JP4046567B2 - 移動体検知装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人間、車両、障害物、固定物、その他の物体(以下、「物体」と記す)が動いているかどうかを検知する、移動体検知のための移動体検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は移動体検知装置1のブロック図を示したものである。発振回路11の出力は送信アンテナ12から物体に照射され、物体からの反射波は受信アンテナ13で受信され、受信回路14で送信波と受信波がミキシングされ、ビート信号が生成される。このビート信号は検波出力として検波回路に送られ、移動体検知信号を得ている。
【0003】
物体が移動体の場合、反射波の周波数はドップラ効果によってシフトする。例えば送信周波数がf0であった場合、反射周波数はf0+Δとなる。ここで、シフト量は以下の式によって導き出される。
Δ=反射周波数−送信周波数=(2v/c)f0 ---------- (1)
v:移動体の検知装置に対する相対速度
c:光速
【0004】
図2は、上記移動体検知装置を用いて移動体を検知する方法の原理を示した図である。図2において、x0はt=0における移動体2の位置であり、送信アンテナ12から発射される送信波Asin(ω0t)が、速度vで近づいてくる移動体2に発射されると、反射波は波Bsin{ω0(t-2x/c)}となる。ここでxは移動体2の位置、cは光速である。x=x0−vtとすれば、反射波は、
Bsin[ω0{t-2(x0/c-vt/c)}]
Bsin{ω0(1+2v/c)t-ω0(2x0/c)} --------------- (2)
となる。
【0005】
図3は、移動体検知装置1からの送信波と物体2から反射した反射波との位相関係を示した図である。静止物体からの反射波の位相差は、図3に示すように物体と移動体検知装置1の距離Lに依存する。図3において送信波の波形が(a)であり、位相差0の場合の反射波の波形が(b)であり、位相差90°の場合の反射波の波形が(c)である。送信波と受信波の位相差がどのようになるかは、移動体検知装置1と物体2との距離によって決まる。
【0006】
図4は、送信波(a)に対する反射波及び合成波を示した図である。(A)は反射波の位相差θが0の場合の合成波(Sab)を示している。(B)は反射波(c)の位相差θが90°の場合の合成波(Sac)を示している。(C)は反射波(d)の位相差θが180°の場合の合成波(Sad)を示している。
【0007】
図4の合成波形からわかるように、送信波と受信波の合成波の波形は、物体の大きさや表面の材質が変わらなければ、物体と検知装置との距離によって変化する。従って、物体が動いている場合には合成波(S)は、図5に示すように変化する。この合成波(S)のエンベロープ(E)の変化分を取り出せば、物体との相対速度に応じた信号が得られ、その物体が移動体であるかどうかを検知することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図6は従来の1素子型の移動体検知装置を示した図である。図6に示すように、発振素子11、送信アンテナ12、受信アンテナ13等を空洞共振箱16内に配置し、空洞共振箱16の一部に開口部16−1を設けて送受信を行い、移動体検知信号を得ていた。
【0009】
図7は従来の2素子型の移動体検知装置を示した図である。図7に示すように、発振素子11、送信アンテナ12、受信アンテナ13、結合器15、検波素子としてのダイオードD等を空洞共振箱16内に配置し、空洞共振箱16の一部に開口部16−1を設けて送受信を行い、移動体検知信号を得ていた。
発振素子としては、GaAs FET、ヘテロジャンクション型FET(HEMT)等のFETが用いられている。
【0010】
上記のように従来の移動体検知装置の場合、アンテナは送信用アンテナ12と受信用アンテナ13の2つを備え、ビート成分である検波出力は発振素子であるFETのドレイン又はソースから取り出す構成となっている。そしてこれらの回路構成は基板に実装され空洞共振箱16内に全て納められており、アンテナは空洞共振箱の一部に設けられた開口部付近に設けられ、必要に応じて外部アンテナを接続するように構成されている。
【0011】
図8は、空洞共振箱16、送信アンテナ12、受信アンテナ13等の回路構成を実装した回路基板18、及び外部アンテナ17の配置構成の概要を示した図である。回路基板18はアンテナの効率向上等のために空洞共振箱16内に納められ、空洞共振箱16にはアンテナ12、13が外部と送受信できるようにするための開口部16−1が設けられている。また、外部アンテナ17は空洞共振箱16に設けられた開口部16−1に必要に応じて取り付けられる。
【0012】
上記従来の移動体検知装置において、図6に示した1素子型の場合、回路構成は単純であるが、受信時はFETの増幅利得が大きくないと十分な感度が得られないという問題がある。
また、図7に示した2素子型の場合、回路構成が複雑となり素子の数が多くなるのでコストが高くなるという問題がある。
また、1素子型、2素子型共に回路構成の全てが空洞共振箱内に納められているため、移動体検知エリアを変更する場合、開口部にアンテナを接続する必要があり、コストの増加に加えて検出部のサイズが大きくなるという問題がある。
そこで、本発明は構成が簡単で、小型化及び低コスト化を図ることができる移動体検知装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明移動体検知装置によれば、発振素子としてのFETのゲートから発振出力を共振用伝送路を介して送受信アンテナに送り、該アンテナから送信した送信波の反射波を前記ゲートで受け、該ゲートから出力される送信波と反射波の位相差分のビート信号成分を移動体検出信号として取り出している。
また、FETと共振用伝送路は多層基板上に設けられて空洞共振箱に覆われ、アンテナは該多層基板の裏側に設けられてトリプレート構造によって前記共振用伝送路とスロット結合されている。
また、FETとして、GaAsFET又はヘテロジャンクション型FETが用いられている。
【0014】
【発明の実施の形態】
図9は、本発明の移動体検知装置の要部を示した図である。空洞共振箱16内に発振素子としてGaAs FET、ヘテロジャンクション型FET(HEMT)等のFET11が用いられ、FET11のゲートは共振用伝送路20を介して空洞共振箱16の外側に設けられた送受信用アンテナ19に接続されている。また、FETのソース又はドレインの一方は電源に接続され、他方は接地されている。FET11からの出力は共振用伝送路20を介して送受信アンテナ19から送信され、反射波は同じく送受信アンテナ19で受信され、アンテナ19とFET11の接続部Pから移動体検知信号である検波出力が取り出される。
【0015】
通常FETのゲートは敏感であるため、外部回路とは分離されているが、本発明では逆にこの性質を用いて単純な構成で移動体を検知できる回路構成とした。即ち、発振素子であるFET11のゲートから発振出力を共振用伝送路20を介して空洞共振箱16の外側に設けられた送受信用アンテナ19に送り、同じくゲートで反射波を受け、FET11に外部からの反射波を与えることで位相の差分のビート信号成分が発生するので、これを共振用伝送路20に出力し移動体検知信号である検波出力として取り出すようにした。
このような構成とすることによって、送受信用アンテナ1本を空洞共振箱16の外に設けることができ、回路の素子数も減らすことができるので、サイズを小さくすることができると共に、検知エリアが変更されたときには外部に設けられたアンテナの形状を変更するだけでよいので、別途外部アンテナを設ける必要がなくなる。
【0016】
図10は、本発明の移動体検知装置の具体的な構成例を示した図である。図において、発振素子であるFET11のゲートは共振用伝送路20に接続され、共振用伝送路20は空洞共振箱16の外側に設けられた送受信用アンテナ19とスロット結合(SC)されている。FET11としては、例えばHEMT,GaAs FETが用いられる。FET11のドレイン又はソースの一方は接地され、他方はマッチング用スタブ21及び抵抗R1を介して電源Vccに接続されている。23は高周波除去用スタブである。共振用伝送路20はコンデンサC及び抵抗R3を介して接地され、また抵抗R2を介して電源に接続されており、抵抗R2とコンデンサCの接続点から検波出力が取り出される。22は高周波除去用スタブである。これらの回路構成はアンテナ19を除いて空洞共振箱16の内側に納められている。
【0017】
図11は、共振用伝送路20と送受信用アンテナ19とをスロット結合するトリプレート構造の例を示した図である。アンテナ19は空洞共振箱16の外側に設けられトリプレート構造によりスロット結合されている。図11において、19はアンテナ、18−1、18−2、18−3は回路基板18を構成する誘電体よりなるコア部材、21はスロットSが設けられた接地電位導電部材、20は共振用伝送路である。上記のようにアンテナ19はトリプレート構造によって共振用伝送路20とスロット結合されているため、空洞共振箱16の外側に配置することができる。図11に示すように、共振用伝送路20は回路基板18上に設けられ、空洞共振箱16内に納められている。一方、アンテナ19は回路基板18の裏側に設けられ、空洞共振箱16の外側に配置されている。
【0018】
上記検知回路は一般的な誘電体発振回路を用いてゲートの伝送路を長くし、開放終端から使用する周波数の波長λの1/4の位置(λ/4)の内層部分にスロットSを設けている。なお、この位置は基板の誘電率で異なる。そして、このスロットSの中心と同じ位置の基板の裏面にパッチアンテナ等のアンテナ19を設けることによって、アンテナを自由に設計することができる。
【0019】
図12は図11に示したトリプレート構造のパッチアンテナ19、基板18、及び空洞共振箱16を組み立てたときの外観を示したものである。図12に示すように、回路基板18の裏面にパッチアンテナ19が設けられ、回路基板の上面は空洞共振箱16で覆われている。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、1つの発振素子と1つの送受信アンテナで移動体検知装置を構成しているので回路構成を簡単にすることができ、従ってサイズを小さくすることができ、コストを低減することができる。また、アンテナを空洞共振箱の外に設けることができるため、アンテナを自由に設計することができる。そのため、移動体検知エリアを変更した場合でも従来のように開口部にアンテナを接続する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】移動体検知装置のブロック図を示したものである。
【図2】移動体検知装置を用いて移動体を検知する方法の原理を示した図である。
【図3】移動体検知装置からの送信波と物体から反射した反射波との位相関係を示した図である。
【図4】送信波に対する反射波及び合成波を示した図である。
【図5】合成波のエンベロープを示した図である。
【図6】従来の1素子型の移動体検知装置を示した図である。
【図7】従来の2素子型の移動体検知装置を示した図である。
【図8】移動体検知装置の配置構成の概要を示した図である。
【図9】本発明による移動体検知装置の要部を示した図である。
【図10】本発明による移動体検知装置の具体的構成例を示した図である。
【図11】トリプレート構造を示した図である。
【図12】本発明による移動体検知装置の外観を示した図である。
【符号の説明】
1…移動体検知装置
11…発振回路、発振素子、FET
12…送信アンテナ
13…受信アンテナ
14…受信回路
15…結合器
16…空洞共振箱
16−1…開口
17…外部アンテナ
18…回路基板
18−1、18−2、18−3…回路基板のコア部材
19…送受信アンテナ
20…共振用伝送路
21…マッチング用スタグ
22,23…高周波除去用スタグ
2…物体

Claims (6)

  1. 発振素子としてのFETのゲートから発振出力を共振用伝送路を介して送受信アンテナに送り、該アンテナから送信した送信波の反射波を前記ゲートで受け、送信波と反射波の位相差分のビート信号成分を移動体検出信号として該ゲートから取り出す移動体検知装置。
  2. 前記FETと共振用伝送路は多層基板上に設けられて空洞共振箱に覆われ、前記アンテナは該多層基板の裏側に設けられてトリプレート構造によって前記共振用伝送路とスロット結合されている、請求項1に記載の移動体検知装置。
  3. 前記FETは、GaAsFET又はヘテロジャンクション型FETである、請求項1又は2に記載の移動体検知装置。
  4. 送受信アンテナと発振素子としてのFETとを備え、送信波と受信波に基づく検波出力から移動体を検知する移動体検知装置において、
    前記送受信アンテナは、前記FETのゲートからの出力を送信波とするとともにその反射波を受信し、
    前記FETは、ゲートが共振用伝送路を介して前記送受信アンテナにスロット結合され、ドレイン又はソースの一方が接地され、他方が電源に接続され、移動体検出信号として検波出力を該ゲートから取り出すことを特徴とする移動体検知装置。
  5. 送受信アンテナと空洞共振箱内に発振素子としてのFETとを備え、送信波と受信波に基づく検波出力から移動体を検知する移動体検知装置において、
    前記送受信アンテナは、前記空洞共振箱の外側に設けられ、前記FETのゲートからの出力を送信波とするとともにその反射波を受信し、
    前記FETは、ゲートが共振用伝送路を介して前記送受信アンテナにスロット結合され、ドレイン又はソースの一方が接地され、他方がマッチング用スタグ及び第3の抵抗を介して電源に接続され、
    前記共振用伝送路は、一端が前記FETのゲートと接続され、他端がコンデンサ及び第1の抵抗を介して接地され、また第2の抵抗を介して電源に接続されており、
    前記第2の抵抗と前記コンデンサの接続点から前記検波出力を取り出す、
    ことを特徴とする移動体検知装置。
  6. トリプレート構造を有するパッチアンテナを備えた移動体検知装置であって、
    該トリプレート構造は、誘電体よりなる3つの基板と、該基板に設けられた回路の開放終端から使用する周波数の波長の1/4の位置の内層部分にスロットが設けられた接地電位導電部材を有し、
    前記パッチアンテナは、前記スロットと同位置の前記基板裏側においてスロット結合され、発振素子としてのFETのゲートからの出力を送信波とするとともにその反射波を受信して、送信波と反射波の位相差分のビート信号成分を移動体検出信号とする検波出力を該ゲートから取り出すことを特徴とする、移動体検知装置。
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