JP4058821B2 - 軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸体に転がり軸受を装着してなる軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の軸受装置の一例として、図3に示すような車両用ハブユニットがある。
【0003】
図例の車両用ハブユニットBは、軸体としてのハブホイール80の軸部81に複列外向きアンギュラ玉軸受82を外嵌装着し、この軸部81の自由端をローリングかしめにより径方向外向きに膨出変形させて、この膨出変形したかしめ部85を軸受82の内輪84の外端面に対して押し付けることによってハブホイール80に軸受82を抜け止め固定するようになっている。
【0004】
なお、上記ハブホイール80の軸部81のかしめ前形状は、図4中の仮想線で示すように、外径寸法が軸方向各位置で均一になっている。この軸部81の自由端を図5に示すようなかしめ治具90を用いてローリングかしめする。このとき、かしめ治具90の先端を軸部81にあてがい、かしめ治具90を一点鎖線O回りにローリングさせる。これにより、軸部81の自由端が径方向外向きに膨出変形されることになり、この膨出変形したかしめ部85により内輪84が抜け止めされるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、かしめ前に軸部81の外径寸法を軸方向各位置で均一に設定しているために、軸部81の自由端をローリングかしめするとき、変形起点の位置がそのときどきでまちまちになり、甚だしい場合には内輪84に対してかしめ部85が均一に密着しない状態になるようなことが起こり得る。このような場合には、かしめ部85の形状が不安定になるので、抜け抗力が不足する結果になりかねない。
【0006】
この他、軸部81に対して内輪84を外嵌装着するにあたって、圧入形態とする場合には、図4に示すように、かしめ部85を形成する関係より圧入距離が長くなっているために、軸部81の外周面や内輪84の内周面にかじりが発生しやすくなる。
【0007】
したがって、本発明は、軸受装置において、かしめ部による抜け抗力を安定化させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる軸受装置は、軸体に転がり軸受を外嵌装着し、この軸体の自由端側をローリングかしめにより径方向外向きに膨出変形させて、この膨出変形したかしめ部を転がり軸受の内輪の外端面に対して押し付けることによって軸体に転がり軸受を抜け止め固定した軸受装置であって、前記軸体が、かしめ前において、その外周面の軸受装着領域内の任意位置から当該軸体の自由端までの領域に、該自由端側へ向けてテーパー状に縮径し径方向の厚さが徐々に減少する縮径部を有するものとされる。
【0009】
請求項2の発明にかかる軸受装置は、上記請求項1の縮径部の縮径起点が、軸体外周面の軸受装着領域内において軸体自由端寄りの端縁位置から内輪軌道面の軸方向中心位置までの範囲に特定されている。
【0010】
このような本発明の構成では、要するに、軸体に縮径部を設けることによって、その剛性が縮径起点から自由端へ向けて若干であるものの漸次低くなる傾向になっているから、ローリングかしめによる変形起点が、軸体の軸受装着領域内における縮径起点に固定されることになり、しかも、変形部分が内輪の内周面から外端面にわたって均一に密着しやすくなる。これにより、常に安定した形状のかしめ部を得ることが可能になる。この他、軸体に内輪を圧入外嵌するときでも、縮径部によって内輪の実質圧入距離が短くなるために、軸体の外周面や内輪内周面に対するかじりの発生を抑制できるようになる。
【0011】
特に、請求項2の場合では、変形起点を内輪軌道面の軸方向中心よりも外側にさせるように規定しているから、ローリングかしめに伴う応力が内輪の軌道面中心に対して作用しにくくなる。これにより、内輪に対する転動体の接触形態を安定に保てるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。ここでは、軸受装置として車両用ハブユニットを例に挙げる。
【0013】
図1および図2は本発明の一実施形態にかかり、図1は、車両用ハブユニットの縦断側面図、図2は、図1においてかしめ前の状態を示す側面図である。
【0014】
図中、Aは軸受装置としての車両用ハブユニットの全体を示しており、1は軸体としてのハブホイール、2は転がり軸受としての複列外向きアンギュラ玉軸受、3はかしめ部である。
【0015】
ハブホイール1は、図示しない車輪が取り付けられる環状板部11と、複列外向きアンギュラ玉軸受2が外装されるとともに、軸端に複列外向きアンギュラ玉軸受2を固定するためのかしめ部3が形成される軸部12とを備えている。
【0016】
複列外向きアンギュラ玉軸受2は、軸部12の小径外周面12aに外嵌される単一軌道を有する内輪21と、二列の軌道溝を有する単一の外輪22と、二列で配設される複数の玉23と、二つの冠形保持器24,25とを備えており、前述のハブホイール1の軸部12の大径外周面12bを一方内輪とする構成になっている。なお、外輪22の外周には、径方向外向きのフランジ26が設けられており、このフランジ26を介して図示しない車軸ケースなどに非回転に取り付けられる。
【0017】
この実施形態では、ハブホイール1の軸部12についてのかしめ前形状に特徴がある。
【0018】
つまり、軸部12の小径部12aの自由端には、かしめ部3を得るために凹部13が設けられており、この小径部12aでの軸受装着領域12c内の任意位置から当該軸部12の自由端までの領域に、該自由端側へ向けて縮径する縮径部14が設けられている。この縮径部14の縮径起点Yは、軸受装着領域12c内において軸部12の自由端寄りの端縁位置から内輪21軌道溝の軸方向中心位置Xまでの範囲Wに特定される。
【0019】
このようなハブホイール1の軸部12の小径部12aに対して内輪21を圧入により外嵌装着してから、軸部12の自由端を、従来技術での説明に利用した図5に示すようなかしめ治具90を用いてローリングかしめする。このとき、かしめ治具90の先端を軸部12にあてがい、かしめ治具90を一点鎖線O回りにローリングさせる。これにより、軸部12の自由端が径方向外向きに膨出変形されることになり、この膨出変形したかしめ部3により内輪21が抜け止めされるようになる。
【0020】
ここで、軸部12に縮径部14を設けることによってその剛性が縮径起点Yから自由端へ向けて若干であるものの漸次低くなる傾向になっているから、上述したローリングかしめによる変形起点が、軸部12の軸受装着領域12c内における縮径起点Yに固定されることになって、変形部分が内輪21の内周面から外端面にわたって均一に密着しやすくなる。これにより、常に安定した形状のかしめ部3を得ることができるようになる。しかも、内輪21の圧入時には、縮径部14によって内輪21の実質圧入距離が短くなるために、軸部12の外周面や内輪21の内周面に対するかじりの発生を抑制できるようになる。
【0021】
また、この実施形態のように、縮径起点Yを内輪21軌道溝の軸方向中心Xよりも外側にさせるように規定していれば、ローリングかしめに伴う応力が内輪21の軌道溝中心Xに対して作用しにくくなるので、内輪21に対する玉23の接触形態を安定に保つことができるようになる。
【0022】
以上説明したように、ローリングかしめ時において、軸部12の形状を工夫することにより変形起点Yを特定できるようにしているから、常に安定した形状のかしめ部3を得ることができるようになった。これにより、抜け抗力を常に安定して確保できるようになり、かしめの信頼性向上に貢献できる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0024】
(1) 上記実施形態において、縮径部14の縮径量つまり縮径角度θは、軸部12の自由端の肉厚寸法との関係で適宜設定することができる。
【0025】
(2) 上記実施形態では、軸受装置として車両用ハブユニットを例に挙げたが、例えば自動車などのスライドドアのガイドローラやその他の軸受装置全般とすることができる。
【0026】
【発明の効果】
請求項1および2の発明では、かしめ前の軸体に縮径部を設けることによってその剛性を縮径起点から自由端へ向けて若干であるものの漸次低くする傾向にさせているから、ローリングかしめによる変形起点を、軸体の軸受装着領域内における縮径起点に特定できるようになり、しかも、変形部分を内輪の内周面から外端面にわたって均一に密着させやすくできるようになる。これにより、常に安定した形状のかしめ部を得ることができて、かしめ部による抜け抗力を常に安定して確保できるようになるので、かしめの信頼性向上に貢献できる。
【0027】
この他、軸体に内輪を圧入外嵌するときでも、縮径部によって内輪の実質圧入距離が短くなるために、軸体の外周面や内輪内周面に対するかじりの発生を抑制できるようになる。
【0028】
特に、請求項2の発明では、変形起点を内輪軌道面の軸方向中心よりも外側にさせるように規定しているから、ローリングかしめに伴う応力が内輪の軌道面中心に対して作用しにくくなる。これにより、内輪に対する転動体の接触形態を安定に保つことができるようになるので、転がり軸受の安定動作を確保できるようになるなど、軸受装置の信頼性向上に貢献できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の車両用ハブユニットの縦断側面図
【図2】図1においてかしめ前状態を示す要部拡大図
【図3】従来例の車両用ハブユニットの縦断側面図
【図4】図3においてかしめ前状態を示す要部拡大図
【図5】ローリングかしめ形態を示す説明図
【符号の説明】
A 車両用ハブユニット
1 ハブホイール
12 ハブホイールの軸部
12c ハブホイールの軸受装着領域
14 軸部の縮径部
2 複列外向きアンギュラ玉軸受
21 軸受の内輪
3 かしめ部
X 内輪軌道面の軸方向中心
Y 軸部の縮径起点

Claims (2)

  1. 軸体に転がり軸受を外嵌装着し、この軸体の自由端側をローリングかしめにより径方向外向きに膨出変形させて、この膨出変形したかしめ部を転がり軸受の内輪の外端面に対して押し付けることによって軸体に転がり軸受を抜け止め固定した軸受装置であって、
    前記軸体が、かしめ前において、その外周面の軸受装着領域内の任意位置から当該軸体の自由端までの領域に、該自由端側へ向けてテーパー状に縮径し径方向の厚さが徐々に減少する縮径部を有するものとされる、ことを特徴とする軸受装置。
  2. 請求項1に記載の軸受装置において、
    前記縮径部の縮径起点が、軸体外周面の軸受装着領域内において軸体自由端寄りの端縁位置から内輪軌道面の軸方向中心位置までの範囲に特徴されている、ことを特徴とする軸受装置。
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