JP4057902B2 - 面ファスナーの係合解除機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は面ファスナーによって着脱可能に連結している一対の剛性部材において、これらの剛性部材を分離させる際に、上記面ファスナー間の係合力を減少させてその分離を容易に行えるようにする面ファスナーの係合解除機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、面ファスナーは各種の部材同士を剥離可能に連結する止着具として広く採用され、例えば、衣服のポケットの開口部とこの開口部を開閉する蓋片とに設けたり、袋の開口端とこの開口端を閉止するバンド体とに設けたり、或いは椅子における背もたれの上端の枕部に枕カバーを装着するために設けたりしている。
【0003】
このように、布製等の柔軟な部材の対向面に互い係合する雌雄面ファスナーをそれぞれ取り付けている場合においては、一方の部材の一端部を摘んでこの部材を手元側に引っ張れば、部材が撓んでその一端部側に引張力が集中し、互いに係合している雌雄面ファスナーが、その一端部側から順次、係合を解きながら一方の部材を他方の部材から容易に剥離することができる。
【0004】
これに対して、対向面に互いに係合する雌雄面ファスナーを取り付けている部材が、硬質板状物等のような剛性部材である場合、例えば、一方の剛性部材が動力研磨装置における取付板であって、他方の剛性部材がこの取付板に面ファスナーを介して着脱自在に装着される取替用研磨パッドである場合には、この研磨パッドを取付板から取り外す時に、研磨パッドを剥離しようとする力が面ファスナーの一部分に集中させることができず、そのため、取付板から研磨パッドを引き剥がすには極めて大きな剥離力が必要となる。
【0005】
その上、研磨装置による研磨作業は、研磨パッドを被研磨面に強く押し付けながら行うために、雌雄面ファスナー同士が一層食い込む方向に圧着され、それまで係合していなかった係合素子までが係合して研磨パッドが取付板により一層、強固に固定された状態となり、研磨パッドの剥離が極めて困難になる。
【0006】
このため、雌雄面ファスナーによって強固に固定している剛性部材同士を分離させるには、剛性部材の一側端面の外側方から硬質の薄いヘラ状部材を雌雄面ファスナー間に挿入してこれらの面ファスナーの係合を解除することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−2705号公報。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなヘラ状部材によれば、外部から剛性部材同士を連結させている雌雄面ファスナー間にこのヘラ状部材を挿入したのち、面ファスナーの面方向に平行移動させることにより面ファスナーの係合を解除していくものである。従って、ヘラ状部材を常に面ファスナーの面方向に向けた状態を維持しながら面ファスナーに沿って移動させなければならないために、その操作が煩わしいばかりでなく、面ファスナーの係合を全面に亘って解除するには、ヘラ状部材を剛性部材間の一側端面から他側端面に貫通させた状態にしてヘラ状部材の長さ方向に対して直交する方向に移動させなけれもならず、その操作に大きな力を必要とする上に作業に手間を要するという問題点があった。
【0009】
さらに、上述のように、面ファスナー間でヘラ状部材を大きな力でもって面方向に移動させながら面ファスナー同士の係合を解除したのち、ヘラ状部材が剛性部材間から離脱する際に、上記の大きな力を保有したまま勢いよく離脱して手等を損傷させる虞れがあり、安全性においても問題点があった。
【0010】
また、ヘラ状部材を使わず、人力以外の大きな力で面ファスナーの係合を無理に解除しようとすると、面ファスナーが剛性部材から剥がれてしまい、再度、剛性部材同士を面ファスナーによって連結できなくなるという問題点もあった。
【0011】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、剛性部材同士を連結している面ファスナーの係合を簡単且つ確実に解除することができる面ファスナーの係合解除機構を提供するにある。
【0012】
なお、この明細書で述べる剛性部材とは、人の力では容易に撓ませることのできない部材のことを指す。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の面ファスナーの係合解除機構は、請求項1に記載したように、面ファスナーによって互いに剥離可能に連結している剛性部材において、一方の剛性部材に、上記面ファスナーを設けている対向面間に介在させてこの対向面の面方向に移動させることにより面ファスナーの係合を解除する係合解除具を配設してなる構造としている。
【0014】
このように構成した面ファスナーの係合解除機構において、請求項2に係る発明は係合解除具の構造であって、この係合解除具は糸状物または紐状物からなり、その一端部を一方の剛性部材に固定すると共に他端部をこの剛性部材から外部に突出させて、その突出端部を上記一端固定部を支点として剛性部材の面方向に回動させる回動操作端部に形成している。
【0015】
一方、請求項3に係る発明においては、係合解除具は細幅で薄肉の棒状物又は細径棒状物からなり、この棒状物の一端部を一方の剛性部材における面ファスナーを設けている面に回動自在に枢着していると共に他端部を剛性部材から外部に突出させて、その突出端部を回動操作端部に形成している。
【0016】
また、請求項4に係る発明においては、係合解除具は薄肉帯板片からなり、その両端部を一方の剛性部材の両側端部に摺動自在に掛合させて剛性部材の面ファスナー上を直交する方向に移動させるように構成している。
【0017】
さらに、請求項5または請求項6に係る発明においては、係合解除具は網状物または多孔板からなり、この網状物または多孔板を面ファスナーによって重ね合わせ状に連結している剛性部材の上記面ファスナー間に介在させていると共にその一端部に剛性部材から外部に突出した引張り用把手部を取付けた構造としている。
【0018】
請求項7に係る発明は、上記係合解除具を備えた動力研磨装置に関するものであり、対向面に互いに係合する面ファスナーを設けてなる剛性部材は、動力研磨装置における取付板とこの取付板に上記面ファスナーによって着脱自在に取付けられた研磨パッドとであって、この研磨パッドと上記取付板との面ファスナー間に係合解除具を介在させてなる構造としている。
【0019】
【作用】
雌雄面ファスナーの係合によって互いに剥離可能に連結している剛性部材において、一方の剛性部材に配設している係合解除具を人手により操作して互いに係合した雌雄面ファスナー間を面方向に移動させると、雌雄面ファスナーの係合素子が係合解除具によって押し倒されながら離れて両者の係合が解除される。
【0020】
係合解除具が通過した雌雄面ファスナー部分においては、これらの雌雄係合素子が復元力によって起立して再び係合しようとするが、雄の係合素子が雌の係合素子に対して一方方向からのみ係合する形状、例えば、フック形状に形成されている場合には、起立してもその起立方向が係合しない方向であれば、この係合素子は雌の係合素子に係合することはなく外れた状態を維持する。起立方向が係合する方向に向いている雄の係合素子であって、雌の係合素子に衝合した場合にのみ互いに係合することになる。
【0021】
従って、雌雄面ファスナーの係合力が極めて弱くなり、小さな剥離力で雌雄面ファスナーの係合を解きながら剛性部材同士を分離させることができる。
【0022】
上記係合解除具が糸状物または紐状物からなる場合には、剛性部材間から突出している他端部を摘んで、一方の剛性部材に固定している一端部を支点としてこの糸状物または紐状物を緊張させながらこれらの剛性部材同士を連結している面ファスナー間で面方向に回動させると、上記同様に雌雄面ファスナー同士の係合が解除され、剛性部材同士を簡単且つ確実に分離させることができる。
【0023】
この際、糸状物または紐状物を一端固定部を支点として、その他端部を糸状物または紐状物の長さ方向に対して直角方向に引っ張りながら回動させることにより雌雄面ファスナーの係合を解いていくものであるから、比較的小さな回動操作力でもって円滑に面ファスナーの係合を解除することができる。
【0024】
同様に、係合解除具が細幅で薄肉の棒状物、又は細径棒状物、或いは、薄肉帯板片からなる場合においても、この棒状物、又は、薄肉帯板片を雌雄面ファスナー間に介在させた状態で面方向に移動させることによって雌雄面ファスナー同士の係合を解除することができ、これらの雌雄面ファスナーを介して連結している剛性部材同士を容易に分離させることができる。
【0025】
また、係合解除具としては、網状物或いは多孔板を採用することもでき、この網状物或いは多孔板を剛性部材同士を連結させている雌雄面ファスナー間に介在させた状態においては、雌雄面ファスナーが網状物の網目或いは多孔板の孔を通じて互いに係合している。この状態から、網状物或いは多孔板における剛性部材から外部に突出している引張り用把手部を摘んで手元側に引き寄せると、網状物或いは多孔板が雌雄面ファスナー間をこれらの面ファスナーの面に沿って平行移動して網目を形成している糸状部又は多孔板の孔の周縁部によって雌雄面ファスナー同士の係合が解除され、剛性部材同士を簡単且つ確実に分離させることができる。
【0026】
この場合、網状物や多孔板は雌雄面ファスナー間から引き抜くまで移動させることなく、剛性部材の幅方向に横列状に設けられている一列の網目、或いは一列の孔が剛性部材の長さ方向にその網目或いは孔の開口幅(径)に相当する寸法だけ移動させるだけで、雌雄面ファスナーの係合の解除を全面的に行うことができる。
【0027】
対向面に互いに係合する面ファスナーを設けてなる上記剛性部材として、例えば、エアサンダー等の動力研磨装置における平面方向に旋回動する取付板と、この取付板に上記面ファスナーによって着脱自在に取付けられた研磨パッドとを採用することができる。これらの取付板と研磨パッドとを重ね合わせ状に連結させている面ファスナー間に係合解除具を介在させておくことによって、研磨パッドの取替えを行う場合には、係合解除具を上述したように作動させて面ファスナーの係合力を低下させ、しかるのち、研磨パッドを取付板から引き離せば、取り外すことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は本発明の面ファスナーの係合解除機構をエアサンダー等の動力研磨装置Aにおける研磨パッド1Aの着脱手段に採用したものである。動力研磨装置Aは公知のように、そのハウジング内に設けらたエアモータの回転によって偏心回転する偏心軸の下端に一定厚みを有する剛性部材からなる平面矩形状の取付板2Aの上面中央部をベアリングを介して支持されてあり、取付板2Aは偏心軸の回転によって水平面内で旋回動(実施例ではオービタル運動)を行うように構成している。
【0029】
なお、オービタル運動とは、偏心軸の偏心回転に対して取付板2Aが固定された場合の動きであって、エアモータ軸から取付板2Aの自転運動を強制的に止め、公転運動のみを行わせる運動を指す。
【0030】
そして、この取付板2Aの下面に雌雄面ファスナー3、4を介して上記研磨パッド1Aの上面を着脱自在に連結させてこの研磨パッド1Aの下面に設けているサンドペーパやブラシ5等によって対象物を研磨するように構成している。なお、研磨パッド1Aは上記取付板2Aと略同大で一定厚みを有する平面矩形状の剛性部材から形成されている。
【0031】
この研磨パッド1Aを上記取付板2Aの下面に重ね合わせ状に連結させている上記雌雄面ファスナー3、4は、研磨パッド1Aと取付板2Aとの対向面におけるいずれか一方に雌の面ファスナー3を、他方に雄の面ファスナー4を取り付けておけばよいが、図においては、研磨パッド1Aの上面に雄の面ファスナー3を、取付板2Aの下面に雌の面ファスナー4をそれぞれ貼着している。これらの雌雄面ファスナー3、4の大きさは、研磨パッド1Aや取付板2Aよりも一回り小さい矩形状に形成されている。
【0032】
さらに、研磨パッド1Aには取付板2Aとの面ファスナー3、4による係合を解除するための係合解除具6が取り付けられていて、この係合解除具6を研磨パッド1Aと取付板2Aとの雌雄面ファスナー3、4間に介在させることによって係合解除機構を構成している。
【0033】
上記係合解除具6は、合成樹脂製或いは金属線よりなる糸状物や紐状物からなり、この糸状物又は紐状物(以下、糸状物6Aとして説明する)を図2に示すように、研磨パッド1A上に貼着している上記雄の面ファスナー3の中央部上に重ね合わせ状態に配して、その一端部を研磨パッド1Aの上面の一端側中央部にビス等の止着具7によって固定している。それと共に糸状物6Aの他端部を研磨パッド1Aの他端側から外部に突出させて回動操作端部6aに形成してあり、この突出端部に指掛環8を取り付けている。
【0034】
なお、糸状物6Aの一端部を固定している上記止着具7の上端部が研磨パッド1Aの上面から突出している場合には、この止着具7と対向する取付板2Aの一端側中央部の下面に、止着具7の上端部を受け入れる凹所(図示せず)を設けおけばよい。又、上記係合解除具6を取付板2A側に配設しておいてもよい。
【0035】
このように構成したので、動力研磨装置Aによって研磨作業を行う場合には、下面に研磨の程度に応じたサンドペーパやブラシ等を設けている研磨パッド1Aを動力研磨装置Aの取付板2Aの下面に雌雄面ファスナー3、4を介して重ね合わせ状に取り付ける。この際、研磨パッド1A上に設けている上記糸状物6Aを雌雄面ファスナー3、4間に介在させ且つその回動操作端部6aを外部に突出させた状態にしておく。
【0036】
この状態にして動力研磨装置Aを作動させ、研磨パッド1Aによって被研磨面を研磨する。この時、研磨パッド1Aを被研磨面に押し付けながら研磨作業を行うので、研磨パッド1Aと取付板2Aとの対向面間を連結している上記雌雄面ファスナー3、4同士が一層強固に係合した状態となる。
【0037】
即ち、研磨パッド1Aを取付板2A側に押し付けると、雄側の面ファスナー3が雌側の面ファスナー4に食い込むように押し進められ、取付板2Aに対する研磨パッド1Aの取付時においては雌の面ファスナー4における係合素子に係合しなかった雄の面ファスナー3における係合素子が、上記食い込みによって雌の係合素子に係合することになり、雌雄面ファスナー3、4の係合力が一層増大することになる。
【0038】
研磨パッド1Aがシート等のように柔軟な材料からなる場合には、その端部側を摘んで引っ張って捲り上げることにより、その引張力を端部に集中させて雌雄面ファスナー3、4の係合を解除していくことができるが、研磨パッド1Aが剛性部材からなるものであるから、捲り上げることができない。そのため、研磨パッド1Aを取付板2Aから剥離しようとする力が、雌雄面ファスナー3、4の全面に分散され、研磨パッド1Aを取付板2Aから剥離するには通常の人の力では極めて困難となる。
【0039】
このため、係合解除具6である上記糸状物6Aを操作して雌雄面ファスナー3、4同士の係合力を大きく減少させたのち、研磨パッド1Aを取付板2Aから剥離する。即ち、研磨パッド1Aから突出している糸状物6Aの他端部に取付けている指掛環8に指を引っ掛けて、糸状物6Aを緊張させながら止着具7に固定されている一端部を支点として雌雄面ファスナー3、4の面方向に平行する方向に回動させると糸状物6Aによって雌雄面ファスナー3、4の係合素子がこの糸状物6Aの移動方向に強制的に押し倒される。
【0040】
この時、雄側の面ファスナー3の係合素子が、例えば、フック形状の係合素子である場合には、そのフック部分が開く方向に弾性的に変形して糸状物6Aが通過した時にはループ形状の雌の係合素子との係合が解除された状態となり、解除後、起立して再びフック形状に復元する。この復元時に、フックの先端部が起立方向に向いていると、雌の係合素子に係合する場合もあるが、向いていない場合には雌の係合素子に係合することなく外れた状態を維持し、従って、雌雄面ファスナー3、4間の係合力が大きく減少する。
【0041】
このように、上記糸状物6Aを一端部を支点として左右方向に回動操作して、互いに係合した雌雄面ファスナー3、4間でこれらの面ファスナー3、4の略全面に亘って通過させることにより、大部分の雌雄面ファスナー3、4同士の係合を解除してその係合力を減少させたのち、研磨パッド1Aを取付板2Aから剥離するものである。
【0042】
なお、雄の面ファスナー3の係合素子としては、上述したようにフック形状のもの以外に茸状、矢尻状等の形状のものであってもよく、雌の面ファスナー4の係合素子ととしてはループ状以外に不織布等を採用してもよい。さらに、雌雄の面ファスナー3、4の係合素子を互いに係脱する茸状の係合素子から構成しておいてもよい。
【0043】
また、本実施の形態においては、オービタル運動を行う動力研磨装置について述べたが、それ以外に取付板2Aに自転、公転のいずれの運動も行わせるダブルアクション運動を行う装置、取付板2Aが単純円運動(シングル回転運動)する装置等、各種の旋回動を行う動力研磨装置に適用可能なのはもちろんである。
【0044】
また、上記実施の形態においては、面ファスナーの係合解除機構をエアサンダー等の動力研磨装置Aにおける研磨パッド1Aと取付板2Aとの着脱手段に採用したが、対向面に雌雄面ファスナー3、4を貼着している板状の剛性部材を有しているものであれば、採用することができる。例えば、仕切壁などへの内装材の取付けや、壁面に対する額縁の取付け、窓枠の固定手段、栓や蓋等の固定構造、インテリヤやディスプレイ等の滑り止め、椅子における板材からなる座面に対するクッション材の裏面硬質板の取付け等に採用することができる。
【0045】
このように、対向面に貼着した雌雄面ファスナー3、4によって着脱可能に連結している剛性部材1、2同士において、上記雌雄面ファスナー3、4の係合解除具6としては上述した糸状物6Aに限定されることなく、次に述べるような種々の形態のものを採用することができる。次にその係合解除具6におけるいくつかの実施の形態を説明する。
【0046】
図3〜図5は、係合解除具として糸状物6Bを用いている実施の形態を示すもので、対向面に雌雄面ファスナー3、4をそれぞれ貼着している一対の剛性部材1、2において、一方の剛性部材1における雄(雌であってもよい)の面ファスナー3を貼着している面における中央一端部寄りに糸状物6Bの一端部をビス等の止着具7によって固定してある。そして、糸状物6Bの他端部を剛性部材1の他端側から外部に突出させてその他端に指掛環8を取付けている。
【0047】
なお、剛性部材1の面ファスナー貼着面から突出している上記止着具7は、他方の剛性部材2におけるこの止着具7と対向した部分に設けて凹部9内に受け入れられ、従って、両剛性部材1、2はこの止着具7に邪魔されることなく雌雄面ファスナー3、4によって全面的に連結することができる。
【0048】
このように構成した面ファスナーの係合解除機構によれば、糸状物6Bの指掛環8に指を引っ掛けて、この糸状物6Bを緊張させながら止着具7に固定されている一端部を支点として雌雄面ファスナー3、4の面方向に平行する方向に回動させる。そうすると上記実施の形態で述べたように、糸状物6Bによって雌雄面ファスナー3、4の係合素子がこの糸状物6Bの移動方向に強制的に押し倒されながら互いに離間し、両面ファスナー3、4の係合が解除されるものである。
【0049】
そして、糸状物6Bが通過した後においては、雌雄面ファスナー3、4の係合素子同士が復元しても上述したように互いに係合することなく係合を解除した状態を維持する係合素子が存在し、従って、雌雄面ファスナー3、4間の係合力が減少する。この状態にして、一方の剛性部材1を他方の剛性部材2に対して剥離するものである。
【0050】
図6は、係合解除具として細幅で薄肉の棒状物6Cを採用したもので、この棒状物6Cの一端部を、一方の剛性部材1における面ファスナー3を貼着している面側の中央部に固定したビス等の止着具7に回動自在に取付けてあり、他端部を剛性部材1の他端側から外部に突出させてその突出端部を回動操作端部6cに形成している。また、上記止着具7は、上記実施の形態における図3に示した構造と同様に他方の剛性部材における凹部内に受け入れられている。なお、この実施の形態を含めて、以下に示す実施の形態においては、他方の剛性部材2を省略した図を示している。
【0051】
このように構成した面ファスナーの係合解除機構によれば、剛性部材1、2同士を連結している雌雄面ファスナー3、4間に棒状物6Cを介在させた状態で、この棒状物6Cの回動操作端部6cを摘んで止着具7を支点として平面方向に回動させると、この棒状体6Cの回動方向の側端面によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子を押し広げて上記糸状物6A、6Bの場合と同様に、雌雄面ファスナー3、4の係合を解除させることができる。この場合、糸状物6A、6Bにおいては引っ張り力を必要とするが、棒状物6Cにおいては止着具7を中心としてその長さ方向に対して直角方向に押し進めればよく、従って、より小さな回動操作力でもって雌雄面ファスナー3、4の係合を解除することができ、両剛性部材1、2間を簡単に剥離することができる。
【0052】
図7は、上記棒状物6Cからなる係合解除具の変形例を示すもので、剛性部材1よりも長い棒状物6C' の長さ方向の中央部を剛性部材1における面ファスナー3を貼着している面側の中央部に固定したビス等の止着具7に回動自在に取付けている。そして、棒状物6C' の両端部をこの剛性部材1の両端から突出させ、突出端部を回動操作端部6c' 、6c' に形成しているものである。この実施の形態においては、剛性部材1の両端部から突出しているいずれか一方の回動操作端部6c'を回動操作して止着具7回りに半回転させれば、剛性部材1、2同士を連結している雌雄面ファスナー3、4の係合を略全面的に解除することができる。
【0053】
図8は、係合解除具として薄肉帯板片6Dを用い、この薄肉帯板片6Dの両端部をコ字状に屈曲させてその屈曲部6d、6dを一方の剛性部材1の両側端部に掛合させ、この剛性部材1上に貼着している面ファスナー3上で剛性部材1の長さ方向に摺動させるように構成している。そして、この剛性部材1の面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に係合させて両剛性部材1、2同士を連結し、これらの面ファスナー3、4間に上記薄肉帯板片6Dを介在させた状態にする。
【0054】
このように構成した面ファスナーの係合解除機構によれば、剛性部材1の両側端部に掛合している薄肉帯板片6Dの屈曲部6d、6dを人手によって剛性部材1の長さ方向に押し進めると、薄肉帯板片6Dが両剛性部材1、2の雌雄面ファスナー3、4間で移動する。そして、この薄肉帯板片6Dの長さ方向の端面によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子を押し広げ、上記糸状物6A、6Bや棒状物6C、6C' の場合と同様に、雌雄面ファスナー3、4の係合を解除することができ、両剛性部材1、2間を簡単に剥離することができる。
【0055】
以上の実施の形態においては、いずれも係合解除具を剛性部材1に取付けている形態を示したが、次に、係合解除具を剛性部材1と別体に形成した形態について説明する。
【0056】
図9は、係合解除具として、一定長さの糸状物6Eを環状にしてその両端部に指掛環8を結着してなるもので、この糸状物6Eを一方の剛性部材1の面ファスナー3上に環状に展開させた状態にして載置したのち、この剛性部材1の面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に係合させて両剛性部材1、2同士を連結し、これらの面ファスナー3、4間に上記環状の糸状物6E介在させた状態にする。
【0057】
この状態から、剛性部材1、2間から予め突出させている指掛環8に指を引っ掛けて糸状物6Eを引っ張ると、この糸状物6Eが面ファスナー3、4間を剛性部材1、2の一端側から他端側に向かって移動して、上記実施の形態で述べたように,糸状物6Eによって雌雄面ファスナー3、4の係合素子間を押し開きながら、両面ファスナー3、4の係合を解除することができる。
【0058】
図10は、係合解除具として、剛性部材1の幅と同等、又はやや短い棒状物6F1の両端に糸状物6F2 、6F2 の一端を結着し、これらの糸状物6F2 、6F2 の他端を引き揃え状にして指掛環8に結着してなるもので、上記棒状物6F1 を一方の剛性部材1の面ファスナー3上における一端部にその長さ方向の剛性部材1の幅方向に向けて載置し、糸状物6F2 、6F2 を剛性部材1の他端側に引き延ばして指掛環8を外部に突出させた状態にする。そして、この剛性部材1の面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に係合させて両剛性部材1、2同士を連結する。
【0059】
この状態から、指掛環8に指を引っ掛けて糸状物6F2 、6F2 を介して棒状物6F1 を引っ張ると、この棒状物6F1 が面ファスナー3、4間を剛性部材1、2の一端側から他端側に向かって移動して、上記実施の形態で述べたように、この棒状物6F1 によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子間が押し拡げられ、両面ファスナー3、4の係合が解除されるものである。
【0060】
図11は、係合解除具として、剛性部材1の長さよりもやや長い小径の棒状物6G1 の両側に剛性部材1の幅方向に向かってこの剛性部材1に貼着している面ファスナー3の1/2幅程度の長さを有する小径棒状物6G2 、6G2 ・・・を棒状物6G1 の長さ方向に適宜間隔毎に一体に設けてなるもので、中央に配した棒状物6G1の端部に指掛環8を一体に形成している。
【0061】
このように構成した係合解除具を一方の剛性部材1の面ファスナー3上に載置し、この剛性部材1の面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に係合させて両剛性部材1、2同士を連結すると共にこの係合解除具を雌雄面ファスナー3、4間に介在させた状態にする。
【0062】
この状態から、指掛環8に指を引っ掛けて中央の棒状物6G1 を引っ張ると、この棒状物6G1 から両側方に枝状に突出している上記複数本の棒状物6G2 が面ファスナー3、4間を横切るように移動して、これらの棒状物6G2 によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子間が押し開かれ、両面ファスナー3、4の係合が解除されるものである。この場合、中央の棒状物6G1 を両剛性部材1、2間から引き抜くことなく、長さ方向に隣接する棒状物6G2 、6G2 間の間隔に略等しい長さだけ引けば、これらの棒状物6G2 によって雌雄面ファスナー3、4の係合を略全面に亘って解除することができる。
【0063】
図12は係合解除具として、金属細線又は硬質合成樹脂線状物からなる網状物6Hを採用しているもので、この網状物6Hは一方の剛性部材1上に貼着している面ファスナー3よりも一回り大きい平面矩形状に形成されてあり、その一端両側部に指掛環8、8を一体に設けてこれらの指掛環8、8を剛性部材の一端から外部に突出させた状態にした面ファスナー3上に載置する。そして、この面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に網状物6Hの網目を通じて係合させて両剛性部材1、2同士を連結すると共にこの網状物6Hを雌雄面ファスナー3、4間に介在させた状態にしている。
【0064】
この状態から、指掛環8、8を引っ張ると、両剛性部材1、2の雌雄面ファスナー3、4間を網状物6Hが面方向に移動して網目を形成している線状部又は糸状物によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子間が押し開かれて係合が解除され、剛性部材1、2同士を簡単に剥離(分離)させることができる。
【0065】
この場合、網状物6Hを雌雄面ファスナー3、4間から引き抜くまで移動させることなく、剛性部材1、2の幅方向に横列状に設けられている一列の網目が、剛性部材の長さ方向にその網目の開口幅(径)に相当する寸法だけ移動させるだけで、雌雄面ファスナー3、4の係合の解除を全面的に行うことができる。
【0066】
図13は係合解除具として、剛性部材1に貼着している面ファスナー3よりもやや大きい矩形状の薄肉板6i1 に、縦横に多数の孔6i2 を明けている多孔板6Iを採用しているもので、その一端部に引張り用把手部6i3 を一定に形成してあり、この多孔板6Iを剛性部材1の面ファスナー3上に載置する。そして、この面ファスナー3を他方の剛性部材2の面ファスナー4に多孔板6Iの多数の孔6i2 を通じて係合させて両剛性部材1、2同士を連結すると共にこの多孔板6Iを雌雄面ファスナー3、4間に介在させ、且つ把手部6i3 を剛性部材1、2間の一端から外部に突出させた状態にする。
【0067】
この状態から、把手部6i3 を引っ張ると、両剛性部材1、2の雌雄面ファスナー3、4間を多孔板6Iが面方向に移動して孔6i2 の周縁部によって雌雄面ファスナー3、4の係合素子間が押し開かれて係合が解除され、剛性部材1、2同士を簡単に剥離(分離)させることができる。
【0068】
この場合、上記網状物6Hからなる係合解除具と同じく、多孔板6Iを雌雄面ファスナー3、4間から引き抜くまで移動させることなく、多孔板6Iの孔6i2 の径に略相当する寸法だけ移動させるだけで、雌雄面ファスナー3、4の係合の解除を全面的に行うことができる。
【0069】
なお、以上のいずれの実施の形態においても、剛性部材1、2として平坦な面上に雌雄面ファスナー3、4を貼着してなるものを示しているが、曲面上に面ファスナーを貼着しているものであっても、本発明の係合解除機構を採用する事が出きるのは勿論である。また、剛性部材1、2に対する雌雄面ファスナー3、4の取付けは、接着剤や両面テープ等による貼着に限らず、溶着、縫い付け、差し込み、はめ込み、ねじ止め等を採用してもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上のように本発明の面ファスナーの係合解除機構によれば、請求項1に記載したように、面ファスナーによって互いに剥離可能に連結している剛性部材において、一方の剛性部材に、上記面ファスナーを設けている対向面間に介在させてこの対向面の面方向に移動させることにより面ファスナーの係合を解除する係合解除具を配設しているので、剛性部材の対向面に設けている面ファスナー間に介在させた係合解除具を面ファスナーの面方向に移動させることによって面ファスナーの係合を容易に解除することができ、従って、面ファスナーによる剛性部材同士の係合力が大きく減少して小さな剥離力でもって剛性部材同士を剥離することができる。
【0071】
従って、対向面に互いに係合する面ファスナーを設けてなる上記剛性部材として、例えば、エアサンダー等の動力研磨装置における平面方向に旋回動する取付板と、この取付板に上記面ファスナーによって着脱自在に取付けられた研磨パッドとを採用した場合には、これらの取付板と研磨パッドの対向面間を連結させている面ファスナー間に上記係合解除具を介在させておくことにより、研磨パッドの取替えを行う場合には、係合解除具を上述したように作動させて面ファスナーの係合力を低下させ、取付板から研磨パッドを小さな力によって容易に取り外すことができる。
【0072】
上記のように構成した面ファスナーの係合解除機構において、請求項2に係る発明は係合解除具の構造であって、この係合解除具は糸状物または紐状物からなり、その一端部を一方の剛性部材に固定すると共に他端部をこの剛性部材から外部に突出させて、その突出端部を上記一端固定部を支点として剛性部材の面方向に回動させる回動操作端部に形成しているので、この回動操作端部を摘んで一方の剛性部材に固定している一端部を支点としてこの糸状物または紐状物を緊張させながらこれらの剛性部材同士を連結している面ファスナー間で面方向に回動させれば、上記同様に雌雄面ファスナー同士の係合を容易に解除することができ、剛性部材同士を簡単且つ確実に分離させることができる。
【0073】
この際、糸状物または紐状物を一端固定部を支点として、その他端部を糸状物または紐状物を引っ張りながらの長さ方向に対して直角方向に回動させることにより雌雄面ファスナーの係合を解いていくものであるから、比較的小さな回動操作力でもって円滑に面ファスナーの係合を解除することができると共に、一度の回動操作によって大部分の面ファスナーの係合を解除することができる。
【0074】
また、請求項3、4に記載したように、係合解除具が細幅で薄肉の棒状物、又は細径棒状物、或いは、薄肉帯板片からなる場合においても、この棒状物、又は、薄肉帯板片を雌雄面ファスナー間に介在させた状態で面方向に移動させることによって雌雄面ファスナー同士の係合を素早く解除することができ、これらの雌雄面ファスナーを介して連結している剛性部材同士を容易に分離させることができる。
【0075】
さらにまた、係合解除具としては、網状物或いは多孔板を採用することもでき、この網状物或いは多孔板を剛性部材同士を連結させている雌雄面ファスナー間に介在させた状態においては、雌雄面ファスナーを網状物の網目或いは多孔板の孔を通じて互いに確実に係合させることができる。
【0076】
そして、この状態から網状物或いは多孔板における剛性部材から外部に突出している引張り用把手部を摘んで手元側に引き寄せると、網状物或いは多孔板が雌雄面ファスナー間をこれらの面ファスナーの面に沿って平行移動して網目を形成している糸状部又は多孔板の孔の周縁部によって雌雄面ファスナー同士の係合を解除させることができ、剛性部材同士を簡単且つ確実に分離させることができるものである。
【0077】
この場合、網状物や多孔板は雌雄面ファスナー間から引き抜くまで移動させることなく、剛性部材の幅方向に横列状に設けられている一列の網目、或いは一列の孔が剛性部材の長さ方向にその網目或いは孔の開口幅(径)に相当する寸法だけ移動させるだけで、雌雄面ファスナーの係合の解除を全面的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】面ファスナーの係合解除機構を設けた動力研磨装置の斜視図、
【図2】その係合解除具を取付けている一方の剛性部材の斜視図、
【図3】糸状物からなる係合解除具を剛性部材間に介在させている状態の斜視図、
【図4】その他方の剛性部材を取り外した状態の斜視図、
【図5】面ファスナーの係合解除操作を説明するための簡略平面図、
【図6】棒状物からなる係合解除具を取付けている剛性部材の斜視図、
【図7】その変形例を示す斜視図、
【図8】薄肉帯板片からなる係合解除具を取付けている剛性部材の斜視図、
【図9】環状にした糸状物からなる係合解除具を一方の剛性部材上に配設した状態の斜視図、
【図10】係合解除具として棒状物を使用した変形例を示す斜視図、
【図11】中央の棒状物に複数本の棒状物を支骨状に設けてなる係合解除具の斜視図、
【図12】係合解除具として網状物を使用した場合の斜視図、
【図13】係合解除具として多孔板を使用した場合の斜視図。
【符号の説明】
1、2 剛性部材
3、4 雌雄面ファスナー
6(6A〜6I) 係合解除具
7 止着具
8 指掛環
A 動力研磨装置
1A 研磨パッド
2A 取付板

Claims (7)

  1. 面ファスナーによって互いに剥離可能に連結している剛性部材において、一方の剛性部材に、上記面ファスナーを設けている対向面間に介在させてこの対向面の面方向に移動させることにより面ファスナーの係合を解除する係合解除具を配設していることを特徴とする面ファスナーの係合解除機構。
  2. 係合解除具は糸状物または紐状物からなり、その一端部を一方の剛性部材に固定すると共に他端部をこの剛性部材から外部に突出させて、その突出端部を上記一端固定部を支点として剛性部材の面方向に回動させる回動操作端部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナーの係合解除機構。
  3. 係合解除具は細幅で薄肉の棒状物又は細径棒状物からなり、この棒状物の一端部を一方の剛性部材における面ファスナーを設けている面に回動自在に枢着していると共に他端部を剛性部材から外部に突出させて、その突出端部を回動操作端部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナーの係合解除機構。
  4. 係合解除具は薄肉帯板片からなり、その両端部を一方の剛性部材の両側端部に摺動自在に掛合させて剛性部材の面ファスナー上を直交する方向に移動させるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナーの係合解除機構。
  5. 係合解除具は網状物からなり、この網状物を面ファスナーによって重ね合わせ状に連結している剛性部材の上記面ファスナー間に介在させていると共にその一端部に剛性部材から外部に突出した引張り用把手部を取付けていることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナーの係合解除機構。
  6. 係合解除具は多孔板からなり、この多孔板を面ファスナーによって重ね合わせ状に連結している剛性部材の上記面ファスナー間に介在させていると共にその一端部に剛性部材から外部に突出した引張り用把手部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナーの係合解除機構。
  7. 対向面に互いに係合する面ファスナーを設けてなる剛性部材は、動力研磨装置における取付板とこの取付板に上記面ファスナーによって着脱自在に取付けられた研磨パッドであって、この研磨パッドと上記取付板との面ファスナー間に係合解除具を介在させていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のうち、いずれか1項に記載の面ファスナーの係合解除機構。
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