JP4058840B2 - 靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼およびその製造方法 - Google Patents

靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐硫化物応力腐食割れ性に優れる低合金鋼に関し、より詳しくは、油井やガス井用のケーシングやチュービング、掘削用のドリルパイプおよびこれらの管のカップリングなどで、降伏応力(YS)が110ksi以上であり、肉厚が20mm以上というような厚肉品の素材として用いて特に好適な靭性と耐食性が良好な低合金鋼とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエネルギー事情の逼迫に伴い、硫化水素を含む原油や天然ガスの掘削、輸送、貯蔵などを必要とする情勢になっている。特に、油井の深井戸化、輸送効率の向上、さらには低コスト化のためにこの分野で用いられる材料についてはこれまで以上に高強度化が要求されている。
【0003】
具体的には、これまでは降伏応力(YS)が80〜95ksi級の鋼管が広く用いられていたが、最近では、110ksi級が使用されるようになり、125ksi以上級や140ksi以上級の要求も高まりつつある。
【0004】
耐硫化物応力腐食割れ性(以下、耐SSC性という)に優れる従来鋼としては、(a) 80〜90%以上のマルテンサイト組織鋼、(b) 粗大な炭化物を含まない鋼、(c) 非金属介在物の少ない清浄鋼、(d) 高温焼戻し鋼、(e) 細粒組織鋼、(f) 高降伏比鋼、(g) 低Mn−低P−低S鋼、(h) 不溶性窒化物を多く含む鋼、(i) Zr添加鋼がある。
【0005】
上記の耐SSC性に優れる高強度低合金鋼を得るための方法には種々の方法があり、その代表的な方法としては、急速加熱法(特開昭54−117311号公報、同61−9519号公報)や短時間焼戻し法(特開昭58−25420号公報)などがある。
【0006】
上記(a) 〜(i) の従来鋼のうち、(b) の粗大な炭化物を含まない鋼は、「鉄と鋼、76(1990)、p.1364」にも示されるように、粗大な炭化物がSSCの起点となる点を考慮し、粗大な炭化物を含まない鋼として開発された鋼である。
【0007】
そして、この粗大な炭化物を含まない鋼は、粗大な炭化物が残存したり、析出成長しないように、種々の成分設計を施したCrを含む低合金鋼を用い、焼入れ後主として短時間焼戻し処理を施すことにより製造可能とされている。
【0008】
これは、耐SSC性が必要とされる鋼では、一般に、焼入れによってCの固溶したマルテンサイト組織とし、その後焼戻し処理を施して微細な炭化物を析出させる。このため、素材鋼には、通常、焼入性を高めるためにCrを添加した低合金鋼が用いられる。
【0009】
また、焼戻し温度が低い場合には、炭化物が旧オーステナイト粒界に膜状に析出するので、これを防ぐために適量のMoを添加した低合金鋼を用い、高温焼戻しすることも行われている。
【0010】
さらに、析出した炭化物は、焼戻し時間が長いと成長して粗大化するので、より短時間に焼戻しするために誘導加熱手段を用いることも行われている。
【0011】
このほか、炭化物は粒界上に析出して粗大化しやすい傾向にあるので、炭化物の分散を図るために、種々の細粒化手段も採られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来知られているCrとMoを含む低合金鋼の炭化物は、M3C 型、M73型およびM236 型として析出する。そのうちのM236 型は、粗大化しやすい炭化物である。熱力学的には、M236型が最も安定で、M73型、M3C型の順に不安定であるので、CrとMoを含む焼入れ焼戻し鋼では、最終平衡相として粗大なM236 型の炭化物がどうしても析出する。また、Mo量がきわめて高い場合には、M2C 型も析出する。このM2C 型の炭化物は、針状であり、応力集中係数が高いので、耐SSC性を低下させる。
【0013】
上記の粗大なM236 型の炭化物の析出抑制方法としては、短時間焼戻し処理が最も効果的であり、このため、従来はこの短時間焼戻し処理法が主として用いられてきたことは前述した通りである。しかし、この短時間焼戻し処理法は、誘導加熱設備の設置が必須であり、過大な設備投資を必要とする。
【0014】
また、十分な細粒化を達成するためには、熱処理を2回以上施したり、焼入れ温度を低くしたりする必要がある。その結果、熱処理コストが高くなるだけでなく、合金元素の固溶量が少なくなるために、合金元素の添加量を増やす必要があって材料コストが上昇する。
【0015】
さらに、細粒化は、必然的に焼入性を下げるので、マルテンサイト組織を確保するためには高速冷却が必須になり、特別な冷却装置の設置が必要となって過大な設備投資を必要とする。
【0016】
また更に、より一層の高強度化を図ったり、厚肉品になると靭性が低下し、油井用鋼に要求される靭性が確保できないという問題もあった。
【0017】
本発明の目的は、M236 型に代表される粗大な炭化物を含まない、耐SSC性に優れた油井用鋼、具体的には降伏応力(YS)が110ksi(965MPa)以上級で、かつ規格最小降伏応力(SMYS)の80%の応力付加時に硫化水素濃度を調整したNACE TM0177浴中でSSCを生じず、しかも製品がカップリングなどの厚肉品であっても靭性が良好な油井用鋼と、この油井用鋼を、合金元素の増量は勿論、誘導加熱設備や特別な冷却装置を用いることなく、比較的簡単な熱処理を施すだけで得ることが可能な製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)の靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高強度油井用鋼と、下記(2)のその製造方法にある。
【0019】
(1)質量%で、C:0.15〜0.3%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1%、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%およびNb:0.003〜0.1%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、不純物として、Pが0.025%以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下、O(酸素)が0.01%以下である低合金鋼からなり、析出している炭化物の総量が1.5〜4質量%であり、炭化物の総量に占めるMC型炭化物の割合が5〜45質量%、M236型炭化物の割合が、製品の肉厚をt(mm)とした時(200/t)質量%以下であることを特徴とする靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼。
上記(1)の靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼においては、その化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.05%以下、B:0.005%以下、Zr:0.1%以下およびW:1%以下のうちから選択された1種以上、および/または、Ca:0.01%以下を含有することが好ましい。
【0020】
(2)質量%で、C:0.15〜0.3%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1%、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%およびNb:0.003〜0.1%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、不純物として、Pが0.025%以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下、O(酸素)が0.01%以下である低合金鋼を1150℃以上に加熱した後、熱間加工を1000℃以上で終了し、引き続いて900℃以上の温度から焼入れし、その後550℃以上、Ac1変態点以下で焼戻した後、さらに850〜1000℃に再加熱して焼入れし、次いで650℃以上、Ac1変態点以下で焼戻す焼入れ焼戻し処理を少なくとも1回施すことを特徴とする、析出している炭化物の総量が1.5〜4質量%であり、炭化物の総量に占めるMC型炭化物の割合が5〜45質量%、M236型炭化物の割合が、製品の肉厚をt(mm)とした時(200/t)質量%以下である、靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法。
上記(2)の靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法においては、油井用鋼の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.05%以下、B:0.005%以下、Zr:0.1%以下およびW:1%以下のうちから選択された1種以上、および/または、Ca:0.01%以下を含有することが好ましい。
【0021】
上記の本発明は、下記の知見に基づいて完成させた。すなわち、本発明者らは、炭化物には、前述したM3C 型、M73型、M236 型およびM2C 型の他にMC型があり、このMC型炭化物は、これらの炭化物のうち最も微細で粗大化しにくいことである。
【0022】
また、上記の規格最小降伏応力(SMYS)の80%の付加応力時における硫化水素濃度を調整したNACE TM0177浴中での耐SSC性は確保できないが、例えば、文献「Metallurgical Transactions A, Volume 16A, May 1985, P935”Sulfide Stress Cracking of High Strength Modified Cr-Mo Steels”」にも示されるように、耐SSC性の改善には0.1%程度のV添加が有効なことに注目した。
【0023】
そして、Crを含む低合金鋼を対象に、鋼の化学組成と炭化物が耐SSC性と靭性に及ぼす影響を詳細に調査した結果、次のことを知見した。
【0024】
MC型の炭化物量を単純に増やすと、かえって耐SSC性が低下する。これは、次の理由によるものと考えられる。
【0025】
MC型炭化物は微細なために、粗大な他の炭化物に比べ、単位体積当たりではマトリックスとの界面積が広くなり、水素のトラップ量が増加して耐SSC性が低下するものと考えられる。実際、MC型の炭化物量が上記の範囲を外れる耐SSC性の劣る鋼の吸蔵水素濃度は、MC型の炭化物量が上記の範囲内の鋼よりも高いことが確認された。
【0026】
また、炭化物の総量が上記の範囲を外れる場合に耐SSC性が低下する理由も上記と同様と考えられる。
【0027】
さらに、製品の肉厚が20mm以上の場合、MC型炭化物を増やしても粗大なM236 型炭化物が多く存在すると油井用鋼に要求される靭性が確保されない。具体的には、製品の肉厚をt(mm)とした時、析出している炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合が(200/t)質量%超であると、シャルピー衝撃試験での遷移温度が−10℃以下の靭性が確保されないだけでなく、耐SSC性も確保されない。このことは、後述する実施例の結果を示す図1と図2からも明らかであり、その理由は次によるものと考えられる。
【0028】
236 型炭化物は、粒界に析出して粒界破壊の起点となって靭性と耐SSC性を低下させるが、肉厚が20mm以上になると、加工度の減少に伴って結晶粒径が粗大化し、この現象がより顕著になるためと考えられる。
【0029】
ところが、炭化物の総量を1.5〜4質量%に制限した上で、総炭化物中に占めるMC型炭化物の割合を5〜45質量%、M236 型炭化物の割合を上記の(200/t)質量%以下にすれば、耐SSC性と靭性が飛躍的に向上し、規格最小降伏応力(SMYS)の80%の付加応力時における硫化水素濃度を調整したNACE TM0177浴中での耐SSC性と油井用鋼に要求される靭性が確保される。
【0030】
しかし、その対象鋼には、少なくとも、質量%で、C:0.15〜0.3%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%、Nb:0.003〜0.1%を必須成分として含む化学組成を有する鋼を用いる必要がある。これは、次の理由による。
【0031】
すなわち、前述したように、多すぎる炭化物は、それだけ吸蔵水素濃度の増加を招いて耐SSC性を低下させたり、粒界に析出して粒界破壊の起点となって耐SSC性と靭性を低下させる。しかし、CとCrの含有量がそれぞれ上記の上限値の0.3%と1.5%を超えると、炭化物の総量とM236 型炭化物の割合がそれぞれ上記の上限値の4%と製品の肉厚tが20mmの時の上限値10%を超え、Vの含有量が上記の上限値の0.3%を超えると、MC型炭化物の割合が上記の上限値の45%を超えるようになる。
【0032】
また、MC型炭化物のMは、主としてVであるが、CrやMoおよびNbも含まれ、特に、MoとNbはVと共存しやすい。このうち、Moの共存量が多いMC型炭化物は、M3 型やM236 型の炭化物に比べれば微細ではあるが、Moの共存量が少ないMC型炭化物に比べて粗大で、水素をトラップする界面積が増加して吸蔵水素濃度の増加を招き、耐SSC性を低下させるが、Nbを添加するとこのMoの共存量が多いMC型炭化物の粗大化が抑制されることが判明した。
【0033】
しかし、Mo含有量が上記の上限値の1%を超えると、Moの共存量が極端に多いMC型炭化物となって粗大化する。また、Nb含有量が上記の上限値の0.1%超であると、焼入れ時に未固溶の粗大なMC炭化物が増加し、たとえそのMC型炭化物量が上記の範囲内の5〜45%であっても、要求される靭性と耐SSC性が確保されない。
【0034】
なお、上記の事実は、従来にあっては、焼戻軟化抵抗を高める目的で高Mo化が進めれてきたが、V、Nb添加鋼においては逆で、低Mo化した方が耐SSC性が向上するという、全く予想外の結果が得られることを意味している。
【0035】
そして、上記の炭化物総量、MC型炭化物の割合およびM236 型炭化物の割合は、上記の化学組成を有する鋼に、終了温度が1000℃以上の熱間加工を施し、この熱間加工終了後、900℃以上の温度から焼入れし、次いで550℃以上、AC1変態点以上で焼戻した(インライン焼入れ焼戻し処理)後、さらに850〜1000℃に再加熱して焼入れし、次いで650℃以上、AC1変態点以下で焼戻す(オフライン焼入れ焼戻し処理)を少なくとも1回施すという、比較的簡単な焼入れ焼戻し熱処理を施せば確保されることも判明した。
【0036】
なお、強度レベルは、主に焼戻し温度を変えることで調整される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の油井用鋼とその製造方法について詳細に説明する。なお、以下において、「%」は「質量%」を意味する。
【0038】
《炭化物》
総量:
炭化物は、後述する化学組成を有する焼入れ焼戻し鋼においては、析出強化に欠かすことができないが、その総量が1.5%未満であると、YSが110ksi以上の強度を確保することが困難になる。逆に、その総量が4%を超えると、水素をトラップする界面積が増加し、吸蔵水素濃度の増大を招いて耐SSC性が低下する。このため、炭化物の総量は、1.5〜4%と定めた。望ましい範囲は、2〜3%である。
【0039】
総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合:
MC型炭化物は、炭化物の粗大化を防ぎ、耐SSC性の改善に効果がある。しかし、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合が5%未満では、その効果に乏しい。逆に、その割合が45%を超えると、MC型炭化物は微細なだけに水素をトラップする界面積が増加し、吸蔵水素濃度の増大を招いて耐SSC性が低下する。このため、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合は、5〜45%と定めた。望ましい範囲は、15〜35%である。
【0040】
総炭化物量中に占めるM236 型炭化物の割合:
236 型炭化物は、粒界に析出して粒界破壊の起点となり、靭性と耐SSC性を低下させる。そして、その割合が、製品の肉厚をt(mm)とした時、(200/t)%を超えると靭性と耐SSC性の低下が著しくなり、所望の靭性と耐SSCが確保できなくなる。このため、総炭化物量中に占めるM236 型炭化物の割合は(200/t)%以下と定めた。望ましくは、肉厚tの如何にかかわらず1%以下であり、低ければ低いほどよい。
【0041】
ここで、炭化物の総量、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合とM236 型炭化物の割合は、それぞれ次に述べる方法によって求められる値である。
【0042】
総量の測定方法:
被検体鋼から採取した重量W1 の試験片を、電解液(10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−残部メタノール)中に浸漬して電流密度20mA/cm2 の条件で所定の時間電気分解する。そして、抽出終了後の試験片重量W2 を求める一方、濾過径0.2μmのフィルターで濾過して得られた抽出残さ(炭化物)の重量W3 を求め、この重量W3 を重量(W1−W2)で除して求める。
【0043】
MC型炭化物とM236 型炭化物の割合算出方法:
上記の抽出残さ(炭化物)を粉砕した試料を対象にX線回折を行い、M3C 型炭化物、MC型炭化物およびM236 型炭化物の特定の回折線の面積から、全炭化物中のMC型炭化物とM236 型炭化物の質量割合とを求める。
【0044】
《鋼の化学組成》
C:
Cは、焼入性を高め、強度を向上させるために必要な元素である。しかし、その含有量が0.15%未満では、焼入性が不足して所望の強度(YS≧110ksi)が得られない。逆に、その含有量が0.3%を超えると、炭化物の総量増加に伴ってトラップされる水素が増加する結果、耐SSC性が低下する。このため、C含有量は、0.15〜0.3%とした。望ましい範囲は、0.19〜0.23%である。
【0045】
Cr:
Crは、焼入性を高め、強度を上昇させるとともに耐SSC性を向上させる元素である。しかし、その含有量が0.2%未満では、焼入性が不足して所望の強度(YS≧110ksi)が得られない。逆に、その含有量が1.5%を超えると、炭化物の総量と炭化物総量中のM236 型炭化物割合が増加し、これに伴ってトラップされる水素が増加して耐SSC性が低下するだけでなく、所望の靭性が確保できなくなる。また、硫化水素を含む環境においては、腐食速度の増加とそれに伴う吸蔵水素濃度の増加を招く。このため、Cr含有量は、0.2〜1.5%とした。望ましい範囲は、0.3〜0.7%である。
【0046】
Mo:
Moは、Crと同様に、焼入性を向上させて高強度を得るとともに、焼戻軟化抵抗を高めて耐SSC性を向上させる元素である。しかし、その含有量が0.1%未満であると、上記の効果が得られない。逆に、その含有量が1%を超えると、MC型炭化物の粗大化を招いて水素のトラップ量を増加させるだけでなく、粗大なM236 型炭化物が析出して耐SSC性が低下する。このため、Mo含有量は、0.1〜1%とした。望ましい範囲は、0.2〜0.4%である。
【0047】
V:
Vは、本発明において、最も重要な元素である。Vは、焼戻し時に微細なSSCの起点となりにくいMC型炭化物として優先的に析出する。その結果、Cを固定するので、SSCの起点となりやすいM236 型炭化物の析出を防止する。しかし、その含有量が0.05%未満では、上記の効果が得られない。一方、その含有量が0.3%を超えると、MC型炭化物の量が多くなりすぎて、トラップされる水素が増加して耐SSC性が低下する。このため、Vの含有量は、0.05〜0.3%とした。望ましい範囲は、0.08〜0.25%である。
【0048】
Nb:
Nbは、鋼中での拡散速度が遅い元素で、MC炭化物中に固溶し、MC型炭化物の粗大化を防ぎ、靭性と耐SSC性を向上させるほか、細粒化にも大きく寄与する。しかし、その含有量が0.003%未満では、上記の効果が得られない。一方、その含有量が0.1%を超えると上記の効果が飽和し、逆に焼入れ時に粗大な未固溶MC型炭化物が析出して靭性と耐SSC性が低下する。このため、Nbの含有量は、0.003〜0.1%とした。望ましい範囲は、0.003〜0.03%である。
【0049】
本発明の油井用鋼は、上記の5成分を必須成分と含む低合金鋼であればよく、他の成分については特に制限されない。しかし、工業的に製造するうえでは、必要に応じて下記の任意添加成分を含むものであることが好ましい。
【0050】
Si:Siは、脱酸剤として0.05%以上含有させる必要がある。また、Siには、脱酸作用の他に焼戻軟化抵抗を高めて耐SSC性を向上させる作用もあり、その効果は0.1%以上で顕著になる。しかし、0.5%を超えて含有させると、靭性が低下する。このため、Si含有量は、0.05〜0.5%とした。好ましい上限は0.3%である。
【0051】
Mn:Mnは、脱酸剤として、また熱間加工性を向上させる目的で、少なくとも0.05%以上含有させる必要がある。しかし、1%を超えて含有させると靭性が低下する。このため、Mn含有量は、0.05〜1%とした。好ましい上限は0.5%である。
【0052】
Al:Alは、脱酸剤として少なくとも0.005%以上含有させる必要がある。しかし、0.1%を超えて含有させると介在物が多くなって靱性が低下する。また、油井管には、その管端に接続用のねじ切り加工が施されることが多いが、Alが多いとねじ切り部に介在物起因の欠陥が発生しやすくなる。このため、Al含有量は、0.005〜0.1%とした。好ましい上限は0.05%である。なお、本明細書でいうAlとは、いわゆるsol.Al(酸可溶Al)のことである。
【0053】
Ti:
Tiは、添加しなくてもよいが、添加すれば、鋼中に不純物として存在するNをTiNとして固定するので、焼入性向上の目的で添加される場合の後述するBがBNになるのを防ぎ、焼入性の向上に有効な固溶状態でBを存在させる作用がある。また、NをTiNとして固定する以上のTiには、焼入れ時は固溶状態で存在し、焼戻し時に炭化物などの化合物として微細に析出して焼戻軟化抵抗を高める作用があり、これらの効果は0.005%以上の含有量で顕著になる。しかし、0.05%を超えて含有させると、靱性が低下する。このため、添加する場合のTi含有量は、0.005〜0.05%とするのがよい。好ましい上限は0.03%である。
【0054】
B:
Bは、添加しなくてもよいが、上記したように、添加すれば、焼入性を向上さる作用があり、特に厚肉材の焼入性を改善するのに有効であり、0.0001%以上の含有量でその効果が顕著になる。しかし、0.005%を超えて含有させると、靱性が低下する。このため、添加する場合のB含有量は、0.0001〜0.005%とするのがよい。好ましい上限は0.002%である。
【0055】
Zr:
Zrは、添加しなくてもよいが、添加すれば、上記のTiと同様に、鋼中に不純物として存在するNを窒化物として固定し、Bの焼入性向上効果を十分に発揮させる作用があり、0.005%以上の含有量でその効果が顕著になる。しかし、0.1%を超えて含有させると、介在物が増加して靱性が低下する。このため、添加する場合のZr含有量は、0.005〜0.1%とするのがよい。好ましい上限は0.03%である。
【0056】
W:
Wは、添加しなくてもよいが、添加すれば、前述のMoと同様に、焼入性を高めて強度の向上に寄与するとともに、焼戻軟化抵抗を高めて耐SSC性を向上させる作用があり、これらの効果は0.1%以上の含有量で顕著になる。しかし、その効果は1%で飽和し、これ以上含有させるとコストが上昇するだけである。このため、添加する場合のW含有量は、0.1〜1%とするのがよい。好ましい上限は0.5%である。
【0057】
a:
Caは、添加しなくてもよいが、添加すれば、鋼中に不純物として存在するSと反応して硫化物を形成して介在物の形状を改善し、耐SSC性を向上させる作用があり、0.0001%以上の含有量でその効果が顕著になる。しかし、0.01%を超えて含有させると、靱性および耐SSC性が低下するだけでなく、鋼表面に欠陥が多発しやすくなる。このため、添加する場合のCaの含有量は、0.0001〜0.01%とするのがよい。好ましい上限は、0.003%である。
【0058】
なお、これらの元素は、いずれか1種の添加または2種以上の複合添加であってもよい。また、上記の効果は、Sの含有量によってその度合いが異なり、脱酸が十分でない場合には、かえって耐SSC性が低下するので、その含有量はS含有量と脱酸の程度に応じて調整することが肝要である。
【0059】
P:Pは、鋼中に不可避的に存在するが、その含有量が0.025%を超えると、結晶粒界に偏析して耐SSC性を低下させる。このため、その含有量は、0.025%以下とした。なお、Pの含有量は、低ければ低いほど好ましいが、過度の低減は製造コストの上昇を招く。Pは、0.01%程度含んでも実用上差し支えない。
【0060】
S:Sは、上記のPと同様に、鋼中に不可避的に存在するが、その含有量が0.01%を超えると、結晶粒界に偏析するとともに、硫化物系の介在物を生成して耐SSC性を低下させる。このため、その含有量は、0.01%以下とした。なお、Sの含有量は、上記のPと同様に、低ければ低いほど好ましいが、過度の低減は製造コストの上昇を招く。Sは、0.002%程度含んでも実用上差し支えない。
【0061】
N:Nは、上記のP、Sと同様に、鋼中に不可避的に存在するが、その含有量が0.01%を超えると、靱性および焼入性が低下する。このため、その含有量は、0.01以下とした。なお、Nの含有量は低ければ低いほど好ましい。
O(酸素):Oは、上記のP、S、Nと同様に、鋼中に不可避的に存在するが、その含有量が0.01%を超えると、靱性が低下する。このため、その含有量は0.01%以下とした。なお、Oの含有量も低ければ低いほど好ましい。
【0062】
《製造方法(熱処理条件)》
本発明の油井用鋼は、上記の化学組成を有する低合金鋼を常法にしたがって溶製し、得られた素材鋼を1150℃以上に加熱してから熱間加工を施して1000℃以上で加工を終了し、引き続いて、900℃以上の温度から焼入れし、次いで550℃以上、AC1変態点以上で焼戻した後、さらに850〜1000℃に再加熱して焼入れし、次いで650℃以上、AC1変態点以下で焼戻すことで製造することができる。
【0063】
ここで、製品が鋼管の場合の熱間加工としては、マンネスマン−プラグミル方式やマンネスマン−マンドレルミル方式に代表される熱間圧延継目無製管法、ユジーンセジェルネ法に代表される熱間押出し継目無製管法、エルハルト−プッシュベンチ方式に代表される熱間押抜き継目無製管法を挙げることができる。なお、上記の方法は、製品が鋼管以外の鋼板や棒鋼などでも同じである。
【0064】
次に、その製造条件を上記のように定めた理由について説明する。
【0065】
素材鋼の加熱温度:1150℃以上
本発明で対象とするNb含有鋼では、Nbを含むMC型炭化物が析出するが、このNbを含むMC型炭化物を完全に固溶させないと、焼入れ時に粗大な未固溶MC型炭化物が析出する。しかし、加熱温度が1150℃未満であると、Nbを含むMC型炭化物が完全に固溶しない。このため、素材鋼の加熱温度は1150℃以上とした。なお、加熱温度の上限は、1150℃以上であればよいので定める必要はなく、融点未満であればよい。
【0066】
熱間加工の終了温度:
熱間加工を1000℃未満で終了すると、この時点で粗大なMC型炭化物が析出する。この粗大なMC型炭化物は、その後にどのような熱処理を施しても消滅せず、所望の耐SSC性と靭性が確保できなくなる。このため、熱間加工の終了温度は1000℃以上とした。なお、上限温度は素材鋼の加熱温度との関係で決まるので定める必要はない。
【0067】
熱間加工終了に引き続く焼入温度:
1000℃以上で加工を終了しても、加工終了後の被加工材温度が900℃未満になると、上記と同様に、粗大なMC型炭化物が析出し、その後にどのような熱処理を施しても消滅せず、所望の耐SSC性と靭性が確保できなくなる。このため、熱間加工終了に引き続く焼入温度、すなわち直接焼入温度は900℃以上とした。なお、加工終了後の被加工材は、再加熱炉や保熱炉に挿入してその温度を900℃以上に保持するようにしてもよい。その際、再加熱炉や保熱炉には、900℃以上の状態で挿入するのが好ましいが、900℃未満になってから挿入してもよい。また、その上限値は、熱間加工の終了温度の場合と同様に、熱間加工終了温度との関係で決まるので定める必要はない。
【0068】
直接焼入れ後の焼戻温度:
上記の直接焼入れ後に焼戻し処理を施すのは、この時点で微細なMC型炭化物を析出させ、次工程の再加熱焼入れにおける加熱時に結晶粒が粗大化するのを防ぐためである。しかし、その焼戻温度が550℃未満であると、MC型炭化物の析出速度は遅いので、商業的に実施可能な15分程度の焼戻時間では十分あるいは量のMC型炭化物が析出しない。また、焼戻温度がAC1変態点を超えると、オーステナイト相が析出し、所望の強度が確保できなくなる。このため、直接焼入れ後の焼戻温度は、550℃以上、AC1変態点以下とした。
【0069】
再加熱焼入温度:
この再加熱焼入れと次工程の焼戻し処理は、上記の焼入れ焼戻し処理で析出させたMC型炭化物を再固溶させることによってより微細なMC型炭化物を析出させるために施す。しかし、その再加熱焼入温度が850℃未満であると、MC型炭化物が完全に再固溶しない。また、1000℃を超えて再加熱すると、結晶粒が粗大化して靭性と耐SSC性が低下する。このため、再加熱焼入温度は850〜1000℃とした。好ましい温度範囲は900〜980℃である。
【0070】
再加熱焼入れ後の焼戻温度:
再加熱焼入れ後の焼戻温度が650℃未満であると、十分な量のMC型炭化物が析出しないだけでなく、粒界にフィルム状のM3C 型炭化物やM236 型炭化物が残存して靭性と耐SSC性が低下する。また、焼戻温度がAC1変態点を超えると、上記の焼戻し処理の場合と同様に、オーステナイト相が析出し、所望の強度が確保できなくなる。このため、再加熱焼入れ後の焼戻温度は、650℃以上、AC1変態点以下とした。
【0071】
なお、再加熱焼入れ処理とこれに続く焼戻し処理は、1回に限らず2回以上施してもよい。この場合には、結晶粒がより微細になって靭性と耐SSC性がより一層向上する。
【0072】
ところで、本発明の油井用鋼は、YSが110ksi以上であり、125ksi以上級や140ksi以上級も得られるが、125ksi以上級や140ksi以上級の製品を得るには焼戻し温度を変えればよい。また、上記の元素に加えて任意添加元素のうちから強度の向上に寄与する元素を添加することで所望の強度を確保するようにしてもよ。
【0073】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する15種類の低合金鋼からなる150kg丸インゴットを準備した。次いで、各丸インゴットは、熱間鍛造を施して断面寸法が150mm×150mmの圧延用素材に成形した後、実際のマンネスマン−マンドレルミル方式による継目無製管法を模擬し、表2に示す種々条件の熱間圧延と熱処理を施してYSが140〜155ksi以上の厚さ20〜60mmの板材に仕上げた。
【0074】
【表1】
Figure 0004058840
【0075】
【表2】
Figure 0004058840
【0076】
そして、得られた各板材の炭化物の総量と、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合を、それぞれ前述した方法によって調べた。また、得られた各板材の板厚中心部から、長手方向が圧延方向(L方向)で、平行部の寸法が外径6.35mm、長さ25.4mmのNACE TM0177 Method A に規定される丸棒引張試験片を採取し、下記のSSC試験に供した。
【0077】
SSC試験:
上記のNACE TM0177 Method Aに規定される方法に準じた方法で、通常は1気圧の硫化水素を飽和させるのであるが、高強度であることから、0.05気圧の硫化水素を飽和させた25℃の0.5%酢酸+5%食塩水溶液を用い、この水溶液中に各板材のYSの80%の応力を負荷した試験片を720時間浸漬保持する定荷重試験とした。
【0078】
評価は、上記のSSC試験中、すなわち試験時間720時間中に試験片が破断しなかったものを耐SSC性が良好「○」、破断したものを耐SSC性が不芳「×」とした。
【0079】
また、上記と同じく、各板材の板厚中心部から、長手方向が圧延方向(L方向)のJIS Z2202に規定される4号試験片と、JIS Z2201に規定される4号試験片を採取し、シャルピー衝撃試験に供して破面遷移温度を調べる一方、引張試験に供して実際のYSとTSを調べた。
【0080】
シャルピー衝撃試験:
−100〜40℃で試験し、延性破面率が50%となる破面遷移温度(vTrs(℃))を求めた。
【0081】
以上の結果を、表3に示すとともに、製品の肉厚t、炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合、靭性および耐SSC性との関係を、図1と図2に整理して示した。
【0082】
【表3】
Figure 0004058840
【0083】
表3に示す結果からわかるように、本発明例の試番1、2、4、5,7〜10および12〜15は、炭化物の総量、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合およびM236 型炭化物の割合がいずれも本発明で規定する範囲内であり、靭性および耐SSC性が良好であった。
【0084】
これに対し、素材鋼の化学組成は本発明で規定する範囲内であるが、素材鋼の加熱温度、熱間加工の終了温度および熱間加工に引き続く直接焼入温度のいずれかが本発明で規定する範囲を外れる比較例の試番3、6および11は、総炭化物量は本発明で規定する範囲内であったが総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合とM236 型炭化物の割合が本発明で規定する範囲を外れていて、靭性と耐SSC性が悪かった。
【0085】
また、素材鋼の加熱温度を含めた熱間加工条件と熱処理条件は本発明で規定する範囲内であるが、素材鋼のC、Cr、V、NbおよびMoの含有量のいずれか1つ以上が本発明で規定する範囲を外れる比較例の試番16〜19は、総炭化物量、総炭化物量中に占めるMC型炭化物の割合およびM236 型炭化物の割合のいずれか1つ以上が本発明で規定する範囲を外れていて、靭性と耐SSC性が悪かった。
【0086】
さらに、図1と図2から明らかなように、炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合が(200/t)%超であると所望の靭性と耐SSC性は確保されないが、(200/t)%以下であれば所望の靭性と耐SSC性が確保されることがわかる。
【0087】
なお、データの記載は省略するが、焼戻し温度を高めてYSを110ksi級や125ksi級にしたものは、靭性と耐SSC性のレベルが数段高かった。また、製品の肉厚tにかかわらず、炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合が少ないものほど、靭性と耐SSC性が良好であった。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れたYSが110ksi以上の厚肉材用に適した高強度油井用鋼を提供することができる。また、この油井用鋼は、所定の化学組成を有する鋼に少なくとも2回の焼入れ焼戻し処理を施すだけで得られるので、比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を示す図で、製品の肉厚t、炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合および靭性との関係を示す図である。
【図2】実施例の結果を示す図で、製品の肉厚t、炭化物の総量に占めるM236 型炭化物の割合および耐SSC性との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.3%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1%、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%およびNb:0.003〜0.1%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、不純物として、Pが0.025%以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下、O(酸素)が0.01%以下である低合金鋼からなり、析出している炭化物の総量が1.5〜4質量%であり、炭化物の総量に占めるMC型炭化物の割合が5〜45質量%、M236型炭化物の割合が、製品の肉厚をt(mm)とした時(200/t)質量%以下であることを特徴とする靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼。
  2. 油井用鋼の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.05%以下、B:0.005%以下、Zr:0.1%以下およびW:1%以下のうちから選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼。
  3. 油井用鋼の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼。
  4. 質量%で、C:0.15〜0.3%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1%、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.1〜1%、V:0.05〜0.3%およびNb:0.003〜0.1%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、不純物として、Pが0.025%以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下、O(酸素)が0.01%以下である低合金鋼を1150℃以上に加熱した後、熱間加工を1000℃以上で終了し、引き続いて900℃以上の温度から焼入れし、その後550℃以上、Ac1変態点以下で焼戻した後、さらに850〜1000℃に再加熱して焼入れし、次いで650℃以上、Ac1変態点以下で焼戻す焼入れ焼戻し処理を少なくとも1回施すことを特徴とする、析出している炭化物の総量が1.5〜4質量%であり、炭化物の総量に占めるMC型炭化物の割合が5〜45質量%、M236型炭化物の割合が、製品の肉厚をt(mm)とした時(200/t)質量%以下である、靭性と耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法。
  5. 油井用鋼の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.05%以下、B:0.005%以下、Zr:0.1%以下およびW:1%以下のうちから選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法。
  6. 油井用鋼の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れる油井用鋼の製造方法。
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