JP4058270B2 - メタクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、固定床管型反応器を用いてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法に関するものである。
背景技術
メタクロレインの気相接触酸化反応によりメタクリル酸を製造する際に使用する触媒に関しては数多くの提案がなされている(以下、特に断りのない限りこの気相接触酸化反応を単に「酸化反応」という。)。これら提案は主として触媒を構成する元素およびその比率に関するものである。
酸化反応は発熱反応であるため、触媒層で蓄熱が起こる。過剰な蓄熱の結果生じる局所的異常高温帯域はホットスポットと呼ばれ、この部分では過度の酸化反応により収率が低下する。このため、酸化反応の工業的実施において、ホットスポットの発生は重大な問題であり、特に生産性を上げるために原料ガス中におけるメタクロレイン濃度を高めた場合、ホットスポットが発生し易くなる傾向があることから反応条件に関して大きな制約を強いられているのが現状である。
したがって、ホットスポット部の温度を抑えることは工業的に高収率でメタクリル酸を生産する上で非常に重要である。また、特にモリブデン含有固体酸化触媒を用いる場合、モリブデン成分が昇華しやすいことから、ホットスポットの発生を防止することは重要である。
ホットスポット部の温度を抑える方法として、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば特開平4−210937号公報には、活性の異なる複数個の触媒を原料ガス入口側から出口側に向かって活性がより高くなるように充填し、この触媒層にメタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを流通させる方法が開示されている。また、特開平8−92154号公報には、熱媒浴を備えた多管式固定床反応器を用いてアクロレインをアクリル酸に気相酸化する際に、熱媒浴の温度が反応器の入口部と出口部の間で2〜10℃上がるように熱媒の流れを制御する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は単にホットスポット部の温度を低くすることが目的であり、1箇所のホットスポット部における熱媒浴の温度と触媒層の温度との差(ΔT)をある程度にまで小さくする方法に過ぎない。すなわち、これらの方法は、酸化反応による発熱を触媒層内で積極的に制御するに至っていないため、例えば、生産性を上げるためにメタクロレイン濃度を更に高めた場合、ホットスポット部における発熱が顕著となる。そのため、反応条件に関し依然かなりの制約を強いられる。すなわち、メタクロレイン濃度を工業的に満足できるような水準まで高めた際に工業的に満足できるようなメタクリル酸収率が得られていないのが現状である。
発明の開示
したがって本発明は、固定床管型反応器にてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法において、より高収率でメタクリル酸を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、熱媒浴を備えた固定床管型反応器に固体酸化触媒を充填し、メタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを触媒層に流通させることによりメタクリル酸を合成するに際し、触媒層中に熱媒浴の温度と触媒層の温度との差(ΔT=触媒層の温度−熱媒浴の温度)が35℃を超える箇所が1箇所もなく、かつΔTが15〜35℃となる高温帯域を2箇所以上設けることを特徴とするメタクリル酸の製造方法である。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、メタクリル酸を合成する反応は熱媒浴を備えた固定床管型反応器を用いて実施される。ここで用いる熱媒については特に限定はないが、一般的には硝酸カリウムおよび亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物が用いられる。また、管型反応器についても特に制限はないが、工業的には内径20〜30mmの反応管を数千〜数万本備え、この各反応管の周囲が熱媒浴によって囲まれている多管式反応器が好ましい。
本発明において、用いる固体酸化触媒はこの酸化反応用の固体触媒であれば特に限定されず、従来から知られているリンおよびモリブデンを含む複合酸化物等を用いることができるが、好ましくは下記の式(1)で表される複合酸化物である。
MoaPbCucVdXeYfOg (1)
式(1)において、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦3、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。特に好ましい各元素の原子比は、a=12のとき、0.2≦b≦2、0.04≦c≦1、0.1≦d≦2、0≦e≦2、0≦f≦2である。
本発明で用いる触媒を調製する方法は特に限定されず、成分の著しい偏在を伴わない限り、従来からよく知られている種々の方法を用いることができる。
触媒の調製に用いる原料は特に限定されず、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物等を組み合わせて使用することができる。例えばモリブデン原料としてはパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が使用できる。
本発明に用いられる触媒は無担体でもよいが、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、シリコンカーバイト等の不活性担体に担持させた担持触媒や、あるいはこれらで希釈した触媒を用いることもできる。
本発明において、触媒層とは、固定床管型反応器の反応管内において少なくとも触媒が含まれている空間部分を指す。すなわち、触媒だけが充填されている空間だけでなく、触媒が不活性担体等で希釈されている空間部分も触媒層とする。ただし、反応管両端部の何も充填されていない空間部分や不活性担体等だけが充填されている空間部分は、触媒が実質的に含まれないので触媒層には含まない。
本発明において、熱媒浴を備えた固定床管型反応器に固体酸化触媒を充填し、メタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを触媒層に流通させることによりメタクリル酸を合成するに際し、触媒層中に熱媒浴の温度と触媒層の温度との差(ΔT)が15〜35℃となる高温帯域を2箇所以上設けることが重要である。触媒層におけるΔTの最大値は小さいほど好ましく、高くなりすぎると、過度の酸化反応により選択率が低下し、その結果収率が低下するのみならず、熱負荷による触媒の劣化・変質も懸念されるので35℃以内でなければならない。本発明における酸化反応は発熱反応であるため、ある程度の大きさのΔTが生じることは避けられない。しかし、ΔTが15℃以上となる高温帯域が2箇所以上となるような条件に調節することで、1箇所に集中した局所的異常高温域が生じることを避けることができる。なお、当然のことながら、これら各高温帯域の間にはΔTが15℃未満となる帯域が存在しなければならない。
高温帯域が2箇所以上となるような条件に調節する方法は特に限定されないが、例えば、反応管内を管軸方向に2層以上に分割して設けた反応帯に触媒をそれぞれ充填する方法において、各反応帯の管軸方向の長さを調節し、かつ各反応帯における単位容積当たりの触媒活性を調節する方法等が挙げられる。この際、単位容積当たりの触媒活性を調節する手法としては、例えば、触媒を不活性担体で希釈する際の希釈割合を調節する方法、触媒組成または調製法を変更して得られる活性の異なる触媒を用いて調節する方法等が挙げられる。
触媒層に設けた2箇所以上のΔTが15〜35℃となる高温帯域は、原料ガス入り口側から数えて第1番目の高温帯域と第2番目の高温帯域の間の距離が、触媒層全長の0.2〜0.9倍であるようにすることが好ましく、特に0.25〜0.8倍とすることが好ましい。触媒層全長に対する高温帯域間の割合が小さくなるほど、反応器内に充填した触媒のうち有効に作用するものの割合が増加する傾向にあり、大きくなるほど、メタクリル酸の収率が高く、触媒の劣化・変質を招く可能性が低くなる傾向にある。また、高温帯域が3つ以上あるときには、隣り合う各高温帯域間の距離を、触媒層全長の0.2〜0.9倍、特に0.25〜0.8倍としてもよい。高温帯域の数は、通常5以下であり、実用的には2または3が好ましい。
なお、各高温帯域間の距離とは、各高温帯域においてΔTが最大である箇所間の距離を表わす。
また、原料ガス入り口からの第1番目の高温帯域までの位置(その高温帯域内でΔTが最大の位置)は、触媒層全長の好ましくは0〜0.7倍の位置、特に好ましくは0.1〜0.5倍の位置である。
また、触媒の充填の微小な不均一等に基づき、管軸方向のΔT曲線上には微細なピークと谷が見られるのが通常である。そこで、高温帯域の範囲を決める際には、測定点の前後の実測ΔTについて触媒層全長の0.005倍の範囲、好ましくは0.01倍の範囲で平均ΔTを求めると、そのピークと谷によるノイズが低減される。仮に実測ΔTで高温帯域の要件を満たす発熱ピークが観察されたとしても、平均ΔTに基づいたときに高温帯域の要件を満たさない場合は、その発熱ピークをもって高温帯域とは解釈しないものとする。
本発明において、触媒層中におけるΔTとは、触媒層内のある測定位置の温度とその周囲の熱媒浴の温度との差のことである。反応器の形態、反応条件、熱媒の流動状態等によっては、熱媒浴中の熱媒の温度に若干の不均一分布が生じる場合があるが、その度合いが小さい場合は熱媒浴の平均温度を熱媒浴温度として扱っても差し支えない。ただし、その度合いが小さくない場合には、各場所における熱媒浴温度を測定してΔTを求める必要がある。
また、触媒層内の温度を測定する方法としては、例えば、触媒を充填するに先立ち、管型反応器内に保護管を設置しておき、この保護管内に熱電対を挿入して反応中の各場所における温度を測定する方法を挙げることができる。この方法において、保護管の設置位置は反応管の管軸方向に対して垂直な断面の中心付近が好ましく、保護管の長さは触媒層を超える長さが必要である。この方法は触媒層のあらゆる位置の温度を簡便に測定できるので好ましい。なお、工業的に用いられる多管式反応器の場合には、すべての反応管内の触媒層温度を測定することは実際上不可能であるので、実質的に反応器全体を代表する反応管のいくつかについて測定することになる。
本発明の実施に際し、原料ガス中のメタクロレインの濃度は広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が適当であり、3〜8容量%が特に好ましい。
酸素源としては空気を用いるのが経済的に有利であるが、必要に応じて純酸素で富化した空気を用いてもよい。原料ガス中の酸素濃度はメタクロレイン1モルに対して0.3〜4モルが好ましく、特に0.4〜3モルとなるようにすることが好ましい。原料ガスは低級飽和アルデヒド等の本反応に実質的な影響を与えない不純物を少量含んでいてもよいし、窒素、水蒸気、二酸化炭素等の不活性ガスを加えて希釈してもよい。
酸化反応の反応圧力は常圧から数気圧まで実施できる。反応温度である熱媒浴温度は230〜450℃が好ましく、特に250〜400℃が好ましい。原料ガスの空間速度は300〜3000hr−1が好ましく、特に500〜2000hr−1が好ましい。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例および比較例中の「部」は重量部を意味する。触媒組成は触媒成分の原料仕込み量から求めた。反応器の熱媒としては硝酸カリウム50質量%および亜硝酸ナトリウム50質量%からなる塩溶融物を用いた。反応原料および生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
また、メタクロレインの反応率、生成したメタクリル酸の選択率、メタクリル酸の単流収率はそれぞれ以下のように定義される。
メタクロレインの反応率(%)=(B/A)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(C/B)×100
メタクリル酸の単流収率(%)=(C/A)×100
ここで、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
[実施例1]
パラモリブデン酸アンモニウム100部、メタバナジン酸アンモニウム2.8部および硝酸セシウム9.2部を純水300部に溶解した。これを攪拌しながら、85質量%リン酸8.2部を純水10部に溶解した溶液およびテルル酸1.1部を純水10部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら95℃に昇温した。次いで硝酸銅3.4部、硝酸第二鉄7.6部、硝酸亜鉛1.4部および硝酸マグネシウム1.8部を純水80部に溶解した溶液を加えた。更にこの混合液を100℃で15分間攪拌し、得られたスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥した。
得られた乾燥物100部に対してグラファイト2部を添加混合し、打錠成形機により外径5mm、内径2mm、長さ3mmのリング状に成形した。この打錠成形物を空気流通下に380℃で5時間焼成し、触媒1を得た。触媒1の組成は、酸素を除いた原子比で、
Mo12P1.5Cu0.3V0.5Fe0.4Te0.1Mg0.15Zn0.1Cs1
であった。
熱媒浴を備えた内径25.4mmの鋼鉄製固定床管型反応器の原料ガス入口部に触媒1を370mLと外径5mmのアルミナ球130mLを混合したものを充填し、出口部に触媒1を1000mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。この触媒層にメタクロレイン6.5容量%、酸素11容量%、水蒸気10容量%および窒素72.5容量%からなる原料ガスを反応温度(熱媒浴温度)290℃、空間速度1000hr−1で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から300mmの位置が最大温度となる第一の高温帯域と原料ガス入口側の端から1200mmの位置が最大温度となる第二の高温帯域が観測された。すなわち、触媒層の長さに対する上記2箇所の高温帯域間の距離の割合は0.30であった。また、第一高温帯域の最大温度の位置におけるΔTは21℃、第二高温帯域の最大温度の位置におけるΔTは19℃であった。なお、原料ガス入口側の端から1000mmの位置におけるΔTは12℃であった。
反応生成物を捕集して分析した結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で使用したものと同じ固定床管型反応器の原料ガス入口部に触媒1を620mLと外径5mmのアルミナ球130mLを混合したものを充填し、出口部に触媒1を750mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。この触媒層に実施例1と同じ原料ガスを同じ条件で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から400mmの位置が最大温度となる一つの高温帯域のみが観測された。また、この高温帯域の最大温度におけるΔTは31℃であった。
反応生成物の分析結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1で使用したものと同じ反応器に触媒1を1500mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。この触媒層に実施例1と同じ原料ガスを同じ条件で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から200mmの位置が最大温度となる一つの高温帯域のみが観測された。また、この高温帯域の最大温度におけるΔTは40℃であった。
反応生成物の分析結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で使用したものと同じ反応器に触媒1を1370mLを充填した。このときの触媒層の長さは2745mmであった。この触媒層に実施例1と同じ原料ガスを同じ条件で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から200mmの位置が最大温度となる一つの高温帯域のみが観測された。また、この高温帯域の最大温度におけるΔTは40℃であった。
反応生成物の分析結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1で使用したものと同じ反応器の原料ガス入口部に触媒1を220mLと外径5mmのアルミナ球130mLを混合したものを充填し、出口部に触媒1を1150mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。この触媒層に実施例1と同じ原料ガスを同じ条件で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から250mmの位置が最大温度となる第一の高温帯域と原料ガス入口側の端から830mmの位置が最大温度となる第二の高温帯域が観測された。すなわち、触媒層の長さに対する上記2箇所の高温帯域間の距離の割合は0.19であった。また、第一高温帯域の最大温度におけるΔTは16℃、第二高温帯域の最大温度におけるΔTは37℃であった。なお、原料ガス入口側の端から700mmの位置におけるΔTは10℃であった。
反応生成物の分析結果を表1に示す。
[実施例2]
三酸化モリブデン100部、五酸化バナジウム3.2部および85質量%リン酸6.7部を純水800部と混合した。これを還流下で3時間加熱攪拌した後、これに酸化銅0.5部、ホウ酸0.7部および二酸化ゲルマニウム1.2部を加え、再び還流下で2時間加熱攪拌した。得られたスラリーを50℃まで冷却し、重炭酸セシウム11.2部を純水30部に溶解した溶液を加え15分間攪拌した。次いで、硝酸アンモニウム10部を純水30部に溶解した溶液を加え更に15分間攪拌し、得られた触媒成分を含有するスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥した。
得られた乾燥物100部に対してグラファイト2部を添加混合し、打錠成形機により外径5mm、内径2mm、長さ3mmのリング状に成型した。この打錠成形物を空気流通下に380℃で5時間焼成し、触媒2を得た。触媒2の組成は、酸素を除いた原子比で、
Mo12P1Cu0.1V0.6Ge0.2B0.2Cs1
であった。
実施例1で使用したものと同じ固定床管型反応器の原料ガス入口部に触媒2を150mLと外径5mmのアルミナ球90mLを混合したものを充填し、中央部に触媒2を200mLと外径5mmのアルミナ球40mLを混合したものを充填し、出口部に触媒2を1020mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。この触媒層に実施例1と同じ原料ガスを同じ条件で通じた。
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から180mmの位置が最大温度となる第一の高温帯域と原料ガス入口側の端から620mmの位置が最大温度となる第二の高温帯域と原料ガス入口側の端から1100mmの位置が最大温度となる第三の高温帯域が観測された。すなわち、触媒層の長さに対する上記3箇所の隣り合う高温帯域間の距離の割合は、第一と第二の高温帯域間が0.15、第二と第三の高温帯域間が0.16であった。また、第一高温帯域の最大温度におけるΔTは16℃、第二高温帯域の最大温度におけるΔTは18℃、第三高温帯域の最大温度におけるΔTは17℃であった。なお、原料ガス入口側の端から480mmの位置におけるΔTは9℃、原料ガス入口側の端から960mmの位置におけるΔTは9℃であった。
反応生成物の分析結果を表1に示す。
産業上の利用可能性
本発明によれば、熱媒浴を備えた固定床管型反応器に固体酸化触媒を充填し、メタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを触媒層に流通させることによりメタクリル酸を合成するに際し、ΔTが35℃を超える箇所が1箇所もなく、かつΔTが15〜35℃となる高温帯域を2箇所以上設けることにより、高収率でメタクリル酸を製造することができる。
また本発明によれば、原料ガス入り口側から数えて第1番目の高温帯域と第2番目の高温帯域の間の距離が、触媒層全長の0.2〜0.9倍となるようにすることで、さらに収率が向上する。
さらに、固体酸化触媒として前記式(1)で表される複合酸化物を用いることでもさらに収率が向上する。
Claims (4)
- 固体酸化触媒が充填された触媒層と熱媒浴を備えた固定床管型反応器を用いて、メタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを前記触媒層に流通させることによりメタクリル酸を合成するメタクリル酸の製造方法において、触媒層中に熱媒浴の温度と触媒層の温度との差(ΔT=触媒層の温度−熱媒浴の温度)が35℃を超える箇所が1箇所もなく、かつΔTが15〜35℃となる高温帯域を2箇所以上設けることを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
- 原料ガス入り口側から数えて第1番目の高温帯域と第2番目の高温帯域の間の距離が、触媒層全長の0.2〜0.9倍であることを特徴とする請求の範囲1項記載のメタクリル酸の製造方法。
- 前記固体酸化触媒が下記の式(1)で表される複合酸化物であることを特徴とする請求の範囲1項または2項記載のメタクリル酸の製造方法。
MoaPbCucVdXeYfOg (1)
(式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦3、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。) - 前記触媒層内の単位容積当たりの触媒活性を調整することによって、ΔTおよび高温帯域の位置を制御することを特徴とする請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載のメタクリル酸の製造方法。
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