JP4061910B2 - 電池用銅箔 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池等の電池の電極、例えば負極集電体に用いられる電池用銅箔に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やノート型パソコン等のポータブル機器の普及により小型で高容量に電池に対する要求が高まっている。中でもリチウムイオン電池は軽量でエネルギー密度が高いことから多くの分野で使用されるようになってきている。
【0003】
電池の構造としては、図1に示すような、正極1、セパレータ3及び負極2を重ね合わせて巻いたものと、図示は省略するが、スタック型とよばれ、セルを積み重ねたものとがある。
【0004】
電極、特に負極2の心材として用いられる銅箔は、その製造方法によって大きく二つに分けることができる。一つは鋳造で製造した素材に圧延加工を施して製造する圧延銅箔であり、もう一つは硫酸銅を主とする溶液から銅を電解析出させて製造する電解銅箔である。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
近年、電池用銅箔は極薄化が進んでおり、10μm以下のものも使用されるようになり、破断の発生など製造ラインでの通板性が悪化している。これは、通常の圧延箔の場合、加工後の強度が高く伸びが小さいため、ラインの微妙な張力変動により破断が発生したり、ラインでの乾燥工程により軟化し伸びは回復するものの強度が落ちるため、後工程でのハンドリングに問題が発生すること等に起因し、銅箔を厚くせざるを得ない場合がある。
【0006】
一方、電池の高容量化が進み、充・放電時の負極活物質の膨張収縮により負極心材である銅箔が破断する場合がある。特に電池組み立て時の熱履歴が小さい場合、従来のタフピッチ銅を原料とした銅箔では伸びが回復せず、破断に至る場合がある。
【0007】
したがって、本発明は、電極製造時の熱処理前でも適度の伸びを持ち、熱処理を受けた後も強度が落ちることの少ない電池用の銅箔を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電池用銅箔は、タフピッチ銅や無酸素銅をベースとし、これに質量にして0.01〜0.20%のZr(ジルコニウム)を含有させ、その銅材(但し、Zr以外の添加物が添加されているものは除く)に圧延加工を施した後、熱処理を施してなることを特徴としている。
【0009】
このような銅箔であれば、熱処理条件を選定することで必要な強度と伸びを持った銅箔とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る電池用銅箔は、厚さが20μm以下であることも特徴の一つとしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
まず、無酸素銅やタフピッチ銅のベースに、質量にして0.01〜0.20%のZrを含有する銅材を作製し、圧延加工により銅箔を製造する。その後、この銅箔を熱処理することで、必要に応じた強度と伸びを有するものとする。
【0013】
前記銅材におけるZrは、これが質量にして0.01%未満では固溶量が不足して加熱処理時の結晶粒の粗大化を防止することができない。またZrが質量にして0.20%を超えると加工性が低下すると共に、導電率も低下し電池用負極材として不向きとなる。したがって、本発明においてはZr濃度の範囲を0.01〜0.20mass%と定めた。
【0014】
前記銅箔の熱処理条件は、炉の形式、Zr濃度、厚さ等によって異なるが、例として還元性雰囲気で450℃で4〜6時間が選定される。
【0015】
次に、本発明に係る電池用銅箔の実施例を説明する。
【0016】
酸素含有量が10ppmの無酸素銅をベース材とし、その溶湯に、表1の試料No.1〜8に示すような量のZrを添加して試料用の鋳塊を得た。それらの鋳塊を夫々熱間加工して厚さ12mmの素材に加工した後、冷間加工と焼鈍を繰り返す方法で夫々厚さ200μmの生地材を製造した。更に、この生地材を焼鈍した後、夫々厚さ15μmまで冷間圧延し、最後に還元性雰囲気で450℃×4時間の熱処理を行って試料とした。
【0017】
以上の各試料について所定の特性を確認し、表1に示すような結果を得た。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の結果から明らかなように、Zr濃度の低い試料No.1、2は最終熱処理後に強度が低下しており、十分な強度を有していない。また、Zr濃度の高い試料No.8では、耐熱性がありすぎ、より高温での最終熱処理が必要となる。また、加工性が悪く、他の試料に比較して薄く加工する圧延加工での加工性が悪く、所定の厚さに加工するまでに、より多くの圧延回数が必要であった。これに対しZr濃度が本発明の範囲内のある試料No.3〜7は適度の伸びと強度を有し、導電率も電極に適した高い値を示すことが判る。
【0020】
次に、熱処理を施した試料No.3と6の銅箔について、リチウムイオン電池用の負極材としてカーボン塗工を行ったところ、塗工ラインでは従来のタフピッチ銅を素材としたものよりも伸びがあり、皺などの発生は見られなかった。また、塗工後、素材の強度を確認した結果、引張強さは250N/mm2以上と塗工前の強度と大差はなかった。
【0021】
この塗工した材料を電池に組み立てて過充放電試験を行ったが、負極心材である銅箔に破断やクラックの発生は見られなかった。
【0022】
このように、実施の形態の電池用銅箔によれば、銅材に質量にして0.01〜0.20%の範囲のZrを含有させると共に、その銅材を圧延加工した後、熱処理することで、適度な強度と伸びを持ったものとすることができる。したがって、熱処理条件を選定することにより、必要に応じた強度と伸びを持つ電池電極用銅箔を得ることができる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、所定量のZrを含有する銅材を圧延加工した後、熱処理を施すことで、得られた銅箔の伸びと強度を両立させたので、電極製造時の熱処理前でも適度の伸びを有し電極製造ラインでの破断が防止され、電池の組み立て後の電極の破断を防止することができる。また熱処理後でも強度の低下が少ないので、後工程でのハンドリング性も良好である等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 重ね巻きタイプのリチウムイオン電池の構造を示す図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
Claims (2)
- 銅をベースとし、これに質量にして0.01〜0.20%のZrを添加してなる銅材(但し、Zr以外の添加物が添加されているものは除く)を圧延加工して銅箔となし、その銅箔に熱処理を施してなることを特徴とする電池用銅箔。
- 前記銅箔は、20μm以下の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の電池用銅箔。
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