JP4051003B2 - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置、とりわけ一気筒当たり2つの吸気弁を駆動させる2つの揺動カムを備え、この両揺動カムを利用してリンクアームの不用意な傾きを防止できる内燃機関の動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の動弁装置としては、本出願人が先に出願した以下の特許文献に記載されたものがある。
【0003】
概略を説明すれば、この動弁装置は、一気筒当たり2つの吸気弁を有するものに適用されたもので、クランク軸の回転に同期回転する駆動軸の外周に、軸心が駆動軸の軸心から偏心した駆動カムが固設されていると共に、前記駆動軸の外周に円筒状の2つのカムシャフトが同軸上に回転自在に設けられている。
【0004】
この各カムシャフトは、それぞれの外周に一対の吸気弁に対応した左右一対の揺動カムが一体に設けられており、この両揺動カムに前記駆動カムの回転力が多節リンク状の伝達機構を介して伝達されて、各吸気弁をバルブリフターを介して開閉作動させるようになっている。
【0005】
前記伝達機構は、各揺動カムの上方に配置されて、制御軸に制御カムを介して揺動自在に支持されたロッカアームと、一端部の円環部が駆動カムに回転自在に連係しかつ突起状の他端部がロッカアームのいわゆる2面幅状の一端部の間に回転自在にピンを介して連結されたリンクアームと、一端部がロッカアームの二股状の他端部にピンを介して回転自在に連結され、他端部が前記各揺動カムのカムノーズ部側にピンを介して回転自在に連結された一対のリンクロッドとから構成されている。
【0006】
また、前記両揺動カムは、駆動カム(リンクアーム)を中心とした左右両側の対称位置に設けられており、ロッカアームの二股状の他端部によって各揺動カムを同時に揺動させることにより、両吸気弁の開閉リフトのばらつきの発生を防止するようになっている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−38913号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来の動弁装置にあっては、駆動カムの回転力を各揺動カムに伝達する手段として、リンクアームやロッカアーム及びリンクロッドによって構成される多節リンク機構を用いていることから、機関の作動に伴い各多節リンク機構の各構成部材が激しく作動する。このため、該各構成部材の摩耗の発生や作動音の発生を抑制するために、各構成部品の高い寸法精度や位置決め精度が要求されている。
【0009】
しかしながら、前述の多節リンク機構の特にリンクアームは、他端側の突起部がロッカアームの2面幅状の一端部の間に配置されて軸方向の移動が規制されて比較的高い位置決め精度になっているものの、駆動カムを内部に摺動自在に保持する他端側の円環部は駆動軸の軸方向での何らの移動規制手段を有しないことから、該軸方向へ僅かながら移動して、全体が駆動軸の軸方向側に左右に僅かに傾動して、該リンクアームがばたついてしまうおそれがある。
【0010】
このため、特に、円環部の内周面と駆動カムの外周面の一部に片当たりが発生して局部的に摩耗が発生し易くなり、耐久性の低下を招いている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の動弁装置の実情に鑑みて案出されたもので、請求項1に記載の発明は、両揺動カムを駆動カムの両側に配置すると共に、該両揺動カムの対向端面間に、前記リンクアームの円環部を駆動軸の軸方向の両側から挟持状態に支持したことを特徴としている。
【0012】
したがって、この発明によれば、リンクアームの円環部両側が両揺動カムの対向端面に挟持状態、つまりリンクアームや各揺動カムの作動に支障が生じない状態で例えば当接支持されることによって、前記円環部側の軸方向への自由な移動が規制される。このため、該リンクアームの傾動が防止されて、円環部の内周面と駆動カムの外周面間の部分的な片当たりが防止される。この結果、摩耗の発生が防止されて、耐久性の向上が図れる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記両揺動カムの少なくとも一方の対向端面とリンクアームとの間に、シムを設けたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、別個に揺動する揺動カムの端面とリンクアームが直接摺動しなくなるため、摩耗の発生が防止される。さらに、シムを設けたことによって揺動カムの幅、つまり駆動軸の軸方向の長さにばらつきが生じて、揺動カムの正確な位置決めができなったとしても、シムによって隙間調整ができることから、リンクアームの円環部の軸方向の自由な移動を確実に規制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記駆動軸の内部から前記駆動カムと円環部との間に潤滑油を供給する潤滑油供給回路を設けたことを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、駆動カムの外周面と円環部の内周面との間に潤滑油が強制的に供給されて、該両者間の潤滑性能が向上する。したがって、前記円環部の軸方向の自由な移動規制作用と相俟って、円環部と駆動カムとの摩耗の発生を効果的に防止することができる。
【0017】
しかも、前記円環部の内周面と駆動カムの外周面との間から流出した潤滑油は、円環部と各揺動カムとの間にも供給されるため、かかる部位の潤滑性能も向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の動弁装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態の動弁装置は、従来と同じく1気筒当たり2つの吸気弁を備えかつ該各吸気弁のバルブリフトを機関運転状態に応じて可変にする可変機構を備えた内燃機関に適用されている。
【0019】
すなわち、図1〜図5は第1の実施形態にかかる動弁装置を示し、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられた一対の吸気弁2,2と、機関前後方向に配置された内部中空状の駆動軸3と、該駆動軸3の所定位置に固設された駆動カム4と、前記駆動軸3に揺動自在に支持されつつ駆動カム4を中心として左右対称位置に配置され、バルブリフター6,6を介して前記各吸気弁2,2を開作動させる一対の揺動カム5,5と、駆動カム4と揺動カム5,5との間に連係されて、駆動カム4の回転力を揺動カム5,5の揺動力(開弁力)として伝達する伝達機構7と、該伝達機構7の作動位置を可変にする制御機構8とを備えている。
【0020】
前記吸気弁2,2は、シリンダヘッド1の上端部内に収容されたほぼ円筒状のボアの底部とバルブステム上端部のスプリングリテーナとの間に弾装されたバルブスプリング9,9によって閉方向に付勢されている。
【0021】
前記駆動軸3は、機関前後方向に沿って配置されて、両端部がシリンダヘッド1の上部に設けられた複数の軸受24によって回転自在に軸支されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図2中、時計方向に設定されている。前記各軸受24は、図1に示すように、両吸気弁2,2の外側に配置され、シリンダヘッド1の上端部に一体に形成されて中央に半円状の軸受溝を有する基部24aと、該基部24aの上部に配置されて、中央に前記軸受溝と一緒に駆動軸3を支持する半円状の軸受溝を有するブラケット24bとから構成されている。この各ブラケット24bは、それぞれ2本のボルト25、26によって基部24aに固定されている。
【0022】
前記駆動カム4は、ほぼ円盤状に形成されて、駆動軸3と一体に形成されていると共に、中心Yが駆動軸3の軸心Xから偏心した位置に設けられて、外周面4aが偏心円のカムプロフィールに形成されている。
【0023】
前記各揺動カム5は、図2に示すように同一形状のほぼ雨滴状を呈し、基端部5a側がカムシャフト4を介して前記駆動軸3の軸心Xを中心として揺動するようになっていると共に、下面にはカム面5bがそれぞれ形成され、このカム面5bは、基端部5a側の基円面と、該基円面からカムノーズ部5c、5c側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部5cの先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面とから形成されており、該基円面とランプ面、リフト面及び頂面とが、揺動カム5の揺動位置に応じて各バルブリフター6の上面所定位置に当接するようになっている。
【0024】
また、各揺動カム5,5は、前記基端部5aが駆動軸3に対して半割状に上下に分割形成されて、該各分割部5d、5eが前後のボルト23,23によって上下方向から結合されて、結合された状態でそれぞれの半円状の内面が駆動軸3の外周面に摺接する円筒状の摺動面5fに形成されている。
【0025】
前記伝達機構7は、駆動軸3の上方に配置されたロッカアーム10と、該ロッカアーム10の一端部10aと駆動カム4とを連係するリンクアーム11と、ロッカアーム10の他端部10bと両揺動カム5、とを連係する一対のリンクロッド12、12とを備えている。
【0026】
前記ロッカアーム10は、中央の筒状基部の内部に支持孔10cが横方向から貫通形成され、この支持孔10cを介して後述する制御カム17に揺動自在に支持されている。また、筒状基部の径方向の一方側から延出した一端部10aは、中央に切欠部10dが形成されていわゆる2面幅状に形成されている一方、筒状基部の他方側から延出したアーム部である他端部10b、10bは、前記2つの揺動カム5に対応して二股状に形成されている。この二股状の他端部10b、10bは、筒状基部を中心として左右対称位置に配置され、それぞれの先端部に前記リンクロッド12の一端部12aと連結するピン20が嵌入するピン孔10d、10dがそれぞれ貫通形成されている。また、各他端部10b、10bは、前記両揺動カム5に対して重力方向の上側から各リンクロッド12,12を介して揺動力を伝達するようになっている。また、このロッカアーム10は、駆動カム4側の下面10e全体が凹状の曲面形状に形成されている。
【0027】
前記リンクアーム11は、一端側の比較的大径な円環部11aと、該円環部11aの外周面所定位置に突設された他端側の突出端11bとを備え、円環部11aの中央位置には、前記駆動カム4の外周面4bが回転自在に嵌合する嵌合孔11cが形成されている一方、突出端11bは、前記ロッカアーム10の一端部10aの切欠部10dに挿入配置されていると共に、内部軸方向に貫通形成されたピン孔11dに挿通したピン13によって前記一端部10aに回転自在に連結されている。また、前記円環部11aは、その駆動軸3の軸方向の厚さ幅が前記駆動カム4の厚さ幅よりも若干大きく設定されて、該駆動カム4を円環部11aの内側で保持するようになっている。
【0028】
前記リンクロッド12は、プレス成形によって横断面ほぼコ字形状に折曲形成されており、両端部12a,12b付近は二枚板となり、そこにピン孔12c、12dが貫通形成されている。この各ピン孔12c、12dには、前記ロッカアーム10の他端部10b、10bと回転自在に連結するピン14と、揺動カム5、5のカムノーズ部5c、5c側と回動自在に連結するピン15が挿通されている。
【0029】
前記制御機構8は、シリンダヘッド1の上方位置に配置された図外の軸受に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16の外周に一体に固定されてロッカアーム10の揺動支点となる制御カム17とを備えている。
【0030】
前記制御軸16は、駆動軸3と並行に機関前後方向に配設されていると共に、一端部に設けられた図外の電動アクチュエータ(DCモータ)により歯車機構を介して所定回転角度範囲内で回転制御されるようになっている。一方、前記制御カム17は、円筒状を呈し、軸心P1位置が肉厚部の分だけ制御軸16の軸心P2から所定分だけ偏倚している。
【0031】
また、電動アクチュエータは、機関の運転状態を検出する図外のコントローラからの制御信号によって駆動するようになっており、このコントローラは、マイクロコンピュターが内蔵され、クランク角センサやエアーフローメータ,水温センサ及び制御軸16の回転位置を検出するポテンションメータ等の各種センサからの検出信号に基づいて現在の機関運転状態を演算等により検出して、前記電動アクチュエータに制御信号を出力している。
【0032】
そして、前記各揺動カム5,5は、前記各基端部5a、5aの対向端面、すなわち各摺動面5fの両側の孔縁部に、図1にも示すように、円筒状の延長部27a、27b、28a、28bがそれぞれ一体に形成されている。この各延長部27a、27b、28a、28bは、各基端部5aを含めた軸方向の全体の長さが、前記各軸受24,24の対向面から前記リンクアーム11の円環部11aの軸方向の両側面付近まで形成されて、前記対向する内側の延長部27a、28aの対向内端面によって円環部11aを両側から挟持する形で支持している。一方、外側の各延長部27b、28bの外端面が、前記各軸受24,24の対向面に当接している。したがって、前記円環部11aは、各延長部27a、27b、28a、28bによって両軸受24,24を介して軸方向の自由な移動が規制されるようになっている。
【0033】
さらに、前記駆動カム4の外周面とリンクアーム11の嵌合孔11cの内周面との間、並びに制御カム17の外周面及びロッカアーム10の支持孔10cの内周面との間を潤滑する潤滑油供給回路が設けられている。
【0034】
すなわち、前記潤滑油供給回路は、図1及び図2に示すように、前記駆動軸3の内部軸心方向に沿って形成された第1油通路18と、駆動軸3の直径方向及び駆動カム4の内部に径方向に沿って連続して形成されて、前記第1油通路18と駆動カム4の外周面4aとリンクアーム11の嵌合孔11cとの間を連通させる第1連通路19と、前記制御軸16の内部軸心方向に沿って形成された第2油通路20と、制御軸16の直径方向に形成されて、第2油通路20と連通する直径方向孔21と、前記制御カム17の肉厚部に径方向に沿って形成されて、直径方向孔21とロッカアーム10の支持孔10cの内面と制御カム17の外面との間を連通する第2連通路22とから構成されている。
【0035】
前記第1油通路18は、シリンダヘッド1内部のオイルギャラリーから前記軸受24の内部に連続して形成された油導入通路30と、駆動軸3の周壁に径方向に形成された油孔31を介して内部に潤滑油が導入されるようになっている。また、前記第2油通路20にも、前記オイルギャラリーから図外の軸受内に形成された油導入通路及び制御軸16の径方向の油孔を介して潤滑油が導入されるようになっている。
【0036】
以下、本実施形態における可変機構の作動を簡単に説明すれば、低リフト制御時には、コントローラからの制御信号によって電動アクチュエータを介して制御軸16が一方向へ回転駆動される。このため、制御カム17は、図7A、Bに示すように、肉厚部が制御軸16に対して図示の右方向へ回動して、かかる回動角度位置に保持される。これにより、ロッカアーム10の他端部10b側が上方向へ回動する。このため、各揺動カム5は、リンクロッド12を介してカムノーズ部5c側が強制的に引き上げられて全体が図7の時計方向の回動位置に保持される。
【0037】
したがって、駆動カム4が回転してリンクアーム11がロッカアーム10の一端部10aを押し上げると、図7Bに示すように、そのリフト量がリンクロッド12を介して揺動カム5及びバルブリフター6に伝達されるが、そのリフト量は十分小さくなる。
【0038】
よって、吸気弁2,2のバルブリフト量(L1)が小さくなると共に、開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、例えば低負荷域の燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0039】
一方、高リフト制御時は、コントローラからの制御信号によって電動アクチュエータにより制御軸16が他方向へ回転駆動される。したがって、制御軸16が、図8A、Bに示すように、制御カム17を所定回転角度位置まで回転させ、肉厚部を下方向へ移動させる。このため、ロッカアーム10の他端部10b側が下方へ移動して揺動カム5のカムノーズ部5cを、リンクロッド12を介して下方へ押圧して該揺動カム5全体が図8の時計方向の回動位置に保持される。
【0040】
したがって、各揺動カム5の各バルブリフター6の上面に対する各カム面5bの当接位置がカムノーズ部5c側に移動する。このため、駆動カム4が回転してロッカアーム10の一端部10aを、リンクアーム11を介して押し上げると、図8Bに示すように、バルブリフター6に対するそのリフト量は大きくなる。
【0041】
よって、各吸気弁2のバルブリフト量L2が大きくなって、開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、例えば、高負荷域における吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0042】
また、この実施形態によれば、前記リンクアーム11は、突出端11bがロッカアーム10の一端部10aの切欠部10d内に保持されて左右方向の移動が規制されているとと共に、円環部11aが揺動カム5,5の各延長部27a、27b、28a、28bによって挟持状態、つまりリンクアーム11や各揺動カム5,5の作動に支障が生じない状態で当接支持されることによって、前記円環部11a側の軸方向への自由な移動が規制される。このため、該リンクアーム11の傾動が防止されて、円環部11aの嵌合孔11cの内周面と駆動カム4の外周面4aとの間の部分的な片当たりが防止される。
【0043】
この結果、嵌合孔11cの内周面と駆動カム外周面4aの摩耗の発生が防止されて、耐久性の向上が図れる。
【0044】
次に、この実施形態における潤滑油供給回路の作用について説明する。機関の作動中に、第1油通路18内に供給された潤滑油は、図1及び図2に示すように、第1連通路19を通って嵌合孔11cの内周面と駆動カム4の外周面4aとの間の第1摺動隙間C内に供給される。したがって、この駆動カム4の外周面4aとリンクアーム11の嵌合孔11cとの間が強制的に潤滑されて潤滑性能が向上する。
【0045】
したがって、前記円環部11aの左右方向(駆動軸3の軸方向)の自由な移動規制作用と相俟って、円環部11aと駆動カム4との摩耗の発生を効果的に防止することができる。
【0046】
しかも、前記嵌合孔11cの内周面と駆動カム4の外周面4aとの間から流出した潤滑油は、円環部11aの外面と各揺動カム5,5の各延長部27a〜28bの対向端部との間にも供給されるため、かかる部位の潤滑性能も向上する。さらに、該対向端部へ供給された潤滑油は、バルブリフター6の上面に落下し、揺動カム5,5とバルブリフター6の上面間の潤滑性能も向上する。
【0047】
一方、第2油通路20内に供給された潤滑油は、直径方向孔21及び第2連通路22を通って支持孔10cの内面と制御カム17の外面との間の第2摺動隙間C2内に供給される。したがって、この制御カム17とロッカアーム10との間が強制的に潤滑される。
【0048】
さらに、この実施形態にあっては、前記各揺動カム5,5は、基端部5a、5a側が分割形成されているため、駆動軸3と駆動カム4とを一体に形成することができる。
【0049】
すなわち、各揺動カム5,5の基端部5a、5aが分割形成されていない場合は、各構成部品を組み付ける際に、各気筒毎に駆動軸3の両端部側から軸方向に沿って各揺動カム5,5を挿通した後、駆動軸3と別体の駆動カム4をピンなどによって固定しなければならず、この組付作業が極めて煩雑であった。しかし、各揺動カム5,5を分割形成したことから、駆動軸3に予め駆動カム4を一体に形成してあっても各揺動カム5,5を駆動軸3の径方向から取り付けることができるのである。
【0050】
したがって、駆動軸3と駆動カム4との一体化が可能になり、全体の組付作業性が向上する。
【0051】
また、一体化された駆動軸3と駆動カム4の軸方向の投影面積(投影径)が、リンクアーム11の嵌合孔11cの内径よりも小さくなっていることから、駆動軸3と駆動カム4が一体であっても、リンクアーム11を駆動カム4の外周面4aに組み付けることができ、その後、各揺動カム5,5を径方向から組み付けることができる。したがって、かかる各部材の組付性が良好になり、組付作業能率の向上が図れる。
【0052】
図9は本発明の第2の実施形態を示し、前記揺動カム5,5の内側の延長部27a、28aとリンクアーム11の円環部11a両側面との間、及び一方の外側の延長部28bと一方の軸受24の内側面との間に隙間調整用のシム32,33,34が設けられている。
【0053】
この各シム32,33,34は、それぞれ軸方向の長さが異なり、内側のシム32,33は軸方向の長さが短いほぼ円環状に形成され、外側のシム34は軸方向の長さが比較的長くて円筒状に形成されている。
【0054】
すなわち、かかる長さの異なる各種のシム32〜34を選択的に配置することによって、各構成部品の成形誤差や組付誤差などに起因して、前記各延長部27a〜28bの軸方向の長さにばらつきが生じ、各揺動カム5,5の正確な位置決めができなったとしても、種々のシム32〜34を選択的に取り付けて各軸受24,24と円環部11a間の隙間調整を行うことができる。したがって、リンクアーム11の円環部11aの軸方向の自由な移動を確実に規制することができる。
【0055】
なお、シム32〜34は、前記隙間の軸方向の長さに応じて適宜軸方向の長さがそれぞれ異なるものを予め用意しておくか、あるいは隙間長さの測定後に長さを調整することも可能である。
【0056】
また、この調整シムの替わりに、一定の厚みを有する単なるスペーサを用いてもよい。例えば、シム32をスペーサとした場合、別個に揺動する揺動カム5の端面とリンクアーム側面が直接接触しなくなるので、該端面と側面の摩耗が防止される。また、シム34をスペーサとした場合、アルミ材などからなるシリンダヘッド24の側面が揺動カム5の端面に直接接触しなくなり、軸受24側面の摩耗が防止される。
【0057】
前記実施形態から把握できる請求項以外の技術的思想について、以下に記載する。
(イ)前記両揺動カムは、前記対向端面と反対側の端面側がシリンダヘッドに固定された前記駆動軸用の軸受部材によって軸方向の移動が規制されるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の動弁装置。
【0058】
この発明によれば、各揺動カムの外側の各端面側が軸受部材に当接して軸方向の移動が規制されることから、前記リンクアームの軸方向の不用意な移動をより確実に規制することができる。
(ロ)前記ロッカアームは、制御軸の外周に固定された偏心制御カムの外周面に揺動自在に支持されていると共に、他端部に機関弁を駆動する前記揺動カムがリンクロッドを介して連係されている一方、前記制御軸と制御カムを機関運転状態に応じて回転制御することにより、前記ロッカアームの揺動支点を変化させて、揺動カムの機関弁に対する摺動位置を変化させることにより、機関弁のバルブリフト量を変化させるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の動弁装置。
【0059】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、前記吸気弁側ばかりか排気弁側に適用することも可能であり、また動弁装置としては、可変機構を備えない通常の動弁装置に適用することも可能である。
【0060】
また、ロッカアームとしては、一端部で直接機関弁を押圧する一般的なロッカアームとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る動弁装置を展開して示す断面図である。
【図2】本実施形態の動弁装置の側面図である。
【図3】本実施形態の動弁装置の平面図である。
【図4】本実施形態の動弁装置の斜視図である。
【図5】本実施形態の動弁装置を示す斜視図である。
【図6】本実施形態の動弁装置の正面図である。
【図7】Aは本実施形態の動弁装置による最小リフト制御時における吸気弁の閉作動状態を示す作用説明図、Bは同最小リフト制御時における吸気弁の開作動状態を示す作用説明である。
【図8】Aは本実施形態の動弁装置による最大リフト制御時における吸気弁の閉作動状態を示す作用説明図、Bは同最大リフト制御時における吸気弁の開作動状態を示す作用説明である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る動弁装置を展開して示す断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド
2…吸気弁
3…駆動軸
4…駆動カム
4a…外周面
5…揺動カム
7…伝達機構
8…可変機構
10…ロッカアーム
10a…一端部
10b…他端部
11…リンクアーム
11a…円環部
11c…嵌合孔
18…第1油通路
19…第1連通路
20…第2油通路
21…直径方向孔
22…第2連通路
27a・27b…延長部
28a・28b…延長部
32〜34…シム
Claims (3)
- 駆動軸の回転力が伝達され、軸心が駆動軸の軸心と偏心して設けられるほぼ円形状の駆動カムと、
円環部の内部に前記駆動カムを回転自在に保持すると共に該駆動カムからの回転力を往復運動に変換するリンクアームと、
該リンクアームから伝達された駆動力によって揺動するロッカアームと、
前記駆動軸に揺動自在に支持されて、前記ロッカアームから伝達された揺動力により揺動して機関弁を駆動する一対の揺動カムとを備えた内燃機関の動弁装置において、
前記両揺動カムを前記駆動カムの両側に配置すると共に、該両揺動カムの対向端面間に前記リンクアームの円環部を駆動軸の軸方向の両側から挟持状態に支持したことを特徴とする内燃機関の動弁装置。 - 前記両揺動カムの少なくとも一方の対向端面とリンクアームとの間に、シムを設けたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁装置。
- 前記駆動軸の内部から前記駆動カムと円環部との間に潤滑油を供給する潤滑油供給回路を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の動弁装置。
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