JP4050337B2 - ヒドロキシル化合物の製造方法 - Google Patents

ヒドロキシル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な当該物質を水素化することにより得られるアルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルボン酸のモノエステルを水素化、より正確には水添分解することにより、アルコールが生成することは知られている。その反応は、以下のようにまとめらる。
【0003】
【化1】
Figure 0004050337
ジョン・ワイレイ・アンド・サンズ(John Wiley and Sons Inc.)株式会社より出版されている、M.フレイフェルダー(Freifelder)著「カタライティック・ハイドロゲネーション」[“(Catalytic Hydrogenation)"、1978年、129頁参照]という書物においては、触媒にバリウム活性化亜クロム酸銅を選択している。ジョン・ワイレイ・アンド・サンズ株式会社より出版されている「オルガニック・リアクションズ」[“(Organic Reactions)"、1954年、第8巻]中、第1章[ホーマー・アドキンズ(Homer Adkins)著]には、「カタライティック・ハイドロゲネーション・オブ・エステル・トゥ・アルコホールズ(Catalytic Hydrogenation of Esters to Alcohols)」という表題がつけられている。ここでは、「亜クロム酸銅」触媒を、酸化銅(II)と亜クロム酸銅、すなわちCuO、CuCr24のおおよそ等モルの組み合わせとして、より正確に記載することが提唱されている。また、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)の「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー」[“(Encyclopedia of Chemical Technology)”、第3版、第1巻、733〜739頁]にも関係している。
【0004】
アルコールを生成するためにエステルを水素化することが記載されている特許明細書には、米国特許第2040944号、同第2079414号、同第2091800号、およびフランス特許第1276722号が包含される。
蒸気相中で、あるエステルおよびジエステルを水素化することは知られている。例えば、蒸気相中でエステルを水素化するために、酸化銅/酸化亜鉛の還元触媒を使用することが提唱されている。このことに関する注意点は、イギリス特許公告第2116552号に示唆されている。またこのことに関連あるものとしては、国際特許公開 WO 90/8121号がある。
【0005】
さらに、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、あるいはそれら2つのまたはそれ以上の混合物のジメチルエステルまたはジエチルエステルといったようなジカルボン酸のエステルを接触水素添加することにより、ブタン−1,4−ジオールといったようなジオールが生成することは知られている。そのような製法は、例えば、イギリス特許公開第1454440号、同第1464263号、ドイツ特許公開第2719867号、米国特許第4032458号、および同第4172961号に記載されている。
【0006】
マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択するC4ジカルボン酸のジエステル、一般的にはジアルキルエステルを蒸気相で水素化することによるブタン−1,4−ジオールの製造は提唱されている。そのような製法において、ジエステルは、マレイン酸ジメチルまたはジエチル、フマル酸ジメチルまたはジエチル、あるいはコハク酸ジメチルまたはジエチルといったようなジ−(C1〜C4アルキル)エステルであることが好ましい。さらに、そのような製法の詳細は、米国特許第4584419号、欧州特許公開第0143634号、国際特許公開 WO 86/03189号、同 WO 86/07358号、並びに同 WO 88/00937号中に見いだすことができる。
【0007】
上記の蒸気相での全製法において、エステルまたはジエステルは全て、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの蒸気圧に比べ、高い蒸気圧を有する。
【0008】
商業的に重要な他のジオールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。この化合物は、テレフタル酸との反応により高重合鎖状縮合ポリマーを製造するのに使用され、またある種のポリエステルおよびポリエステルアミドの製造における中間体として有用なものである。そのような目的で1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用することは、例えば、米国特許第2901466号に記載されている。この文献は、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートのトランス異性体(315〜320℃)が対応するシス異性体(260〜267℃)よりも高い融点範囲を有することを教示している。
【0009】
1,4−シクロヘキサンジメタノール(ヘキサヒドロテレフタリルアルコール)を製造するための一方法には、米国特許第2105664号の実施例3に記載されているように、スラリー相反応器中、亜クロム酸銅触媒の存在下において、圧力3,000psia(約206.84バール(bar))および温度255℃で、ジエチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート(ジエチルヘキサヒドロテレフタレート)を水素化することが包含され、その収率は、77.5%であると言われている。
【0010】
ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート(DMCD)を水素化して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とすることは、次式(1)で示される。
【0011】
【化2】
Figure 0004050337
【0012】
米国特許第2105664号が1938年に発行されて以来、1,4−シクロヘキサンジメタノール並びにこれと関連のあるアルコールの、幾つかの製造方法が公表されている。こういった製法のほとんど大半は、液相中で上記水素化反応を起こすための方法に関するものが中心である。シス−/トランス−異性体の選択性(米国特許第2917549号、イギリス特許公開第988316号、および米国特許第4999090号)、触媒の種類(イギリス特許公開第988316号、および米国特許第3334149号)、および工場の作業条件(米国特許第5030771号)の、汎用域における進歩が報告されている。
【0013】
ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの水素化において製造される1,4−シクロヘキサンジメタノールの2種の幾何異性体は、次の通りである。
【0014】
【化3】
Figure 0004050337
【0015】
その結果として得られる1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物は、異なった融点を有するこれら2種の異性体の混合物である。マーセル・デッカー(Marcel Dekker)株式会社より出版された、メナヒェム・ルイス(Menachem Lewis)およびエリ・エム・パールス(Eli M.Pearce)著「ファイバー・ケミストリー」[“(Fiber Chemistry)”]という書物の第9頁に報告されているように、「脂環式エステル(すなわち、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)と脂環式ジオール(すなわち、1,4−シクロヘキサンジメタノール)はどちらも、結合を切断することなく相互変換することは不可能な2種の異性体、シス体およびトランス体で存在する」。その後、この一節は、「多くのポリマー並びに繊維の性質は、(シス:トランス)比依存しているので、これを調整することは、(1,4−シクロヘキサンジメタノールにおいて)重要である」と続いている。
【0016】
1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体は、融点が43℃であり、またトランス異性体は、融点が67℃である。ポリエステル並びにポリエステルアミドを製造する際、これらの物質にとって高融点が望ましいと考えられるなら、試薬として、より融点の高いトランス異性体を使用することはシス異性体以上に好ましいことが多い。上記の通り、トランス−ポリシクロヘキシルメチルテレフタレートのような典型的なポリエステルのトランス異性体は、シス異性体よりも高い融点を有する。従って、例えば、米国特許出願第5124435号では、ポリエステル共重合体が開示されているが、その1,4−シクロヘキサンジメタノール含量のうち、トランス異性体含量は少なくとも80モル%であり、またこれは高い耐熱性を有する。シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール以上にトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい点はまた、米国特許第2917549号、同第4999090号およびイギリス特許公開第988316号でも論じられている。
【0017】
ジメチルテレフタレートを多段階で水素化することによる1,4−シクロヘキサンジメタノールの液相での製造方法は、米国特許第3334149号に記載されている。ここでは、ジメチルテレフタレートを水素化して、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートとするためにパラジウム触媒を利用した後、このジエステルの水素化を触媒して、1,4−シクロヘキサンジメタノールとするために、液相中で亜クロム酸銅触媒を使用する。先の特許明細書の実施例1に記載されている方法では、約40〜50分の滞留時間を、この製法の第2段階で使用する。米国特許第3334149号において推奨されている亜クロム酸銅触媒の活性は非常に大きいので、長い滞留時間を必要とする。
【0018】
米国特許第3334149号に開示されているような、1,4−シクロヘキサンジメタノールの液相での製造方法において、生成物である1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス:シス異性体比は、平衡値へと向かう傾向にあると思われる。こういった平衡値は種々と報告されているが、約2.57:1(トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール:シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール)(イギリス特許公開第988316号で報告された平衡値)と約3:1(米国特許第2917549号で報告された平衡値)の間にあるという可能性がある。しかし、出発原料であるジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートは、通例、シス異性体が多く含まれた、シスおよびトランス異性体の混合物として市販されている。そのようなわけで、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの典型的な商品グレードにおけるトランス:シス異性体比は、約0.5:1〜0.6:1である。
【0019】
1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれの製造方法においても、あまり望ましくないシス−1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体が過剰に存在するという問題を解決しようとする試みは、シクロヘキサンジメタノールのシス異性体を異性化して、そのトランス異性体とすることに関するもの中心となってきている。
【0020】
米国特許第2917549号では、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールをトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールに異性化する方法が開示されているが、これは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはアルミニウムといったような低原子量金属のアルコキシドの存在下、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールを、少なくとも200℃の温度で加熱することから成る。しかし、米国特許第2917549号の方法には、当初のシス/トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール水素化物を水素化領域から回収して、窒素雰囲気中、金属アルコキシド触媒の存在下、200℃以上の温度で処理するという二段階方法で行う必要が伴う。米国特許第2917549号に教示された方法を実施するために設計される工場の建設費および運転費はかなり高額になるものと思われる。そのような工場の他の不利な点は、異性化領域における触媒として金属アルコキシドを使用することにより、危険性が伴われることである。こういった触媒は、銅/クロムまたはラネーニッケル触媒といった水素化触媒を使用する、典型的な水素化条件下で起こらないと報告されている異性化を、米国特許第2917549号の実施例11の教示によって起こすために必要である。更に、金属アルコキシド触媒により、生成物が汚染されるのを防ぐための工程が必要になると思われる。
【0021】
米国特許第4999090号では、アルカリ金属水酸化物またはアルコキシドの存在下、温度150〜200℃および圧力1〜50mmHg(1.33〜66.5ミリバール)の圧力で蒸留することによりシス−1,4−シクロヘキサンジメタノールを異性化する方法が開示されている。この方法は、米国特許第2917549号の方法に非常に類似した不利な点を有する。
【0022】
イギリス特許公開第988316号は、ジメチルヘキサヒドロテレフタレート(すなわちジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)のシスおよびトランス異性体の混合物を銅/亜鉛触媒の存在下、高温高圧で水素化するという、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールの製造法を教示している。トランス−1,4−ジメチロールシクロヘキサン(すなわちトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール)を反応生成物から結晶化によって分離した後、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールに富む残留物を水素化領域へ再循環させると、異性化を受けてシス/トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール混合物が形成される。その再循環処置を繰り返し実施することにより、実質上、トランス異性体を過剰に含む1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物を得ることが可能である。しかし、イギリス特許公開第988316号の方法は、より好ましくは、再循環したシス異性体に富む生成物を水素化領域へ再導入する際、新たなジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート供給物と組み合わせるという条件下で運転される。シス異性体を水素化領域へ再循環する効果は、主として水素化触媒作用と異性化触媒作用の両方を有する銅/亜鉛触媒の二重機能の結果によるものである。熱動力学的原理から予期されるように、異性化作用は、シス異性体を多く含む混合物を水素化領域へ再循環させる場合に、最も効果的である。しかし、こういった方法で、シス異性体を再循環させることは、1−メチル−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンといったような望ましくない副生物が形成されるという問題が新たに生じることが知られており、このものは非常に苛酷な条件下に水素化反応を実施することにより形成される。そのような副生物の形成を最小限に留めるため、イギリス特許公開第988316号の教示(例えば、イギリス特許公開の第2頁、第55〜79行を参照)により、水素化領域は「比較的温和な条件」下に運転するのがよい。しかし、そのような温和な条件では、水素化領域を一回通過することに対して、相当量のジメチルヘキサヒドロテレフタレート(ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)が未変化のまま残留する結果、得られるジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの転化率は減少する。イギリス特許公開第988316号の第2頁、第26〜32行によれば、「比較的温和な条件」という言葉は、少なくとも200℃、好ましくは240〜300℃の温度および200〜300気圧(202.65〜303.98バール)の圧力を意味する。こういった高い温度で高圧を使用するということは、そのような極度の圧力に耐えるよう構成された特別な合金の厚い壁とフランジを有する反応器を必要とする他に、危険である。従って、イギリス特許公開第988316号に記載されたのと同様な高圧で運転するための工場を建設するには費用が嵩む。さらに、工場を200気圧(202.65バール)またはそれ以上で操作するのは極めて危険であり、工場の建設費の点のみならず、運転費に関しても、大変費用が嵩む。こういった建設費の実質的な部分は、高圧常套商業規模の水素化工場を運転する場合に注意されるべき苛酷な安全予防措置に関連する。気体流をこのような高圧に圧縮し、プラント内を循環させることもまた、高い費用を必要とする。
【0023】
「気体相」を使用している文献(イギリス特許公開第988316号の第1頁、第84行を参照)もあるが、300℃の温度でさえ、200〜300気圧(202.65〜303.98バール)の圧力で、その実施例に記載されている水素:エステル比において、シス−ジメチルヘキサヒドロテレフタレートとトランス−ジメチルヘキサヒドロテレフタレートの両方が液相中にあるものと思われる。そのようなわけで、イギリス特許公開第988316号の各実施例においては、液相条件が使用されている。実施例4によれば、ジメチルヘキサヒドロテレフタレート(すなわち、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)および再循環方法において使用され得るようなメタノールを含有する供給混合物を使用しているが、水素化物中、ジオールで存在する異性体は、トランス異性体が約72%、またシス異性体が約28%、すなわちトランス:シス比が約2.57:1である平衡混合物として表すということが述べられている。
【0024】
通例、エステル、ジエステルまたはラクトン供給原料の水素化は発熱反応である。液相反応において、供給原料は、通常、不活性稀釈剤で、好ましくは再循環する生成物のヒドロキシル化合物で稀釈し、また触媒は液体で完全に湿らせておく。稀釈剤は冷却用放熱子として作用して、水素化反応の発熱性により触媒が阻害されるという危険を回避するのに役立つ。
【0025】
典型的な蒸気相での水素化方法において、不飽和有機化合物、すなわちエステル、ジエステルまたはラクトンは、通常、蒸気状の混合物が得られるよう、熱い水素含有ガスの中に入れて直接気化し、その温度が露点以上に上昇するよう、さらに加熱するか、またはもっと熱い水素含有ガスで稀釈することができる。通常、触媒に接触する蒸気状の混合物は、その露点以上、すなわちガスおよび蒸気の混合物が、曇りまたは薄膜として、ちょうど液体を析出する温度以上となるようにすることが重要である。溶質ガスと同様、こういった露点液体は、通常、蒸気/液体基準に適合する濃縮物中に、蒸気相の凝縮可能な成分を全て含有する。これには、出発原料、中間生成物、副生物および/または最終水素化物が包含され得る。一般的には、その方法は、蒸気状の供給混合物の温度が、その露点以上、例えば、その露点より約5〜10℃以上であるように実施される。さらに、液滴と触媒、特に不飽和有機化合物に富む液滴と触媒が接触するのを防ぐことが好ましいが、これは、その反応の発熱性が焼結を引き起こすことがあり、それによって、(特に銅含有触媒の場合には)化学的に有効な触媒表面領域が消失することが原因となって触媒が阻害されると、結果として機械的強度が消失し、触媒表面上または触媒気孔中にホットスポットが形成され、あるいはペレット気孔内の爆発気化が結果として起こることで、触媒ペレットの破壊が起こり得るからである。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、ラクトン、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な当該物質を水素化することにより得られるアルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物の製造方法であって、実質的に安全性を増し、また比較的に低圧力で経済的に実施することのできるヒドロキシル化合物の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートを水素化することによるシクロヘキサンジメタノールの製造方法であって、水素化段階で、従来の水素化方法で得られるより高いトランス−:シス−異性体比を有するシクロヘキサンジメタノール生成物を直接的に生成する、シクロヘキサンジメタノールの製造方法を提供することである。従って、本発明のさらなる目的は、極端な水素化条件または別の異性化段階を利用する必要がある、上記先行技術の製法における設備費および運転費が嵩むのを防ぐことである。本発明の目的はまた、1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス−およびトランス−異性体混合物に対し、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートのシス−およびトランス−異性体混合物が、高転化率かつ高選択性で即座に反応する製法を提供することである。
【0027】
本発明によれば、カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な当該物質を水素化することにより得られるアルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物の製造方法であって、
(a) 顆粒状の不均質エステル水素化触媒の充填物を含む水素化領域を提供すること
(b) 混合物の露点以上の流入温度において、水素化領域に、水素と、カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、ラクトン、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な物質を含む蒸気状の供給流を提供すること
(c) エステルの水素化を起こすために有効な温度条件下および圧力条件下で水素化領域を維持すること
(d) その露点以下の流出温度において、水素化領域から、アルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物を含む二相生成物流を回収すること
から成るヒドロキシル化合物の製造方法を提供する。
【0028】
本発明は、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを水素化する場合、出発原料、すなわちジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの、生成物、すなわち1,4−シクロヘキサンジメタノールへの転化は、使用する水素化条件下において極めて速く、完全な転化を起こすのに実質的にはおよそ数秒しか必要としないというだけではなく、水素化領域を通して起こる1,4−シクロヘキサンジメタノールの異性化は、比較的速いという意外な発見に基づく。二つの独立した反応を包含することより、このことは意外な発見である。従って、例えば、水素化可能な物質がトランス−:シス−異性体比が約1:1より小さい(例えば、約0.5:1〜0.6:1)である、シス−に富むジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートから成る場合、水素化領域における反応混合物の、約1分以下(一般的には、約2〜15秒の範囲)の滞留時間を利用することにより、ジアルキル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの1,4−シクロヘキサンジメタノールへの実質的に完全な転化はもちろん、トランス−:シス−比の高い(一般的には、約2.0:1より大きく、3.84:1以下)1,4−シクロヘキサンジメタノールを得ることができる。こういった滞留時間は、米国特許第3334149号の実施例1において利用された40〜50分の滞留時間といったような、先行技術において提唱されている長い滞留時間とは全く対照的である。
【0029】
本発明の製法は、水素化領域に対して、供給流が、実質的に液体を含まない蒸気状で提供される蒸気の供給条件を利用することにより行われる。従って、供給流は、水素化領域に対し、その混合物のちょうど露点以上である流入温度において提供される。しかし、生成物1,4−シクロヘキサンジメタノールの出発原料として、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを使用する場合、出発原料ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートより揮発性は少ない。供給流の供給温度は、その露点以上であるが、その露点に十分近いものであるので、1,4−シクロヘキサンジメタノールに富む液体の濃縮物が、触媒上に生じ得る。1,4−シクロヘキサンジメタノールに富む液体中に存在する、いずれのジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの水素化熱も、1,4−シクロヘキサンジメタノールの冷却用放熱子効果により散逸し得るので、そのような触媒上の1,4−シクロヘキサンジメタノールに富む液体の濃縮物は、本発明の製法において有害ではない。しかし、もし、蒸気相供給条件の有利な点が実現できるなら、供給流が、触媒床の流入端での、その露点以上の供給温度におけるものであることが必要である。本発明の製法において蒸気相供給条件を利用することは、本発明の製法を液相で行うことと比べると有利であり、一般的には、低い作業圧力を利用する。このことは一般的に、工場の建設経費だけでなく、運転費に関しても重要かつ有利な効果を有する。
【0030】
水素化領域において、水素化可能な物質は、上記(2)の平衡状態で示されたようなヒドロキシル化合物を得るために、極めて速い水素化を受ける。便宜上、以下の記載を、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの、シクロヘキサンジメタノールへの水素化に関する問題に制限しておく。しかし、当業者なら、他のエステル、ジエステルまたはラクトンが、本発明が教示するところのジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートにとって代わることができるということが分かるであろう。
【0031】
水素化可能な物質がジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートから成る場合、水素化条件下において、更なる異性化反応が起こる。従って、シスジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートに富む水素化可能な物質は、出発エステルのトランス−含量より高含量の、それらのトランス−異性体を有する、シクロヘキサンジメタノールを生成する傾向にある。シス−に富むジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを水素化する場合において、我々は、生成物の混合物中に存在する1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス−:シス−異性体比は高く、約3.84:1であるということを見いだしている。この比率は、低い転化率で液相反応条件下において得られたと報告された、2.57:1と3:1の間の比率より著しく高い。
【0032】
特に好ましい製法において、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートは、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートであり、また(d)段階の生成物流は、1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物であり、この1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物は、トランス−:シス−異性体比が、約2:1〜3.84:1までの範囲、さらに好ましくは、少なくとも約2.6〜3.84:1までの範囲である。従って、本発明の製法は、1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物の一段階での製法を容易に可能とし、この1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物は、トランス−:シス−異性体比が、約2:1以上、約3.84:1以下(例えば、約2.6:1〜2.7:1)である。この比率は、少なくとも約2.6:1であることが好ましい。本発明は、トランス−:シス−異性体比が、約3.1〜3.84:1(例えば、約3.2:1〜3.7:1)である、1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物の一段階での製造を可能とする。
【0033】
水素化領域に供給される水素化可能な物質は、実質的には、純粋なシス−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、トランス−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、または任意の比率におけるそれらの混合物から成っていてもよい。典型的なジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの商用グレードは、水素化可能な物質中のトランス−異性体とシス−異性体が、約0.5:1〜0.6:1のモル比を有する。
【0034】
その製法をジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの水素化に有利に利用する場合、本発明の製法は、ジメチル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、およびそれら二つまたはそれ以上の混合物のいずれか、または全部の水素化に対し、同じく良好に適用することができるということが当業者には理解されるであろう。
【0035】
本発明において使用するためのものとしてはまた、他のジエステル、例えば4〜約12個の炭素原子を含有するジカルボン酸のジアルキル(好ましくは、ジ−(C1〜C4アルキル))エステル、4〜約16個の炭素原子を含有するラクトン、および8〜約18個の炭素原子を含有するモノカルボン酸のエステル、好ましくは、8〜約18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のアルキルエステル(例えば、メチルまたはエチルエステル)が考えられる。従って、本発明の製法において使用することができる他の水素化可能な物質には、マレイン酸ジアルキル、フマル酸ジアルキル、およびコハク酸ジアルキルであって、例えば、マレイン酸ジ−(C1〜C4アルキル)、フマル酸ジ−(C1〜C4アルキル)、およびコハク酸ジ−(C1〜C4アルキル)が含まれ、これらは、各々ブタン−1,4−ジオールおよびヘキサン−1,6−ジオールを生成するガンマ−ブチロラクトンおよびイプシロン−カプロラクタムはもちろん、ブタン−1,4−ジオールを生成する。また、水素化可能な物質として、カプリン酸のメチルエステル、オレイン酸のメチルエステル、ラウリン酸のメチルエステル、ミリスチン酸のメチルエステル、パルミチン酸のメチルエステル、ステアリン酸のメチルエステル、およびそれらの混合物はもちろん、グルタル酸のジアルキルエステル、アジピン酸のジアルキルエステル、およびアゼライン酸のジアルキルエステル、特にそれらのメチルおよびエチルエステルを利用することも可能である。
【0036】
驚くべき発見は、本発明の製法は、1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物の混合物を生成することができ、そのトランス−:シス異性体比が、液相条件下における通常の平衡比率以上の比率であるということである。従って、通常報告される、液相条件下におけるトランス−:シス異性体平衡比は、有利な条件下におけるトランス−:シス異性体平衡比と同様に高く、約3:1であり得るが、本発明では、シス−に富むジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートから、3.84:1というように高いトランス−:シス異性体比を有する1,4−シクロヘキサンジメタノールを製造することを可能にする。
【0037】
技術において、銅含有触媒は、作業寿命が短く、また低い作業圧力では低い活性しか有さないという偏見があるため、本発明の製法は、所望のシクロヘキサンジメタノール生成物に対し高選択性であり、また出発ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートは高転化率であって、数カ月またはそれ以上というように長期間かけて行うことができるということはまた、驚くべきことである。
【0038】
先行技術において、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート(ヘキサヒドロテレフタル酸ジメチル)が、有意量の副生物を与えやすいということが明白になっている。従って、ドイツ特許公開第988316号では、1−メチル−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンといったような、望ましくない副生物が形成することにより起こる問題を認めている。大過剰量の水素が存在し、またジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの比較的低い蒸気圧と比較して、水素の蒸気圧が非常に大きいにもかかわらず、本発明の製法を行うことができるので、その反応は、生成物に対し非常に高い選択性を伴い、その結果として非常に低収率の副生物を伴うにもかかわらず、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの、所望の生成物、すなわちシクロヘキサンジメタノールへの高い転化率を伴って、速く進行することを見いだしたことは驚くべきことである。従って、有利な条件下における、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの、シクロヘキサンジメタノールへの転換は、96モル%以上のシクロヘキサンジメタノールへの選択性を伴って、98モル%またはそれ以上のモル%で起こり得る。さらに、適当な反応条件下、トランス−:シス異性体比が1:1以上、通常は約2.6:1から、高くても3.84:1までの範囲内であり、先行技術に記載され、最も高く報告されているトランス−:シス異性体平衡比よりずっと高い値であるシクロヘキサンジメタノール生成物への一段階において、1:1以下のトランス−:シス異性体比を有する出発エステル(ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)を転化することが可能であることを見いだしたことは驚くべきことである。このことを、比較的低い作業温度および作業圧力で行うことが可能であることを見いだしたことは、さらに驚くべきことである。
【0039】
工業プラントにおいて、その製法は通例、連続的に行う。各々、不均質エステル水素化触媒の充填物を含有し、並列に接続した、少なくとも二つの水素化領域を利用するのが好ましい。これらの領域は、蒸気状の供給原料混合物の供給から各々独立的に、分離することができる。従って、分離した領域は、残りの領域における状態とは実質的に異なる状態にする必要があり、例えば、本発明の製法を残りの領域中で続ける間、分離した領域中の触媒充填物は、再活性化するか、または置換することができる。この装置はまた、国際特許公開 WO 91/01961号で教示された条件下における作業を可能とする。この場合、並列に接続した二つの水素化反応器を使用する。第一段階における作業においては、一方だけの新たに触媒を充填した反応器を使用し、他の一つは水素で覆った触媒を有する予備モードとする。触媒活性を幾分弱める、ある一定時間にわたる作業の後、第一反応器を予備状態にしておいて置く間、第二反応器を使用する。さらにある一定時間の作業の後、充填した触媒を全部置換する時間がくるまで、両方の反応器を並行に使用する。
【0040】
本発明の製法は、通例、少なくとも約150℃、また約350℃より低い供給温度で行う。水素化温度は、好ましくは約150〜300℃までの範囲であり、さらに好ましくは約200〜260℃まである。
【0041】
供給圧力は、一般的に、約150psia(約10.34バール(bar))から約2000psia(約137.90バール)の範囲である。しかし、本発明における低い圧力、蒸気相供給条件を利用する製法の利益および利点は、その製法を約450psia(約31.03バール)から約1000psia(約68.95バール)までの圧力で行うことによって、最も良く分かる。
【0042】
本発明の製法では、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートまたは他の水素化可能な物質が、その触媒床または各々の触媒床の流入端において、蒸気相中に存在するように、蒸気供給流は、その水素化領域または各々の水素化領域の流入端において、その露点以上であることが必要となる。このことは、選択する作業条件下、その触媒床または各々の触媒床の流入端における混合物の温度は、作業圧力において、常にその露点以上であるように、蒸気供給混合物の組成を調整しなければならないことを意味する。“露点”という語は、ガス状の混合物および蒸気が、ちょうど液体の曇りまたは薄膜を析出する温度を意味する。こういった露点液体は、通例、通常の蒸気/液体基準に適合する濃縮時には、溶質ガスはもちろん、蒸気相の凝縮可能な成分を全て含有する。一般的に、水素化領域に対する蒸気状の供給混合物の供給温度は、作業圧力におけるその露点よりも、約5〜10℃以上、またはそれ以上(例えば、約20℃以上まで)である。
【0043】
水素化可能な物質が供給流中では蒸気相として存在すべきであることを必要とする理由の一つには、水素化反応が、通常、発熱反応であることが挙げられる。供給流における蒸気相条件を利用することにより、“ホットスポット”が発生するという必然的危険性を有する触媒が接触するヒドロキシル化合物中に富む液相の液滴の危険、および触媒気孔内の液体の爆発局部気化による“微粉”の形成を最小限に留める。他方では、ヒドロキシル化合物は、実質的には不活性であるので、ヒドロキシル化合物中に富む液体の凝縮を容認することができ、またその気化熱は、過度の局部水素化熱を散逸するのに役立つであろうから、その存在は、“ホットスポット”の発生を減少するのに役立つ。
【0044】
本発明の製法において使用するための蒸気状の混合物を形成するのに有用な方法は、飽和または部分的に飽和の蒸気状の混合物が形成されるよう、水素化可能な物質またはそれらの溶液を、熱水素含有ガス中に噴霧することである。あるいはまた、そのような蒸気混合物は、水素化可能な物質体またはそれらの溶液を通して、熱水素含有ガスを沸騰させることにより得られる。飽和蒸気混合物を形成するなら、触媒と接触する前に、特に飽和蒸気状の混合物が生成するよう、それからさらに加熱するか、またはもっと多量の熱ガスで稀釈すべきである。
【0045】
本発明方法で用いられる水素含有気体は、新鮮な補給(make-up)気体または補給気体と再循環(recycle)気体の混合物を含むことが出来る。補給気体は、水素とCOやCO2のような任意の少量成分とアルゴン、窒素またはメタンのような不活性ガスの混合物であって、少なくとも70モル%の水素を含有するものであってよい。補給気体は、好ましくは少なくとも90モル%、更に好ましくは少なくとも97モル%の水素を含有していてもよい。補給気体は、適当な方法、例えば天然ガスの部分的酸化または蒸気改質、続いて水性ガス移動反応およびCO2吸収、続いて必要に応じ、酸化炭素の残留痕跡の少なくとも幾分かのメタン化により生成することが出来る。高純度水素補給気体が必要ならば、圧力旋回吸収(pressure swing absorption)を用いることも出来る。気体再循環を利用する場合、再循環気体は、通常、水素化領域の下流の成績体回収段階で十分に凝縮されなかった水素化反応成績体の1種またはそれ以上を少量含有する。例えば、ガスの再循環を利用するジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの水素化において、ガスの再循環流は、少量のメタノールを含有するであろう。
【0046】
水素含有ガスの作業圧力で、その触媒床または各々の触媒床の流入端における露点以上の蒸気状の化供給流を維持するために、水素化可能な物質のモル比は、望ましくは、少なくとも約10:1から約8000:1まで、好ましくは約200:1から約1000:1までの範囲である。しかし、水素化可能な物質として、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを用いる場合には、その触媒床または各々の触媒床のすべての部分と接触する蒸気状の化混合物は、その露点以上であるので、シス−1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートに富む液体の凝縮を防止する必要がないことを見いだしたことは驚くべきことである(1,4−シクロヘキサンジメタノールは、出発原料のエステル、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートより揮発性が少ない)。
【0047】
その水素化触媒床または各々の水素化触媒床の流入端において、蒸気流は、水素を含むガスに加え、凝縮可能な(液化可能な)画分の主成分として水素化可能な物質を含有し、いずれかのヒドロキシル化合物である他の凝縮可能な成分は、いずれかの再循環ガス流中に存在する。反応混合物が水素化触媒を通過するにつれ、凝縮可能な画分中の水素化可能な物質の比率は、対応するヒドロキシル化合物量の増加に伴って低下する。床の流出端近くでは、水素化可能物質(例えば、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート)の量は、非常に低いレベル(例えば、約0.5モル%またはそれ以下)まで低下することがあろう。ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの残留量の水素化発熱は、比較的少なく、触媒が阻害される危険は、非常に少ない。従って、触媒の流出端に対する、主として生成物から成る液化可能な物質(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール)の凝縮を許容することができる。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートより揮発性が少ないので、そのような水素高含有ガス(すなわち、シクロヘキサンジメタノールの凝縮を防止する、蒸気状の供給流中におけるジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートのモル比が高いガス)を使用する必要がないことは、工場での作業者にとっての利益である。工場での作業者は、残留ガス(すなわち、生成物と出発原料の両方を、触媒床を通して、蒸気相中に維持するという蒸気相製法に対する、その必要性と比較したジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート比)を使用することができるので、それほど多量の水素含有ガスを循環する必要はない。従って、少量の循環ガスを加熱したり冷却したりするので、工場の運転費を削減することができ、また熱の損失を最小限に留めることができる。
【0048】
本発明の製法は、蒸気相の供給流を用いて行うが、水素化触媒を通過する空間速度として、水素化領域に対する水素化可能な物質の供給速度で表すのが便利であり、またその空間を1時間あたりの液体空間として表すのが便利である。故に、供給速度を、水素化可能物質の蒸気化領域への液体供給速度の、水素化触媒容量に対する比率で表現するのが便利である。よって、水素化可能物質の水素化触媒を通過する均等(equivalent)液体時間空間速度は、好ましくは約0.05〜4.0h-1である。言い換えると、液体水素化可能物質を、触媒の単位容量当たりの毎時水素化可能物質の単位容量約0.05〜4.0に等しい速度(即ち、触媒m3当たり約0.05〜4.0m3-1)で蒸気化領域に供給するのが好ましい。更に具体的には、液体時間空間速度は、約0.1〜1.0h-1である。水素化可能な物質が、周囲温度で固体であるならば、例えば、トランス−1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートについては、その後、これが溶融するまで、またはこれが適当な不活性溶媒中に溶解するまで、十分に加熱する必要があり、後者の場合には、その溶媒は、1時間あたりの液体空間速度を測定する目的には無視する。
【0049】
水素化領域を通過する蒸気状の供給流の通過速度が、気化領域への不飽和有機化合物の供給速度に依存し、また水素含有ガス(すなわち、水素化可能な物質のモル比)に依存するということは、当業者にとっては、容易に明白である。
【0050】
本発明の製法において、生成物流は、二相混合物として、すなわち、蒸気含有ガスおよび液体の混合物として、(d)段階における水素化領域の下流端から回収する。一般的に、この混合物は、流出温度で、触媒床または最終触媒床から流出する。この流出温度は、作業圧力におけるその露点より約1〜20℃低い、好ましくは約1〜10℃低い。
【0051】
ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートは、高純度のジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、工業グレードのジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、シス−1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、またはトランス−1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートとして市販されている。本発明の製法にとって、好ましい供給原料は、工業グレードのジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートであり、シス−およびトランス−の高純度ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートの場合には、それらの製造する間に、さらなる生成段階を必要とする。
【0052】
本発明の製法で使用する顆粒状触媒は、エステルから対応するアルコールまたはアルコールの混合物への水素化または水添分解を触媒することができる、いずれの触媒であってもよい。いずれかの適当な形状(例えば、ペレット、リングまたはサドル)に形成することができる。
【0053】
一般的に、エステル水素化触媒には、銅含有触媒および第VIII属の金属含有触媒が包含される。適当な銅含有触媒の例には、促進剤を含有するまたは含有しない銅−アルミニウム触媒、酸化銅/酸化亜鉛還元触媒、マグネシウムで促進された銅触媒、および促進剤を含有するまたは含有しない亜クロム酸銅還元触媒が包含される一方、適当な第VIII属の金属含有触媒には、白金触媒およびパラジウム触媒が包含される。適当な酸化銅/酸化亜鉛触媒前駆体としては、CuO/ZnO混合物を含んでおり、Cu:Zn重量比が、約0.4:1〜2:1であるものが含まれる。例として、DRD 92/71と呼ばれる触媒前駆体がある。促進化酸化銅/酸化亜鉛前駆体は、CuO/ZnO混合物を含んでおり、そのCu:Zn重量比が、約0.4:1〜2:1の範囲のものであり、約0.1〜15重量%のバリウム、マンガンまたはバリウムとマンガンの混合物により促進化される。このように促進化CuO/ZnO混合物には、DRD 92/92の呼称で入手可能なMn−促進化CuO/ZnO前駆体がある。適切な亜クロム酸銅触媒前駆体には、約0.1:1〜4:1、好ましくは約0.5:1〜4:1の範囲のCu:Cr重量比を持つものが含まれる。この型の触媒前駆体は、DRD 89/21またはPG 85/1なる呼称で入手可能である。促進化亜クロム酸銅前駆体は、約0.1:1〜4:1、好ましくは約0.5:1〜4:1の範囲のCu:Cr重量比を有するものが含まれ、約0.1〜15重量%のバリウム、マンガンまたはバリウムとマンガンの混合物により反応促進される。マンガン促進化銅触媒前駆体は、典型的には、約2:1〜10:1のCu:Mn重量比を有しており、通常、約2:1〜4:1のCu:Al重量比となるようにアルミナ支持体を含有している。その具体例としては、触媒前駆体DRD 92/89がある。
【0054】
上記一般呼称DRDまたはPGを有する触媒は、全てイギリス、クリヴランド・TS18・3HA、ストックトン−オン−ティーズ、ボウスフィールド・レーン、P.O.Box 37のディビー・リサーチ・アンド・デベロップメント・リミテッドから入手することが出来る。
【0055】
使用出来ると考えられる他の触媒としては、P.S.WehnerらによりJournal of Catalysis,136,420−426(1992)により記載された型のPd/ZnO触媒、米国特許第4837368号および同第5185476号に開示された型の担持パラジウム/亜鉛触媒、米国特許第4929777号に開示された型の化学的混合銅−チタン酸化物などがある。
【0056】
更に本発明方法において使用の対象となる触媒としては、A.El MansourらがAngew.Chem.,101,360(1989)に報告したロジウム/スズ触媒などを挙げることが出来る。
【0057】
本発明方法で使用される触媒の物理的支持体としては、支持体として知られているものを適宜に使用することが可能であり、そのような支持体は、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、シリコンカーバイド、ジルコニア、チタニア、炭素、ゼオライト、またはそれらの適当な組合せなどの物質により提供される。
【0058】
本発明の製法において使用する特に好ましい触媒は、促進剤を含有する、または含有しない銅含有触媒であり、特に、促進剤を含有する、または含有しない亜クロム酸銅還元触媒、およびマグネシウムで促進された銅触媒である。
【0059】
本発明の好ましい一製造方法によれば、各々、水素化触媒の充填物を含有する各々の領域を並列に接続した、少なくとも二つの水素化反応器用いて行う。新たなる触媒の充填物を伴う第一相の作業においては、第二反応器が予備状態にある間に、蒸気状の供給原料混合物を、第一反応器のみに供給することができ、その後、第二相の作業においては、第一反応器が予備状態にある間に、蒸気状の供給原料混合物を、第二反応器に供給することができる。これら最初の二相において、最初に、各々の反応器中に充填した新たなる触媒は、幾分不活性化される。第三相の作業においては、国際特許公開 WO 91/01961に教示されているように、蒸気状の供給混合物を、両方の反応器へ同時に供給する。こういった方法で、充填する全触媒の有効寿命を延ばすことができる。
【0060】
また、直列に接続した二つまたはそれ以上の水素化反応器から成る水素化領域を使用することも考えられる。
【0061】
そのまたは各水素化領域は、シェル−アンド−チューブ型反応器を備えることが出来、これは等温またはほぼ等温の条件下、管内の触媒および反対に殼内の冷却剤で操作され得る多管式反応器から成ることがある。しかしながら、普通は、建設費が低い点で断熱式反応器を用いるのが好ましい。このような断熱式反応器は、水素化触媒の単一充填部を有してもよく、また同じもしくは異なった水素化触媒の触媒床の2つまたはそれ以上を有していてもよい。所望ならば、外部または内部のインターベッド(inter-bed)熱交換器を設け、入口温度を断熱型水素化反応器の入り口から下流の1つまたはそれ以上の触媒床に調節してもよい。
【0062】
本発明は、さらに以下の実施例に関して記載する。実施例中で使用した触媒Aの組成を表1に示す。触媒の酸素含有量は、分析から除外している。
【0063】
【表1】
Figure 0004050337
【0064】
【実施例】
実施例1(比較例)
工業グレードのジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの水素化を、図1で説明した実験装置を用いて研究した。
その工業グレード供給材料の組成は、以下の通りである。
トランス−1,4−ジメチルシクロヘキサン
ジカルボキシレート 34.15重量%
シス−1,4−ジメチルシクロヘキサン
ジカルボキシレート 62.00重量%

【化4】
Figure 0004050337
のメチルハイドロジェンシクロヘキサン−
1,4−カルボキシレート 1.07重量%
水 0.05重量%
および
ジ−4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルエーテル
を含む高沸点の不純物 2.73重量%
【0065】
商業的プラントでは、水素ガスを、水素添加生成物から分離して有利には水素添加域へ再循環させている。水素再循環流は所定量の、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートの水添によって生成したメタノール蒸気を含んでいる。よって、商業プラントの水素添加域に供給された蒸気混合物は、一般に水素および不飽和有機化合物に加え、メタノールを含んでいる。以下に記載の実験装置は、商業的操作で得られるであろう結果を正確に予測できるものでなければならず、このため、蒸発器へ供給される液体供給物につき、商業プラントの再循環水素流に含まれるであろう所定量のメタノールに相当する所定量の液体メタノールによって修正した。以下に記載の実験装置では水素を再循環させるが、再循環水素流中に含まれる所定量のメタノールは、対応する商業的再循環流に含まれるものよりも比較的少ない量とした。この差異が生じたのは、実験装置内の再循環ガスが、商業プラントで好適に冷却される温度よりも実質的に低い温度に冷却されるためである。このため、実験上の再循環水素流から、より多量のメタノールが「たたき出される」 。実験装置と商業プラントの間のこの不一致は、実験装置に用いられる器具、とくに分析器具の精巧さにより必然的なものである。この実施例および後続の全ての実施例において、メタノールを実験用の液体生成物に対し、実験用再循環水素流中に実際に存在するメタノール量を差し引いた、仮に実験装置を商業的な条件下に操作した場合に実験用再循環流中に存在する釣りあったメタノール量と実質的に等しい用量で添加する。当該実施例では、変換率や単位時間当たりの空間速度のような全てのパラメーターは、メタノール不存在下の基準で算出した。
【0066】
実験用装置は図1に示した。約70重量%メタノール溶液の高純度グレードのジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートを貯蔵器100からバルブ101、ライン102およびバルブ103により液体供給ポンプ104へ供給する。ビュレット105は緩衝的な供給を付与する一方、ビュレット106はバルブ101をコントロールする液体レベルコントロラー(図示せず)を付設して備え、その結果、液体供給物の、貯蔵器100から液体供給ポンプ104への一定の水頭での供給が保証される。液体供給物を非返還バルブ107および分離バルブ108を介してライン109へポンプ供給するが、ここは、加熱液体が6mm×6mmのガラスリング112床上方の絶縁蒸発器111内に入る前に電気加熱テープ110で加熱することができる。ステンレススチール・デミスターパッド113は蒸発器111の頂部に付設する。高温水素含有ガスの流れはライン114の蒸発器111の底部に供給する。ドレインバルブ116を付設して備える液体ドレインライン115は蒸発器111の基部から未蒸発液体供給物質(たとえば、重質類)の回収を可能にさせる。蒸発器111へ供給された液体供給物の蒸発は、加熱テープ117により促進される。ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートおよび水素からなる飽和蒸発混合物は、蒸発器111の頂部からライン118により回収する。蒸気混合物は、粒状亜クロム酸銅水素添加触媒121(300ml、428.1g)床を含む水素添加反応器120の頂部に入る前に、加熱テープ119により加熱して当該混合物の露点以上の温度に上昇させる。当該触媒は表Iの触媒Aである。ガラスリングは反応器120内の触媒床121の上下に充填する。蒸気混合物は、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートの1,4-シクロヘキサンジメタノールへの転化が断熱条件で生じる触媒床121介し下方に進行する。断熱性は、反応器120周囲の絶縁物質に埋設した電気加熱テープ(図示せず)により、好適な位置に配置した熱電対(図示せず)のコントロールの下に維持される。総反応は穏やかな発熱反応で、触媒床の温度は通常約1〜2℃上昇する。水素添加生成混合物は、ライン122の水添反応器120に存在し、熱交換器123を通過するが、この熱交換器は、水素添加生成混合物の冷却と、ライン124からの水素含有ガスの供給物の加熱を同時に行う。ライン122における1,4-シクロヘキサンジメタノールの大半の凝縮は熱交換器123で起こる。ライン124のガスはライン125からの水素含有ガスからなり、所望によりライン126から供給されたメタン、アルゴン、窒素などの不活性ガスの混合物または単独の不活性ガスを含む。ライン125のガスはライン127により供給された補給水素と、ライン128により供給された再循環水素から構成される。ライン127による補給水素は、ライン129および/またはライン130の流れにより、ライン125へ、圧力コントロラー131〜136および高純度水素シリンダー(図示せず)からのマスフロー・コントロラー137のシステムを介して供給する。
【0067】
熱交換器123からの加熱水素含有ガスは、ライン114を通過し、さらに電気的加熱テープ138により加熱し、蒸発器111へ供給する。
【0068】
熱交換器123からの冷却水素添加生成物はライン139を通過し、さらにクーラー140で室温付近の温度に冷却する。クーラー140からの液体/蒸気混合物はライン141を通過して、第1ノックアウト・ポット142に入るが、ここに液体水素添加生成物が集められ、バルブ143、ライン144およびコントロールバルブ145による最終的な供給によって製品ライン146へ送られる。水素および未凝縮メタノールからなる蒸気混合物は、ライン147のノックアウト・ポット142の頂部に存在し、さらにクーラー148で温度10℃に冷却される。クーラー148からの付加的に冷却した液体/蒸気混合物は、ライン149を介し、第2ノックアウト・ポット150へ供給するが、ここに凝縮メタノールが集められ、バルブ151およびライン152を介する最終的な供給により製品ライン146へ送る。ノックアウト・ポット150からのガスおよび未凝縮物質は、ライン153を介し吸引ポット154を通ってライン155内に入り、次いでバルブ156を介してガス再循環圧縮器157へ送る。ガスは、バルブ158、ライン128、125、124および114を介して貯蔵器111へ再循環する。窒素などの不活性ガス濃度のコントロールのために、再循環ガス中に、パージガス流をライン159のシステムからバルブ160のコントロールの下に流入させる。
【0069】
参照番号161バイパスバルブを示す。
本発明の装置の始動時点で、触媒充填物を反応器120へ内に入れ、次いで窒素で当該反応器をパージする。その後、欧州特許公開第0301853号で教示されているのと同じ方法により、充填した触媒を還元した。
【0070】
工業用ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを、メタノールで適切に稀釈した後、120ml/時間の速度(液体時間空間速度0.4に相当)で、気化機 IIIへ吸入した。蒸気混合物中のガス:ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートのモル比は、710:1であった。反応器 120を温度220℃、圧力900psia(62.05バール)で保持した。その結果、幾分、1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物の凝縮が可能な状況の下、水素化領域を作動させた。水素化領域における温度は、触媒床から流出端における反応生成物混合物の露点より13.0℃高かった。
【0071】
ライン146の液体は、毛管ガスクロマトグラフィにより、長さ15mおよび内径0.32mmの溶融シリカカラム(DBワックスの0.25μm膜で内部被覆)、ヘリウム流速2ml/分(ガス供給分割比= 100:1)およびフレーム・イオン化検出器を用い、定期的に分析した。当該機器はピーク・インテグレイターを有するチャート・レコーダーを備え、市販の試料である既知組成のジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートを用いて検定した。また出口ガスを採取し、ガスクロマトグラフィによりクロマトグラフィ法を用いて分析した。ピークの同定は、当該物質の基準試料の分析によって観察された保持時間の比較およびマススペクトルにより確認した。反応混合物中に検出された化合物には、以下のものが含まれていた:1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、4-メトキシメチル・シクロヘキサンメタノール、ジ(4-メトキシメチルシクロヘキシルメチル)エーテルおよびメタノール。得られた結果から、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートは、選択性を有し、99%以上を転化することができ、1,4−シクロヘキサンジメタノールへの選択率は約98.9%であり、残りは、少量の副生物であることが証明された。貯蔵庫100からのジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートの供給溶液中に存在するメタノールを差し引くと、水添反応の化学量論に従い変換されたジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート1モルごとに、メタノール2モルが検出された。結果を以下の表IIに、後続の実施例2〜4の結果とともに掲げた。
【0072】
【表2】
Figure 0004050337
表2の注
DMCD = ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート
ADP = 触媒床から流出端における反応混合物の露点付近
LHSV = 1時間あたりの液体空間
CHDM = シクロヘキサンジメタノール
BYPR = その他の副生物
METH = 4−メトキシメチルシクロヘキサンメタノール
DETH = ジ−4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルエーテル
ガス = 水素含有ガス(水素を98体積/体積%以上含有)
【0073】
実施例2
実施例1に記載したのと同様の手順、および同じ供給溶液並びに充填触媒を用い、蒸気状の供給流中、水素含有ガス:ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを非常に低いモル比で用いて、さらに実験を行った。従って、この場合、触媒床から流出端における反応混合物は、その露点より4.2℃低かった。その結果を表2にまとめる。たとえ触媒床が湿っていたとしても、蒸気相全体の条件から本発明の製法の条件へと移行する際に起こる転化には有意な液滴はなく、1,4−シクロヘキサンジメタノールに対する選択性において有意な変化もなかった。
【0074】
実施例3および4
実施例2と同じ製法を用いた。どちらの場合も、触媒床を流出する反応混合物は、露点以下であった。従って、触媒床は湿った。その作業条件および結果は、表2に示した。
【0075】
実施例5および6
ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを、各々ジメチル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレートおよびジメチル1,3−シクロヘキサンジカルボキシレートと変えて、実施例2〜4の一般的製法を繰り返し用いる。同様の結果が得られる。
【0076】
実施例7〜15
ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを、以下のジエステルの一つと変えて、実施例2〜4の一般的製法を繰り返し用いる。
(i) マレイン酸ジメチル
(ii) フマル酸ジメチル
(iii) マレイン酸ジエチル
(iv) コハク酸ジエチル
(v) コハク酸ジメチル
(vi) グルタル酸ジメチル
(vii) アジピン酸ジメチル
(viii) ピメリン酸ジメチル、または
(ix) アゼライン酸ジメチル
実施例2〜4で報告した結果と同様の結果が観測される。
【0077】
実施例16〜22
以下のジエステルの一つと変えて、実施例2〜4の一般的製法を繰り返し用いる。
(i) カプリン酸メチル
(ii) オレイン酸メチル
(iii) ラウリン酸エチル
(iv) ミリスチン酸エチル
(v) パルミチン酸メチル
(vi) ステアリン酸メチル、または
(vii) 定義された沸点の範囲を有する脂肪酸の混合物が得られるよう、ヤシ油を加水分解し、続けて“トッピングとテーリング”をすることによって得られるメチルエステルの混合物
各々の場合において、良好な結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの水素化による、ただ一つの水素化領域において、1,4−シクロヘキサンジメタノールを製造するための実験装置の、簡単に描かれたフローダイヤグラムである。
【符号の説明】
100 貯蔵器
112 ガラスリング
120 反応器
123 熱交換器
140、148 クーラー
142、150 ノックアウト・ポット
154 吸引ポット
157 再循環圧縮器

Claims (14)

  1. カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、ラクトン、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な当該物質を水素化することにより得られるアルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物の製造方法であって、
    (a)顆粒状の不均質エステル水素化触媒の充填物を含む水素化領域を提供すること
    (b)混合物の露点以上の流入温度において、水素化領域に、水素と、カルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のモノエステル、ジカルボン酸のジエステル、ラクトン、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択する水素化可能な物質を含む蒸気状の供給流を提供すること
    (c)エステルの水素化を起こすために有効な温度条件下および圧力条件下で水素化領域を維持すること
    (d)その露点以下の流出温度において、水素化領域から、アルコールおよびジオールから選択するヒドロキシル化合物を含む二相生成物流を回収すること
    から成るヒドロキシル化合物の製法。
  2. その露点より1〜20℃低い流出温度で、生成物流を水素化領域から回収する請求項1に記載の製法。
  3. 水素化可能な物質がジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートから成る場合に、ヒドロキシル化合物がシクロヘキサンジメタノールから成る請求項2に記載の製法。
  4. ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートがジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートから成る場合に、ヒドロキシル化合物が1,4−シクロヘキサンジメタノールから成る請求項3に記載の製法。
  5. 水素化可能な物質がジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートから成る場合に、トランス:シス異性体比が2.6:1〜2.7:1である1,4−シクロヘキサンジメタノール生成物を生成するよう流量を調節する請求項3に記載の製法。
  6. 水素化可能な物質が、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびそれら2つのまたはそれ以上の混合物から選択するC4 ジカルボン酸のジアルキルエステルより選択するジエステルから成る請求項2に記載の製法。
  7. ジエステルが、ジメチルまたはマレイン酸ジエチルから成る請求項6に記載の製法。
  8. 水素化可能な物質がC8 〜C18脂肪酸のモノエステルから成る請求項2に記載の製法。
  9. 水素化領域への供給温度が150〜350℃の範囲である請求項2に記載の製法。
  10. 水素化領域への供給温度が150〜300℃の範囲であり、水素化領域への供給圧力が150 psia (10.34 bar) 〜2000 psia (137.9 bar) の範囲である請求項2に記載の製法。
  11. 水素化領域への供給温度が200〜260℃の範囲であり、水素化領域への供給圧力が450 psia (31.03 bar) 〜1000 psia (68.95 bar) の範囲である請求項2に記載の製法。
  12. 触媒を、パラジウム/亜鉛触媒、銅−チタン化学的混合触媒、白金触媒およびパラジウム触媒で担持した、マンガン促進化銅還元触媒、亜クロム酸銅還元触媒、促進化亜クロム酸銅触媒より選択する請求項2に記載の製法。
  13. 触媒を、還元型である亜クロム酸銅、促進化亜クロム酸銅、およびマンガン促進化銅触媒より選択する請求項12に記載の製法。
  14. 触媒が、バリウム、マンガン、およびそれらの混合物から選択する、15重量%以下の、少なくとも一つの促進剤から成る請求項12に記載の製法。
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