JP4053778B2 - ポリマー電解質基材、ポリマー電解質、ポリマー電解質シート及びそれを用いた電気化学素子 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、機械的強度、イオン伝導性および電解液保持性に優れたポリマー電解質基材に関し、それを用いたポリマー電解質、ポリマー電解質シート及びリチウムイオン二次電池または電気二重層コンデンサ等の電気化学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ノートパソコン、携帯電話、ビデオカメラなどの各種情報端末機器の急激な小型化、軽量化、薄型化とそれらの普及や、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などの普及および実用化を目指し、それらの電源として高エネルギー密度の二次電池の要求が高まっている。特に、非水電解質を使用したリチウムイオン二次電池は、作動電圧が高く、高エネルギー密度を有する電池であり、既に実用化されている。このリチウムイオン二次電池は、一般に、正極と負極の間に電気絶縁性と保液性を備えたセパレータを介装して成る電極群を負極端子も兼ねる電池缶の中に所定の非水電解液と一緒に収容し、前記電池缶の開口部を、正極端子を備えた封口板で絶縁性のガスケットを介して密閉した構造になっている。
ところで、この非水電解液を使用したリチウムイオン電池においては、有機電解液を使用しているために電解液が漏れやすいという欠点を有しており、電池の密閉方法などの製造方法が複雑であった。そればかりでなく、揮発性有機溶媒であるため過充電時に発火する危険性があり、安全性の点で他の電池に比べて不利であり、自動車用途等には使用が限られていた。また、さらなる高エネルギー密度化と充放電サイクル寿命の長期化の要望も強まっている。
【0003】
一方、デジタルスチルカメラや燃料電池自動車は、その出力において負荷変動が大きく、急激な出力増加に対応するために、高速な充放電が可能な電気化学素子が重要となる。このような用途においてはリチウムイオン二次電池の性能を補う補助電源として、基本的にレドックス反応を伴うことのない高速な充放電が可能とされる電気二重層コンデンサが注目を集めている。電気二重層コンデンサは硫酸水溶液の水系か、プロピレンカーボネート等に、(C2H5)4NBF4あるいは(C2H5)4PBF4を溶解させた非水系が実用化されている。特に、非水系の電解液を用いた場合、4V以上の高電位を得られるため注目されているが、リチウムイオン電池と同様に、有機溶媒を用いるため安全性に問題がある。さらに、充電時のコンデンサ内部では電解質イオンは電極界面に静電気的相互作用により吸着しているため、時間経過とともにイオンの脱離が起こり、いわゆる自己放電、漏れ電流を生じやすい。このような課題に対する解決策が急務となっている。
【0004】
最近になって、これら要求に対応すべく、上記の非水電解液をポリマー電解質基材に含有させ、電解液の流動性を抑制させたポリマー電解質を用いることで、漏液や発火性を低減したリチウムイオン電池が開発された。また、電気二重層コンデンサにおいては、ポリマー電解質を用いることで、安全性のみならず、イオンの電極からの脱離を防止し、漏れ電流の低減、自己放電の抑制を実現できる可能性が高いとして、注目を集めている。
【0005】
ここで、このようなポリマー電解質として、一般に、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルやポリアクリル酸エステル等のポリマー電解質基材に電解液を含有させゲル化したものが用いられ、電解質として10−3S・cm−1程度のイオン伝導度が得られている。しかし、このようにポリマー電解質基材として、これら樹脂を使用すると、ポリマー電解質の薄膜化が可能であるが、機械的強度が劣るため、このポリマー電解質を用いて電気化学素子を作製した場合、ポリマー電解質が破れて短絡してしまうという問題があった。
【0006】
ところで、上記ポリマー電解質基材の中でも、ポリアクリロニトリルは熱暴走などによる加熱時に難燃化する作用が認められていることから、安全性向上の可能性が高く、ポリマー電解質として期待されている材料である。ポリアクリロニトリルは、分子量にもよるが、十数重量%のポリマー濃度で電解液をゲル化することができ、高い電解液保液性を得ることができる。高い電解液保液性は、高いイオン伝導度を得るために重要な要素である。
【0007】
一方、このようなポリマー電解質を用いた電気化学素子を作製する場合、製造工程の簡略化、生産性の向上のために、シート状に加工したポリマー電解質基材を用いることが試みられている。例えば、シート状のポリマー電解質基材とポリエチレン製多孔質セパレーターと電極とをラミネートまたは電極材料をポリマー電解質基材上に塗工等により形成しながら、これらを捲回し、アルミ包装材中に投入し、電解液を注入することでポリマーをゲル化させる製造方法がある。このような製造方法を用いる場合、ポリマー電解質の前駆物となるポリマー電解質基材は、ラミネートによる引っ張りに耐えられるだけの十分な引っ張り強度を有する必要がある。一般に、ポリアクリロニトリルは機械的強度が弱く脆いため、シート状に加工したものはこの工程で用いることは困難である。一方、ポリアクリルニトリルを電解液でゲル化させる方法としては、まず120℃以上の高温で加熱溶解させる必要があり、これを室温まで冷却しゲル化させる。したがって、電池等の電気化学素子内部でのゲル化は、併用されるポリエチレン製多孔質セパレーター等の他部材の耐熱性が低いため、基本的に困難である。そのため、できる限り温和な条件でゲル化させるためには、低分子量のポリアクリロニトリルを使う等の工夫がなされるが、その場合、電気化学素子の内部温度が上昇した場合の耐熱性が劣り、ゲルが再溶解してしまい、本来のポリマー電解質の利点を失ってしまう。
【0008】
以上のことから、ポリマー電解質シートの前駆物であるポリマー電解質基材の機械的強度が高く、高い電解液保液性を有し、ゲル化が容易で、ゲルの耐熱性が高いポリアクリロニトリルを用いたポリマー電解質が望まれているが、このような特性を満足するポリマー電解質はいまだ存在しない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、電極と、ポリマー電解質とを備えた電気化学素子に用いられるポリマー電解質における上記のような問題を解決することにある。本発明の他の目的は、イオン伝導度等のポリマー電解質の機能を低下させることなく、機械的強度を向上させたポリマー電解質基材を提供することにある。本発明の更に他の目的は、取り扱い性に優れるため生産性がよく、使用中のポリマー電解質の破損が抑制されると共に、充放電時の劣化が防止された電気化学素子を得るためにシート状に加工されたポリマー電解質シートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重量平均分子量が300,000以上500,000未満のアクリロニトリル単独重合体、及びアクリロニトリルを50重量%以上含有するアクリロニトリル系共重合体を含有することを特徴とするポリマー電解質基材である。
【0011】
また、本発明のポリマー電解質基材は、十分な機械的強度と容易なゲル化を両立することを目的として、アクリロニトリル単独重合体の重量平均分子量が300,000以上500,000未満である。
【0012】
また、前記アクリロニトリル系共重合体のアクリロニトリルと共重合されるモノマーが、アクリル酸エステル系モノマーまたはメタクリル酸エステル系モノマーであることで、イオン伝導度を低下させることがないポリマー電解質基材を得ることができる。
【0013】
また、熱硬化性樹脂組成物を含有し、加熱により架橋構造を導入することで、より耐熱性の優れたポリマー電解質基材となる。
【0014】
ここで、熱硬化性樹脂組成物が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはイソシアナート化合物から選択された少なくとも1種からなる熱硬化性樹脂組成物は、高い耐熱性および高い機械的強度が得られ、本発明において好適に用いられる。
【0015】
本発明のポリマー電解質基材に電解液を保持させたポリマー電解質は、電解液保液性、耐熱性及び機械的強度に優れる。
【0016】
本発明のポリマー電解質をシート状に加工したポリマー電解質シートは、電気化学素子用ポリマー電解質として好適であり、生産性に優れる。
【0017】
本発明のポリマー電解質シートを用いた電気化学素子は、安全性、容量特性、サイクル特性等に優れた電気化学素子となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のポリマー電解質基材は、少なくとも、アクリロニトリル単独重合体、およびアクリロニトリルを50重量%以上含有するアクリロニトリル系共重合体を含有する。
本発明において、アクリロニトリル単独重合体は、アクリロニトリルのモノマーの付加重合反応により得られ、その重合方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光・放射線重合などの公知の技術を用いることができ、重合方法に制限はない。一般的にはラジカル重合が簡便な方法として用いられるが、重合形態としては、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などにより得ることができる。
【0019】
本発明で用いられるアクリロニトリル単独重合体の好適な分子量は、重量平均分子量において、200,000未満では電解液保液性が低下し、ひいては、電解液との親和性が増加するため電解液含浸後のゲルの耐熱性が劣り好ましくない。分子量が500,000を超えた場合は、機械的強度は向上するものの、ゲル化に必要な温度が上がり、また、ゲル化に長時間を要するため好ましくない。重量平均分子量としては、300,000以上500,000未満であり、この範囲のものは電解液保液性と機械的強度との両立において優れている。
【0020】
本発明におけるアクリロニトリルを50重量%以上含有するアクリロニトリル系共重合体は、ポリマー電解質基材の電解液による含浸ゲル化を容易にするためと、機械的強度を向上するために用いられる。含浸ゲル化を容易にすることは、電解液保液性を向上し、ひいては、イオン伝導性の向上に寄与する。アクリロニトリルが50重量%未満の場合は、アクリロニトリル単独重合体との相溶性が低下し、均一混合が難しくなるため好ましくなく、また、電解液への溶解性が著しく増加するため、ポリマー電解質基材から電解液が脱離しやすくなり好ましくない。一方、アクリロニトリルは電気化学的に安定であり、イオン伝導性が高い成分であるため、ゲル化を阻害しないかぎりできるだけ多く含有することが好ましい。これらの特性をバランス良く満たす組成としては、アクリロニトリルの含有量が80重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。なお、該共重合体の合成方法は、アクリロニトリル単独重合体の場合と同様に、種々の重合方法を用いることができる。
【0021】
アクリロニトリルと共重合されるモノマーとしては、反応性不飽和基含有モノマーであり、該共重合体のイオン伝導性を阻害しない成分であれば、特に限定されるものではない。また、2種以上の成分を同時に用い多元共重合体とすることも可能である。また、共重合成分が異なる2種以上のアクリロニトリル系共重合体を併用することも可能である。
【0022】
アクリロニトリルと共重合される反応性不飽和基含有モノマーの例としては、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、スチレン、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、プロピオン酸ビニル、および、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0023】
アクリル酸エステル系モノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸アミノメチル、アクリル酸N−メチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノメチル等のアクリル酸アミノアルキル類、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。メタクリル酸エステル系モノマーの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸N−メチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノメチル等のメタクリル酸アミノアルキル類、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。特に、電気化学安定性の面から、これら、アクリル酸エステル系モノマーまたはメタクリル酸エステル系モノマーが好適に用いられ、中でもアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが最も好適に用いられる。
【0024】
本発明においては、熱硬化性樹脂組成物を含有することで、ポリマー電解質基材の熱安定性をさらに向上することが可能となる。本発明でいう熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂単独で硬化反応が十分に完了するものと、熱硬化性樹脂単独では硬化せずに適宜な硬化剤および反応促進剤を併用する必要があるものの両者を含むものである。このような熱硬化性樹脂組成物としては、室温〜200℃程度の加熱により架橋硬化されるものであり、アクリロニトリル単独重合体またはアクリロニトリル系共重合体のイオン伝導性を阻害しない成分であれば、特に限定されるものではない。熱硬化性樹脂組成物の例は、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジイソシアナート化合物等が挙げられ、これらに限定されるものではない。本発明においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはジイソシアナート化合物が、適宜な硬化剤を選択することで比較的温和な条件により硬化し、耐熱性の高い架橋構造を得ることができるため好適に用いる。特にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂が好ましい。また、該組成物の添加量は、全ポリマー電解質基材に対して、5〜20重量%が好適である。添加量が5重量%より少ない場合は熱安定性の向上効果が認められず、20重量%より添加量が多い場合では電気化学安定性が低下し、さらには、アクリロニトリル単独重合体の有する高イオン伝導性を低下させる要因となる。
【0025】
熱硬化性樹脂組成物として用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、線状脂肪族エポキシド類、脂環式エポキシド類、ヒダントイン型エポキシ類等が挙げられる。具体的には、グリシジルエーテル類としては、例えば、ビスフェノールのグリシジルエーテル類、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル類、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類等が挙げられる。より具体的には、ビスフェノールのグリシジルエーテル類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等の二価フェノール類のグリシジルエーテルが挙げられ、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルが挙げられ、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類のグリシジルエーテルが挙げられる。また前記グリシジルエステル類としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステル、ダイマー酸のグリシジルエステル等が挙げられ、グリシジルアミン類としては、例えば、トリグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。更に、線状脂肪族エポキシド類としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられ、脂環式エポキシド類としては、例えば。3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、水素添加型ビスフェノールエポキシド等が挙げられる。ヒダントイン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン等が挙げられる。これらの化合物は単なる例示であり、本発明においてはこれらに限定されるものではない。これらの化合物は単独で用いてもよく、また、2種以上を混合してもよい。エポキシ樹脂を加熱硬化させるためには、種々のエポキシ硬化剤を添加する必要がある。エポキシ硬化剤の例としては、フェノール樹脂、ジイソシアナート化合物、酸無水物化合物、ポリアミド樹脂、ジアミン化合物等が挙げられる。また、加熱硬化を促進するために反応促進剤を適宜に添加することができる。
【0026】
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、ナフトール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジフェノール、ビスフェノール等のフェノール性水酸基を有するフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる合成樹脂で、この縮合反応の触媒として塩基を用いた場合に得られるメチロール基を有するレゾール型と、酸を用いた場合に選られるノボラック型とに大分される。本発明においては、レゾール型、ノボラック型のどちらのフェノール樹脂を用いることも可能であり、また、これらを併用することも問題ない。レゾール型を用いた場合、ノボラック型と比較して反応性に富むために硬化剤を用いなくともそれ単独で硬化させることが可能となるが、ノボラック型を硬化させるためにはヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を併用することが必要である。本発明においては、より温和な条件でも反応性が高いレゾール型フェノール樹脂が好適に用いられ、高い耐熱性を発現することができる。上記の如きレゾール型フェノール樹脂に於いて、本発明では特に、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの反応により得られたメチロール基を2個以上有する化合物の混合物もしくはこれから分離された単独品が、良好な熱硬化性を有し、優れた耐熱性が得られることから好ましい。更に、反応促進剤等を少量配合し、熱硬化性を向上することも可能である。
【0027】
イソシアナート化合物としては、例えば、一分子中に官能基を2個以上有する脂肪族イソシアナート類、脂環式イソシアナート類、芳香族イソシアナート類およびこれらの変性物が挙げられる。より具体的には、脂肪族イソシアナートとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート等を例示することができる。脂環式イソシアナートとしては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート、水添キシレンジイソシアナート、水添トリレンジイソシアナート等を例示することができる。芳香族イソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート、4,4‘―ジフェニルメタンジイソシアナートまたは2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート等を例示することができる。脂肪族、脂環族、芳香族イソシアナート類の変性物としては、上記例示した化合物のイソシアナート基の一部または全部がカーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ビューレット基、イソシアヌレート基等に変性された化合物が挙げられる。これらの化合物は単なる例示であり、本発明においてはこれらに限定されるものではない。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。イソシアナート化合物を用いて加熱硬化させるためには、先述したエポキシ樹脂を用いることもできるが、他には、分子内に活性水素原子をもった化合物を用いることができ、ポリエーテルまたはポリエステル等のポリオール化合物を用いることが可能である。ポリエーテルとしては、ポリプロピレングリコールのほかグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコール類、エチレンジアミン、エタノールアミン等のアミン類、フェノール樹脂の多価フェノール類を出発原料としてこれにアルキレンオキサイド開環重合したものが用いられる。特に、末端にエチレンオキサイドを導入したポリエーテルはイソシアナート化合物との反応速度が高く好適である。ポリエステルとしては、アジピン酸、フタル酸、セバチン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等のポリオール類から得られる末端に水酸基をもつ化合物等が用いられる。これら、ポリエーテルまたはポリエステルと、イソシアナート化合物との反応には、反応助剤としてアミン類、金属塩類、シリコーン油等を適宜用いることも可能である。
【0028】
本発明のポリマー電解質基材は、耐熱性、機械的強度が飛躍的に向上できるために、多孔構造とすることも可能となる。ポリマー電解質基材における多孔構造は、電解液の保持性の向上、電解液の含有量の増量、ひいては、イオン伝導度の向上、さらには、生産性の点で有利である。多孔構造を得るための手法については、種々の公知技術が適応できるので詳細は省略するが、延伸開孔法、相分離法、溶媒抽出法、化学的発泡法、物理的発泡法等が挙げられる。多孔構造における空隙率は特に制限はないが、好ましくは10〜80%である。空隙率が高いほど電解液を多量に保持でき、イオン伝導度を向上することができるが、上記の範囲より高すぎると、安全性を向上するための機械強度が充分ではなくなる。
【0029】
本発明のポリマー電解質基材の機械的強度が高く、高い電解液保液性を有し、ゲル化が容易であることは、以下のような理由により発現するものと思われる。すなわち、アクリロニトリル単独重合体と混合されるアクリロニトリル系共重合体は、本来、他樹脂との相溶性が低い該単独重合体との相溶性に優れ、組成物は均一分散が可能となる。ここで、該単独重合体と比べ電解液との相互作用が強い該共重合体は、電解液を容易に基材中に吸収することができる。さらに、電解液を吸収した該共重合体は該単独重合体中に包含されているため、容易に電解液を脱離することがない。また、該単独共重合体の機械的強度は、引っ張り弾性率においては優れるものの、柔軟性が低いため、靭性において十分とはいえないが、該共重合体を混合併用することで、靭性を改善し、より高い機械的強度を得ることが可能となる。
【0030】
それに加え、本発明のポリマー電解質基材中に熱硬化性樹脂組成物を用い、これを硬化、架橋させ、ポリマー電解質基材中に相互浸入網目構造(IPNマトリックス)を形成することで、より高い耐熱性と機械的強度を得ることができる。特に、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物から得られる相互浸入網目構造は、アクリロニトリルがもつイオン伝導機構を直接阻害する要因とはならず、イオン伝導度の低下を引き起こさない。
【0031】
次に本発明のポリマー電解質について詳述する。
本発明のポリマー電解質は、前記で詳述したポリマー電解質基材中に電解液を保持させたものである。該電解液としては、有機溶媒に電解質塩を溶解した混合溶液が使用される。その有機溶媒としては、高い電圧をかけた場合でも分解が起こらないものが好ましく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトロヒドラフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、もしくはこれら溶媒の2種類以上の混合物が挙げられる。また、電解液に溶解する電解質塩としては、リチウムイオン二次電池の場合、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF6、LiCF3CO2、LiPF6SO3、LiN(SO3CF3)2、Li(SO2CF2CF3)2、LiN(COCF3)2およびLiN(COCF2CF3)2 等の塩、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。一方、電気二重層コンデンサの場合、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4NClO4等の四級アンモニウム塩、(C2H5)4PBF4、(C2H5)4PClO4等の四級ホスホニウム塩、LiClO4、LiPF6等のアルカリ金属塩を使用することができる。このような電解質塩を溶解した電解液を、ポリマー電解質基材中に含有させることで、ポリマー電解質基材を膨潤し、電解液は基材中に固定化、保持される。このときの電解液の保持性を向上させることは、電池の液漏れ防止、内部短絡による発火抑制効果がある。
【0032】
また、本発明におけるポリマー電解質は、必要に応じて、電気化学的に安定な粒子、繊維状物を含有させて機械強度を向上する従来の技術を使用することも可能である。このような粒子の例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の無機粒子、フェノール樹脂粒子、ポリイミド樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等の有機粒子が挙げられ、繊維状物の例としては、アパタイト繊維、酸化チタン繊維、金属酸化物のウィスカー等の無機繊維状物、アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維などの有機繊維状物が挙げられる。これらの粒子、繊維状物の形状及び粒径に特に制限はなく、適宜に選択して用いることができる。
【0033】
次に、本発明のポリマー電解質シートについて、その製造方法を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下の製造方法以外でも公知の技術を用いて本発明の電解質シートを得ることができる。
【0034】
まず、アクリロニトリル単独重合体、およびアクリロニトリルを50重量%以上含有するアクリロニトリル系共重合体を溶媒に分解・分散させる。また、溶媒としては、これら高分子が溶解可能なものを適宜選択することができ、高沸点で安全性の高い、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等を用いることが好ましい。分散、溶解方法としては、マグネチックスターラー、ホモジナイザー等の攪拌機、ポットミル、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダー等の分散機を用いて、分散・溶解させる。この時、アクリルニトリル単独重合体は、室温で均一に溶解することは難しいため、50〜200℃の範囲で加熱しながら溶解させ、空気酸化を抑制するために窒素ガス等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。得られた溶液を室温以下まで冷却した後、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはイソシアネート化合物等の熱硬化性樹脂組成物を添加し、更に分散混合する。さらに、必要に応じて粒子、繊維状物を分散させる。得られた混合物よりなる塗布液を、基体上に塗布またはキャスティング等によりシート状の被覆物を得る。基体としては平滑なものならば如何なるものでも使用することができる。例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等の樹脂フィルム及び各種ガラスなどが挙げられる。これらの基体は、離型処理、易接着処理などの表面処理を施したものでもよく、塗布方法により適宜選択すれば良い。電池用セパレーターとして用いられるポリオレフィン微多孔フィルムを基体として用いることも可能である。また、上記塗布液を基体に塗布するための手段は特に限定されるものではなく、基体の材質や形状等に応じて適宜決定すればよい。一般に、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が使用されている。その後、必要に応じて、平板プレス、カレンダーロール等により圧延処理を行う。塗布により得られたシート状の被覆物を構成する溶媒を乾燥により蒸発させることによって、混合物が均一分散したシートが形成される。乾燥方法は減圧乾燥でも、風乾でもよい。また、乾燥は加熱によって行ってもよい。熱硬化性樹脂組成物を含有させた場合は、乾燥後あるいは乾燥と同時に加熱硬化を行う。硬化条件は、熱硬化性樹脂組成物により適宜選択されるものではあるが、室温から200℃の範囲で行う。次いで形成されたシート状のポリマー電解質基材を、電解液に浸漬して、電解液を含浸させて本発明のポリマー電解質シートを得ることができる。
【0035】
次に、本発明のポリマー電解質シートを用いた電気化学素子について詳述する。
電気化学素子としては、リチウムイオン二次電池や電気二重層コンデンサ等を挙げることができる。
本発明のポリマー電解質シートを用いたリチウムイオン二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極および負極と、ポリマー電解質シートとから構成され、積層型電池や円筒型電池に適用される。正極および負極には、電極活物質を用いるが、電池の正極活物質としては、組成式LixM2O2、またはLiyM2O2(ただし、Mは遷移金属、0≦x≦1、0≦y≦2)で表される複合酸化物、トンネル状の空孔を有する酸化物、層構造の金属カルコゲン化合物が挙げられ、その具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2Mn2O4、MnO2、FeO2、V2O5、V6O13、TiO2、TiS2等が挙げられる。また、有機化合物としては、例えばポリアニリン、ポリアセン、ポリピロール等の導電性高分子が挙げられる。さらに無機化合物、有機化合物を問わず、上記各種活物質を混合して用いてもよい。更に、電池の負極活物質としては、リチウムおよび/またはリチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質である炭素材料、グラファイト、コークス等、その他、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd等とリチウムとの合金、LiFe2O3等の遷移金属複合酸化物、WO2、MoO2等の遷移金属酸化物、グラファイト、カーボン等の炭素質材料、Li5(Li3N)等の窒化リチウム、および金属リチウム箔、またはこれらの混合物を用いてもよい。
【0036】
本発明のポリマー電解質シートを用いて電池を作成する場合、負極には、炭素材料、リチウム金属、リチウム合金または酸化物材料等の負極活物質を用い、正極には、リチウムイオンがインターカーレート・デインターカーレート可能な酸化物または炭素材料等の正極活物質を用いることが好ましい。このような電極を用いることにより、良好な特性のリチウムイオン二次電池を得ることができる。電極活物質として用いる炭素材料は、例えば、メソカーボンマイクロビーズ、天然または人造のグラファイト、樹脂焼成炭素材料、カーボンブラック、炭素繊維等から適宜選択すればよい。これらは粉末として用いられる。中でもグラファイトが好ましく、その平均粒径は1〜30μm、特に5〜25μmであることが好ましい。平均粒子径が上記範囲よりも小さすぎると、充放電サイクル寿命が短くなり、また、容量のばらつきが大きくなる傾向にある。また上記範囲よりも大きすぎると、容量のばらつきが著しく大きくなり、平均容量が小さくなってしまう。平均粒子径が大きい場合に容量のばらつきが生じるのは、グラファイトと集電体の接触やグラファイト同士の接触にばらつきが生じるためと考えられる。リチウムイオンがインターカーレート、デインターカーレート可能な酸化物としては、リチウムを含む複合酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO4、LiV2O4等が挙げられる。これらの酸化物は粉末として用いられるが、粉末の平均粒子径は1〜40μmであることが好ましい。電極には、必要に応じて導電助剤が添加される。導電助剤としては好ましくは、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、ニッケル、アルミニウム、銅、銀等の金属が挙げられ、特にグラファイト、カーボンが好ましい。電極の形成に用いるバインダーとしては、フッ素樹脂、フッ素ゴム等を挙げることができ、バインダーの量は電極の3〜30重量%程度の範囲が適当である。
【0037】
電池を作成するには、まず、電極活物質と、必要に応じて添加される導電助剤とを、ゲル電解質溶液またはバインダー溶液に分散して、電極塗布液を調整し、この電極塗布液を集電体に塗布すればよい。集電体は、電池の使用するデバイスの形状やケース内への配置方法に応じて、通常の集電体から適宜選択すればよい。一般に正極にはアルミニウム等が、負極には銅、ニッケル等が使用される。電極塗布液を集電体に塗布したあと、溶媒を蒸発させて電極を作成する。塗布厚は、50〜400μm程度とすることが好ましい。このようにして得られた正極、負極及び前記ポリマー電解質シートを、正極、ポリマー電解質シート、負極の順に積層し、圧着して電子素体を作る。その際、ポリマー電解質シートとしては、厚さ5〜50μmの範囲のものが好ましく使用される。さらに、これら正極、ポリマー電解質シート、負極の順に積層し、圧着する際、あらかじめ、ポリマー電解質基材に電解液を含浸するか、或いは、積層し、圧着した後、電解液を注入する。また、電池の内部短絡防止、発熱時の回路遮断機能を付与する目的で、ポリエチレン或いはポリプロピレン製等のポリオレフィン微多孔質膜を用いることが可能である。この場合、2枚のポリマー電解質シートを用いてその間に挟みこむか、或いは、ポリマー電解質シートの片面に接する形で配置する。
【0038】
なお、本発明のポリマー電解質シートは、上記の例はリチウムイオン二次電池に関するものであるが、電気二重層コンデンサの場合には、電解質塩、電極活物質、外装材等が異なるのみであり、本質的には類似した製造方法により作製することが可能である。なお、本発明のポリマー電解質は、前記リチウムイオン二次電池および電気二重層コンデンサに特に好適に用いることができるが、その他の電気化学素子、例えばセンサー等にも利用することが可能である。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明する。
<ポリマー電解質基材の作製>
表1に示したアクリロニトリル単独重合体、アクリロニトリル系共重合体及び熱硬化性樹脂組成物を該表の配合量(重量%)に基づいて次の方法により製造し、実施例1〜6および比較例1〜3のポリマー電解質基材を作製した。
まず、アクリロニトリル単独重合体およびアクリロニトリル系共重合体を1−メチル−2−ピロリドン−(NMP)に添加し、120℃窒素雰囲気下で溶解した。なお比較例1および2においてはアクリロニトリル系共重合体を配合しなかった。更に、室温冷却後、実施例2〜6及び比較例1、3においては、表1の配合量に従って熱硬化性樹脂組成物を添加し、溶解させた。得られた混合物よりなる塗布液を、ドクターブレード法によってポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャストし、50〜150℃で送風乾燥してNMPを完全に揮発させた上、同時に加熱硬化反応を行うことで、ポリマー電解質の前駆物となるシート状のポリマー電解質基材を得た。これらシート状ポリマー電解質基材の乾燥時の膜厚は約20μmであった。
なお、表1におけるアクリロニトリル単独重合体、アクリロニトリル系共重合体及び熱硬化性樹脂組成物の物性値または商品名などは次の通りである。
アクリロニトリル単独重合体A:重量平均分子量約400,000、アクリロニトリル単独重合体B:重量平均分子量約800,000、アクリロニトリル系共重合体A:アクリロニトリル80重量%とメタクリル酸メチル20重量%とからなる重量平均分子量約800,000のアクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル系共重合体B:アクリロニトリル45重量%とメタクリル酸メチル55重量%とからなる重量平均分子量約400,000のアクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、熱硬化性樹脂組成物A:レゾール型フェノール樹脂(昭和高分子社製 商品名:CKM−908)、熱硬化性樹脂組成物B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製 商品名:エピコート828)65重量%とフェノール樹脂(昭和高分子社製 商品名:BRG−555)35重量%を使用した樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物C:イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 商品名:コロネートHX)50重量%とポリエチレングリコール(三洋化成工業社製 商品名:PEG#2000)50重量%を使用した樹脂組成物。
【0040】
【表1】
(単位:重量%)
【0041】
<ポリマー電解質シートの作製>
次に、前記で得られたシート状のポリマー電解質基材に、LiPF6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを容積比でEC/PC=1/2にした電解液を60℃の環境下でポリマー電解質基材に含浸ゲル化させ、電解液を保持した本発明のポリマー電解質シート(実施例1〜6)及び比較用のポリマー電解質シート(比較例1〜3)を得た。しかしながら、比較例3のシート状のポリマー電解質基材は、斑が目立つ不均一膜であり、電解液を含浸ゲル化させたポリマー電解質シートも不均一であったため、下記に述べるポリマー電解質基材の破断点荷重の評価及びポリマー電解質シートのイオン伝導度の評価は実施しなかった。
【0042】
<ポリマー電解質基材及びポリマー電解質シートの評価>
前記で得られたポリマー電解質基材をテンシロン万能試験機を用いてJIS L1096−1990に準じて引っ張り強度の測定を行った。試験片のサイズは幅10mm×長さ(測定長)30mmとした。その結果を破断点荷重として表2に示した。この場合、実用上必要な破断点荷重は1Kgf/cm以上である。
また、前記ポリマー電解質シートを直径13mmのステンレス電極で挟み、交流インピーダンス法で25℃におけるイオン伝導度を測定した。この場合、電気化学素子に用いるのに必要なイオン伝導度は1×10−3S/cm以上である。
なお、比較例1においては60℃では電解液を含浸ゲル化することができず、より高温で含浸を試みたが120℃まで上げても含浸ゲル化ができないためインピーダンス測定は実施しなかった。同様に、比較例2においては60℃では電解液を含浸ゲル化することができず、100℃の環境下で含浸したところ、シート形状を維持できずポリマー電解質は流動性を示したが、インピーダンス測定は実施した。また、含浸ゲル化が可能であった実施例1〜6において、80℃雰囲気下で1日放置した後のゲル状態を観察した。
なお、表2において、シート形状にゲルを維持したものには○を、シート形状は維持できないがゲル状態を維持したものには△を、全くゲル状態を維持できないものを×として表示した。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の結果から明らかなように、ポリマー電解質基材の機械的強度に関しては、何れの実施例においても問題なく使用できる強度を有していた。また、実施例1〜6のポリマー電解質基材は、容易に電解液による含浸ゲル化が可能であり、得られたゲル状のポリマー電解質シートの機械的強度は、シート状態を維持するほどの強度を有していた。更に、実施例2〜6のポリマー電解質は、80℃の環境下に放置した場合にも、ゲル状態を維持し、電解液の染み出しもなく、高い耐熱性を有していた。一方、比較例1及び2のポリマー電解質基材は、容易にゲル化することは困難で製造工程上問題を有していた。更に、比較例1は機械的強度も実用上問題のあるレベルであった。また、比較例3のポリマー電解質基材は、不均一な膜となり実用的ではなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリマー電解質基材は、機械的強度が高く、且つ、電解液による容易な含浸ゲル化が可能であり、該基材より得られたポリマー電解質は電解液保液性、耐熱性、機械的強度を有し、電気化学的素子に用いるための十分なイオン伝導度を有している。したがって、本発明のポリマー電解質を電気化学的素子の製造に用いた場合、取り扱い性、生産性、歩留まりに優れており、且つ、その電気化学素子は安全性、容量特性、サイクル特性、レート特性、自己放電抑制に優れたものとなり得る。
Claims (7)
- 重量平均分子量が300,000以上500,000未満のアクリロニトリル単独重合体、及びアクリロニトリルを50重量%以上含有するアクリロニトリル系共重合体を含有することを特徴とするポリマー電解質基材。
- 前記アクリロニトリル系共重合体のアクリロニトリルと共重合されるモノマーが、アクリル酸エステル系モノマーまたはメタクリル酸エステル系モノマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー電解質基材。
- 熱硬化性樹脂組成物を含有することにより架橋構造が導入されてなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のポリマー電解質基材。
- 前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはイソシアナート化合物から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のポリマー電解質基材。
- 請求項1〜4のいずれかのポリマー電解質基材中に電解液が保持されてなることを特徴とするポリマー電解質。
- 請求項5のポリマー電解質がシート状であることを特徴とするポリマー電解質シート。
- 請求項6のポリマー電解質シートと電極とを有することを特徴とする電気化学素子。
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