JP4051580B2 - 二酸化マンガンスケ−ルの洗浄液 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は浄水施設等の水に接触する水槽の壁面、水処理用機械器具、配管内壁などに付着した二酸化マンガンのスケールを洗い落とすための洗浄液に関する。
【０００２】
【従来の技術】
浄水処理過程において水中にあるマンガンはごく微量でも遊離塩素、オゾン等の酸化剤で酸化され、黒褐色の二酸化マンガン（ＭｎＯ2）となる。このようなマンガン酸化物が給水管や配水管の内壁、水槽などに付着すると、それが触媒となり、さらに水中のマンガンの酸化が促進され付着量が多くなり、流速の変化で剥離、流出し、黒い水の原因となる。
【０００３】
また、付着物（スケール）は黒褐色で見た目を損なう上、流量計のベンチュリ管内壁に付着した場合は、流量の判定がしにくくなり、正確な流量が示されなくなる。この他に、透過膜を用いた浄水処理においては、酸化されたマンガンが透過膜の閉塞の原因となる。
【０００４】
従来は浄水施設の壁面などに付着した二酸化マンガンは、塩酸、硝酸などの酸類で洗浄していた。しかし、酸のみでは洗浄効果が低く、過酸化水素などの還元剤を添加した酸で洗浄していた。これによると洗浄効果は上がるが、過酸化水素を使用することは発ガン性の点で問題である。
【０００５】
透過膜の洗浄においては、無機質の付着物に対しては硝酸又は塩酸の５から１０％溶液、シュウ酸２％液、クエン酸５％液、ＥＤＴＡ（エチレンジアミン四酢酸）０．４％液などで洗浄していた。このなかで特にシュウ酸２％液が二酸化マンガンスケールの洗浄に効果があるとされている。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ａ）上記の酸のみの洗浄液では洗浄効果は劣っている。
ｂ）過酸化水素は発ガン性があり、浄水関係の施設、設備には使用できない。
ｃ）透過膜の洗浄においては、シュウ酸、クエン酸、ＥＤＴＡ洗浄液は高価である。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
鉄による還元作用は、少量の酸の存在で鉄粉により芳香族ニトロ化合物を芳香族アミンに還元するベシャン還元が知られており、ニトロベンゼンからアニリンの製造など染料工業でよく用いられている。
【０００８】
この発明はこの鉄による還元作用を利用し、酸に安全性の認められている２価の鉄を添加することによって、従来の洗浄剤よりも安価で簡便で洗浄効果が高い洗浄液である。すなわち、２価の鉄イオン溶解させた酸溶液で、二酸化マンガンスケールを洗浄するものである。
【０００９】
この発明の原理を更に詳述すると、酸性溶液中で、
【００１０】
【化１】
【００１１】
の反応によって生じる電子の還元力により、二酸化マンガンのマンガンを２価に還元し、可溶化することによって付着マンガンを除去する。このときの反応式は
、
【００１２】
【化２】
【００１３】
である。このとき、右辺のＭｎ2+が洗浄液に可溶化する。
この反応式からわかるように、鉄濃度、酸濃度が高いほど反応速度が速い、すなわち洗浄効果が大きくなる。
【００１４】
【発明の実施の形態】
洗浄液調整方法としては、洗浄液は酸溶液に鉄を含む薬品を溶解させて調整するが、酸溶液の濃度が高いほど、また、溶解させる鉄の量が多いほど、コストが高くなることは否めない。
【００１５】
発明者らは、この点を試行錯誤の結果、酸濃度は０．１〜２規定、加える鉄の量は酸溶液１リットルあたり鉄として０．１〜３ｇ程度が、洗浄効果を損なわず、安全性及び経済的な面からも有用であることを見出した。
【００１６】
酸の種類は塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸など酸であれば使用可能であるが、水系の富栄養化および有機汚染の問題から、塩酸および硫酸が望ましく、高濃度の溶液が市販され入手しやすい、気散しない点及び安価である点から、硫酸が望ましい。
【００１７】
鉄源としては、硫酸第一鉄の他に、鉄釘、鉄粉などの金属鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄の鉄塩、シュウ酸鉄等の有機鉄など、０価又は２価の鉄を含み、酸に溶解するものであれば使用できる。
【００１８】
この発明の洗浄液の調整方法例
ａ）０．５〜１０％（０．１〜２規定）の硫酸溶液１リットルに硫酸第一鉄０．５〜１５ｇ（鉄濃度として０．１〜３ｇ／リットル）を溶解する。
ｂ）０．３７〜７．４％（０．１〜２規定）の塩酸溶液１リットルに金属鉄を１〜５ｇ入れ、数日間放置し、溶解させた鉄を使用する。加えた金属鉄を完全に溶解させる必要はない。金属鉄を溶解する場合は水素が発生するので換気の必要がある。
【００１９】
この発明の洗浄液１ｍ3コスト試算
【００２０】
【数１】
【００２１】
【実施例】
図１に硫酸第一鉄の添加量を変化させた１規定の塩酸溶液に二酸化マンガンを付着させたスライドグラスを浸漬した際の洗浄効果を示す。スライドグラスに二酸化マンガンを付着させる際は、スライドグラスを数％の濃度の塩化マンガン溶液に浸漬し、さらにすぐに数％の濃度の過マンガン酸カリウム溶液に浸漬した後乾燥させる。これを数回繰り返すことによって二酸化マンガン付着スライドグラスを作製した。二酸化マンガン付着スライドグラスの下３分の２程度をこの発明の洗浄液に浸漬し、１０分間静置した。黒い部分がマンガンの付着部分を示す。鉄濃度が高いほどマンガンの洗浄効果が大きいことが分かる。1000ｍｇ／リットルの鉄濃度では、３０秒程度で浸漬部分の付着マンガンは完全に溶解した。
【００２２】
この発明の二酸化マンガンスケールの洗浄液の使用方法としては、
▲１▼この発明の溶液をしみこませた布、スポンジ、ブラシ等でマンガン付着物をふき取る。
▲２▼この発明の溶液を洗浄液として容器に入れマンガンが付着したものを浸漬する。
▲３▼配管、流量計、透過膜モジュール等に付着したマンガンを洗浄する場合は、本液を循環させ洗浄する。
▲４▼この発明の溶液を吹き付ける。
等がある。
【００２３】
【発明の効果】
この発明は、浄水過程において、黒水の原因となり、美観を損ない、透過膜による水処理装置の膜の閉塞を引き起こす付着二酸化マンガンスケールを効率よく洗い落とすことができるため、使用する酸の量の低減化、洗浄時間の短縮、洗浄効果の改善、洗浄液の安全性が得られる。
【００２４】
この発明の溶液は、従来付着二酸化マンガンの洗浄に効果があるとされているシュウ酸に匹敵する洗浄効果を有し、シュウ酸に比べ価格の低い硫酸第一鉄、鉄粉などの鉄源を使用することによって、シュウ酸の使用に比べ、洗浄時の薬品コストを削減することができる。酸は塩酸よりも硫酸を使用した方がコストは低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の鉄溶解濃度の影響による二酸化マンガン除去効果を示す比較実験写真である。
【数１】
【数１】
【発明の属する技術分野】
この発明は浄水施設等の水に接触する水槽の壁面、水処理用機械器具、配管内壁などに付着した二酸化マンガンのスケールを洗い落とすための洗浄液に関する。
【０００２】
【従来の技術】
浄水処理過程において水中にあるマンガンはごく微量でも遊離塩素、オゾン等の酸化剤で酸化され、黒褐色の二酸化マンガン（ＭｎＯ2）となる。このようなマンガン酸化物が給水管や配水管の内壁、水槽などに付着すると、それが触媒となり、さらに水中のマンガンの酸化が促進され付着量が多くなり、流速の変化で剥離、流出し、黒い水の原因となる。
【０００３】
また、付着物（スケール）は黒褐色で見た目を損なう上、流量計のベンチュリ管内壁に付着した場合は、流量の判定がしにくくなり、正確な流量が示されなくなる。この他に、透過膜を用いた浄水処理においては、酸化されたマンガンが透過膜の閉塞の原因となる。
【０００４】
従来は浄水施設の壁面などに付着した二酸化マンガンは、塩酸、硝酸などの酸類で洗浄していた。しかし、酸のみでは洗浄効果が低く、過酸化水素などの還元剤を添加した酸で洗浄していた。これによると洗浄効果は上がるが、過酸化水素を使用することは発ガン性の点で問題である。
【０００５】
透過膜の洗浄においては、無機質の付着物に対しては硝酸又は塩酸の５から１０％溶液、シュウ酸２％液、クエン酸５％液、ＥＤＴＡ（エチレンジアミン四酢酸）０．４％液などで洗浄していた。このなかで特にシュウ酸２％液が二酸化マンガンスケールの洗浄に効果があるとされている。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ａ）上記の酸のみの洗浄液では洗浄効果は劣っている。
ｂ）過酸化水素は発ガン性があり、浄水関係の施設、設備には使用できない。
ｃ）透過膜の洗浄においては、シュウ酸、クエン酸、ＥＤＴＡ洗浄液は高価である。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
鉄による還元作用は、少量の酸の存在で鉄粉により芳香族ニトロ化合物を芳香族アミンに還元するベシャン還元が知られており、ニトロベンゼンからアニリンの製造など染料工業でよく用いられている。
【０００８】
この発明はこの鉄による還元作用を利用し、酸に安全性の認められている２価の鉄を添加することによって、従来の洗浄剤よりも安価で簡便で洗浄効果が高い洗浄液である。すなわち、２価の鉄イオン溶解させた酸溶液で、二酸化マンガンスケールを洗浄するものである。
【０００９】
この発明の原理を更に詳述すると、酸性溶液中で、
【００１０】
【化１】
の反応によって生じる電子の還元力により、二酸化マンガンのマンガンを２価に還元し、可溶化することによって付着マンガンを除去する。このときの反応式は
、
【００１２】
【化２】
である。このとき、右辺のＭｎ2+が洗浄液に可溶化する。
この反応式からわかるように、鉄濃度、酸濃度が高いほど反応速度が速い、すなわち洗浄効果が大きくなる。
【００１４】
【発明の実施の形態】
洗浄液調整方法としては、洗浄液は酸溶液に鉄を含む薬品を溶解させて調整するが、酸溶液の濃度が高いほど、また、溶解させる鉄の量が多いほど、コストが高くなることは否めない。
【００１５】
発明者らは、この点を試行錯誤の結果、酸濃度は０．１〜２規定、加える鉄の量は酸溶液１リットルあたり鉄として０．１〜３ｇ程度が、洗浄効果を損なわず、安全性及び経済的な面からも有用であることを見出した。
【００１６】
酸の種類は塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸など酸であれば使用可能であるが、水系の富栄養化および有機汚染の問題から、塩酸および硫酸が望ましく、高濃度の溶液が市販され入手しやすい、気散しない点及び安価である点から、硫酸が望ましい。
【００１７】
鉄源としては、硫酸第一鉄の他に、鉄釘、鉄粉などの金属鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄の鉄塩、シュウ酸鉄等の有機鉄など、０価又は２価の鉄を含み、酸に溶解するものであれば使用できる。
【００１８】
この発明の洗浄液の調整方法例
ａ）０．５〜１０％（０．１〜２規定）の硫酸溶液１リットルに硫酸第一鉄０．５〜１５ｇ（鉄濃度として０．１〜３ｇ／リットル）を溶解する。
ｂ）０．３７〜７．４％（０．１〜２規定）の塩酸溶液１リットルに金属鉄を１〜５ｇ入れ、数日間放置し、溶解させた鉄を使用する。加えた金属鉄を完全に溶解させる必要はない。金属鉄を溶解する場合は水素が発生するので換気の必要がある。
【００１９】
この発明の洗浄液１ｍ3コスト試算
【００２０】
【数１】
【００２１】
【実施例】
図１に硫酸第一鉄の添加量を変化させた１規定の塩酸溶液に二酸化マンガンを付着させたスライドグラスを浸漬した際の洗浄効果を示す。スライドグラスに二酸化マンガンを付着させる際は、スライドグラスを数％の濃度の塩化マンガン溶液に浸漬し、さらにすぐに数％の濃度の過マンガン酸カリウム溶液に浸漬した後乾燥させる。これを数回繰り返すことによって二酸化マンガン付着スライドグラスを作製した。二酸化マンガン付着スライドグラスの下３分の２程度をこの発明の洗浄液に浸漬し、１０分間静置した。黒い部分がマンガンの付着部分を示す。鉄濃度が高いほどマンガンの洗浄効果が大きいことが分かる。1000ｍｇ／リットルの鉄濃度では、３０秒程度で浸漬部分の付着マンガンは完全に溶解した。
【００２２】
この発明の二酸化マンガンスケールの洗浄液の使用方法としては、
▲１▼この発明の溶液をしみこませた布、スポンジ、ブラシ等でマンガン付着物をふき取る。
▲２▼この発明の溶液を洗浄液として容器に入れマンガンが付着したものを浸漬する。
▲３▼配管、流量計、透過膜モジュール等に付着したマンガンを洗浄する場合は、本液を循環させ洗浄する。
▲４▼この発明の溶液を吹き付ける。
等がある。
【００２３】
【発明の効果】
この発明は、浄水過程において、黒水の原因となり、美観を損ない、透過膜による水処理装置の膜の閉塞を引き起こす付着二酸化マンガンスケールを効率よく洗い落とすことができるため、使用する酸の量の低減化、洗浄時間の短縮、洗浄効果の改善、洗浄液の安全性が得られる。
【００２４】
この発明の溶液は、従来付着二酸化マンガンの洗浄に効果があるとされているシュウ酸に匹敵する洗浄効果を有し、シュウ酸に比べ価格の低い硫酸第一鉄、鉄粉などの鉄源を使用することによって、シュウ酸の使用に比べ、洗浄時の薬品コストを削減することができる。酸は塩酸よりも硫酸を使用した方がコストは低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の鉄溶解濃度の影響による二酸化マンガン除去効果を示す比較実験写真である。
【数１】
Claims (3)
- ０．１〜２．０規定の酸溶液に、２価の鉄イオンを０．１〜３ｇ／リットル溶解させた二酸化マンガンスケールの洗浄液。
- 前記酸溶液が硫酸溶液である、請求項１記載の二酸化マンガンスケールの洗浄液。
- 前記酸溶液が塩酸溶液である、請求項１記載の二酸化マンガンスケールの洗浄液。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05256497A JP4051580B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | 二酸化マンガンスケ−ルの洗浄液 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05256497A JP4051580B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | 二酸化マンガンスケ−ルの洗浄液 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH10230294A JPH10230294A (ja) | 1998-09-02 |
| JP4051580B2 true JP4051580B2 (ja) | 2008-02-27 |
Family
ID=12918307
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP05256497A Expired - Fee Related JP4051580B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | 二酸化マンガンスケ−ルの洗浄液 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP4051580B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| DE102008005605A1 (de) * | 2008-01-22 | 2009-07-23 | Thyssenkrupp Steel Ag | Verfahren zum Beschichten eines 6 - 30 Gew. % Mn enthaltenden warm- oder kaltgewalzten Stahlflachprodukts mit einer metallischen Schutzschicht |
| GB2535131B (en) * | 2014-10-06 | 2022-05-04 | Nch Corp | pH neutral deruster composition |
-
1997
- 1997-02-21 JP JP05256497A patent/JP4051580B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH10230294A (ja) | 1998-09-02 |
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