JP4052116B2 - ピストン頂部に複数の凹部を有するエンジン - Google Patents

ピストン頂部に複数の凹部を有するエンジン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、希薄燃焼を行うことができるエンジンに関し、さらに詳しくは、空気過剰率が高い状態で燃料を燃焼させることができるエンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、理論空燃比よりも空気の多い状態で燃料を燃焼させる、希薄燃焼を行うことができる内燃機関が知られている。このような内燃機関において、空気過剰率の高い状態で燃焼を起こさせるために、燃料噴射を2回に分けて行って、部分的に燃料の濃い混合気領域を作り出す内燃機関が存在する(例えば、特許文献1参照)。燃料の濃い混合気領域は、2回目の燃料噴射によって形成される。この2回目の燃料噴射によって形成される混合気領域は、理論空燃比またはそれよりも燃料が多い混合気領域となるため、着火しやすい。よって、このような内燃機関によれば全体としては空気過剰率の高い状態でも燃焼を起こさせることができる。なお、関連文献として、特許文献2〜4がある。
【特許文献1】
特開2001−207850号公報
【特許文献2】
特開2001−214741号公報
【特許文献3】
特開平02−078725号公報
【特許文献4】
特開2001−152919号公報
【0003】
なお、「空気過剰率」は、混合気中に含まれる燃料と過不足なく燃焼するだけの空気の量に対して、実際の混合気中に含まれている空気は何倍であるか、を表す指標である。たとえば、空気過剰率が「2」であるとき、混合気中には、空気と燃料とが互いに過不足なく燃焼する量の2倍だけ、空気が含まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の内燃機関においては、一部に形成された理論空燃比またはそれよりも燃料が多い混合気領域の燃焼においてNOxが生じ、希薄燃焼によるNOx低減の効果を減殺してしまうという問題があった。
【0005】
この発明は従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、NOxを過度に発生させることなく空気過剰率が高い状態で燃料を燃焼させることができる内燃機関を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、シリンダと、ピストンと、シリンダとピストンとで形成される燃焼室内に燃料を噴射することができる第1の燃料噴射部と、を備えるエンジンにおいて、以下の構成を採用する。ピストンは、ピストンの頂部に設けられた複数の凹部と、溝部と、を有する。溝部は、ピストンの頂部において、少なくとも一部の凹部に接続され、ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに少なくとも一部の凹部から第1の燃料噴射部の位置に向かう向きに設けられている。第1の燃料噴射部は、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を凹部または溝部に向けて噴射する。このような態様とすれば、凹部近辺に、比較的濃い、しかし、理論空燃比よりは空気の多い混合気を生じさせ、その混合気において自着火を起こさせることができる。よって、NOxを過度に発生させることなく、空気過剰率が高い状態で燃料を燃焼させることができる。
【0007】
なお、複数の凹部のうち少なくとも一部の凹部は、凹部を構成する面の少なくとも一部に凹曲面を有しており、第1の燃料噴射部は、凹曲面に向けて燃料を噴射することが好ましい。このような態様とすれば、凹部に向けて噴射された燃料の一部は、凹曲面に沿って向きを変えられ、燃焼室内に拡散される。このため、凹部近傍の混合気の自着火の後、燃焼室全体に拡散した混合気においても偏りなく自着火を起こさせることができる。よって、NOxを低減することができる。
【0008】
また、凹部のうちピストンの往復方向に測ったもっとも深い部分は、凹部に接続された溝部のうちピストンの往復方向に測ったもっとも深い部分よりも深いことが好ましい。このような態様とすれば、溝部に向けて噴射された燃料を、溝部から凹部に誘導し、凹部内にとどめやすくすることができる。このため、一定の場所である凹部近傍に比較的濃い混合気を形成することができ、一定の場所に形成された混合気にまず自着火を起こさせて、燃焼室内の燃料を偏りなく自着火させることができる。よって、NOxを低減することができる。
【0009】
ピストンは、シリンダの中心軸を中心としてほぼ均等な角度に配されている複数の凹部を有することが好ましい。このような態様とすれば、均等に配された複数の凹部近傍において燃焼を開始させることができ、燃焼室全体で均等に自着火燃焼を行わせることができる。よって、NOxを低減することができる。
【0010】
また、凹部の配置は以下のようにすることもできる。すなわち、シリンダの中心軸を含む一つの平面であって、燃焼室の断面積を最も大きくする平面を基準平面とする。そして、ピストンの頂部を、基準平面に平行な二つの平面によって分割される3つの領域であって、ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、シリンダの中心軸を通り基準平面と垂直である直線に沿った寸法が1:1:1となる第1、第2および第3の頂部領域に分ける。ここで、三つの頂部領域のうちシリンダの中心軸を含む頂部領域を第2の頂部領域とする。このとき、ピストンは、第2の頂部領域に、複数の凹部を実質的に有しており、第1および第3の頂部領域に、凹部を実質的に有していない、という構成とすることが好ましい。このような態様とすれば、各凹部によって形成される比較的濃い混合気の燃焼が、燃焼室全体に均等に伝わりやすい。よって、燃焼室全体で均等に自着火燃焼を行わせることができ、NOxを低減することができる。
【0011】
なお、シリンダが、燃焼室に酸素含有ガスを吸入するための吸気口と、燃焼室から排ガスを排出するための排気口と、を備え、エンジンが、さらに、吸気口を開閉する吸気バルブと、排気口を開閉する排気バルブと、を備える態様においては、以下のような構成とすることが好ましい。すなわち、複数の凹部の少なくとも一部は、吸気バルブと排気バルブとの少なくとも一方と、ピストンとの干渉を避けることができる位置および大きさで設けられていることが好ましい。言い換えれば、複数の凹部の少なくとも一部は、バルブリセスを兼ねている態様とすることが好ましい。このような態様とすれば、ピストンのS/V比、すなわち(表面積/体積)比を小さくすることができ、燃焼の際の冷却損失を少なくすることができる。よって、燃料のエネルギーを、効率的に仕事として取り出すことができる。
【0012】
また、シリンダが、燃焼室の内壁の一部を形成し、ピストンの往復方向の延長線上でピストンと向かい合う天井部を有する態様において、第1の燃料噴射部は、天井部の、シリンダの中心軸との交点の近傍から燃料を噴射できるように設けられていることが好ましい。このような態様とすれば、ピストン上面に設けられた複数の凹部または溝部に対して、燃料噴射部から容易に燃料を噴射することができる。よって、凹部近傍に比較的濃い混合気を形成しやすい。
【0013】
さらに、エンジンが、燃焼室に酸素含有ガスを導入するための吸気管を備える場合には、吸気管内に燃料を噴射することができるように設けられている吸気管燃料噴射部を備える態様とすることもできる。このような態様とすれば、吸気管燃料噴射部から噴射した燃料を、酸素含有ガスとともに燃焼室に導き入れて、十分拡散させることができる。このため、凹部近傍の混合気の自着火の後、燃焼室全体に拡散した混合気においても偏りなく自着火を起こさせることができる。
【0014】
なお、複数の凹部が、第1の燃料噴射部からの距離が異なる2以上の凹部を含んでいる態様においては、第1の燃料噴射部は、第1の燃料噴射部からの距離が比較的大きい凹部に対しては、比較的小さい噴射角で燃料を噴射し、第1の燃料噴射部からの距離が比較的小さい凹部に対しては、比較的大きい噴射角で燃料を噴射することが好ましい。このような態様とすれば、燃料噴射部から噴射した燃料が凹部からはみ出しにくい。よって、凹部近傍に比較的濃い混合気を形成しやすい。
【0015】
また、第1の燃料噴射部は、ピストンが最も下降したときに、第1の燃料噴射部から噴射するほぼすべての燃料を凹部内に噴射できるように構成されていることが好ましい。このような態様とすれば、ピストンが任意の位置にあるときに燃料を噴射しても、燃料を凹部または溝部に噴射することができる。よって、凹部近傍に比較的濃い混合気を形成しやすい。
【0016】
なお、燃焼室内の燃料に点火を行うことができる点火部を備える態様においては、点火部は、燃焼室内の位置であって凹部の一つと向かい合う位置において燃料に点火を行うことができるように設けられていることが好ましい。このような態様とすれば、燃料が自着火しにくい状態においても、比較的着火しやすい凹部近傍の混合気に、点火部によって点火して燃焼を起こさせることができる。
【0017】
また、点火部と向かい合う凹部は、シリンダの中心軸の近傍に設けられていることが好ましい。このような態様とすれば、燃焼室の中央近辺に形成される比較的濃い混合気に点火を行って、燃焼室の中央から周辺に向かって効率的に燃焼を起こさせることができる。
【0018】
燃焼室内の燃焼状態を検出することができる燃焼状態検出センサと、第1の燃料噴射部と点火部の制御を行う制御部と、を備えるエンジンにおいては、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、制御部は、燃焼状態検出センサが燃焼状態の異常を検出した場合には、異常が検出されたサイクルの次のサイクルにおいて、第1の燃料噴射部に、直前のサイクルで圧縮期間中期に噴射した量よりも多い量の燃料を、圧縮期間中期の所定の時間区間中に噴射させ、点火部に、燃料に対して点火を行わせる。このような態様とすれば、いったん燃焼状態に異常が生じても、次のサイクル以降で安定した燃焼状態を回復することができる。
【0019】
シリンダが、燃焼室に酸素含有ガスを吸入するための吸気口と、燃焼室から排ガスを排出するための排気口と、を備え、エンジンが、吸気口を開閉する吸気バルブと、排気口を開閉する排気バルブと、第1の燃料噴射部、吸気バルブおよび排気バルブを制御する制御部と、を備えるエンジンにおいては、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、4サイクル運転を行う運転モードであって、排気行程において排気バルブを閉じた後に吸気バルブを開き、排気バルブを閉じてから吸気バルブを開くまでの期間中の所定の時間区間において第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有することが好ましい。このような態様とすれば、4サイクル運転において、既燃ガスの熱を利用して混合気を十分に気化させ、拡散させることができる。このため、凹部近傍の混合気の自着火の後、燃焼室全体に拡散した混合気においても偏りなく自着火を起こさせることができる。
【0020】
また、2サイクル運転を行う運転モードであって、吸気バルブを開いた後、排気バルブを閉じるまでの掃気期間中の所定の時間区間において第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有する態様とすることもできる。このような態様とすれば、2サイクル運転において、既燃ガスの熱を利用して混合気を十分に気化させ、拡散させることができる。
【0021】
なお、比較的負荷が低いときには、第1の燃料噴射部に比較的早い時期に燃料の噴射を終了させ、比較的負荷が高いときには、第1の燃料噴射部に比較的遅い時期に燃料を噴射させることが好ましい。このような態様とすれば、高負荷時の燃焼速度を遅くすることができ、高負荷時の騒音を低減することができる。
【0022】
また、第1の燃料噴射部に加えて、燃焼室に接続された吸気通路内または燃焼室内に燃料を噴射することができる第2の燃料噴射部と、第1および第2の燃料噴射部を制御する制御部と、を備えるエンジンにおいては、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、比較的負荷が低いときには、第2の燃料噴射部に燃料を噴射させずに、第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、比較的負荷が高いときには、まず、第2の燃料噴射部に燃料を噴射させ、その後、第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる。このような態様とすれば、比較的負荷が高いときには、まず第2の燃料噴射部から噴射した燃料で均質な混合気を形成し、その後、第1の燃料噴射部から凹部または溝部に噴射した燃料で、比較的濃い混合気を形成することができる。
【0023】
なお、第1の燃料噴射部は、天井部の、シリンダの中心軸との交点の近傍から燃料を噴射できるように設けられており、第2の燃料噴射部は、燃焼室の内側壁近傍から燃料を噴射できるように設けられていることが好ましい。このような態様とすれば、第2の燃料噴射部から噴射した燃料を、十分拡散させつつ、第1の燃料噴射部から噴射した燃料で凹部近傍に比較的濃い混合気を形成することができる。
【0024】
なお、以下のような運転を行うこともできる。すなわち、4サイクル運転を行う運転モードであって、排気バルブを閉じて排気行程を終了した後に吸気バルブを開く運転モードであり、排気バルブを閉じてから吸気バルブを開くまでの期間中の所定の第1の時間区間と、圧縮期間中期の所定の第2の時間区間と、のそれぞれにおいて第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有することが好ましい。このような態様とすれば、排気バルブが閉じてから吸気バルブが開く前までの期間中に噴射した燃料は十分に気化させ、拡散させることができ、一方、圧縮期間において噴射した燃料によって、凹部近傍に比較的濃い混合気を形成することができる。
【0025】
また、上記の4サイクル運転においては、第1の時間区間において、比較的高い圧力で第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、第2の時間区間において、比較的低い圧力で第1の燃料噴射部に燃料を噴射させることが好ましい。このような態様においては、第2の時間区間において噴射する燃料の粒径を大きくすることができる。その結果、燃料の蒸発に時間がかかり、ピストンが圧縮上死点に達するまでに気化した燃料が燃焼室内に拡散しにくい。よって、高濃度の混合気を凹部近傍に形成することができる。
【0026】
さらに、2サイクル運転を行う運転モードであって、吸気バルブを開いてから排気バルブを閉じるまでの掃気期間中の所定の第1の時間区間と、圧縮期間中期の所定の第2の時間区間と、のそれぞれにおいて第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有する態様とすることもできる。このような態様とすれば、排気バルブが閉じてから吸気バルブが開く前までの期間中に噴射した燃料は十分に気化させ、拡散させることができ、一方、圧縮期間において噴射した燃料によって、比較的濃い混合気を凹部近傍に形成することができる。
【0027】
なお、上記の2サイクル運転においては、第1の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的少ない噴射で第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、第2の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的多い噴射で第1の燃料噴射部に燃料を噴射させることが好ましい。このような態様においては、第1の時間区間において噴射する燃料は、一度に大量の燃料が噴射される場合に比べて拡散しやすい。
【0028】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、可変サイクルエンジン、そのエンジンを用いた車両または移動体、運転モード切り換え方法、運転モード切り換え装置、その装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次の順序に従って、本発明の実施例について説明する。
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
A−2.シリンダヘッドとピストンの構造:
A−3.運転領域による運転モードの切り換え:
A−4.4サイクル自着火モードにおけるバルブ開閉タイミングと燃料噴射:
A−5.2サイクル自着火モードにおけるバルブ開閉タイミングと燃料噴射:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.第5実施例:
F.第6実施例:
G.変形例:
【0030】
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
図1は、第1実施例のエンジン10の構造を概念的に示した説明図である。第1実施例のエンジン10は、4サイクル運転と、2サイクル運転とを含む複数の運転モードを選択的に実行することができる。「4サイクル運転」(正確には「4ストローク/1サイクル運転」)とは、吸気、圧縮、膨張、排気の4つのピストン行程で1サイクルが構成される運転である。「2サイクル運転」(正確には「2ストローク/1サイクル運転」)とは、掃気・圧縮期間と、膨張行程の2つのピストン行程で1サイクルが構成される運転である。
【0031】
図1では、エンジン10の構造を示すために、燃焼室150のほぼ中央で断面を取って表示している。エンジン10の本体は、シリンダブロック140の上部にシリンダヘッド130が組み付けられて構成されている。このシリンダブロック140とシリンダヘッド130とで、円筒形のシリンダ142が構成されており、このシリンダ142の内部をピストン144が上下に摺動する。シリンダヘッド130のうち、ピストンの往復方向の延長線上でピストンと向かい合う部分が、「天井部」130rである。天井部130rと、ピストン144の頂部と、シリンダ142の側壁と、で囲まれた空間が燃焼室150となる。
【0032】
ピストン144は、コネクティングロッド146を介してクランクシャフト148に接続されており、ピストン144はクランクシャフト148の回転にともなってシリンダ142内を上下に摺動する。
【0033】
シリンダヘッド130には、燃焼室150に吸入空気を取り入れるための吸気通路12と、燃焼室150内の混合気に点火するための点火プラグ136と、燃焼室150内で発生した燃焼ガスを排出するための排気通路16が設けられている。吸気通路12を通ってきた酸素を含む空気は、シリンダヘッド130の天井部130rに設けられた吸気口12oを介して燃焼室150内に流入する。また、燃焼室内の既燃ガスは、天井部130rに設けられた吸気口16oを介して排気通路16から排出される。
【0034】
シリンダヘッド130には、さらに、吸気バルブ132と排気バルブ134とが設けられている。吸気バルブ132および排気バルブ134は、それぞれに電動アクチュエータ162,164によって任意のタイミングで駆動され、ピストン144の動きに同期して吸気口12oおよび排気口16oを開閉する。
【0035】
吸気通路12には、スロットル弁22が設けられている。電動アクチュエータ24を駆動してスロットル弁22を適切な開度に制御することで、燃焼室150内に吸入される空気量を制御することができる。
【0036】
第1実施例のエンジン10は、シリンダヘッド130に設けられた筒内燃料噴射部15を備えている。筒内燃料噴射部15は、燃焼室150内にガソリンを直接噴射するものであり、6個の燃料噴射口を有している。筒内燃料噴射部15は、ガソリンの噴射圧力を変えることで単位時間当たりに噴射するガソリンの量を増減させることができる。ガソリンは図示しないガソリンタンクに蓄えられており、図示しない燃料ポンプで汲み上げられて筒内燃料噴射部15に供給されている。
【0037】
エンジン10の動作は、エンジン制御用ユニット(以下、ECU)30によって制御されている。ECU30は、CPUや、RAM、ROM、A/D変換素子、D/A変換素子などをバスで相互に接続して構成された周知のマイクロコンピュータである。ECU30は、エンジン回転速度Ne やアクセル開度θacを検出し、これらに基づいてスロットル弁22を適切な開度に制御する。エンジン回転速度Ne は、クランクシャフト148の先端に設けたクランク角センサ32によって検出することができる。アクセル開度θacは、アクセルペダルに内蔵されたアクセル開度センサ34によって検出することができる。ECU30は、筒内燃料噴射部15、点火プラグ136などを適切に駆動する制御も司っている。
【0038】
またECU30は、シリンダブロック140に設けられた圧力センサ23によって、燃焼室150内の燃焼状態を検出することができる。圧力センサ23によって所定のしきい値以上に圧力が上昇しなかったことを検出した場合には、ECU30は、燃焼異常を解消するように運転状態を変更する。エンジンの運転については後述する。なお、圧力センサ23に代えて、燃焼室150内の温度を検出する温度センサ27を、シリンダブロック140あるいはシリンダヘッド130に設けることとしてもよい。その場合には、温度センサ27が所定のしきい値以上に温度が上昇しなかったことを検出したときに、ECU30は、燃焼異常を解消するように運転状態を変更する。
【0039】
また、ECU30は、エンジン回転速度Ne やアクセル開度θacを検出し、これらに基づいて4サイクル運転と2サイクル運転とを含む複数の運転モードを切り換える制御も行う。4サイクル運転では、ピストンが2往復する間に1回の割合で、混合気の吸入と燃焼と排気とを行うのに対し、2サイクル運転では、ピストンが1往復するたびに、吸入と燃焼と排気とを行う。ピストン144の動きに同期させて、吸気バルブ132、排気バルブ134を開閉させるタイミングを変更し、また、筒内燃料噴射部15、点火プラグ136などを駆動するタイミングを切り換えてやれば、4サイクル運転と2サイクル運転とを切り換えることができる。
【0040】
具体的には、ECU30は、エンジン回転速度Ne やアクセル開度θacに基づいて、吸気バルブ132、排気バルブ134の開閉タイミングを設定する。そして、それら吸気バルブ132および排気バルブ134の開閉タイミングは、電磁駆動弁駆動回路40に伝えられる。電磁駆動弁駆動回路40は、それらの値にしたがって、電動アクチュエータ162,164を適切なタイミングで駆動する。
【0041】
A−2.シリンダヘッドとピストンの構造:
図2は、ピストン144の頂部144hの構造と燃料噴射の状態を示す平面図である。ピストン144は、その往復方向に垂直な断面が、略円形の形状を有している。ここで、「略円形」とは、真円以外に、真円からわずかにつぶれた形状をも含み、具体的には、短径の寸法が長径の寸法の98%〜100%である形状を含む。そして、ピストン144の頂部144hには、ピストン144の略円形の中心点を中心として、60°ずつの角度で6個(筒内燃料噴射部15の噴射口の数と同数)の凹部144pが設けられている。それぞれの凹部144pは凹曲面で構成されており、ピストン144の略円形の中心点から等しい距離にある。なお、ここで、略円形の断面を有するピストン144の「中心点」とは、ピストンがシリンダに組み付けられたときにシリンダの中心軸と一致する地点である。
【0042】
図3は、シリンダヘッド130およびピストン144の頂部144hの構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)である。ピストン144は、図2および図3に示すように、各凹部144pからシリンダ142の中心軸に向かう向きに設けられた溝部144qを有している。各溝部144qは、シリンダ142の中心軸の位置においてもっとも浅く、各凹部144pとの接続部分においてもっとも深くなるように設けられている。ただし、図3に示すように、溝部144qの各凹部144pとの接続部分の深さよりも、各凹部144pの深さの方が深い。なお、ここで凹部または溝部の「深さ」は、ピストン144のクランクシャフト148から最も遠い部分から、ピストンの往復方向に沿って、クランクシャフト148の向きにむけて測る寸法である(図1参照)。
【0043】
図3に示すように、点火プラグ136は、シリンダの中心軸Oに対して吸気口12oが設けられている側の位置に設けられている。そして、図2および図3に示すように、点火プラグ136は、点火のための火花を飛ばす電極136sが凹部144pの一つと向かい合う位置に来るように、ピストン144およびシリンダヘッド130に対して、取り付けられている。
【0044】
また、筒内燃料噴射部15は、燃料Fを噴射する各噴射口がシリンダ142の中心軸の近傍に位置するように、シリンダヘッド130の天井部130rに対して取り付けられている。ここで「シリンダの中心軸の近傍」とは、ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、シリンダの中心軸を中心としシリンダの半径の1/3の半径を有する円の中に含まれる範囲をいう。
【0045】
この筒内燃料噴射部15は、凹部144pと同数、すなわち6個の燃料噴射口を有しているホールノズルである。そして、図2および図3に示すように、各燃料噴射口は、ピストン144がもっとも下降したときの近傍(下死点前10°〜下死点後10°)で、すなわちシリンダヘッド130からもっとも遠ざかったときに、各燃料噴射口から噴射された燃料Fが各凹部144p内に向けて噴射されるように、構成されている。
【0046】
A−3.運転領域による運転モードの切り換え:
図4は、エンジンの運転条件によって異なる運転モードが設定されているマップを示す説明図である。図4の横軸は、クランクシャフト148の単位時間当たりの回転数Neを表す。そして、図4の縦軸は、ECU30がアクセル開度などに基づいて設定する、エンジン10に対する要求負荷(要求トルク)Lを表す。ECU30は、図4のマップをROMに記憶しており、そのマップにしたがって運転モードを決定する。
【0047】
ECU30は、低負荷低回転のとき(領域I)および高負荷高回転のとき(領域VI)に、4サイクル運転であって、点火プラグ136で点火を行う4サイクル火花点火モードで運転を行う。そして、中負荷中回転のとき(領域II〜V)に、燃料に自着火を起こさせる自着火モードで運転を行う。また、中負荷中回転の領域(領域II〜V)にあって、比較的低回転の領域(領域II,III)においては、2サイクル運転であって燃料に自着火を起こさせる2サイクル自着火モードによる運転を行い、比較的高回転の領域(領域IV,V)においては、4サイクル運転であって燃料に自着火を起こさせる4サイクル自着火モードによる運転を行う。
【0048】
さらに、比較的低回転の領域II,IIIのうち、比較的低負荷の領域IIにおいて、1サイクル中の燃料を1度に噴射する、第1の2サイクル自着火モードで運転を行う。また、比較的高負荷の領域IIIにおいて、1サイクル中の燃料を2度に分けて噴射する、第2の2サイクル自着火モードで運転を行う。
【0049】
また、比較的高回転の領域IV,Vのうち、比較的低負荷の領域IVにおいて、1サイクル中の燃料を1度に噴射する、第1の4サイクル自着火モードで運転を行う。そして、比較的高負荷の領域Vにおいて、1サイクル中の燃料を2度に分けて噴射する、第2の2サイクル自着火モードで運転を行う。
【0050】
なお、「2サイクル自着火モード」および「4サイクル自着火モード」の名称は、このモードにおいて常に自着火燃焼が起こっていることを示すものではない。すなわち、後述するように、2サイクル自着火モードや4サイクル自着火モードにおいても火花点火燃焼を起こさせる場合がある。
【0051】
自着火燃焼では燃焼室内で短時間にいっきに燃焼が起こる。このため、一般的な火花点火燃焼のような、初期に燃焼した領域が長時間にわたって高温に維持されることによる影響が少ない。さらに、自着火燃焼は、火花点火燃焼が困難な希薄な混合気においても短時間で燃料が燃焼するという特徴を有するため、火花点火燃焼に比べてNOx発生量が著しく低くなる条件が存在する。よって、できるだけ広い運転領域で、このような自着火燃焼を利用する自着火モードによる運転を行うことが好ましい。
【0052】
しかし、要求負荷Lが小さい領域では、燃焼室内に吸入される空気量および燃料量が少ないので、燃焼室内の混合気の圧縮開始時の圧力が低くなる。このため、ピストンで圧縮しても混合気が自着火し難い傾向がある。そこで、要求負荷Lが小さい領域では、4サイクル火花点火モードで運転を行う。
【0053】
また、自着火燃焼では燃焼室内で短時間にいっきに燃焼が起こる。このため、自着火燃焼では、要求負荷Lが大きい領域および回転数が高い領域では、火花点火燃焼の場合に比べて騒音が大きくなる。よって、要求負荷Lが大きい領域および回転数が高い領域では、4サイクル火花点火モードで運転を行う。
【0054】
さらに、中負荷の領域(領域II〜V)においては、自着火モードによる運転を行うが、比較的回転数の低い領域においては2サイクル自着火モードによる運転を行い、比較的高回転の領域では4サイクル自着火モードによる運転を行う。これは、回転数が高くなると、2サイクル運転の掃気期間において十分に既燃ガスを排出し、吸気を行うことが難しくなるためである。
【0055】
A−4.4サイクル自着火モードにおけるバルブ開閉タイミングと燃料噴射:
(1)第1の4サイクル自着火モード:
図5は、第1の4サイクル自着火モード(図4の領域IV参照)において、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図である。図5において、「TDC」はピストンが上死点となるタイミングを示し、「BDC」はピストンが下死点となるタイミングを示している。そして、吸気バルブ132を開くタイミングを「IVO」で表し、吸気バルブ132を閉じるタイミングを「IVC」で表す。そして、吸気バルブ132が開いている区間を、両端に矢印を付した円弧IVで示す。一方、排気バルブ134を開くタイミングを「EVO」で表し、排気バルブ134を閉じるタイミングを「EVC」で表す。そして、排気バルブ134が開いている区間を、両端に矢印を付した円弧EVで示す。
【0056】
図5においては、各バルブの開閉タイミングおよび燃料噴射のタイミングは、ピストン144が上死点と下死点の間を往復する間のクランクシャフト148の回転角度に対応させて、たとえば、上死点前5°、下死点前35°のように表す。図5において、「BTDC」は「上死点前」を表し、「ATDC」は「上死点後」を表す。そして、「BBDC」は「下死点前」を表し、「ABDC」は「下死点後」を表す。
【0057】
図5の4サイクル自着火モードにおいては、ピストン144が上死点前60°のときに排気バルブ134を閉じる(図5のEVC)。このとき、吸気バルブ132は閉じている。そして、ピストン144が上死点TDCを越えて上死点後60°の位置にきたときに吸気バルブ132を開く(図5のIVO)。その間、上死点後45°から吸気バルブ132を開くまでの間の所定の時間区間において、筒内燃料噴射部15から燃料噴射E41が行われる。なお、4サイクル運転において排気バルブ134の閉弁EVCから吸気バルブ132の開弁IVOまでの期間を「負のオーバーラップ」と呼ぶ。その後、ピストン144が下降して下死点BDCを越え、上昇に転じて、下死点後45°の位置にきたときに、吸気バルブ132を閉じる(図5のIVC)。吸気バルブ132が開いており、ピストン144が下降している間に、吸気通路12から吸気が行われる(吸気行程)。
【0058】
その後、吸気バルブ132と排気バルブ134がともに閉じた状態で、ピストン144がさらに上昇して燃焼室150内の燃料ガスを圧縮し(圧縮行程)、上死点(TDC)近傍において燃焼室150内で燃料の自着火が起きる。
【0059】
自着火により燃焼室150内の燃料が燃えてピストン144を押し下げ(爆発行程)、ピストン144が下死点前45°の位置にきたときに、排気バルブ134を開く(図5のEVO)。そして、ピストン144が下降から上昇に転じ、ピストン144が上死点前60°の位置に来たときに排気バルブ134を閉じる(図5のEVC)。排気バルブ134が開いており、ピストン144が上昇している間に、排気通路16から既燃ガスの排出が行われる(排気行程)。以下、同様に運転サイクルが繰り返される。
【0060】
図6は、4サイクル運転における燃料噴射E41の際の燃料の流れを示した説明図である。筒内燃料噴射部15は、ピストン144が下死点前10°〜下死点後10°にあるときに燃料を凹部144pに噴射できるように構成されている。よって、上死点後45°〜60°の間に行われる燃料噴射E41においては、燃料は、矢印F42に示すように、凹部144pではなく溝部144qに噴射される(図3参照)。そして、噴射された燃料の一部は霧状のまま、矢印F44に示すように、溝部144qに沿って凹部144pに移動する。また、他の一部は液体として溝部144qに付着し、凹部144pに流入する。その後、霧状の燃料は、矢印F46で示すように、凹部144pの凹曲面に沿ってシリンダヘッド130の方向に向かう。なお、燃料噴射E41の際には、ピストン144は、矢印Apで示すように、下降中である(図5参照)。
【0061】
図7は、4サイクル自着火モードの運転における燃料の拡散と蒸発を示した説明図である。燃料が噴射された後、吸気バルブ132が開き、矢印A41に示すように、燃焼室150内に空気が導入される。この空気の流れにより、凹部144pの凹曲面に沿ってシリンダヘッド130の方向に向かった燃料(図6において矢印F46で示した。)は、燃焼室150内で十分に拡散される。図中の黒点は、拡散される燃料を表す。一方、凹部144p内に液体として残っていた燃料Frは、矢印F48に示すように、少しずつ蒸発する。
【0062】
図8は、燃焼室150内の比較的薄い混合気G41と比較的濃い混合気G42の様子を示す説明図である。図8の段階では、吸気バルブ132はすでに閉じられており、ピストン144は、矢印Apで示すように、上昇に転じている(図5参照)。図6において矢印F46で示した燃料は、図7に示したように、吸気によって燃焼室150内で十分に拡散され、図8の段階では比較的薄い混合気G41を形成している。一方、凹部144pから蒸発した燃料(図7において矢印F48で示した。)は、矢印F46の燃料に比べて遅れて気化するため、拡散が進まず比較的濃い混合気G42を形成する。混合気の濃淡は、図8において、黒点の密度で表現した。
【0063】
図9は、燃焼室150内における自着火の様子を示す説明図である。白い星印は、発火した燃料を示す。図8の状態の後、さらにピストンが上昇すると、図9に示すように、比較的濃い混合気G42において自着火が起こる。そして、燃焼室150内の比較的薄い混合気G41も燃焼する。
【0064】
(2)第2の4サイクル自着火モード:
図10は、第2の4サイクル自着火モード(図4の領域V参照)において、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図である。図中の各表記は、図5と同様である。第2の4サイクル自着火モードにおいては、上死点後45°から吸気バルブ132を開くまでの間の所定の時間区間中に行われる燃料噴射E41に加えて、下死点後90°〜95°の間の所定の時間区間中において、燃料噴射E42を行う。燃料噴射E42において噴射する燃料は、燃料噴射E41において噴射する燃料よりも少ない。なお、1サイクル中で噴射する燃料の量は、負荷Lが大きいほど多くなる(図4参照)。
【0065】
第2の4サイクル自着火モードにおいても、燃料噴射E41における燃料の流れは、図6および図7に示した第1の4サイクル自着火モードの場合と同様である。ただし、負荷が異なるため、燃料の噴霧量は異なっている(図4参照)。
【0066】
図11は、4サイクル運転における燃料噴射E42の際の燃料の流れを示した説明図である。下死点後90°〜95°の間に行われる燃料噴射E42においては、燃料は、図11の矢印F52に示すように、溝部144qに噴射され、矢印F54に示すように、一部は霧状のまま溝部144qに沿って凹部144pに移動する。その後、霧状の燃料は、矢印F56に示すように、凹部144pの凹曲面に沿ってシリンダヘッド方向130のに向かう。
【0067】
また、他の一部は液体として溝部144qに付着し、凹部144pに流入する。凹部144p内に液体として誘導された燃料は、その後、蒸発する。なお、燃料噴射E42の際には燃料噴射E41のときに比べてピストン144が筒内燃料噴射部15に近づいている。このため、燃料噴射E42においては、噴射した燃料のうち、液体として溝部144qに付着し、凹部144pに流入する燃料(図11においてFrで示す。)の割合は、燃料噴射E41の場合に比べて高い。
【0068】
図12は、燃焼室150内の比較的薄い混合気G41と比較的濃い混合気G43の様子を示す説明図である。燃料噴射E42が行われる際には、図11に示すように、燃焼室150中にはすでに比較的薄い混合気G41が形成されている。このため、燃料噴射E42において噴射された燃料は、燃料噴射E41において噴射された燃料に比べて気化されにくく、燃焼室150中に拡散しにくい。また、燃料噴射E42は燃料噴射E41よりも後に行われるため、ピストン144が上死点に達するまでの時間が短い。よって、この点からも、燃料噴射E42において噴射された燃料は、燃焼室150中に拡散しにくい。よって、燃料噴射E42において噴射された燃料は、凹部144p近傍において、比較的濃い混合気G43を形成する。混合気G43を形成している燃料の一部は、燃料噴射E41の燃料であり、他の一部は、燃料噴射E42の燃料である。
【0069】
その後、さらにピストンが上昇に転ずると、比較的濃い混合気G43において自着火が起こる。そして、燃焼室150内の混合気G41も燃焼する。
【0070】
(3)プラグによる点火:
図13は、燃焼不良を検出した場合の燃料噴射のタイミングを示す説明図である。燃焼室150において予定した燃焼が起こらなかった場合には、燃焼室内の圧力は予定した燃焼が起こった場合の値まで上昇しないことがある。ECU30は、第1および第2の4サイクル自着火モードにおいて、1サイクル中に燃焼室150内の圧力が所定のしきい値に達しなかった場合には、そのシリンダの次の1サイクルにおいては、圧縮期間中期の所定の時間区間中に、1サイクルで燃焼されるすべての燃料を噴射する燃料噴射E43を行う。通常の状態では、燃料は吸気期間前のみで噴射するか(図5参照)、吸気期間前と、圧縮期間中期とに分けて噴射する(図10参照)。よって、燃料噴射E43において圧縮期間中期に1サイクルで燃焼されるすべての燃料を噴射することによって、圧縮期間中期に噴射される燃料は大幅に増加する。なお、「圧縮期間中期」とは、圧縮期間の下死点後75°〜115度の区間を意味する。そして、上死点前30°のタイミングで点火プラグ136よる点火EGを行う。
【0071】
(4)効果:
本実施例では、ピストンは、頂部に凹部144pと、凹部144pに接続された溝部144qとを有している。このため、比較的濃い混合気を凹部144p近傍に形成することができる。よって、まず比較的濃い混合気から自着火をおこさせることで、均一に混合した場合には自着火が起こらないような、空気過剰率が高い混合気においても、安定して自着火を行わせることができる。
【0072】
なお、本実施例においては、凹部144p近傍に形成される比較的濃い混合気の空気過剰率が1より大きくても、自着火が生じる。よって、燃焼を起こさせるために、部分的に、理論空燃比と同じかそれよりも濃い、すなわち、空気過剰率が1以下である混合気を形成する場合に比べて、燃焼によって生じるNOxの量を少なくすることができる。
【0073】
また、本実施例においては、ピストン144に、凹部144pに接続された溝部144qが設けられている。このため、溝部144qに向けて噴射された燃料は溝部144qを伝って凹部144pに流れる。したがって、ピストン144がBDC近傍にないときに噴射した燃料も、凹部144pに導くことができる。
【0074】
また、本実施例では、凹部144pは、ピストン144の頂部144hにおいて、シリンダの中心軸を中心として均等な角度で配されている。このため、燃焼室150内において均等な空間に一箇所ずつ比較的濃い混合気を形成することができる。よって、自着火による燃焼を、燃焼室150内において均等に行わせることができる。また、筒内燃料噴射部15は、凹部144pと同数の噴射口を備えている。このため、各凹部144pに向けてそれぞれ異なる噴霧束で燃料を噴射することができる。
【0075】
本実施例においては、筒内燃料噴射部15は、各噴射口がシリンダ142の中心軸の近傍に位置するように設けられている。よって、ピストン頂部に設けられた各凹部144pおよび各溝部144qに対して、容易に燃料を噴射することができる。すなわち、ピストン144の頂部の構造に妨げられて、燃料が凹部に到達しない可能性が低い。また、溝部144qは、ピストン144の頂部において、燃料噴射部の噴射口と向かい合う中央から各凹部144pに向けて放射状に設けられている。そして、筒内燃料噴射部15は、ピストン144がもっとも下降したときに、燃料が各凹部144p内に向けて噴射されるように、構成されている。このため、筒内燃料噴射部15は、ピストンが任意の位置にあるときに、燃料を溝部144qまたは凹部144pに噴射することができる。
【0076】
シリンダ142の内壁(シリンダライナ)に付着した燃料や、シリンダ142の内壁の近傍にある燃料は、シリンダに熱を奪われるために、燃焼しにくい。また、シリンダ142の内壁とピストン144側面の間に入り込んだ燃料も、同様に燃焼しにくい。しかし、本実施例においては、図6に示すように、噴射された燃料は、溝部144qおよび凹部144pの内壁の凹曲面に沿って移動する。このため、燃料は、シリンダ142の内壁近傍の領域に移動しにくく、また、シリンダ142の内壁とピストン144の間に入り込みにくい。よって、本実施例のような態様においては、未燃燃料が生じにくい。また、本実施例においては、特に、凹部は凹曲面で構成されているため、より効果的である。
【0077】
さらに、4サイクル自着火モードにおいては、排気行程において排気バルブ134を閉じた後、吸気バルブ132を開いて吸気を開始している(図5および図10参照)。すなわち、サイクル中に、いわゆる「負のオーバーラップ」を有している。そして、その「負のオーバーラップ」の間に燃料を噴射している。このため、4サイクル運転モードにおいては、前のサイクルで生じた高温の既燃ガスが残留している燃焼室150に、燃料を噴射することができる。よって、図6において矢印F46で示し、図8においてG41で示した比較的薄い混合気を、燃焼室150内において十分に気化させ、拡散させることができる。
【0078】
第2の4サイクル自着火モードにおいては、燃料噴射を、燃料噴射E41と、下死点後90°〜95°の間の燃料噴射E42とに分けて行う。すなわち、第1の4サイクル自着火モードに比べて、より遅い時期にも燃料の噴射を行う。このため、燃焼室150内の燃料全体の自着火のタイミングを遅らせることができ、燃焼室150内の燃料全体が燃焼するのにかかる時間を長くすることができる。その結果、燃焼の際の騒音を低減することができる。よって、より高負荷の領域においても自着火による運転を行うことができる。言い換えれば、図4において、4サイクル自着火モードによる運転を行う領域Vを、より高負荷側に広げることができる。
【0079】
また、第2の4サイクル自着火モードにおいては、負のオーバーラップ中に行う燃料噴射E41によって、比較的薄い均一な混合気G41を形成することができ、圧縮期間中期に行う燃料噴射E42によって、比較的濃い混合気G43を形成することができる。よって、全体として空気過剰率が高い場合にも、安定して自着火を行わせることができる。
【0080】
前サイクルの既燃ガス(内部EGRガス)を利用する自着火運転においては、一度失火が起こると、そのサイクルでは高温の既燃ガスが生じないため、次のサイクルでも失火が生じやすい。しかし、本実施例では、失火が起こった場合には、図13に示すように、次のサイクルにおいて点火プラグ136による点火を行う。このため、失火した次のサイクルにおいては、点火プラグ136を使用して、高い確度で燃焼を起こさせることができる。その結果、更に次のサイクルでは、前のサイクルの既燃ガスを利用することができ、高い確率で自着火を起こさせることができる。そして、その後、再び安定した燃焼を起こさせやすい。
【0081】
また、本実施例では、点火プラグ136は、その電極136sが、凹部144pの一つと向かい合う位置に来るように、ピストン144およびシリンダヘッド130に対して、取り付けられている。よって、比較的濃い混合気中で点火を行うことができ、空気過剰率が高い場合にも、比較的薄い混合気中で点火を行う場合に比べて、より確実に燃料に着火することができる。
【0082】
さらに、本実施例では、点火プラグ136による点火を行う際には、そのサイクルで燃焼されるすべての燃料を、圧縮期間中期で燃焼室150内に噴射している(図13参照)。このため、凹部144p近辺には、混合気G42(図8および図9に示す、第1の4サイクル自着火モードの燃焼参照。)やG43(図12に示す、第2の4サイクル自着火モードの燃焼参照。)よりも濃い混合気が形成される。よって、この点からも、空気過剰率が高い場合にも、より確実に燃料に点火を行うことができる。
【0083】
A−5.2サイクル自着火モードにおけるバルブ開閉タイミングと燃料噴射:
(1)第1の2サイクル自着火モード:
図14は、第1の2サイクル自着火モードに(図4の領域II参照)おいて、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図である。図中の各表記は、図5と同様である。図14に示すように、第1の2サイクル自着火モードにおいては、ピストン144が下降して下死点前65°の位置にきたときに排気バルブ134を開く。このとき、吸気バルブ132は閉じている。そして、ピストン144がさらに下降して下死点前40°の位置にきたときに吸気バルブ132を開く。その後、ピストン144が下降から上昇に転じて下死点後25°の位置にきたとき、排気バルブ134を閉じる。
【0084】
ピストン144が下死点前40°から下死点後25°にある間、吸気通路12から吸気が行われ、排気通路16から既燃ガスの排出が行われる。すなわち、掃気が行われる。なお、2サイクル運転で掃気を行う際には、図示しない過給器を用いて吸気の圧力(給気圧)を上昇させるのが一般的である。この掃気期間中に、下死点前10°〜下死点後10°の間の所定の時間区間において、筒内燃料噴射部15から燃料噴射E21が行われる。
【0085】
その後、ピストン144が下死点後40°の位置にきたときに、吸気バルブ132を閉じる。そして、ピストン144が上昇して燃焼室150内の空気および燃料を圧縮すると、上死点TDC近辺で燃料が自着火を起こし、ピストン144を押し下げる。以下、同様に運転サイクルが繰り返される。
【0086】
図15は、2サイクル運転における燃料噴射E21の際の燃料の流れを示した説明図である。筒内燃料噴射部15は、ピストンが下死点前10°〜下死点後10°にあるときに燃料を凹部144pに噴射できるように構成されている。よって、下死点前10°〜下死点後10°の間に行われる燃料噴射E21においては、燃料は、矢印F62に示すように、凹部144pに噴射される。そして、噴射された燃料の一部は、矢印F66に示すように、凹部144pの凹曲面に沿ってシリンダヘッド130の方向に向かう。他の一部は液体として凹部144pの内面に付着する。
【0087】
燃料噴射E21は、図14に示すように、掃気期間において行われる。よって、燃料噴射E21が行われているときには、矢印A21に示すように、吸気口から燃焼室150内に空気が流入する。そして、矢印A22に示すように、排気口から燃焼室150内の既燃ガスが流出する。この空気の流れにより、凹部144pの凹曲面に沿ってシリンダヘッド130の方向に向かった燃料(図15において矢印F66で示した。)は、燃焼室150内で十分に拡散される。また、燃焼室150内に残留している高温の既燃ガスによって、燃料が気化される。その結果、燃焼室150内において比較的薄い混合気G21が形成される。なお、図中の黒点は、気化し、拡散される燃料を表す。
【0088】
図16は、2サイクル自着火モードの運転における燃料の拡散と蒸発を示した説明図である。凹部144p内に液体として残っていた燃料Frは、矢印F68に示すように、少しずつ蒸発する。その結果、比較的濃い混合気G22(図示せず)が形成される。その後、さらにピストンが上昇すると、図8および図9に示した4サイクル自着火モードの場合と同様に、比較的濃い混合気G22において自着火が起こる。そして、燃焼室150内の他の混合気も燃焼する。
【0089】
(2)第2の2サイクル自着火モード:
図17は、第2の2サイクル自着火モード(図4の領域III参照)において、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図である。図中の各表記は、図5と同様である。第2の4サイクル自着火モードにおいては、下死点前10°〜下死点後10°の間の所定の時間区間中に行われる燃料噴射E21に加えて、下死点後90°〜95°の間の所定の時間区間中において、燃料噴射E22を行う。燃料噴射E22において噴射する燃料は、燃料噴射E21において噴射する燃料よりも少ない。なお、4サイクル自着火モードと同様、1サイクル中で噴射する燃料の量は、負荷Lが大きいほど多くなる。
【0090】
燃料噴射E21における燃料の流れは、図15および図16に示した第1の2サイクル自着火モードの場合と同様である。そして、燃料噴射E22における燃料の流れは、図11および図12に示した第2の4サイクル自着火モードの場合と同様である。ただし、噴射される燃料の量は、負荷に応じて異なる。
【0091】
(3)プラグによる点火:
ECU30は、4サイクル自着火モードの場合と同様、第1および第2の2サイクル自着火モードにおいても、失火が起こったと判断できる場合には、そのシリンダの次の1サイクルにおいては、圧縮期間中期(下死点後80°〜100°)の所定の時間区間中に、1サイクルで燃焼されるすべての燃料を噴射する。そして、上死点前30°のタイミングで点火プラグ136よる点火を行う(図13参照)。
【0092】
(4)効果:
本実施例では、筒内燃料噴射部15の各燃料噴射口は、ピストン144がもっとも下降したとき、すなわち、ピストン144がBDC近傍(下死点前10°〜下死点後10°)にあるときに、各燃料噴射口から噴射された燃料が各凹部144p内に向けて噴射されるように、構成されている。よって、燃料噴射E21の燃料は、凹部144p内に噴射される。その結果、凹部144p近傍において、自着火しやすい比較的濃い混合気を作ることができる。よって、空気過剰率が高い場合にも、安定して自着火を行わせることができる。
【0093】
また、2サイクル自着火モードにおいては、掃気期間中に燃料噴射E21を行っている。このため、前のサイクルで生じた高温の既燃ガスが残留している燃焼室150に、燃料を噴射することができる。よって、図15において矢印F66で示した比較的薄い混合気を、燃焼室150内において十分に気化させ、拡散させることができる。
【0094】
第2の2サイクル自着火モードにおいては、燃料噴射を、燃料噴射E21と、下死点後90°〜95°の間の燃料噴射E22とに分けて行う。このため、第2の4サイクル自着火モードの場合と同様の理由から、燃焼の際の騒音を低減することができる。よって、図4において、2サイクル自着火モードによる運転を行う領域IIIを、より高負荷側に広げることができる。
【0095】
また、第2の4サイクル自着火モードにおいては、掃気期間中に行う燃料噴射E21によって、比較的薄い均一な混合気を形成することができ、圧縮期間中期に行う燃料噴射E22によって、比較的濃い混合気を形成することができる。よって、空気過剰率が高い場合にも、安定して自着火を行わせることができる。
【0096】
B.第2実施例:
図18は、第2実施例のシリンダヘッド130bおよびピストン144bの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)である。第2実施例は、第1実施例とは、燃料噴射部と点火プラグの位置が異なっており、これに応じてピストン頂部の形状も変更されている。すなわち、第2実施例においては、吸気通路12内に吸気管燃料噴射部15bが設けられており、シリンダ142の側壁に筒内燃料噴射部15cが設けられている。筒内燃料噴射部15cは、シリンダヘッド130b上であって、シリンダの中心軸Oに対して吸気口12oが設けられている側の位置に設けられている。そして、点火プラグ136bは、シリンダ142の中心軸近傍に電極136sがくるように、シリンダヘッド130の天井部130rに対して取り付けられている。
【0097】
なお、筒内燃料噴射部15cは、シリンダヘッド130において、燃焼室の内側壁近傍から燃料を噴射できる位置に設けられている。ここで、「燃焼室の内側壁近傍」とは、シリンダヘッドの天井部130rをピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、「シリンダの内側壁からシリンダの半径方向内側にシリンダの半径の1/5だけ近寄った位置」から「シリンダの内側壁からシリンダの半径方向外側にシリンダの半径の1/5だけ離れた位置」までの範囲を意味する。その際、燃料噴射部がシリンダヘッドに設けられているか、シリンダブロックに設けられているかは問わない。
【0098】
図19は、第2実施例におけるピストン144bの頂部144hの構造と燃料噴射の状態を示す平面図である。第2実施例においては、ピストン144bの頂部144hには、ピストン144がシリンダに組み付けられたときにシリンダ142の中心軸の近傍にくる位置に、点火凹部144rが設けられている。なお、「凹部がシリンダの中心軸の近傍に設けられている」とは、ピストンの頂部をピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、シリンダの中心軸を中心としシリンダの半径の1/3の半径を有する円の中に、凹部の射影の面積の75%以上が含まれることを意味する。
【0099】
また、ピストン144bの頂部の外周近傍には、他の4個の凹部144sが設けられている。4個の凹部144sは、筒内燃料噴射部15cとシリンダ142の中心軸Oを結ぶ線に対して対称の位置および形状に設けられている。図19においては、筒内燃料噴射部15cとシリンダ142の中心軸Oを結ぶ線、および筒内燃料噴射部15cとシリンダ142の中心軸Oを結ぶ線に垂直でシリンダ142の中心軸Oを通る線を、一点鎖線で示す。
【0100】
また、各凹部144r、144sには、溝部144tがそれぞれ設けられている。これらの溝部144tは、ピストン144bの往復方向に垂直な平面に投影したときに各凹部144r,144sから筒内燃料噴射部15cの位置に向かう向きに伸びている。
【0101】
筒内燃料噴射部15cは、5個の凹部144r,144sと同数、すなわち5個の燃料噴射口を有している。そして、図18および図19に示すように、各燃料噴射口は、ピストン144がもっとも下降したとき、各燃料噴射口から噴射された燃料が各凹部144r,144s内に向けて噴射されるように、構成されている。さらに、筒内燃料噴射部15cの各燃料噴射口は、筒内燃料噴射部15cから遠い凹部に燃料を噴射するものほど、小さい噴射角で燃料を噴射するように設けられている。ここで、「噴射角」とは、一つの噴射口から噴射される燃料の広がりの角度を意味する。第2実施例のエンジンの他のハードウェア構成は、第1実施例のエンジンと同様である。
【0102】
第2実施例のエンジンの運転の仕方は、第1実施例のエンジンとほぼ同様である。ただし、4サイクル火花点火モードを行う際(図4の領域IおよびVI)には、吸気管燃料噴射部15bのみから燃料を噴射する。また、4サイクル自着火モードを行う際(図4の領域IVおよびV)には、筒内燃料噴射部15cのみから燃料を噴射する。そして、2サイクル自着火モードを行う際(図4の領域IIおよびIII)には、掃気期間中に行う燃料噴射E21は、吸気管燃料噴射部15bから行い、圧縮期間中に行う燃料噴射E22は、筒内燃料噴射部15cから行う。第2実施例のエンジンの運転についての他の点は、第1実施例のエンジンの運転と同様である。
【0103】
第2実施例においては、吸気管に設けられた吸気管燃料噴射部15bを備えている。このため、2サイクル自着火モードにおいて掃気期間中に行う燃料噴射E21によって噴射する燃料を、空気とともに燃焼室150に導入することができる。よって、燃料噴射E21によって噴射された燃料を、燃焼室150中で十分に拡散させることができる。
【0104】
また、第2実施例においては、筒内燃料噴射部15cは、筒内燃料噴射部15cから遠い凹部ほど、小さい噴射角で燃料を噴射する複数の噴射口を有している。このため、筒内燃料噴射部15cから遠い凹部についても、凹部の外に燃料が噴射されてしまう可能性が低い。
【0105】
さらに、第2実施例のピストン144bは、各凹部144r、144sから筒内燃料噴射部15cに向かう向きに溝部144tを有している。このため、ピストンが最も下降したとき以外のタイミングで筒内燃料噴射部15cから燃料を噴射しても、噴射された燃料は溝部144tに沿って凹部144r、144sに導入される。このため、噴射された燃料の一部は凹部144r、144s近傍にとどまり、比較的濃い混合気を形成し、他の一部は凹部144r、144sの内壁に沿って、燃焼室内に拡散する。その結果、圧縮の際に、凹部144r、144s近傍の比較的濃い混合気からまず自着火を起こさせ、その後、燃焼室内全体に均等拡散した混合気に、均等に自着火を起こさせることができる。よって、燃焼によって生じるNOxの量を低減することができる。
【0106】
また、第2実施例のエンジンは、シリンダ142の中心軸の近傍に設けられた点火凹部144rと向かい合う位置に、点火プラグ136bの電極がくるように、点火プラグ136bが設けられている。このため、点火プラグ136bによって点火を行う場合に、炎または既燃ガスの圧力は均等に燃焼室内に伝播する。また、凹部144r,144sは、筒内燃料噴射部15cとシリンダ142の中心軸を結ぶ線に対して対称の位置および形状に設けられている。このため、各凹部で形成される混合気が自着火して生じた火炎または既燃ガスの圧力が、均等に燃焼室150内に伝播する。よって、燃焼室内全体に均等拡散した混合気に、均等に自着火を起こさせることができ、燃焼によって生じるNOxの量を低減することができる。
【0107】
C.第3実施例:
図20は、第3実施例におけるピストン144cの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)である。第3実施例のエンジンにおいては、筒内燃料噴射部15dは、燃焼室の内側壁近傍から燃料を噴射できる位置に設けられており、吸気管燃料噴射部は設けられていない。筒内燃料噴射部15dは、シリンダヘッド130c上であって、シリンダの中心軸Oに対して吸気口12oが設けられている側の位置に設けられている。第3実施例のシリンダヘッド130cについての他の構成は、第2実施例のシリンダヘッド130bと同様である。
【0108】
図21は、第3実施例のシリンダヘッド130cおよびピストン144cの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図である。図21の表記は、図19と同様である。第3実施例のピストン144cは、第2実施例と同様に、頂部に5個の凹部144u,1144v,144wを有する。シリンダ142の中心軸近傍には、点火凹部144uが設けられている。そして、ピストン144cの外周近傍であって吸気バルブ132に近い側には、2個の凹部144vが設けられており、排気バルブ134に近い側にも、2個の凹部144wが設けられている。なお、「ピストンの外周近傍」とは、ピストンの頂部をピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、ピストンの頂部の範囲内であって、シリンダの中心軸を中心としシリンダの半径の1/3の半径を有する円の外側にある領域をいう。そして、「凹部がピストンの外周近傍に設けられている」とは、凹部をピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、「ピストンの外周近傍」に、凹部の射影の面積の75%以上が含まれることを意味する。周囲にある4個の凹部144v,144wは、筒内燃料噴射部15cとシリンダ142の中心軸を結ぶ線に対して対称の位置および形状に設けられている。
【0109】
凹部144vは、上死点にあるピストン144cと全開状態にある吸気バルブ132とが干渉しないような形状に設けられている。また、凹部144wは、上死点にあるピストン144cと全開状態にある排気バルブ134とが干渉しないような形状に設けられている。第3実施例のエンジンの他の構成は、第2実施例と同様である。また、第3実施例のエンジンの運転は、第1実施例のエンジンと同様である。なお、図20においては、シリンダの中心軸を示す一点鎖線Oの左側には、凹部144vの断面を破線で示し、右側には、凹部144wの断面を破線で示している。凹部144v、144wは、いずれも底面としてピストンの往復方向に垂直で円形の平面を有している。図20で示す凹部144v、144wの断面は、それぞれの底面の円の中心を含みシリンダの中心軸に平行な面Ls1,Ls2(図21参照)における断面である。
【0110】
ところで、従来から、ピストンには、吸気バルブや排気バルブと干渉しないように、「逃げ」のための凹部、すなわちバルブリセスが設けられることがある。すなわち、「バルブリセス」とは、ピストン頂部に設けられる凹部であって、全開状態にある吸気バルブおよび排気バルブと上死点にあるピストンとが干渉しないような形状に設けられる凹部である。仮に、このバルブリセスと、燃料を拡散しまたは滞留させるための凹部とを、それぞれの機能の要請に基づいて形成すると、ピストンの形状が複雑になる。その結果、ピストンの体積に対する表面積の比が大きくなって、燃焼の際の冷却損失が増大する。しかし、第3実施例のピストン144cにおいては、燃料を拡散し、または滞留させるための凹部144v、144wが、それぞれ吸気バルブ132、排気バルブ134と干渉しないような形状に設けられている。このため、各バルブとピストンの干渉防止ならびに燃料の拡散および滞留という要請を満たしつつ、燃焼の際の冷却損失を小さくすることができる。その結果、燃料を燃焼させることによって得られるエネルギーを、効率的に仕事として取り出すことができる。
【0111】
D.第4実施例:
図22は、第4実施例のシリンダヘッド130dおよびピストン144dの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)である。第3実施例との相違点は、シリンダヘッドの天井部の形状と、ピストン頂部の形状である。第4実施例のシリンダヘッド130dにおいては、燃焼室150を構成する天井部130rのうち、吸気口12oの外周を形成している天井部分Piと、排気口16oの外周を形成している天井部分Peとが互いに向かい合うような傾斜を有しており、それらのなす角度が他の実施例よりも小さい。その結果、天井部分PiとPeに挟まれた天井部分Pm(「天井頂部Pm」と呼ぶ。)は、他の実施例よりも奥まっており、クランクシャフト148から遠くなっている(図1参照)。天頂部分Pmは、図22において紙面に垂直な方向に尾根のような形状を有する。このような燃焼室の形式を、ペントルーフ型という。
【0112】
点火プラグ136dは、天頂部分Pmの、シリンダ142の中心軸近傍に設けられている。また、筒内燃料噴射部15eは、第3実施例と同様に、燃焼室150の内側壁近傍に設けられている。
【0113】
図23は、第4実施例におけるピストン144dの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図である。第4実施例のピストン144dは、頂部に3個の凹部144y,144zを有する。各凹部を構成する曲面は、球面の一部である。シリンダ142の中心軸Oの近傍には、点火凹部144yが設けられている。そして、点火凹部144yを挟んで2個の凹部144zが設けられている。2個の凹部144zは、筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心軸Oを結ぶ線Lmに対して対称の位置および形状に設けられている。筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心軸Oを結ぶ線Lmを、左右方向の一点鎖線で示す。
【0114】
凹部144y、144zは、筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心軸Oを結ぶ線Lmに対して垂直な方向に沿って並んでいる。いいかえれば、3個の凹部144y、144zは、天頂部分Pmと向かい合うように配されている。
【0115】
前述したように、天頂部分Pmは、図22において紙面に垂直な方向に尾根のような形状で分布する。ここで、シリンダ142の中心軸Oを含む平面であって燃焼室150の断面積を最も大きくする基準平面PR1を規定すると、この平面PR1は、図23に破線で示した位置になる。すなわち、筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心を結ぶ線Lmに対して垂直な面となる。この基準平面PR1に平行な二つの平面Pd1,Pd2で仮想的にピストンの頂部144hを三つの領域A1〜A3に分割する。その際、これらの頂部領域A1〜A3をシリンダ142の中心軸Oに垂直な平面(図23において紙面に平行な平面)に投影したとき、シリンダ142の中心軸Oを通り基準平面PR1と垂直な方向の直線Lmに沿って測った三つの頂部領域A1〜A3の寸法L1,L2,L3が1:1:1となるように、平面Pd1,Pd2を規定する。
【0116】
これらの三つの頂部領域A1,A2,A3のうち、頂部領域A2は、図22に示すように、天頂部分Pmと向かい合う。このため、ピストン144dの往復方向に沿った頂部領域A2から天井部130rまでの平均距離は、他の頂部領域A1,A3から天井部130rまでの平均距離に比べて遠い。ピストン144dの頂部に設けられた3個の凹部144y、144zは、図23に示すように、頂部領域A2に設けられている。
【0117】
また、第4実施例のピストン144dの頂部144hには、三つの凹部144y,144zに共通する一つの溝部144oが設けられている。この溝部144oは、ピストン144dの往復方向に垂直な平面に投影したときの筒内燃料噴射部15eの位置から三つの凹部144y,144zに向けて略三角形状に広がった形状を有している。第4実施例のエンジンの他の点は、第3実施例のエンジンと同様である。
【0118】
仮に、3個の凹部が、筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心を結ぶ直線Lmに沿って配されていたとすると、各凹部で形成された比較的濃い混合気で発火が起こったときに、火炎や既燃ガスの圧力は、天井部分Piの下部や天井部分Peの下部には比較的早期に達するものの、天頂部分Pmには比較的遅れて到達することになる(図22参照)。このため、燃焼にばらつきが生じ、また、燃焼時間も長くなる。
【0119】
しかし、第4実施例では、3個の凹部144y、144zは、凹部144y、144zは、筒内燃料噴射部15eとシリンダの中心Oを結ぶ線Lmに対して垂直な方向に並んでいる。すなわち、尾根状の天頂部分Pmと向かい合うようには配置されている。このため、各凹部144y、144zの混合気で発火が起こったときに、火炎や既燃ガスの圧力は、比較的均等な時間で天頂部分Pmにまで到達する。このため、燃焼のばらつきを小さくすることができ、かつ、燃焼時間を短くすることができる。その結果、NOxを低減することができる。
【0120】
E.第5実施例:
図24は、第5実施例のシリンダヘッド130eおよびピストン144eの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)である。第5実施例のエンジンは、筒内燃料噴射部が2個設けられている点と、点火プラグの位置とが他の実施例と異なっている。すなわち、第5実施例のエンジンでは、シリンダの天井部130rであってシリンダ142の中心軸Oの近傍の位置に、第1の筒内燃料噴射部15fを有し、さらに、燃焼室150の内側壁近傍から燃料を噴射できる第2の筒内燃料噴射部15gを有している。ピストン144eの形状は、第1実施例のピストン144と同様である。
【0121】
第2の筒内燃料噴射部15gは、シリンダヘッド130e上であって、シリンダの中心軸Oに対して吸気口12oが設けられている側の位置に設けられている。そして、点火プラグ136eは、シリンダ142の中心軸Oを挟んで第2の筒内燃料噴射部15gと向かい合う位置に設けられている。すなわち、点火プラグ136eは、シリンダヘッド130e上であって、シリンダの中心軸Oに対して排気口16oが設けられている側の位置に設けられている。また、点火プラグ136eは、その電極136sがピストン144eの凹部144pの一つの直上にくるように設けられている。
【0122】
第2の筒内燃料噴射部15gは、図24において破線で示すように、水平に近い角度で燃焼室150内に燃料を噴射する。第1の筒内燃料噴射部15fの燃料噴射口は、図24において斜線部で示すように、ピストン144eが最も下降したときに、各凹部144p内に燃料を噴射できるように構成されている。第1および第2の筒内燃料噴射部15f,15gは、燃料の噴射圧力を変えることで単位時間当たりに噴射する燃料の量を増減することができるタイプの燃料噴射弁である。第5実施例のエンジンの他のハードウェア構成は、第1実施例のエンジンと同様である。
【0123】
第5実施例のエンジンの運転は、第1実施例のエンジンと同様に行われる。ただし、燃料噴射において、第1および第2の筒内燃料噴射部15f,15gを使い分ける。すなわち、第1の4サイクル自着火モード(図4および図5参照)においては、負のオーバーラップ中に行う燃料噴射E41は、第1の筒内燃料噴射部15fで行う。そして、第2の4サイクル自着火モード(図4および図10参照)においては、負のオーバーラップ中に行う燃料噴射E41は、第2の筒内燃料噴射部15gで行い、圧縮期間中期に行う燃料噴射E42は、第1の筒内燃料噴射部15fで比較的低い圧力で行う。
【0124】
一方、第1の2サイクル自着火モード(図4および図14参照)においては、掃気期間に行う燃料噴射E21は、第1の筒内燃料噴射部15fで行う。そして、第2の2サイクル自着火モード(図4および図17参照)においては、掃気期間に行う燃料噴射E21は、第2の筒内燃料噴射部15gで、比較的低い圧力で単位時間当たりの燃料噴射量を比較的少なくして行う。そして、圧縮期間中期に行う燃料噴射E22は、第1の筒内燃料噴射部15fで、比較的高い圧力で単位時間当たりの燃料噴射量を比較的多くして行う。他の点は、第1実施例のエンジンの運転と同様である。
【0125】
第5実施例のエンジンは、2回に分けて燃料を噴射するモードにおいて比較的薄い混合気を形成する燃料を噴射する第2の筒内燃料噴射部15gを、ピストン頂部の凹部144pに向けて燃料を噴射する第1の筒内燃料噴射部15fとは別に備えている。このため、燃焼室150内において拡散しやすいように適切に噴霧方向や噴霧圧力を設定して、比較的薄い混合気を形成する燃料を噴射することができる。その結果、燃焼室150内において比較的薄い混合気を均質に形成することができ、圧縮の際に、そのような燃焼室内全体に均等拡散した混合気に、均等に自着火を起こさせることができる。その結果、燃焼によって生じるNOxの量を低減することができる。
【0126】
第2の4サイクル自着火モード(図10参照)においては、1回目の燃料噴射E41は、吸気バルブ132および排気バルブ134が閉じている状態、すなわち、燃焼室150の圧力が比較的高い状態で行われる。よって、燃料噴射E41は、排気バルブが開いているときに行われる燃料噴射E42に比べて高い圧力で行われる。これにより、燃料噴射E41において、燃焼室150内の圧力に抗して燃料を燃焼室内に送り込むことができる。
【0127】
一方、第2の4サイクル自着火モードの2回目の燃料噴射E42は、比較的低い圧力で行われる。その結果、液体燃料の粒の径が燃料噴射E41の場合に比べて大きくなる。よって、燃料噴射E42で凹部に向けて噴射された燃料は、蒸発に時間を要し、ピストンが上死点近傍に達するまでに燃焼室150中に拡散しにくい。その結果、燃料噴射E42で噴射された燃料によって、凹部近傍に比較的濃い混合気を作りやすい。よって、空気過剰率が高い場合にも、自着火を起こさせやすい。
【0128】
また、第2の2サイクル自着火モード(図17参照)においては、1回目の燃料噴射E21は、単位時間当たりの燃料噴射量を比較的少なくして行われる。よって、燃料噴射E21で噴射された燃料は、一度に大量の燃料が噴射される場合に比べて、燃焼室150中で蒸発および拡散しやすい。その結果、比較的薄い混合気を燃焼室150内で均質に作ることができる。
【0129】
一方、第2の2サイクル自着火モードの2回目の燃料噴射E22は、単位時間当たりの燃料噴射量を比較的多くして行われる。よって、燃料噴射E22で噴射された燃料は、燃焼室150中で蒸発および拡散しにくい。燃料噴射E22の際には、すでに燃焼室150内には燃料噴射E21によって混合気が形成されているため、燃料噴射E22において噴射された燃料は、拡散しにくい。よって、燃料噴射E22において噴射する燃料によって比較的濃い混合気を凹部近辺に作ることができる。よって、空気過剰率が高い場合にも、自着火を起こさせやすい。
【0130】
F.第6実施例:
図25は、エンジンの運転条件によって異なる運転モードが設定されている第6実施例のマップを示す説明図である。上記各実施例では、中負荷領域(図4において領域Iと領域IVに挟まれた領域)では、第1および第2の2サイクル自着火モード、ならびに第1および第2の4サイクル自着火モードの4つのモードを使い分けていた。しかし、中負荷領域において、3個以下のモードを使い分けることとしてもよい。たとえば、図25に示すように、領域Iと領域IVに挟まれた中負荷領域において、比較的負荷が小さい領域IIでは、第1の2サイクル自着火モードを実行し、比較的負荷が大きい領域IIIでは、第2の2サイクル自着火モードを実行する態様とすることもできる。
【0131】
また、中負荷領域において、比較的負荷が小さい領域では、第1の4サイクル自着火モードを実行し、比較的負荷が大きい領域では、第2の4サイクル自着火モードを実行する態様とすることもできる。さらに、2サイクル自着火モードと4サイクル自着火モードを含む2または3のモードを使い分けることとしてもよく、また、第1実施例で示した第1および第2の2サイクル自着火モード、ならびに第1および第2の4サイクル自着火モードの4つのモードのうちの、何れか一つのみを行うこととしてもよい。
【0132】
たとえば、図24に示した第5実施例のように二つの筒内燃料噴射部15f,15gを有するハードウェア構成において、中負荷領域は、第1および第2の4サイクル自着火モードのみを実行する場合には、次のような運転を行うことができる。すなわち、第2の4サイクル自着火モード(図10参照)において、負のオーバーラップ中に行う燃料噴射E41は第2の筒内燃料噴射部15gで行い、圧縮期間中期に行う燃料噴射E42は第1の筒内燃料噴射部15fで行う。このような態様においては、第2の筒内燃料噴射部15gは、比較的高い一定の圧力で燃料を噴射するように設定し、第1の筒内燃料噴射部15fは、比較的低い一定の圧力で燃料を噴射するように設定することができる。
【0133】
一方、第5実施例のように二つの燃料噴射部を有するハードウェア構成において、中負荷領域は、第1および第2の2サイクル自着火モードのみを実行する場合には、次のような運転を行うことができる。すなわち、第2の2サイクル自着火モード(図17参照)において、負のオーバーラップ中に行う燃料噴射E21は第2の筒内燃料噴射部15gで行い、圧縮期間中期に行う燃料噴射E22は第1の筒内燃料噴射部15fで行う。そして、第2の筒内燃料噴射部15gは、単位時間当たりの燃料噴射量を比較的低い一定値に設定し、第1の筒内燃料噴射部15fは、単位時間当たりの燃料噴射量を比較的高い一定値に設定することができる。
【0134】
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0135】
(1)第1の変形例:
第1実施例では、少なくとも一つの筒内燃料噴射部15は、ピストンが最も下降したときの近傍(下死点前10°〜下死点後10°)で各凹部に燃料を噴射できるように構成されていた。しかし、燃料噴射部はそのような態様に限られず、他の構成とすることもできる。すなわち、少なくとも一つの筒内燃料噴射部が、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を凹部または溝部に向けて噴射することができるように構成されていればよい。
【0136】
また、第1実施例では、筒内燃料噴射部15の噴射口の数は、ピストン144の頂部144hに設けられた凹部の数と同じであった。しかし、筒内燃料噴射部の噴射口の数は、凹部の数と異なっていてもよい。たとえば、筒内燃料噴射部の噴射口の数を凹部の数よりも少なくし、ピストンが所定の位置にあるときに、各噴射口からそれぞれ一つの凹部に向けて燃料を噴射できるように構成することができる。また、筒内燃料噴射部の噴射口の数を凹部の数よりも多くし、一部の噴射口は、それぞれ凹部に向けて燃料を噴射できるように構成し、他の一部の噴射口は、燃焼室内に燃料を均等に拡散させることができるように、構成してもよい。
【0137】
なお、筒内燃料噴射部は、ピストンが特定の位置にあるときに、筒内燃料噴射部から噴射するほぼすべての燃料を凹部内に噴射できるように構成することが好ましい。そして、ピストンが最も下降したとき、すなわち、下死点BDCにあるとき、筒内燃料噴射部から噴射するほぼすべての燃料を凹部内に噴射できるように構成することが特に好ましい。ここで、「噴射するほぼすべての燃料を凹部内に噴射できる」とは、仮に凹部をその凹部と同じ大きさ、位置を有する「底を有しない孔」に置き換えたときに、噴射する燃料の85%以上がその孔を通過することができることを意味する。
【0138】
また、圧力や単位時間当たりの噴射量を変えて燃料噴射を行う運転については、二つの筒内燃料噴射部を備える第5実施例において説明した。しかし、そのような運転は、第1実施例のような筒内燃料噴射部を一つしか備えないエンジンにおいて行うこともできる。すなわち、同一の筒内燃料噴射部を使用して、運転モードに応じて燃料噴射の圧力や単位時間当たりの噴射量を変えて運転を行ってもよい。
【0139】
(2)第2の変形例:
第1実施例では、ピストン144の頂部に設けられた各凹部144pはシリンダ142の中心軸を中心として、互いに等しい角度で設けられていた。そして、各凹部144pは、シリンダ142の中心軸から等しい距離に設けられていた。しかし、凹部はこのような態様に限られず、他の態様とすることもできる。すなわち、ピストン頂部の任意の位置に複数の凹部を設けることができる。ただし、各凹部は、ピストンが上死点にある状態で、燃焼室内のほぼ均等な大きさの空間について一つずつ設けられていることが好ましい。そのような態様とすれば、凹部近傍に生成された混合気の自着火による火炎または既燃ガスの圧力が、燃焼室内に均等に伝播することができる。あるいは、点火部の電極と向かい合っている点火凹部以外の各凹部が、燃焼室内のほぼ均等な大きさの空間について一つずつ設けられている態様とすることもできる。
【0140】
また、上記実施例では、凹部は凹曲面で構成されていたが、凹部は、すべてが曲面で構成されている必要はない。すなわち、凹部を構成する内面のうち、燃料噴射部で噴射された燃料を噴射する部位が曲面で構成されていればよい。なお、曲面の一端の延長線が、シリンダヘッドの方向を向いているように曲面を構成することが好ましい。
【0141】
燃焼室内のほぼ均等な大きさの空間について一つずつ凹部を設ける態様として、シリンダ142の中心軸を中心としてほぼ均等な角度に凹部を配することも好ましい。ここで、「ほぼ均等な角度」とは、シリンダの中心軸と隣り合う凹部のなす角の大きさに関して、最も小さい角度が最も大きい角度の75%以上であることを意味する。たとえば、第1実施例では、各凹部144pはピストンの中心点(シリンダの中心軸)を中心として、60°ずつの均等の角度をあけて設けられていたが、シリンダの中心軸と隣り合う凹部のなす角の大きさが、円周方向に一つおきに50°と70°であるような態様とすることもできる。
【0142】
また、たとえば、2n個(nは正の整数)の凹部がシリンダの中心軸を中心として、ほぼ均等の角度で設けられている態様において、1個おきのn個の凹部はシリンダの中心軸から第1の距離の位置に設けられており、1個おきの他のn個はシリンダの中心軸から第1の距離とは異なる第2の距離の位置に設けられている態様としてもよい。また、シリンダの中心軸から第1の距離の位置にほぼ均等の角度で設けられているn個の凹部と、シリンダの中心軸から第1の距離とは異なる第2の距離の位置にほぼ均等の角度で設けられている別のn個の凹部を備える態様とすることもできる。
【0143】
また、第4実施例(図22および図23参照)では、各凹部は、第2の頂部領域A2内に配されていた。しかし、各凹部の一部が第2の頂部領域A2外に位置する態様とすることもできる。ただし、ピストンは、第2の頂部領域A2に、複数の凹部を実質的に有しており、第1および第3の頂部領域A1,A3に、凹部を実質的に有していない態様であることが好ましい。ここで、「ある領域に凹部を実質的に有している」とは、その領域および凹部をピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、その凹部の射影の面積の75%以上がその領域に含まれることを意味する。そして、「ある領域に凹部を実質的に有していない」とは、その領域に凹部が含まれていないか、またはある凹部の一部がその領域に含まれる場合には、その領域および凹部をピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに、その領域に含まれるその凹部の面積が25%未満であることを意味する。
【0144】
(3)第3の変形例:
図10および図17に示した運転モードでは、下死点後90°〜95°の間の所定の時間区間中において、2回目の燃料噴射E42,E22を行っていた。しかし、2回目の燃料噴射は、他の時間区間で行うこともできる。すなわち、2回目の燃料噴射は、圧縮期間中期の所定の時間区間において行うことができる。ここで、「圧縮期間中期」とは、圧縮期間の下死点後75°〜115度の区間である。よって、圧縮期間の下死点後85°〜100度や下死点後90°〜105度など、その区間に含まれる時間区間であれば、どのような時間区間で燃料の噴射を行ってもよい。
【0145】
また、燃料噴射は、2回だけでなく、1回で行ってもよいし、3回以上に分けて行ってもよい。ただし、比較的負荷が低いときには、比較的早い時期に燃料の噴射を終え、比較的負荷が高いときには、比較的遅い時期まで燃料を噴射させる態様とすることが好ましい。その際、第1、第3,第4実施例のような態様(図3、図20および図22参照)において、同一の筒内燃料噴射部で燃料の噴射を行ってもよいし、第2および第5実施例のような態様(図18および図24参照)において、異なる2以上の燃料噴射部で行ってもよい。
【0146】
さらに、上記実施例では、燃焼状態の異常を検出したときには、図13に示したように、1サイクルで燃焼されるすべての燃料を圧縮期間中期に噴射し、次のサイクルにおいて点火プラグ136による点火を行っていた。しかし、そのような場合でも、1サイクルで燃焼されるすべての燃料を圧縮期間中期に噴射する必要はなく、直前のサイクルで圧縮期間中期に噴射した量よりも多い量の燃料を、圧縮期間中期の所定の時間区間中に噴射することとすればよい。なお、その際、燃料噴射量は、1サイクルで燃焼されるすべての燃料の50%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。
【0147】
(4)第4の変形例:
上記実施例では、失火が起こったと判断された場合には、次の1サイクルについて点火プラグによる点火を行っていた。しかし、点火プラグによる点火を行うサイクルは1サイクルに限られるものではなく、2サイクル、3サイクル、5サイクルなど他の回数としてもよい。また、失火以外にも燃焼が不十分である場合や、点火タイミングの異常など、燃焼状態についての他の異常を検知した場合にも、点火プラグによる点火を行うことができる。それらの燃焼状態の異常は、圧力センサで圧力の変動を検知したり、温度センサで温度変化を検知したりすることで、行うことができる。また、気柱振動を利用するノックセンサ25を燃焼異常の検出に使用してもよい。
【0148】
(5)第5の変形例:
上記各実施例および変形例では、各バルブの開閉タイミング、火花点火のタイミングは、数値を挙げて説明した。しかし、それらは一例に過ぎず、各バルブの開閉タイミング、火花点火のタイミングは、シリンダの内径、ピストンのストローク量、バルブの径など、エンジンの設計値に応じた所定のタイミングとすることができる。
【0149】
また、上記実施例では、吸気バルブ132と排気バルブ134は、それぞれ電動アクチュエータ162,164によって駆動されることとした。しかし、吸気バルブ132と排気バルブ134は油圧によって駆動するものなど、他の手段で駆動してもよい。すなわち、このエンジンは、吸気バルブの開閉のタイミングを変えることができる吸気バルブ駆動部と、排気バルブの開閉のタイミングを変えることができる排気バルブ駆動部を備えるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のエンジンの構造を概念的に示した説明図。
【図2】 ピストン144の頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図。
【図3】 シリンダヘッド130およびピストン144の頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)。
【図4】 エンジンの運転条件によって異なる運転モードが設定されているマップを示す説明図。
【図5】 第1の4サイクル自着火モードにおいて、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図。
【図6】 4サイクル運転における燃料噴射E41の際の燃料の流れを示した説明図。
【図7】 4サイクル自着火モードの運転における燃料の拡散と蒸発を示した説明図。
【図8】 燃焼室150内の比較的薄い混合気と比較的濃い混合気の様子を示す説明図。
【図9】 燃焼室150内における自着火の様子を示す説明図。
【図10】 第2の4サイクル自着火モードにおいて、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図。
【図11】 4サイクル運転における燃料噴射E42の際の燃料の流れを示した説明図。
【図12】 燃焼室150内の比較的薄い混合気と比較的濃い混合気の様子を示す説明図。
【図13】 燃焼不良を検出した場合の燃料噴射のタイミングを示す説明図。
【図14】 第1の2サイクル自着火モードにおいて、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図。
【図15】 2サイクル運転における燃料噴射E21の際の燃料の流れを示した説明図。
【図16】 2サイクル自着火モードの運転における燃料の拡散と蒸発を示した説明図。
【図17】 第2の2サイクル自着火モードにおいて、ピストン144の動きに同期させて吸気バルブ132および排気バルブ134を開閉させるタイミングを示した説明図。
【図18】 第2実施例のシリンダヘッド130bおよびピストン144bの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)。
【図19】 第2実施例におけるピストン144bの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図。
【図20】 第3実施例におけるピストン144cの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)。
【図21】 第3実施例のシリンダヘッド130cおよびピストン144cの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図。
【図22】 第4実施例のシリンダヘッド130dおよびピストン144dの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)。
【図23】 第4実施例におけるピストン144dの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す平面図。
【図24】 第5実施例のシリンダヘッド130eおよびピストン144eの頂部の構造と燃料噴射の状態を示す説明図(縦断面図)。
【図25】 エンジンの運転条件によって異なる運転モードが設定されている第6実施例のマップを示す説明図。
【符号の説明】
10…エンジン
12…吸気通路
13…シリンダヘッド
15,15c〜g…筒内燃料噴射部
15b…吸気管燃料噴射部
16…排気通路
20…エアクリーナ
22…スロットル弁
23…圧力センサ
24…電動アクチュエータ
25…ノックセンサ
26…触媒
30…エンジン制御用ユニット(ECU)
32…クランク角センサ
34…アクセル開度センサ
36…エアフローメータ
40…電磁駆動弁駆動回路
130,130b〜e…シリンダヘッド
130r…天井部
132…吸気バルブ
134…排気バルブ
136,136b〜e…点火プラグ
136s…電極
140…シリンダブロック
142…シリンダ
144,144c〜e…ピストン
144h…ピストンの頂部
144p…凹部
144q…溝部
144r,144u,144y…点火凹部
144s…凹部
144t…溝部
144v,144w,144z…凹部
146…コネクティングロッド
148…クランクシャフト
150…燃焼室
162,164…電動アクチュエータ
A1,A3…天井部分
A2…もっとも奥まった部分を含む天井部分
A21,A41…吸気の流入を示す矢印
A22…既燃ガスの排出を示す矢印
Ap…ピストンの往復方向を示す矢印
BDC…下死点
E21,E22…燃料噴射
E41,E42…燃料噴射
EV…排気バルブが開いている区間
F42,F44,F46,F48…燃料の流れを示す矢印
F52,F54…矢印
F66,F68…矢印
G21…比較的薄い混合気
G22…比較的濃い混合気
G41…比較的薄い混合気
G42,G43…比較的濃い混合気
I…4サイクル火花点火モードを行う領域
II…第1の2サイクル自着火モードを行う領域
III…第2の2サイクル自着火モードを行う領域
IV…第1の4サイクル自着火モードを行う領域
L…要求負荷
L1…天井部分A1の寸法
Lm…基準平面に垂直な直線
Ne…エンジン回転速度(回転数)
O…中心軸
PR1…基準平面
Pd1,Pd2…基準平面PR1に平行な平面
Pe…排気口の外周を形成する天井部分
Pi…吸気口の外周を形成する天井部分
Pm…天井部分PiとPeに挟まれた天井部分(天頂部分)
TDC…上死点
V…第2の4サイクル自着火モードを行う領域
VI…4サイクル火花点火モードを行う領域
θac…アクセル開度

Claims (6)

  1. シリンダと、ピストンと、前記シリンダと前記ピストンとで形成される燃焼室内に燃料を噴射することができる第1の燃料噴射部と、を備えるエンジンであって、
    前記ピストンは、
    前記ピストンの頂部に設けられた複数の凹部と、
    前記ピストンの前記頂部において、少なくとも一部の凹部に接続され、前記ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに前記少なくとも一部の凹部から前記第1の燃料噴射部の位置に向かう向きに設けられている溝部と、を有し、
    前記第1の燃料噴射部は、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を前記凹部または前記溝部に向けて噴射し、
    前記複数の凹部は、前記第1の燃料噴射部からの距離が異なる2以上の凹部を含んでおり、
    前記第1の燃料噴射部は、
    前記第1の燃料噴射部からの距離が比較的大きい凹部に対しては、比較的小さい噴射角で前記燃料を噴射し、
    前記第1の燃料噴射部からの距離が比較的小さい凹部に対しては、比較的大きい噴射角で前記燃料を噴射する、エンジン。
  2. シリンダと、ピストンと、前記シリンダと前記ピストンとで形成される燃焼室内に燃料を噴射することができる第1の燃料噴射部と、を備えるエンジンであって、
    前記ピストンは、
    前記ピストンの頂部に設けられた複数の凹部と、
    前記ピストンの前記頂部において、少なくとも一部の凹部に接続され、前記ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに前記少なくとも一部の凹部から前記第1の燃料噴射部の位置に向かう向きに設けられている溝部と、を有し、
    前記第1の燃料噴射部は、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を前記凹部または前記溝部に向けて噴射し、
    前記エンジンは、さらに、
    前記燃焼室内の燃料に点火を行うことができる点火部と、
    前記燃焼室内の燃焼状態を検出することができる燃焼状態検出センサと、
    前記第1の燃料噴射部と前記点火部の制御を行う制御部と、を備え、
    前記点火部は、前記燃焼室内の位置であって前記凹部の一つと向かい合う位置において燃料に点火を行うことができるように設けられており、
    前記制御部は、
    前記燃焼状態検出センサが燃焼状態の異常を検出した場合には、前記異常が検出されたサイクルの次のサイクルにおいて、
    前記第1の燃料噴射部に、直前のサイクルで圧縮期間中期に噴射した量よりも多い量の燃料を、圧縮期間中期の所定の時間区間中に噴射させ、
    前記点火部に、前記燃料に対して点火を行わせる、エンジン。
  3. シリンダと、ピストンと、前記シリンダと前記ピストンとで形成される燃焼室内に燃料を噴射することができる第1の燃料噴射部と、を備えるエンジンであって、
    前記ピストンは、
    前記ピストンの頂部に設けられた複数の凹部と、
    前記ピストンの前記頂部において、少なくとも一部の凹部に接続され、前記ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに前記少なくとも一部の凹部から前記第1の燃料噴射部の位置に向かう向きに設けられている溝部と、を有し、
    前記第1の燃料噴射部は、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を前記凹部または前記溝部に向けて噴射し、
    前記エンジンは、さらに、前記第1の燃料噴射部を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    比較的負荷が低いときには、前記第1の燃料噴射部に比較的早い時期に燃料の噴射を終了させ、
    比較的負荷が高いときには、前記第1の燃料噴射部に比較的遅い時期に燃料を噴射させる、エンジン。
  4. 請求項3記載のエンジンであって、
    前記制御部は、
    さらに、吸気バルブおよび排気バルブを制御し、
    4サイクル運転を行う運転モードであって、前記排気バルブを閉じて排気行程を終了した後に前記吸気バルブを開く運転モードであり、前記排気バルブを閉じてから前記吸気バルブを開くまでの期間中の所定の第1の時間区間と、圧縮期間中期の所定の第2の時間区間と、のそれぞれにおいて前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有し、
    前記第1の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的少ない噴射で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、
    前記第2の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的多い噴射で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる、エンジン。
  5. 請求項3記載のエンジンであって、
    前記制御部は、
    さらに、吸気バルブおよび排気バルブを制御し、
    2サイクル運転を行う運転モードであって、前記吸気バルブを開いてから前記排気バルブを閉じるまでの掃気期間中の所定の第1の時間区間と、圧縮期間中期の所定の第2の時間区間と、のそれぞれにおいて前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有し、
    前記第1の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的少ない噴射で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、
    前記第2の時間区間において、単位時間当たりの噴射量が比較的多い噴射で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる、エンジン。
  6. シリンダと、ピストンと、前記シリンダと前記ピストンとで形成される燃焼室内に燃料を噴射することができる第1の燃料噴射部と、を備えるエンジンであって、
    前記ピストンは、
    前記ピストンの頂部に設けられた複数の凹部と、
    前記ピストンの前記頂部において、少なくとも一部の凹部に接続され、前記ピストンの往復方向に垂直な平面に投影したときに前記少なくとも一部の凹部から前記第1の燃料噴射部の位置に向かう向きに設けられている溝部と、を有し、
    前記第1の燃料噴射部は、1サイクルで燃焼される燃料のうちの少なくとも一部を前記凹部または前記溝部に向けて噴射し、
    前記エンジンは、さらに、
    前記第1の燃料噴射部、吸気バルブおよび排気バルブを制御する制御部を備え、
    前記制御部は、
    4サイクル運転を行う運転モードであって、
    前記排気バルブを閉じて排気行程を終了した後に前記吸気バルブを開く運転モードであり、
    前記排気バルブを閉じてから前記吸気バルブを開くまでの期間中の所定の第1の時間区間と、圧縮期間中期の所定の第2の時間区間と、のそれぞれにおいて前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる運転モードを有し、
    前記第1の時間区間において、比較的高い圧力で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させ、
    前記第2の時間区間において、比較的低い圧力で前記第1の燃料噴射部に燃料を噴射させる、エンジン。
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