JP4061741B2 - 半導体スイッチのスイッチング信号調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体スイッチのスイッチング信号調整装置に関し、高電圧化のために自己消弧型の電力用半導体素子を直列多重接続してなる半導体スイッチを用いて構成した半導体電力変換器等において、各電力用半導体素子に加わる電圧分担を均一化して素子破壊を防止するように工夫したものである。特に、電力用半導体素子として絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ(以下「IGBT」と略称する)を直列多重接続してなる半導体スイッチに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体電力変換器(インバータ等)では、高電圧化のために複数のIGBTを直列多重接続してなる半導体スイッチを用いて構成されている。図5はその一例として示したインバータINVである。
【0003】
このインバータINVにおいては、U相の上アームは4つのIGBT1〜4を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成され、U相の下アームは4つのIGBT5〜8を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成され、V相の上アームは4つのIGBT11〜14を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成され、V相の下アームは4つのIGBT15〜18を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成され、W相の上アームは4つのIGBT21〜24を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成され、W相の下アームは4つのIGBT25〜28を直列多重接続してなる半導体スイッチにより構成されている。
【0004】
このようにIGBTを直列多重接続して半導体スイッチ(上下の各アーム)を構成しているため、個別には耐電圧性が低いが高速応答性を有している個々のIGBTの特性を確保しつつ、半導体スイッチ(上下の各アーム)全体としては高い電圧定格を持った半導体スイッチひいては半導体電力変換器が実現できる。
【0005】
上下の各アーム(半導体スイッチ)を構成するため直列多重接続した各IGBT(例えばIGBT1〜4)には、同じゲート信号を入力し、各IGBT(例えばIGBT1〜4)のスイッチングタイミングを揃えるために、ゲートドライバやIGBTは特性の揃ったものを使用する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
直列多重接続した各IGBTの特性及びそれぞれのゲートドライバの特性が揃っている場合には、各々のIGBTのスイッチングタイミングは揃い、各IGBTの電圧分担は均等になる。
【0007】
しかし、IGBTの特性やゲートドライバの特性にばらつきがある場合には、各々のIGBTのターンオンやターンオフのタイミングがずれることがある。例えば、ターンオフのタイミングがずれ、1素子のみが他の素子よりも早くオフした場合には、早くオフした素子は、他の素子がオフするまでの間、1素子のみでオフ動作をしなければならないため、その素子にのみ高い電圧がかかることになる。この電圧が1素子のIGBTの定格電圧を越えた場合には、その素子は破壊されてしまう。
【0008】
このため一般に、IGBTを直列多重接続して使用する場合には、IGBTの特性及びゲートドライバの特性を揃える必要があるが、特性を正確に揃えるのは難しいことであった。
【0009】
また、IGBTの特性やゲートドライバの特性を揃えた場合であっても、時間の経過と共に特性にばらつきが生じる可能性もあり、経年変化まで含めて特性を保証しなければならないという問題もある。
【0010】
また、IGBTの特性やゲートドライバの特性を揃えてもスイッチングのタイミングが揃わない場合には、スナバコンデンサの容量を大きくすることで各IGBTの電圧分担を均一化することは可能であるが、この場合には、結果としてスナバ容量が増加し、半導体電力変換器の効率が低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑み、自己消弧型の電力用半導体素子(IGBT等)の特性やスイッチングドライバ(ゲートドライバ等)の特性にばらつきがある場合でも、各電力用半導体素子のターンオフタイミングを揃えて各電力用半導体素子に加わる電圧分担を均一化することのできる半導体スイッチのスイッチング信号調整装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、
自己消弧型の電力用半導体素子を直列多重接続してなる半導体スイッチにおいて、
各電力用半導体素子に対応して配置されており、入力されたスイッチング信号を、設定された遅れ時間だけ時間遅れさせてから対応する電力用半導体素子のスイッチング端子に送る複数の時間遅れ発生回路と、
各電力用半導体素子に対応して配置されており、各電力用半導体素子の入力端子−出力端子間電圧を測定して測定電圧として出力する複数の電圧測定回路と、
各電力用半導体素子がオフしているときの前記測定電圧のうち、電圧値の高い電力用半導体素子に対応して配置されている前記時間遅れ発生回路に設定した遅れ時間を増加させるように制御する遅れ時間コントローラと、を備えて構成しており、
前記遅れ時間コントローラは、
各電力用半導体素子がオフしているときに各電圧測定回路にて測定した各測定電圧を取り込み、
取り込んだ各測定電圧のうち最も電圧の高いものを基準電圧とし、
各測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きいかどうかを判定し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間だけ増加し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも小さい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を以前のままとする、
ことを特徴とする。
【0013】
また本発明の構成は、
前記遅れ時間コントローラは、
各電力用半導体素子がオフしているときに各電圧測定回路にて測定した各測定電圧を取り込み、
取り込んだ各測定電圧のうち最も電圧の高いものを基準電圧とし、
各測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きいかどうかを判定し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間だけ増加する演算を行い、この演算をして求めた時間を更新した遅れ時間とし、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも小さい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路にすでに設定されている遅れ時間をそのまま更新した遅れ時間とし、
更に、更新した遅れ時間のうち、最も小さい遅れ時間を0とするように、この最も小さい遅れ時間を基準として、更新した各遅れ時間から更新した最も小さい遅れ時間を減算することにより各時間遅れ発生回路用の新たな遅れ時間を求め、この新たな遅れ時間を各時間遅れ発生回路に設定する、
ことを特徴とする。
【0014】
また本発明の構成は、前記電力用半導体素子は、絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態にかかる、IGBT直列多重スイッチのゲート信号タイミング調整装置を示す。同図に示すように、IGBT直列多重スイッチ30は、複数のIGBT41,42・・・4nを直列多重接続して構成されている。各IGBT41,42・・・4nは、ゲート(スイッチング端子)にゲート信号(スイッチング信号)Gが入力されるとターンオンし、ゲート信号Gが入力されなくなるとターンオフする。
【0017】
また各IGBT41,42・・・4nに対応して、複数の時間遅れ発生回路51,52・・・5nが配置されている。各時間遅れ発生回路51,52・・・5nは、ディジタル回路で構成されており、夫々には遅れ時間τ1 ,τ2 ・・・τn が設定される。
【0018】
ゲート信号Gは分配されて各時間遅れ発生回路51,52・・・5nに入力されると、設定された遅れ時間τ1 ,τ2 ・・・τn だけ時間遅れして、各時間遅れ発生回路51,52・・・5nから出力されて各IGBT41,42・・・4nのゲートに入力される。
【0019】
各時間遅れ発生回路51,52・・・5nに設定された各遅れ時間τ1 ,τ2 ・・・τn は、遅れ時間コントローラ60により個別に設定・制御することができる。この場合、各時間遅れ発生回路51,52・・・5nを、50MHzのクロックを持つディジタル同期回路により構成した場合には、20ns単位でゲート信号Gの遅れタイミング時間を制御することができる。この遅れ時間の制御動作の詳細は後述する。
【0020】
なお、各時間遅れ発生回路51,52・・・5nをアナログ回路により構成することもできるが、この場合には遅れ時間の制御の精度が、ディジタル回路の場合に比べて低下するので、ディジタル回路で構成することが望ましい。
【0021】
更に、各IGBT41,42・・・4nに対応して、複数の電圧測定回路71,72・・・7nが配置されている。各電圧測定回路71,72・・・7nは、各IGBT41,42・・・4nのコレクタ−エミッタ間電圧(入力端子−出力端子間電圧)を測定して、測定電圧v1,v2 ・・・vn を遅れ時間コントローラ60に送る。
【0022】
電圧測定回路71は、例えば図2に示すように、オペアンプ71a,71bを用いた差動増幅回路とADコンバータ71cにより構成されている。IGBT41のコレクタ−エミッタ間電圧(入力端子−出力端子間電圧)は、オペアンプ71a,71bを用いた差動増幅回路によってADコンバータ71cの入力レンジに適合するよう調整された後、ADコンバータ71cに入力される。ADコンバータ71cにより得られたディジタルデータである測定電圧v1 は、絶縁を施した上で、時間遅れコントローラ60に送られる。
【0023】
他の電圧測定回路72・・・7nも、電圧測定回路71と同様な回路となっている。なお、各IGBT41,42・・・4nのコレクタ−エミッタ間電圧(入力端子−出力端子間電圧)は、定格電圧の範囲に納まっていれば厳密に均一である必要はないので、電圧測定回路71,72・・・7nのADコンバータはビット数の少ないものでよい。また、電圧測定回路71,72・・・7nのADコンバータ及びオペアンプのグラウンド(GND)は、IGBTのエミッタと等電位にしてあるので、電源は各IGBT41,42・・・4nのゲートドライバの電源と共用可能である。
【0024】
ここで、本実施例にかかるゲート信号タイミング調整装置による遅れ時間制御動作の説明に先立ち、IGBT直列多重スイッチ30において、スイッチングのタイミングがずれた場合における各々の素子(IGBT)にかかる電圧波形の一例を図3を参照しつつ説明し、併せて本発明の制御対象を説明する。
【0025】
各IGBT41,42・・・4nのターンオフのタイミングがずれた場合、早くターンオフしたIGBTは他のIGBTがターンオフするまでの間、その素子のみでオフ状態を維持しなければならないため、高いサージ電圧が発生する。
【0026】
これに対し、ターンオンのタイミングがずれた場合には、遅くターンオンする素子に早くターンオンした素子の分の電圧がかかるので、若干のサージ電圧が発生するが、その大きさはターンオフ時のサージ電圧と比較して小さく、素子の耐圧の観点からは大きな問題とはならない。
【0027】
またターンオフのタイミングのずれは各素子のオフ時の電圧から容易に検出することができるのに対し、即ち、ターンオフ時のタイミングのずれによる電圧のアンバランスはターンオンされるまで維持されるのに対し、ターンオンのタイミングのずれは上記のことから検出することが難しい。
【0028】
結局
▲1▼ターンオフのタイミングがずれた場合、ターンオフタイミングの早いIGBTに大きな電圧が発生し(図3のAの状態)、
▲2▼ターンオフ時のタイミングのずれによる電圧のアンバランスは、ターンオンするまで維持され(図3のBの状態)、
▲3▼ターンオンのタイミングがずれた場合のサージ電圧はターンオフ時と比較すると小さいのである。
【0029】
本発明では、これらの点に着目してターンオフのタイミングのみを制御対象とする。つまり、各IGBT41,42・・・4nのターンオフのタイミングがずれた場合、各IGBT41,42・・・4nのスナバコンデンサの充電時間にばらつきが生じるため、コンデンサ電圧のアンバランスが発生し、その電圧アンバランスはIGBTのオフ時の漏れ電流が小さいために、IGBTが次にターンオンするまでIGBTの電圧アンバランスとして維持される(図3参照)。このためオフ時の定常電圧を測定することでターンオフのタイミングのアンバランスを測定することが可能である。
【0030】
サージ電圧のピーク値のばらつきを測定する場合には、高速なADコンバータで常時電圧を測定する必要があるが、本発明ではオフ時の定常電圧を測定すればよいので特に高速なADコンバータは必要なく、またピーク値を求める必要がないため、常時電圧を測定する必要もないという利点がある。
【0031】
次に、遅れ時間コントローラ60を中心とした、本実施の形態にかかるゲート信号タイミング調整装置による遅れ時間制御動作を説明する。
【0032】
遅れ時間コントローラ60は、図4のフローチャートに示す手順により、演算をして遅れ時間制御動作をする。即ち遅れ時間コントローラ60は、IGBT直列多重スイッチ30のIGBT41,42・・・4nがオフしている時に、定常電圧となった測定電圧v1,v2 ・・・vn を取り込む(図4のステップ1,2)。
【0033】
取り込んだ測定電圧v1,v2 ・・・vn のうち、最も電圧の高いものを基準電圧とする(ステップ3)。最も電圧が高い測定電圧は、各IGBT41,42・・・4nのうち最も早くターンオフした素子に発生する。
【0034】
次に、各IGBT41,42・・・4nの測定電圧v1,v2 ・・・vn が、基準電圧からばらつき許容値を引いた値よりも大きいかどうかを判定し(ステップ4)、測定電圧v1,v2 ・・・vn が、基準電圧からばらつき許容値を引いた値よりも大きい場合には、そのIGBTに対応して配置した時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間だけ増加する演算を行い(ステップ5)、この演算をして求めた時間を更新した遅れ時間とする。なお、1単位時間とは、(1/時間遅れ発生回路の動作周波数)を意味する。また、測定電圧v1,v2 ・・・vn が、基準電圧からばらつき許容値を引いた値よりも小さい場合には、以前の遅れ時間をそのまま更新した遅れ時間とする。
【0035】
結局、最も測定電圧の高い測定電圧(=基準電圧)に対する各測定電圧v1,v2 ・・・vn との差が、ばらつき許容値以内となるIGBTに対応して配置した時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間増加させる演算をする。
【0036】
更に、上述したようにして求めた更新した遅れ時間のうち、最も小さい遅れ時間を0とするように、この最も小さい遅れ時間を基準として、更新した各遅れ時間から更新した最も小さい遅れ時間を減算して、各時間遅れ発生回路51,52・・・5n用の新たな遅れ時間を求める(ステップ6)。
【0037】
上述したようにして求めた、新たな遅れ時間を、各時間遅れ発生回路51,52・・・5nに設定する(ステップ7)。
【0038】
このように各時間遅れ発生回路51,52・・・5nに、新たな遅れ時間を設定することにより、IGBT41,42・・・4nのうち、早くターンオフしたIGBTに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間が長くなる。従って、次回のゲート信号Gが入力されると、前回において早めにターンオフしたIGBTには、前回よりも時間遅れしてゲート信号Gが入力されると共に前回よりも時間遅れしてゲート信号Gの入力が停止される結果、このIGBTのターンオフタイミングが遅くなる。かくして、IGBT41,42・・・4nのターンオフタイミングが揃ってくる。このようにIGBT41,42・・・4nのターンオフタイミングが揃うことにより、IGBT41,42・・・4nのオフ時における測定電圧のばらつきを、ばらつき許容値以内にすることが可能となり、各IGBTにかかる電圧分担が均一化する。
【0039】
なお、ステップ6の操作を行うことなく、ステップ4,5により求めた演算に基づき、早くターンオフしたIGBTに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を、1単位時間づつ増加するようにしても、IGBT41,42・・・4nのターンオフタイミングが揃ってくる。ただし、このような操作のみとすると、時間遅れ発生回路の遅れ時間は増大するのみとなる。そこで、ステップ6の操作を行うことにより、不必要に遅れ時間が大きくなることを防ぐことができる。またステップ6の操作を行うことにより、基準電圧に対するIGBTの電圧の差が、全て、ばらつき許容値以内である場合には、全ての遅れ時間に1単位時間を加えた後で、1単位時間を減ずることになるので(ステップ5,6)、遅れ時間の設定値は変化しない。
【0040】
図4に示す演算をして遅れ時間の更新をしていく場合、ターンオフタイミングのずれが大きいときには、全体のターンオフタイミングが揃うまでに多数回のスイッチングを繰り返し行わなければならず、ターンオフタイミングが揃うまでに時間がかかるという問題が考えられるが、実際には電力変換器の動作中に突然大きくターンオフタイミングがずれることは起こらないと考えられるので、問題はない。
【0041】
また、電力変換器の起動時には遅れ時間の最適値がわからないため、スイッチングのタイミングが揃わず、電圧(オフ時の素子電圧)が不均一となって最悪の場合にはIGBTを破壊する危険がある。このため、電力変換器の起動時には電圧があまり高くない状態でスイッチングを行い、遅れ時間の最適化を行っておく必要がある。
【0042】
例えばインバータの場合、一般に起動時には直流側コンデンサの予備充電を行うが、この予備充電の最中にIGBTのスイッチングを行い、遅れ時間の最適化を行っておく。この際のスイッチングの回数は最低で、(タイミングのずれの最大値×時間遅れ発生回路の動作周波数)回必要である。
【0043】
IGBT直列多重接続時の電圧アンバランスの原因は、スイッチングのタイミングのずれだけでなく、スナバコンデンサの容量のばらつきもその原因となる。本発明では、オフ時の電圧値を用いてフィードバック制御を行うため、スナバコンデンサの容量にばらつきがあった場合にも結果的に電圧分担が均一になるようにスイッチングのタイミングを最適化することが可能である。
【0044】
なお上記実施の形態では、IGBTを直列多重接続した例を示したが、他の自己消弧型の電力用半導体素子(パワートランジスタやパワーMOSFET等)を直列多重接続したものにも、本発明を適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上実施の形態と共に具体的に説明したように、本発明では、複数の自己消弧型の電力用半導体素子を直列多重接続した半導体スイッチにおいて、複数の時間遅れ発生回路を介してスイッチング信号を各電力用半導体素子に入力するようにしておき、オフ時における電力用半導体素子の入力端子−出力端子間電圧が高い電力用半導体素子にスイッチング信号を送る時間遅れ発生回路に設定する遅れ時間を増加するように制御している。
【0046】
このため本発明では、自己消弧型の電力用半導体素子(IGBT等)の特性やゲートドライバの特性にばらつきがある場合でも、各電力用半導体素子(IGBT等)のターンオフタイミングを揃えることが可能となり、各電力用半導体素子に加わる電圧分担を均一化することができる。この結果、電力用半導体素子(IGBT等)を直列多重接続してなる半導体スイッチの定格電圧を、(電力用半導体素子1個の定格電圧×直列数)に近い値とすることができ、半導体スイッチの定格が大きくなるとともに、各素子の破壊を防止することができる。
【0047】
また自己消弧型の電力用半導体素子(IGBT等)やゲートドライバの選別が不要となり、コスト的に有利となる。つまり、同一特性の電力用半導体素子(IGBT等)やゲートドライバを無理に揃える必要がなくなり、ある程度の同一特性範囲内の素子等をそのまま使用することができる。
【0048】
また本発明を用いることにより、自己消弧型の各電力用半導体素子(IGBT等)のスナバコンデンサの容量にばらつきがある場合の各電力用半導体素子(IGBT等)の電圧のばらつきも補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるIGBT直列多重スイッチのゲート信号タイミング調整装置を示す構成図。
【図2】電圧測定回路を示す回路図。
【図3】ターンオフタイミングがずれた時の各素子の電圧状態を示す特性図。
【図4】遅れ時間コントローラにおける遅れ時間制御動作を示すフローチャート。
【図5】インバータの一例を示す構成図。
【符号の説明】
1〜8,11〜18,21〜28 絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ
30 IGBT直列多重スイッチ
41,42・・・4n IGBT
51,52・・・5n 時間遅れ発生回路
60 遅れ時間コントローラ
71,72・・・7n 電圧測定回路
v1 ,v2 ・・・vn 測定電圧
τ1 ,τ2 ・・・τn 遅れ時間
G ゲート信号
Claims (3)
- 自己消弧型の電力用半導体素子を直列多重接続してなる半導体スイッチにおいて、
各電力用半導体素子に対応して配置されており、入力されたスイッチング信号を、設定された遅れ時間だけ時間遅れさせてから対応する電力用半導体素子のスイッチング端子に送る複数の時間遅れ発生回路と、
各電力用半導体素子に対応して配置されており、各電力用半導体素子の入力端子−出力端子間電圧を測定して測定電圧として出力する複数の電圧測定回路と、
各電力用半導体素子がオフしているときの前記測定電圧のうち、電圧値の高い電力用半導体素子に対応して配置されている前記時間遅れ発生回路に設定した遅れ時間を増加させるように制御する遅れ時間コントローラと、を備えて構成しており、
前記遅れ時間コントローラは、
各電力用半導体素子がオフしているときに各電圧測定回路にて測定した各測定電圧を取り込み、
取り込んだ各測定電圧のうち最も電圧の高いものを基準電圧とし、
各測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きいかどうかを判定し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間だけ増加し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも小さい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を以前のままとする、
ことを特徴とする半導体スイッチのスイッチング信号調整装置。 - 前記遅れ時間コントローラは、
各電力用半導体素子がオフしているときに各電圧測定回路にて測定した各測定電圧を取り込み、
取り込んだ各測定電圧のうち最も電圧の高いものを基準電圧とし、
各測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きいかどうかを判定し、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも大きい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路の遅れ時間を1単位時間だけ増加する演算を行い、この演算をして求めた時間を更新した遅れ時間とし、
測定電圧が、前記基準電圧から予め設定したばらつき許容値を引いた値よりも小さい場合には、当該測定電圧となっている電力用半導体スイッチに対応して配置された時間遅れ発生回路にすでに設定されている遅れ時間をそのまま更新した遅れ時間とし、
更に、更新した遅れ時間のうち、最も小さい遅れ時間を0とするように、この最も小さい遅れ時間を基準として、更新した各遅れ時間から更新した最も小さい遅れ時間を減算することにより各時間遅れ発生回路用の新たな遅れ時間を求め、この新たな遅れ時間を各時間遅れ発生回路に設定する、
ことを特徴とする請求項1の半導体スイッチのスイッチング信号調整装置。 - 前記電力用半導体素子は、絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタであることを特徴とする請求項1または請求項2の半導体スイッチのスイッチング信号調整装置。
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