JP4055469B2 - パワーユニットのケーシング構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーシング構造に関し、特に、自動二輪車のパワーユニットのケーシング構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用エンジンなどのパワーユニットに用いられるケーシングの一つであるクランクケースは、左右割りクランクケースの場合、ケース剛性、防音性、防振性等を高めるためは製品高さが必要とされている。
【0003】
そこで、自動二輪車のような小型車両においては、レイアウト等の制約により、製品高さが必要以上にとれない場合、製品肉厚を多くしたり補強リブを増やすなど対策を講じる必要があった。
また、クランクケースの壁面の断面形状は、平面形状より凸Rを付ける形状の方が防振性、防音性を高める効果があることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、左右割りクランクケースの場合は、構造上シリンダ部との合せ面の剛性をもたらすため、シリンダ位置によりケース割り面位置が殆ど決められてしまい、ケースに設けられた軸受等により枢支される各軸の長さもこれにより制限されてしまうため、クランクケースの剛性に対して不利な状態となる場合が多くなる。また、車両への搭載に際し、各軸の端部付近には隣接する他の装置やそのケーシングが存在する場合も多く、それらを含めたユニット全体をコンパクトかつ軽量、高剛性に設けるという制約や要求もある。
そのため、クランクケースの剛性を高めには、肉厚を増強したりリブを追加するなどの対応しかなく、基本的なクランクケースの剛性確保は非常に困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成クランクケースあるいはエンジンケースの剛性の向上を図り、防音・防振性能の高いパワーユニットのケーシング構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンと変速機を備えるパワーユニットであって、
前記エンジンのクランクケースを構成しかつその内部に配設される軸部材の軸方向に分割可能な右側エンジンケースおよび左側エンジンケースと、
前記両エンジンケースの内部に互いに平行に配設されたクランク軸、該クランク軸の出力を変速機に入力するための入力軸および変速機の出力を伝達するクラッチ軸と、
前記両エンジンケースとは別体で前記変速機のケーシングを構成し、かつ右側エンジンケースの右外側方に配設される変速ケースと
前記変速ケース内に収容されてその一端部を変速ケースの左外側方に突出させかつ前記入力軸に連結される駆動軸および前記クラッチ軸に連結される従動軸と、
前記両エンジンケースを挟んで前記変速ケース配設側とは反対側であって、前記変速ケースの従動軸に装着されたクラッチ軸の左側端部かつ前記左側エンジンケースの左外側方に配設されるクラッチとを有し、
前記右側エンジンケースは、前記クランク軸の一端を軸支する軸支部と前記左側エンジンケースが結合される取付面との間に前記入力軸の軸支部を配設すると共に、該取付面を挟んで前記入力軸の軸支部とは反対側に膨出する凹部を形成して、この凹部で前記変速機の従動軸を軸支することを特徴とするパワーユニットのケーシング構造である。
【0007】
また、本発明は、前記凹部は略円錐台形状を呈し、その円錐台の端面に開口部を形成するとともに、前記開口部の周囲に環状の補強部を設けたことを特徴とすることが好ましい。
また、本発明は、前記右側エンジンケースの長手方向に沿って複数の環状の補強部を設け、前記補強部どうしを連続、或いは、補強部間をリブで連結して連続させたことを特徴とすることが好ましい。
また、本発明は、前記補強部を略階段状に並設し、且つ、千鳥状に配設したことが好ましい。
また、本発明は、前記右側エンジンケースの長手方向の中央付近に凹部を設け、長手方向の両端側を取付面を挟んで前記凹部が形成される方向と反対方向に膨出させ、ケーシングの長手方向にわたる全体形状をく字状とし、取付面を挟んで設けたことを特徴とすることが好ましい。
また、本発明は、前記凹部から膨出部にかけて形状が遷移する部分にリブを設けたことを特徴とすることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図8は発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明に係るパワーユニットのケーシング構造が採用されたエンジンユニットが搭載されたスクータ型自動二輪車の全体の構成を示す部分断面を含む側面図、図2は前記エンジンユニットの構成を示す車両左側側面図、図3は前記エンジンユニットの構成を示す平面図、図4は前記エンジンユニットのパワートレーンの構成を示す車両左側面図、図5は前記エンジンユニットのパワートレーンの構成を示す平面断面図、図6は前記エンジンユニットと変速機の構成を示す車両右側面図、図7は図6のX−X断面矢視図、図8は本実施形態に係るエンジンケースの側面断面図、図9は図8のA部の詳細を示す部分詳細図である。
【0009】
本実施形態は、本発明に係るパワーユニットのケーシング構造が採用されたパワーユニットたるエンジンユニットを搭載したスクータ型自動二輪車1であって、図1、図2に示すように、車体前後方向に延設される車体フレーム2の略中央部にはエンジンユニット3が懸架され、前頭部には前輪4がハンドルバー10によって左右回動自在に設けられ、前記エンジンユニット3の後方に架設されたピボット軸7を介して、後方に延びて後輪8を軸支する後輪懸架装置(図示省略)が上下方向に揺動自在に支持されたものである。
【0010】
前記車体フレーム2は、以下に示すように構成されている。
車両前側には、図1、図2に示すように、前輪4を回転自在に軸支するフロントフォーク4aを左右回動自在に操舵可能に支持するヘッドパイプ21と、前記ヘッドパイプ21の上部より左右一対で後方に向かい、且つ前輪4の上端部と略同程度の高さあたりまで下方に垂下して形成されたヘッドアッパーチューブ22と、前記ヘッドパイプ21の下部より左右一対で後方に向かい、前記ヘッドアッパーチューブ22と対向してダウンチューブ23が略平行に前記ヘッドアッパーチューブ22よりも短く形成されている。
【0011】
前記ヘッドアッパーチューブ22とダウンチューブ23との間には、前記ヘッドアッパーチューブ22の略中央部とダウンチューブ23の端部とを連結するサイドアッパーチューブ24が設けられている。
【0012】
前記ダウンチューブ23の後端部には、下方に垂下して設けられるロアダウンチューブ25が左右一対で設けられている。前記ロアダウンチューブ25は、前輪4の後方で下方に垂下して形成され、前方に傾斜したシリンダブロック32の下側付近より後方に向かいやや上方に傾斜して形成され、クランクケース33付近でさらに上方に傾斜して延設されて後述するアッパーチューブ26の中程に接続されている。
【0013】
車両の中央部には、車体フレーム2の主部を構成するアッパーチューブ26がヘッドパイプ21の下側後方より後輪8の上方に亘り延設されている。前記アッパーチューブ26は、前記ロアダウンチューブ25の前端部付近に接続され、その接続部から後方に向かいやや下方に傾斜して延設され、後輪8の前側より上方に傾斜して形成されている。前記ロアダウンチューブ25の略中央部の下側にエンジンユニット3が垂架されている。
【0014】
エンジンユニット3は、以下に示すように構成されている。
前記エンジンユニット3は、図2〜図5に示すように、クランク軸9を車両幅方向に指向させ、クランクケース33の前側に2気筒用のシリンダヘッド31およびシリンダブロック32を備え、その気筒中心軸が前上がり傾斜となるように搭載された前方横置きエンジンであって、前記クランクケース33の後方に変速機60を前後方向に一体的に並設した2気筒4サイクルのユニット型エンジンである。
【0015】
そして、前記エンジンユニット3は、車両側面視で気筒中心軸線より上方側に吸気系が配設され、該気筒中心軸線より下方側にラジエタ15および排気系が配設されている。前記ラジエタ15は矩形状を呈し、前記エンジンユニット3の前方で且つ後述するエアクリーナ14の下方で車両進行方向に正対して設けられている。
【0016】
前記シリンダヘッド31には、図2、図4に示すように、車両側面視で気筒中心軸線より上方側に吸気カム軸16が配設され、該気筒中心軸線より下方側に排気カム軸17が配設されている。
【0017】
前記シリンダヘッド31の上方には吸気マニホールド31aが形成されている。前記吸気マニホールド31aには、吸気ポート(図示省略)と連通する吸気経路、すなわちインテークパイプ11、スロットルボディ12、気化器インレットチューブ13、エアクリーナ14が前方に向かい上方に傾斜して略直線的に配設されている。前記エアクリーナ14は、ヘッドアッパーチューブ22、ダウンチューブ23およびサイドアッパーチューブ24との間に形成された空間に配置されている。
【0018】
一方、排気経路の構成は、図1、図2に示すように、前記シリンダヘッド31より車体後方に向かい排気管18が延設されている。前記排気管18は、該シリンダヘッド31の下側から後方に向かい延設され、さらに、前記シリンダブロック32の下側に配置されるエンジンケース36に一体的に形成されたクランクケース33の側部に沿って車体後方に延設されて、後輪8の側方で車体フレーム2に取付けられた排気消音器(マフラー)19に接続されている。
【0019】
前記シリンダブロック32の後方には、クランクケース33が構成されるエンジンケース36が設けられている。前記エンジンケース36は、内部に配設される軸部材の軸方向に分割可能に形成された車両右側エンジンケース36aと車両左側エンジンケース36bとの2体で構成されている。
【0020】
前記エンジンケース36の内部には、図5、図7に示すように、クランク軸9と、前記クランク軸9からの出力を前記変速機60に入力するための入力軸37と、前記変速機60からの出力を伝達するクラッチ軸38と、前記クラッチ軸38に伝達された駆動力を駆動輪側に出力する出力軸39が平行に配設されている。前記出力軸39は、後輪側を軸支するためのピボット軸心を兼用している。
【0021】
前記車両左側エンジンケース36bには、クランク軸9の一端部に設けられたマグネト36mを覆うマグネトカバー36nが配設され、前記クラッチ軸38の一端部に設けられたクラッチ部38aを覆うクラッチカバー36dが配設されている。
【0022】
前記車両右側エンジンケース36aには、入力軸37端部とクラッチ軸38端部が突設配設される部分に、変速機60が取付けられる嵌合部36j、36kが開口形成され、クランク軸9と出力軸39が配設される部分にはクランク軸用ボス部36p、出力軸用ボス部36qが形成されている。前記嵌合部36jの内周部と入力軸37の先端部外周部との間にはオイルシール36sが組み付けられ、エンジンケース36内の密閉性を保つようにされている。
【0023】
前記車両右側エンジンケース36a外壁部の変速機60との取付け部分には、締結ボルト64bが締結されるボルトボス部36eが複数箇所に突設されている。
【0024】
ここで、車両右側エンジンケース36aについて、図面を参照して詳細に説明する。
前記車両右側エンジンケース36aは、図8、図9に示すように、概略環状の取付面36a1を有するケーシングあって、前記取付面36a1の法線方向に延びる立壁部36a2と、該立壁部36a2から前記取付面36a1に沿う方向に延出する壁面36a3を有している。
【0025】
前記壁面36a3の一部には、前記立壁部36a2ないし壁面36a3に繋がる折返し部36a4が形成され、前記取付面36a1の法線方向に沿って且つ前記取付面36a1を挟んで前記立壁部36a2と反対側に及びエンジンケース内側に凹んだ嵌合部36kが形成されている。尚、図9において、3a3のハッチングが異なるのは、凹部位置での断面とその周辺位置での断面といった異なる断面を示している。
【0026】
前記嵌合部36kは、図8に示すように、前記壁面36a3の長手方向の中央付近に設けられ、長手方向の両端側をエンジンケース外側に膨出させた形状で、エンジンケース長手方向にわたる全体形状をく字状に断面を形成している。
【0027】
また、前記嵌合部36kは、略円錐台形状を呈し、その円錐台の端面に開口部36k1が形成されるとともに、前記開口部36k1の周囲に環状の補強部たるクラッチ軸用ボス部36k2が形成されている。前記クラッチ軸用ボス部36k2は、開口部36k1の外周に沿って折返し部36a4の肉厚よりも厚く構成されている。
一方、前記嵌合部36jは、開口部36j1が形成されるとともに、前記開口部36j1の周囲に環状の補強部たる入力軸用ボス部36j2が形成されている。
【0028】
前記クランク軸用ボス部36pと入力軸用ボス部36j2とはリブ36r1で連結され、前記入力軸用ボス部36j2とクラッチ軸用ボス部36k2とはリブ36r2で連結され、前記クラッチ軸用ボス部36k2と出力軸用ボス部36qとはリブ36r3で連結されている。すなわち、夫々のボス部が形成される位置から突出あるいは凹んだ状態に遷移する部分にリブが設けられている。
また、前記嵌合部36j、36k、および、クランク軸用ボス部36p、出力軸用ボス部36qは、図8に示すように略階段状に並設され、且つ、図6に示すように、千鳥状に配設されている。
【0029】
前記変速機60は、図6、図7に示すように、前記エンジンケース36とは別体で構成される変速ケース61を備え、その内部に駆動軸62及び従動軸63を配設して別体でエンジンケース36に装着可能としたユニット構造で構成されている。
【0030】
前記変速ケース61は、内部に駆動軸62及び従動軸63が平行に配設されるとともに、その軸心方向に対して略垂直方向に分割可能に形成された内側変速ケース61aと外側変速ケース61bとの2体で構成されている。そして、前記駆動軸62及び従動軸63の各々の一端部が変速ケース61の外側に突出して配設されている。
【0031】
前記内側変速ケース61aは、図7に示すように、駆動軸62端部と従動軸63端部が配設される部分に、前記嵌合部36j、36kと対応する嵌合部61j、61kが突出形成されている。該嵌合部61j、61kは、前記嵌合部36j、36kと嵌め合いで組付けるように構成されている。また、前記嵌合部36j、61j、61kは軸受を兼ねている。
【0032】
前記嵌合部61kの外周部と前記嵌合部36kの内周部との間にはОリング61rが組み付けられ、また、前記嵌合部61kの内周部と従動軸63の構成部品の外周部との間にはオイルシール61sが組み付けられ、エンジンケース36内部と変速ケース61内部との密閉性を保つようにされている。
【0033】
また、前記内側変速ケース61aの車両右側エンジンケース36aとの取付け部分には、前記車両右側エンジンケース36aに突設されたボルトボス部36eと対向してボルトボス部61dが突設されている。
【0034】
前記変速ケース61のエンジンケース36への取付けは、該変速ケース61を車両右側エンジンケース36aの外側に配置して、複数の締結ボルト64bにより前記車両右側エンジンケース36aを挟持して車両左側エンジンケース36bに締結される。
【0035】
前記締結ボルト64bは、図に示すように、変速ケース61の外周縁で、駆動軸62の前方側と、従動軸63の後方側と、前記駆動軸62と従動軸63との間であって前記駆動軸62及び従動軸63を上下方向で挟む位置で、前記変速ケース61をエンジンケース36に締結するように配置されている。
【0036】
前記駆動軸62は、両端部がそれぞれ内側変速ケース61aおよび外側変速ケース61bに組み込まれるベアリング71、72を介して回転可能に軸支されている。前記駆動軸62の内側変速ケース61a側の一端部は、ジョイント(入力軸側)65によりエンジンケース36内に回転可能に軸支される入力軸37の一端部に連結可能に突設され、該変速ケース61内に配置される部分には駆動側可変プーリ62aが設けられている。
【0037】
前記従動軸63は、両端部がそれぞれ内側変速ケース61aおよび外側変速ケース61bに組み込まれるベアリング73、74を介して回転可能に軸支されている。前記従動軸63の内側変速ケース61a側の一端部は、ジョイント(クラッチ軸側)66によりエンジンケース36内に回転可能に軸支されるクラッチ軸38の一端部に連結可能に突設され、該変速ケース61内で前記駆動側可変プーリ62aと対向する位置には従動側可変プーリ63aが設けられている。
【0038】
前記駆動側可変プーリ62aと従動側可変プーリ63aとの間には伝達ベルト67が巻装されている。
【0039】
前記駆動側可変プーリ62aは、図7に示すように、駆動軸62と一体的に形成された固定フェーシング62bと軸心方向に移動可能な可動フェーシング62cとにより構成されている。前記可動フェーシング62cには、同軸上でベアリング75を介して変速ドリブンギア62dが一体的に設けられている。前記変速ドリブンギア62dは、後記する電動モータ68とギアで噛合い、該電動モータ68の回転により駆動軸62の軸線方向に沿って変位するように構成されている。
【0040】
こうして、前記駆動側可変プーリ62aは、変速ドリブンギア62dの変位にともない可動フェーシング62cが変位することで固定フェーシング62bと可動フェーシング62cとの間のプーリ溝の幅が変動して、前記駆動側可変プーリ62a上に円弧状に巻装される伝達ベルト67の円弧寸法を可変制御するようにされている。
【0041】
前記従動側可変プーリ63aは、図7に示すように、従動軸63と一体的に形成された固定フェーシング63bと同軸上で軸心方向に移動可能な可動フェーシング63cとにより構成されている。前記固定フェーシング63bの外側変速ケース61bと対向する外側面にはファン63fが突設されている。前記可動フェーシング63cは、従動軸63に対し回転自在に且つ摺動自在に配設されている。
前記可動フェーシング63cの反固定フェーシング63b側には、該可動フェーシング63cを固定フェーシング63b側に付勢するように圧接バネ69が設けられている。
【0042】
こうして、前記従動側可変プーリ63aは、前記駆動側可変プーリ62aからの伝達される駆動力に応じて伝達ベルト67により可動フェーシング63cが圧接バネ69を抗して変位することで固定フェーシング63bと可動フェーシング63cとの間のプーリ溝の幅が変動して、従動側可変プーリ63a上に円弧状に巻装される伝達ベルト67の円弧寸法が可変制御される。
【0043】
前記電動モータ68は、図6、図7に示すように、駆動軸62の上方で変速ケース61の外側変速ケース61b側壁に一体的に装着されており、前記駆動軸62より前方で且つ変速ケース61の前方端よりも後方に設けられている。また、前記電動モータ68は、前後方向を締結ボルト64bにより挟まれる位置で変速ケース61に締結されている。
【0044】
前記変速ケース61は、図7〜図9に示すように、駆動側可変プーリ62aおよび従動側可変プーリ63aの外周を覆うように内側変速ケース61aおよび外側変速ケース61bの外壁部が形成されている。それぞれの外壁部の外周に沿って略等しい間隔で締結ボルト64aにより内側変速ケース61aと外側変速ケース61bとを一体的に締結されている。
【0045】
後輪8への出力の伝達は、図4、図5に示すように、出力軸39により車両左側に配設される伝動ユニット80を介して後輪8を減速駆動するようにされている。前記後輪8は、車両左側が前記伝動ユニット80により上下方向に揺動自在に軸支されるとともに、車両右側がライトリアアーム88により上下方向に揺動自在に軸支されている。
【0046】
前記伝動ユニット80は伝動ケース81を備え、該伝動ケース81内に前記出力軸39の一端部に設けられるドライブギア82が配設されるとともにアイドルギア83、84、85および後輪軸8aに設けられるファイナルギア86が略平行に配設されている。
【0047】
前記伝動ケース81は、駆動軸心方向に対して略垂直方向に分割可能な外側ケース81aと後輪側に配設される内側ケース81bとで構成され、伝動ユニット80を単体で組立て可能に構成されている。
こうして、前記出力軸39からの駆動力はアイドルギア83、84、85を介してファイナルギア86に伝達されて後輪8を駆動するように構成されている。
【0048】
次に、スクータ型自動二輪車1の外装カバーおよび外装部品は以下に示すように構成されている。
エンジンユニット3の後側上方には、図1に示すように、着座シート5が配設されている。前記着座シート5は、前方に形成された運転者用着座部5aと該運転者用着座部5aより後方で一段高い位置に形成された同乗者用着座部5bを備えるタンデム型シートである。
【0049】
前記着座シート5と車体前部との間には、前記着座シート5に搭乗した搭乗者が両足を置くためのステップフロア41と、前記ステップフロア41より前方に向かい上方へ立ち上がるセンターコンソール42とを有するフロア部43が配設されている。前記フロア部43は、エンジンユニット3の上方および側方を覆うように構成されている。
【0050】
前記ステップフロア41は、図1及び図3に示すように、車両進行方向に対して左右幅方向に亘り形成され、その中央部付近を略断面U字形状に突出させて下側に車体フレーム2の一部やエンジンユニット3を収容可能なフロアトンネル部41aを構成し、その左右側端に側方に突出した平坦部を形成して乗車員が両足を置くための運転者の足載せ部たる運転者用フットボード41bと同乗者の足載せ部たる同乗者用フットボード41cを構成している。前記同乗者用フットボード41cは運転者用フットボード41bの後方で一段高い位置に前後方向に並設されている。
【0051】
また、前記ステップフロア41前側のエンジンユニット3と対向する部位には、図1に示すように、上面および側面にメンテナンス用のスリット部(図示省略)が形成され、前記ステップフロア41の下側には、前端側から後端側に亘りエンジンユニット3の側方覆うように車両左右側にレッグサイドシールド47aが延設されている。
【0052】
前記センターコンソール42は、図1に示すように、一端側がハンドルバー10側に向かい立ち上がり、他端側が前記ステップフロア41の一端部に連結するように配設されたフロントボックス44と、前記フロントボックス44とステップフロア41の一部を覆うメンテナンスリッド(図示省略)により構成されている。
【0053】
前記フロントボックス44は、車両進行方向に対して左右幅方向に亘り形成され、その中央部付近を略断面U字形状に突出させて下側に車体フレーム2の一部やエンジンユニット3およびエンジン補器類を収容可能な用にU字状に形成されたトンネル部(図示省略)が構成されている。また、前記エンジンユニット3と対向する側部には作業口(図示省略)が設けられている。
【0054】
前記メンテナンスリッドは、ステップフロア41のフロアトンネル部41aおよびフロントボックス44のトンネル部の断面形状と略同形状のU字状断面を呈し、ステップフロア41とフロントボックス44とを連結した状態で着脱自在に構成され、該メンテナンスリッドを装着した状態で前記スリット部および作業口を覆うように構成されている。
【0055】
前記フロントボックス44の上側にはフロントコンソールパネル46が配設され、該フロントコンソールパネル46の前方から下方に向かい前記レッグサイドシールド47a前端部に亘り、ライダーの脚部の前方を覆うようにレッグフロントシールド47bが車両左右側に向かい突出して延設されている。
【0056】
前記フロア部43の後方には、車体の後部を覆う後部カバー48が設けられている。前記後部カバー48の下側には後輪8が配設されており、その後輪8の上方を覆うようにリアフェンダ49が後部カバー48の後部に固着されている。
【0057】
前記後部カバー48の上側には、車体後方のほぼ全長にわたって着座シート5が設けられ、該着座シート5の下側には収納ボックス(図示省略)が形成されている。前記着座シート5は前記収納ボックスの蓋の役割を担っている。また、前記収納ボックスの下方にはガソリンタンク(図示省略)が配置されている。
【0058】
以上のように構成したので、本実施形態の構成によれば、変速機60が装着されるエンジンケース36の嵌合部36kを、壁面36a3から連続的に略円錐台状に凹んだ閉断面形状に形成したので、壁面36a3の肉厚方向の壁面高さを得ることができ、壁面36a3の肉厚が薄肉であっても剛性を確保して、防音・防振性能の高いエンジンケースを実現できた。
【0059】
また、本実施形態によれば、エンジンケース36内側に凹んだ凹状の嵌合部36kを構成したので、振動し易いエンジンケース36の壁面36a3の剛性を確保するとともに、防音・防振性能の高いエンジンケースを実現できた。
【0060】
また、本実施形態によれば、前記嵌合部36kを略円錐台形状として、その円錐台の端面に開口部36k1が形成し、前記開口部36k1の周囲に環状の補強部たるクラッチ軸用ボス部36k2を形成したので、剛性の高いケーシングを実現するとともに、スラスト方向の荷重に対して必要な剛性を確保することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、前記嵌合部36kを壁面36a3の長手方向の中央付近に設け、長手方向の両端側をエンジンケース外側に膨出させた形状で、エンジンケース長手方向にわたる全体形状をく字状に断面を形成したので、エンジンケース長手方向に対して垂直方向の剛性を確保するとともに、取付面からの取付け部品の突出を抑制してエンジンケース36をコンパクトに構成できる。さらに、く字状の部分にできる空間を収容スペースとして有効利用できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、クランク軸用ボス部36pと入力軸用ボス部36j2とをリブ36r1で連結し、入力軸用ボス部36j2とクラッチ軸用ボス部36k2とをリブ36r2で連結し、クラッチ軸用ボス部36k2と出力軸用ボス部36qとをリブ36r3で連結したので、壁面の剛性を向上させて、防振・防音性能の向上を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、嵌合部36j、36k、および、クランク軸用ボス部36p、出力軸用ボス部36qを略階段状に並設するとともに、千鳥状に配設したので、厚肉のボス部を連続させることにより駄肉を有することなく壁面の剛性を確保することができる。
【0064】
尚、本発明のパワーユニットのケーシング構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態では自動二輪車に搭載されるエンジンに適用しているが、搭載される車両に限定されるものではない。
【0065】
また、本実施形態では、エンジンケース36の構成について述べているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カバー類に応用して、従来のカバー壁面を凸状に形成して防音・防振性を高めていたものを、本発明を応用して凹状に形成することで、同様以上の効果を得ることができる。
【0066】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の請求項1〜6に記載のパワーユニットのケーシング構造によれば、簡単な構成でクランクケースあるいはエンジンケースの剛性の向上を図り、防音・防振性能の高いパワーユニット(エンジンユニット)のケーシング構造を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【0067】
詳しくは、本発明によれば、右側エンジンケースは、前記クランク軸の一端を軸支する軸支部と前記左側エンジンケースが結合される取付面との間に入力軸の軸支部を配設すると共に、該取付面を挟んで前記入力軸の軸支部とは反対側に膨出する凹部を形成して、この凹部で前記変速機の従動軸を軸支することで、振動の腹となって、音を反射しやすい薄肉の平坦な壁を減らすことができる。また、前記凹部を立壁部ないし壁面から連続する面で構成することで、凹部を形成する法線方向の壁面が補強されて剛性の向上を図り、防音性・防振性の向上を図ることができる。
【0068】
また、本発明によれば、前記凹部を略円錐台形状とし、その円錐台の端面に開口部を形成するとともに、前記開口部の周囲に環状の補強部を設けることで、スラスト方向の荷重に対する剛性を確保することができる。また、円錐台の空間に他のケースの一部、例えば、変速ケースの軸受を兼ねた嵌合部を収納かつ互いに嵌合させることができ、両ケースが協働して剛性を持たせることもできる。
【0069】
また、本発明によれば、前記右側エンジンケースの長手方向に沿って複数の環状の補強部を設け、前記補強部同士を連続、或いは、補強部間をリブで連結して連続させることで、凹部の占有面積が壁面に対して大きくなっても剛性を確保でき、防音性・防振性の向上を図ることができる。
【0070】
また、本発明によれば、前記補強部を略階段状に並設し、且つ、千鳥状に配設することで、補強部を連続させて重量を不必要に増やすこと無く剛性を確保することができる。さらに、荷重を分散させることができるだけでなく、ケースの全長を短縮することができる。
【0071】
また、本発明によれば、前記右側エンジンケースの長手方向の中央付近に凹部を設け、長手方向の両端側を取付面を挟んで前記凹部が形成される方向と反対方向に膨出させ、ケーシングの長手方向にわたる全体形状をく字状とすることで、エンジンケースの長手方向に垂直な方向の剛性を確保することができるとともに、取付面からの突出量を抑制でき、ケーシング全体をコンパクトにできる。また、く字状部分にできる空間に他の構成部品やケーシングを収納できる。
【0072】
また、本発明によれば、前記凹部から膨出部にかけて形状が遷移する部分にリブを設けることで、不必要に剛性を上げること無く、重量の増加を抑制できる。
以上のような優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るパワーユニットのケーシング構造が採用されたエンジンユニットが搭載されたスクータ型自動二輪車の全体の構成を示す部分断面を含む側面図である。
【図2】 前記エンジンユニットの構成を示す車両左側側面図である。
【図3】 前記エンジンユニットの構成を示す平面図である。
【図4】 前記エンジンユニットのパワートレーンの構成を示す車両左側面図である。
【図5】 前記エンジンユニットのパワートレーンの構成を示す平面断面図である。
【図6】 前記エンジンユニットと変速機の構成を示す車両右側面図である。
【図7】 図6のX−X断面矢視図である。
【図8】 本実施形態に係るエンジンケースの側面断面図である。
【図9】 図8のA部の詳細を示す部分詳細図である。
【符号の説明】
1 スクータ型自動二輪車
2 車体フレーム
3 エンジンユニット
33 クランクケース
36 エンジンケース
36a 車両右側エンジンケース
36a1 取付面
36a2 立壁部
36a3 壁面
36a4 折返し部
36b 車両左側エンジンケース
36j 嵌合部
36j1 開口部
36j2 入力軸用ボス部
36k 嵌合部
36k1 開口部
36k2 クラッチ軸用ボス部
36p クランク軸用ボス部
36q 出力軸用ボス部
36r1、36r2、36r3 リブ
37 入力軸
38 クラッチ軸
38a クラッチ部(クラッチ)
60 変速機
61 変速ケース
61a 内側変速ケース
61b 外側変速ケース
61k 嵌合部
62 駆動軸
62a 駆動側可変プーリ
63 従動軸
63a 従動側可変プーリ
67 伝達ベルト
68 電動モータ

Claims (6)

  1. エンジンと変速機を備えるパワーユニットであって、
    前記エンジンのクランクケースを構成しかつその内部に配設される軸部材の軸方向に分割可能な右側エンジンケースおよび左側エンジンケースと、
    前記両エンジンケースの内部に互いに平行に配設されたクランク軸、該クランク軸の出力を変速機に入力するための入力軸および変速機の出力を伝達するクラッチ軸と、
    前記両エンジンケースとは別体で前記変速機のケーシングを構成し、かつ右側エンジンケースの右外側方に配設される変速ケースと
    前記変速ケース内に収容されてその一端部を変速ケースの左外側方に突出させかつ前記入力軸に連結される駆動軸および前記クラッチ軸に連結される従動軸と、
    前記両エンジンケースを挟んで前記変速ケース配設側とは反対側であって、前記変速ケースの従動軸に装着されたクラッチ軸の左側端部かつ前記左側エンジンケースの左外側方に配設されるクラッチとを有し、
    前記右側エンジンケースは、前記クランク軸の一端を軸支する軸支部と前記左側エンジンケースが結合される取付面との間に前記入力軸の軸支部を配設すると共に、該取付面を挟んで前記入力軸の軸支部とは反対側に膨出する凹部を形成して、この凹部で前記変速機の従動軸を軸支することを特徴とするパワーユニットのケーシング構造。
  2. 前記凹部は略円錐台形状を呈し、その円錐台の端面に開口部を形成するとともに、前記開口部の周囲に環状の補強部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のパワーユニットのケーシング構造。
  3. 前記右側エンジンケースの長手方向に沿って複数の環状の補強部を設け、前記補強部どうしを連続、或いは、補強部間をリブで連結して連続させたことを特徴とする請求項1または2に記載のパワーユニットのケーシング構造。
  4. 前記補強部を略階段状に並設し、且つ、千鳥状に配設したことを特徴とする請求項3に記載のパワーユニットのケーシング構造。
  5. 前記右側エンジンケースの長手方向の中央付近に凹部を設け、長手方向の両端側を取付面を挟んで前記凹部が形成される方向と反対方向に膨出させ、ケーシングの長手方向にわたる全体形状をく字状としたことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載のパワーユニットのケーシング構造。
  6. 前記凹部から膨出部にかけて形状が遷移する部分にリブを設けたことを特徴とする請求項5に記載のパワーユニットのケーシング構造。
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