロン基材複合体を得た。
ゴムナイロン基材複合体について、カーペット用テーバ摩耗試験機を用いて耐摩耗性を試験した。試験条件は荷重1kg、摩耗表面温度120℃(赤外線ランプ照射)、ディスク回転数1万回で行った。評価の基準は、下記の通り。
5:摩耗が認められない、または、摩耗が認められるものの、ナイロンの表面積の25%以下である。
4:ナイロン基材の表面積の26〜50%に摩耗が認められる。
3:ナイロン基材の表面積の51〜75%に摩耗が認められる。
2:ナイロン基材の表面積の76〜90%に摩耗が認められる。
1:ナイロン基材の表面積の90%超に摩耗が認められる。
【0056】
【表1】
【0057】
(注)
*1:高飽和ニトリルゴム ヨウ素価11、アクリロニトリル単量体単位含有量36%、ムーニー120以上(日本ゼオン社製)。
*2:Zetpol2010H(上記*1参照)に、ジメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム組成物(日本ゼオン社製)。
【0058】
(3)ゴム繊維複合体の耐動的疲労性試験
上記(2)と同様にして得たゴムナイロン基材複合体についてJIS K6260の方法によりゴムナイロン基材複合体が破壊するまでの屈曲回数を測定した。評価の基準は、下記の通り。
○:屈曲回数が10万回以上。
×:屈曲回数が10万回未満。
【0059】
(4)カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスの調製
内容積1リットルの耐圧ボトルに、水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル35部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、ブタジエン60部を圧入した。過硫酸アンモニウム0.25部を添加し、反応温度40℃で重合反応してカルボキシル基含有アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックスを得た。次に、全固形分濃度12重量%に調整したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス400ミリリットル(全固形分48g)を攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した後、水素化触媒として酢酸パラジウムをその4倍モルの水240ミリリットルに溶解して添加した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態で、内容物を50℃とし、6時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて、固形分濃度が約40%となるまで濃縮してヨウ素価28のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスを得た。
【0060】
(5)メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂
(a)メラミン樹脂:Sumitex Resin M−3(住友化学社製)
硬化剤:Sumitex Accelerator ACX(住友化学社製)
(b)エポキシ樹脂:エピレッツ 5003W55(ジャパンエポキシレジン社製)
硬化剤:エピキュア 3255(ジャパンエポキシレジン社製)、
(c)イソシアネート樹脂:アクアネート200(日本ポリウレタン工業社製)
【0061】
(実施例1)
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス50部(濃度40%)、メラミン樹脂の水性分散液(濃度80%)2.5部、メラミン樹脂硬化剤の水性分散体(濃度35%)0.57部および水20.93部を加えて攪拌し、硬化性ゴム組成物を得た。
硬化性ゴム組成物について測定した引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)、100%引張応力M100 (MPa)および(Tb ×Eb 4)/108 の値、ならびに、硬化性ゴム組成物を用いて作製したゴム繊維複合体について測定した耐摩耗性試験および耐動的疲労性試験の結果を表2に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)50部に対してエポキシ樹脂の水性分散体(濃度55%)1.82部、エポキシ樹脂硬化剤の水性分散体(濃度50%)2部および水26.18部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)50部に対してエポキシ樹脂の水性分散体(濃度55%)3.64部、エポキシ樹脂硬化剤の水性分散体(濃度50%)4部および水22.36部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1において硬化性ゴム組成物を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(40%濃度)75部に対してイソシアネート樹脂3部および水3部を加えて調製した他は実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0065】
(比較例1)
レゾルシノール(和光純薬製)11部、ホルムアルデヒド(和光純薬製、濃度37%)8.1部および水酸化ナトリウム(濃度10%)3.0部を水194部に溶解し、20℃、湿度65%で6時間静置して熟成させた。得られたレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液12.3部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)1.46部および水33.84部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0066】
(比較例2)
比較例1と同様にして調製したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液12.3部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)0.58部および水34.72部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0067】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で調製したレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液24.6部に対し、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(濃度40%)40部、エポキシ樹脂水性分散体(濃度55%)0.58部および水22.42部を加え、攪拌して硬化性ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に行った試験の結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2が示すように、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスに、接着剤樹脂としてメラミン樹脂、エポキシ樹脂またはイソシアネート樹脂を配合してなる、式(I)および式(II)を充足する硬化性ゴム組成物は、いずれも耐摩耗性および耐動的疲労性に優れたゴム繊維複合体を与えた(実施例1〜4)。
これに対して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックスの固形分100部に対して、接着剤樹脂としてエポキシ樹脂5部(ただし硬化剤を添加せず。)およびレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂5部を添加して得た、M100 が1未満で式(II)を充足せず、かつ、(Tb ×Eb 4)/108 の値が1,000未満で式(I)も充足しない硬化性ゴム組成物を用いると、ゴム繊維複合体の耐摩耗性および耐動的疲労性は共に不十分であった(比較例1)。
比較例1の硬化性ゴム組成物のうちエポキシ樹脂を2部に減じて、式(II)を充足しないが式(I)を充足するようにした硬化性ゴム組成物は、耐動的疲労性に優れるが耐摩耗性に大きく劣るゴム繊維複合体を与えた(比較例2)。
また、比較例2の硬化性ゴム組成物のうちレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を倍の10部として、式(I)を充足しないが式(II)を充足するようにした硬化性ゴム組成物は、耐摩耗性に優れるが耐動的疲労性に劣るゴム繊維複合体を与えた(比較例3)。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、繊維とゴムとを積層してゴム繊維複合体を形成するために繊維に塗布するゴム組成物として、ゴム繊維複合体に優れた耐摩耗性および耐動的疲労性を付与することができる、水系のゴム組成物が提供される。
Claims (4)
- ヨウ素価120以下のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックスに、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を配合して成る硬化性ゴム組成物であって、前記ゴム組成物の硬化物の引張強度Tb (MPa)、伸びEb (%)および100%引張応力M100 (MPa)の間に下記式(I)および(II)が成立する関係にある硬化性ゴム組成物。
(Tb ×Eb 4)/108 ≧1,000 (I)
M100 ≧1 (II) - 請求項1記載の硬化性ゴム組成物を塗布して加熱した繊維に、ゴムを積層してなるゴム繊維複合体。
- 請求項1記載の硬化性ゴム組成物を金属板に塗布して加熱してなるゴム被覆金属板。
- 請求項3記載のゴム被覆金属板のゴム被膜に、ゴムを積層してなるゴム金属複合体。
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