JP4052605B2 - α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子 - Google Patents

α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は糖鎖及び糖タンパク質の構造や機能の解析等の糖鎖工学に有用なα−1,3/4−フコシダーゼをコードする塩基配列及びそのアミノ酸配列に関する。本発明は、また、該遺伝子を含有させた組換えプラスミドを導入させた組換体を用いるα−1,3/4−フコシダーゼの工業的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
L−フコースは糖タンパク質や糖脂質、グリコサミノグリカンと言ったいわゆる複合糖質の構成糖として、主に糖鎖の非還元末端に存在している。α−1,3/4結合したフコースはルイス式血液型抗原や腫瘍関連抗原、あるいは細胞接着因子であるセレクチンのリガンドに含まれており、これらの糖鎖構造の解析あるいは機能の解析のためにはα−1,3/4−フコシダーゼが極めて有用な試薬として用いられている。
α−1,3/4−フコシダーゼとしてはアーモンド由来のα−フコシダーゼI〔アーカイブズ オブ バイオケミストリー アンド バイオフィジクス(Archieves of Biochemistry and Biophysics) 、第181巻、第353〜358頁(1977)、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological chemistry)、第257巻、第8205〜8210頁(1982)〕及びα−フコシダーゼIII 〔ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第265巻、第16472〜16477頁(1990)〕、及びストレプトマイセス(Streptomyces) 由来のもの〔ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第1522〜1527頁(1992)〕が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アーモンドミールあるいはアーモンドエムルシンからα−フコシダーゼを取得する方法は、アーモンド中に多種多様な糖加水分解酵素が混在するためそれらと目的のα−フコシダーゼを完全に分離し、高度に精製するのは非常に困難であった。またストレプトマイセス属放線菌を培養してα−1,3/4−フコシダーゼを取得する方法の場合は、酵素の生産を誘導するために培養時に高価なL−フコースを添加する必要がある上に、同時にプロテアーゼ、ラクト−N−ビオシダーゼなどの酵素が生産され、これらの酵素と分離精製することが困難であった。したがって、より安価に高純度なα−1,3/4−フコシダーゼを製造する方法が求められていた。従来α−1,3/4−フコシダーゼをアーモンドやストレプトマイセス属放線菌から精製する方法に関しては前述のように報告があるが、α−1,3/4−フコシダーゼのアミノ酸配列や遺伝子構造は不明である。
また、α−1,3/4−フコシダーゼの工業的に有利な製造方法についても開示されていない。したがって本酵素の遺伝子が明らかとなれば、遺伝子工学的に単一で高純度品の酵素製造が可能となり、糖鎖及び糖タンパク質の構造や機能の解析等の糖鎖工学に有用な酵素を製造することも可能になる。また、本酵素のDNA配列により本酵素とは配列が異なるが同様の酵素活性を持つと期待される本酵素類似の遺伝子の探索も可能となる。本酵素のDNA配列に対応するアミノ酸配列は本酵素の抗体を作製することに用いるのにも有用である。
本発明の目的は、α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子、そのDNA配列、及びそのアミノ酸配列を提供し、α−1,3/4−フコシダーゼの遺伝子工学的製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は配列表の配列番号2に記載したDNA配列からなるα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子に関する。第2の発明は、上記第1の発明の遺伝子をプローブとし、6×SSC、1%ラウリル硫酸ナトリウム、100μg/mlのサケ精子DNA、5×デンハルツを含む溶液中、65℃、20時間のハイブリダイゼーションを行って得られるα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子に関する。本発明の第の発明は、α−1,3/4−フコシダーゼの工業的な製造方法に関する。特に、前記第1又は第2の発明の該α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を含有させた組換えプラスミドを導入させた組換体を培養し、該培養物からα−1,3/4−フコシダーゼを採取することを特徴とするα−1,3/4−フコシダーゼの製造方法を提供する。
【0005】
本発明者らは、該α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を取得するために、ストレプトマイセスsp 142よりα−1,3/4−フコシダーゼを高度に精製し、N末端アミノ酸配列、及び部分アミノ酸配列を決定した。次にこれらのアミノ酸配列の情報を基に常法に従い合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR反応を行ったが、該α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を取得できなかった。また、該プライマーをプローブとして用いても、目的の遺伝子は得られなかった。そこで本発明者らは、PCR反応を行う際に種々の条件を鋭意検討を重ねた結果、特定の条件下で、特定の合成プライマー対を用いることにより該α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の一部を増幅することに成功し、該増幅遺伝子をプローブとし、目的の遺伝子の単離を行い、その塩基配列を決定し、更に微生物において活性型α−1,3/4−フコシダーゼを発現する組換えプラスミドの構築を行い、該プラスミドにより形質転換した微生物を用いて、該α−1,3/4−フコシダーゼを生産させることに成功し、本発明を完成した。
【0006】
以下、ストレプトマイセスsp 142を例として本発明を具体的に説明する。本菌は、特開平3−98583号公報に記載の菌であり、Streptomyces sp 142と表示され、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−4569として寄託されている。
【0007】
まず、ストレプトマイセスsp 142より粗酵素液を調製し、各種クロマトグラフィーによりα−1,3/4−フコシダーゼを高度に精製する。
この精製されたα−1,3/4−フコシダーゼの部分アミノ酸配列に関する情報を得るために、例えばジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法で精製したα−1,3/4−フコシダーゼを直接常法に従ってエドマン分解法によりアミノ酸配列分析に供してもよいし、あるいは特異性の高いタンパク質加水分解酵素を作用させて限定加水分解を行い、得られたペプチド断片を逆相系HPLCを用いて分離精製する。精製ペプチド断片についてアミノ酸配列分析を行うのが効果的である。この部分アミノ酸配列の情報を基にα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子をクローニングするには一般的にPCR法を用いる方法あるいはハイブリダイゼーションによる方法を用いることができる。
【0008】
1)カセットDNAを用いるPCR法
ストレプトマイセスsp 142から常法に従って抽出したゲノムDNAを適当な制限酵素で消化した後、既知の配列を有する合成DNA(カセットDNA)を連結したものを鋳型として、部分アミノ酸配列の情報を基に常法に従ってデザインした合成オリゴヌクレオチドプライマーとカセットDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマー(カセットプライマー)を用いてPCR反応を行い目的のDNA断片を増幅することができる。カセットDNAあるいはカセットプライマーについては例えば宝酒造社製のものを利用することができる。カセットDNAは2種類のカセットプライマーに対応する配列を含んでおり、まず制限酵素サイトから遠い方のプライマーを用いて1回目のPCR反応を行い、その反応液の一部を鋳型として更に制限酵素サイトに近い方のプライマーを用いてPCR反応を行うと効果的に目的のDNA断片を増幅することができることが知られている。本発明者らはこの方法に従って本発明の遺伝子の取得を試みた。まずN末端配列N−1(配列番号3)と部分アミノ酸配列57(配列番号4)からそれぞれ合成オリゴヌクレオチドプライマーFSE−1(配列番号5)及び57R(配列番号6)を合成する。ストレプトマイセスsp 142から常法に従って抽出したゲノムDNAを制限酵素Sau3AI、BamHI、PstI、及びSalIで消化し、対応するカセットDNA(宝酒造社製)をそれぞれ連結する。これを鋳型としてFSE−1とC1プライマー(宝酒造社製)、57RとC1プライマーの組合せでPCR反応を行う。PCRはPCRテクノロジー〔PCR Technology、エルリッヒHA(Erlich) 編集、ストックトンプレス社発行、1989年〕に記載の方法に準じて行う。例えば、ジーンアンプPCRリージェント キット(GeneAmp PCR Reagent Kit 、宝酒造社製)を用いて行うことができる。例えば94℃、30秒、55℃、1分、72℃、1分のサイクルを30サイクル行い、この反応液の一部を用いてFSE−1とC2プライマー(宝酒造社製)、57RとC2プライマーの組合せで同様の条件で更にPCR反応を行う。本発明のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子は、アガロースゲル電気泳動で反応液を分析しても特異的に増幅したDNA断片は検出できず、この方法では本発明のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子をクローニングすることはできない。
【0009】
2)通常のPCR法
部分アミノ酸配列の情報を基に常法に従ってデザインした合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR反応を行い目的のDNA断片を増幅することができる。まず部分アミノ酸配列57(配列番号4)から合成オリゴヌクレオチドプライマー57F(配列番号7)、部分アミノ酸配列39(配列番号8)から39F(配列番号9)と39R(配列番号10)、部分アミノ酸配列45(配列番号11)から45F(配列番号12)と45R(配列番号13)を合成する。
上述の1)に記載のFSE−1(配列番号5)及び57R(配列番号6)も含めて表1の組合せのプライマーを用いて、ストレプトマイセスsp 142のゲノムDNAを鋳型としてPCR反応を行う。
【0010】
【表1】
Figure 0004052605
【0011】
PCR反応は例えばジーンアンプ PCR リージェントキットを用いて、94℃、30秒、50℃、1分、72℃、1.5分のサイクルを35サイクル行い、アガロースゲル電気泳動で反応液を分析すると、FSE−1(配列番号5)と45R(配列番号13)の組合せ〔表1中の(3)〕と45F(配列番号12)と39R(配列番号10)の組合せ〔表1中の(9)〕のみでそれぞれ200bp、900bpの大きさのDNA断片が増幅されるがその他の組合せでは増幅が見られないか、若しくは多くの増幅産物が観察される。表1中の(3)と(9)で特異的に増幅したDNA断片について通常用いられる方法で塩基配列を決定しても、合成したDNAの配列以外に目的の遺伝子と考えられる配列は見出すことができない。
【0012】
3)合成DNAハイブリダイゼーション法
部分アミノ酸配列の情報を基に常法に従って合成オリゴヌクレオチドをデザインしハイブリダイゼーションによって目的のDNAを検出する方法も一般的に用いられる。本発明者らはこの方法に従って本発明のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の検出を試みた。
サザンハイブリダイゼーション用のプローブとして、上述の2)に記載のPCR法で述べた合成オリゴヌクレオチド、FSE−1(配列番号5)、39F(配列番号7)、及び部分アミノ酸配列28(配列番号14)からデザインした合成オリゴヌクレオチド28F(配列番号15)、32(配列番号16)からデザインした32R(配列番号17)を用いる。ストレプトマイセスsp 142のゲノムDNAを制限酵素、BamHI、PstI、SacI、SalIで完全消化し、アガロースゲル電気泳動で分離後常法に従いナイロン膜にブロッティングする。ハイブリダイゼーションは一般的に用いられる条件で行うことができる。例えば6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルツ(Denhardt's) 、100μg/mlサケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中65℃でナイロン膜をブロッキングし、32Pでラベルした各合成オリゴヌクレオチドを加えて40℃で一晩保温する。このナイロン膜を0.1%SDSを含む2×SSCで50℃、30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーをとって合成オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズするDNA断片を検出する。プローブとして用いた39F(配列番号7)についてはハイブリダイズするDNA断片を検出することができず、その他のプローブとして用いたFSE−1(配列番号5)、28F(配列番号15)、32R(配列番号17)に関しては各制限酵素消化物のレーン上に多数のバンドが検出され、目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を特定することはできない。
【0013】
以上に述べたように、通常の方法においてはストレプトマイセスsp 142のゲノムDNAから本発明のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子をクローニングすることは非常に難しく、ストレプトマイセスsp 142のゲノム遺伝子を鋳型とした場合、ポリメラーゼ反応の進行が阻害されたり非特異的なアニーリングが起こるなどして、PCR法においては増幅阻害、非特異的DNA断片の増幅等が、また、ハイブリダイゼーション法においても非特異的ハイブリッドの形成などが起こる可能性が考えられる。本発明者らはこれらの点を考慮し、PCR反応を行う際、二次構造の形成によるDNA鎖の伸長阻害を防ぐと共に非特異的なアニーリングを極力押える条件下でPCRを行った。
すなわち、PCR反応の基質dGTPの代りにその誘導体である2′−デオキシ−7−デアザグアノシントリホスフェート(dc7 GTP)を加え、更にアニーリング温度を60℃に上げて反応を行い、その後反応液の一部を鋳型としてdGTPの入った普通の基質を用いて2回目の反応を行い、特定のプライマー対の組合せで、目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の一部が初めて増幅されることを見出した。
【0014】
以下、より詳細に説明すれば上述の2)で記載の合成オリゴヌクレオチドプライマーに加えて新たに部分アミノ酸配列28(配列番号14)から合成オリゴヌクレオチドプライマー28R(配列番号18)、部分アミノ酸配列32(配列番号16)からデザインした32F(配列番号19)を合成する。表2の組合せのプライマーを用いて、ストレプトマイセスsp 142のゲノムDNAを鋳型としてPCR反応を行う。
【0015】
【表2】
Figure 0004052605
【0016】
PCR反応は例えばジーンアンプPCRリージェントキットを用いて、dNTP混合液の代りにdATP、dCTP、dTTP、dGTP、dc7 GTPの混合液を用いて、94℃、30秒、60℃、1分、72℃、2分のサイクルを25サイクルを行う。この反応液の一部を鋳型として、今度は通常のdNTP混合液を基質として再度同じサイクルPCR反応を行う。反応液の一部をアガロースゲル電気泳動で分析する。別に1回目のPCR反応液の一部を鋳型として、それぞれ1種類のプライマーだけを加えてPCR反応を行い、片方のプライマーだけで増幅してくるDNA断片を調べておく。その結果、片方だけのプライマーで増幅するDNA断片を除くとPCR反応によって増幅してくるDNA断片の数は表3に示したようになる。
【0017】
【表3】
Figure 0004052605
【0018】
これらのDNA断片の塩基配列を通常用いられる方法、例えばジデオキシチェーンターミネーター法で決定したところ45F−32Rの組合せ〔表2中の(19)〕で増幅してくるDNA断片(140bp)中にプライマーの配列に続いてα−1,3/4−フコシダーゼの部分アミノ酸配列に対応する配列が見出され、目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の一部を取得することに成功した。
【0019】
ストレプトマイセスsp 142のゲノムDNAを適当な制限酵素で消化した後、上記のPCR産物〔45F−32Rの組合せで増幅してくるDNA断片(140bp)、配列番号20〕をプローブとして用いてハイブリダイゼーションを行い、プローブと特異的にハイブリダイズするバンドを検出することができる。検出されたバンドに相当するDNA断片をゲルから抽出、精製した後、通常用いられる方法によってプラスミドベクターに組込むことができる。プラスミドベクターとしては公知のものが使用でき、例えばpUC18、pUC19、pUC119、pTV118Nなどが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
次いで組換えプラスミドを宿主に導入し、宿主を形質転換するが、宿主として大腸菌を使用する場合、宿主大腸菌としては形質転換能を有するものであれば野生株、変異株いずれも使用できる。導入の方法は通常用いられる方法、例えばモレキュラー クローニング ア ラボラトリー マニュアル〔Molecular Cloning, A Laboratory Manual、T.マニアティス(T.Maniatis) ほか著、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー 1982年発行〕第250頁に記載の方法を用いることができる。
このようにして目的のDNA断片を宿主に導入した後、プラスミドベクターの特性、例えばpUC19の場合、アンピシリン耐性を有するコロニー、あるいはアンピシリン、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド(X−Gal)及びイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むプレート上で、アンピシリン耐性を示しかつ白色を呈するコロニーを選択することにより外来遺伝子を導入されたコロニーを選別することができる。次に上記集団のなかから目的のDNA断片を含むベクターを有するコロニーを選択するが、選択の方法はベクターの種類によってコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションを適宜用いればよい。また、PCR法を用いることもできる。目的のDNA断片を含むベクターが選別できればこのベクターに挿入されている目的のDNA断片の塩基配列は通常の方法、例えばジデオキシチェーンターミネーター法により決定することができる。決定された塩基配列を、α−1,3/4−フコシダーゼのN末端分析、部分アミノ酸配列、分子量などと比較することによって目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の構造及びα−1,3/4−フコシダーゼの全アミノ酸配列を知ることができる。こうして得られる塩基配列の一例を配列表の配列番号2に、またその塩基配列がコードし得るアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
【0021】
目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を含むベクターで宿主の形質転換を行い、次いで該形質転換体の培養を通常用いられる条件で行うことによって、α−1,3/4−フコシダーゼ活性を持つポリペプチドないしタンパク質を生産させることができる。場合によっては該ポリペプチドを封入体(inclusion body) の形で生産させることもできる。発現ベクターとしては、適当な宿主において発現できるようなベクターに、目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を接続すればよい。
【0022】
宿主としては微生物、動物細胞、植物細胞等を用いることができる。発現の確認は例えばα−1,3/4−フコシダーゼの活性を測定することにより行うことができる。活性測定は例えば組換体大腸菌の細胞抽出液を酵素液としてジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法で行うことができる。目的のα−1,3/4−フコシダーゼの発現が認められた場合はその発現の最適条件を検討する。
【0023】
形質転換体の培養物からα−1,3/4−フコシダーゼを精製するには通常の方法が用いられる。例えば宿主が大腸菌の場合、培養終了後遠心分離によって菌体を集め、これを超音波処理などによって破砕して、遠心分離等によって、可溶性画分を集める。その後イオン交換、ゲルろ過、疎水、アフィニティーなどの各種クロマトグラフィーを行うことにより精製すれば高純度のα−1,3/4−フコシダーゼ標品を得ることができる。また、封入体となっている場合は、封入体を含む不溶性画分を集める。封入体を洗浄した後、通常用いられるタンパク質可溶化剤、例えば尿素やグアニジン塩酸塩等で可溶化し、必要に応じてこれをイオン交換、ゲルろ過、疎水、アフィニティーなどの各種クロマトグラフィーを行うことにより精製した後、透析法あるいは希釈法などを用いたリホールディング操作を行うことによって活性を保持した目的のα−1,3/4−フコシダーゼ標品を得ることができる。必要に応じてこの標品を更に各種クロマトグラフィーによって精製すれば、高純度のα−1,3/4−フコシダーゼ標品を得ることができる。
【0024】
また、得られたこれらの遺伝子をプローブとして厳密な条件下でハイブリダイゼーションを行えば、本酵素と配列は少し異なるが同様の酵素活性を持つと期待されるすべての本酵素類似の遺伝子を得ることが期待できる。ここで言う厳密な条件下とは、以下の条件下のことを言う。すなわち、DNAを固定したナイロン膜を、6×SSC(1×SSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶かしたもの)、1%ラウリル硫酸ナトリウム、100μg/mlのサケ精子DNA、5×デンハルツ(ウシ血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、フィコールをそれぞれ0.1%の濃度で含む)を含む溶液中で65℃で20時間プローブとハイブリダイゼーションを行うことを言う。
【0025】
本発明により、α−1,3/4−フコシダーゼの一次構造及び遺伝子構造が提供される。更に、α−1,3/4−フコシダーゼの遺伝子工学的な製造が可能となった。本発明の遺伝子工学的製造法を用いれば安価に高純度なα−1,3/4−フコシダーゼ標品を得ることが可能となる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1 α−1,3/4−フコシダーゼ構造遺伝子のクローニング
(1)ゲノムDNAの抽出精製
α−1,3/4−フコシダーゼの生産菌株であるストレプトマイセスsp 142(FERM BP−4569)をL−フコース1%、酵母エキス0.01%、ペプトン0.03%、MgSO4 ・7H2 O 0.05%、KH2 PO4 0.1%、pH7.0からなる培地20mlに接種し、30℃で44時間培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体を集め、液体窒素中に投入して乳鉢で完全に粉砕した。これを10倍量の抽出緩衝液〔10mMトリス(tris) −HCl、100mM EDTA、20μg/ml RNaseA、0.5% SDS、pH8.0〕中に穏やかにかくはんしながら少量ずつ添加し、10mg/mlのプロティナーゼK 100μlを添加した後、37℃で1時間保温した。この後室温に戻し、等容のTE緩衝液(10mMトリス−HCl、1mM EDTA、pH8.0)飽和フェノール/クロロホルム溶液を加えて穏やかにかくはんし、3000rpmで10分間遠心した後上層を回収した(以下、フェノール抽出と略す)。これを2回繰返し、水層に0.6等量のイソプロピルアルコールを加えて14000rpmで1分間遠心した後、70%エタノールでリンスして軽く風乾した。以上の操作により、ゲノムDNA約440μgを得た。
【0028】
(2)α−1,3/4−フコシダーゼの部分アミノ酸配列の決定
ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法で精製したα−1,3/4−フコシダーゼを直接常法に従って気相エドマン分解法によるアミノ酸配列分析に供してN末端アミノ酸配列N−1(配列番号3)を決定した。更に、酵素タンパク質をピリジルエチル化した後リシルエンドペプチダーゼで消化し、得られたペプチド断片の混合物をHPLCで分離精製した。各ペプチド画分についてアミノ酸配列分析を行い部分アミノ酸配列57(配列番号4)、39(配列番号8)、45(配列番号11)、28(配列番号14)、32(配列番号16)を決定した。
【0029】
(3)プライマーの合成とPCRによる増幅
(2)で決定したN末端アミノ酸配列N−1(配列番号3)から合成オリゴヌクレオチドプライマーFSE−1(配列番号5)、部分アミノ酸配列57(配列番号4)から合成オリゴヌクレオチドプライマー57F(配列番号7)、57R(配列番号6)、部分アミノ酸配列39(配列番号8)から合成オリゴヌクレオチドプライマー39F(配列番号9)、39R(配列番号10)、部分アミノ酸配列45(配列番号11)から合成オリゴヌクレオチドプライマー45F(配列番号12)、45R(配列番号13)、部分アミノ酸配列28(配列番号14)から合成オリゴヌクレオチドプライマー28F(配列番号15)、28R(配列番号18)、部分アミノ酸配列32(配列番号16)から合成オリゴヌクレオチドプライマー32F(配列番号19)、32R(配列番号17)をそれぞれ合成した。テンプレートとしては(1)で調製したゲノムDNAを用い、表2に示した組合せのプライマーを用いた。10分間熱変性させたゲノムDNA10ng、25pmolずつの合成オリゴヌクレオチドプライマーを含むジーンアンプPCRリージェントキット(宝酒造社製)の反応系で、dNTP混合液の代りに終濃度1.2mM dATP、1.2mM dCTP、1.2mM TTP、0.9mM dGTP、0.3mM dc7 GTP(ベーリンガー社製)を用いてPCR反応を行った。1.25ユニットのアンプリタック(Ampli Taq)と滅菌水を加えて反応液量を25μlとし、この混合液を自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラー(DNA Thermal Cycler、宝酒造社製)を用いた増幅反応に供した。反応条件は、94℃で30秒間(変性)→60℃で1分間(プライマーのアニーリング)→72℃で2分間(合成反応)のサイクルを25サイクル行った。次に、この反応液1μlをテンプレートとして、ジーンアンプPCRリージェントキットを用いて50μlの反応系で通常のdNTP混合液を用い、先と同じ条件でPCR反応を再度行った。反応液の10μlについて、3%アガロースゲル電気泳動を行った後エチジウムブロミドでDNAを染色し、増幅DNA断片を調べた。同様にして、2度目の反応においてそれぞれ1種類のプライマーのみを加えて反応を行い、片方のプライマーだけで増幅してくるDNA断片を調べておく。その結果、片方のプライマーだけで増幅してきたものを除くと、反応により増幅したDNA断片数は表3に示したようになった。これらのDNA断片の塩基配列をジデオキシチェーンターミネーター法で決定したところプライマー45Fと32Rの組合せ〔表2中の(19)〕で増幅してくるDNA断片(140bp)中にプライマーの配列に続いてα−1,3/4−フコシダーゼの部分アミノ酸配列に対応する配列が見出され、目的のα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の一部を取得することに成功した。このPCRにより増幅したDNAフラグメントを45F−32R(配列番号20)と命名した。
【0030】
(4)α−1,3/4−フコシダーゼ全長遺伝子を含むDNA断片のクローニング
(1)で調製したゲノムDNA50μgを制限酵素BamHI、PstI、SacI、SalI各120ユニットで各々37℃で2時間消化し、60ユニットの酵素を追加して更に4時間反応させた。この反応液からフェノール抽出で得られたDNA10μg相当について0.7%アガロースゲル電気泳動を行った。泳動後、サザンブロット法(遺伝子研究法II、第218〜221頁、東京化学同人、1986年発行)により、ナイロン膜〔ハイボンドN+ (Hybond-N+ ) 、アマシャム社製〕にDNAを転写した。ハイブリダイゼーションのプローブとしては、(3)で得られたDNAフラグメント45F−32R(配列番号20)を用いた。
このフラグメント5pmolをメガラベル(MEGALABEL 、宝酒造社製)を用いて32Pで標識した。上記調製したフィルターを用いて、6×SSC〔1×SSCは、8.77gのNaCl、及び4.41gをクエン酸ナトリウムを1リットルの水に溶解した物〕、0.5%SDS、100mg/mlニシン精子DNA、5×デンハルツ〔ウシ血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、フィコールをそれぞれ0.1%濃度で含む〕を含む溶液中、65℃で3時間プレハイブリダイゼーションを行った後、標識プローブを1pmol/mlの濃度になるように加え、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。次に6×SSC中、室温で10分間、2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分間、0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で1時間洗浄し、余分な水分を除いた後、増感紙を当てて−70℃で一晩オートラジオグラフを行った。
その結果、BamHI消化物で約4.5Kb、PstI消化物で約2.3Kb、SacI消化物で約10Kb、SalI消化物で約1.9Kbの位置に、プローブとハイブリダイズするバンドを認めた。
以後の実験は、取扱いの簡便さからPstI、及びSalI消化物について進めた。先に制限酵素消化したゲノムDNA10μgの0.7%アガロースゲル電気泳動を行い、上述のハイブリダイゼーションで認められたバンドに相当する部分を切り出した。これをイージートラップ(EASYTRAP、宝酒造社製)を用いて抽出精製を行い、得られたDNA断片をpUC19のPstIあるいはSalIサイトに挿入した。
【0031】
このプラスミドで大腸菌JM109を形質転換し、直径8.5cmの丸シャーレ3枚に、1枚当り200〜1000個のコロニーを形成させた。次に、これらのプレートより制限酵素1種類当り200個のコロニーを選択し、ナイロン膜(ハイボンドN+ 、アマシャム社製)上に写した。37℃で3時間保温した後、このナイロン膜を0.5M NaOH、1.5M NaClの溶液に浸したろ紙上で5分間(変性)、0.5M トリス−HCl緩衝液(pH7.0)、3M NaClの溶液に浸したろ紙上で5分間(中和)処理した後、2×SSCでリンスした。このナイロン膜とDNAフラグメント45F−32R(配列番号20)を用い、前述と同じ条件でハイブリダイゼーションを行ったところ、PstI断片で1個、SalI断片で2個のポジティブシグナルが得られた。それぞれの大腸菌JM109をP54、S30、S68と命名した。
【0032】
アルカリ溶菌法により、得られたクローンのプラスミドDNAを調製し、それぞれpUFSEP54、pUFSES30、pUFSES68と命名した。これを数種の制限酵素で消化し、電気泳動により切断パターンを解析した。その結果、BamHI、KpnI、SacI、SmaIなどの制限酵素サイトの存在を確認した。なお、この解析によりプラスミドpUFSES30とpUFSES68は同一であることが判明したので、以後の実験はpUFSEP54及びpUFSES30を用いて行った。また、pUFSEP54及びpUFSES30の挿入部分は約800bpの共通配列を有することが推定された。これらのクローンを適当な制限酵素で消化し、ライゲーションキット(DNA Ligation Kit、宝酒造社製)でセルフライゲーションを行って、各種の欠失変異体を作製した。ジデオキシ法によってこれらの変異体の塩基配列を決定した結果、2つのクローンに渡って、挿入断片中に1689bpの読み取り枠が見出された。この読み取り枠中に、α−1,3/4−フコシダーゼのアミノ酸配列分析により得られた配列がすべて見出された。以上の結果より、α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の全塩基配列及び一次構造が決定された。その結果を図1に示す。すなわちAは2.3kb PstI断片及びBは1.9kb SalI断片の制限酵素地図と、α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の位置を示した図であり、図中矢印はα−1,3/4−フコシダーゼの翻訳開始点、太線はα−1,3/4−フコシダーゼのコード領域を示し、Aの太線中のSalI−PstI間は、Sの太線中のSalI−PstI間に相当し、AとBを合せることにより、α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子の全長を知ることができる。また、α−1,3/4−フコシダーゼをコードする塩基配列を配列表の配列番号2に、その塩基配列がコードし得るアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
【0033】
実施例2 α−1,3/4−フコシダーゼポリペプチドを発現するプラスミドの構築
(1)α−1,3/4−フコシダーゼのN末端側ポリペプチドをコードするプラスミドの構築
α−1,3/4−フコシダーゼのN末端側ポリペプチドをコードする遺伝子を増幅するために2種類の合成オリゴヌクレオチドプライマーFSE−HNde(配列番号21)、プライマーS30RV(配列番号22)をデザインし合成した。プライマーFSE−HNdeは配列番号2の塩基配列番号136−153の5′−3′の向きに相当する18merの上流にHind III及びNdeIサイトをデザインした34merであり、プライマーS30RVは配列番号2、塩基配列番号443−461の3′−5′の向きに相当する19merの合成DNAである。
テンプレートとして、実施例1で得られたプラスミドpUFSEP54約100pgをジーンアンプPCRリージェントキット(宝酒造社製)中の10μlの10倍濃度増幅用緩衝液、16μlの1.2mM dNTP混合液、20pmolのプライマーFSE−HNde、20pmolのプライマーS30RV、2.5ユニットのアンプリタックと混合し、更に滅菌水を加えて100μlの溶液にした。この混合液を自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーによる増幅反応に供した。PCR反応は、94℃で30秒間(変性)→55℃で1分間(プライマーのアニーリング)→72℃で1.5分間(合成反応)のサイクルを25サイクル行った。反応液の10μlについて3%アガロースゲル電気泳動を行った後エチジウムブロミドでDNAを染色し、予想される342bpの増幅DNA断片を確認した。PCR反応液の残りをエタノール沈殿により濃縮した後二つに分けた。一方はHind III、SalIで切断後、pTV119NNde〔pTV119N(宝酒造社製)のNcoIサイトをNdeIに変換することにより作製〕のHind III−SalIサイトに挿入し、もう一方はNdeI、SalIで切断後、pTV119NNdeのNdeI−SalIサイトに挿入した。それぞれをpTFSEF101N及びpTFSEM101Nと命名した。各々で宿主として大腸菌JM109株へ形質転換し、アルカリ溶菌法によりプラスミドDNAを調製した後、PCR法による挿入断片の確認、ジデオキシチェーンターミネーター法による挿入断片の塩基配列の確認を行った。
【0034】
(2)α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子全長をコードするプラスミドの構築
実施例1で得られたプラスミドpUFSES30をSalIで消化してアガロースゲル電気泳動を行い、1.9kbのSalIフラグメントを切り出し抽出精製した。次に、実施例2−(1)で得られたプラスミドpTFSEM101NをSalIで消化し、1.9kbのSalIフラグメントを挿入した後、大腸菌JM109株へ形質転換させた。アルカリ溶菌法によりプラスミドDNAを調製し、SalI消化によるSalIサイト再生の確認、及びSacI消化による挿入断片の方向確認を行った。こうして得られたα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子全長をコードするプラスミドをpTFSEM201と命名した。同様に実施例2−(1)で得られたプラスミドpTFSEF101NをSalIで消化し、1.9kbのSalIフラグメントを挿入したプラスミドpTFSEF201を構築した。このプラスミドには、α−1,3/4−フコシダーゼN末端の上流にlacZα由来のペプチドを含む10アミノ酸残基(Met Ala Met Ile Thr Pro Ser Phe His Met)〔配列番号23〕をコードする配列が含まれており、lacZのSD配列及びその開始コドンを利用してlacZαとの融合体としてのα−1,3/4−フコシダーゼの誘導発現が期待される。
pTFSEM201を導入した大腸菌JM109をEscherichia coli JM109/pTFSEM201と表示する。また、pTFSEF201を導入した大腸菌JM109をEscherichia coli JM109/pTFSEF201と表示し、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−4950として寄託されている。
【0035】
実施例3 組換体α−1,3/4−フコシダーゼの大腸菌における発現
(1)α−1,3/4−フコシダーゼポリペプチドの大腸菌における発現
実施例2で得られた大腸菌 Escherichia coli JM109/pTFSEM201あるいは Escherichia coli JM109/pTFSEF201を100μg/mlのアンピシリンを含むL培地5mlに接種して37℃で一晩振とう培養し、その1%を新たに同培地5mlに接種した。培養後の濁度(600nmの吸光度)がおよそ0.5の段階で、終濃度1mMのIPTGを加え、37℃で一晩振とう培養を行った。培養終了後、培養液100μlを遠心分離して菌体を集め、50mM リン酸カリ緩衝液(pH6.0)で洗浄した。次に、同緩衝液100mlに懸濁し、超音波処理により菌体を破砕した。これを遠心分離して上清を回収し、大腸菌抽出液とした。この抽出液及び沈殿をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した結果、 Escherichia coli JM109/pTFSEF201由来の抽出液及び沈殿には分子量約55,000のα−1,3/4−フコシダーゼと考えられるバンドが観察され、α−1,3/4−フコシダーゼタンパク質を発現していることが確認できたが、 Escherichia coli JM109/pTFSEM201はほとんど酵素タンパク質を発現していないことがわかった。そこで次に Escherichia coli JM109/pTFSEF201の菌体抽出液のα−1,3/4−フコシダーゼ活性測定を、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第3号、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法に従って行った。その結果、 Escherichia coli JM109/pTFSEF201の菌体抽出液の活性は培養液1ml当りに換算して約1ミリユニットであることがわかった。なお、α−1,3/4−フコシダーゼ構造遺伝子をコードしないpTV119Nde、及びN末端部分のみをコードするpTFSEF101Nを保持する大腸菌JM109を同様に処理したが、α−1,3/4−フコシダーゼ活性は全く認められなかった。以上の結果から、 Escherichia coli JM109/pTFSEF201が生産するα−1,3/4−フコシダーゼの大部分は封入体の形で不溶化している可能性が考えられた。
【0036】
(2)α−1,3/4−フコシダーゼの大腸菌における発現と封入体の精製
大腸菌 Escherichia coli JM109/pTFSEF201を100μg/mlのアンピシリンを含むL培地10mlに接種して37℃で5時間振とう培養し、これを500mlの同じ培地の入った2リットル三角フラスコに5ml植菌して37℃で100rpmで振とう培養した。培養液の濁度(660nmの吸光度)がおよそ0.5になった時点で終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、更に37℃で一晩振とう培養した。培養終了後遠心分離によって菌体を集め、これを0.1M NaCl、1mM EDTAを含む10mM トリス−HCl緩衝液(pH8.0)30mlに懸濁して超音波処理を行い菌体を破砕した。破砕液を遠心分離して封入体を含む不溶性画分を集めた後、20mlの1Mショ糖溶液に懸濁した。これを18,000×gで30分間遠心分離して封入体を含む沈殿を得た。これを10mM EDTAを含む2%トリトンX−100溶液40mlに懸濁し、一晩4℃に静置した。遠心分離により不溶物を集めてから再度同じ操作を繰返し封入体を洗浄した。得られた封入体の一部をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した結果、半分以上のタンパク質は分子量約55,000の位置に泳動されており、得られた封入体画分の半分以上のタンパク質は組換体α−1,3/4−フコシダーゼであると推定された。またこの組換体α−1,3/4−フコシダーゼのタンパク質量は、同時に分析した牛血清アルブミンのバンドとの比較から、培養液1リットル当り少なくとも10mg以上得られると推定された。
【0037】
(3)封入体の可溶化とリフォールディング
得られた封入体の1/10量(培養液100ml相当)を8M 尿素、10mM ジチオスレイトールを含む10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)1mlに懸濁し、室温で1時間かくはんして可溶化した。遠心分離により残った不溶物を除去した後、上清の50μlに同じ緩衝液を加え5mlとした。これを分子量10,000カットの透析チューブに入れて0.6M KClを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)500mlに対して15℃で一晩透析した。透析内液を遠心分離して不溶物を除き、上清7mlを得た。この溶液のα−1,3/4−フコシダーゼ活性をジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第3号、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法に従って測定した。その結果、この上清中の活性は約10mU/mlであることがわかった。すなわち、本発明の遺伝子をもつ大腸菌 Escherichia coli JM109/pTFSEF201の培養液1リットルから約14ユニットの組換体α−1,3/4−フコシダーゼが得られることがわかった。
【0038】
(4)組換体α−1,3/4−フコシダーゼの基質特異性
ピリジルアミノ化(PA−)ラクト−N−フコペンタオースIII (宝酒造社製)、100pmolを含む30mM リン酸カリウム緩衝液pH6.0に実施例3−(3)で得られた酵素溶液10μlを加えて37℃で一晩反応を行った。反応液を凍結乾燥した後、グライコタッグ(Glyco TAG 、宝酒造社製)を用いてPA化反応を行い、この反応液を陰イオン交換HPLCカラムを用いた単糖分析に供した。その結果、組換体酵素の作用によって、基質であるPA−ラクト−N−フコペンタオースIII からフコースが遊離してきたことを確認することができた。
【0039】
また、種々のPA化オリゴ糖を基質としてα−1,3/4−フコシダーゼ活性をジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第267巻、第3号、第1522〜1527頁(1992)に記載の方法に従って測定したところ、該組換体酵素はα1,3及びα1,4フコシド結合に特異的で、α1,2フコシド結合及びα1,6フコシド結合には全く作用しないことがわかった。またα2,3シアリルラクト−N−フコペンタオースIIにもほとんど作用しなかった。以上の基質特異性は、ストレプトマイセスsp 142のα−1,3/4−フコシダーゼのものと全く同じであった。
【0040】
【発明の効果】
以上の結果から、本発明によりα−1,3/4−フコシダーゼのアミノ酸配列及び塩基配列が初めて明らかとなり、これにより、α−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子を提供することが可能となり、α−1,3/4−フコシダーゼ活性を持つポリペプチドの工業的に有利な遺伝子工学的製造方法が提供される。本発明によれば、本酵素生産においてL−フコースによる誘導培養は不要であり、生産性は高い。また、α−1,3/4−フコシダーゼの存在、あるいは発現の様子を調べるターゲットが提供されたことにより、この塩基配列を基にプローブやプライマーを作製することや、アミノ酸配列を基に抗体を作製することなどが可能となった。
【0041】
【配列表】
【0042】
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【0059】
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【0061】
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【0062】
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【0063】
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【0064】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 Pst I 断片とSal I 断片の制限酵素地図の相関を示す図でありAは2.3Kb Pst I断片及びBは1.9Kb Sal I断片の制限酵素地図を示す図である。

Claims (3)

  1. 配列表の配列番号に記載したDNA配列からなるα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子。
  2. 請求項1記載の遺伝子をプローブとし、6×SSC、1%ラウリル硫酸ナトリウム、100μg/mlのサケ精子DNA、5×デンハルツを含む溶液中、65℃、20時間のハイブリダイゼーションを行って得られるα−1,3/4−フコシダーゼ遺伝子。
  3. 請求項1又は2に記載の遺伝子を含有させた組換えプラスミドを導入させた組換体を培養し、該培養物からα−1,3/4−フコシダーゼを採取することを特徴とするα−1,3/4−フコシダーゼの製造方法。
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