JP4050870B2 - Dnaの合成方法 - Google Patents

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起代蔵 浅田
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    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6844Nucleic acid amplification reactions
    • C12Q1/686Polymerase chain reaction [PCR]

Description

技術分野
本発明は、遺伝子工学分野において有用であり、ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)法に要する時間を短縮しうるDNA合成方法、該方法に使用されるキット及び製造品に関する。
背景技術
遺伝子工学分野の研究においてDNAの合成は種々の目的に使用される。このうちオリゴヌクレオチドのような短鎖のDNAの化学合成を除けば、そのほとんどはDNAポリメラーゼを利用した酵素的方法により実施されている。したがってDNA塩基配列決定、DNAの標識、部位特異的変異導入のための試薬として、DNAポリメラーゼは高い価値を有している。
また最近、PCR法の開発により、耐熱性DNAポリメラーゼが注目を集め、PCR法に適した種々のDNAポリメラーゼが開発され、商品化されている。
さらに、複数のDNAポリメラーゼを組み合わせて使用することによって単独のDNAポリメラーゼでは不可能であった効率のよいDNA合成を可能とした方法が知られている[プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第91巻、第5695〜5699頁(1994)]。
該方法は、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ(例えば、ピロコッカス フリオサス由来α型DNAポリメラーゼ)と該活性を有していないDNAポリメラーゼ[例えば、サーマス アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼ(Taq DNA polymerase)]とを混合してPCRに使用するという方法であり、LA−PCR法として知られている。
この方法により、従来行われてきた1種のDNAポリメラーゼのみを使用するPCRに比べて増幅されるDNAの収量が増加する。また、従来のPCRでは増幅できなかった長鎖長のDNAを増幅することも可能となっている。
従来、一般的に行われていた最適PCR条件を表Aに示す。1kbp増幅においては約90分の反応時間、10kbp増幅においては約268分の反応時間、20kbp増幅においては約478分の反応時間で、各DNAの増幅が終了する。
Figure 0004050870
このPCR法は、微量のDNAを短時間に数百万倍に増幅する能力があることから、医学、農学を含むあらゆる研究、検査、臨床の分野で応用され、特にガンやエイズのような感染症の遺伝子診断等に威力を発揮している。また市民生活においても、犯罪者や親子関係の遺伝子診断による確認、食品中の有害菌の遺伝子検出等その応用範囲は拡大している。
しかしながら、迅速な結果を出す必要がある食品検査や、大量にPCRを行なう必要がある臨床検査においては、PCRの反応時間を更に短縮し、PCRを高速化することが重要な課題となっている。
さらに、DNAチップ作製、ゲノム解析等において、PCR操作は必要不可欠なものであり、その効率を向上させることは研究全体を効率よく行なう上でも重要である。
発明の開示
本発明の目的は、これまでのPCRに比べてより短時間の高速PCRを行なうための、DNA合成方法、該合成方法に使用するキット及び製造品を提供することにある。
本発明の第1の発明は、ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)法によるDNAの合成に要する時間を短縮させたDNA合成方法であって、下記(A)及び(B)に示す条件でPCRを行なった場合に、反応液50μlあたりに10ngを超える約2kbの増幅DNA断片を与えるに有効な量のDNAポリメラーゼを使用することを特徴とするDNA合成方法:
(A)反応液:DNAポリメラーゼ、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液、ならびに
(B)反応条件:99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCR、
に関する。
本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明のDNA合成方法に用いられるキットであって、該キットの指示書に従って調製されるPCR試薬液が、下記(A)及び(B)に示す条件でPCRを行なった場合に、反応液50μlあたりに10ngを超える約2kbの増幅DNA断片を与えるに有効な量のDNAポリメラーゼを含むことを特徴とするDNA合成用キット:
(A)反応液:DNAポリメラーゼ、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液、ならびに
(B)反応条件:99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCR、
に関する。
本発明の第3の発明は、包装材と該包装材中に封入されたPCR用試薬からなる製造品であって、該PCR用試薬がDNAポリメラーゼを含有し、該包装材に付されたラベルまたは包装材に添付された指示書に前記PCR試薬が短時間でのPCRに使用できることが表示されてなる、PCR用試薬の製造品、
に関する。
発明を実施するための最良の形態
(1)本発明のDNA合成方法
本発明のDNA合成方法は、PCR法によるDNAの合成時間を短縮させたDNA合成方法、すなわち高速PCRであって、下記(A)及び(B)に示す条件でPCRを行なった場合に、反応液50μlあたりに10ngを超える約2kbの増幅DNA断片を与えるに有効な量のDNAポリメラーゼを使用することを特徴とする:
(A)反応液:DNAポリメラーゼ、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液、ならびに
(B)反応条件:99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCR。
本発明のDNA合成方法によれば、「有効な量のDNAポリメラーゼ」を使用するため、一定の鎖長のDNA断片の相補鎖合成反応(伸長ステップ)に要する時間を大幅に短縮すること、すなわち、1サイクルの反応に要する時間を短縮することができる。この結果、PCRにおいて、従来にない短時間で目的のDNA断片を増幅すること、すなわち、PCRに要する総時間が短縮された高速PCRを可能にするという優れた効果を発揮する。
本発明において、「有効な量のDNAポリメラーゼ」とは、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含む容量50μlの反応液を用い、99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCRを行なった場合に、反応液50μlあたり、約2kbのDNA断片量が10ngを超えるに十分な活性の量のDNAポリメラーゼ量を意味する。従って、この条件下で、PCRを行ないうるDNAポリメラーゼ量であれば、そのタンパク質量に限定はない。この有効な量のDNAポリメラーゼを使用することにより、当該PCRを高速化することができる。
本明細書に記載の「大腸菌ゲノムDNA」としては、例えば、大腸菌JM109株(Escherichia coli JM109)より、日野嘉幸、平井久丸、櫻木郁之助共著、1987年、ソフトサイエンス社発行、「遺伝子・タンパク質 実験操作プロッティング」記載の方法で調製されたゲノムDNAが挙げられる。また、その調製法の詳細はバイオ ビュー(Bio View)、第13号、第6〜5頁(1994年、宝酒造社発行)にも記載されている。さらに、当該ゲノムDNAは、LA PCRTM用genome DNA setとして宝酒造社より入手できる。
なお、反応液組成は、使用するDNAポリメラーゼに適した組成の反応液を使用すればよい。なお、「DNAポリメラーゼに適した組成」とは、該DNAポリメーゼに至適な種類の緩衝液、至適pH、至適塩濃度(マグネシウム塩など)、至適dNTP濃度、至適プライマー量、その他の添加物などの至適条件を与えうる組成を意味する。
ここで、DNAポリメラーゼの酵素活性単位として、鋳型DNAへのヌクレオチド(例えば標識dNTP)の取り込みを触媒する能力を指標として表される。このような活性測定の方法は、例えば1966年、D.R.Harper & Row社発行、Cantoni G.L.ら編集、プロシージャーズ イン ヌクレイック アシッズ リサーチ(Procedures in Nucleic Acids Research)第264頁、DNAポリメラーゼ フロム エシェリヒア コリ(DNA Polymerase from Escherichia coli、Richardson C.C.著)に記載されている。たとえば、サーマス アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼであるTaq DNA polymeraseの活性を該方法により測定する際の条件として、下記のような条件が例示される。
(a)鋳型DNA:活性化サケ精子DNA;
(b)反応液組成:25mM TAPS(25℃においてpH9.3)、50mM 塩化カリウム、2mM 塩化マグネシウム、1mM β−メルカプトエタノール、200μMずつのdATP、dGTP及びdTTP並びに100μM [α−32P]dCTP、全量50μl;
(c)活性測定方法:(a)の鋳型DNAを含む(b)の組成の反応液にTaq DNA polymeraseを含む試料を添加して74℃で10分間インキュベートした後、反応液中の酸不溶性物質を回収し、該酸不溶性物質中に含まれる放射活性を測定する。
前記活性測定方法に用いられる活性化サケ精子DNAは、以下のように調製する。
▲1▼ Salmon testes DNA(シグマ社製)を滅菌水で、膨潤させる。
▲2▼ 70U/μlのDNase I(宝酒造社製)を150mM 塩化ナトリウムで500倍〜4000倍の範囲で、好ましくは1500倍〜3000倍の範囲で希釈する。
▲3▼ 20mgの上記膨潤したDNAを50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)、5mM 塩化マグネシウム、0.05% BSA、上記希釈したDNase Iを50μl添加し、反応液容量を10mlにする。
▲4▼ 37℃、10分間処理後、77℃、10分間処理して酵素を失活させる。その一部に最終濃度約0.4Mになるように過塩素酸(HClO)を添加し、遠心後、得られた上清をA260試料とする。残部は、フェノール抽出、クロロホルム・イソアミルアルコール抽出、エタノール沈澱を行ない精製する。
▲5▼ 上記酵素処理前のDNAのUV260の吸光度(A260対照)及び上記▲4▼で得たA260試料を測定し、(A260試料)/(A260対照)×100(%)で分解率を算出する。この時、好ましくは分解率が約3%から約9%の、さらに好ましくは約4.5%〜7.5%の酵素処理DNAが上記取り込み活性測定用の基質として使用できる。
なお、取り込み活性を調べる酵素に応じて、各分解率の酵素処理DNAを用いた予備実験で、最も至適な分解率の酵素処理DNAを選択することは当然のことである。
通常、上記の方法で測定されたDNAポリメラーゼ活性、すなわち、DNAへのdNTP取り込み活性(以下、単にdNTP取り込み活性と記載する)の1単位(以下1Uと記載する)は、「30分間あたりに10nmolのdNTPを酸不溶性物質中に取り込ませる酵素量」と定義される。
従来、DNAポリメラーゼを使用するPCRでは、50μlの反応液中にdNTP取り込み活性として1.25U〜2.5UのDNAポリメラーゼを添加することが標準的である。本発明においては、特に限定するものではないが、例えば50μlの反応液あたりに、dNTP取り込み活性として4〜20UのDNAポリメラーゼを添加してPCRを実施することにより、従来にない短時間でのDNAの増幅、すなわちPCRの高速化が可能になる。
本発明の高速PCRの例を表Bに示す。前出の表Aと表Bとの比較により、本発明の高速PCRによる時間短縮効果は明白である。本発明により、PCR総時間が短縮された高速PCRが提供される。
Figure 0004050870
本発明の高速PCRに使用される有効量のDNAポリメラーゼを、本発明の高速PCR条件下でDNA断片の増幅に使用した場合には、表Aに記載の、dNTP取り込み活性として1.25U/50μlのタカラEx Taqを用いたPCRと同等の増幅産物量を与える。従って、本発明に使用される有効量のDNAポリメラーゼ活性単位は、dNTP取り込み活性では従来技術より高活性単位を示すが、PCRパフォーマンスで表される活性単位、即ちPCRプロセスにおける増幅産物量の比較(PCR effective ratio)で表される活性単位では従来技術と同等である。
本発明のDNA合成方法の態様としては、1種類のDNAポリメラーゼを使用する方法、2種以上のDNAポリメラーゼを使用する方法が挙げられ、前記2種以上のDNAポリメラーゼを使用する方法としては、具体的には、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に有さない他のDNAポリメラーゼとを使用する方法(前出プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ USA)、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する2種以上のDNAポリメラーゼを使用する方法、α型のDNAポリメラーゼと非α非ポルI型のDNAポリメラーゼとを使用する方法等が挙げられる。ここで、「3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に有しない他のDNAポリメラーゼ」には、天然由来の3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持たないDNAポリメラーゼ又は人為的に3’→5’エキソヌクレアーゼ活性発現に関与する機能部分を改変することにより該活性を発現しないDNAポリメラーゼを含む。
本発明において使用されるDNAポリメラーゼの量(すなわち前記「有効な量のDNAポリメラーゼ」)は、標準的なPCR法に使用するための市販の酵素やキットに添付された取扱説明書などに記載の「dNTPの取り込み活性」表示においては、標準的に使用されているDNAポリメラーゼの使用量を超える量となる。この酵素活性表示において、操作に要する時間を短縮する効果を発揮させるのに有効な量を使用すればよい。
具体的には、本発明に使用されるDNAポリメラーゼ量は、操作に要する時間を短縮する効果を十分に発揮させる観点から、dNTP取り込み活性表示においては、好ましくは、従来PCRに使用されていた酵素量の2倍量以上であり、さらに好ましくは4倍量以上であり、同様の観点から、好ましくは30倍量以下であり、さらに好ましくは20倍量以下であることが望ましい。また、2種以上のDNAポリメラーゼを使用する場合においては、それぞれの酵素の有効量を使用してもよく、また2種以上のDNAポリメラーゼのいずれかの酵素量を有効量として使用してもよい。その結果、下記実施例に示すように、従来のPCRでのDNAポリメラーゼ使用量においては目的のDNA断片の増幅が一般的なアガロース電気泳動等で確認できないような、時間を短縮したPCR条件下においても、本発明のDNA合成方法、すなわち高速PCRによれば、短時間でのDNA増幅が可能になり、一般的なアガロース電気泳動で増幅DNAの確認が可能となる。
前記「有効な量のDNAポリメラーゼ」は、例えば、以下のようにして求めればよい。具体的には、任意の鋳型DNAについて、該鋳型DNAの増幅に標準的に使用される酵素量、温度プロフィール等、標準的なPCR条件(標準条件)でPCRを行なう。次に、標準条件の各反応ステップ時間を調整し、増幅反応全体に要する時間が短くなるようなPCR条件を設定し、次に酵素量を変えてPCRを行ない、標準条件下、標準的に使用される酵素量を用いた場合の増幅産物量と、PCRパフォーマンスにおいて実質的に同等の量が得られる酵素量を調べることにより、該酵素量もしくはそれ以上の酵素量を本発明の高速PCRに使用される、DNAポリメラーゼの有効な量として決定することができる。なお、「増幅産物量」は、例えば、PCR終了後に得られた一定量の試料を電気泳動に供し、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドなどで染色して増幅産物に由来するバンドを可視化させ、ついでゲル上で分離されたバンドに含まれるDNA断片量を定量することが可能な機器、例えば、画像解析装置(イメージアナライザー)やデンシトメーター等を用いてバンドに由来する蛍光の強度を測定することにより定量化することができる。さらに、試料中の増幅産物を精製のうえ、公知のDNA定量方法により定量してもよい。
本発明の高速PCRにおいて、設定されたステップ反応時間は、標準条件下における反応時間と比較して短く、かつ同等のPCRパフォーマンスで表される酵素活性を示せば特に限定されるものではない。本発明において、全工程の反応時間、すなわちPCR総時間を従来のPCR総時間の1/2〜1/4以下となるようなPCR条件を設定することが可能になる。例えば1kbp増幅の場合は、従来1サイクル3分を要したものが、本発明の高速PCRにおいては1サイクル40秒とすることができ、PCR総時間は従来の2/9となる。2kbp増幅の場合は、従来1サイクル約9分を要したものが、本発明の高速PCRにおいては1サイクル約1.8分とすることができ、PCR総時間は従来の約1/5となる。また10kbp増幅の場合は、従来1サイクル約16分を要したものが、本発明の高速PCRにおいては1サイクル約3分とすることができ、PCR総時間は従来の約1/5となる。
従来、DNA合成速度に優れ、短時間でのDNA増幅が可能であった酵素としてピロコッカス sp.KOD1(Pyrococcus sp.KOD1)由来DNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼ)を含有する酵素組成物が知られている(特開平10−42874号公報、商品名:KOD Dash DNAポリメラーゼ、東洋紡社製)。しかしながら、該酵素組成物を使用した場合であっても、その使用指示書に従い、製品に記載の2.5U/50μlの標準的な使用量では上記の条件下では、反応液の一部を一般的なアガロース電気泳動に供しても、肉眼では増幅断片を確認できず、高感度イメージアナライザーにより定量されたその増幅産物量は、10ng以下である。一方、本発明に規定される「有効量のDNAポリメラーゼ」を使用した場合、上記条件下でも、アガロース電気泳動で増幅断片を確認でき、その増幅産物量は10ngを超える量である。
本発明のDNA合成方法(すなわち高速PCR)に使用することができるDNAポリメラーゼとしては、特に限定はなく、例えば、ポルI型DNAポリメラーゼ(大腸菌DNAポリメラーゼI、クレノウ・フラグメント、Taq DNAポリメラーゼなど)、α型DNAポリメラーゼ[上記のピロコッカス フリオサス由来α型DNAポリメラーゼ、サーモコッカス リトラリス(Thermococcus litralis)由来DNAポリメラーゼ(VENT DNAポリメラーゼ)、ピロコッカス sp.KOD1 (Pyrococcus sp.KOD1)由来DNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼ)、ピロコッカス sp.GB−D(Pyrococcus sp.GB−D)由来DNAポリメラーゼ(DEEP VENT DNAポリメラーゼ)など]、これらのどちらにも属さない非α非ポルI型DNAポリメラーゼが挙げられる。なお、ポルI型DNAポリメラーゼ、α型DNAポリメラーゼはともにそのアミノ酸配列上の相同性から分類される一群の酵素を指し、そのアミノ酸配列上の特徴はヌクレイック アシッズ リサーチ、第15巻、4045〜4057頁(1991)に記載されている。
また、非α非ポルI型DNAポリメラーゼとしては、例えば、国際公開第97/24444号パンフレットに記載のピロコッカス フリオサス由来DNAポリメラーゼが挙げられる。
本発明の方法に使用できるDNAポリメラーゼは、1種のDNAポリメラーゼに限定されるものではなく、2種以上のDNAポリメラーゼ、例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に有しない他のDNAポリメラーゼとを混合し、DNAポリメラーゼ組成物として使用することもできる。両酵素の混合比は、両酵素の種類に応じて本発明の高速PCRに適した混合比とすればよく、特に限定はないが、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しない他のDNAポリメラーゼとの比が9:1〜1:500の範囲で使用すればよい。そのポリメラーゼ組成物の例としては、タカラEx Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)が好適に使用できる。
一般にPCRにおいては、二本鎖鋳型DNAの一本鎖への解離(変性)、一本鎖鋳型DNAへのプライマーのアニーリング、プライマーからの相補鎖合成(伸長)の3ステップ反応によりDNAの増幅が実施される。また、”シャトルPCR”[『PCR法最前線』、「蛋白質 核酸 酵素」別冊、第41巻、第5号、第425〜428頁(1996)]と呼ばれる前述の3ステップ反応のうちプライマーのアニーリング段階、伸長反応の段階を同一温度で行なう2ステップ反応でもDNAの増幅が実施される。本発明のDNA合成方法は、特に上記の伸長のステップに要する時間を短縮することができため、前記3ステップ反応と2ステップ反応のいずれにおいても、合成反応全体に要する時間を短縮することができる。
本発明のDNA合成方法においては、DNA合成反応を行なうに際し、DNAポリメラーゼの有するDNA合成活性を促進する作用を有する物質、すなわち、高速PCRを更に高性能化する物質の存在下にDNA合成反応を行なうことにより、さらに効率よくDNAの合成を行なうことができる。
高速PCRを更に高性能化する物質の1つとして、電荷的に負の電荷を有する物質又はその塩、なかでも酸性物質又はその塩があげられる。
有効量の酸性物質及び/又はその塩の存在下にPCRを行なうことにより、その高速化を行なうための条件を普遍化することができる。すなわち鋳型の性質(例えば、GC含量等)等により影響を受けない高性能高速PCRを実施することができる。またスパガリン類、その分解物及びそれらの塩から選択される少なくとも1種を添加してもよい。
本発明の高速PCRを行なう際に、有効量の酸性物質及び/又はその塩、例えば、糖鎖骨格を有する酸性物質等の機能の詳細は不明であるが、本発明の高速PCRを行なうための有効量のDNAポリメラーゼを使用した場合、DNAの合成反応時に余剰のDNAポリメラーゼは酸性物質にトラップされるため、酸性物質の効果により、PCRに最適のDNAポリメラーゼが鋳型DNAに供給されることにより、更に高性能高速PCRとなる。
酸性物質又はその塩のDNA合成活性を促進する作用は、単位時間あたりの新規に合成されたDNA鎖の鎖長やPCRにおける増幅産物量によって調べることができる。本発明のDNA合成方法において、上記の酸性物質又はその塩はその作用を発揮するに有効な量が使用される。当該有効量は、例えば、種々の量の上記の酸性物質又はその塩を添加した反応液を用いてPCRを行なった場合と、これを添加せずPCRを行なった場合の増幅産物の量を比較して調べることができる。増幅産物の量は、例えば、PCR後の反応液の一定量を電気泳動に供し、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイド等で染色し、増幅産物に由来するバンドの蛍光の強度をイメージングアナライザー等を用いて測定することにより定量化することができる。
DNA合成活性を促進する作用を有する酸性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸性多糖のような酸性高分子物質を使用することができる。またポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレン硫酸、目的とするDNAの合成のための鋳型とはならないDNA等も使用することができる。なお、本明細書において酸性物質には、DNA合成活性を促進する作用を有するものであれば前記酸性物質の塩をも包含する。本発明に使用することができる酸性多糖としては、例えば、フコース硫酸含有多糖、デキストラン硫酸、カラギーナン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ラムナン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)などに代表される硫酸基を含有する硫酸化多糖類、ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチンなどのポリウロン酸などが包含される。前記フコース硫酸含有多糖としては、例えば、フコース硫酸含有多糖−F又はフコース硫酸含有多糖−Uを使用することができる。ここで、フコース硫酸含有多糖−Fとは、例えば国際公開第97/26896号パンフレットに記載の方法により、あるいは国際公開第97/47208号パンフレットに記載の方法により褐藻植物などより得られる、ウロン酸を実質的に含まないフコース硫酸含有多糖をいう。また、フコース硫酸含有多糖−Uとは、前記パンフレットに記載の方法により得られるウロン酸を含むフコース硫酸含有多糖をいう。
前記酸性物質の塩としては、DNA合成活性を促進する作用を有するものであれば特に限定されないが、水溶性の塩が好ましい。例えば、デキストラン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、デキストラン硫酸カリウム、ヘパリンリチウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。
前記酸性物質は、例えば、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であれば天然物でもよく、化学的又は酵素的な合成物でもよい。前記酸性物質は、それを含有する未精製物、部分精製物又は精製物のいずれでもよい。さらに、DNA合成活性を促進する作用を保持している範囲で適当な修飾を施されていてもよい。また、本発明に用いられる酸性物質は、DNA合成活性を促進する作用を有する物質であれば、前記酸性物質の分子量が、DNA合成活性を促進する作用を発揮するに適当なものとなるように分解操作を施し得られた物質であってもよく、あるいは前記分解操作後に、さらに分子量分画を行なって得られた物質であってもよい。本発明においては、分子量数千以上の酸性物質を好ましく使用することができる。さらに、これらの物質は単独で又は混合して使用することができる。
上記のDNA合成活性を促進する作用を有する酸性物質は、本発明の高速PCRにおいてDNAポリメラーゼの活性を効率よく発揮せしめ、もしくはその活性を保持させる目的で添加される。その添加量は、酸性物質の種類に応じて至適化すればよく、反応液50μlあたりに0.1ng〜100μg、好ましくは1ng〜10μg添加すればよい。当該酸性物質の作用は、特に限定するものではないが、その分子上にDNAポリメラーゼを保持することによってDNAポリメラーゼの鋳型DNAへの非特異的な相互作用を抑制するとともに、鋳型DNAに対して至適量のDNAポリメラーゼを提供することに基づくと考えられる。すなわち、DNA合成反応の進行に伴って増加していく鋳型DNAとDNAポリメラーゼとの相互作用を最適化することにより、効率よくDNA合成反応が進行する。
さらに、増幅領域やプライマーの塩基配列等の影響が低減され、増幅産物を安定して得られるという効果も有する。
前記の酸性物質がその活性を促進するDNAポリメラーゼには特に限定はなく、例えば、上記の種々のDNAポリメラーゼを使用した本発明のDNA合成方法に適用することができる。
本発明においては、スパガリン類及び/又はその塩を本発明の高速PCRにおいてDNAポリメラーゼの活性を効率よく発揮せしめ、もしくはその活性を保持させる目的でPCR溶液に添加、使用することができる。
DNA合成活性を促進する作用を有するスパガリン類としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(I):
Figure 0004050870
〔式中、Guはグアニジノ基、Rは、水素原子又はメチル基を示す〕で表わされる15−デオキシスパガリン化合物又はその塩等が挙げられる。
前記スパガリン類としては、例えば、前記一般式(I)のRが水素原子である15−デオキシスパガリン(15−deoxyspergualin)又はその塩が好適である。
また、前記スパガリン類の塩としては、DNAポリメラーゼ活性促進作用を発揮しうる物質であれば、無機酸との塩又は有機酸との塩のいずれであってもよい。
なお、上記スパガリン類はバチルス属の生産菌より単離されたスパガリンの誘導体で、誘導体の種類によっては抗腫瘍活性、免疫増強活性、免疫抑制活性のあることが知られている物質である(特開昭58−62152号公報、特開昭61−129119号公報、特開昭64−90164号公報)。したがって、これらのスパガリン類は公知の方法により容易に精製し、あるいは公知の方法により合成し、調製することができる。
前記15−デオキシスパガリン又はその塩の製造方法は、例えば、特公昭61−23183号公報又は米国特許第4,603,015号明細書の実施例6等に開示されている。
前記スパガリン類は、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であれば、天然物でも良く化学的又は酵素的な合成物でもよい。前記スパガリン類は、それを含有する未精製物、部分精製物又は精製物のいずれでもよい。さらに、前記スパガリン類は、DNA合成活性を促進する作用を保持している範囲で適当な修飾を施されたものや、あるいは分解物であってもよい。さらに、これらの物質は、単独で又は混合して使用することができる。
本明細書において、スパガリン類の分解物としては、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であれば、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムを用いて強アルカリ条件下に室温で加水分解することにより生じる物質、PCR用緩衝液等の弱アルカリ性条件下に加熱して加水分解することにより生じる物質等が挙げられる。前記条件下に加水分解により生じる物質としては、特に限定されないが、前記一般式(I)で表わされる15−デオキシスパガリン化合物を用いた場合、例えば、一般式(II):
Figure 0004050870
〔式中、Guは一般式(I)と同じ基を示す〕
で表わされる化合物、一般式(III):
Figure 0004050870
〔式中、Rは一般式(I)と同じ基を示す〕
で表わされる化合物、一般式(IV):
Figure 0004050870
で表わされる化合物等が挙げられる。前記スパガリン類の分解物は、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であれば、該スパガリン類の分解物の塩をも包含する。
前記スパガリン類の使用量は、DNA合成活性を促進する作用を発揮しうる範囲であれば特に限定されないが、使用する鋳型DNAの種類及び量、増幅対象の領域の長さ、DNAポリメラーゼの種類に応じて最適の濃度になるような量であればよい。例えば、15−デオキシスパガリン3塩酸塩の場合、最終濃度が0.1μM〜500μM、好ましくは20μM〜100μMになるように添加すればよい。
本発明のスパガリン類の作用は、特に限定されないが、DNAポリメラーゼの活性を効率よく発揮せしめ、若しくはDNAポリメラーゼを保持することによって酵素のDNAへの非特異的な相互作用を抑制することにあると考えられる。また、鋳型DNAとプライマーの複合体に作用してプライマー伸長反応を容易にすることにあると考えられる。
前記スパガリン類と酸性物質とを併用する場合、両者が反応して塩を形成することもあるが、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であればよい。
前記スパガリン類と酸性物質とを併用する場合、DNA合成活性を促進する作用を発揮しうる範囲であれば特に限定されないが、使用する鋳型DNAの種類及び量、増幅対象の領域の長さ、DNAポリメラーゼの種類等に応じて最適の共存比率になるような量であればよい。
なお、前記スパガリン類又はその塩、ならびに前記電荷的に負の電荷を有する物質又はその塩とスパガリン類又はその塩との混合物は、DNA合成活性促進剤として使用することができる。
以上に記載された本発明のDNA合成方法に関して、該方法の詳細な記載、例えばPCR試薬液の調製方法、推奨される反応条件等の情報を記載した印刷物の提供ならびに該情報のインターネットのような電子媒体を通じて本発明の方法を指示する行為も本発明の方法に包含される。
(2)本発明のDNA合成方法に使用されるキット
本発明のキットを使用することにより、高速PCRが可能となる。このようなキットとしては、PCR法によるDNAの合成を伴う反応に用いられるキットであれば特に限定されるものではなく、試験管内でのDNA合成反応を行なうための高速PCRキットが挙げられる。
本発明のキットは、試験管内DNA合成に使用されるキットであって、該キットの指示書に従って調製されるPCR試薬液が、前記(1)に記載のDNA合成方法に用いられる「有効な量のDNAポリメラーゼ」、すなわち、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液を用い、99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCRを行なった場合に、反応液50μlあたり、約2kbのDNA断片量が10ngを超えるに有効な量のDNAポリメラーゼを含有する。
本発明のキットを使用して調製されるPCR試薬液は、特に限定するものではないが、例えば、50μlの反応液中にdNTP取り込み活性として4〜10Uの高速PCR用DNAポリメラーゼ、例えば、タカラEx Taq DNAポリメラーゼを含有している。また試薬液組成は、使用するDNAポリメラーゼに適した組成の試薬液を使用される。
上記の「指示書」とは、当該キットの使用方法、例えばPCR試薬液の調製方法、推奨される反応条件等を記載した印刷物であり、パンフレット又はリーフレット形式の取扱い説明書の他、キットに添付されたラベル、キットが納められたパッケージ等に記載されたものを含む。さらに、インターネットのような電子媒体を通し、開示、提供された情報も含まれる。PCR試薬液の調製に関して、上記のDNAポリメラーゼ量の使用及び/又は上記の酸性物質又はその塩の添加を指示した指示書が添付されたキットあるいはインターネットのような電子媒体を通して、本発明の方法が開示、提供されているキットも本発明のキットに包含される。
また、キット中にDNAポリメラーゼのDNA合成活性を促進する作用を有する酸性物質又はその塩を含有させてもよい。酸性物質又はその塩としては、上記の(1)に記載されたものを使用することができる。このような酸性物質又はその塩は、DNAポリメラーゼ活性を効率よく発揮せしめ、もしくは酵素を保持することによってDNAと酵素との相互作用を適切に調節し得ることから、本発明のキットの性能はさらに向上する。
また、スパガリン類、その分解物及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させてもよい。
前記スパガリン類と酸性物質とを併用する場合、両者が反応して塩を形成することもあるが、DNA合成活性を促進する作用を保持している物質であればよい。
本発明に含有されるDNAポリメラーゼとしては、特に限定はなく、上記の(I)に示された各種の高速PCR用DNAポリメラーゼが挙げられる。
当該キットには、例えば、dNTP、塩化マグネシウム、反応液を適正なpHに保つための緩衝成分などのDNAポリメラーゼの反応に必要な試薬を含んでいてもよい。前記DNAポリメラーゼ、酸性物質、その他の試薬はそれぞれ独立したコンポーネントとして、又はそのいくつかが組み合わされた状態、例えば反応用緩衝液などに添加された状態でキットに含有されていてもよい。
本発明のキットの1つの態様としては、上記のDNAポリメラーゼの他、PCR法によるDNA合成に必要な各種成分、例えばdNTP、塩化マグネシウム、反応液を適正なpHを保つための緩衝成分等を含んだ組成物が挙げられる。さらに該組成物は上記の酸性物質を含んでいてもよい。このような組成物は、目的のDNA断片を増幅するためのプライマー及び鋳型DNAを添加したうえ、必要に応じて水又は緩衝液を加えることにより反応液を調製できるように作成することができる。さらに、当該キットが増幅すべきDNA断片が決まっている場合には、該組成物は該断片の増幅に適したプライマーを含んでいてもよい。このような組成物を使用することにより、極めて簡便、迅速にDNA合成反応、すなわち高速PCRを行なうことができる。
本発明のキットは、PCRならびにPCRを利用したシークエンシング、DNA標識、cDNA合成、部位特異的変異導入等の操作に適用した場合、操作に要する時間を短縮できるという優れた効果を発揮する。例えば、前記キットをPCRに適用した場合、同一鎖長のDNAの増幅に要する時間は従来のPCR法やLA−PCR法に比べてより短い。したがって従来法ではDNAの増幅が不可能であった高速PCR条件下においてもDNAの増幅が可能となる。また、本発明のキットは、増幅反応全体に要する時間を短縮できるため、例えば、PCR法に基づく遺伝子診断法などに使用することによって、より短時間で遺伝子診断法などを行なうことができるという優れた効果を発揮する。
(3)本発明の高速PCR用試薬の製造品
本発明の高速PCR用試薬の製造品は、包装材と該包装材中に封入されたPCR用試薬からなる製造品であって、該PCR用試薬がDNAポリメラーゼを含有し、該包装材に付されたラベルまたは包装材に添付された指示書に前記PCR試薬が短時間でのPCRに使用できることが表示された製造品である。前記PCR用試薬は、DNAポリメラーゼと、該DNAポリメラーゼに適する緩衝液及び/又はdNTPとを含有していてもよい。従って当業者であれば当該製造品に表示されたラベル、当該製品に添付された使用指示書に従い簡便に、本発明の高速PCRを行なうことができ、当該製造品は、本発明の高速PCRを必要とする各産業分野において有用である。
本発明のDNA合成方法(高速PCR)によれば、増幅反応全体に要する時間を短縮することができ、使用される装置の性能等にもよるが、例えば2kbのDNAの増幅に要するPCR総時間は従来の約1/2に、また、約20kbのDNAでは約1/5にそれぞれ短縮され、PCRの高速化が初めて可能となった。本発明の方法は、例えば、PCR法に基づく遺伝子診断法などに使用することによって、より短時間で遺伝子診断法などを行なうことができるという優れた効果を発揮する。該方法は2回のPCRが実施されるネスティッドPCR(nested PCR)等に特に好適である。
本発明の高速PCRは、DNAチップのように大量のPCR操作が必要な技術の開発・製造において極めて有用である。DNAチップは、親指大のガラスチップ上に約10000種類のDNAを固定させたものである。かかるDNAチップを製造するためには、スポットを要するDNAをPCRによって増幅調製する必要があり、それに必要なPCR操作の回数は膨大なものとなる。例えば、このようなDNAチップを10000枚作ると仮定すると、従来のPCRを用いた場合PCR操作だけで延べ約3カ月かかるのに対し、本発明の高速PCRによれば、約3週間という短時間で製造できるという効果を有する。
また、枯草菌のゲノム(500万塩基)の全配列の解明するために必要なPCR操作は従来のPCRでは約3.5カ月かかるのに対し、本発明の高速PCRをによれば約3週間で済むという大きな差となる。
本発明の高速PCRは、特殊な装置を使用することなく、従来のPCR装置を使用してPCRを行なうことができ、本発明の高速PCRは迅速性、反応性に優れ、また高感度のPCRとして極めて有用な技術である。
以下に実施例をもってさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
下記実施例において、市販のDNAポリメラーゼの活性は、各酵素製品の使用指示書に記載の「dNTP取り込み活性」での表示単位に基づいて示した。また、市販の酵素を含む反応液の調製は、特に断りのない限り各酵素の説明書にしたがうか、あるいは添付されている反応用緩衝液を使用して調製した。PCRは、特に断りのない限りタカラPCRサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製)を使用して実施した。
実施例1
(1)プライマーの作製
λDNAの塩基配列をもとにλ1〜λ5、λ7〜λ10の9種類のプライマーを合成した。プライマーλ1〜λ5、λ8〜λ10の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:1〜8に示す。さらにλ7の塩基配列を配列表の配列番号:9に示す。これらのプライマーの組み合わせによってλDNAを鋳型としたPCRで増幅される増幅DNA断片の鎖長を表1に示す。
Figure 0004050870
(2)ポリメラーゼA及びポリメラーゼBの作成
5U/μlの濃度のタカラEX Taq DNAポリメラーゼを使用し、その濃縮標品を調製した。10U/μlの濃度の標品(ポリメラーゼAと称す)、20U/μlの濃度の標品(ポリメラーゼBと称す)のそれぞれを調製し、以下の実施例において使用した。
(3)ポリメラーゼA及びポリメラーゼBを使用した高速PCR
タカラEX Taq DNAポリメラーゼに添付の取扱い説明書によれば、該DNAポリメラーゼは、通常、50μlのPCR試薬液あたり1.25Uを使用する。今回、DNAポリメラーゼの量を変更し、高速PCRについて検討した。
鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1およびλ4を含むPCR試薬液を調製し、PCRを行なった。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
50mM トリス−酢酸(pH8.5)、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、3mM 酢酸マグネシウム、50mM 酢酸カリウム、1pgのλDNA、10pmolずつのプライマーλ1およびλ4。前記PCR試薬液に1.25UのタカラEX Taq DNAポリメラーゼ、0.5μlのポリメラーゼAまたは0.5μlのポリメラーゼBを添加し、それぞれ最終容量を50μlとした。
反応は98℃、5秒〜66℃、10秒を1サイクルとし、35サイクルで総時間、約31.5分の高速PCRで行なった。反応終了後、得られた試料5μlを0.00005%のエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、目的の約2kbの増幅断片を確認した。その結果を表2に示す。
Figure 0004050870
表2に示されるようにポリメラーゼA〔5U/50μl(PCR試薬液)〕もしくはポリメラーゼB〔10U/50μl(PCR試薬液)〕を使用することにより、高速PCRが実施可能であることが確認できた。
実施例2
(1)プライマーの作製
大腸菌ゲノムDNAの塩基配列をもとにEco−1、Eco−2、Eco−2−2、Eco−5、Eco−6の5種類のプライマーを合成した。プライマーEco−1、Eco−2、Eco−2−2、Eco−5、Eco−6の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10〜14に示す。これらのプライマーの組合わせによって大腸菌DNAを鋳型としたPCRで増幅される増幅断片の鎖長を表3に示す。
Figure 0004050870
(2)ポリメラーゼAを使用した場合の高速PCR
ポリメラーゼAを使用した高速PCRについて検討した。LA PCRTM用genome DNA set(宝酒造社製)中の大腸菌ゲノムDNAを鋳型として用い、プライマー対としてプライマーEco−1およびEco−2、プライマーEco−2−2およびEco−5、プライマーEco−1およびEco−6の組合わせをそれぞれ含むPCR試薬液を調製し、高速PCRを行なった。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
50mM トリス−酢酸(pH8.5)、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、3mM 酢酸マグネシウム、50mM 酢酸カリウム、10pmolずつのプライマーEco−1およびEco−2、プライマーEco−2−2およびEco−5、プライマーEco−1およびEco−6の組合わせをそれぞれ含む。なお、増幅対象断片の鎖長が2kbおよび8kbの場合は1ngまたは20kbの場合は20ngの大腸菌ゲノムDNAを使用した。前記PCR試薬液に0.5μlのポリメラーゼAと2.5μgのアルギン酸ナトリウムとを添加し最終容量を50μlとした。
PCRは、タカラPCRサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製)を使用し、表4に示した温度条件でfastモードで行なった。反応終了後、得られた各試料5μlを0.00005%のエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表4に示す。
Figure 0004050870
表4に示されるようにポリメラーゼAを使用した場合には、いずれの高速PCR条件下でも予想される2kb、8kb又は20kbの断片が増幅されていることが確認された。更に、0.5μlのポリメラーゼBについても同様のPCRを行なったところ、ポリメラーゼAと同じ結果であった。
(3)他社市販DNAポリメラーゼとの比較
実施例2−(2)に示した高速PCR実験のうち、2kbのDNA断片を増幅したものについてその増幅断片量を定量した。対照として、KOD dash DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を使用した。KOD dash DNAポリメラーゼについては、PCR試薬液50μlあたりの使用酵素量を製品記載の標準的な使用酵素単位量の2.5Uと、5U又は10Uに増やしたPCR試薬液についても同様に定量した。
高速PCRは、99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとした35サイクルで行なった。PCRはタカラPCRサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製)を使用し、fastモードで行なった。当該サーマルサイクラーのfastモードにおける規格値を表5に示す。
Figure 0004050870
上記のとおりに温度条件を設定した場合、1サイクルの工程には約45秒を要し、PCR総時間は、約25.7分であった。反応終了後の各試料8μlを0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果、ポリメラーゼA、5U及び10UのKOD dash DNAポリメラーゼ使用の場合、目的の約2Kbの増幅断片が確認できた。一方、2.5UのKOD dash DNAポリメラーゼ使用の場合は、目的の増幅断片は確認できなかった。そこで、さらに検出感度の高いイメージアナライザーFM−BIO(宝酒造社製)を使用し、検出感度を調整しながら、既知量のDNA分子量マーカーを対照として目的の増幅断片を検出・定量した。その結果、2.5UのKOD dash DNAポリメラーゼにおいてもわずかに増幅されていることが確認できた。その定量値を表6に示す。
Figure 0004050870
表6に示すようにイメージアナライザーによる定量では、ポリメラーゼAを用いた場合の増幅DNA量は反応後の試料50μlあたり約153ngであった。
一方、イメージアナライザーによる定量では、KOD dash DNAポリメラーゼの場合でも、その使用指示書に記載の標準使用量〔2.5U/50μl(PCR試薬液)〕においては10ngを超える量の増幅産物は得られなかった。しかしながら、使用する酵素量を2倍量、4倍量にした場合には、それぞれ28ng、88ngの増幅産物が得られた。すなわち、ポリメラーゼAのみならずKOD dash DNAポリメラーゼにおいても、その量を増やすことにより増幅DNA量が増加した。また、実施例2−(2)で使用したポリメラーゼA用PCR試薬液でアルギン酸ナトリウム無添加のPCR試薬液を調製し、ポリメラーゼAを用いて上記反応条件で高速PCRを行なったところ、10ngを超える量の増幅断片が得られることを確認した。
従って、上記条件下において、DNAポリメラーゼの種類にかかわらず、10ngを超える量の増幅産物が得られるDNAポリメラーゼ量を使用することにより、一般的なアガロース電気泳動により肉眼で増幅産物を確認できたため、その増幅産物量が10ngを超える高速PCRが可能となることが明らかになった。
実施例3
タカラEX Taq DNAポリメラーゼの取扱い説明書等に記載されている1.25U/50μl(PCR試薬液)のタカラEX Taq DNAポリメラーゼを用いた基本プロトコール条件を基準とし、ポリメラーゼAを用いて同じ増幅産物量を得るために要する高速PCRのPCR総時間を、市販のサーマルサイクラー3種について検討した。基本プロトコール条件は、20kb増幅の場合はタカラPCRエンザイムズ(宝酒造社製、1998年5月版)p6記載の条件、それ以外の鎖長増幅の場合はタカラLA PCR キットver.2.1(宝酒造社製)に添付された説明書中の第8頁記載のタカラLA TaqDNAポリメラーゼの条件を参考に設定した。サーマルサイクラーとしては、タカラPCRサーマルサイクラーMP(宝酒造社製、表7中、MPと称す)、タカラPCRサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製、表7中、PPと称す)、ジーンアンプPCRシステム9600(パーキン−エルマー社製、表7中、9600と称す)の3台を使用した。
Figure 0004050870
使用した鋳型の種類、鋳型量、プライマー対、酵素量およびPCR試薬液組成は、実施例2と同一とした。表7記載の条件で30サイクルのPCRを実施した後、その増幅産物量を実施例2−(3)記載の方法で定量した。なお、タカラPCRサーマルサイクラーパーソナルについては、1.25U使用の場合はノーマルモード、ポリメラーゼA使用の場合はfastモードで設定した。
この結果、1.25U/50μl(PCR試薬液)のタカラEX Taq DNAポリメラーゼ、ポリメラーゼAを用いてそれぞれの条件で得られた増幅産物量に差は見られなかった。すなわち、PCRパフォーマンスで表される酵素活性は同等であった。一方、表7の結果より、増幅反応全体に要する時間、すなわちPCR総時間はポリメラーゼAを使用することにより約1/2〜約1/5に著しく短縮され、高速PCRが可能であることが示された。このことから、本発明の有効量のDNAポリメラーゼを使用した場合には、設定時間が短縮されているにもかかわらず、1サイクルあたりの増幅率は標準的な反応条件のものと同等であることが示された。なお対照として1.25U/50μl(PCR試薬液)のタカラEX Taq DNAポリメラーゼを使用して、上記のポリメラーゼAについて用いられた反応条件でPCRを行なったところ、どのプライマー対を用いた場合も増幅は確認できなかった。
実施例4
タカラTaq DNAポリメラーゼおよびポリメラーゼAを使用した、それぞれに適した反応条件でのPCRを実施した場合の増幅産物量の比較を行った。鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1およびλ2を使用して増幅される約500bpの産物の量を指標とした。
a)タカラTaq DNAポリメラーゼ反応系:TaKaRa PCR Amplification Kitを使用して、該キットの取扱い説明書の記載に従い、添付の反応用緩衝液を用いて1ngもしくは100pgのλDNA、10pmolずつのプライマーλ1およびλ2、1.25UのタカラTaq DNAポリメラーゼ、それぞれ終濃度0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを含む最終容量50μlのPCR試薬液を調製した。サーマルサイクラーは、PCRシステム9600を使用した。反応は、94℃、30秒〜55℃、30秒〜72℃、30秒を1サイクル、1サイクルあたり約167秒の設定で25サイクル行なった。反応終了後、8μlずつを、0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。さらにイメージアナライザーFM−BIOにて検出感度を調整しながら、既知量のDNA分子量マーカーを対照として増幅産物断片量を定量した。
b)ポリメラーゼA反応系:50mM トリス−酢酸(pH8.5)、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、3mM 酢酸マグネシウム、50mM 酢酸カリウム、1ngもしくは100pgのλDNA、10pmolずつのプライマーλ1およびλ2、0.5μlのポリメラーゼA、2.5μgのアルギン酸ナトリウムとを含む最終容量50μlのPCR試薬液を調製した。サーマルサイクラーは、PCRシステム9600を使用した。PCRは、98℃、5秒〜55℃、5秒〜72℃、5秒を1サイクルとした25サイクルの反応を行なった。反応終了後の試料8μlを0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。さらにイメージアナライザーFM−BIOにて検出感度を調整しながら、既知量のDNA分子量マーカーを対照として増幅産物量を定量した。この定量値を前記の1.25UのタカラTaq DNAポリメラーゼについて得られた増幅産物の定量値と比較した。
その結果、どちらの酵素を使用した場合も1ngのλDNAを鋳型に用いた場合の方が増幅産物量は多かった。また、同一の鋳型量での増幅産物量はタカラTaq DNAポリメラーゼ、ポリメラーゼAの間で差は見られず、両PCRで実質的に同量のDNA断片が増幅されていることが示された。すなわちPCRパフォーマンスで表される酵素活性は両PCRにおいては同等であった。従って、同じサイクル数の反応において、タカラTaq DNAポリメラーゼ系で72℃、30秒間の伸長反応時間であったのに対し、ポリメラーゼA反応系では、72℃、5秒間の伸長反応時間で十分であった。
即ち、従来法で1サイクル当たり約167秒が、1サイクル当たり約92秒に短縮された高速PCRが可能であり、PCR総時間、は約1/2に短縮された高速PCRが可能となることが確認できた。
実施例5 酸性物質によるTaq DNAポリメラーゼ合成活性の促進
(1)フコース硫酸含有多糖−Fの調製
以下の実施例において使用されたフコース硫酸含有多糖−Fはすべて下記の方法で精製されたものである。以下にフコース硫酸含有多糖−Fの調製例を示す。
ガゴメ昆布を充分乾燥後、乾燥重量20kgのガゴメ昆布を粉砕した。ついで、得られた乾燥粉末を7.3kgの塩化カルシウム・2水和物を含む900リットルの水道水に懸濁し、攪拌しながら40分かけて90℃まで昇温し、90℃〜95℃に保持して1時間抽出を行なった。その後、得られた溶液を20℃まで冷却し、攪拌を止めて、一晩放置し、抽出物を得た。
次に遠心分離機(ウエストファリアセパレーター社製CNA型)を用いて固液分離を行なった。上記抽出物を遠心分離機により、固液分離上清液を約900リットル得た。その内の360リットルを3ミクロンサイズのフィルター(日本食品濾材社製)を組込んだスパクラフィルター(日本染色機械社製)にてろ過した。分画分子量3万のUF膜(FE10−FC−FUS0382、ダイセル化学工業社製)により20リットルまでろ過液を濃縮した後、得られた濃縮液に水道水を20リットル加えて、再度20リットルまで濃縮した。上記のように希釈濃縮操作を5回繰返した後、濃縮液を約25リットル得た。
上記濃縮液700mlに最終濃度が0.2M塩化カルシウム、20mM酢酸ナトリウムになるように添加した後、0.2M塩化カルシウムを含む、20mM酢酸ナトリウム平衡化バッファー(pH6.0)にて透析した。透析処理後の溶液を上記平衡化バッファー10リットルで平衡化した3500mlのDEAE−セファロースFFカラム(カラム内径:9.7cm)にかけ、5リットルの平衡化バッファーで洗浄した。次に以下に示す3段階のグラジエント条件で溶出を行なった。
なお、クロマトグラフィーの流速は、3500ml/1時間に設定した。
グラジエント条件:
1〕0〜0.5M 塩化ナトリウムのリニアグラジエント
(溶出液量:4.5リットル)
2〕0.5〜1.0M 塩化ナトリウムのリニアグラジエント
(溶出液量:4.5リットル)
3〕1.0〜2.0M 塩化ナトリウムのリニアグラジエント
(溶出液量:4.5リットル)
溶出液は、1フラクション当たり250mlずつ集めた。各フラクションについて、フェノール硫酸法で糖定量、カルバゾール硫酸法でウロン酸定量を行なった。その結果、糖含有量が高く、ウロン酸の量が低いフラクションであるフラクションNo.40〜53の画分を得た。フラクションNo.40〜53の画分をフコース硫酸含有多糖−F画分と称す。フコース硫酸含有多糖−F画分を10万の限外ろ過膜にて濃縮後、50mMクエン酸ナトリウムにて透析を行い、さらに蒸留水にて一晩透析した。引き続き、凍結乾燥を行ない、フコース硫酸含有多糖−F画分よりフコース硫酸含有多糖−Fを1.696g得た。
(2)Taq DNAポリメラーゼに対する酸性物質の影響
酸性物質として実施例5(1)記載の方法により得られたフコース硫酸含有多糖−F、デキストラン硫酸パウダー(オンコー社製)またはアルギン酸ナトリウム(100〜150センチポアズ、和光純薬社製)を使用し、これらがタカラTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)の活性に与える影響を調べた。
鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1およびλ7、DNAポリメラーゼとしてタカラTaq DNAポリメラーゼを含むPCR試薬液を調製し、PCRを行なった。PCR試薬液は以下の組成になるように調製した。
PCR試薬液組成:
タカラTaq DNAポリメラーゼ用緩衝液、10UのタカラTaq DNAポリメラーゼ、100pgのλDNA、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、ならびに5pmolずつのプライマーλ1およびλ7(最終容量は25μl)。さらに前記PCR試薬液中に、酸性物質として0.25ngのフコース硫酸含有多糖−F、0.25ngのデキストラン硫酸パウダーまたは0.5μgのアルギン酸ナトリウムを添加した。
反応は98℃、5秒〜68℃、3分を1サイクルとし、30サイクル、PCR総時間、約110分で行なった。反応終了後、試料5μlを0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表8に示す。
Figure 0004050870
表8に示されるようにどの酸性物質を添加した場合でも予想される8kbの断片が良好に増幅されていることが確認され、高速PCRを行うことができた。なお、本実施例において鋳型DNAを100pgから1ngに増やすと、酸性物質無添加の場合でも目的の増幅産物量が向上した。一方、1.25UのタカラTaq DNAポリメラーゼ及び鋳型DNAを1ng使用して上記PCR条件で行っても、目的の増幅産物は得られなかった。酸性物質の添加により、一層高性能な高速PCRが可能であることが示された。
実施例6 LA−PCR用DNAポリメラーゼと酸性物質の組み合わせによる高速PCR
3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと該活性を有しないDNAポリメラーゼの組合わせからなるLA−PCR法において酸性物質存在下の高速PCRについて検討した。
(1)ポリメラーゼAと酸性物質の組み合わせによる高速PCR
λDNAを鋳型として用い、プライマーλ1およびλ8を含むPCR試薬液を調製し、PCRを行った。PCR試薬液組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
50mM トリス−酢酸(pH8.5)、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、3mMの酢酸マグネシウム、50mM 酢酸カリウム、10pgのλDNA、0.5μlのポリメラーゼAならびに10pmolずつのプライマーλ1およびλ8(最終容量は25μl)。さらに前記PCR試薬液中に、2.5μgのアルギン酸ナトリウムを添加した。対照としてアルギン酸ナトリウム無添加のPCR試薬液も調製した。
反応条件:98℃、5秒〜68℃、75秒を1サイクルとする30サイクル反応。タカラPCRサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製)を使用し、fastモードで行なった。
反応終了後、得られた各試料6μlづつを0.00005%のエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、約10kbの増幅断片を確認した。その結果を表9に示す。
Figure 0004050870
表9に示したようにアルギン酸ナトリウムを添加した場合には、約10kbの断片が増幅されていることが確認された。一方、アルギン酸ナトリウム無添加の場合は、上記の反応条件では約10kbの増幅断片は確認できなかったが、鋳型DNA量を10pgから1ngに増やして、同様のPCRを行うと目的の増幅断片が確認できた。なお、鋳型DNA量を1ngにした場合でも、標準的な使用量のタカラEX Taq DNAポリメラーゼを用いたPCRでは、目的断片の増幅は確認できなかった。酸性物質の添加により、一層高性能な高速PCRが可能であることが示された。
(2)ポリメラーゼBと酸性物質の組み合わせによる高速PCR
鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1およびλ9を含むPCR試薬液を調製し、PCRを行なった。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
タカラEX Taq DNAポリメラーゼ用緩衝液、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、10pgのλDNA、0.5μlのポリメラーゼBならびに5pmolずつのプライマーλ1およびλ9(最終容量は25μl)。さらに前記PCR試薬液中に、それぞれ0.75ngのフコース硫酸含有多糖−Fまたは5μgのアルギン酸ナトリウムを添加した。
反応は、98℃、5秒〜68℃、3分を1サイクルとした30サイクルで行なった。反応終了後、得られた試料5μlを0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表10に示す。
Figure 0004050870
表10に示されるようにどの酸性物質を添加した場合でも酸性物質無添加の場合に比べて、目的の12kbの増幅断片量が向上していることが確認された。
実施例7
PCRに使用するDNAポリメラーゼ酵素量と酸性物質の効果および反応時間への影響について検討した。
鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1およびλ8を含むPCR試薬液を調製し、PCRを行なった。このPCRにはタカラEX Taq DNAポリメラーゼ、ポリメラーゼBを使用した。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
タカラEX Taq DNAポリメラーゼ用緩衝液、それぞれ0.2mM dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、10pgのλDNA、1.25UのタカラEX Taq DNAポリメラーゼまたは0.5μlのポリメラーゼBおよび10pmolずつのプライマーλ1およびλ8(最終容量は50μl)。
さらに前記PCR試薬液中に、2.5μgのアルギン酸ナトリウムを添加したPCR試薬液を調製した。
反応は98℃、5秒〜68℃、2分を1サイクルとし、30サイクル、PCR総時間、約80分で行なった。反応終了後、得られた試料8μlを0.00005%エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表11に示す。
Figure 0004050870
表11に示されるようにポリメラーゼBを使用した場合およびポリメラーゼBにアルギン酸ナトリウムを添加した場合の両方において、予想される10kbの断片が増幅されていることが確認され、高速PCRを行なうことができた。さらに、増幅産物量をイメージアナライザーFM−BIO(宝酒造社製)にて定量したところポリメラーゼBにアルギン酸ナトリウムを添加した場合が添加していない場合に比べて約5倍の増幅産物量であり、より高速のPCRが可能になった。一方、タカラEX Taq取扱い説明書に記載の標準的な使用量である1.25UのタカラEX Taq DNAポリメラーゼを単独で使用した場合、高速PCRによる増幅は確認されなかった。
実施例8
DNAポリメラーゼに対するスパガリン類と酸性物質の組合わせの効果を検討した。
(1)鋳型としてλDNA、プライマー対としてプライマーλ1及びλ8を含むPCR試薬液を調製し、高速PCRを行なった。このPCRにはポリメラーゼBを使用した。スパガリン類として15−デオキシスパガリン3塩酸塩、酸性物質としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)を使用した。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
50mM トリス−酢酸緩衝液(pH8.5)、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、3mM 酢酸マグネシウム、50mM 酢酸カリウム、10pgのλDNA、10pmolずつのプライマーλ1及びλ8。前記PCR試薬液に0.5μlのポリメラーゼBを添加し、さらに表10に示した濃度の15−デオキシスパガリン3塩酸塩及びアルギン酸ナトリウムを組合わせて添加して最終容量を50μlとした。また、対照として、15−デオキシスパガリン3塩酸塩を添加せず2.5μgのアルギン酸ナトリウムを添加したPCR試薬液、並びに15−デオキシスパガリン3塩酸塩及びアルギン酸ナトリウムの両方が添加されていないPCR試薬液のそれぞれを調製した。
反応は98℃、5秒〜68℃、90秒を1サイクルとし、30サイクル、PCR総時間約65.5分の高速PCRで行なった。反応終了後、得られた試料液8μlを0.00005%のエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表12に示す。
Figure 0004050870
表12に示されるように15−デオキシスパガリン3塩酸塩とアルギン酸ナトリウムを組合わせて添加する系において10kbのDNA増幅反応が促進され、PCR総時間約65.5分の高速PCRが可能となることを確認した。なお、本実施例において、鋳型DNA量を10pgから1ngに増やした場合は、スパガリン類及び酸性物質が両方無添加であっても目的とする増幅産物が確認できた。一方、1.25UのタカラTaq DNAポリメラーゼ及び鋳型DNAを1ng使用して上記PCR条件で行っても、目的の増幅産物は得られなかった。酸性物質の添加により、一層高性能な高速PCRが可能であることが示された。
(2)鋳型DNAが大腸菌ゲノムDNAの場合について、スパガリン類と酸性物質の組合わせの効果を検討した。PCR試薬液の組成を以下に示す。
PCR試薬液組成:
5ngの大腸菌ゲノムDNA(宝酒造社製)、10pmolずつのプライマーEco−1及びEco−6以外は、実施例8(1)記載のPCR試薬液組成と同一にした。前記PCR試薬液に0.5μlのポリメラーゼAを添加し、さらに2.5μgのアルギン酸ナトリウムと最終濃度が、1μM、5μM、又は10μMになるように15−デオキシスパガリン3塩酸塩をそれぞれ組合わせて添加し、最終容量を50μlとした。また、対照として、15−デオキシスパガリン3塩酸塩を添加せず2.5μgのアルギン酸ナトリウムのみ添加したPCR試薬液、並びに15−デオキシスパガリン3塩酸塩及びアルギン酸ナトリウムの両方が添加されていないPCR試薬液のそれぞれを調製した。
反応は98℃、5秒〜68℃、3分を1サイクルとし、30サイクル、PCR総時間約110分の高速PCRで行なった。反応終了後、得られた試料8μlを0.00005%のエチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅断片を確認した。その結果を表13に示す。
Figure 0004050870
表13に示されるように15−デオキシスパガリン3塩酸塩とアルギン酸ナトリウムを組合わせて添加する系において20kbのDNA増幅反応が促進され、PCR総時間約110分の高速PCRが可能となることを確認した。なお、本実施例において、鋳型DNA量を5ngから20ngに増やした場合、スパガリン類及び酸性物質が両方無添加であっても目的とする増幅産物が確認できた。一方、1.25UのタカラTaq DNAポリメラーゼ及び鋳型DNAを1ng使用して上記PCR条件で行っても、目的の増幅産物は得られなかった。酸性物質の添加により、一層高性能な高速PCRが可能であることが示された。
実施例9 キットの調製
(1)ポリメラーゼA又はポリメラーゼBを使用するキット
本発明の高速PCR用のキット(20回分)を構築した。
Figure 0004050870
上記のキットを用いてPCR試薬液を調製した。鋳型として大腸菌ゲノムDNAを使用した。以下にPCR試薬液組成を示す。
Figure 0004050870
上記PCR試薬液を実施例2−(3)に示したPCR条件で反応させたところ約2kbpの目的の増幅断片が確認できた。
(2)ポリメラーゼA又はポリメラーゼBを使用しさらに酸性物質を含むキット 本発明の高速PCR用のキット(20回分)を構築した。
Figure 0004050870
上記のキットを用いてPCR試薬液を調製した。鋳型としてλDNAを使用した。以下にPCR試薬液組成を示す。
Figure 0004050870
上記PCR試薬液を実施例7に示したPCR条件で反応させたところ約10kbpの目的の増幅断片が確認できた。
(3)ポリメラーゼA又はポリメラーゼB、酸性物質及びスパガリン類を含むキット
本発明の高速PCR用のキット(20回分)を構築した。
Figure 0004050870
上記のキットを用いてPCR試薬液を調製した。鋳型としてλDNAを使用した。以下にPCR試薬液組成を示す。
10×反応バッファー 5μl
dNTPミックス 8μl
DNAポリメラーゼ酵素液 0.5μl
λDNA 10pg
λ1プライマー 10pmol
λ8プライマー 10pmol
滅菌蒸留水
最終容量 50μl
上記PCR試薬液を実施例8−(1)に示したPCR条件で反応させたところ約10kbpの目的の増幅断片が確認できた。
産業上の利用可能性
本発明のDNA合成方法及びDNA合成反応用キットにより、遺伝子工学の分野において有用な高速PCRが提供され、PCRが関与する遺伝子工学的研究、産業における操作を高速化できるという優れた効果を奏する。また、前記DNA合成方法、DNA合成反応用キット及び本発明のPCR用試薬の製造品は、PCR法が使用できる全分野における操作の高速化及び活性化に極めて有用である。さらに、本発明によれば、短時間で多量のDNA増幅サンプルの取り扱い、多量のPCR産物の調製が可能になり、本発明は、PCR法に基づく遺伝子診断分野、遺伝子診断用DNAチップの作製等多方面で活用することができる。
【配列表】
Figure 0004050870
Figure 0004050870
Figure 0004050870
Figure 0004050870
Figure 0004050870
Figure 0004050870

Claims (8)

  1. ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)法によるDNAの合成に要する時間を短縮させたDNA合成方法であって、下記(A)及び(B)に示す条件でPCRを行なった場合に、反応液50μlあたりに10ngを超える約2kbの増幅DNA断片を与えるに有効な量のDNAポリメラーゼを使用するDNA合成方法であって、50μlの反応液あたりにdNTP取り込み活性として4〜20UのDNAポリメラーゼを用い、かつ、フコース硫酸含有多糖、デキストラン硫酸及びアルギン酸からなる群より選択される酸性物質及び/又はその塩の存在下に前記PCRが行なわれることを特徴とするDNA合成方法:
    (A)反応液:DNAポリメラーゼ、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液、ならびに
    (B)反応条件:99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCR。
  2. 2種以上のDNAポリメラーゼを使用する請求項1記載のDNA合成方法。
  3. 3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有さない他のDNAポリメラーゼとを使用する請求項2記載のDNA合成方法。
  4. スパガリン類、その分解物及びそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の存在下にPCRを行なう、請求項1〜いずれかに記載のDNA合成方法。
  5. 請求項1〜いずれか記載のDNA合成方法に用いられるキットであって、該キットの指示書に従って調製されるPCR試薬液が、下記(A)及び(B)に示す条件でPCRを行なった場合に、反応液50μlあたりに10ngを超える約2kbの増幅DNA断片を与えるに有効な量のDNAポリメラーゼを含むDNA合成用キットであって、該有効な量のDNAポリメラーゼとして、50μlの反応液あたりにdNTP取り込み活性として4〜20UのDNAポリメラーゼが含まれ、かつ、フコース硫酸含有多糖、デキストラン硫酸及びアルギン酸からなる群より選択される酸性物質及び/又はその塩が含まれることを特徴とするDNA合成用キット:
    (A)反応液:DNAポリメラーゼ、1ngの大腸菌ゲノムDNA、それぞれ10pmolのプライマーEco−1及びEco−2(プライマーEco−1及びEco−2の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号:10及び11に示す)を含有し、かつ該DNAポリメラーゼに適した組成の容量50μlの反応液、ならびに
    (B)反応条件:99℃、1秒〜66℃、7秒を1サイクルとする35サイクルのPCR。
  6. 2種以上のDNAポリメラーゼを含有する請求項記載のDNA合成用キット。
  7. 3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼと3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有さない他のDNAポリメラーゼとを含有する請求項記載のDNA合成用キット。
  8. 該キットの指示書に従って調製されるPCR試薬液が、スパガリン類、その分解物及びそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種をさらに含有してなる混合液である、請求項いずれか記載のDNA合成用キット。
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