【発明の詳細な説明】
新規トポイソメラーゼIV、対応するヌクレオチド配列およびその使用
本発明は新規トポイソメラーゼIV、この酵素をコードするヌクレオチド配列、
それに対応するベクターおよび生物活性生成物をスクリーニングするためのこの
酵素の使用に関する。
トポイソメラーゼはDNA環の位相的配置を修飾でき、環の中を結ぶことがで
き、または分離している環をからませること(interlacing)ができる酵素であ
る。したがって、これらは全遺伝情報の複製、転写および組換えに関与している
(Wangら、1990)。これらすべての位相的転換の機構は同じである:環は末端が再
結合する前に、DNAのセグメントが切れ目を通るように開かれる。2つの種類
のトポイソメラーゼがこれらの転換に関与する:I型トポイソメラーゼは一本鎖
DNAを切断し、そしてII型トポイソメラーゼは両鎖を同時に切断する。
現在まで、II型細菌トポイソメラーゼが同定され、そしてより詳細に研究され
た:大腸菌(Escherichia coli)由来のジャイレース(Gellertら、1976)、および
より最近では、大腸菌由来のDNAトポイソメラーゼIV型(Katoら、1990)である。
ジャイレースはα2β2テトラマーであり、そのαまたはGyrAおよびβまたはGy
rBサブユニットは、それぞれgyrAおよびgyrB遺伝子にコードされている。細菌ジ
ャイレースは、ATPの存在下で弛緩したDNA環を超コイル化できる唯一の既
知のトポイソメラーゼである。
より具体的には、大腸菌由来のDNAトポイソメラーゼIVに関して、この酵素
は超コイル化プラスミドDNAを弛緩させ、T4ファージDNAをほどき、そし
てキネトプラストDNAを巻き戻す(またはデカテネ
ートする)(Katoら、1992;Pengら、1993)。これに対応する遺伝子の配列で、大
腸菌由来のparCおよびparEは、ジャイレースのサブユニットとトポイソメラーゼ
IVのサブユニットとの間で高度に類似する領域、それぞれParCとGyrA(全配列に
わたって35.6%)、およびParEとGyrB((全配列にわたって40.1%)を示すことが可
能となった(Katoら、1990)。
大腸菌ジャイレースはまた、フルオロキノロンの第一標的としても同定された
(Hooperら、1993)。GyrAサブユニットのSer83残基のレベルで突然変異した大腸
菌株は、フルオロキノロンに対して高い耐性を持つことが実証された(Maxwell,
1992)。フルオロキノロンは、DNA-野生型ジャイレース複合体よりもDNA-突然変
異ジャイレース複合体に結合する程度が低い。実際、GyrAの残基67と106の間の
領域にマップされる他の点突然変異は、フルオロキノロンに対して耐性な株を導
く。この領域を、QRDRと呼ぶ(Yoshidaら、1990;Cullenら、1989)。同様な結果
が、フルオロキノロンに耐性な黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)で報告
された(Goswitzら、1992;Sreedharanら、1990)。したがってジャイレースは今
日、キノロンの第一標的と認識されている。しかし、GyrAのQRDR領域にいかなる
突然変異も含まない黄色ブドウ球菌の臨床株も、フルオロキノロンに対して耐性
であると記載された(Sreedharanら、1991)。
今日では、抗生物質、そしてより特別にはフルオロキノロンに対して黄色ブド
ウ球菌細菌で進展する耐性現象に、治療的レベルで遭遇することが増えている。
この耐性を拾い上げることができることは特に重要であり、そしてこれにはその
耐性に関連するすべてのパラメーターの特性決定を必要とする。
本発明の主な主題は、2つのサブユニット、GrlAおよびGrlBから成る
黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVである新規トポイソメラーゼのサブユニッ
トをコードする核酸配列の正確な同定、シークエンシングおよび特性決定である
。
予期せずに、出願人には黄色ブドウ球菌においてフルオロキノロンの第一標的
がトポイソメラーゼIVであり、ジャイレースではないことが判明した。すなわち
、ジャイレースのGyrAサブユニットのQRDR領域が野生型配列と同一である黄色ブ
ドウ球菌の臨床株は、それらのトポイソメラーゼIVのGrlAサブユニットの領域中
に保有する突然変異がQRDR領域とホモロガスであるために、上記にもかかわらず
フルオロキノロンに対する耐性を生じることが実証された。
本発明の第一の主題は、黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVの少なくとも1
つのサブユニットをコードするヌクレオチド配列である。
本発明は特に、grlAおよびgrlB遺伝子の単離および特性決定を記載する。これ
らの遺伝子はクローン化され、配列決定され、そして大腸菌中で発現され、そし
てその酵素活性が特性決定された。これらは黄色ブドウ球菌のゲノムDNAライ
ブラリーから単離された。grlAB核酸配列(配列番号1)、grlBおよびgrlA遺伝子
に対応するそれぞれ2つの読み取り枠を同定した。grlAおよびgrlB遺伝子は配列
番号2および配列番号3にそれぞれ配列決定されている。
好ましくは、本発明の主題は:
(a)grlA(配列番号2)、またはgrlB(配列番号3)遺伝子の全部または一
部、
(b)(a)遺伝子の全部または一部とハイブリダイズし、かつトポイソメラ
ーゼIVのサブユニットをコードする配列、ならびに
(c)遺伝コードの縮重のために、(a)および(b)配列から派生する配列
、
から選択されるヌクレオチド配列である。
本発明で同定される遺伝子から、ハイブリダイゼーションにより、例えばスト
レプトコッカイ(Streptococci)およびエンテロコッカイ(Enterococci)のような
黄色ブドウ球菌に近い細菌のトポイソメラーゼIVのサブユニットをコードする他
の遺伝子を、直接クローン化することが可能であることは明らかである。したが
ってプローブとして、遺伝子grlAおよびgrlBまたはその断片を使用して、この型
の遺伝子をクローン化することが可能である。同様にこれら遺伝子のクローニン
グは、grlAまたはgrlB遺伝子、またはその断片の配列に由来する縮重オリゴヌク
レオチドを使用して行うことができる。
本発明の目的に関して、誘導体とは1つ以上の修飾により得られ、かつ元のタ
ンパク質の少なくとも1つの生物学的特性を保存している生成物をコードする任
意の配列を意味する。修飾は、遺伝的および/または化学的性質の任意の突然変
異、置換、欠失、付加または改質と理解すべきである。これらの修飾は、当業者
に周知な技術で行い得る。
好適な誘導体の中でも、より特別には天然の変異体、1つ以上の残基が置換さ
れている分子、望ましくない活性と考えられる、または発現する結合部位間の相
互作用に関与しない、またはほとんど関与しない領域の欠失(1つ、または複数
)により得た誘導体、および天然の配列と比較して1つ以上の付加残基を有する
誘導体を挙げることができる。
さらに好ましくは、本発明の主題はgrlA(配列番号2)およびgrlB(配列番号3)
遺伝子により表されるヌクレオチド配列である。
またキノロン、そしてより特別にはフルオロキノロン族の分子に対する耐性を
導く突然変異を有する任意のgrlA遺伝子に関する。これらの突然変異した遺伝子
の代表として、配列番号2の2270位でCからAへの塩基変化を有するgrlA遺伝子を
挙げることができる。生成した遺伝子はgrlA(C-2270A)と命名する。この突然変
異は、GrlAタンパク質中のSer-80残基のTyrへの置換を導く。生成したタンパク
質はGrlA(ser-80 Tyr)と命名する。
本発明の別の主題は、黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVのサブユニットを
コードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含んで成る組換えDNAに関す
る。より好ましくは、これは上記(a)、(b)および(c)に定めたような少
なくとも1つのヌクレオチド配列、そしてより特別には遺伝子grlA(配列番号2
)grlA(C-2270A)および/または遺伝子grlB(配列番号3)を含んで成る組換
えDNAである。
本発明の好適な様式に従い、上記のヌクレオチド配列は自律複製または組み込
みできる発現ベクターの一部を形成する。
本発明の別の目的は、上記定義のヌクレオチド配列の発現から生じるポリペプ
チドに関する。より特別には、本発明はポリペプチドGrlA(配列番号2)もしくは
GrlB(配列番号3)、またはその誘導体の全部または一部を含んで成るポリペプチ
ドに関する。本発明の目的に関して、誘導体という用語は、ペプチド配列の遺伝
的および/または化学的性質の修飾により得られる任意の分子を言う。遺伝的お
よび/または化学的性質の修飾は、1つ以上の残基の任意の突然変異、置換、欠
失、付加または改質と理解できる。そのような誘導体は、ペプチドのその基質(
1つ、または複数)への親和性の増大、生産レベルの増強、プロテアーゼに対
する耐性の増大、その活性の増大および/または改質、あるいはペプチドへの新
たな生物学的特性の付加のような種々の目的のために生成できる。付加から生じ
る誘導体の中では、例えば1つの末端に付けられたさらなるヘテロロガス部分を
含むキメラポリペプチドを挙げることができる。誘導体という用語は、本発明に
記載のポリペプチドにホモロガスな他の細胞源に由来するポリペプチドも含んで
成る。
好ましくはそれらはポリペプチドGrlA(配列番号2)、GrlB(配列番号3)および
GrlA(Ser-80Tyr)である。
本発明の主題はまた、上記定義のようなヌクレオチド配列、組換えDNAおよ
び/またはベクターを含む任意の組換え細胞である。本発明の組換え細胞は、真
核および原核細胞の両方であってよい。適当な真核細胞の中でも、動物細胞、酵
母または真菌を挙げることができる。特に酵母に関して、サッカロミセス(Sacch aromyces
)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、シュワンニオ
ミセス(Schwanniomyces)またはハンゼニューラ(Hansenula)の酵母の属を挙げる
ことができる。動物細胞に関して、COS、CHOおよびC127細胞、アフリカツメガエ
ル卵等を挙げることができる。真菌の中では、より特別にミクロモノスポーラ(M icromonospora
)、アスペルギルスssp.(Aspergillus ssp.)またはトリコダーマs
sp.(Trichoderma ssp.)を挙げることができる。好ましくは、それらは原核細胞
である。この場合、以下の細菌をより特別に使用できる:アクチノミセテス(Act inomycetes
)、バチルス(Bacillus)、そしてより好ましくは大腸菌(E.coli)お
よびブドウ球菌(Staphylococcus)である。本発明の組換え細胞は、外来ヌクレオ
チド配列を細胞に導入できる任意の方法により得られる。これは、特に形質転換
、エレクト
ロポレーション、接合、プロトプラストの融合、または当業者に周知の任意の他
の技術であってよい。
また本発明の主題は、これら組換え細胞の1つの培養物から、特許請求するよ
うなポリペプチドの調製法にも関する。このように得られたポリペプチド(1つ
、または複数)は、培養後に通常方法に従い回収される。
本発明はまた、grlA遺伝子(配列番号2)の全部または一部およびgrlB遺伝子(
配列番号3)の全部または一部、またはそれぞれの誘導体の発現から得ることが
できる単離トポイソメラーゼIVに関する。
誘導体は、grlAまたはgrlB遺伝子の全部または一部とハイブリダイズし、かつ
トポイソメラーゼIVのサブユニットをコードする配列、ならびにこれらのハイブ
リッド配列またはgrlAまたはgrlB遺伝子の全部または一部に対応する配列の遺伝
子コードの縮重から派生するすべての配列を言うと考えられる。
より好ましくは、これはgrlA遺伝子(配列番号2)の全部または一部、あるいはgrlB
遺伝子(配列番号3)の全部または一部の発現に由来する単離トポイソメラー
ゼIVである。
本発明は、より特別にはフルオロキノロンに対して第一標的として挙動する任
意のトポイソメラーゼIVに関する。
本発明の特別な様式によれば、これは黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVで
ある。
本発明の特許請求するトポイソメラーゼIVは、最も特別には、例えば有望な抗
生物質、そして特にフルオロキノロン族の分子のような生物学的に活性な生成物
を標的するために有用である。有利なことには、これ
はATP-依存DNA緩和反応を阻害する生成物、および/またはDNAのカテナン
のデカテネーション反応を阻害する生成物をアッセイおよび/または同定するた
めにも使用できる。
出願人は、このように黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVに特異的である酵
素活性用のアッセイを開発し、そしてこの活性がフルオロキノロンのような抗生
物質分子により阻害されることを示した。
本発明は、新規抗生物質を調査するための新規標的、ならびにこの標的に関し
て特異的なスクリーニングを提供し;このスクリーニングは実施例7に記載する
。このスクリーニングは、黄色ブドウ球菌のDNAトポイソメラーゼIVを阻害す
る生成物を示すことを可能とする。この試験には次のものを使用できる:純粋な
、または混合した合成生成物、天然の植物抽出物、細菌培養物、真菌、酵母また
は藻類、を純粋または混合した状態で。本発明に記載する試験は、開裂しうる複
合体を安定化する両生成物、酵素により触媒される反応の反応中間体、および他
のメカニズムを介して作用する阻害剤を検出することを可能にする。
限定することを意図しない説明により、以下に与える実施例および図面は、本
発明の他の利点および特徴を示す。
図面の説明
図1:黄色ブドウ球菌のgrlBおよびgrlA遺伝子を含む4565bp断片の制限地図。
図2:grlAおよびgrlBの発現用プラスミドの構築。grlAを用いて生成したこの
構築物はAで、そしてgrlBを用いて生成したこの構築物はBで図解して表す。ク
ローン化された黄色ブドウ球菌のDNAは濃淡のある方形で表し、そしてM13
に由来するベクターは太い黒線であり、そし
て発現ベクターは細い黒線であり、SstI制限部位はクローニング部位なので括弧
内に示す。
図3:クーマシーブルーで染色したPAGE-SDS電気泳動ゲル。全細胞抽出物を沈
殿させる、レーン:1および2、XL1-青、pXL2340;3および4、XL1-青、pRSET
B;5および6、XL1-青、pXL2320。分子量マーカー(100単位で)を、図の右に
示す。矢印は過剰生産タンパク質を示す。+または−記号はIPTGを用いた誘導の
有無を表す。
図4:GrlABタンパク質のATP-依存緩和活性。大腸菌の精製したDNAトポ
イソメラーゼIV(PengおよびMarians、1993)、および大腸菌の精製したDNAジ
ャイレース(Halletら、1990)での対照実験も記載する。
図5:タンパク質GrlABのデカテネーション活性。kDNA キネトプラストDN
A;モノマー、弛緩およびデカテネートDNAモノマー。TopoIV:大腸菌の精製
DNAトポイソメラーゼIV(50ng);ジャイレース:大腸菌の精製DNAジャイレ
ース(50ng);GrlA:GrlAタンパク質抽出物(2μg);GrlB:GrlBタンパク質抽出物
(2μg);GrlAB:GrlAタンパク質抽出物(2μg)およびGrlBタンパク質抽出物(2μg
)の混合。
実施例1−grlAおよびgrlB遺伝子の内側の黄色ブドウ球菌のDNA断片のPCR
増幅
この実施例は、grlAおよびgrlB遺伝子の内側の黄色ブドウ球菌のDNA断片の
生成を記載する。これらの断片は、黄色ブドウ球菌RN4220株(Novick、1990)のゲ
ノムDNA、ならびに大腸菌および枯草菌(B.subtilis)のGyrAおよび大腸菌のPa
rCのサブユニットのN-末端領域中、または大腸菌および枯草菌のGyrBおよび大腸
菌のParEのサブユニットのN-末端領域に保存されているアミノ酸に対応する縮重
オリゴヌクレオチドを用
いて、50℃で行うPCR増幅後に得た。より特別には、センスオリゴヌクレオチ
ド2137およびアンチセンスオリゴヌクレオチド2135で、大腸菌GyrA配列の39−12
4位に対応する85アミノ酸をコードできる255bpの断片を増幅することが可能とな
る:このセンスオリゴヌクレオチド2137配列は5'-GCGCGAATTCGATGG(A,T)(C,T)T-
(A,T)AAACC(A,T)GT(A,T)CA-3'(配列番号4)であり、そしてアンチセンス2135の
配列は5'-CGCGAAGCTTTTC(T,A)GTATA(A,T)C-(T,G)CAT(A,T)GC(A,T)GC-3'(配列番
号5)である。オリゴヌクレオチド2144および2138は、大腸菌GyrB配列の98−43
0位に対応する333アミノ酸をコードできる1kbの断片の増幅を生じる:このセ
ンスオリゴヌクレオチド2144配列は5'-GCGCGAATTCT(T,A)CATGC(A,T)-GG(T,A)GG(
T,A)AAATT-3'(配列番号6)であり、そしてアンチセンス2138の配列は 5'-CGC
GAAGCTT(T,A)CC(T,A)CC(T,A)GC-(T,A)GAATC(T,A)CCTTC-3'(配列番号7)である
。この断片をクローン化し、そして全40クローンをその挿入物をシークエンシン
グすることにより分析した。PCRに使用したオリゴヌクレオチドの配列は、40
のうちの31について判明した;31クローンの中で20クローンが黄色ブドウ球菌のgyrA
またはgyrB遺伝子の内側の配列を有する:他の11クローンは255bpの断片Aま
たは1kbの断片Bのいずれかを含む。
A断片がコードすると考えるアミノ酸配列は、黄色ブドウ球菌のGyrAサブユ
ニットと44−125位の間で59%の同一性を有し、したがってA断片は、このよう
に新たに同定された黄色ブドウ球菌grlA遺伝子の一部であると考えられる。同様
にB断片がコードすると考えるアミノ酸配列は、黄色ブドウ球菌のGyrBサブユ
ニットと105−277位の間に51%の
同一性を有し、したがってB断片はこのように新たに同定された黄色ブドウ球菌grlB
遺伝子の一部であると考えられる。
実施例2−黄色ブドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子のクローニングおよびシーク
エンシング
この実施例は、黄色ブドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子のクローン化そして次
に配列決定を可能にする分子生物学実験を記載する。
クローンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratories)によるλgt11(カタロ
グ番号XL1501b、バッチ0721)中に構築された黄色ブドウ球菌FDA 574(CE ent+)の
ゲノムDNAライブラリー中のgrlAおよびgrlB遺伝子を、ハイブリダイゼーショ
ンにより同定するための放射活性プローブとして、実施例1に記載したAおよび
B断片を使用した。全250,000個の組換えファージの中の12個のファージがA断
片またはB断片とハイブリダイズするが、gyrAまたはgyrB遺伝子に特異的なオリ
ゴヌクレオチドとはハイブリダイズしない。これらのファージ中に含まれる大腸
菌挿入物の大きさは、0.7と3.5kbの間で変動し、そして2つのファージ16および
111(その挿入物はより大きなサイズである)を研究した。ファージ16の3.5kbの大
腸菌挿入物を、溶出し、そして次にpXL2321およびpXL2322を生成するために、Xb a
Iで消化し、そして1.5kbおよび2kbの2断片を、M13mp19およびM13mp18(ベーリ
ンガー マンハイム:Boehringer Mannheim)にクローン化した。同様に、ファー
ジ111の3.6kbの大腸菌挿入物を、溶出し、そして次にpXL2324を生成するために
、PstIで消化し、そして2kbの断片を、M13mp19にクローン化した。
組換えファージpXL2321、pXL2322およびpXL2324に含まれるこの挿入物を、ユ
ニバーサルプライマーまたは内部オリゴヌクレオチドにより、
両鎖についてサンガー法を使用してシークエンシングした。4565bpの核酸配列gr
lAB(配列番号1)のコーディング配列を同定するために、黄色ブドウ球菌のため
のコドン利用表により、Stadenら、1982によるプログラムを用いて分析した。こ
のようにして、わずか2つの読み取り枠ORF1(41−2029位)およびORF2(2032−443
1位)が決定された。配列番号1について、コーディング鎖は5’→3’の最上鎖
であり、読み取り枠ORF1は41の略号ATG位から始まるが、またこれは17もしくは3
5のTTG位から始まることもでき、このコドンは黄色ブドウ球菌の開始コドンとし
てすでに記載されている;ORF1の終止コドンはORF2の開始コドンGTGと重複し、
これは転写カップリングの特徴である(Normarkら、1983);そのようなカップリ
ングは、例えばハロフェラックスsp.(Haloferax sp.)(Holmesら、1991)のgyrA
およびgyrB遺伝子について記載された。これらの読み取り枠は、文献(Novick、1
990)で黄色ブドウ球菌のDNAについて記載された値と一致する34.5%のGC含
量の割合を有する。さらにB断片は、配列番号1についてはORF1の333位から134
8位について記載された配列と同一であり、断片Aは配列番号1のORF2の2137位
から2394位について記載された配列と同一である。ヌクレオチド配列から、最も
低い頻度で切断する酵素を用いて制限地図が作成され、図1を参照にされたい。
この配列分析は、ORF1がgrlB遺伝子であり、そしてORF2がgrlA遺伝子であるこ
とを表す。
実施例3−黄色ブドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子によりコードされるGrlAおよ
びGrlBタンパク質の一次構造、発現および機能
この実施例では、黄色ブドウ球菌のGrlAおよびGrlBタンパク質の一次構造、大
腸菌中での発現および機能を記載する。この機能は、DNAト
ポイソメラーゼIVに相当するが、この実施例では配列相同性および遺伝的相補性
データに基づく。
3.1−GrlAおよびGrlBタンパク質の一次構造および配列分析
この実施例は、実施例2で与えられた配列データを使用して行った黄色ブドウ
球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子配列のコンピューター分析を記載する。grlB遺伝子
は、663アミノ酸のGrlBタンパク質(分子量74,318)をコードし、そしてgrlA遺伝
子は800アミノ酸(分子量91,040)のGrlAタンパク質をコードする。このgrlBおよ
びgrlA遺伝子のコーディング部分、GrlBおよびGrlAタンパク質の配列を、それぞ
れ配列番号3および2に与え、そしてこれら各タンパク質の性質(アミノ酸組成
、等電点、極性指数)を、以下の表1および2に与える。タンパク質:GrlA:
第一残基=1および最終残基=800
分子量(モノイソトロピック) =91040.8438
分子量(平均) =91097.2578
極性指数(%) =52.00
等電点 =6.77
OD 260(1mg/ml)=0.298 OD 280(1mg/ml)=0.487
GrlB タンパク質
第一残基=1および最終残基=663
分子量(モノイソトロピック) =74318.3516
分子量(平均) =74363.9219
極性指数(%) =53.70
等電点 =7.21
OD 260(1mg/ml)=0.404 OD 280(1mg/ml)=0.603
以下のII型細菌DNAトポイソメラーゼ、大腸菌、枯草菌または黄色ブドウ球
菌ジャイレースまたは大腸菌トポイソメラーゼIVを用いて、GrlBおよびGrlAタン
パク質を整列するために、1984年に記載されたKanehi
saプログラムを使用した。表3を参照にすると、同一性の程度は高く、そして32
から55%の間である。より特別には、GrlBは大腸菌のParE(38%)よりも大腸菌(4
9%)および黄色ブドウ球菌(52%)のGyrBサブユニットとより高い同一性を表し
、一方GrlAは大腸菌のParE(33%)よりも大腸菌(32%)および黄色ブドウ球菌(39
%)のGyrAサブユニットに匹敵する同一性の程度を表す。
黄色ブドウ球菌(Margerrisonら、1992)、枯草菌(Moriyaら、1985)、および大
腸菌(Adachiら、1987)のGyrBサブユニットは、それぞれSAGYRB、BSGYRBおよびEC
GYRBと呼ばれ、GrlBはSAGRLBと呼ばれ、そしてECPAREは大腸菌のParEに対応する
(Katoら、1990)。同様な命名法がGyrA、GrlAおよびParCサブユニットに採用され
る。タンパク質の名前の下の数字はその中のアミノ酸数である。
Higginsら、1988のCLUSTALプログラムを用いて行ったII型細菌トポイソメラー
ゼ間の多くの整列では、種々のB、GrlBおよびParEサブユニッ
ト間、ならびにA配列、GrlAおよびParCサブユニットのN-末端部分に多くの保存
された領域を示している。これらタンパク質のBサブユニットのN-末端領域に保
存されている残基は、実際、ATPへの結合に関与する残基であり、そしてX-線結
晶解析データから大腸菌GyrBと同定される(Wigleyら、1991)。これらタンパク質
のAサブユニットのN-末端領域に保存される残基は、大腸菌GyrAについて同定さ
れた(Horowitzら、1987)ジャイレースTyr-122の活性部位に近い残基AAMRYTA(
配列番号8)であるか、またはフルオロキノロンに対する耐性株で修飾された(Ho
operら、1993)残基YHPHGDS(配列番号9)のいずれかである。
3.2−大腸菌中でのgrlAおよびgrlB遺伝子の発現
この発現は、pT7プロモーターの制御下で、大腸菌中でgrlAまたはgrlB遺伝子
を発現させるために作成された構築物を記載する(Studierら、1990)。図2に見
られる、grlB遺伝子をベクターpRSETBに含有する発現プラスミドpXL2320(Studie
rら、1990;インビトロゲン:Invitrogen)は、1)pXL2323を作成するために、pXL23
21の1kbのEcoRI-XbaI挿入物を、pXL2322のXbaIおよびEcoRI部位にクローニング
し、2)pXL2319を作成するために、pXL2323の1.9kbのKpn-I-EcoRI挿入物を、ベク
ターpRSETBのKpn-IおよびEcoRI部位にクローニングし;pXL2320を作成するため
に、pXL2325の0.5kbのNdeI-KpnI挿入物を、pXL2319のNdeIおよびKpn-I部位にク
ローニングすることにより構築した。(NdeI部位を作成するために、pXL2325はA
TG開始コドンの直ぐ上流に、CAT配列が突然変異誘発法により導入された初めの5
00塩基の遺伝子を含む)。pXL2439を得るために、pXL2320に含まれるgrlB遺伝子
発現カセットを、pKT230のBglIIおよびEcoRI部位にクローニングした(Bagdasari
anら、1981)。図2を参照すると、
ベクターpRSETB中にgrlA遺伝子を含有する発現プラスミドpXL2340は、1)pXL2338
を作成するために、pXL2324の1.7kbのNdeI-EcoRI挿入物を、ベクターpRSETBのNd e
IおよびEcoRI部位にクローニングし、;pXL2340を作成するために、pXL2337の0
.75kbのNdeI挿入物を、pXL2338のNdeI部位にクローニングすることにより構築し
た。(pXL2337は、NdeI部位を作成するために、GTG開始コドンの代わりにCATATG
配列が突然変異誘発法により導入された初めの750塩基の遺伝子を含む)。
プラスミドpXL2320またはpXL2340は、大腸菌XL-1-青株(ストラタジェン:Stra
tagen)中に導入され、そして遺伝子発現は、ヘルパーファージM13/T7(Studier
ら、1990、インビトロジェン)中にクローン化されたT7ファージRNAポリメラー
ゼをコードする遺伝子の誘導後に、T7ファージRNAポリメラーゼが生成された時
に誘導された。細胞抽出物はすでに記載したように、クーマシーブルーで染色し
たPAGE−SDSゲルで電気泳動により分析した(Denefleら、1987)。図3で
は、i)grlB遺伝子が大腸菌XL-1青株、pXL2320中で誘導されたとき分子量79,00
0を有し、そしてii)grlA遺伝子が大腸菌XL1-青株、pXL2340中で誘導されたとき
分子量90,000を有するタンパク質の生産を表す。測定された分子量は、配列から
推定される分子量と一致する。
3.3−黄色ブドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子によるサルモネラ チフィムリ
ウム(Salmonella typhimurium)のparCtsおよびparEts突然変異体の相補
この実施例は、黄色ブドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子によるエス.チフィム
リウム(S. typhimurium)のparCtsおよびparEts突然変異体のヘテロロガスな相補
を記載する。プラスミドpXL2320、pXL2340、pXL2439
またはベクターpRSETBを、エス.チフィムリウム(S. typhimurium)SE7784株(parC 281
(Ts)zge-2393::Tn10 leu485)またはSE8041(parE206(Ts)zge-2393::Tn10 leu4 85
)に導入した(Luttingerら、1991)。プラスミドは温度−感受性表現型を相補せ
ず;一方、プラスミドpXL2340およびpXL2439を同時にSE7784株またはSE8041株中
に導入した時、両方の株の熱−感受性表現型は相補される。結果として、黄色ブ
ドウ球菌のgrlAおよびgrlB遺伝子の同時発現は、エス.チフィムリウム(S. typhi murium
)突然変異体のParC TsまたはParE Ts表現型の相補を可能にする。
実施例4−黄色ブドウ球菌のDNAトポイソメラーゼIVはフルオロキノロンの第
一標的である。
この実施例は、フルオロキノロンに対して耐性な分析したすべての黄色ブドウ
球菌の臨床株を用いて、GrlAサブユニット中の点突然変異Ser-80の存在を記載す
る一方、フルオロキノロンに対する耐性が弱い黄色ブドウ球菌の臨床株では、Gy
rAサブユニット中のQRDR領域(キノロン決定領域)(GrlAのSer-80領域と均等であ
る)内に突然変異が存在しないことを記載する。その結果、GrlAサブユニットは
黄色ブドウ球菌においてフルオロキノロンの第一標的となることが示される。
黄色ブドウ球菌の8つの臨床株および研究用株のゲノムDNAを準備し、そし
て42℃でPCRにより増幅するために使用した:i)センスオリゴヌクレオチド
5'-GGCGGATCCCATATGGCTGAATTACCTCA-3'(配列番号10)およびアンチセンスオ
リゴヌクレオチド5'-GGCGGAAT TCGACGGC- TCTCTTTCATTAC-3'(配列番号11)を
使用するgyrAの最初の500塩基対;およびii)センスオリゴヌクレオチド5'-GGCCGGATCCCATATG
AGTGAAATAATTCAAGATT-3'(配列番号12)およびアンチセン
スオリゴヌクレオチド-5'-GGCCGAATTCTAATAATTAACTGTTTACGTCC-3'(配列番号1
3)を使用するgrlAの最初の800塩基対。各々の増幅した断片を、ファージM13mp
18にクローン化し、そして各遺伝子の最初の300塩基対を、2つのクローンにつ
いて読んだ。gyrA配列はMagerrisonにより公開された配列と同一であり、そしてgrlA
配列は配列番号1に記載された配列と表4に与える突然変異を除いて同一で
ある。gyrA中の突然変異は、フルオロキノロンに対して高度に耐性な株(SA4、S
A5、SA6、SA35、SA42RおよびSA47に存在する;シプロフロキサシンへのMIC>16m
g/l);これらの突然変異は、アミノ酸Ser-84もしくはSer-85またはGlu-88での
変化を導く塩基変化である。grlAでの突然変異は、フルオロキノロンに耐性なす
べての株に存在し、そして残基Ser-80からPheまたはTyrへの変化に対応する。
実施例5−PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)
GrlA中でSer-80からTyr(Ser-80→Tyr)への置換を生じる点突然変異を含有するgr lA
内側の黄色ブドウ球菌のDNA断片の増幅。
この実施例は、フルオロキノロンに耐性の黄色ブドウ球菌株、SA2のgrlA内側
のDNA断片の生成を記載する。grlA断片は、野生型遺伝子の2
270位置でCからAへの塩基変化を含む(図1)。この突然変異はGrlAタンパク
質中で残基Ser-80からTyrへの置換を生じる。残基Ser-80からPheまたはTyrへの
置換は、フルオロキノロンに対して弱い耐性株のすべてに存在することが示され
た(実施例4)。SA2株のゲノムDNAならびにgrlA配列の2036および3435位に
それぞれ対応するオリゴヌクレオチド3358および3357を用いて、50℃で行ったP
CR増幅後に、grlAの内側の断片を得た。より詳細には、センスオリゴヌクレオ
チド3358(配列番号12)(実施例4)およびアンチセンスオリゴヌクレオチド33
57は、1399塩基対の断片を増幅することを可能とする;アンチセンスオリゴヌク
レオチド3357の配列は5'-GGCCGAGCTCC-AATTCTTCTTTTATGACATTC-3'(配列番号14
)である。NdeI部位を作成するために、オリゴヌクレオチド3358も突然変異誘発
法により、配列CATATGをGTG開始コドンの代わりに導入するために使用した。増
幅したgrlA断片を、pUC18(ベーリンガーマンハイム)のBamHI/SstIクローニン
グ部位にクローニングし、そしてこのプラスミドpXL2692を含有する6つのクロ
ーンを、その挿入物のシークエンシング後に分析した。すべての場合で、配列CA
TATGがCTG開始コドンの代わりに導入され、そしてgrlAの2270位での点突然変異(
C→A)が、再度見いだされた。
実施例6−残基Ser-80からTyrへの変化に対応する塩基変化を含むgrlA遺伝子の
大腸菌中での発現
この実施例は、T7プロモーターの制御下で、突然変異したgrlA遺伝子を大腸菌
中で発現させるために調製された構築物を記載する(Studierら、1990)。突然変
異したgrlA遺伝子を含む発現プラスミドpXL2742は、pXL2692の0.75kbの挿入物を
、pXL2338のNdeI部位にクローニングするこ
とにより構築した(実施例3.2)。このプラスミドpXL2742を、大腸菌XL1−青
株に導入し、そしてgrlA遺伝子の発現を実施例3.2に記載のように行った。90
,000の分子量を有するタンパク質生産を、grlA遺伝子を含むプラスミドpXL2742
を用いて得た。測定した分子量はgrlA遺伝子の配列から推定される分子量、およ
び野生−型GrlAタンパク質からすでに得た分子量とも一致する(実施例3.2)
。
実施例7−黄色ブドウ球菌のGrlABタンパク質のDNAトポイソメラーゼIV活性
この実施例は、GrlABタンパク質を含む無細胞抽出物がどのように調製でき、
そしてこの抽出物中に存在するGrlABタンパク質の酵素活性がどのように検出、
そして測定できるかを説明する。
7.1−細胞抽出物の調製
GrlAタンパク質を発現する、大腸菌XL1-ブルーpXL2340株の無細胞抽出物を、
例えば以下のように調製する:大腸菌XL1-ブルーpXL2340株を以下のように培養
する:50mg/lのアンピシリンを含有する250mlのLB培地に、大腸菌XL1-ブルーpXL
2340株を培養物を用いて1/100で植菌し、そして30℃でインキューベーションし
;600nmの光学密度が0.3の時に、1mM IPTGを加え;37℃で30分間インキューベー
ションした後、株をヘルパーファージM13/T7を用いて4時間、細胞あたり5pfu
の感染多重度で感染させる。遠心(5000×g;20分間)後、1.5リットルの培養物
を使用して得られた細胞を、20mlの50mM Tris/HCl緩衝液、pH7.8(10mM EDTA、15
0mM NaCl、1mM DTT、0.12% Brij 58および0.75mg/mlのリゾチームを含有する)
に再懸濁する。4℃で30分後、混合物を50,000×gで1時間遠心し、そしてGrlAタ
ンパク質を含有する上清を回収する。この試料の緩衝
液の交換は、50mM Tris/HCl緩衝液pH7.5(1mM EDTA、5mM DTT、100mM NaClおよび
10%シュクロースを含む)を用いて平衡化たSephadex G625(ファルマシア:Pharma
cia)を充填したカラムを通すクロマトグラフィーを行い、そして溶出することに
より行う。
GrlBタンパク質を含有する無細胞抽出物を、大腸菌XL1-ブルーpXL2320株を使
用して同様な様式で調製する。
7.2−黄色ブドウ球菌のDNAトポイソメラーゼIVの精製
この実施例は、複製の最終フェイズ中に娘染色体の分離を触媒する黄色ブドウ
球菌の酵素(トポイソメラーゼIV)をどのように精製できるかを説明する。
トポイソメラーゼIVの2つのGrlAおよびGrlBサブユニットの精製は、以下に記
載するように、精製中にGrlAおよびGrlBタンパク質の存在を検出するために実施
例7.3に記載したデカテネーション活性アッセイを使用して、当業者に通常使
用されるように行う。この酵素活性のアッセイ中に、GrlAタンパク質を含有する
画分の相補が、GrlBサブユニットを発現する大腸菌XL1-ブルーpXL2320株の抽出
物のタンパク質1μgで得られ、そしてGrlBタンパク質を含有する画分の相補が
、GrlAサブユニットを発現する大腸菌XL1-ブルーpXL2340株の抽出物のタンパク
質1μgで得られる。酵素抽出物の調製の好適な様式は、実施例7.1に記載す
る。各工程の間に、所望のタンパク質を含有する画分を凍結し、そして−70℃で
保存する。Aサブユニットの精製は、例えば以下の手順に従いクロマトグラフィ
ーにより行える:
約5gの大腸菌XL1-ブルーpXL2340細胞を使用して、実施例7.1に記載するよう
に調製した無細胞抽出物を、MonoQ HR 10/10カラム(ファル
マシア)で、流速3ml/分にて、1mM EDTA、1mM DTTおよび10%グリセロール(重
量/容量)を含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0中のNaClの直線的勾配(60分間にわ
たって0.1M−0.6M)でクロマトグラフィーを行う。活性画分を合わせ、そして試
料を、1mM EDTA、5mM DTTおよび0,25M NaClを含有する50mM Tris/HCl緩衝液pH7.
5で平衡化したSuperdex200 HiLoad 26/60カラム(ファルマシア)でクロマトグラ
フィーを行い、溶出する。対称的ピークの状態で存在するGrlAタンパク質を、所
望の活性と同時に溶出する。この工程後、調製物は亜硝酸銀で発色した後にSDS-
PAGEで単一の可視バンドを示し、そしてこのバンドは約90,000の見かけ上の分子
量で移動する。
Bサブユニットの精製は、例えば以下の手順に従いクロマトグラフィーにより
行える:
約5gの大腸菌XL1-ブルーpXL2320細胞を使用して、実施例5に記載するように調
製した無細胞抽出物を、1mM EDTA、5mM DTTおよび0.3M NaClを含有する50mM Tri
s/HCl緩衝液pH7.5で平衡化したノボビオシン-Sepharose CL-6Bカラム(Staudenba
uerら、1981、Nucleic Acids Researchにより記載の手法に従い調製したゲル6m
l)に注入する。カラムを同緩衝液で洗浄した後、GrlBタンパク質を、1mM EDTA、
5mM DTTおよび2M NaClおよび5M尿素を含有する50mMのTris/HCl緩衝液pH7.5で溶
出する。この画分を1mM EDTA、5mM DTTおよび0,25M NaClを含有する50mM Tris/H
Cl緩衝液pH7.5で平衡化したSuperdex200 HiLoad 26/60ゲル浸透カラム(ファルマ
シア)でクロマトグラフィーを行い、そして溶出する。対称的ピークの状態で存
在するGrlBタンパク質を、所望の活性と同時に溶出する。この工程後、調製物は
亜硝酸銀で発色した後にSDS-PAGEで単一の可視バ
ンドを有し、そしてこのバンドは約80,000の見かけ上の分子量で移動する。
7.3−GrlABタンパク質の酵素活性の検出
GrlABタンパク質の種々の酵素的活性を、同反応混合物中に等量の2種類の抽
出物(上記のように調製されるか、または酵素活性を保存しながら微生物の細胞
内酵素タンパク質の回収を可能にする任意の他の方法、例えば圧縮(フレンチプ
レス、X−プレスのような)、または超音波の使用が関与する調製による)をイ
ンキューベーションすることにより検出する。
ATP−依存超コイル化DNA緩和活性は、例えば以下の様式の方法を行うこ
とにより検出できる:
大腸菌XL1-ブルーpXL2320株の抽出物(1μgタンパク質)および大腸菌XL1-ブル
ーpXL2340株の抽出物(1μgタンパク質)の混合物を、37℃で1時間、30μlの5
0mM Tris/HCl緩衝液pH7.7(4mM ATP、6mM MgCl2、5mM DTT、1mM スペルミジン、2
0mM KCl、50μg/mlウシ血清アルブミンおよび500ngの超コイル化プラスミドpBR3
22を含む)中でインキューベーションする。反応を7μlの5%SDSおよび2.5mg/ml
のプロティナーゼK混合物を加えて停止し、そして試料を37℃で30分間、第2期
のインキューベーションを行い、そして次に1%アガロースゲルを2mMのEDTAを
含有する0.1M Tris/ホウ酸緩衝液pH8.3中で3時間、6V/cmで電気泳動すること
により分析する。弛緩した、およびニック(開いた環)DNAの分離は、エチジ
ウムブロミド(1μg/ml)を泳動緩衝液に加えた後、さらに2時間電気泳動する
ことにより行う。次にDNAは、Bioimage 50S装置(ミリポア:Millipore)により
、ゲルの写真のネガ(ポラロイド型:Pol
aroid Type、665フィルム)をスキャンニングすることにより定量する。
図4は、大腸菌XL1-ブルーpXL2320株および大腸菌XL1-ブルーpXL2340株の無細
胞抽出物が、混合物で強いDNA緩和活性を表すが、各抽出物は単独でインキュ
ーベーションした時に不活性であることを表す。この反応はATP-依存性であ
る。さらにこれら2つの抽出物は単独、または混合物の状態でDNA超コイル化
活性、ジャイレースに典型的な活性は示さない。
からまった環状DNA分子(カテナン)のデカテネーションのATP−依存活
性は、例えば以下の様式の手法を行うことにより検出できる:大腸菌XL1-ブルー
pXL2320株の抽出物(2.5μgタンパク質)および大腸菌XL1-ブルーpXL2340株の抽
出物(2.5μgタンパク質)の混合物を、37℃で1時間、40μlの50mM Tris/HCl緩
衝液pH7.7(1mM ATP、6mM MgCl2、200mMのグルタミン酸塩、10mM DTT、10mM NaCl
、50μg/mlウシ血清アルブミンおよび800ngのキネトプラストDNA[クリシジア フ
ァシキュラータ(Crithidia fasciculata)から得たからまったDNA分子(カテナ
ン)のネットワークからなる:TopoGene])中でインキューベーションする。反応を
7μlの250mM EDTA溶液(37℃で5分間インキューベーション)、5μlの5%SD
Sおよび2.5mg/mlのプロティナーゼK混合物を加えて停止する(37℃で30分間イ
ンキューベーション)。次に試料を1%アガロースゲルを2mMのEDTAを含有する0.
1M Tris/ホウ酸緩衝液pH8.3中で2時間30分間、6V/cmで電気泳動することによ
り分析する。エチジウムブロミド(1μg/ml)でDNAを染色した後、DNAは
Bioimage 50S装置(ミリポア:Millipore)により、ゲルの写真のネガ(ポラロイド
型:Polaroid Type、665フィルム)をスキャンニングすることにより定量する。
例えば、上記の条件下で処理することにより、2つの大腸菌XL1-ブルーpXL2320
株および大腸菌XL1-ブルーpXL2340株の抽出物は、混合物の状態で出発のキネト
プラストDNAの完全なデカテネーション活性を現す。この活性は約2.5kbの大
きさのDNAバンドの出現により、および電気泳動中にゲルに極めてわずかに浸
透する大変大きなサイズのカテネート化DNAのバンドの消失により検出される
(図5)。このアッセイに対照として導入された大腸菌ジャイレースは、キネト
プラストDNAを完全にデカテネート化する大腸菌のDNAトポイソメラーゼIV
とは対照的に、デカテネーション活性を現さない(図5)。
実施例8−GrlAサブユニットが残基Ser-80→Tyr(Ser-80→Tyr)の置換を表す、黄
色ブドウ球菌のGrlABタンパク質のDNAトポイソメラーゼIV活性。
8.1−GrlAサブユニットが残基Ser-80からTyr(Ser-80→Tyr)への置換を現す、
黄色ブドウ球菌のGrlABタンパク質を含む細胞抽出物の調製
この実施例は、タンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)Bを含有する無細胞抽出物をどの
ように調製できるかを説明し、ならびにタンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)Bの酵素活
性をどのように検出し、そして測定できるかを説明する。
タンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)を発現する大腸菌XL1-ブルーpXL2742株の無細胞
抽出物を、例えば野生−型GrlAタンパク質に関して実施例7に記載したように調
製する。
8.2−GrlAサブユニットにSer-80-Tyr突然変異を現す黄色ブドウ球菌のDNA
トポイソメラーゼIVの精製。
この実施例は、GrlAサブユニット中にSer-80→Tyr突然変異を現す黄
色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVをどのように精製できるかを説明する。Ser-
80→Tyr突然変異を有するトポイソメラーゼIVのGrlAサブユニットを、実施例6
に記載したように構築した大腸菌XL1-ブルーpXL2742株の培養物を使用して、実
施例7.2に記載した手順と同様な手順に従い精製する。
8.3−酵素活性の検出
一方では超コイル化DNA緩和のATP−依存活性を、ならびに他方ではから
まった環状DNA分子のデカテネーション活性を、この抽出物中から、実施例7
に記載したように、同じ反応混合物、タンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)を含有する
大腸菌XL1-ブルーpXL2742株の無細胞抽出物およびGrlBタンパク質を含有する大
腸菌XL1-ブルーpXL2320株の抽出物をインキューベーションすることにより検出
する。
実施例9−フルオロキノロンによる、黄色ブドウ球菌の野生−型GrlABタンパク
質のDNAトポイソメラーゼIV活性の阻害、およびGrlAサブユニット中にSer-80
→Tyr転移を含むタンパク質のフルオロキノロンに対する耐性。
DNAトポイソメラーゼIV活性のアッセイについて実施例7に記載した2つの
方法は、黄色ブドウ球菌のトポイソメラーゼIVのインヒビターとして作用する新
規分子を検出するために、あるいは他のトポイソメラーゼのインヒビターとして
すでに同定されている分子(例えばフルオロキノロン)に対する黄色ブドウ球菌
のトポイソメラーゼIVの挙動を特性決定するために使用できる。
例えば超コイル化DNAの緩和試験では、黄色ブドウ球菌のGrlABタンパク質
を、分子またはこの分子(またはこれらの分子)を示す幾つかの
分子の混合物の存在中でインキューベーションした後の、反応混合物の分析中に
弛緩したDNAバンドの消失または減少は、この分子(またはこれらの分子)が
GrlABの緩和活性を阻害し、したがって有望な抗菌物質であることを示している
。しかし現在までに行われた研究(実施例7に記載)では、GrlABタンパク質がト
ポイソメラーゼIVであると証明されており、そして現在ではトポイソメラーゼIV
の主機能が複製の最終段階でからまった娘染色体のデカテネーション(または離
脱)であると確立されているので、例えば実施例7.3に記載した試験を使用し
てDNAのデカテネーションの試験を使用するGrlABタンパク質のインヒビター
に関する調査は、さらに判定力があると思われる。以下の実施例で記載する実験
を行うために、実施例7に記載した精製した野生−型GrlABタンパク質、および
実施例8に記載した突然変異体タンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)Bを用いてインキュ
ーベーションを行う。2つの野生−型および突然変異体タンパク質GrlABを、そ
れらの2つのGrlAおよびGrlBサブユニットの等モル量を混合することにより再構
成する。デカテネーション試験では、もしデカテネートされたDNAバンドの消
失または強度の減少が、分子または幾つかの分子の混合物の存在下でGrlABタン
パク質のインキューベーション後に反応混合物の分析中に観察されるならば、こ
れはこの分子(またはこれらの分子)がGrlABタンパク質のデカテネーション活
性を阻害することを示し、したがって有力な抗菌物質である。本発明でGrlABタ
ンパク質がフルオロキノロン族の分子の第一標的であることが証明されたので、
フルオロキノロンは実施例7に記載したデカテネーション試験でインヒビターと
して作用するはずである。実際、精製したGrlABタンパク質をフルオロキノロン
量(例えばシプロフロキサシ
ン)を増加させながらインキューベーションする時、10μg/mlより高い濃度でシ
プロフロキサシンはキネトプラストDNAのデカテネーション活性を完全に阻害
することが見られる。シプロフロキサシンは4.0μg/mlの濃度で、キネトプラス
トDNAのデカテネーション活性を50%阻害する。同様に、別のフルオロキノロ
ンであるスパロフロキサシンは、6.0μg/mlの濃度で、キネトプラストDNAの
デカテネーション活性を50%阻害する。同様に、本発明で(実施例4)、突然変
異体GrlABタンパク質のGrlAサブユニットのSer-80→Tyr突然変異の存在が、株に
フルオロキノロンに対する特定レベルの耐性を付与することが実証されたので(
例えばシプロフロキサシン)、フルオロキノロンはこの突然変異体DNAトポイ
ソメラーゼIVに対してインヒビター(これは実施例7に記載したデカテネーショ
ン試験では効率がより低い)として作用するはずであると思われる。
実際、突然変異体タンパク質GrlA(Ser-80→Tyr)Bをフルオロキノロン量(例えば
シプロフロキサシン)を増加させながらインキューベーションする時、シプロフ
ロキサシンは60μg/mlの濃度でキネトプラストDNAのデカテネーション活性を
50%阻害することが見られ、すなわち野生−型酵素を用いて同じ効果を得るのに
必要な濃度よりも15倍高い。
同様に、突然変異体酵素GrlA(Ser-80→Tyr)Bの存在で、スパルフロキサシンは50
0μg/mlの濃度でキネトプラストDNAのデカテネーション活性を50%阻害し、
すなわち野生−型酵素を用いて同じ効果を得るのに必要な濃度よりも80倍高い。
ノルフロキサシンは12μg/mlの濃度で、野生−型GrlAB酵素でのキネトプラスト
DNAのデカテネーション活性を50%阻害し、そして酵素GrlA(s
er-80
→Tyr)Bを用いて、125μg/mlの濃度で同じ阻害活性を現す。オフロキサシ
ンは10μg/mlの濃度で、野生−型GrlAB酵素でのキネトプラストDNAのデカテ
ネーション活性を50%阻害し、そして酵素GrlA(Ser-80→Tyr)Bでは、250μg/ml
の濃度で同じ阻害活性を有する。
ノボビオシンはその作用機構がフルオロキノロンとは異なり、したがって原理
的には実施例7に記載のデカテネーション試験において、野生−型GrlAB酵素およ
び突然変異体GrlA(Ser-80→Tyr)B酵素の両方に対して同じ阻害効果を有するはず
である。実際、ノボビオシンはどのような酵素(野生−型GrlABまたは突然変異体
GrlA(Ser-80→Tyr))を使用しても、約30μg/mlの濃度でキネトプラストDNAの
阻害活性を50%阻害する。
略号
DNA:デオキシリボ核酸
RNA:リボ核酸
MIC:最小阻止濃度
IPTG:イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド
LB:ルリア−ベルタニ 培地
PAGE:アクリルアミドおよびN,N'-メチレンビスアクリルミドを含有する電
気泳動ゲル
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
pfu:プラーク形成単位
QRDR:フルオロキノロンに対する耐性を導く点突然変異がマップされたGyrA
サブユニットの領域
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
Tris:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12R 1:445)
(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12N 9/90
C12R 1:19)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG,KP
,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,MG,
MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SG,S
I,SK,TJ,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 クルーゼ, ジヨエル
フランス・エフ−75012パリ・リユデムー
ニエ48−52
(72)発明者 フアムシヨン, アラン
フランス・エフ−91510ジヤンビル−シユ
ール−ジユイヌ・リユブーレイ−シユール
−ジユイヌ10
(72)発明者 フエレロ, ルチア
フランス・エフ−75013パリ・アベニユー
デゴブラン60