JP4061111B2 - 巻線装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開2002−27714号公報には、装置本体にフライヤ軸を回転自在に支持し、そのフライヤ軸の軸心にワイヤ挿通路を設けると共に、フライヤ軸の軸線方向端部にフライヤを一体的に設けた巻線装置が示されている。このような巻線装置にあっては、ワイヤに張力を掛けながらコアスロットへ巻線することにより確実な巻線を行うことができる。
【0003】
巻線装置におけるワイヤ張力発生装置として、例えば特開平8−322214号公報には、ワイヤボビンから引き出されたワイヤが、テンション装置を通った後、フライヤを設けた巻線装置本体に送られ、そのフライヤによりコアスロットに巻線するようにしたものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記巻線装置では、テンション装置からフライヤに至るまでのワイヤ経路が長く、テンション装置で張力調整しても、その調整結果がフライヤの部分に直接的に反映され難いという問題があった。
【0005】
また、一般的な小型モータの巻線対象部分(一対のコアスロット間)は、巻線の回転軸方向から見て矩形状をなしている。その場合には、図6に示されるように、フライヤ21からコアスロット22に至るワイヤWにあっては、フライヤ21が1回転する間に一対のコアスロット22による4つの角A1・A2・A3・A4を順番に基点としてワイヤWが傾動することを繰り返すようにして巻回される。
【0006】
例えば図6に示されるように、コアスロット21の1つの角A1からフライヤ21の回転軌跡(円形)に至る部分のワイヤの長さLは、次の角A2にワイヤWが触れた時に最大長L1となる。その後は、その角A2を基点としてワイヤWが回転するためそのワイヤの長さLは短くなり、その次の角A3にワイヤWが触れるまで長く伸びていくことになる。したがって、フライヤ21の回転中心からワイヤWが繰り出される場合には、その繰り出し速度としてのワイヤWの線速Vは、フライヤ21の1回転の間に4回増減する。
【0007】
上記したように矩形状の巻線対象にフライヤにより巻回する場合にはワイヤの線速が変化することから、それによりワイヤの張力が変化して、一定の張力でワイヤをコアスロットに巻回することが難しいという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、巻線張力を略一定にし得る巻線装置を実現するために、本発明に於いては、固定軸回りに回転しつつワイヤを繰り出すように設けられたフライヤと、前記フライヤの回転に伴って前記フライヤから繰り出される前記ワイヤを、モータ支持手段により固定支持されたモータコアのコアスロット内に導くためのワイヤガイドとを有する巻線装置であって、前記フライヤにワイヤを導くワイヤ挿通路を有しかつ前記固定軸内に同軸的に回転可能に設けられたインナシャフトを有し、前記インナシャフトから前記フライヤに至る前記ワイヤの経路の途中に、前記ワイヤの張力を略一定にするべく、前記ワイヤの前記フライヤの回転に伴って回転運動する部分に摺接するように前記インナシャフトと同軸的にワイヤ張力調整部材を設けたものとした。
【0009】
これによれば、フライヤの近い所でワイヤの張力を調整することができ、モータコアに巻回する部分のワイヤの張力を効果的に調整し得るため、巻線張力を略一定にした状態で巻線を行うことができる。
【0010】
特に、前記ワイヤ張力調整部材が、環状部材からなり、前記ワイヤの線速が相対的に速くなる部分に前記ワイヤを概ね空走可能にする周方向溝を有することによれば、一対のコアスロット間にワイヤを巻回するように矩形状に巻線する場合にワイヤの線速が変化しても、その線速が速くなる部分においてワイヤを空走させることにより張力が保持される。これにより、線速が遅い部分ではワイヤが摺接することにより張力が増大し得ることと併せて、環状部材を設けると共に線速が速くなる部分に対応して周方向溝を設けるという簡単な構造で、フライヤの回転の全周において張力を略一定にし得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明が適用された巻線装置の要部破断正面図であり、図2はその巻線装置の要部破断平面図である。図示されない固定ベースにブロック状の固定スタンド1が立設されており、その固定スタンド1の側方であって所定の位置に巻線対象のモータコア2が位置している。なお、モータコア2は、そのモータ軸2aを図示されないモータ軸支持装置により把持されて固定状態に保持されている。なお、図ではモータコア2の片側についてのみ図示しているが、反対側にも同一構造のものを配設して同時に巻線を行うようにすることができ、その図示及び説明を省略する。
【0013】
固定スタンド1の側面部には、上記モータコア2側に軸線を向けた固定軸3が突出状態にねじにより固設されている。固定軸3は、図示例では一体物として示されているが、例えばねじ結合された複数の部品からなるものであって良く、その軸心に軸線方向貫通孔を有する円筒状に形成されている。その固定軸3の上記貫通孔内には、適所をベアリングにより軸支されたインナシャフト4が同軸的に回転自在に設けられている。なお、インナシャフト4も、図示例では一体物として示されているが、複数の部品からなるものであって良い。
【0014】
固定軸3の外周には、適所をベアリングにより軸支されたフライヤ本体部5aが回転自在に設けられている。このフライヤ本体部5aも、図示例では一体物として示されているが、複数の部品からなるものであって良い。フライヤ本体部5aには、その外周面の一部からモータコア2に臨むように斜め外方に延出するフライヤアーム5bが一体的に設けられている。このようにして、フライヤ5が構成されている。なお、フライヤ本体部5aの固定スタンド1側には歯付きプーリ5cが形成されており、その歯付きプーリ5cには図示されない駆動モータの駆動プーリとを連結する歯付きベルト6が掛け渡されている。
【0015】
上記インナシャフト4には、固定軸3のモータコア2側端面からモータコア2側に所定量突出する突部4aが同軸的に形成されている。突部4aには例えば複数のベアリングを並べて組み付けた軸受部7が設けられており、その軸受部7にワイヤガイド8の胴部が嵌装されている。したがって、ワイヤガイド8はインナシャフト4に対して相対的に回転自在に支持されている。なお、ワイヤガイド8の上記軸受部7に嵌装される軸受孔8aは、軸受部7に対して挿抜可能な程度の遊びを有する内径にて形成されている。
【0016】
また、インナシャフト4の軸心部には、固定スタンド1側に開口しかつ固定軸3のモータコア2側端面に対応する所までの深さの軸線方向孔が同軸的に形成されている。その軸線方向孔の固定スタンド1側にはワイヤ挿通路としてのワイヤガイドパイプ9が同軸的に挿入されており、軸線方向孔のモータコア2側にはガイドプーリ10が回転自在に設けられている。また、固定スタンド1にも、ワイヤガイドパイプ9に対応して同軸的に位置するようにワイヤガイドパイプ11が装着されている。
【0017】
モータコア2に巻くためのワイヤWは、図示されないワイヤ貯留部から引き出され、両ワイヤガイドパイプ11によりガイドされてワイヤガイドプーリ10に至る。ワイヤWは、ワイヤガイドプーリ10に至るまではインナシャフト4の軸心とほぼ同軸的に走るようにされ、ワイヤガイドプーリ10によりインナシャフト4の略半径方向外向きに向かうようにされている。ワイヤガイドプーリ10により向きを変えられたワイヤWは、フライヤアーム5bに設けられた複数のワイヤガイドプーリ5d・5eによりガイドされ、モータコア2に至る。
【0018】
本巻線装置にあっては、固定軸3の外周に設けられたフライヤ5を回転させると共に、固定軸3の貫通孔内に設けられたインナシャフト4内に挿通したワイヤWをフライヤ5に供給するようにワイヤガイドプーリ10によりガイドしていることから、フライヤ5とインナシャフト4とを連結手段により連結して同期させている。
【0019】
本図示例では、図3に併せて示されるように、インナシャフト4にその軸線を囲うようなU字状溝13を形成し、そのU字状溝13と補完的形状をなす部分を有する掛け渡し部材としてのU字状プレート14を用いている。これにより、図の実線で示される取り付け状態で、U字状溝13の一対の直線溝の底面とU字状プレート14の両アーム部の直線部分とがインナシャフト4の軸線回りに対して係合し得る。このようにして回転方向係合手段が構成されている。
【0020】
また、U字状プレート14は、U字状溝13に図3の矢印Aに示されるようにインナシャフト4の軸線に直交する向きに差し込むようにして取り付けられる。その取り付け状態で、U字状プレート14のU字における両アーム部分の長さがフライヤ本体部5aに至るようにされていると共に、両アーム部分の遊端部がフライヤ本体部5aにねじ15により固着されている。したがって、フライヤ本体部5aが例えば図3の矢印Bに示されるように回転すると、一体的にU字状プレート14がインナシャフト4の軸線回りに回転し、U字状プレート14とU字状溝13との上記係合により、フライヤ本体部5aの回転力がインナシャフト4に伝達される。
【0021】
また、固定軸3とワイヤガイド8とは、それぞれの各軸線方向端面間に隙間をあけて互いに対峙するように配設されている。その固定軸3の軸線方向端面には、図3に示されるように磁気吸引手段を構成する複数のマグネット16が周方向に間隔をあけて配設されている。なお、固定軸3の軸線方向端面とフライヤ本体部5aの軸線方向端面とは同一面上に位置している。
【0022】
そして、ワイヤガイド8の固定軸3に対向する軸線方向端面にも、本図示例にあっては、使用状態において上記各マグネット16に対応して周方向に同様の間隔をあけた磁気吸引手段を構成する複数のマグネット17が配設されている。なお、各対向するマグネット16・17同士は互いに磁気吸引される磁極の組み合わせになっている。これにより、ワイヤガイド8は、固定軸3に対して磁気吸引されて静止状態に保持される。また、いずれか一方を磁性体にしても良い。
【0023】
そして、駆動モータにより歯付きベルト6を介してフライヤ5を回転させて、タングカバー12を用いてコンミテータ2bのタングにワイヤWを掛ける工程と、モータコア2のコアスロット内にワイヤWを巻き付ける工程とを組み合わせて、モータコア2に対する巻線を行う。
【0024】
この時、ワイヤWは、固定軸3とワイヤガイド8との各軸線方向端面間の隙間を介してインナシャフト4からフライヤ5に引き出される。そのような隙間を設けても、ワイヤガイド8と固定軸3とを磁気吸引していることから、何ら問題が生じることがない。
【0025】
そして、上記隙間に臨むように、固定軸3には、ワイヤ張力調整部材としての線速補償プレート18が同軸的に設けられている。なお、ワイヤWの基本的な張力は、本巻線装置本体へのワイヤ供給部側に設けられたテンション装置Tにより一定値に保たれるようにされている。
【0026】
線速補償プレート18は、図4に示されるように、環状部材からなり、上記隙間に臨む面にワイヤ摺接部18aと溝部18bとを周方向に交互に4箇所ずつ有するように形成されている。なお、線速補償プレート18は、図示例では、固定軸3を構成する環状ブロック3aにねじ止めされ、その環状ブロック3aが固定軸3の他の部分に例えばねじ止め固定されて、固定軸3に固設されている。
【0027】
また、線速補償プレート18は、図5に示されるように、セット状態のモータコア2の巻線対象となる一対のコアスロット2bによる矩形状巻回部分の4つの角に各溝部18bを概略対応させたように設けられている。なお、この配置は、図示例の場合であって、一例である。
【0028】
図示例のように矩形状巻回部分にフライヤ5によりワイヤWを巻回する場合には、各角部A1・A2・A3・A4を順番に基点として傾動することを繰り返すようにして巻回されるため、例えば角部A1を基点として矢印Cに示されるように傾動するワイヤWが次の角部A2に接触するまではその長さが増大していく。この時のインナシャフト4から繰り出されるワイヤWの運動は図の矢印Dに示されるように回転運動である。そして、次の角部A2を基点としてワイヤWが傾動し始めたら、その傾動部分の長さが一旦短くなってから増大していく。
【0029】
したがって、ある角部(例えばA1)を基点として傾動しつつ次の基点となる角部(A2)に近づく当たりで、ワイヤWの傾動部分の長さの増大率すなわちワイヤWの線速(繰り出し速度)Vが高く、角部を基点として傾動し始め、ある程度の角度回転するまでは線速Vが低い。したがって、線速Vが高い部分ではワイヤWを空走させるべく、対応する回転角度領域に線速補償プレート18の溝部18bを位置させ、線速Vが低い部分ではワイヤWに摺接抵抗を発生させるべく、対応する回転角度領域に線速補償プレート18のワイヤ摺接部18aを位置させるようにしている。
【0030】
これにより、線速Vが高い部分ではワイヤWが張られるようになるため、必要な張力が保持され、線速Vが遅い部分ではワイヤWが緩むようになるが、ワイヤWのインナシャフト4の軸線を中心とする回転部分がワイヤ摺接部18aに摺接することにより、ワイヤ摺接部18aから先の部分(モータコア2側)に張力が掛かることになる。矩形状の巻線対象の場合にはそのような線速Vの増減箇所が全周で4回発生するため、上記したようにワイヤ摺接部18aと溝部18bとを周方向に交互に4箇所ずつ配設することにより、フライヤ5の1回転の間で張力を略一定に保つことができる。
【0031】
なお、ワイヤ摺接部18aと溝部18bとの周方向長さなどにあっては、モータコアの機種に応じて変更可能であり、各機種別にワイヤ摺接部18aと溝部18bとの形状を変えた線速補償プレートを複数種用意しておくことにより、機種替えに容易に対応可能である。
【0032】
また、ワイヤ摺接部18aから溝部18bに移った瞬間にワイヤWが一瞬緩むようになるが、線速Vが増大している領域であり、直ぐにワイヤWが張った状態になり得る。また、溝部18bからワイヤ摺接部18aに移った瞬間にはワイヤWが一瞬張るようになるが、その位置を角部の移り変わりと合わせることにより、線速Vが遅くなる瞬間に対応させることができ、ワイヤWの張り過ぎを防止することができる。
【0033】
なお、本巻線装置にあっては、上記したように、インナシャフト4とフライヤ5とをU状プレート14を用いて連結するようにして、インナシャフト4とはそのU字状溝13の直線溝部分13aとの係合により、フライヤ5とはねじ結合により、それぞれ回転方向に係合させている。したがって、フライヤ5の取り付け/取り外しが容易であり、メンテナンス性が良い。
【0034】
また、ワイヤガイド8は磁気吸引力により固定軸3に対して連結状態にされており、モータコアの機種変更により別のワイヤガイドに交換する場合などにおいて、磁気吸引力に抗してワイヤガイド8を取り外せば良く、ねじを緩めたり締めたりすることがないため、その交換作業が簡単である。なお、ワイヤガイド8はインナシャフト4の突部4aに軸受部7を介して支持されているが、上記したように、その嵌合状態はゆるみ嵌め程度であって良く、取り付け/取り外し作業は容易である。
【0035】
また、従来例のように歯車機構を用いたりしてワイヤガイドを静止状態にするものにあっては、歯車構のがたによる偏心があり、ワイヤガイドをコアスロットに対して高精度に位置決めすることができないという問題があった。それに対して、本発明によれば、固定軸3との間でワイヤガイド8を静止状態に保持するようにしていることから、ワイヤガイド8の位置決めを高精度化し得るため、スロット開放幅の小さいモータコアの巻線も容易に行うことができる。
【0036】
【発明の効果】
このように本発明によれば、フライヤの近い所でワイヤの張力を調整することができ、モータコアに巻回する部分のワイヤの張力を効果的に調整し得るため、巻線張力を略一定にした状態で巻線を行うことができる。
【0037】
また、一対のコアスロット間にワイヤを巻回するように矩形状に巻線する場合にワイヤの線速が変化するが、特に、環状部材を設けると共に線速が速くなる部分に対応して周方向溝を設けるという簡単な構造で、線速が速くなる部分においてワイヤを空走させることにより張力が保持され、線速が遅い部分ではワイヤが摺接することにより張力が増大し得るため、フライヤの回転の全周において張力を略一定にし得る。さらに、フライヤの回転の全周において張力を一定にすることができるため、高速回転の巻線装置にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された巻線装置の要部破断正面図。
【図2】図1の巻線装置の要部破断平面図。
【図3】図2の矢印III−III線に沿って見た固定軸及びフライヤの端面図。
【図4】線速補償プレートを示す斜視図。
【図5】本発明に基づくモータコアに巻線する場合のワイヤの張力調整要領を示す模式的説明図。
【図6】フライヤによりモータコアに巻線する場合のワイヤの巻線状態を示す模式的説明図。
【符号の説明】
1 固定スタンド
2 モータコア
3 固定軸
4 インナシャフト
5 フライヤ
6 歯付きベルト
7 軸受部
8 ワイヤガイド
9 ワイヤガイドパイプ
10 ガイドプーリ
13 U字状溝
14 U字状プレート
16・17 マグネット
18 線速補償プレート、18a ワイヤ摺接部、18b 溝部

Claims (2)

  1. 固定軸回りに回転しつつワイヤを繰り出すように設けられたフライヤと、前記フライヤの回転に伴って前記フライヤから繰り出される前記ワイヤを、モータ支持手段により固定支持されたモータコアのコアスロット内に導くためのワイヤガイドとを有する巻線装置であって、
    前記フライヤにワイヤを導くワイヤ挿通路を有しかつ前記固定軸内に同軸的に回転可能に設けられたインナシャフトを有し、
    前記インナシャフトから前記フライヤに至る前記ワイヤの経路の途中に、前記ワイヤの張力を略一定にするべく、前記ワイヤの前記フライヤの回転に伴って回転運動する部分に摺接するように前記インナシャフトと同軸的にワイヤ張力調整部材を設けたことを特徴とする巻線装置。
  2. 前記ワイヤ張力調整部材が、環状部材からなり、前記ワイヤの線速が相対的に速くなる部分に前記ワイヤを概ね空走可能にする周方向溝を有することを特徴とする請求項1に記載の巻線装置。
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