JP4046327B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に関するものである。更に詳しくは、本発明は、剛性、耐熱性に優れた樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン樹脂、特に結晶性のポリオレフィン樹脂は、剛性、電気特性、耐溶剤性、成形加工性等の諸特性が優れることに加えて、比重が低いこと、安価であること等の特徴を備えており、各種成形品やフィルムとして広く実用されている。
【0003】
しかし、この様なポリオレフィン樹脂にもいくつかの欠点があり、それらの改良が望まれている。それら欠点の1つは剛性、高温剛性、耐熱性が不十分ということであり、従来、かかる欠点を改良する方法として種々の提案がなされてきた。それらの中には、例えば、ポリオレフィン樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂をブレンドする方法が提案されている(特許文献1、特許文献2等)。
【0004】
しかし、ポリオレフィン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂に対する親和性が低いために、相容化の十分な樹脂組成物を得ることが難しく、多数の提案の存在にもかかわらず実用に耐える優れた物性のポリオレフィン樹脂と他の熱可塑性樹脂との樹脂組成物はいまだに得られていないのが現状である。
【0005】
ポリオレフィン樹脂と他の熱可塑性樹脂の組成物における相容化改良に関する提案としては、例えば、ポリオレフィン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂と非芳香族性の炭素−炭素多重結合を有する官能性化合物およびジアミノ化合物からなる樹脂組成物(特許文献3)の提案がある。しかし、これら提案の樹脂組成物は十分相容化されたものではなく、耐溶剤性、成形加工性等の性質において改善が見られるものの、機械特性、とりわけウエルド強度と剛性において不満足なものである。
【0006】
【特許文献1】
特公昭42−7069号公報
【特許文献2】
特開平2−115248号公報
【特許文献3】
特許第2926513号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、機械的強度に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する点に存する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行なった結果、ポリオレフィン樹脂に対して、ポリフェニレンエーテル樹脂及び3種類の特定の有機化合物を混合せしめた場合、耐薬品性等のポリオレフィン樹脂本来の優れた性質を犠牲にすることなくポリオレフィン樹脂の機械的物性を著しく改良できるということを見い出し本発明を完成に至った。
すなわち、本発明は、下記の(A)〜(E)を溶融混練してなり、(A)/(B)の重量比が40/60〜99/1であり、(C)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.1〜30重量部であり、(D)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.001〜20重量部であり、(E)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部である熱可塑性樹脂組成物に係るものである。
(A):ポリオレフィン樹脂
(B):ポリフェニレンエーテル樹脂
(C):非芳香族性の炭素−炭素多重結合、オキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一を有する官能性化合物
(D):下記の一般式で表わされるジアミノ化合物
RINH−X−NHRII
[式中、RI及びRIIは同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Xは不活性な置換基を有していてもよい炭素数4乃至30のアルキレン基を表わす。]
(E)半減期1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の成分(A)は、ポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等のα−オレフィン;特開平2−115248号公報明細書に記載の環状オレフィン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体である。なお、オレフィン類と少量の他の不飽和単量体を共重合した共重合体、並びに該共重合体及び上記オレフィン類の単独又は共重合体の酸化、スルホン化等による変性物はポリオレフィン樹脂に含まれるものとする。
【0010】
オレフィン類と共重合可能な他の不飽和単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸又はその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン等があげられる。これらの中ではエチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1を過半重量含む共重合体又は単独重合体が好ましく、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック、ランダム共重合体及びこれらの混合物等の結晶性プロピレン系重合体が更に好ましい。
【0011】
ポリオレフィン樹脂の分子量については、目的によってその好適な範囲が異なるため一概に範囲を定められないが、一般に温度230℃及び荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わして0.01〜400g/10分、好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0012】
上記ポリオレフィン樹脂は重合あるいは変性といった従来公知の方法によって製造することができる。また、市販品も広く入手可能であり、適宜これらから選んで使用することができる。
【0013】
本発明の成分(B)は、ポリフェニレンエーテル樹脂である。ポリフェニレンエーテル樹脂とは、下式(I)で表されるフェノール化合物の少なくとも一種を、酸化カップリング触媒によって、酸素又は酸素含有ガスを用いて酸化重合させて得られる単独重合体又は共重合体からなる樹脂を意味する。
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又は置換炭化水素基から選ばれるものであり、それらのうち必ず1個は水素原子である)
【0014】
式(I)におけるR1、R2、R3、R4及びR5として、水素、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、メチル、エチル、n−又はiso−プロピル、pri−、sec−又はt−ブチル、クロロエチル、ヒドロキシエチル、フェニルエチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルエチル、シアノエチル、フェニル、クロロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、アリルを例示することができる。
【0015】
式(I)で表されるフェノール化合物として、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、2,6−、2,5−、2,4−又は3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,3,5−、2,3,6−又は2,4,6−トリメチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、チモール、2−メチル−6−アリルフェノールを例示することができる。これらのフェノール化合物の中では、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールが好ましい。
【0016】
式(I)で表されるフェノール化合物は、ビスフェノール−A、テトラブロモビスフェノール−A、レゾルシン、ハイドロキノン及びノボラック樹脂で例示される多価ヒドロキシ芳香族化合物と共重合させてもよく、これらの共重合体も本発明にかかるポリフェニレンエーテル系樹脂に含まれるものとする。
【0017】
フェノール化合物を酸化(共)重合させるために用いられる酸化カップリング触媒は特に限定されず、重合能を有する如何なる触媒でも使用できる。また、フェノール化合物を酸化(共)重合させてポリフェニレンエーテル系樹脂を製造する方法として、米国特許第3306874号公報、同第3306875号公報及び同第3257357号公報並びに特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、特開平1−304119号公報に記載された製造方法を例示することができる。
【0018】
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル系樹脂として、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ブチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロペニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−ステアリルオキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(3−メチル−6−t−ブチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレンエーテル)及びこれらの樹脂を構成する繰り返し単位の複数種を含む各種の共重合体を例示することができる。
【0019】
更に、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5,6−テトラメチルフェノールで例示される多置換フェノールと、2,6−ジメチルフェノールで例示される2置換フェノールとの共重合体も、本発明にかかるポリフェニレンエーテル系樹脂に含まれるものとする。
【0020】
前記のポリフェニレンエーテル系樹脂のうちで好ましいものは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体である。
【0021】
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂はまた、上記の(共)重合体にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びビニルトルエンで例示されるスチレン系化合物をグラフトさせて得られるグラフト共重合体であってもよく、かかるグラフト共重合体も本発明にかかるポリフェニレンエーテル系樹脂に含まれるものとする。
【0022】
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル系樹脂としては、温度30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.7dl/gのものが好ましく、より好ましくは0.36〜0.65dl/g、特に好ましくは0.4〜0.6dl/gである。固有粘度が低すぎると、難燃性がする場合があり、固有粘度が高すぎると、本発明の樹脂組成物の成形加工性が低下する場合がある。
【0023】
本発明の成分(C)は、非芳香族性の炭素−炭素多重結合、オキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一を有する官能性化合物である。
【0024】
本発明における非芳香族の炭素−炭素二重結合又は三重結合のみを有する官能性化合物は下記に示すオレフィン類、液状ジエンポリマー及びキノン類である。
【0025】
すなわち、かかる官能性化合物の具体例としては、ドデセン−1、オクタデセン−1等で例示されるオレフィン類;液状ポリブタジエンで例示される液状ジエンポリマー;並びに1,2−及び1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジフェニルベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、2,2′−及び4,4′−ジフェノキノン、1,2―ナフトキノン、1,4―ナフトキノン及び2,6−ナフトキノン、9,10−アントラキノン等で例示されるキノン類をあげることができる。
【0026】
また、本発明におけるオキシラン基のみを有する官能性化合物の具体例としては、多価フェノール、多価アルコール及びアミン類からなる群から選ばれる化合物とエピクロロヒドリンとを縮合させることによって製造されるエポキシ樹脂、上記液状ジエンポリマーのエポキシ化物、酸化ポリオレフィンワックス、オクタデシルグリシジルエーテル、1−ヘキサデセンオキシド等で例示されるエポキシ化合物があげられる。
【0027】
本発明における誘導カルボキシル基のみを有する官能性化合物の例としては下記に示す化合物があげられるが、ここに、誘導カルボキシル基とは一般式
−COOR6、
−COY、
−CONR7、R8又は
−CO−Z−CO−
[式中、R6は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yはハロゲン原子を表わし、R7とR8はそれぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yは酸素原子又はNHを表わす。]で表わされるカルボキシル基から派生する基のことである。
【0028】
かかる官能性化合物の具体例は無水コハク酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸重合体、p−ニトロ安息香酸メチル、p−シアノフェニルアセトアミド等で例示されるカルボン酸誘導体である。
【0029】
本発明における官能性化合物(C)としては、(i)非芳香族の炭素−炭素二重結合、オキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一と(ii)誘導カルボキシル基、誘導水酸基、誘導アミノ基、誘導シリル基、誘導メルカプト基、誘導スルホン酸基及びオキシラン基からなる群から選ばれる官能基であって上記(i)の官能基とは異なる官能基の少なくとも一とを同時に有する官能性化合物が好ましい。
【0030】
ここに、誘導水酸基とは、一般式
―OR9―、
―OCOR10―、又は、
―OSi(R11)3―
[式中、R9及びR10は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭酸原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、3個のR11は互いに同じか又は異なる不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基、アリール基もしくはアルコキシ基を表わす。]で表わされる水酸基から派生する基のことである。
【0031】
誘導アミノ酸基とは、一般式
―NHR12―、又は
―NHCOR13―
[式中、R12は水素原子、シアノ基又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、R13は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるアミノ基から派生する基のことである。
【0032】
誘導シリル基とは、一般式
−Si(R14)3
[式中、3個のR14は互いに同じか又は異なる水素原子、アミノ基又はメルカプト基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基、アリール基もしくはアルコキシ基を表わす。]で表わされるシリル基から派生する基のことである。
【0033】
誘導メルカプト基とは、一般式
―SR15、又は
―SCOR16
[式中、R15及びR16は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるメルカプト基から派生する基のことである。
【0034】
誘導スルホン酸基とは、一般式
−SO3R17、
−SO2Y又は
−SO2NR18R19
[式中、R17は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yはハロゲン原子をわし、R18とR19はそれぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるスルホン酸基から派生する基のことである。
【0035】
かかる好ましい官能性化合物の例としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸、シトラコン酸、イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸;アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等で例示される不飽和モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水ハイミック酸、アクリル酸無水物等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の酸無水物;マレイン酸アミド、マレインヒドラジド、アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の酸アミド;エチルマレイン酸等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸のエステル;マレイミド等で例示されるα、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸のイミド;アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等で例示される不飽和エポキシ化合物;アリルアミン、p−アミノスチレン、N−ビニルアニリン等で例示される不飽和アミン;アリルアルコール、3−ブテン−2−オール、プロパギルアルコール等で例示される不飽和アルコール;p−ビニルフェノール、2−プロペニルフェノール等で例示されるアルケニルフェノール;2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のオルガノシラン化合物;3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトベンズイミダゾール等のメルカプト化合物;2−ヒドロキシイソ酪酸、DL−酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸カルシウム、リング酸カルシウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、アセチルシトレート、ステアリルシトレート、ジステアリルシトレート、アセチルマリエート、ステアリルマリエート、N、N′−ジエチルクエン酸アミド、N、N′−ジプロピルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N、N′−ジドデシルクエン酸アミド、N−ドデシルリンゴ酸アミド等のオキシカルボン酸誘導体;トリメリト酸無水物酸ハロゲン化物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロアセチルコハク酸無水物等の酸塩化物等があげられる。
【0036】
より好ましい官能性化合物は、(i)非芳香族性の炭素−炭素多重結合と(ii)上記誘導カルボキシル基、誘導水酸基、誘導アミノ基、誘導シリル基、誘導メルカプト基及びオキシラン基からなる群から選ばれる官能基の少なくとも一とを同時に有する化合物、及び上記オキシカルボン酸誘導体である。これらの中で更に好ましい官能性化合物はマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ハイミック酸無水物、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、マレイミド、アリルマミン、アリルアルコール及びプロパルギルアルコール、クエン酸及びリンゴ酸であり、最も好ましい官能性化合物は無水マレイン酸及びフマル酸である。
【0037】
なお、本発明の官能性化合物(C)は、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族炭化水素と一緒に用いた方が更に好ましい場合がある。
【0038】
本発明の成分(D)は、一般式
RINH−X−NHRII
で表わされる有機化合物である。式中のRI及びRIIは同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Xは不活性な置換基を有していてもよい炭素数4乃至30のアルキレン基を表わす。ここに、RI、RII及びXにおける不活性な置換基とはアリール基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル基、スルフィド基、エステル基、アミド基等の熱的に安定な基のことである。
【0039】
かかるジアミノ化合物(D)の具体例としては、1,6―ジアミノヘキサン、1,6−ジアミノ−2−エチルヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,12−ビス(N、N′−ジメチルアミノ)ドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,24−ジアミノテトラコサン、1,16−ジアミノ−2、2−ジメチル−4−メチルヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2′−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス−ヘキサメチレントリアミン等があげられる。
【0040】
これらの化合物のうちで好ましいジアミノ化合物は上記一般式におけるRI及びRIIが共に水素原子であり、Xが炭素数8乃至20の直鎖アルキレン基であるジアミノ化合物であり、最も好ましいのは1,12−ジアミノドデカンである。
【0041】
本発明の成分(E)は、半減期1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物である。分解温度が低すぎるとグラフト量が向上せず、分解温度が高すぎると樹脂の分解が促進される。また、これらの有機過酸化物は分解してラジカルを発生した後、ポリプロピレン樹脂からプロトンを引き抜く作用があることが好ましい。半減期が1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物(分子骨格中に下記構造式1で表される構造を有する化合物I)やアルキルパーエステル化合物(下記構造式2で表される構造を有する化合物II)等があげられる。
【0042】
構造式1で表される構造を有する化合物Iとしては、ジ−3−メトキシ ブチル パーオキシジカルボネート,ジ−2−エチルヘキシル パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピル パーオキシジカルボネート、t−ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカルボネート等があげられる。構造式2で表される構造を有する化合物IIとしては、1,1,3,3−テトラメチル ブチル ネオデカノエート,α―クミル パーオキシ ネオデカノエート,t−ブチル パーオキシ ネオデカノエート等があげられる。これらの有機過酸化物(E)のうち、好ましいのは、パーカボネート化合物である。
【0043】
本発明の樹脂組成物における(A)/(B)の重量比は、40/60〜99/1であり、好ましくは、50/50〜95/5である。(A)が過少の場合((B)が過多の場合)耐薬品性が乏しくなり、一方(A)が過多の場合((B)が過少の場合)耐熱性が悪化する。
【0044】
本発明の樹脂組成物における上記官能性化合物(C)の添加量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して、0.1〜30重量部であり、好ましくは0.2〜20重量部である。(C)が過少の場合、ウエルド強度が悪化する。一方(C)が過多の場合、耐熱性が悪化する。
【0045】
本発明の樹脂組成物における(D)の添加量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して、0.001〜20重量部であり、好ましくは0.02〜10重量部である。(D)が過少の場合、ウエルド強度が悪化する。一方(D)が過多の場合、耐熱性が悪化する。
【0046】
本発明の樹脂組成物における(E)の添加量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは、0.01〜3重量部である。(E)が過少の場合、耐熱性が悪化する。一方過多の場合、流動性が低下する。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、(A)が連続相を形成していることが好ましい。(A)が連続相を形成しない場合、耐薬品性が悪化する。
【0048】
本発明の樹脂組成物は上記の(A)〜(E)の成分を溶融混練して得られる。溶融混練方法の一例としては押出機等を用いて溶融混練する方法があげられるが、一般に行われている混練方法であれば特に制限を受けない。フィード方法は、材料を一括で投入する方法、材料の一部をサイドフィードする方法、予備混練物をフィードする方法が考えられるが、(A)成分の一部または全量、(C)成分の一部または全量及び(E)成分の溶融混練物に(B)成分、または、(B)成分と(C)成分の一部を添加し溶融混練物を得、得られた溶融混練物に(D)成分または(A)成分の一部と(D)成分を添加し溶融混練する方法が好ましい。
【0049】
具体的には、複数のフィード口を有する単軸もしくは2軸の押出し機を用い、(A)成分の一部または全量、(C)成分の一部または全量及び(E)成分を溶融混練した後にそれよりも下流側のフィード口から(B)成分、または、(B)成分と(C)成分の一部をフィードし溶融混練した後にそれよりも下流側のフィード口から(D)成分、または、(A)成分の一部と(D)成分をフィードし溶融混練する方法、又は、(A)成分の一部または全量、(C)成分の一部または全量及び(E)成分を溶融混練し、一旦、冷却固化した後に該混合物と(B)成分、または、(B)成分と(C)成分の一部を添加し溶融混練し、一旦冷却した後に概混合物と(D)成分、または、(A)成分の一部と(D)成分を添加し溶融混練する方法があげられる。混練温度は、(A)成分の一部または全量、(C)成分の一部または全量及び(E)成分を溶融混練する部分では、150℃以上230℃以下が好ましく、さらに好ましくは160〜210℃の範囲である。それ以降の工程では、220℃〜350℃が好ましく、さらに好ましくは、240〜300℃の範囲である。
【0050】
本発明において、より一層高い衝撃強度を有する樹脂組成物が所望される場合には、該組成物にエラストマー類を含有せしめることが望ましい。
【0051】
かかるエラストマー類の例としては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピンレン共重合体ゴム、ブタジエンスチレン共重合体ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体ゴム、ポリエステルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等及びこれらの変性物等をあげることができる。
【0052】
これらの中で好ましいエラストマー類は、ジエン系化合物を共重合した三元共重合体及びスチレン等の不飽和単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体を含む水素添加物を含むスチレン−イソプレンジブロック共重合体、スチレン−ブタジエントリブロック共重合体等のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体ゴムである。
【0053】
エラストマー類を使用する場合、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して、0〜70重量%、好ましくは1〜50重量%である。
【0054】
本発明の樹脂組成物は所望により上記した物質以外の他の物質も含むことができる。特定の目的のために含有せしめることが好ましいかかる他の物質の例としては、他の樹脂、難燃剤、安定剤、可塑剤、滑剤、顔料、強化繊維、充填剤等があげられる。
【0055】
本発明の熱樹脂組成物の成形方法は射出成形、押出成形、圧縮成形、中空成形など、一般に行われている成形方法であれば特に問題はなく、得られる樹脂組成物の形状は何等限定されるものではなく、成形方法による制約を受けることはない。
【0056】
また、得られた成形品は、たとえば、自動車内外装、2次電池電槽、屈曲性チューブ、ウェザストリップ、各種ガスケット、光ファーバー被覆材、計装ケーブル被覆材、自動車用ワイヤーハーネス被覆材等に用いられる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例及び比較例で使用された成分は以下のとおりである。
1. ポリオレフィン樹脂(成分(A))
PP:ポリプロピレン樹脂 200℃、21NにおけるMFR:0.5
2.ポリフェニレンエーテル系樹脂(成分(B))
PPE:クロロホルム溶媒中、30℃で測定した固有粘度が0.40dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
3.官能性化合物(成分(C))
MAH:無水マレイン酸
4. ジアミン化合物
DADD:1、12―ジアミノドデカン
5.有機過酸化物(E)
PO1:過酸化物、商標パーカドックス24(化薬アクゾ製)
(ジセチル パーオキシジカーボネート)
6.その他の成分
PO2:過酸化物、商標パーカドックス14/40C(化薬アクゾ製)
(1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ イソプロピル)ベンゼン、40wt%濃度)
【0059】
測定・評価方法が下記のとおりである。
熱変形温度
耐熱性を示す尺度としての熱変形温度を、ASTM D648に従い、1.81MPaの荷重下で測定した。
引張降伏強度
ASTM D638 に準拠し、3.2mm厚さの試験片を使用して23℃における引張り降伏強度を測定した。
曲げ弾性率
ASTM D790 に準拠し、3.2mm厚さの試験片を使用して23℃における曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。
ウエルド引張り特性
平行部中央に対向ウエルドを有する厚さ3.2mmの試験片を射出成形にて作製し、ASTMD638に準拠し、23℃における引張り降伏強度を測定した。
また、下記式により、ウエルド強度保持率を算出した。
ウエルド強度保持率=(ウエルド成形品の引張降伏強度)/(非ウエルド成形品の引張降伏点強度)×100 (%)
【0060】
実施例1
表1に示す配合割合(重量部)の各成分を、表1に示す順序にて、第一フィード口と第二フィード口の間のシリンダー温度170℃、第二フィード口よりも下流側のシリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpmに設定した連続二軸混練機(東芝機械製TEM−50A型)のホッパーから投入した後、これら成分を溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを、シリンダー温度260℃に設定した射出成型機にて、テストピースを作製し、引張降伏点強度、ウエルド強度、熱変形温度を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
実施例2、比較例1〜2
表1に示す配合割合を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0062】
結果から次のことがわかる。本発明の条件を充足する全ての実施例は全ての評価項目において満足すべき結果を示している。一方、(D)を含まない比較例1はウエルド強度に劣る。(E)を含まない比較例2は耐熱性に劣る。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、ウエルド強度、曲げ強度、熱変形温度に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができた。
Claims (4)
- 下記の(A)〜(E)を溶融混練してなり、(A)/(B)の重量比が50/50〜95/5であり、(C)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.2〜20重量部であり、(D)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.02〜10重量部であり、(E)の添加量が(A)及び(B)の合計量100重量部に対して0.01〜3重量部である熱可塑性樹脂組成物。
(A):ポリオレフィン樹脂
(B):ポリフェニレンエーテル樹脂
(C):(i)非芳香性の炭素−炭素多重結合、オキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一と(ii)誘導カルボキシル基、誘導水酸基、誘導アミノ基、誘導シリル基、誘導メルカプト基、誘導スルホン酸基及びオキシラン基からなる群から選ばれる官能基であって、上記(i)の官能基とは異なる官能基の少なくとも一を同時に有する官能性化合物
(D):下記の一般式で表わされるジアミノ化合物
RINH−X−NHRII
[式中、RI及びRIIは同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Xは不活性な置換基を有していてもよい炭素数4乃至30のアルキレン基を表わす。]
(E)半減期1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物 - ジアミノ化合物(D)が、下記の一般式で表されるジアミノ化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
NH2−X−NH2
[式中、Xは炭素数4乃至30の直鎖アルキレン基を表わす。] - 請求項1〜3いずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
(A)の一部又は全量、(C)の一部又は全量及び(E)を150℃以上230℃以下で溶融混練する工程、
(B)、又は、(B)と(C)の一部を220℃以上350℃以下で溶融混練する工程、並びに、
(D)、又は、(A)の一部と(D)を220℃以上350℃以下で溶融混練する工程を含む
熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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