JP4248163B2 - メタクリル酸の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸の製造方法 Download PDF

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定床管型反応器を用いてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタクロレインを気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に使用する触媒に関しては数多くの提案がなされている。これら提案は主として触媒を構成する元素およびその比率に関するものである。
【0003】
該気相接触酸化は発熱反応であるため、触媒層で蓄熱が起こる。蓄熱の結果生じる局所的異常高温帯域はホットスポットと呼ばれ、この部分の温度が高すぎると過度の酸化反応を生じるので目的生成物の収率は低下する。このため、該酸化反応の工業的実施において、ホットスポットの温度抑制は重大な問題であり、特に生産性を上げるために原料ガス中におけるメタクロレイン濃度を高めた場合、ホットスポットの温度が高くなる傾向があることから反応条件に関して大きな制約を強いられているのが現状である。
【0004】
したがって、ホットスポット部の温度を抑えることは工業的に高収率でメタクリル酸を生産する上で非常に重要である。また、特にモリブデン含有固体酸化触媒を用いる場合、モリブデン成分が昇華しやすいことから、ホットスポットの発生を防止することは重要である。
【0005】
ホットスポット部の温度を抑える方法として、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば特開平4−210937号公報には、触媒組成を変動させて調製した活性の異なる複数個の触媒を原料ガス入口側から出口側に向かって活性がより高くなるように充填し、この触媒層にメタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを流通させる方法が開示されている。また、特開平8−92154号公報には、熱媒浴を備えた多管式固定床反応器を用いてアクロレインをアクリル酸に気相酸化する際に、熱媒浴の温度が反応器の入口部と出口部の間で2〜10℃上がるように熱媒の流れを制御する方法が開示されている。
【0006】
これらの方法は反応器内の触媒層における原料ガス入口側での単位容積当たりの反応率を低くすることで、単位容積当たりの反応発熱量を抑え、結果としてホットスポット部の温度を低くしようとする方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法だけではホットスポット部の温度制御が十分でなく、メタクリル酸の収率が低いという問題があった。
【0008】
本発明は、固定床管型反応器にてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法において、ホットスポット部の温度を十分抑制し、メタクリル酸を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固体酸化触媒が充填されている固定床管型反応器の触媒層に、メタクロレインを3〜9容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含む原料ガスを流通させるメタクリル酸の製造方法において、前記原料ガスを流通させる前に、前記触媒層に、酸素、窒素および水蒸気を含み、かつメタクロレインが0〜0.5容量%のガスを流通させながら250〜350℃の範囲まで昇温し、次いでメタクロレインを1〜2.8容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含むガスを250〜350℃で1時間以上流通させることを特徴とするメタクリル酸の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、メタクリル酸を合成する反応は固定床管型反応器を用いて実施される。管型反応器は特に限定されないが、工業的には内径10〜40mmの反応管を数千〜数万本備えた多管式反応器が好ましい。また、固定床管型反応器は熱媒浴を備えたものが好ましい。熱媒は特に限定されないが、例えば、硝酸カリウムおよび亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物が挙げられる。
【0011】
本発明において、用いる固体酸化触媒はこの酸化反応用の固体触媒であれば特に限定されず、従来から知られているモリブデンを含む複合酸化物等を用いることができるが、好ましくは下記の式(1)で表される複合酸化物が好ましい。
MoCu (1)
(式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦10、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
【0012】
本発明で用いる触媒を調製する方法は特に限定されず、成分の著しい偏在を伴わない限り、従来からよく知られている種々の方法を用いることができる。
【0013】
触媒の調製に用いる原料は特に限定されず、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物等を組み合わせて使用することができる。例えばモリブデン原料としてはパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が使用できる。
【0014】
本発明に用いられる触媒は無担体でもよいが、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、シリコンカーバイト等の不活性担体に担持させた担持触媒や、あるいはこれらで希釈した触媒を用いることもできる。
【0015】
本発明において、触媒層とは、固定床管型反応器の反応管内において少なくとも触媒が含まれている空間部分を指す。すなわち、触媒だけが充填されている空間だけでなく、触媒が不活性担体等で希釈されている空間部分も触媒層とする。ただし、反応管両端部の何も充填されていない空間部分や不活性担体等だけが充填されている空間部分は、触媒が実質的に含まれないので触媒層には含まない。
【0016】
固定床管型反応器を用いてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する反応は、通常250〜350℃の範囲の反応温度で実施される。ところが、250〜350℃程度の反応温度に保たれた触媒層に反応開始当初からメタクロレインを3〜9容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含む原料ガス(以下、単に原料ガスという。)を流通させると、触媒層の原料ガス入口部付近に最大温度の高いホットスポットが生じる。
【0017】
本願発明者らはこの問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、前記原料ガスを流通する前に、酸素、窒素および水蒸気を含み、かつメタクロレインが0〜0.5容量%であるガスを流通させながら250〜350℃の範囲まで昇温し、次いでメタクロレインを1〜2.8容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含むガスを250〜350℃で1時間以上流通させることにより、通常の反応条件、すなわち前記原料ガスを用いて250〜350℃の反応温度で該酸化反応を行ったときに、ホットスポット部の温度を十分抑制でき、結果としてメタクリル酸を高い収率で製造することができることを見出した。
【0018】
250〜350℃の範囲まで昇温させる前の温度、すなわち昇温の開始温度は特に限定されないが、10〜240℃の範囲が好ましい。また、昇温速度も特に限定されないが、10〜500℃/時間が好ましく、特に20〜400℃/時間が好ましい。
【0019】
250〜350℃の範囲まで昇温させる際に流通させるガスは、酸素、窒素および水蒸気を含み、かつメタクロレインが0〜0.5容量%のガスである。このガスの酸素、窒素および水蒸気の濃度については特に限定されないが、酸素1〜21容量%、窒素29〜98.5容量%、水蒸気0.5〜50容量%が好ましい。また、メタクロレインは0〜0.5容量%であり、0〜0.3容量%がより好ましく、0〜0.1容量%が特に好ましい。触媒層温度が250℃未満の状態でメタクロレインの濃度が0.5容量%を超えるガスを流通させると、触媒上で生成した比較的高沸点を有する化合物が触媒の活性点を被毒する場合がある。このガスには、酸素、窒素、水蒸気およびメタクロレイン以外の気体を含んでいてもよく、このような気体としては、例えば、二酸化炭素等の不活性ガス、低級飽和アルデヒド、ケトン等が挙げられる。ただし、低級飽和アルデヒド等の有機化合物を含む場合には、メタクロレインおよびその他の有機化合物の濃度の和が0.5容量%以下であることが好ましい。昇温時のガスの流量は特に限定されないが、空間速度が100〜2000hr−1となるような流量が好ましい。この際の反応器内の圧力は、通常、常圧から数気圧である。
【0020】
昇温後に流通させるガスは、メタクロレインを1〜2.8容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含むガスである。メタクロレイン濃度は1〜2.5容量%が好ましく、特に1〜2.2容量%が好ましい。酸素濃度は5.2〜14容量%が好ましく、特に5.4〜12容量%が好ましい。水蒸気濃度は2〜40容量%が好ましく、特に4〜30容量%が好ましい。このガスを流通させる際の温度は、250〜350℃である。また、このガスを流通させる時間は1時間以上であり、1.5〜100時間が好ましく、特に2〜50時間が好ましい。このガスには、酸素、水蒸気およびメタクロレイン以外の気体を含んでいてもよく、このような気体としては、例えば、窒素、二酸化炭素、低級飽和アルデヒド、ケトン等が挙げられる。昇温後に流通させるガスの流量は特に限定されないが、空間速度が100〜3000hr−1となるような流量が好ましい。この際の反応器内の圧力は、通常、常圧から数気圧である。このガスの流通時には最大温度の低いホットスポットが触媒層の広い部分に生じる。
【0021】
その後、通常の反応条件、すなわちメタクロレインを3〜9容量%、好ましくは4〜8容量%含む原料ガスを用いて250〜350℃の反応温度で該酸化反応を行うと、ホットスポットの最大温度が抑制される。その結果、ホットスポット部での逐次酸化が抑制され、メタクリル酸を高い収率で製造することができる。原料ガスは本反応に対して実質的に影響を与えない低級飽和アルデヒド、ケトン等の不純物を少量含んでいてもよいし、二酸化炭素等の不活性ガスを加えて希釈してもよい。原料ガスの流量は特に限定されないが、空間速度が300〜3000hr−1となるような流量が好ましく、特に500〜2000hr−1となるような流量が好ましい。該酸化反応の反応温度は250〜350℃が好ましく、特に260〜330℃が好ましい。また、反応圧力は常圧から数気圧まで実施できる。
【0022】
本発明の実施に際し、原料ガス、昇温時に流通させるガスおよび昇温後に流通させるガスの酸素源には空気を用いるのが経済的に有利である。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例および比較例中の「部」は重量部を意味する。触媒組成は触媒成分の原料仕込み量から求めた。反応器の熱媒としては硝酸カリウム50質量%および亜硝酸ナトリウム50質量%からなる塩溶融物を用いた。ホットスポットは触媒層のΔT(触媒層の温度−熱媒浴の温度)により検出した。
【0024】
触媒層内の温度は、反応管の管軸方向に対して垂直な断面の中心に設置した保護管に挿入した熱電対により測定した。なお、保護管内は反応系と隔絶されており、測温する位置は挿入する熱電対の長さを調節して変えることができる。原料ガスおよび反応生成ガスの分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
【0025】
また、メタクロレインの反応率、生成したメタクリル酸の選択率、メタクリル酸の収率はそれぞれ以下のように定義される。
メタクロレインの反応率(%)=(B/A)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(C/B)×100
メタクリル酸の収率(%)=(C/A)×100
ここで、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0026】
[実施例1]
パラモリブデン酸アンモニウム100部、メタバナジン酸アンモニウム2.8部および硝酸セシウム9.2部を純水300部に溶解した。これを攪拌しながら、85質量%リン酸8.2部を純水10部に溶解した溶液およびテルル酸1.1部を純水10部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら95℃に昇温した。次いで硝酸銅3.4部、硝酸第二鉄7.6部、硝酸亜鉛1.4部および硝酸マグネシウム1.8部を純水80部に溶解した溶液を加えた。更にこの混合液を100℃で15分間攪拌し、得られたスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥した。
【0027】
得られた乾燥物100部に対してグラファイト2部を添加混合し、打錠成形機により外径5mm、内径2mm、長さ3mmのリング状に成形した。この打錠成形物を空気流通下に380℃で5時間焼成し、触媒1を得た。触媒1の組成は、酸素を除いた原子比で、
Mo121.5Cu0.30.5Fe0.4Te0.1Mg0.15Zn0.1Cs
であった。
【0028】
熱媒浴を備えた内径25.4mmの鋼鉄製固定床管型反応器の原料ガス入口側に触媒1を620mLと外径5mmのアルミナ球130mLを混合したものを充填し、出口側に触媒1を750mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。
【0029】
この触媒層に酸素9容量%、水蒸気10容量%および窒素81容量%からなるガスを空間速度240hr−1で流通させながら熱媒浴温度を290℃まで50℃/時間で昇温した。
【0030】
続いて、熱媒浴温度290℃のまま、メタクロレイン2容量%、酸素8容量%、水蒸気15容量%および窒素75容量%からなるガスを空間速度1000hr−1で3時間流通させた。
【0031】
続いて、熱媒浴温度290℃のまま、メタクロレイン6.5容量%、酸素11容量%、水蒸気10容量%および窒素72.5容量%からなる原料ガスを空間速度1000hr−1で通じた。
【0032】
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から500mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは24℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.0%、メタクリル酸選択率は83.3%、メタクリル酸の収率は70.8%であった。
【0033】
[実施例2]
昇温後流通ガスの組成をメタクロレイン2.5容量%、酸素8容量%、水蒸気15容量%および窒素74.5容量%に変更した以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から470mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは25℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.2%、メタクリル酸選択率は83.0%、メタクリル酸の収率は70.7%であった。
【0034】
[実施例3]
昇温後流通ガスの流通時間を1.5時間に変更した以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から470mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは25℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.3%、メタクリル酸選択率は82.9%、メタクリル酸の収率は70.7%であった。
【0035】
[比較例1]
昇温後流通ガスを流通することなく、熱媒浴温度290℃まで昇温した後、即座に原料ガスを通じたこと以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から400mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは31℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.7%、メタクリル酸選択率は81.4%、メタクリル酸の収率は69.8%であった。
【0036】
[比較例2]
昇温後流通ガスの流通時間を10分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から400mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは30℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.6%、メタクリル酸選択率は81.5%、メタクリル酸の収率は69.8%であった。
【0037】
[比較例3]
昇温後流通ガスの組成をメタクロレイン4.5容量%、酸素12容量%、水蒸気10容量%および窒素73.5容量%からなるガスに変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から400mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは31℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.7%、メタクリル酸選択率は81.4%、メタクリル酸の収率は69.8%であった。
【0038】
[比較例4]
昇温後流通ガスの組成をメタクロレイン0.6容量%、酸素8容量%、水蒸気15容量%および窒素76.4容量%からなるガスに変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から400mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは30℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.7%、メタクリル酸選択率は81.5%、メタクリル酸の収率は69.8%であった。
【0039】
[比較例5]
熱媒浴温度290℃まで昇温する際に流通させるガスの組成をメタクロレイン3容量%、酸素8容量%、水蒸気15容量%および窒素74容量%からなるガスに変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から550mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは19℃であった。また、メタクロレイン反応率は82.0%、メタクリル酸選択率は82.8%、メタクリル酸の収率は67.9%であった。この結果によれば、実施例1に比べてホットスポットのΔTが低下したが、メタクロレインの反応率も低下していることから、触媒が昇温時に被毒されたものと考えられる。
【0040】
[実施例4]
三酸化モリブデン100部、五酸化バナジウム3.2部および85質量%リン酸6.7部を純水800部と混合した。これを還流下で3時間加熱攪拌した後、これに酸化銅0.5部、ホウ酸0.7部および二酸化ゲルマニウム1.2部を加え、再び還流下で2時間加熱攪拌した。得られたスラリーを50℃まで冷却し、重炭酸セシウム11.2部を純水30部に溶解した溶液を加え15分間攪拌した。次いで、硝酸アンモニウム10部を純水30部に溶解した溶液を加え更に15分間攪拌し、得られた触媒成分を含有するスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥した。
【0041】
得られた乾燥物100部に対してグラファイト2部を添加混合し、打錠成形機により外径5mm、内径2mm、長さ3mmのリング状に成型した。この打錠成形物を空気流通下に380℃で5時間焼成し、触媒2を得た。触媒2の組成は、酸素を除いた原子比で、
Mo12Cu0.10.6Ge0.20.2Cs
であった。
【0042】
熱媒浴を備えた内径25.4mmの鋼鉄製固定床管型反応器の原料ガス入口側に触媒2を580mLと外径5mmのアルミナ球170mLを混合したものを充填し、出口側に触媒2を750mLを充填した。このときの触媒層の長さは3005mmであった。
【0043】
この触媒層に酸素9容量%、水蒸気10容量%および窒素81容量%からなるガスを空間速度240hr−1で流通させながら熱媒浴温度を290℃まで50℃/時間で昇温した。
【0044】
続いて、熱媒浴温度290℃のまま、メタクロレイン2容量%、酸素8容量%、水蒸気15容量%および窒素75容量%からなるガスを空間速度1000hr−1で3時間流通させた。
【0045】
続いて、熱媒浴温度290℃のまま、メタクロレイン6.5容量%、酸素11容量%、水蒸気10容量%および窒素72.5容量%からなる原料ガスを空間速度1000hr−1で通じた。
【0046】
このときの触媒層温度を測定したところ、原料ガス入口側の端から500mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは26℃であった。また、メタクロレイン反応率は85.8%、メタクリル酸選択率は84.4%、メタクリル酸の収率は72.4%であった。
【0047】
[比較例6]
昇温後流通ガスを流通することなく熱媒浴温度290℃まで昇温した後、即座に原料ガスを通じたこと以外は実施例4と同様にして酸化反応を行った。その結果、触媒層の原料ガス入口側の端から400mmの位置に最大温度を有するホットスポットが観測され、この最大温度におけるΔTは38℃であった。また、メタクロレイン反応率は86.5%、メタクリル酸選択率は82.4%、メタクリル酸の収率は71.3%であった。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、固定床管型反応器にてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法において、ホットスポット部の温度を十分抑制し、メタクリル酸を高収率で製造することができる。
【0049】
また、固体酸化触媒として前記式(1)で表される複合酸化物を用いることでさらに収率が向上する。

Claims (2)

  1. 固体酸化触媒が充填されている固定床管型反応器の触媒層に、メタクロレインを3〜9容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含む原料ガスを流通させるメタクリル酸の製造方法において、前記原料ガスを流通させる前に、前記触媒層に、酸素、窒素および水蒸気を含み、かつメタクロレインが0〜0.5容量%のガスを流通させながら250〜350℃の範囲まで昇温し、次いでメタクロレインを1〜2.8容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含むガスを250〜350℃で1時間以上流通させることを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
  2. 前記固体酸化触媒が下記の式(1)で表される複合酸化物であることを特徴とする請求項1記載のメタクリル酸の製造方法。
    MoCu (1)
    (式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦10、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
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