JP4052897B2 - 転がり軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンチロックブレーキシステム(ABS)等の制御のために、車輪の回転速度や回転方向を検出する回転検出器を備えた転がり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ABS制御のための回転検出器を備えた各種車両用転がり軸受装置が提案されている。
【0003】
例えば、車輪を固定するハブホイールに装着した内輪と、車体に固定する外輪との間に転動体を介装し、車体に対して車輪を回転自在に支持する転がり軸受がある。
【0004】
回転検出器は、内輪に固定した着磁パルサリングと、外輪に固定したカバーに着磁パルサリングに対向して設けた半導体センサとからなり、ハブホイールの回転に伴って回転する着磁パルサリングの回転速度や回転方向を半導体センサにて検出し、車輪の回転状態を検出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
転がり軸受装置は、軸受メーカーから自動車メーカーに搬送され、自動車メーカーは自動車の組立工場にて転がり軸受装置を車体に組み付けている。転がり軸受装置の組み付けに際しては、作業の効率化を図るため、半導体センサを装着しない状態で組み付けを行った後、カバーに半導体センサを装着している。すなわち、軸受メーカーから自動車メーカーに搬送される際には、転がり軸受装置に半導体センサが装着されていない。このため、搬送中や組付作業中に、センサ取付穴からカバー内に異物等が侵入するのを防止するために、図6に示すような工夫が施されていた。
【0006】
図6において、11はハブホイールの軸部、2は転がり軸受、4は内輪21に固定した支持環3に設けた着磁パルサリング、5は外輪22に固定したカバーである。
【0007】
軸受メーカーでは、転がり軸受2の外輪22に固定したカバー5のセンサ取付穴51を、グロメット等の密封部材9にて密封しておく。この状態で、自動車メーカーに搬送され、車体に組み付けた後、密封部材9を取り外してセンサ取付穴51に半導体センサを装着する。
【0008】
しかし、別途、密封部材9が必要となるため部品点数が増え、かつ、軸受メーカーでは密封部材9をセンサ取付穴51に装着する工程、自動車メーカーでは密封部材9を取外す工程が必要となり、コスト高になるという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、転がり軸受と、前記転がり軸受の端面を覆うカバーとからなる転がり軸受装置であって、前記転がり軸受は、回転輪と、前記回転輪の径方向外側に当該回転輪と同心状に配置された固定輪とを含み、前記カバーは、前記固定輪の端縁に固定されており、かつ、前記回転輪の軸方向端縁に固定される被検出体の回転を検出する検出体を取付ける検出体取付穴を有し、前記検出体取付穴は、前記検出体の取付け時に破れ可能な薄膜にて覆われていることを特徴とするものである。
【0010】
なお、被検出体が固定される回転輪の軸方向端縁とは、回転輪の軸方向端面あるいは回転輪の軸方向端部外周面を含む部分である。
【0011】
回転検出器となる検出体と被検出体は、例えば、アクティブセンサの場合には、検出体が半導体センサ、被検出体が着磁パルサリングの組み合わせであったり、パッシブセンサの場合には、検出体が電磁誘導式センサ、被検出体が磁性体パルサリングの組み合わせとなる。
【0012】
薄膜は、検出体の取付け時に破れ可能な厚みを有し、カバーの内側または外側、あるいは検出体取付穴内の途中のいずれに形成してもよい。
【0013】
薄膜には、検出体の取付け時に容易に破れるように、切り目を設けてもよい。当該切り目は、薄膜に貫通して形成されていてもよく、あるいは薄膜表面に貫通させずに形成されていてもよい。また、切り目は連続した線状に形成されていてもよく、あるいはミシン目状に形成されていてもよい。
【0014】
本発明の転がり軸受装置によれば、検出体取付穴を検出体の取付け時に破れ可能な薄膜にて覆ってあるので、搬送工程や組付工程にて、検出体取付穴からカバー内に異物が侵入するのを防止できる。しかも、検出体は薄膜を破って検出体取付穴に取付けられ、別途、検出体取付穴を密封する密封部材が不要になると共に、密封部材の着脱工程も不要となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0016】
図1はこの実施の形態における転がり軸受装置のセンサ装着前の断面図、図2はカバーの薄膜部分の正面図、図3は転がり軸受装置のセンサ装着状態の断面図を示している。
【0017】
なお、図1,3において、車両インナ側とは図面の右側を指し、車両アウタ側とは図面の左側を指す。
【0018】
図1において、1はハブホイールであり、軸部11と、車輪を固定するハブフランジ12を有している。
【0019】
ハブホイール1の軸部11の外周には、複列のアンギュラ玉軸受からなる転がり軸受2が装着されている。転がり軸受2は、軸部11の車両インナ側外周に圧入してかしめ固定あるいはナット締結した回転輪となる内輪21と、内輪21の径方向外側に当該内輪21と同心状に配置された固定輪となる外輪22と、軸部11ならびに内輪21に形成した内輪軌道13,14と,外輪22に形成した外輪軌道25,26に沿って転動自在に配置した転動体となる2列の玉群23とからなり、外輪22には車体に連結したナックルを固定するフランジ24が形成されている。
【0020】
内輪21の車両インナ側の端縁には、磁性体の支持環3が固定されている。支持環3は、断面L字形に形成され、車両インナ側面には被検出体となる着磁パルサリング4が固着されている。着磁パルサリング4は、内輪21と同心状の円輪状に形成され、フェライトの粉末を混入したゴム磁石等の永久磁石からなり、周方向等間隔にN極とS極を交互に着磁してなる。
【0021】
また、外輪22の車両インナ側の端縁には、転がり軸受2の端面を覆うカバー5が固定されている。カバー5は、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状に形成されている。カバー5の具体的な成形材料としては、例えば、66ナイロン、ガラス繊維強化プラスチック等が挙げられる。
【0022】
カバー5には、着磁パルサリング4に対向する部位において検出体取付穴となるセンサ取付穴51が貫通して形成されており、センサ取付穴51の近傍にはセンサ固定用のねじ穴53が形成されている。さらに、カバー5の内側において、センサ取付穴51が薄膜52にて覆われている。薄膜52は、カバー5の射出成形時に同時に一体成形される。すなわち、薄膜52が残るような型枠を用いて、カバー5が射出成形される。
【0023】
図2に、カバー5の薄膜52部分の正面図を示す。
【0024】
薄膜52の厚さは、半導体センサの圧入時に破れ可能な値であればよく、例えば、0.2[mm]程度である。
【0025】
薄膜52の外面側に、半導体センサの圧入時に、容易に破れ可能なように、切り目54を入れてもよい。切り目54は、薄膜52に貫通して形成されていてもよく、あるいは貫通していなくてもよい。温度差により、内部が負圧となった場合に、カバー5内に切り目54から水が浸入するのを防ぐことができるように、貫通していない方がよい。また、切り目54は、図示のように、ミシン目であってもよく、あるいは連続形成されたものであってもよい。
【0026】
切り目54の形状は、図示のように、放射状に形成されているものに限らず、半導体センサの圧入時に薄膜52が容易に破れると共に、破れてもカバー5から脱落しないように形成されていればよい。
【0027】
軸受メーカーにて、図1のようなカバー5を固定した転がり軸受装置を製造し、自動車メーカーに搬送する。
【0028】
自動車メーカーでは、軸受メーカーから搬送されて来た転がり軸受装置を、自動車の組立工場にて車体に組み付けた後、図3に示すように、カバー5に検出体となる半導体センサ6を装着する。
【0029】
半導体センサ6は、ホール素子や磁気抵抗素子等の磁束の流れ方向に応じて出力を変化させる磁気検出素子61と、当該磁気検出素子61の出力波形を整える波形成形回路を組み込んだIC等を、ホルダ62にて保持してなるアクティブセンサである。ホルダ62の外周面の溝内にはOリング63が嵌合されている。
【0030】
半導体センサ6は、カバー5の外面からセンサ取付穴51に圧入される。半導体センサ6は、薄膜52を破ってセンサ取付穴51に圧入され、磁気検出素子61を着磁パルサリング4に対向配置させた状態で、ホルダ62が固着具64にてねじ穴53に固定される。また、ホルダ62の外周面に設けたOリング63がセンサ取付穴51の内周面に圧接し、確実に防水が施される。
【0031】
なお、半導体センサ6の圧入方向先端が、薄膜52を破り易い形状とされていてもよい。
【0032】
軸部11の回転に伴って内輪21に固定した着磁パルサリング4が回転すると、半導体センサ6にて着磁パルサリング4の磁束の変化を検知し、車輪の回転速度や回転方向が検出される。
【0033】
このように構成された転がり軸受装置によれば、センサ取付穴51を半導体センサ6の圧入時に破れ可能な薄膜52にて覆ってあるので、搬送工程や組付工程にて、センサ取付穴51からカバー5内に異物が侵入するのを防止でき、異物が回転検出器に付着して検出精度が低下するのを防止できる。
【0034】
半導体センサ6は薄膜52を破ってセンサ取付穴51に圧入固定でき、別途、センサ取付穴51を密封する密封部材が不要になり部品点数を削減できると共に、密封部材の着脱工程も不要となり、低コスト化が図れる。
【0035】
薄膜52は、半導体センサ6の圧入時に破れても、カバー5から脱落しないように形成されており、破れた薄膜52が回転検出器に付着して検出精度が低下するのを防止できる。
【0036】
図4,5に、本発明の転がり軸受装置の変形例を示す。この変形例は、カバー5の外側において、センサ取付穴51を薄膜52にて覆ったものである。
【0037】
すなわち、センサ取付穴51の外側に内径を大きくした拡径部55を形成し、センサ取付穴51の外側端部が薄膜52にて覆われている。薄膜52の外面には、適宜、切り目を入れておく。
【0038】
図5に示すように、センサ取付穴51に、薄膜52を破って半導体センサ6が圧入されると、破れた薄膜52は拡径部55に入り込み、薄膜52にて邪魔されることなく、半導体センサ6を圧入固定できる。
【0039】
このように構成された転がり軸受装置においても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0040】
薄膜は、センサ取付穴51内の途中に設けてもよい。
【0041】
センサは、アクティブセンサに限らず、パッシブセンサとしてもよい。すなわち、内輪21の端縁に、櫛歯を有した磁性体パルサリング(被検出体)を固定する。検出体は、永久磁石,磁性体のステータ,コイル等からなる電磁誘導式センサであり、センサ取付穴51に圧入固定される。そして、内輪21と共に磁性体パルサリングが回転すると、磁性体パルサリングに対向したステータ内の磁束密度が変化し、コイルに生じる電圧が、内輪21の回転速度や回転方向に比例した周波数で変化し、車輪の回転状態が検出される。
【0042】
被検出体と検出体が径方向に対向する転がり軸受装置にも適用できる。例えば、内輪21に径方向外面に着磁パルサリングを設けた支持環を圧入し、カバーに形成したセンサ取付穴に径方向外側から半導体センサを圧入して着磁パルサリングに対向させる。このような構造の転がり軸受装置において、カバーのセンサ取付穴を、半導体センサの取付け時に破れ可能な薄膜にて覆うようにしてもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受装置によれば、検出体取付穴を検出体の取付け時に破れ可能な薄膜にて覆ってあるので、搬送工程や組付工程にて、検出体取付穴からカバー内に異物が侵入するのを防止できる。しかも、検出体は薄膜を破って検出体取付穴に取付けられ、別途、検出体取付穴を密封する密封部材が不要になると共に、密封部材の着脱工程も不要となり、低コスト化が図れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における転がり軸受装置のセンサ装着前の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における転がり軸受装置のカバーの薄膜部分の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態における転がり軸受装置のセンサ装着状態の断面図である。
【図4】本発明の転がり軸受装置の変形例におけるカバーの薄膜部分の断面図である。
【図5】図4の変形例におけるセンサ装着状態のカバーの薄膜部分の断面図である。
【図6】従来例における転がり軸受装置のセンサ装着前の断面図である。
【符号の説明】
2 転がり軸受
21 内輪(回転輪)
22 外輪(固定輪)
23 玉群(転動体)
3 支持環
4 着磁パルサリング(被検出体)
5 カバー
51 センサ取付穴(検出体取付穴)
52 薄膜
54 切り目
6 半導体センサ(検出体)

Claims (3)

  1. 転がり軸受と、前記転がり軸受の端面を覆うカバーとからなる転がり軸受装置であって、
    前記転がり軸受は、回転輪と、前記回転輪の径方向外側に当該回転輪と同心状に配置された固定輪とを含み、
    前記カバーは、前記固定輪の端縁に固定されており、かつ、前記回転輪の軸方向端縁に固定される被検出体の回転を検出する検出体を取付ける検出体取付穴を有し、前記検出体取付穴は、前記検出体の取付け時に破れ可能な薄膜にて覆われていることを特徴とする転がり軸受装置。
  2. 前記薄膜に切り目が設けられる、ことを特徴とする請求項1記載の転がり軸受装置。
  3. 前記薄膜が前記カバーに一体的に射出成形されている、ことを特徴とする請求項1記載の転がり軸受装置。
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