JP4045746B2 - カラー陰極線管用磁気シールド鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気シールド鋼板、特にカラー陰極線管の内部または外部にあって電子線の通過方向に対して側面から覆うように設置される磁気シールド部品の素材として好適なカラー陰極線管用磁気シールド鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラー陰極線管の基本構成は、電子線を射出する電子銃と電子線照射により発光して映像を構成する蛍光面からなる。電子線は地磁気の影響によって偏向し、その結果映像に色ずれを発生させるため、偏向を防止するための手段として、一般的に内部磁気シールド(インナーシールド、インナーマグネティックシールドとも称する)が設置されている。また、外部磁気シールド(アウターシールド、アウターマグネティックシールドとも称する)が、カラー陰極線管外部に設置される場合もある。本発明では、これらの内部磁気シールドおよび外部磁気シールドを総称して磁気シールドと称する。
【0003】
近年、民生用TVは大型化、ワイド化が進められ、電子線の走行距離および走査距離が大きくなり、地磁気による影響を受けやすくなっている。すなわち、地磁気により偏向した電子線の蛍光面到達地点の、本来到達すべき地点からのずれ(地磁気ドリフトと称される)が従来より大きくなっているため、その抑制が要望されている。また、パーソナルコンピュータ等のモニタ用の陰極線管では、より高精細の静止画像が求められるため、地磁気ドリフトによる色ずれは極力抑制しなければならない状況である。
【0004】
このような中で、従来は、上記磁気シールド用として使用される鋼板の特性については、ほぼ地磁気に相当する低磁場での透磁率や、保磁力、残留磁束密度を指標として評価される場合が多かった。
【0005】
磁気シールド用鋼板の特性を改善する方法として、特開平3−61330号公報では、特定の組成の鋼を用いてフェライト結晶粒度番号を3.0以下とすることにより磁気特性を改善する技術が開示されており、磁気シールド用冷間圧延鋼板として求められる磁気特性として、例えば透磁率750以上、保磁力1.25Oe以下と記載されている。
【0006】
特開平5−41177号公報では、残留磁束密度が8kG以上の磁性材を用いて内部磁気シールド体を構成する技術が開示されている。
【0007】
特開平10−168551号公報では、保磁力を3Oe以上とするために結晶粒を微細化した磁気シールド材およびその製造方法が開示されている。
【0008】
特開平10−251753号公報では、鋼板幅方向の残留磁束密度を高位に安定させるため、重量比でC≦0.09%の鋼板を用い、冷延板連続焼鈍を炉内張力0.1〜0.9kgf/mm2の範囲で行う製造方法が開示されている。
【0009】
また、電子情報通信学会論文誌、Vol.J79-C-II No.6, p311〜319, ’96.6では、磁気シールド性向上のため、非履歴透磁率と磁気シールド性との関係について述べられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−61330号公報記載の技術においては、実際のカラー陰極線管に適用された磁気シールド用鋼板は地磁気中で消磁されるのが一般的であり、この場合は透磁率よりも消磁後の鋼板磁化の大きさ(または非履歴透磁率)が問題になるにもかかわらず、これについて何ら考慮されていない。
【0011】
また特開平5−41177号公報記載の技術においては、材質規定として残留磁束密度のみ記述されているが、具体的にどのような材料で所定の残留磁束密度が得られるのか明らかにされておらず、また消磁過程を考慮すると保磁力の規定が必須であるにもかかわらず、全く触れられていない。
【0012】
特開平10−168551号公報記載の技術においては、保磁力の上限が記載されていないため、保磁力の高い鋼板を用いた場合、たとえ残留磁束密度が高くても消磁が十分に行われず、磁気シールド性が不十分となる問題があった。
【0013】
特開平10−251753号公報においては、保磁力について全く記載されていない。また、請求項に記載された成分範囲では、炭素含有量によって冷延後の適正焼鈍温度が異なるはずであるが、実施例はC含有量0.0015%の鋼板について記載されているのみで製造条件が不明確である。
【0014】
電子情報通信学会論文誌、Vol.J79-C-II No.6, p311〜319, ’96.6では、非履歴透磁率と磁気シールド性能との関係について検討がなされているが、どのような鋼板が高い非履歴透磁率を有するか等の詳細な検討については、明らかにされていない。
【0015】
このように、いずれの技術も近年の民生用TVの大型化、ワイド化に伴う色すれによる映像劣化に対して対応しきれていない。また、パーソナルコンピュータ等のモニタ用陰極線管に対する色ずれも抑制しきれていない。
【0016】
このような理由から、より高性能の磁気シールド性を有する磁気シールド用鋼板が強く求められているのが現状である。
【0017】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、高い非履歴透磁率を有し、地磁気ドリフトによる色ずれを抑制して高精細な画像を得るために有効な、カラー陰極線管用磁気シールド鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、以下の知見を得た。一般に、カラー陰極線管の内部、場合によっては内部および外部には、強磁性体である鋼板が使われている。カラー陰極線管は通常地磁気に曝されているため、カラー陰極線管内外の鋼板は不均一に磁化されており、これが色ずれを引きおこす一因となっている。そして、最近のカラー陰極線管にはこれら強磁性材料に残留した磁化を取り除くために交流消磁回路が組み込まれている。
【0019】
ところで、この消磁は地磁気中で行われるため、消磁後のカラー陰極線管内外の鋼板には地磁気の方向に沿って比較的高い磁化が生じている。この磁化によって形成される反磁界がカラー陰極線管内の地磁気をうち消すことにより、高い地磁気シールド性が発現する。一般に、直流磁界中で消磁した後の材料の磁化は、その直流磁界に対応した非履歴磁化(または理想磁化)に収束することが知られており、この非履歴磁化状態の磁束密度をその直流磁界の大きさで除した値を非履歴透磁率という。前記の電子情報通信学会論文誌、Vol.J79-C-II No.6, p311〜319, ’96.6に述べられているように、磁気シールド用途に適した鋼板とは、この「非履歴透磁率」が高い鋼板であると考えられる。本発明者等は、この知見をもとに、地磁気相当の直流バイアス磁界27.9A/m(0.35Oe)における非履歴透磁率を高めるための条件を調査し、磁気シールド用として優れた鋼板について検討した。
【0020】
その結果、
▲1▼ 通常の磁気シールド材においては、透磁率を高めるために析出物低減、高温での熱処理等により結晶粒の粗大化が図られているが、非履歴透磁率の場合は透磁率の場合とは逆に板厚に対する結晶の寸法比を小さくすることにより高まる傾向があること
▲2▼ カラー陰極線管のように、地磁気中での交流消磁により発生する材料の磁化を積極的に利用した磁気シールドシステムにおいては、非履歴透磁率が7500以上の鋼板をシールド材として用いれば地磁気の影響を効果的に抑制できること
▲3▼ 鋼中に比較的多くのCを含有していても、適切な温度で焼鈍することにより高い非履歴透磁率が得られること
▲4▼ 適量のB添加により非履歴透磁率が向上すること
▲5▼ 保磁力が増大すると、本来の非履歴磁化に達するのに必要な消磁電力が大きくなり、省電力化の観点から好ましくないこと
を見出した。
【0021】
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(3)を提供する。
【0023】
(1) 重量%で、C≦0.04%、Si≦0.2%、0.1%≦Mn≦2%、P≦0.15%、S≦0.02%、0.001%≦Sol.Al≦0.08%、N≦0.01%、Ti≦0.01%、Nb≦0.01%、V≦0.01%であり、残部Feおよび不可避的不純物からなり、板厚が0.05mm以上0.5mm以下、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tが0.10以下であって、非履歴透磁率が7500以上、保磁力が3Oe未満であることを特徴とするカラー陰極線管用磁気シールド鋼板。
【0024】
(2) 前記(1)において、さらに、重量%で、B:0.0003%以上0.01%以下を含有することを特徴とするカラー陰極線管用磁気シールド鋼板。
【0026】
(3) 前記(1)または(2)に記載の成分組成を有する鋼スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延を700℃〜950℃で仕上げ、巻取りを550〜750℃で行い、酸洗後、圧下率70〜94%の範囲で冷間圧延し、これをフェライト単相温度域またはAc1変態点未満の温度域で再結晶焼鈍し、次いで1.5%以下(0を含む)の圧延率で調質圧延することを特徴とするカラー陰極線管用磁気シールド鋼板の製造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tは最も重要な要件であり、この値を0.10以下とする。
【0029】
一般に軟磁性材料は、結晶粒が大きくなるほど保磁力が減少し、初透磁率が高くなる。したがって磁気シールド性能向上のため、従来より材料の結晶粒を粗大化する様々な試みが行われてきた。ところが地磁気中での交流消磁を利用した磁気シールド材料に要求されるのは、高い非履歴透磁率である。本発明者らはこの非履歴透磁率に及ぼす結晶粒径の影響を調査した結果、従来知られている透磁率の傾向とは異なり、結晶粒を微細化すると非履歴透磁率が増大することを見出した。この現象をさらに詳細に調査するために、次の実験を行った。
【0030】
すなわち、表1記載の成分を有する鋼スラブを1200℃で加熱した後、仕上温度890℃、巻取温度620℃で熱間圧延し、それぞれ板厚を調整してから圧下率85%で冷間圧延し、板厚0.5、0.3、0.2mmの冷延板を作製して、600〜750℃で焼鈍することにより粒径の異なるサンプルを得た。これをリング状試料に加工し、後述する方法で非履歴透磁率を測定した。表2に示す測定結果から、鋼板の平均結晶粒径と非履歴透磁率との関係を整理した(図1参照)。また、平均結晶粒径d(mm)と板厚t(mm)との比d/tおよび非履歴透磁率の関係を整理した(図2参照)。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すようにそれぞれの板厚において結晶粒の微細化による非履歴透磁率の向上効果が認められるが、図1に示すように、鋼板の平均結晶粒径をパラメーターとして用いても材質と非履歴透磁率との関係を明確に整理することはできない。これに対して、図2に示すように、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tをパラメータとして用いた場合には、材質と非履歴透磁率との関係をより明確に整理することができ、この比d/tの値を0.10以下とすることにより非履歴透磁率を極めて高くすることができることがわかる。
【0034】
以上の実験結果から、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tは0.10以下とする。より好ましくはd/t≦0.05である。なお、ここで平均結晶粒径とは、鋼板断面の光学顕微鏡組織において板厚全体にわたって結晶数をカウントし、その結果得られた単位面積あたりの結晶数mからd=1/√mにより算出された値である。
【0035】
次に、板厚について説明する。
磁気シールド用鋼板としての板厚下限は、薄肉化しすぎると非履歴透磁率の高い鋼板であっても磁気シールド性が不十分となること、また磁気シールド部品としての剛性が得られなくなることから0.05mm以上とする。磁気シールド性を高めるためには板厚は大きい方が望ましいが、昨今のカラーテレビの大型化、ワイド化に伴い、テレビセットの軽量化が望まれているため上限は0.5mmとする。
【0036】
次に、非履歴透磁率について説明する。
磁気シールド材の非履歴透磁率はカラー陰極線管の色ずれを評価するのに有効な指標であり、その値が7500以上の磁気シールド材を用いることによって、カラー陰極線管の色ずれを実用上問題のない範囲に低減することができる。また、材料のヒステリシスループと非履歴透磁率との関係を調査した結果、残留磁束密度と非履歴透磁率との間に強い相関があり、板厚0.05mmから0.5mmの鋼板においては残留磁束密度が10kG以上であれば非履歴透磁率はほぼ7500以上の高い値を示し、十分な磁気シールド性が得られることがわかった。よって、非履歴透磁率7500以上とする。
【0037】
次に、保磁力について説明する。
カラー陰極線管の磁気シールドは、交流消磁により発生させた材料の非履歴磁化を積極的に利用したものである。ところが、磁気シールド材の非履歴磁化を得るためには、少なくともその材料の保磁力より大きな磁界を与えて消磁する必要がある。仮に消磁が材料の保磁力以下の磁界で行われた場合、材料の磁化は非履歴磁化まで到達しないため、十分な磁気シールド効果が得られない。実際のカラー陰極線管用磁気シールド材の構造や消磁回路を考慮すると、磁気シールド材料の保磁力は3Oe未満であることが必要である。さらに好ましくは2.5Oe未満である。後述するように、保磁力低減にはSol.Al,Mn,Ti,Nb,Vの含有量を規定することが有効である。
【0038】
次に、鋼の成分組成について説明する。
本発明に係るカラー陰極線管用磁気シールド鋼板は、重量%で、C≦0.04%、Si≦0.2%、0.1%≦Mn≦2%、P≦0.15%、S≦0.02%、0.001%≦Sol.Al≦0.08%、N≦0.01%、Ti≦0.01%、Nb≦0.01%、V≦0.01%を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる。また、より高い非履歴透磁率を得るためには、重量%で、0.0003%以上0.01%以下のBをさらに添加することが好ましい。以下、各成分をこのような範囲とした理由について説明する。
【0039】
C:その含有量を規定することが本発明で最も重要な元素である。一般に軟磁気特性向上にCは有害な元素とされている。しかしながら、前述のように、本発明者らが検討した結果、Cは非履歴透磁率に悪影響を及ぼさないことが明らかになった。一方、C量が多すぎると、保磁力が増大し、磁気シールド用鋼板として好ましくない。よってC量は0.04%以下とする。
【0040】
Si:焼鈍時に表面に濃化しやすく、めっきの密着性または黒化膜の密着性を劣化させるので、0.2%以下とする。より好ましくは0.1%未満である。
【0041】
Mn:鋼板強度を高めて鋼板のハンドリング性を改善するのに有効な元素であるが、過度に添加するとコストが増大するので、上限を2%とする。一方、0.1%未満ではMnSが微細に析出して保磁力を増大させるため、下限を0.1%とする。
【0042】
P:鋼板強度を高めるのに有効な元素であるが、添加量が多すぎると偏析によって製造中に割れが生じやすくなるため、0.15%以下とする。
【0043】
S:硫化物を形成せしめ保磁力の増大を招くため0.02%以下とする。
【0044】
Sol.Al:Alは、脱酸に必要な元素であり、Sol.Alが0.001%未満では鋼中酸化物が増大することによって磁気特性が不安定となる。一方、Sol.Alは上記Siと同様にめっき密着性または黒化膜の密着性を劣化させるため、これらの劣化を防止する観点からは0.2%以下とすることが好ましいが、0.08%を超えると微細なAlNが多量に析出して保磁力の増大を招いてしまう。したがって、Sol.Al量を0.001%以上0.08%以下とする。
【0045】
N:Nは、鋼中に多量に存在すると鋼板表面に欠陥が発生しやすくなるため、0.01%以下とする。
【0046】
Ti,Nb,V:鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成して保磁力増大を招くため、それぞれの上限を0.01%と規定する。このように鋼中に含まれるTi,Nb,Vの量を規制することにより、保磁力の低減を図ることができる。
【0047】
B:非履歴透磁率を向上する元素であり、添加することが好ましい。非履歴透磁率を向上する効果はB量が0.0003%以上の場合に有効に発揮される。また、Bを0.01%を超えて過剰に添加した場合、非履歴透磁率を向上する効果が飽和する一方で再結晶温度を上方させたり、鋼板が過度に硬質化する等の問題を生じる。以上より、B量は0.0003%以上0.01%以下とする。
【0048】
次に、製造方法について説明する。
上述のカラー陰極線管用磁気シールド鋼板は、上記成分を含む鋼を溶製して連続鋳造等により鋼スラブとし、これを熱間圧延し、冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍をフェライト単相温度域またはAc1変態点未満の温度域で行い、次いで1.5%以下(0を含む)の圧延率で調質圧延を行うことにより製造することができる。このように再結晶焼鈍および調質圧延の条件を規定することにより上記の磁気特性を得ることができる。
【0049】
この再結晶焼鈍は、高い非履歴透磁率の材料を得るために重要な製造因子である。すなわち、再結晶焼鈍温度と非履歴透磁率との関係を詳細に調査した結果、例えば炭素含有量が0.02%以下の場合はフェライト単相温度、また炭素含有量が0.02%を超える場合にはAc1変態点以下の温度域で焼鈍すれば、7500以上の非履歴透磁率が得られることが判明した。一方、オーステナイト単相温度域、またはAc1変態点以上Ac3変態点以下の(フェライト+オーステナイト)2相共存温度域で焼鈍すると、非履歴透磁率が急激に低下する傾向がある。よって、焼鈍はフェライト単相温度域またはAc1変態点以下の温度域と規定する。
【0050】
再結晶焼鈍後、必要に応じて調質圧延を施す。ここで高い非歴透磁率を確保するためには調質圧延歪みはできるだけ小さい方が好ましく、圧延率の上限を1.5%とする。鋼板形状や時効性に特に問題がない場合には、0.5%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは調質圧延を施さないことである。
【0051】
次いで、必要に応じて、耐食性等の観点から表面にCrめっき、Niめっきを施す。これらめっきは単相で使用しても複層化して使用してもよく、めっき層を形成する面は鋼板の一方の面であっても両方の面であってもよい。めっき層を形成することにより、鋼板の錆発生を抑制するとともに、陰極線管に組み込まれたときに鋼板からのガス発生を抑制することができるために有効である。付着量については、特に限定する必要がなく、鋼板表面を実質的に被覆できる付着量が適宜選択される。また、部分的または全面にNiめっきを施した後にクロメート処理を施して、鋼板表面を被覆してもよい。
【0052】
熱間圧延、冷間圧延については特に限定しないが、以下の条件で行うことが好ましい。
熱間圧延する際の加熱温度は常法に従い1000〜1300℃、仕上温度は700〜950℃とする。巻取温度は550℃より低温ではコイル形状が悪く、750℃を超えると結晶粒、炭化物析出が不均一になり、冷延、焼鈍後の特性劣化を招くため、その範囲を550〜750℃とする。次いで酸洗後に冷間圧延を行うが、冷間圧延の圧下率は70%より低いと焼鈍後に粗大な不均一組織となりやすく、また94%以上の高圧下率では非履歴透磁率が劣化する傾向があるため、冷間圧延の圧下率の範囲は70〜94%とする。
【0053】
【実施例】
[実施例1]
表3に記載の成分組成を有する供試鋼2〜14を溶製し、連続鋳造により得られた鋼スラブを1200℃に加熱し、仕上温度890℃、巻取温度640℃で熱間圧延し、酸洗後冷間圧延により板厚を0.08〜0.5mmとした。
【0054】
次いで、フェライト単相域またはAc1変態点以下の種々の温度で再結晶焼鈍し、平均結晶粒径d(mm)と板厚t(mm)との比d/tが異なるNo.1〜27の供試材を得た。そして、No.5〜8および16〜23の供試材には調質圧延を施さず、その他の供試材には種々の圧延率で調質圧延を施した。
【0055】
以上のようにして得られたNo.1〜27の供試材について透磁率(μ0.35)、非履歴透磁率、残留磁束密度および保磁力(Hc)を評価した。これらの磁気特性評価は、供試材を内径33mm外径45mmのリング状に加工し、これに励磁用コイル、検出用コイルおよびバイアス磁界用コイルをそれぞれ100回巻いて、0.35Oeにおける透磁率(μ0.35)、非履歴透磁率、残留磁束密度および保磁力を評価した。なお、保磁力は10.0Oeのヒステリシスループより読みとった。また、非履歴透磁率の測定方法の詳細は以下の通りである。
【0056】
非履歴透磁率測定方法
1)励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を完全消磁する。
2)バイアス磁界用コイルに直流電界を流して0.35Oeの直流磁界を発生させた状態で、再度励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を消磁する。
3)バイアス磁界をかけたまま、最大磁化力40OeでB−Hループを測定する。
4)B−Hループの非対称性より非履歴透磁率を算出する。
【0057】
No.1〜27の供試材のそれぞれの鋼種、板厚、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/t、磁気特性評価の結果を併せて表4に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
表4に示すように、本発明例であるNo.3〜7,11,12,14,16,17,25および26の供試材においては、いずれも非履歴透磁率7500以上、残留磁束密度10kG以上、保磁力3Oe未満を得ることができた。すなわち、これまで地磁気レベルの透磁率が低く、磁気シールド性に劣るとされていた微細な結晶粒の領域で、交流消磁を利用した磁気シールド材として高い性能を有する鋼板が得られ、この鋼板を磁気シールドに適用することにより優れた地磁気シールド性が実現されることが確認された。
【0061】
一方、比較例であるNo.1,2,8〜10,13,15,18〜24および27の供試材においては、いずれかの特性が劣っていた。すなわち、d/tの値が0.10を超えたNo.1,2,9,10,13,24および27の供試材においては、非履歴透磁率が7500未満と低く磁気シールド性が劣っていた。また、調質圧延の圧延率が本発明の範囲外のNo.15の供試材においても、非履歴透磁率が7500未満と低く磁気シールド性が劣っていた。さらに、C量が本発明範囲を超えたNo.8、および、その他の成分が本発明の好ましい範囲を外れたNo.18〜23においては、保磁力が3Oe以上と高いために消磁十分となるおそれがあり、磁気シールド材として適当ではない。
【0062】
[実施例2]
表5に記載の成分組成を有する供試鋼15〜17を溶製し、連続鋳造により得られた鋼スラブを1200℃に加熱し、仕上温度890℃、巻取温度680℃で板厚2mmまで熱間圧延し、酸洗後冷間圧延により板厚を0.3mmとした。これら供試鋼における、フェライト単相温度域またはAc1変態点未満の温度域は、供試鋼15で650〜760℃、供試鋼16,17は650〜720℃である。
【0063】
次いで、種々の温度で再結晶焼鈍し、平均結晶粒径d(mm)と板厚t(mm)との比d/tが異なるNo.28〜38の供試材を得て、その後全ての供試材に圧延率0.5%の調質圧延を施した。
【0064】
以上のようにして得られたNo.28〜38の供試材について透磁率(μ0.35)、非履歴透磁率、残留磁束密度および保磁力(Hc)を評価した。これらの磁気特性評価は、実施例1と同様にして行った。No.28〜38の供試材のそれぞれの鋼種、板厚、焼鈍温度、平均粒径、d/tの値、磁気特性評価の結果を併せて表6に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示すように、本発明例であるNo.29,30,34,35,37,38の供試材においては、いずれも7500以上の高い非履歴透磁率を有し、地磁気シールド性に優れた鋼板を得ることができた。また、鋼にBを添加したNo.37,38の供試鋼においては、Bを添加しなかった本発明例と比べて同等のd/tの値でより高い非履歴透磁率を得ることができた。これに対して、比較例であるNo.28,31〜33,36の供試材においては、磁気特性が劣っていた。すなわち、No.28,33の供試材においては再結晶焼鈍温度が本発明範囲よりも低かったために未再結晶粒が残留し、また、No.31,32,36においては、再結晶焼鈍温度が本発明範囲よりも高くAc1変態点を超えたため、いずれも非履歴透磁率が7500未満であり、地磁気シールド性が劣っていた。
【0068】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば高い非履歴透磁率を有し、地磁気中消磁後の地磁気シールド性に優れたカラー陰極線管用磁気シールド鋼板を得ることができる。さらに、本発明のカラー陰極線管用磁気シールド鋼板をカラー陰極線管の磁気シールドとして用いることによって、消磁後、十分な磁気シールド性が確保され、さらに地磁気ドリフトによる色ずれが抑制され、高精細な画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平均粒径と非履歴透磁率との関係を示すグラフ。
【図2】平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tおよび非履歴透磁率の関係を示すグラフ。
Claims (3)
- 重量%で、C≦0.04%、Si≦0.2%、0.1%≦Mn≦2%、P≦0.15%、S≦0.02%、0.001%≦Sol.Al≦0.08%、N≦0.01%、Ti≦0.01%、Nb≦0.01%、V≦0.01%であり、残部Feおよび不可避的不純物からなり、板厚が0.05mm以上0.5mm以下、平均結晶粒径dと板厚tとの比d/tが0.10以下であって、非履歴透磁率が7500以上、保磁力が3Oe未満であることを特徴とするカラー陰極線管用磁気シールド鋼板。
- さらに、重量%で、B:0.0003%以上0.01%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管用磁気シールド鋼板。
- 請求項1または請求項2に記載の成分組成を有する鋼スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延を700℃〜950℃で仕上げ、巻取りを550〜750℃で行い、酸洗後、圧下率70〜94%の範囲で冷間圧延し、これをフェライト単相温度域またはAc1変態点未満の温度域で再結晶焼鈍し、次いで1.5%以下(0を含む)の圧延率で調質圧延することを特徴とするカラー陰極線管用磁気シールド鋼板の製造方法。
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