JP4432667B2 - 筒内直接噴射式内燃機関 - Google Patents
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Description
そして、このような筒内直接噴射式内燃機関に関して、冷機始動からの暖機過程において、排気浄化触媒の活性化の促進を図るべく、いくつかの技術が提案されている。
点火時期は、排気温度の上昇又は後燃えによるHC低減効果に対して非常に感度を持っており、機関安定度限界の範囲内で最大限遅角させて設定するのが効果的である。すなわち、排気温度上昇の観点から言えば、点火時期は圧縮上死点後、膨張行程初期から中期に設定されることが望ましい。
このように、特許文献1、2に記載の筒内直接噴射式内燃機関では、いずれもHC排出量の抑制(特に始動直後)及び排気浄化触媒の早期活性化(排気温度上昇)といった点で更なる改良の余地があった。
図1は、第1実施形態に係る筒内直接噴射式内燃機関(以下、単に「エンジン」という)の概略構成図である。エンジン1は、吸気ポート2及び吸気バルブ3を介して燃焼室4内に新気を導入する。燃焼室4の下部には、往復運動を行うピストン5が設けられており、燃焼室4の上部には、筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁6、燃焼室4内の混合気に火花点火を行う点火プラグ7が設けられている。ここで、点火プラグ7は、燃料噴射弁6からの噴射により形成される燃料噴霧の一部が直接到達する位置に配設されており、燃料噴射弁6は、圧縮行程後半における筒内圧上昇時にも噴霧形状の変化が小さく、指向性の強いホールノズル噴射弁を採用している。
吸気バルブ3、排気バルブ8は、それぞれ吸気カム12、排気カム13により駆動される。吸気カム軸の端部には燃料ポンプ14が介装されており、この燃料ポンプ14で加圧された燃料は高圧燃料配管15を通して燃料噴射弁6に導かれる。なお、高圧燃料配管15には(高圧燃料配管15内を通過する)燃料圧力を検知する燃圧センサ23が設けられている。
図2において、S1では、吸入空気量QM、エンジン回転速度NE、アクセル開度APO、燃料圧力Pf、触媒温度Tcat等のエンジン運転条件を読込む。
S2では、アクセル開度APOから目標トルクTTCを求める。この目標トルクTTCは、例えば図に示すような目標トルクTTCをアクセル開度APOに割り付けたテーブルデータを予めECU20に格納しておき、読込んだアクセル開度APOに応じてテーブルデータを参照することで求めることが可能である。
S7では、吸入空気量QMとエンジン回転速度NEとから定まる理論空燃比相当の基本燃料噴射量(K×QM/NE;Kは定数)と目標燃空比TFBYAとに基づいて、燃料噴射量Qfcoが設定される。
先ず、燃料圧力Pfにて燃料噴射量Qfcoを噴射するのに必要な噴射期間のクランク角換算値Tlを求める。この噴射期間(クランク角換算値)Tlは、例えば単位時間あたりの噴射量(噴射率)dQfを求め、基本噴射量Qfco及び噴射率dQfから次式(1)にて求める。なお、噴射率dQfは、燃料噴射弁6の燃料圧力Pfに対する噴射率特性を予め実験により求めてテーブルデータとしてECU20に格納しておき、読込んだ燃料圧力Pfに応じてテーブルデータを参照することで求めることが可能である(Cは単位換算用の定数)。
そして、算出した噴射期間Tl、読込んだ噴射開始時期ITcoを用いて、次式(2)にて点火時期ADVを算出する。
ADV=ITco+Tl−Td・・・(2)
ここで、Tdは、噴霧の終端近傍に点火を行え、かつ噴霧先端が燃焼室4壁面に到達する前に点火を行えるように点火時期ADVを適合するための適合用の係数である。なお、この適合用の係数Tdは、予め実験により最適値を求めてそのデータをECU20のROMに格納しておき、その都度参照することで求めることが可能である。
S9では、例えばエンジン回転速度NE及び目標トルクTTCに割り付けたマップデータを参照して膨張行程における最適な噴射開始時期ITeを読込む。なお、ここで使用するマップデータは、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷と最適な噴射開始時期ITexとの関係を実験等により求め、予め格納したものである。なお、ここで読込まれる(設定される)噴射開始時期ITexは、噴射された供給燃料が比較的トルクとなる割合が高い膨張行程初期〜中期の間に設定される。
S11では、点火時期ADVを算出する。かかる算出は、噴射開始時期ITex、燃料噴射量Qfexを用いてS8と同様である(式(1)、(2)参照)。
S13では、吸気行程における燃料噴射開始時期ITinを設定する。なお、燃料噴射開始時期ITinは実験によりマッチングした、エンジン回転速度NEと目標トルクTTCに割り付けたマップデータをECU20に格納しておき、これらの値に応じて参照することで求めることができる。
S15では、点火時期ADVの設定を行う。ここでの点火時期ADVの演算は、上記S8、S11(すなわち、膨張行程噴射の場合)とは異なり、例えばMBT設定とし、エンジン回転速度NE及び負荷に対するMBTの関係を実験により求めて予め記憶させておき、その都度参照することにより行う。
図3(a)に示すように、特許文献1に記載のものは、燃料を燃料室内に斜めに噴射する構成であるところ、膨張行程ではピストンが下降していくため、ピストンキャビティに向けて噴射した燃料が点火プラグ周りへと十分に運ばれず、失火のおそれがある。
また、排気浄化触媒の昇温が要求された場合(例えば、触媒温度が活性温度に達していない場合)に膨張行程噴射による成層燃焼を行う構成としたので、触媒活性化前であっても、HC、NOxの排出を最大限抑制しつつ、触媒温度を早期に上昇させること(すなわち、触媒の早期活性化)が可能である。
図4は、第2実施形態における燃料噴射量、噴射時期及び点火時期演算の制御フローチャートである。図4において、S21〜S28は図2のS1〜S8と同様であるので説明は省略する。
S29〜S31は図2のS6〜S8と同様である。
S32では、「圧縮行程噴射+点火」後の膨張行程における追加噴射の噴射開始時期ITexを設定する。ここで設定される噴射開始時期ITexは、供給燃料全量が排気温度を上昇させるため又は未燃HCを低減させるための「後燃え」に使用されるように、図2のS9における噴射開始時期ITexの設定とは異なり、膨張行程中期から後期の間に設定される。なお、かかる噴射開始時期ITexは、エンジン回転速度NEが高いほど膨張行程中期側に設定されるようになっており、具体的には、実験により求めた関係をエンジン回転速度NEに割り付けたテーブルデータとしてECU20に格納しておき、読込んだエンジン回転速度NEに応じてテーブルデータを参照することで設定できる。
なお、現在の触媒温度Tcatが低いほど、早く活性温度にするためにより多くの追加燃料量を噴射する(追加燃料量が多く設定される)。また、「後燃え」するための十分な空気量がない場合は追加燃料が燃え残ってしまうため、目標燃空比TFBYAが大きくなる場合(すなわち、空燃比A/Fがリッチ化する方向であり、主燃焼後の残存酸素量がより少なくなる場合)は、追加燃料量は少なく設定される。
S35(S33において均質燃焼領域と判断された場合である)では、現時点の触媒温度Tcatが触媒の活性温度TcatH以上であるか否かを判定する。触媒温度Tcatが活性温度TcatH以上であればS36に進み、通常の吸気行程噴射による均質燃焼を行う(S36〜S39)。なお、S36〜S39は図2のS12〜S15と同じである。
先ず、S40では、主燃焼である「吸気行程噴射+点火」による排気空燃比がストイキよりリーンとなるように、すなわち、排気A/F=15〜18程度となるように、目標燃空比TFBYAに0.8〜0.96を代入する。これは、続いて行う膨張行程噴射の追加燃料が燃えるための酸素量を主燃焼後に残存させるためである。
この実施形態によると、上記第1実施形態における効果に加えて、さらに次のような効果を有する。
すなわち、本実施形態では、成層燃焼領域において排気浄化触媒の昇温要求があったときは、トータル排気空燃比がストイキよりリーンとなる量の燃料を圧縮行程にて噴射し、火花点火して層状の主燃焼を行った後に、膨張行程にて比較的少量の燃料を追加噴射し、火花点火して層状燃焼させるようにしている(S25、S29〜S34)。これにより、例えば、排気浄化触媒の昇温要求直前に運転が圧縮行程噴射の成層運転だった場合は、排気浄化触媒の昇温要求時に、まず、トータル排気空燃比(燃焼室内平均空燃比)をリーンとして酸素量を残存させ、その後、膨張行程(特に、膨張行程中期から後期)にて追加噴射した比較的少量の燃料分の燃焼エネルギーが、排気温度の上昇または不完全燃焼物であるCO、H2、未燃HCの「後燃え」に使われることになるため、制御切替え時のトルクショックが少なく運転性の悪化を抑制できる。つまり、膨張行程中期から後期への比較的少量の燃料噴射と2回目の点火を追加するだけで運転性の悪化を抑制しつつ排気温度(触媒)を昇温することが可能である。
図7は、第3実施形態における燃料噴射量、噴射時期及び点火時期演算の制御フローチャートである。
S52では、エンジン回転によって入力されるクランク角度センサ27及びカム角度センサ28を用いて気筒判別を行う。
S54では、冷却水温度Tw、エンジン回転速度NEに応じて目標トルクTTCを算出する。本実施形態においては、図に示すような冷却水温度Tw、エンジン回転速度NEに割り付けたテーブルデータを予めECU20に格納しておき、読込んだ冷却水温度Tw、エンジン回転速度NEに応じてテーブルデータを参照することで求める。
S56では、スタータスイッチ(STSW)がONからOFFに切り替わったか否かを判定する。ONからOFFに切り替わっていればS57に進み、ONのままであればS66に進む。
S60では、修正燃空比TFBYA2を算出する。この修正燃空比TFBYA2は、目標トルクTTCを発生させるために必要とされる目標燃空比TFBYAと、「後燃え」をさせるための未燃成分量との和である。ここで、排気温度を効率的に昇温させるためには、主燃焼により生成される不完全燃焼物であるCO、H2の量と、主燃焼後に存在する残存酸素量とをバランスさせる必要があるため、修正燃空比TFBYA2は0.8〜1.0の間で設定される。
S62では、図2のS10と同様、基本燃料噴射量(K×QM/NE;Kは定数)に、修正目標燃空比TFBYA2、燃焼効率係数Kcoが乗算されて、修正燃料噴射量Qfexが設定される。
S64では、修正燃料噴射量(全燃料量)Qfexを膨張行程初期〜中期の間で設定した噴射開始時期ITexにて噴射する。図8は、かかる燃料噴射を行った場合の点火時期における混合気の様子を示している。図8に示すように、点火時期ADVにおいて、点火プラグ7周りの混合気はストイキよりリッチ着火可能な空燃比となっており、その混合気の外側には空気が存在している。すなわち、本実施形態においては、燃料噴射量Qfexは点火時期における点火プラグ7周辺の混合気がストイキよりリッチかつ着火可能な空燃比となるように設定され、また、膨張行程噴射による成層燃焼時は、そのトータル排気空燃比(燃焼室4内の平均空燃比)がストイキから弱リーン(排気A/F=14.4〜18程度)となるように制御されている。
まず、スタータスイッチがONのままである場合は急激な回転上昇を伴う始動過渡時であり、この始動過渡時には、基本燃料噴射量(K×QM/NE;Kは定数)、目標燃空比TFBYA、水温増量補正、始動及び始動後増量補正などから算出された燃料量を吸気行程または圧縮行程前半に噴射する。また、良好な回転上昇のため、点火時期ADVは、通常のファストアイドル時の点火時期よりも比較的進角側に設定する。
すなわち、初爆からの各気筒のサイクル数Ncylが所定回数(触媒昇温制御サイクル数Kcyl)未満のときに、触媒昇温制御(膨張行程噴射による層状燃焼)を行うようにしたので(59〜S64)、触媒温度センサを削除できコストを低減できる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、構成は上記第3実施形態(図6)と同じであるので、その説明は省略する。
S83では、燃料分割比Ksp、すなわち、全(修正)燃料量Qfexに対して一部の燃料を先行して噴射するための先行噴射燃料量の割合を設定する。この燃料分割比Kspはエンジン回転速度NE・エンジン負荷によって最適値が存在するものの、通常、0〜0.3(0%〜30%)程度の値に設定される。本実施形態においては、実験結果に基づいて燃料分割比Kspが設定されている。
S85では、燃料噴射を行う。但し、上記第3実施形態と異なり、先行噴射燃料量(=全燃料量Qfex×燃料分割比Ksp)を吸気行程時に先行して噴射し、残り(=Qfex×(1−Ksp))を膨張行程初期〜中期の間で設定した燃料噴射時期ITexにて噴射する。図10は、かかる燃料噴射を行った場合の点火時期における混合気の様子を示している。図10に示すように、本実施形態では、点火時期ADVにおいて、点火プラグ7周りの混合気はストイキよりリッチかつ着火可能な空燃比となっており、その混合気の外側にはリーンな混合気が存在することになる。
この実施形態によると、上記第1、第3実施形態における効果に加えて、さらに次のような効果を有する。
すなわち、膨張行程噴射による成層燃焼運転時に、燃料の一部を吸気行程中に先行して分割噴射するようにしたので(S85)、膨張行程初期から中期に設定した点火時期において、点火プラグ周辺には空燃比がストイキ又はストイキよりリッチな混合気が存在し、その混合気の外側にはリーンな混合気が存在する(図10)。この場合、主燃焼の結果、不完全燃焼物であるCO、H2又は未燃HCが生成され、また、主燃焼の熱又は多少の火炎伝播によって外側のリーンな混合気内の燃料が部分反応を起こし、化学反応的に活性な燃焼前駆体物質(アルデヒド類、OHラジカル等)を生成する。これにより、残りの膨張行程・排気行程・触媒上流の排気通路内でのCO、H2及び未燃HCの反応(再燃焼)がより連鎖的に行われ、排気温度をさらに効果的に上昇させることができるとともに、HCの排出をさらに抑制することが可能である。
図11は、第5実施形態における燃料噴射量、噴射時期及び点火時期演算の制御フローチャートである。図11において、S91〜S104は図9のS71〜S84と同様であるので説明は省略する。
この実施形態によると、上記第1、第3実施形態における効果に加えて、さらに次のような効果を有する。
すなわち、膨張行程噴射による成層燃焼運転時に、燃料の一部を圧縮行程中に先行して分割噴射するようにしたので(S105)、上記第4実施形態と同様な効果が得られ、特に、圧縮行程噴射による通常の成層燃焼用にピストンキャビティが形成されている場合には、圧縮行程中に先行して行う燃料の噴射時期を燃料噴霧がキャビティ内に入る時期に設定することで、壁流分のHCが減少し、HC排出をさらに抑制することできる。
Claims (13)
- 燃焼室上部の中央部に設けられ、シリンダ軸線に沿ってピストン冠面中央部へ向かって燃料を噴射する燃料噴射弁と、
燃焼室上部の中央部に上記燃料噴射弁に隣接して設けられ、かつ上記燃料噴射弁からの燃料噴霧の一部が直接到達する位置に配置されてなる点火プラグと、
機関の排気通路に介装された排気浄化触媒と、を有し、
特定の運転条件時に、膨張行程にて燃料を噴射するとともに、この膨張行程で噴射された燃料噴霧の先端が前記燃焼室の壁面に到達する前に該燃料噴霧に直接点火を行って層状燃焼させることを特徴とする筒内直接噴射式内燃機関。 - 前記燃料噴霧の先端が前記燃焼室の壁面に到達する前に該燃料噴霧の終端近傍に点火を行うように点火時期が設定されることを特徴とする請求項1記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 前記特定の運転条件時は、前記排気浄化触媒の昇温が要求されたときであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 前記特定の運転条件時は、前記排気浄化触媒の温度が所定温度を下回っているとき又は初爆からのサイクル数が所定回数未満のときであることを特徴とする請求項3記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 前記所定回数は、機関冷却水温度に応じて設定されることを特徴とする請求項4記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 点火時期において点火プラグ周辺の混合気がストイキよりリッチかつ着火可能な空燃比となるように前記膨張行程にて燃料を噴射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 膨張行程にて燃料を噴射する膨張行程噴射による成層燃焼運転時は、トータル排気空燃比がストイキから弱リーンとすることを特徴とする請求項6記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 前記特定の運転条件時に、トータル排気空燃比がストイキよりリーンとなるような量の燃料を圧縮行程にて噴射し、点火して層状の主燃焼を行った後に、膨張行程にて比較的少量の燃料を追加噴射し、点火して層状燃焼させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 前記特定の運転条件時に、トータル排気空燃比がストイキよりリーンとなるような量の燃料を吸気行程にて噴射し、点火して均質な主燃焼を行った後に、膨張行程にて比較的少量の燃料を追加噴射し、火花点火して層状燃焼させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 膨張行程にて燃料を噴射する膨張行程噴射による成層燃焼運転時に、燃料の一部を吸気行程中に先行して分割噴射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 膨張行程にて燃料を噴射する膨張行程噴射による成層燃焼運転時に、燃料の一部を圧縮行程中に先行して分割噴射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
- 上面略中央部にキャビティが形成されたピストンを有し、
燃料噴霧が前記キャビティ内に入るように前記圧縮行程中の分割噴射を行うことを特徴とする請求項11記載の筒内直接噴射式内燃機関。 - 燃料圧力が所定値を下回るとき又は機関冷却水温度が所定温度を下回るときは、膨張行程噴射による成層燃焼運転を行わないことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式内燃機関。
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