JP4047692B2 - ワイパ装置の制御方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ワイパ装置の制御技術に関し、特に、対向払拭型のワイパ装置に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の車両用ワイパ装置、特に対向払拭型(オポジットタイプ)のワイパ装置では、特開平11−301409号公報のように、運転席側と助手席側の各ワイパアームを個別にモータ駆動する方式が採用されている。このようなワイパ装置では、左右のワイパブレード(以下、適宜ブレードと略記する)が払拭面上で干渉しないように、各ブレードの位置角度を見ながらモータを個別に制御している。例えば前記公報の装置では、ワイパ制御装置にて左右のブレードの位置角度が常時監視されている。両ブレード間には予め目標角度差が設定され、互いに他方のブレードの位置角度を参照しつつ、目標角度差と実測角度差との差が小さくなるように左右のモータが個別に速度制御される。
【0003】
一方、装置故障に対し運転者側の視界をできるだけ確保すべく、運転者側(以下、DR側と略記する)のブレードを常に所定の動作を行わせる方式も提案されている。DR側ブレードを駆動するモータは直接電源と接続され、ワイパ作動スイッチを操作すると一定の回転数で作動する。これに対し助手席側(以下、AS側と略記する)ブレードを駆動するモータは、DR側ブレードの状況に応じて制御される。すなわち、DR側ブレードの位置角度を常時検出し、これと両ブレード間の目標角度差とに基づいてAS側モータの出力が適宜変更される。これにより、DR側モータは相互制御系からは切り離されて単独で駆動され、AS側の故障の影響を受けることなくDR側の払拭動作が確保される。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−301409号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような制御形態では、例えば風や雪等の影響により、AS側ブレードをDR側ブレードと同期駆動できないと判断した場合には、両ブレードの干渉を避けるため、AS側ブレードを非干渉領域にて一旦停止させる。対向払拭型ワイパ装置では、復路においては、AS側ブレードが先行しDR側ブレードがそれに追従する形態が一般的である。このため、AS側が遅れた場合、一定動作中のDR側と干渉領域にてぶつかる恐れがある。そこで、かかる場合には、AS側を非干渉領域にて停止させ、次の払拭動作からDR側と同期させるべくそこで待機させる。つまり、AS側の動作を一回休ませ、次回払拭時にDR側の動作を見計らってその駆動を再開させる。
【0006】
しかしながら、AS側ブレードの動作を各ブレードの角度差のみで判断すると、両ブレードの速度によっては同期可能かどうかの予測に誤差が生じ、正確な干渉判定ができないという問題があった。例えば、図7において、DR側が破線の位置にある場合、同期状態にあるAS側の正規の位置がBとすると、AS側がAの位置にあると、AS側がより進んでいることになる。従って、AS側はDR側よりも早くブレード干渉領域Qに入り、ブレード同士の干渉は起こりにくく、角度差のみによる制御では、このときには「同期可能・非干渉」と判断される。ところが、AS側のブレード速度が著しく遅い場合には、このときでも干渉が生じる恐れがあり、角度差のみの制御ではこれを避けることはできない。
【0007】
一方、AS側がCの位置にあると、AS側が遅れていることになり、DR側との干渉が予測される。従って、角度差のみの制御では「非同期・干渉の恐れ有り」と判断され、干渉を避けるべく、AS側を非干渉領域Pにて待機させる。ところが、AS側のブレード速度が著しく速い場合には、このときでも干渉が生じない可能性があり、角度差のみの制御では、AS側ブレードを無駄に待機させることになる。
【0008】
すなわち、角度差のみにてブレード動作を制御すると、同期可能予測を誤って干渉領域Qでブレード同士が衝突したり、必要もないのにAS側ブレードが突然停止したりするという事態が生じる恐れがある。このため、的確な払拭動作を行えず、また、作動フィーリングも悪化するため、その改善が望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、ワイパブレードの同期・非同期判定をより正確に行い得るワイパ装置の制御方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のワイパ装置の制御方法は、第1モータによって駆動される第1ワイパブレードと第2モータによって駆動される第2ワイパブレードを有してなるワイパ装置の制御方法であって、前記第1ワイパブレードが、前記第1ワイパブレードと前記第2ワイパブレードが干渉し得るブレード干渉領域に到達するまでの時間を示す第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)を算出し、前記第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)の経過時における前記第2ワイパブレードの将来到達位置(AsSfp)を予測することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、第1ワイパブレードが干渉領域に到達するときの第2ワイパブレードの位置を予測してワイパブレード動作の制御を行う。例えば、第1ワイパブレードが干渉領域に到達するとき、第2ワイパブレードの予測到達位置が干渉領域まで至っていない場合には非同期状態と判断して、停止・待機等の同期回復・干渉防止措置を講ずる。これにより、角度差制御のみでは対処しきれなかった場合でも的確に同期・非同期の判断を行うことができる。従って、同期可能予測の誤差を抑え、より正確な干渉判断が可能となり、スムーズな払拭動作を実現でき、作動フィーリングの改善が図られる。
【0012】
前記ワイパ装置の制御方法において、前記将来到達位置(AsSfp)を、前記第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)の算出時における前記第2ワイパブレードの速度(AsV)と加速度(AsA)に基づいて算出しても良い。この場合、前記第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)の算出時における前記第2ワイパブレードの速度(AsV)と加速度(AsA)から前記第2ワイパブレードが前記干渉領域に到達するまでの時間を示す第2ブレード干渉領域到達時間(AsT)を算出すると共に、前記第2ブレード干渉領域到達時間(AsT)の経過時における前記第2ワイパブレードの予測速度(AsBV)を算出し、前記第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)の算出時における前記第2ワイパブレードの速度(AsV)と前記予測速度(AsBV)の平均値(AsAvV)に基づいて前記将来到達位置(AsSfp)を算出するようにしても良い。
【0013】
また、前記ワイパ装置の制御方法において、前記第2ワイパブレードの将来到達位置(AsSfp)と前記干渉領域との位置関係に基づき前記第2モータの動作を制御することも可能である。この場合、前記将来到達位置(AsSfp)が前記干渉領域内にある場合には前記第1及び第2ワイパブレードは同期可能状態にあると判断し、前記将来到達位置(AsSfp)が前記干渉領域外にある場合には前記第1及び第2ワイパブレードが非同期状態にあると判断するようにしても良い。
【0014】
一方、前記ワイパ装置の制御方法において、前記第1モータが、前記第2モータとは連動することなく独立して前記第1ワイパブレードを駆動するようにしても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、対向払拭型ワイパ装置における駆動系ならびに制御系の概略を示す説明図である。
【0016】
図1において、符号1は本発明によるワイパ制御方法を適用したワイパ装置である。当該ワイパ装置1は、運転席側と助手席側のワイパブレードを対向配置したいわゆる対向払拭型の構成となっている。すなわち、DR側ワイパブレード(第1ワイパブレード)2aとAS側ワイパブレード(第2ワイパブレード)2b(以下、ブレード2a,2bと略記する)は、フロントガラスの両端側に設定された上反転位置Xとフロントガラスの下端中央部に設定された下反転位置Yとの間で対向的に払拭作動を行うようになっている。両ブレード2a,2bは下反転位置において上下に重合すると共に、ワイパスイッチOFF時には格納位置Zに収容される。ワイパ装置1では、DR側とAS側にそれぞれDR側モータ(第1モータ)3aとAS側モータ(第2モータ)3b(以下、モータ3a,3bと略す)が別個に設けられている。なお、符号における「a,b」は、それぞれDR側とAS側に関連する部材や部分であることを示している。
【0017】
ブレード2a,2bには、ブレードラバー部材が取り付けられている。このラバー部材を車両のフロントガラス上に密着させて移動させることにより、図1に2点鎖線にて示した払拭領域4a,4bに存在する水滴等が払拭される。ブレード2a,2bは、ワイパ軸5a,5bの先端に固定されるワイパアーム6a,6bに支持されており、左右に揺動運動を行う。ワイパ軸5a,5bの他端には駆動レバー7a,7bが配設されている。駆動レバー7a,7bの端部には連結ロッド8a,8bが取り付けられている。連結ロッド8a,8bの他端側は、モータ3a,3bによって回転されるクランクアーム9a,9bの先端部に接続されている。モータ3a,3bが回転すると、クランクアーム9a,9bが回転し、この動きが連結ロッド8a,8bを介して駆動レバー7a,7bへと伝達され、モータ3a,3bの回転運動がワイパアーム6a,6bの揺動運動に変換される。
【0018】
ワイパ装置1では、前述のように、DR側とAS側にモータ3a,3bが別個に設けられている。図2は、モータ3a,3bの駆動回路の構成を示す説明図である。モータ3a,3bは、モータユニット12a,12b内に収容されており、ユニット内に設けられたセンサ41a,41bからはモータ回転角度に比例しブレード移動量を示す相対位置信号(回転信号)や、ブレード位置を示す絶対位置信号が出力される。そして、これらの信号に基づいて、ブレード同士が干渉しないようにモータ3bが制御される。
【0019】
AS側のモータ3bは、ワイパ駆動制御装置10によって駆動制御される。ワイパ駆動制御装置10には、モータユニット12a,12bから、前述の相対位置信号と絶対位置信号が入力されている。相対位置信号はモータの回転に伴って発生するパルス信号であり、モータの回転角度に比例したパルス数が出力される。絶対位置信号はブレード2a,2bが下反転位置に来たときに発せられる単発信号である。ワイパ駆動制御装置10は、これらの信号に基づき、ブレード2bの位置情報(現在位置)を算出する。そして、上下反転位置にてモータ3bを正逆転制御し、ブレード2bを往復払拭動作させると共に、両ブレード2a,2bが衝突することがないように、モータ3bの回転速度をモータ3aの回転速度に合わせて制御する。
【0020】
これに対してDR側では、モータユニット12aから相対位置信号および絶対位置信号が出力されるものの、モータ3aは常時一定の出力にて駆動される。つまり、モータ3aは、図2に示すように、ワイパスイッチ42に直接連動しており、ワイパ駆動制御装置10とは無関係に、ワイパスイッチ42のON・OFFのみによって制御される。モータ3aにはリレープレート43が取り付けられており、リレープレート43を介してモータ3aに印加されるバッテリ電圧VBの極性が適宜切り換えられ、モータの正逆転が行われる。これにより、モータ3aは所定の回転角度にて正逆転し、ブレード2aが上下反転位置の間を常時一定動作で往復動する。
【0021】
図3は、モータユニット12bの構成を示す説明図である。なお、モータユニット12bはAS側の装置であるが、その内部の部材、部品等の符号には添字「b」を付さずに示す。なお、リレープレート43の有無を除き、モータユニット12aも図3と同様の構成となっている。
【0022】
モータユニット12bは、モータ3bとギアボックス13とから構成され、モータ3bのモータ軸14の回転がギアボックス13内にて減速され、出力軸15に出力される。モータ軸14は、有底筒状のヨーク16に回動自在に軸承され、コイルが巻装されたアーマチュアコア17およびコンミテータ18が取り付けられている。ヨーク16の内面には複数の永久磁石19が固定されている。コンミテータ18には、給電用のブラシ20が摺接している。
【0023】
ヨーク16の開口側端縁部には、ギアボックス13のケースフレーム21が取り付けられている。モータ軸14の先端部は、ヨーク16から突出してケースフレーム21内に収納される。モータ軸14の先端部には、ウォーム22が形成されており、ウォーム22にはケースフレーム21に回動自在に支持されたウォーム歯車23が噛合している。ウォーム歯車23には、その同軸上に小径の第1ギア24が一体的に設けられている。第1ギア24には、大径の第2ギア25が噛合されている。第2ギア25には、ケースフレーム21に回動自在に軸承される出力軸15が一体に取り付けられている。なお、図示されないが、モータ軸14には前記ウォーム22に隣接してそのねじ方向とは逆向きのもう1つのウォームが形成されており、ウォーム歯車23、第1ギア24と同様の減速部材により第2ギア25に動力伝達される。
【0024】
モータ3bの駆動力は、ウォーム22、ウォーム歯車23、第1ギア24、第2ギア25を経て減速された状態で出力軸15に出力される。出力軸15には、クランクアーム9bが取り付けられている。そして、モータ3bの回転により出力軸15を介してクランクアーム9bが駆動され、前述のようにワイパアーム6bが作動する。
【0025】
なお、DR側のモータユニット12aにおいては、出力軸15にリレープレート43が取り付けられている。リレープレート43は出力軸15と同期して回転する。ブレード2aが上下反転位置に達すると、モータ3aに対する印加電圧の極性が切り換えられ、モータ3aは正逆転し、ブレード2aが上下反転位置の間を往復動する。
【0026】
モータ軸14には、多極着磁マグネット26(以下、マグネット26と略記する)が取り付けられている。これに対しケースフレーム21内には、マグネット26の外周部と対向するように、センサ41bのひとつとして、相対位置検出用ホールIC27(以下、ホールIC27と略記する)が設けられている。図4は、マグネット26とホールIC27の関係およびホールIC27の出力信号(モータパルス)を示す説明図である。
【0027】
ホールIC27は、図4に示すように、モータ軸14の中心に対して90度の角度差を持った位置に2個(27A,27B)設けられている。モータ3bでは、マグネット26は6極に着磁されており、モータ軸14が1回転すると各ホールIC27からは6周期分のパルス出力が得られる。ホールIC27A,27Bからは、図4の右側に示すように、その位相が1/4周期ずれたパルス信号が出力される。従って、ホールIC27A,27Bからのパルスの出現タイミングを検出することにより、モータ軸14の回転方向が判別でき、これによりワイパ動作の往路/復路の判別を行うことができる。
【0028】
ホールIC27A,27Bでは、その何れか一方のパルス出力の周期からモータ軸14の回転速度を検出できる。モータ軸14の回転数とブレード2bの速度との間には、減速比およびリンク動作比に基づく相関関係が存在しており、モータ軸14の回転数からブレード2bの速度を算出できる。同様に、モータユニット12aにおいても、モータ軸14の回転数からブレード2aの速度が算出される。
【0029】
第2ギア25の底面には、センサ41bの他のひとつとして、絶対位置検出用マグネット28(以下、マグネット28と略記する)が取り付けられている。ケースフレーム21にはプリント基板29が取り付けられ、その上には、マグネット28と対向するように絶対位置検出用ホールIC30(以下、ホールIC30と略記する)が配設されている。マグネット28は、第2ギア25の底面上に1個設けられており、ブレード2bが下反転位置Yに来たときホールIC30と対向するようになっている。第2ギア25は、前述のようにクランクアーム9bが取り付けられ、ブレード2bを往復動させるため180度回転する。第2ギア25が回転しブレード2bが下反転位置Yに来ると、ホールIC30とマグネット28が対向してパルス信号が出力される。なお、モータユニット12aにおいては、リレープレート43を用いて絶対位置信号を得ても良い。
【0030】
ホールIC27,30からのパルス出力は、ワイパ駆動制御装置10に送られる。ワイパ駆動制御装置10のCPU11は、ホールIC30からのパルス出力を絶対位置信号として用いてブレード2bの位置を認識する。ホールIC27からのパルス信号は、ブレード2bの相対位置信号として用いられ、絶対位置信号が得られた後のパルス数をカウントすることにより、CPU11はブレード2bの現在位置を認識する。ここでは、ホールIC30からの下反転位置を示す絶対位置信号と、ホールIC27からのパルス数の組み合わせによって、ブレード2bの現在位置を検出する。同様に、モータユニット12aにおいても、ホールIC27,30からのパルス出力に基づきブレード2aの現在位置が検出される。
【0031】
このようにしてワイパ駆動制御装置10はブレード2a,2bの現在位置を認識すると共に、そのデータに基づいてモータ3bを制御する。CPU11では、相対位置信号のパルス累積数をそのまま位置角度として取り扱い、パルス数に基づいて以下の処理を行っている。但し、パルス数とブレード2a,2bの位置角度(deg)との関係を予めマップ等によってROMに格納しておき、角度(deg)によって以下の処理を行っても良い。
【0032】
CPU11では、まず第1に、ブレード2a,2bの現在の位置角度(パルス積算数)から、両ブレード2a,2b間の実際の角度差を算出する。例えば往路においてAS側が「8」パルスの位置角度にあるときDR側が「10」パルスの位置角度であれば、AS側の位置角度からDR側の位置角度を減じて「2」(8−10=−2の絶対値)となる。
【0033】
次に、CPU11は、現在の位置角度における両ブレード2a,2b間の位置角度差の目標値である目標角度差と先に求めた実測角度差とを比較する。目標角度差は、ROMに予め格納された目標角度差マップから読み出される。そして、両者の比較の結果、現時点における実測角度差と目標角度差との差を示す角度差情報を算出する。目標角度差マップでは、例えばDR側の位置角度が「10」パルスのときAS側の位置角度目標は「4」パルスのように設定されており、このときの両者の目標角度差は「6」となる。
【0034】
これを先の例で見ると、実測角度差は「2」であり、目標角度差に対して「+4」(6−2)というAS側角度差情報が算出される。これは、追従するAS側がDR側に対し目標位置角度よりも「4」パルス分進んでいる(近付いている)状態を表している。そこで、CPU11はモータ3bの出力を下げ、AS側の速度を落として両者の位置角度差が目標値に近付くように制御する。前述のように、モータ3aは一定出力にて駆動されており、CPU11はその動き、すなわち、ブレード2aの位置角度を見ながらブレード2b(モータ3b)の制御を行う。
【0035】
一方、対向払拭型のワイパ装置では、復路においてAS側のブレード2bの動作が遅れ両ブレードが同期しなくなると、ブレード同士が干渉する恐れがある。前述のように、位置角度のみによってブレード2bを制御すると、ブレード速度によっては同期・非同期の判断に誤差が生じるという弊害がある。そこで、当該ワイパ装置1では、目標角度差による制御に加えて、ブレード速度に基づきブレード2bの将来位置予測を行い、同期・非同期判定の精度向上を図っている。図5は本発明の一実施の形態であるワイパ装置制御方法の手順を示すフローチャート、図6は図5の制御を行う場合のワイパ動作を示す説明図である。
【0036】
図5の処理は、AS側モータ3bにおけるホールIC27のパルス出力1周期毎に実施される。ここではまず、DR側ブレード2aが現在の位置からブレード干渉領域Q(以下、干渉領域Qと略記する)に達するまでのDR側ブレード干渉領域到達時間(第1ブレード干渉領域到達時間)DrFT(以下、時間DrFTと略記する)を算出する(ステップS1)。時間DrFTは、モータ3aのホールIC27,30のパルス出力からブレード2aの現在位置を把握し、パルス出力から求めた速度に基づいて算出される。干渉領域QのDR側における境界位置角度θdriは予め設定されており、それと現在の位置角度との差を求め、この角度差と現在のブレード速度により、ブレード2aが干渉領域Qに至るまでの時間DrFTが求められる。
【0037】
また、ステップS1と共にステップS2を実行し、AS側ブレード2bが現在の位置から干渉領域Qに達するまでのAS側ブレード干渉領域到達時間(第2ブレード干渉領域到達時間)AsT(以下、時間AsTと略記する)を算出する(ステップS2)。干渉領域QのAS側における境界位置角度θasiも予め設定されており、それと時間DrFT算出時におけるブレード2aの位置角度との差を求める。そして、この角度差と、時間DrFT算出時におけるブレード2aの速度AsV及び加速度AsAにより、ブレード2bが干渉領域Qに至るまでの時間AsTが算出される。なお、加速度AsAはホールIC27のパルス出力1周期の速度変化量(パルス周期の変化量)である。また、時間DrFT算出時からブレード2bが干渉領域Qに達するまでのパルス1周期の数が時間AsTとなる。
【0038】
次に、ステップS3に進み、時間DrFT算出時のブレード2aの速度AsVと時間AsTから、ブレード2bが干渉領域Qに達したときの速度(AsBV)を推定する。なお、この際、ブレード2bの加速度AsAを考慮して干渉領域到達速度AsBV(以下、速度AsBVと略記する)を求めても良い。このようにして速度AsBVを求めた後、ステップS4にて、時間DrFT算出時のブレード速度AsVと速度AsBVの平均値(を求める(平均速度AsAvV=AsV+AsBV)/2)。
【0039】
さらに、平均速度AsAvVと時間DrFTにより、時間DrFT経過後におけるブレード2bの位置を算出する(ステップS5)。すなわち、DR側ブレード2aが干渉領域Qに達するとき、ブレード2bがどの位置まで移動するか、その位置(将来到達位置:AsSfp)を実速度によって求めた平均速度AsAvVを用いて予測する。そして、この将来到達位置AsSfpとAS側の境界位置角度θasiから、DR側に対するAS側の非干渉安全マージンレベルAsFLv(以下、マージンレベルAsFLvと略記する)を設定する(ステップS6)。
【0040】
マージンレベルAsFLvは、将来到達位置AsSfpと境界位置角度θasiとの角度差を示し、図6に示すように、DR側ブレード2aが境界位置角度θdriにあるとき、AS側ブレード2bが境界位置角度θasiに対しどの程度下反転位置側に離れているかを示す値である。従って、この値が+であるときには、ブレード2aが干渉領域Qに到達したとき、既にブレード2bは干渉領域Qに到達していることになる。一方、0または−の場合には、ブレード2aが干渉領域Qに到達したとき、ブレード2bは干渉領域Qにちょうど到達したか、未だ到達していないことになる。
【0041】
そこで、次にステップS7において、マージンレベルAsFLvの正負を判定する。正の場合(AsFLv>0)には、前述のように、ブレード2bはブレード2aに先んじて干渉領域Qに到達することが予測されるため、ブレード動作としては正常であり、ステップS8に進み「同期可能・非干渉」と判定しルーチンを抜ける。これに対し0または負の場合(AsFLv≦0)には、ブレード2bはブレード2aと同時またはそれより遅れて干渉領域Qに到達することが予測される。これは、ブレード動作としては異常であり、両ブレードの衝突が起きる恐れがある。そこで、この場合はステップS9に進み「非同期・干渉発生の恐れ有り」と判定する。そして、同期回復・干渉防止のため、ステップS10にてブレード2bを非干渉領域Pにて停止させ、次回払拭時にブレード2aと同期させるべくそこに待機させてルーチンを抜ける。
【0042】
このように本発明による制御では、AS側ブレードの速度を見てその将来到達位置を予測し、この予測位置に基づきブレードの同期・非同期を判定する。従って、角度差制御においては同期可能判断を誤る恐れがある場合においても、的確に同期・非同期を判定し、より正確な干渉予測を行うことができる。例えば、図6においてのAの位置では、図7において述べたように、角度差制御では「同期可能・非干渉」と判断されるもののブレード速度が遅い場合には干渉の恐れがある。これに対し本発明による制御では、ブレード速度が遅く、時間DrFT経過後にブレード2bが干渉領域Qに到達できないときにはAsFLv<0となり「非同期・干渉の恐れ有り」と判断され、干渉回避動作が行われる。
【0043】
また、図6においてのCの位置では、角度差制御では「非同期・干渉の恐れ有り」と判断されるもののブレード速度が速い場合には干渉が生ぜず、不要な干渉回避動作が行われる。これに対し本発明による制御では、ブレード速度が速く、時間DrFT経過後にブレード2bが干渉領域Qに到達できるときにはAsFLv>0となり「同期・非干渉」と判断され、干渉回避動作は行われずに通常制御が維持される。すなわち、当該制御によれば、予測を誤って干渉領域Qでブレード同士が衝突したり、必要もないのにAS側ブレードが突然停止したりするという事態の発生を抑えることができる。従って、同期可能予測の誤差を抑え、より正確な干渉判断が可能となり、的確な払拭動作が実現できると共に、作動フィーリングの改善を図ることが可能となる。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、モータ3aの基本制御形態としては、両ブレード2a,2b間の角度差を目標角度差に維持する形態のみならず、両モータ3a,3bを同速度に維持する形態も採用できる。また、前記の実施の形態では本発明を対向払拭型ワイパ装置に適用した場合について説明したが、本発明は並行払拭型ワイパ装置についても適用可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明のワイパ装置の制御方法によれば、第1ワイパブレードがブレード干渉領域に到達するまでの第1ブレード干渉領域到達時間(DrFT)を算出し、この時間DrFTの経過時における第2ワイパブレードの将来到達位置(AsSfp)を予測してワイパブレード動作の制御を行うので、角度差制御のみでは対処しきれなかった場合でも的確に両ワイパブレードの同期・非同期の判断を行うことができる。従って、同期可能予測の誤差を抑え、より正確な干渉判断が可能となり、スムーズな払拭動作を実現でき、作動フィーリングの改善が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対向払拭型ワイパ装置における駆動系ならびに制御系の概略を示す説明図である。
【図2】モータ駆動回路の構成を示す説明図である。
【図3】モータユニットの構成を示す説明図である。
【図4】マグネットとホールICの関係およびホールICの出力信号(モータパルス)を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるワイパ装置制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】図5の制御を行う場合のワイパ動作を示す説明図である。
【図7】角度のみの制御を行う場合のワイパ動作を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ワイパ装置
2a DR側ワイパブレード(第1ワイパブレード)
2b AS側ワイパーブレド(第2ワイパブレード)
3a DR側モータ(第1モータ)
3b AS側モータ(第2モータ)
4a,4b 払拭領域
5a,5b ワイパ軸
6a,6b ワイパアーム
7a,7b 駆動レバー
8a,8b 連結ロッド
9a,9b クランクアーム
10 ワイパ駆動制御装置
11 CPU
12a,12b モータユニット
13 ギアボックス
14 モータ軸
15 出力軸
16 ヨーク
17 アーマチュアコア
18 コンミテータ
19 永久磁石
20 ブラシ
21 ケースフレーム
22 ウォーム
23 ウォーム歯車
24 第1ギア
25 第2ギア
26 多極着磁マグネット
27(27A,27B) 相対位置検出用ホールIC
28 絶対位置検出用マグネット
29 プリント基板
30 絶対位置検出用ホールIC
41a,41b センサ
42 ワイパスイッチ
43 リレープレート
P 非干渉領域
Q ブレード干渉領域
X 上反転位置
Y 下反転位置
Z 格納位置
DrFT DR側ブレード干渉領域到達時間(第1ブレード干渉領域到達時間)
AsV DrFT算出時におけるAS側ブレード速度
AsA DrFT算出時におけるAS側ブレード加速度
AsT AS側ブレード干渉領域到達時間(第2ブレード干渉領域到達時間)
AsBV AS側ブレード干渉領域到達速度
AsAvV AsVとAsBVの平均値
AsSfp AS側ブレード将来到達位置
AsFLv 非干渉安全マージンレベル
θasi AS側干渉領域境界位置角度
θdri DR側干渉領域境界位置角度

Claims (6)

  1. 第1モータによって駆動される第1ワイパブレードと第2モータによって駆動される第2ワイパブレードを有してなるワイパ装置の制御方法であって、
    前記第1ワイパブレードが、前記第1ワイパブレードと前記第2ワイパブレードが干渉し得るブレード干渉領域に到達するまでの時間を示す第1ブレード干渉領域到達時間を算出し、
    前記第1ブレード干渉領域到達時間の経過時における前記第2ワイパブレードの将来到達位置を予測することを特徴とするワイパ装置の制御方法。
  2. 請求項1記載のワイパ装置の制御方法において、前記将来到達位置は、前記第1ブレード干渉領域到達時間の算出時における前記第2ワイパブレードの速度と加速度に基づいて算出されることを特徴とするワイパ装置の制御方法。
  3. 請求項2記載のワイパ装置の制御方法において、前記第1ブレード干渉領域到達時間の算出時における前記第2ワイパブレードの速度と加速度から前記第2ワイパブレードが前記干渉領域に到達するまでの時間を示す第2ブレード干渉領域到達時間を算出すると共に、前記第2ブレード干渉領域到達時間の経過時における前記第2ワイパブレードの予測速度を算出し、前記第1ブレード干渉領域到達時間の算出時における前記第2ワイパブレードの速度と前記予測速度の平均値に基づいて前記将来到達位置を算出することを特徴とするワイパ装置の制御方法。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載のワイパ装置の制御方法において、前記第2ワイパブレードの将来到達位置と前記干渉領域との位置関係に基づき前記第2モータの動作を制御することを特徴とするワイパ装置の制御方法。
  5. 請求項4記載のワイパ装置の制御方法において、前記将来到達位置が前記干渉領域内にある場合には前記第1及び第2ワイパブレードは同期可能状態にあると判断し、前記将来到達位置が前記干渉領域外にある場合には前記第1及び第2ワイパブレードが非同期状態にあると判断することを特徴とするワイパ装置の制御方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のワイパ装置の制御方法において、前記第1モータは、前記第2モータとは連動することなく独立して前記第1ワイパブレードを駆動することを特徴とするワイパ装置の制御方法。
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