JP4043825B2 - 内燃機関のpcv装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクケース内のブローバイガスを吸気系に還流させる内燃機関のPCV装置(positive crankcase ventilation system)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のPCV装置として、例えば特開昭60−192821号公報に記載されたものが知られている。このPCV装置は、内燃機関のヘッドカバー内の空間を仕切壁で仕切ることにより形成された上流側気液分離室および下流側気液分離室と、仕切壁に取り付けられ、これらの2つの気液分離室を互いに連通させるとともに、ブローバイガスの流量を調整するためのPCVバルブなどを備えている。この上流側気液分離室は、蛇行するように形成されたガス流路を有しているとともに、シリンダブロックに形成されたブローバイガス通路を介して、クランクケース内のクランク室に連通している。また、下流側気液分離室は、上流側気液分離室よりも下流側に配置され、ホースを介して吸気管に連通している。さらに、クランク室は、新気導入用の連通管を介して吸気管に連通している。
【0003】
このPCV装置では、シリンダ側からの未燃ガス漏れに起因してクランク室内でブローバイガスが発生すると、このブローバイガスは、吸気管の負圧により、ブローバイガス通路を介して上流側気液分離室に吸引され、次いで、PCVバルブを通って下流側気液分離室に導入された後、吸気管に送られ、燃焼室内で再燃焼される。その際、ブローバイガスは、上流側気液分離室内を蛇行しながら流れることで、ガス中のオイル分が分離される。また、ブローバイガスは、PCVバルブ内で流速が高められた後に下流側気液分離室に導入されるので、この下流側気液分離室内でブローバイガスの流速が低下することで、燃料分や水分よりも比重の大きいオイルミストすなわちオイル分が、ブローバイガスから分離される。
【0004】
以上に加えて、上流側気液分離室および下流側気液分離室はいずれも、ヘッドカバー内に配置されていることで、エンジンの運転中、高温状態に保持される。そのため、ブローバイガスが2つの気液分離室内を通過する際、水分を含む燃料成分とオイル分との間の気化熱の差異により、水分を含む燃料成分の気化が促進される一方、オイル分はほとんど気化しない。すなわち、ブローバイガスにおけるオイル分の分離が促進される。そして、以上のようにオイル分が分離されたブローバイガスは、吸気管に送られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のPCV装置によれば、PCVバルブがヘッドカバーの内側の仕切壁に取り付けられているので、これをメンテナンスする際、ヘッドカバーをシリンダブロックのシリンダヘッドから取り外さなければならず、作業性が悪いという問題がある。また、上流側気液分離室の流路の蛇行形状や、下流側気液分離室でのブローバイガスの流速の低下、上流側気液分離室および下流側気液分離室の高温加熱により、ブローバイガスに含まれるオイル分の分離を促進するようにしているけれども、オイル分離能力に限界があるため、ブローバイガスが若干の残留オイル分を含んだ状態で吸気管に送り込まれることがあり、十分な燃焼が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、メンテナンス時の作業性を向上させることができるとともに、ブローバイガス中のオイル分の分離能力を向上させることができる内燃機関のPCV装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ヘッドカバー(前ヘッドカバー10)およびクランクケース3aを有する内燃機関2において、クランクケース3a内のブローバイガスを吸気系(インテークマニホールド6)に還流させる内燃機関2のPCV装置1であって、ブローバイガスをクランクケース3aから吸気系に還流させるための還流通路19と、仕切壁(仕切壁部13c)で互いに仕切られることによってヘッドカバー内に形成され、還流通路19の一部を構成し、ブローバイガスの流れる方向に沿って延びるとともに、ブローバイガスが通過する際にブローバイガス中のオイル分を分離させるための上流側気液分離室14aおよび下流側気液分離室14bと、ヘッドカバーに外部から着脱自在に取り付けられ、上流側気液分離室14aを横切り、仕切壁(仕切壁部13c)を貫通した状態で下流側気液分離室14bまで延びるPCVバルブ20と、を備え、PCVバルブ20は、上流側気液分離室14aに臨んで開口するガス入口24aと、下流側気液分離室14bに臨んで開口するガス出口24bと、ガス入口24aおよびガス出口24bに連通する連通路24と、を有していることを特徴とする。
【0008】
この内燃機関のPCV装置によれば、PCVバルブを外部からヘッドカバーに取り付けることにより、ヘッドカバー内の上流側気液分離室と下流側気液分離室との間が、PCVバルブのガス入口、連通路およびガス出口を介して、互いに連通する。それにより、内燃機関の運転中、クランクケース内のブローバイガスが、上流側気液分離室および下流側気液分離室を含む還流通路とPCVバルブを介して、吸気系に還流される。その還流動作中、ブローバイガス中のオイル分は、まず、上流側気液分離室内で分離され、次に、PCVバルブの連通路内で分離され、さらに、下流側気液分離室内で分離される。その際、以下に述べるように、ブローバイガスからのオイル分の分離作用が促進される。
【0009】
すなわち、PCVバルブは、上流側気液分離室を横切った状態でヘッドカバーに取り付けられているので、ブローバイガスの還流動作中、上流側気液分離室内を流れるブローバイガスに晒され、加熱される。その結果、前述したように、PCVバルブ内において、気化熱の差異によるオイル分の分離作用を促進することができる。同じ理由により、PCVバルブ内のオイル分の粘度が下がることによって、PCVバルブ内を通過するブローバイガスの流速を速めることができるので、ブローバイガス中のオイルミストが連通路の壁や弁体などに衝突するエネルギを増大でき、PCVバルブ内に付着するオイル量を増やすことができる。さらに、同じ理由により、下流側気液分離室内に溜まったオイルを、PCVバルブを介して上流側気液分離室へ流出させるオイル戻し性能、およびPCVバルブ内で液化したオイルを上流側気液分離室へ流出させるオイル戻し性能をいずれも向上させることができ、分離したオイルが連通路内に残留する量を低減できるので、ブローバイガスがPCVバルブ内を通過する際、残留オイルが抵抗になるのを回避でき、ブローバイガスの流速をより高めることができる。これに加えて、このように流速を高められたブローバイガスが、PCVバルブから下流側気液分離室内に流れ込んだ際、下流側気液分離室内で流速が低下することによって、オイル分の分離作用をさらに促進することができる。さらに、PCVバルブにより、ブローバイガスの流れの向きが、仕切壁を貫通する方向に変えられるので、その分、ブローバイガスの通路長さをより長く確保でき、オイル分の分離作用をより一層、促進することができる。
【0010】
これに加えて、PCVバルブによりブローバイガスの流れの向きが変えられることで、PCVバルブ内でのオイル分の分離作用をさらに促進することができる。これは、ブローバイガス中のオイルミストの比重は燃料分や水分よりも大きいため、オイルミストがPCVバルブ内の連通路の壁や弁体などに衝突するエネルギは、燃料分や水分よりも大きいので、ブローバイガスの流れの向きが変えられることで、ブローバイガス中のオイルミストが連通路の壁などに衝突する頻度が高くなると、オイルミストが連通路の壁などに付着しやすくなることによる。以上のように、ブローバイガスからのオイル分の分離能力を向上させることができ、それにより、排気ガス特性を向上させることができる。
【0011】
さらに、上述したように、PCVバルブ内でオイル分の粘度を低下させることができることで、分離したオイル分がPCVバルブの連通路内に残留する量を低減できるので、還流動作を一旦停止した後に再開した際において、PCVバルブ内に残留するオイルがミスト化し、ブローバイガスに混入するのを抑制できる。また、PCVバルブが、ヘッドカバーに外部から着脱自在に取り付けられているので、メンテナンスの際、ヘッドカバーを内燃機関から取り外すことなく、PCVバルブをヘッドカバーから容易に着脱することができ、作業性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関2のPCV装置1において、ヘッドカバー(前ヘッドカバー10)は、縦方向および横方向の長さが互いに異なる平面形状を有し、仕切壁(仕切壁部13c)は、ヘッドカバーの長さ方向に沿って延びており、上流側気液分離室14aの一端部には、クランクケース3aからのブローバイガスを上流側気液分離室14aに導入するための導入口(ガス導入孔18c)が設けられており、PCVバルブ20は、上流側気液分離室14aの他端部を横切るように配置されていることを特徴とする。
【0013】
この内燃機関のPCV装置によれば、仕切壁がヘッドカバーの長さ方向に沿って延びているので、上流側気液分離室もヘッドカバーの長さ方向に沿って延びている。この上流側気液分離室の一端部には、クランクケースからのブローバイガスを導入するための導入口が設けられており、PCVバルブは上流側気液分離室の他端部を横切るように配置されているので、ブローバイガスの還流動作中、導入口から上流側気液分離室に流れ込んだブローバイガスは、上流側気液分離室の一端部から他端部に向かってヘッドカバーの長さ方向に沿って流れ、PCVバルブを介して下流側気液分離室に流れ込む。したがって、上流側気液分離室における、オイル分をブローバイガスから分離させるための通路長さおよび容積を、ヘッドカバーに対して効率よく確保することができ、その分、オイル分の分離能力を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関2のPCV装置1において、PCVバルブ20のガス入口24aは、上流側気液分離室14aの下流側に向かって開口していることを特徴とする。
【0015】
この内燃機関のPCV装置によれば、PCVバルブのガス入口は、上流側気液分離室の下流側に向かって開口しているので、ブローバイガスの還流動作中、上流側気液分離室内に流れ込んだブローバイガスは、PCVバルブ側に向かって流れ、その外周に沿って下流側まで回り込んだ後、ガス入口から連通路に流れ込む。その際、ブローバイガス中の燃料分や水分と比べて比重の大きいオイルミストは、燃料分や水分よりも連通路内に流れ込みにくいので、ブローバイガスからのオイル分の分離作用を促進できる。これに加えて、上記のように、ブローバイガスがPCVバルブの外周に沿って下流側まで回り込むので、上流側気液分離室における、オイル分をブローバイガスから分離させるための通路長さを、ヘッドカバーに対してさらに効率よく確保することができる。以上により、ブローバイガスからのオイル分の分離能力をさらに向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関2のPCV装置1において、下流側気液分離室14bには、PCVバルブ20のガス出口24bに対向し、ガス出口24bから排出されたブローバイガスが当たる気液分離用の壁(迂回壁部13r)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この内燃機関のPCV装置によれば、ブローバイガスの還流動作中、PCVバルブの連通路内を流れたブローバイガスは、ガス出口から下流側気液分離室内に流れ込む際、気液分離用の壁に当たるので、ブローバイガスからのオイル分の分離作用が促進される。これにより、ブローバイガス中のオイル分の分離能力をより一層、向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の内燃機関2のPCV装置1において、PCVバルブ20は、連通路24に連通し、下流側気液分離室14bに臨んで開口するとともに、下流側気液分離室14b内でブローバイガスから分離されたオイルを上流側気液分離室14a側に戻すためのオイル戻し口(オイル戻し孔24c)をさらに有しており、下流側気液分離室14bには、PCVバルブ20のオイル戻し口に対向し、オイル戻し口から排出されたブローバイガスが当たる第2の気液分離用の壁(天壁12、側壁部13m、底板18)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この内燃機関のPCV装置によれば、ブローバイガスの還流動作中、PCVバルブの連通路内を流れたブローバイガスは、オイル戻し口から下流側気液分離室内に流れ込む。その際、ブローバイガスが第2の気液分離用の壁に当たることで、ブローバイガスからのオイル分の分離作用が促進される。また、内燃機関の停止に伴ってブローバイガスの還流動作が停止されると、下流側気液分離室内で分離されたオイルは、オイル戻し口および連通路を介して上流側気液分離室に戻される。その際、前述したように、気液分離されたオイルの粘度を低下させることができることで、連通路内に残留するオイルの量を低減できる。これに加えて、仮に、オイルが連通路内に残留していたとしても、内燃機関を再始動し、ブローバイガスの還流動作を再開すると、連通路内に残留するオイルは、ブローバイガスとともに上流側気液分離室内に流れ込み、上述したように、第2の気液分離用の壁に当たることで、ブローバイガスから分離される。以上のように、連通路内に残留していたオイル分に起因して、吸気系に還流されるブローバイガス中の残留オイル分が増大するのを抑制できる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関2のPCV装置1において、PCVバルブ20は、連通路24に設けられ、所定の閉鎖位置を基準として移動することにより連通路を開放する弁体25と、弁体25を閉鎖位置側に付勢する弾性部材(コイルばね26)と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この内燃機関のPCV装置によれば、ブローバイガスの還流動作の停止中、PCVバルブの弁体は、弾性部材の付勢力により閉鎖位置に保持される。一方、ブローバイガスの還流動作が開始されると、ブローバイガスの圧力により、弁体は、弾性部材の付勢力に抗しながら閉鎖位置を基準として移動し、連通路を開放する。その際、連通路内を流れるブローバイガスとの衝突により、弁体および弾性部材が振動するとともに、それに伴ってブローバイガスの流れが乱れることで、ブローバイガス中のオイルミストが、弁体、弾性部材および連通路の壁に接触する度合を増大させることができ、それにより、ブローバイガスからのオイル分の分離能力をさらに向上させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関のPCV装置について説明する。図1は、本実施形態に係るPCV装置およびこれを適用した内燃機関の概略構成を示している。なお、同図では、理解の容易化のために断面部分のハッチングは省略されている(後述する図2も同様)。また、以下の説明においては、同図の左側および右側を前側および後ろ側、図面の奥側および手前側を左側および右側という。このPCV装置1は、内燃機関(以下「エンジン」という)2の運転中、クランクケース3a内で発生したブローバイガスを、後述する還流通路19を介して、吸気管4に還流する還流動作を行うものである。
【0023】
このエンジン2は、前後のバンク2a,2bを有するV型ガソリンエンジンであり、前後のバンク2a,2bはそれぞれ、鉛直方向に対して前後に所定角度(例えば30゜)分、傾いているとともに、3つの気筒(一部のみ図示)を有している。エンジン2のシリンダブロック3のクランクケース3aとオイルパン3cとの間には、クランク室3bが形成されており、このクランク室3bには、図示しないクランクシャフトなどが収容されている。
【0024】
エンジン2の吸気管4には、スロットルバルブ5が設けられており、この吸気管4のスロットルバルブ5よりも下流側の端部は、インテークマニホールド6(吸気系)に接続されている。このインテークマニホールド6は、吸気管4との接続部分よりも下流側で2つに分岐した分岐部6a,6bを備えている。この分岐部6aは、さらに3つに分岐し、前バンク2aの3つの気筒に接続されており、これと同様に、分岐部6bも、さらに3つに分岐し、後ろバンク2bの3つの気筒に接続されている。
【0025】
一方、PCV装置1は、新気導入管7、ガス排出管8およびPCVバルブ20などを備えている。この新気導入管7は、吸気管4からの新気をクランク室3b内に導入するためのものであり、一端部が吸気管4のスロットルバルブ5よりも上流側の部位に、他端部が後ろバンク2bの後ろヘッドカバー9にそれぞれ接続されている。この後ろヘッドカバー9の内部には、新気導入路9aが形成されており、この新気導入路9aは、後ろバンク2b内の動弁室2dおよび図示しないオイル戻し通路を介して、クランク室3bに連通している。
【0026】
また、ガス排出管8は、クランク室3b内のブローバイガスをインテークマニホールド6に排出するためのものであり、一端部が前バンク2aの前ヘッドカバー10(ヘッドカバー)に接続されている。また、ガス排出管8の他端部は、2つに分岐した分岐部8a,8bになっており、これらの分岐部8a,8bの先端部が、インテークマニホールド6の分岐部6a,6bにそれぞれ接続されている。
【0027】
図2に示すように、前ヘッドカバー10は、図示しないボルトを介して、シリンダブロック3のシリンダヘッド3dに上方から取り付けられ、シリンダヘッド3cとの間に、動弁機構30を収容する動弁室2cを形成している。この前ヘッドカバー10は、動弁機構30を覆うカバー本体11と、このカバー本体11に下方から取り付けられた底板18などを備えている。
【0028】
図3、図4および図6に示すように、カバー本体11は、例えば金型により鋳造されたアルミニウム合金製のものであり、角部を丸めた横長矩形の平面形状を有している。なお、このカバー本体11は、金属製のものに限らず、樹脂成形された合成樹脂製のもので構成してもよい。このカバー本体11は、天壁12および環状壁13などを備えており、この環状壁13は、平面的に閉じられているとともに、天壁12から底板18まで突出している。この環状壁13は、前後の壁部13a,13bおよび仕切壁部13cを一体に有しており、前後の壁部13a,13bは、互いに間隔を存してほぼ平行にカバー本体11の長さ方向に延び、その両端がカバー本体11の左右端部に近い位置で互いに連続している。また、仕切壁部13cは、壁部13a,13bの双方に対して間隔を存して平行に延び、その両端が壁部13a,13bに連続している。
【0029】
一方、底板18は、若干の凹凸を有する薄板で構成され、図4に2点鎖線で示すように、環状壁13とほぼ同様で、これよりも外周が若干、大きい平面形状を有している。図5に示すように、この底板18は、環状壁13に対応するように形成された環状の平面部18aを有しており、この平面部18aで環状壁13の下端面に接した状態で、図示しない複数のボルトを介してカバー本体11に取り付けられている。これにより、底板18は、環状壁13および天壁12との間に、カバー本体11の長さ方向に延びる気液分離室14(図6に網目模様で示す空間)を形成しており、この気液分離室14は、仕切壁部13cにより、上流側気液分離室14a(図6に細かい網目模様で示す空間)と、下流側気液分離室14b(図6に粗い網目模様で示す空間)とに前後に仕切られている。
【0030】
また、環状壁13の後ろ壁部13bおよび仕切壁部13cの下端面には、環状溝13dが形成されており、この環状溝13dには、環状のガスケット15が嵌め込まれている(図7参照)。このガスケット15は、例えば断面円形で、弾性変形可能な材質(例えば合成ゴム)で構成されており、このガスケット15により、下流側気液分離室14bの内部がシールされている。さらに、底板18は、環状壁13の前壁部13aの下端面との間に、図示しない液体パッキンが介在する状態でカバー本体11に取り付けられており、この液体パッキンにより、上流側気液分離室14aの内部がシールされている。
【0031】
上記のように、下流側気液分離室14bの内部をシールするためにガスケット15を用いる理由は、以下による。すなわち、下流側気液分離室14bは、上流側気液分離室14aよりもインテークマニホールド6に近い位置に配置されているため、内部の負圧がインテークマニホールド6内の負圧に近くなり、上流側気液分離室14aよりも大きくなる。したがって、下流側気液分離室14bの良好なシール性を確保するには、シール性の高いガスケット15が好ましい。
【0032】
さらに、環状壁13の前壁部13aは、中央部および右端部付近が前方に突出しており、これらの突出部分は、前バンク2aが前傾していることで、気液分離されたオイルが溜まるオイル溜まり13e,13eになっている。また、環状壁13の前壁部13aの左端部は、前方に斜めに折れ曲がり、PCVバルブ20を取り付けるための取付壁部13fになっており、この取付壁部13fも、前バンク2aが前傾していることで、気液分離されたオイルが溜まるようになっている。さらに、仕切壁部13cの左端部も前方に斜めに折れ曲がっており、これにより、上流側気液分離室14aは、その左端部が前方に斜めに折れ曲がった平面形状を有している。
【0033】
また、前壁部13aの中央部のオイル溜まり13eと取付壁部13fとの間には、オイル止め用のリブ13gが設けられている。このリブ13gは、オイル溜まり13eなどに溜まったオイルが、PCVバルブ20側に流れ込むのを阻止するためのものであり、前壁部13aから上流側気液分離室14内に突出し、天壁12と底板18との間に延びている。
【0034】
一方、底板18には、3つのオイル戻し孔18b,18b,18bが、オイル溜まり13e,13eおよび取付壁部13fに対応する位置に形成されており、上流側気液分離室14a内でブローバイガスから分離され、溜まったオイルは、これらのオイル戻し孔18bを介して、動弁室2c側に戻される。また、底板18には、上流側気液分離室14aの右端部に臨む位置に、多数のガス導入孔18c(導入口)が形成されており、ブローバイガスの還流動作中、このガス導入孔18cを介して、ブローバイガスが動弁室2cから上流側気液分離室14a内に導入される。
【0035】
また、図7および図8に示すように、取付壁部13fおよび仕切壁部13cの左端部にはそれぞれ、PCVバルブ20を取り付けるための取付孔13h,13jが形成されており、これらの取付孔13h,13jは、断面円形で、取付孔13hの方が取付孔13jよりも若干大径になっている。PCVバルブ20は、これらの取付孔13h,13jに差し込まれることで、上流側気液分離室14aを横切りかつ仕切壁部13cを貫通した状態で、前ヘッドカバー10に取り付けられている。
【0036】
このPCVバルブ20は、上流側気液分離室14aと下流側気液分離室14bとの間を連通させ、その内部を流れるブローバイガス中のオイル分の分離を行うとともに、ブローバイガスの還流動作の停止後、下流側気液分離室14b内に溜まったオイルを、上流側気液分離室14aに戻すためのものである。PCVバルブ20は、図9〜図11に示すように、連通路24が内部に形成されたケーシング21と、このケーシング21の連通路24内に設けられた弁体25およびコイルばね26(弾性部材)などで構成されている。
【0037】
このケーシング21は、断面円形の差し込み部22と、横長板状の取付部23とを一体に有している。この差し込み部22は、互いに一体に形成された断面円形の大径部22a、中間径部22bおよび小径部22cを有しており、大径部22aは、取付部23に連続して軸線方向に延び、その途中の部位には、環状溝22dが形成されている。この環状溝22dは、大径部22aの外周方向に延び、これを一周するように形成されており、この環状溝22dには、Oリング27が嵌合している。
【0038】
また、中間径部22bは、大径部22aに連続して軸線方向に延び、若干先細りのテーパ形状を有し、その小径部22c側の端部には、環状溝22eが形成されている。この環状溝22eは、中間径部22bの外周方向に延び、これを一周するように形成されており、この環状溝22eには、Oリング28が嵌合している。
【0039】
また、取付部23は、差し込み部22の軸線方向に対して直交するように延び、その先端部には孔23aが形成されている。さらに、カバー本体11の取付壁部13fには、孔23aに対応する位置に雌ねじ穴13kが形成されている(図8(b)参照)。
【0040】
PCVバルブ20は、その差し込み部22が前記取付孔13h,13jに差し込まれた後、ボルト31が孔23aに差し込まれ、雌ねじ穴13kにねじ込まれ、さらに締めつけられることで、前ヘッドカバー10に取り付けられている。この取付状態では、Oリング27,28はそれぞれ、弾性変形しながら取付孔13h,13jの壁面に押し付けられており、それにより、上流側気液分離室14aおよび下流側気液分離室14bの内部はいずれも、シールされている。
【0041】
また、連通路24は、断面円形でケーシング21内を中間径部22bの中央部と小径部22cの先端部との間で軸線方向に沿って延びているとともに、一端部が中間径部22bの中央部から半径方向の左向き(すなわち上流側気液分離室14aの下流側への向き)に延び、その先端が上流側気液分離室14aの左端部すなわち下流側端部に臨んで開口している(図13参照)。この開口が、ブローバイガスを連通路24内に流入させるためのガス入口24aになっている。また、連通路24の他端部は、小径部22cの先端から下流側気液分離室14bに臨んで開口しており、この開口がブローバイガスを下流側気液分離室14に排出するためのガス出口24bになっている。
【0042】
さらに、小径部22cの中間径部22b寄りの部位には、4つのオイル戻し孔24c(オイル戻し口)が形成されている。これらのオイル戻し孔24cは、下流側気液分離室14bに溜まったオイルを上流側気液分離室14aに戻すためのものであり、連通路24から上下左右方向に十字状に延び、それらの先端が下流側気液分離室14bに臨んで開口している。
【0043】
また、連通路24の中央部は、両端部よりも大径の弁室24dになっており、この弁室24d内に、弁体25およびコイルばね26が設けられている。弁室24dの両端部には、段部がそれぞれ形成されており、大径部22a側の段部は、テーパ状の弁座24eになっている。弁体25は、フランジ状のヘッド25aと、これに一体に形成され、小径部22c側に向かって先細の円柱部25bとを備えている。
【0044】
コイルばね26は、その一端部がヘッド25aに当接し、他端部が弁室24dの小径部22c側の段部に当接しているとともに、図11(b)に示す最短の長さまで弾性変形可能に構成されている。これにより、弁体25は、図11(a)に示す閉鎖位置と、図11(b)に示す開放位置との間で移動可能であり、常時は、コイルばね26の付勢力により、閉鎖位置に保持される。この状態では、弁体25は、そのヘッド25aと弁座24eとの間に若干の隙間を存した状態で、弁座24eに当接している。また、ブローバイガスの還流動作中、弁体25が閉鎖位置と開放位置との間で移動する際、その移動位置が開放位置側に近いほど、円柱部25bと連通路24との隙間がより狭くなり、通路断面積が減少することで、連通路24内を流れるブローバイガスの流速がより高められる。
【0045】
一方、図12および図13に示すように、カバー本体11のPCVバルブ20の小径部22cに近接する部位には、2つの側壁部13m,13mと、これらの側壁部13m,13mの間に左右方向に延びる滞留壁部13nが形成されている。これらの側壁部13m,13mは、天壁12および仕切壁部13cに連続し、天壁12から底板18側に向かって、互いの間の間隔が漸減するように設けられている。これらの天壁12、底板18および側壁部13m,13mはそれぞれ、PCVバルブ20の小径部22cを上下方向および左右方向から取り囲むとともに、前述した4つのオイル戻し孔24cに対向するように配置されている。これにより、ブローバイガスの還流動作中、各オイル戻し孔24cから排出されたブローバイガスは、側壁部13m,13m、底板18および天壁12のうちの対応する1つに衝突する。これらの側壁部13m,13m、底板18および天壁12は、第2の気液分離用の壁に相当する。
【0046】
さらに、滞留壁部13nは、図12(a)および図7に示すように、天壁12、仕切壁部13cおよび2つの側壁部13m,13mとの間に、ほぼ四角柱状の滞留室14cを形成している。この滞留室14cは、下流側気液分離室14bの一部を構成しているとともに、側壁部13m,13mおよび天壁12にそれぞれ衝突したブローバイガスの一部を一時的に滞留させることで、オイル分の分離作用を促進するためのものである。これに加えて、前回の還流動作の際に分離されたオイルが、小径部22cの周囲に溜まっている場合には、次のブローバイガスの還流動作の開始時に、そのオイルがブローバイガスとともに吹き上げられ、ミスト化することがある。そのような場合でも、ブローバイガスが滞留室14cに一時的に滞留することで、オイル分の分離作用が促進される。また、滞留壁部13nは、その下端部と底板18との間に開口13pを形成しており、この開口13pを介して、PCVバルブ20のガス出口24bから排出されたブローバイガスは、後述する迂回壁部13r側に流れる。
【0047】
また、図4に示すように、下流側気液分離室14b内には、迂回壁部13rが設けられている。この迂回壁部13r(気液分離用の壁)は、PCVバルブ20のガス出口24bに対向するように配置され、仕切壁部13cとの間に所定の間隔を存し、環状壁13の左端部から右方に延びている。この迂回壁部13rにより、下流側気液分離室14b内の空間は、平面的にU字状に仕切られている。
【0048】
さらに、迂回壁部13rのガス出口24bに対向する部位の付近には、気液分離用のリブ13sが設けられている。このリブ13sは、迂回壁部13rから仕切壁部13c側に突出した状態で、天壁12と底板18との間に延びている。これにより、還流動作中、ガス出口24bから排出されたブローバイガスは、迂回壁部13rに衝突した後、さらにリブ13sに衝突する。その際、迂回壁部13rに衝突することで液化したオイルが、PCVバルブ20から流出した流速の遅いブローバイガス流の圧力によって、迂回壁部13rの壁面に沿って下流側に流れてゆくのを、リブ13sにより阻止することができる。
【0049】
また、下流側気液分離室14b内には、迂回壁部13rに近接して、2つの型抜き用のボス13t,13tが設けられている。これらのボス13t,13tは、前ヘッドカバー10を製作する際、これを金型から抜くときに用いるものであり、底板18との間に所定の間隙を存している。この間隙により、ブローバイガスが下流側気液分離室14b内を流れる際、これらのボス13t,13tが流路抵抗になる度合が低減される。
【0050】
さらに、天壁12には、断面L字状の接続管17が取り付けられている。この接続管17は、下流側気液分離室14bをガス排出管8に連通させるものであり、下流側気液分離室14bの左端部において、迂回壁部13rを間にしてPCVバルブ20と反対側の位置に配置されている。この接続管17の一端部は、ガス排出管8に接続され、他端部は、下流側気液分離室14bに臨んで下向きに開口している。以上の上流側気液分離室14a、連通路24、下流側気液分離室14b、接続管17およびガス排出管8などによって、クランク室3bのブローバイガスをインテークマニホールド6に還流させるための還流通路19が構成されている。
【0051】
以上のように構成されたPCV装置1では、メンテナンスの際、ボルト31を取り外し、PCVバルブ20を前側に引っ張るだけで、これを前ヘッドカバー10から取り外すことができる。これとは逆に、PCVバルブ20を取付孔13h,13jに差し込み、PCVバルブ20の孔23aと前ヘッドカバー10の雌ねじ穴13kとを位置合わせした後、ボルト31を雌ねじ穴13kにねじ込み、締めつけるだけで、PCVバルブ20を前ヘッドカバー10に取り付けることができる。このように、前ヘッドカバー10をエンジン2から取り外すことなく、PCVバルブ20の着脱作業を外部から容易に行うことができ、メンテナンス時の作業性を向上させることができる
【0052】
次に、PCV装置1のブローバイガスの還流動作について、図12(c)、図14および図15を参照しながら説明する。このPCV装置1では、新気導入管7が吸気管4のスロットルバルブ5よりも上流側の部位に接続され、ガス排出管8がスロットルバルブ5よりも下流側のインテークマニホールド6に接続されているので、ガス排出管8内の負圧がインテークマニホールド6内の負圧に近くなることで、新気導入管7内の負圧よりも大きくなる。そのため、エンジン2の運転中、インテークマニホールド6内の負圧により、新気が新気導入管7、後ろヘッドカバー9の新気導入路9aなどを介して、クランク室3b内に吸引される。
【0053】
その際、クランク室3b内に吸引された新気は、シリンダとピストンの隙間からクランク室3b内に流れ込んだ未燃ガスと混じることで、ブローバイガスとなり、オイル戻し通路およびオイル導入孔18cを介して、上流側気液分離室14a内に流れ込む。そして、ブローバイガスは、上流側気液分離室14aの右端部(すなわち上流側端部)から左端部(すなわち下流側端部)に流れ、PCVバルブ20の外周に沿って下流側に流れた後、ガス入口24aからPCVバルブ20の連通路24内に流れ込み、その流れの方向を後ろ向きに変える。
【0054】
次いで、連通路24内に流れ込んだブローバイガスは、弁体25を下流側気液分離室14b側に押圧し、コイルばね26を弾性変形させることにより、これらを振動させながら下流側に流れ、ガス出口24bおよび4つのオイル戻し孔24cから排出される。ガス出口24bから排出されたブローバイガスは、開口13pを通って迂回壁部13rに衝突し、さらに気液分離用のリブ13sに衝突した後、下流側気液分離室14b内を右向きに流れる。
【0055】
また、4つのオイル戻し孔24cから排出されたブローバイガスは、側壁部13m,13m、天壁12および底板18にそれぞれ衝突し、その一部が滞留室14c内に一時的に滞留された後、迂回壁部13r側に流れるとともに、残りはそのまま迂回壁部13r側に流れる。そして、これらのブローバイガスも、上記と同様に、迂回壁部13rに衝突し、さらに気液分離用のリブ13sに衝突した後、下流側気液分離室14b内を右向きに流れる。
【0056】
そして、下流側気液分離室14b内を右向きに流れるブローバイガスは、環状壁13に沿って左向きにUターンし、下流側気液分離室14bの下流側端部に位置する接続管17に流れ込む。その後、ガス排出管8を介してインテークマニホールド6に排出される。
【0057】
以上の還流動作によりブローバイガスから分離されたオイルは、前バンク2aが前傾していることで、下流側気液分離室14bでは、仕切壁部13cを含むその近傍に溜まり、特に仕切壁部13cの左端部が前側に斜めに折れ曲がっていることで、PCVバルブ20の小径部22cの近傍に溜まる。また、上流側気液分離室14aでは、オイルは、前述した前壁部13aのオイル溜まり13e,13eおよび取付壁部13fに溜まった後、3つのオイル戻し孔18bを介して、動弁室2c側に戻されるとともに、リブ13gにより、オイル溜まり13e,13eなどに溜まったオイルは、PCVバルブ20側に流れ込むのを阻止される。
【0058】
その後、エンジン2の停止に伴って還流動作が停止されると、PCVバルブ20の小径部22cの近傍に溜まったオイルは、オイル戻し孔24cまたはガス出口24bを介して連通路24内に流れ込む。その際、コイルばね26の付勢力により、弁体25が閉鎖位置に保持されていたとしても、弁体25と弁座24eとの間には、隙間が存在するので、連通路24内に流れ込んだオイルは、この隙間を通ってガス入口24a側に流れ、ガス入口24aから上流側気液分離室14aに排出される。その後、取付壁部13fの近傍のオイル戻し孔18bを介して、動弁室2c側に戻される。
【0059】
以上のようなPCV装置1によれば、ブローバイガスに含まれるオイルミストすなわちオイル分は、燃料分や水分と比べて比重が大きく、流れにくいので、還流動作中、上流側気液分離室14a、連通路24および下流側気液分離室14b内などを流れる際に、底板18、環状壁13および連通路24の壁などに付着し、それにより、オイル分がブローバイガスから分離される。この場合、上流側気液分離室14aが前ヘッドカバー10の長さ方向に沿って延び、ガス導入孔18cおよびPCVバルブ20が上流側気液分離室14aの左右の両端部にそれぞれ設けられているので、上流側気液分離室14aにおける、オイル分をブローバイガスから分離させるための通路長さを、前ヘッドカバー10に対して効率よく確保することができ、その分、オイル分の分離作用を促進することができる。
【0060】
さらに、PCVバルブ20のガス入口24aが上流側気液分離室14aの下流側に向かって開口していること、およびPCVバルブ20が上流側気液分離室14aを横切るように配置されていることにより、ブローバイガスは、PCVバルブ20の外周に沿って下流側まで回り込んだ後、ガス入口24aから連通路24に流れ込み、さらに迂回壁部13c側に向かって流れの向きを変える。その結果、オイル分をブローバイガスから分離させるための通路長さおよび容積を、さらに効率よく確保することができ、その分、オイル分の分離能力をさらに向上させることができる。また、ブローバイガスがPCVバルブ20の外周に沿って下流側まで回り込みながらガス入口24aに流れ込む際、ブローバイガス中のオイルミストは、その比重が大きいことにより、PCVバルブ20の外周に沿って回り込みにくく、ガス入口24aに流れ込みにくい。すなわち、オイル分の分離作用をさらに促進することができる。
【0061】
さらに、上述したPCVバルブ20の配置により、PCVバルブ20が上流側気液分離室14a内を流れるブローバイガスに晒され、加熱されるので、PCVバルブ20内において、燃料分および水分との気化熱の差異によるオイル分の分離作用を促進することができる。同じ理由により、ブローバイガスがPCVバルブ20の連通路24内を流れる際、ブローバイガスから分離されて液化したオイルの粘度を下げることができるので、オイル戻し性能を向上させることができる。さらに、PCVバルブ20内で液化したオイルが、ブローバイガス流の抵抗にならなくなるので、ブローバイガスの流速を高めることができる。
【0062】
このように、PCVバルブ20の内部において、ブローバイガスの流速が高められること、およびブローバイガスの流れる向きが変えられることにより、ブローバイガス中のオイルミストが連通路24の壁に衝突する頻度が高くなり、その分、オイル分の分離作用をより一層、促進することができる。これに加えて、連通路24内を流れるブローバイガスの圧力により、弁体25およびコイルばね26が振動するとともに、それに伴ってブローバイガスの流れが乱れることで、ブローバイガス中のオイルミストが、弁体25、コイルばね26および連通路24の壁に接触する度合を増大させることができ、それにより、ブローバイガスからのオイル分の分離作用をさらに促進することができる。さらに、PCVバルブ20内でオイル分の粘度を低下させることができることで、分離したオイル分がPCVバルブ20内に残留する量を低減することができ、それにより、還流動作を一旦、停止後に再開した際、PCVバルブ20内に残留するオイルがミスト化し、ブローバイガスに混入するのを抑制できる。
【0063】
また、還流動作中、PCVバルブ20のガス出口24bから排出されたブローバイガスが、迂回壁部13rに衝突し、さらに気液分離用のリブ13sに衝突することにより、オイル分の分離作用をより一層、促進することができる。さらに、4つのオイル戻し孔24cから排出されたブローバイガスが、側壁部13m,13m、天壁12および底板18にそれぞれ衝突することで、オイル分の分離作用を促進することができるとともに、その一部が滞留室14c内に一時的に滞留されることにより、オイル分の分離作用をさらに促進することができる。これに加えて、上述したように、ブローバイガスの流速が高くなることで、ブローバイガスが、迂回壁部13r、リブ13s、側壁部13m,13m、天壁12および底板18に衝突するエネルギをより高めることができ、その分、オイル分の分離作用を促進することができる。
【0064】
さらに、下流側気液分離室14bが平面的にU字状に延びているので、通路長さを効率よく確保できるとともに、PCVバルブ20で高められたブローバイガスの流速を効率よく低下させることができることで、オイル分の分離作用をより一層、促進することができる。以上のように、本実施形態のPCV装置1によれば、ブローバイガスからのオイル分の分離能力を向上させることができる。なお、ここでは実験データは示さないが、実験により、本実施形態のPCV装置1を用いることで、従来のPCV装置と比べて、ブローバイガスのオイル分離能力が格段に向上することを確認できた。
【0065】
なお、実施形態は、上流側気液分離室14aが前ヘッドカバー10の長さ方向に沿って延び、下流側気液分離室14bが前ヘッドカバー10の長さ方向に沿って延びかつUターンしている例であるが、これら2つの気液分離室14a,14bのレイアウトおよび形状はこれに限らず、ブローバイガスの還流通路19の一部を構成するとともに、内部を流れるブローバイガス中のオイル分を適切に分離できるものであればよい。例えば、2つの気液分離室14a,14bが前ヘッドカバー10の幅方向に沿って延びている構成でもよい。
【0066】
また、実施形態は、1つのガス入口24aを上流側気液分離室14aの下流側に向かって開口するようにPCVバルブ20に形成した例であるが、PCVバルブ20におけるガス入口24aの数およびレイアウトはこれに限らず、ブローバイガスをPCVバルブ20内に適切に流入させることができるものであればよい。
【0067】
また、実施形態は、4つのオイル戻し孔24cが十字状に延びるようにPCVバルブ20に形成された例であるが、PCVバルブ20におけるオイル戻し孔24cの数およびレイアウトはこれに限らず、下流側気液分離室14bから上流側気液分離室14aにオイルを戻すことができるものであればよい。
【0068】
さらに、実施形態は、PCVバルブ20の弁体25を閉鎖位置側に付勢するための弾性部材として、コイルばね26を用いた例であるが、弾性部材はこれに限らず、弁体25を閉鎖位置側に付勢可能なものであればよい。
【0069】
【発明の効果】
以上のように、本発明の内燃機関のPCV装置によれば、メンテナンス時の作業性を向上させることができるとともに、ブローバイガス中のオイル分の分離能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るPCV装置およびこれを適用した内燃機関の概略構成を示す一部を破断した模式図である。
【図2】内燃機関の前バンクの上部構成を示す断面図である。
【図3】前ヘッドカバーの左半部を示す平面図である。
【図4】前ヘッドカバーの底板を取り外した状態を示す底面図である。
【図5】底板を示す平面図である。
【図6】前ヘッドカバーの上流側気液分離室および下流側気液分離室を示す底面図である。
【図7】(a)図3のA−A矢視断面図と(b)PCVバルブを取り外した状態を示す断面図である。
【図8】(a)PCVバルブをヘッドカバーに取り付けた状態と(b)取り外した状態を示す正面図である。
【図9】PCVバルブをガス出口側から見た背面図である。
【図10】図9のB−B矢視断面図である。
【図11】PCVバルブの弁体が(a)閉鎖位置にある状態と(b)開放位置にある状態を示す断面図である。
【図12】(a)図7のC−C矢視断面図と(b)D−D矢視断面図と(c)PCVバルブの小径部近傍における還流動作中のブローバイガスの流れを示す図である。
【図13】前ヘッドカバーのPCVバルブ付近の構成を示す底面図である。
【図14】上流側気液分離室および下流側気液分離室における還流動作中のブローバイガスの流れを示す図である。
【図15】PCVバルブ近傍における還流動作中のブローバイガスの流れを示す図である。
【符号の説明】
1 PCV装置
2 内燃機関
3a クランクケース
6 インテークマニホールド(吸気系)
10 前ヘッドカバー(ヘッドカバー)
12 天壁(第2の気液分離用の壁)
13c 仕切壁部(仕切壁)
13m 側壁部(第2の気液分離用の壁)
13r 迂回壁部(気液分離用の壁)
14a 上流側気液分離室
14b 下流側気液分離室
18 底板(第2の気液分離用の壁)
18c ガス導入孔(導入口)
19 還流通路
20 PCVバルブ
24 連通路
24a ガス入口
24b ガス出口
24c オイル戻し孔(オイル戻し口)
25 弁体
26 コイルばね(弾性部材)

Claims (6)

  1. ヘッドカバーおよびクランクケースを有する内燃機関において、当該クランクケース内のブローバイガスを吸気系に還流させる内燃機関のPCV装置であって、
    ブローバイガスを前記クランクケースから前記吸気系に還流させるための還流通路と、
    仕切壁で互いに仕切られることによって前記ヘッドカバー内に形成され、前記還流通路の一部を構成し、ブローバイガスの流れる方向に沿って延びるとともに、ブローバイガスが通過する際にブローバイガス中のオイル分を分離させるための上流側気液分離室および下流側気液分離室と、
    前記ヘッドカバーに外部から着脱自在に取り付けられ、前記上流側気液分離室を横切り、前記仕切壁を貫通した状態で前記下流側気液分離室まで延びるPCVバルブと、を備え、
    当該PCVバルブは、
    前記上流側気液分離室に臨んで開口するガス入口と、
    前記下流側気液分離室に臨んで開口するガス出口と、
    前記ガス入口および当該ガス出口に連通する連通路と、
    を有していることを特徴とする内燃機関のPCV装置。
  2. 前記ヘッドカバーは、縦方向および横方向の長さが互いに異なる平面形状を有し、
    前記仕切壁は、前記ヘッドカバーの長さ方向に沿って延びており、
    前記上流側気液分離室の一端部には、前記クランクケースからのブローバイガスを前記上流側気液分離室に導入するための導入口が設けられており、
    前記PCVバルブは、前記上流側気液分離室の他端部を横切るように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のPCV装置。
  3. 前記PCVバルブの前記ガス入口は、前記上流側気液分離室の下流側に向かって開口していることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のPCV装置。
  4. 前記下流側気液分離室には、前記PCVバルブの前記ガス出口に対向し、当該ガス出口から排出されたブローバイガスが当たる気液分離用の壁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関のPCV装置。
  5. 前記PCVバルブは、
    前記連通路に連通し、前記下流側気液分離室に臨んで開口するとともに、前記下流側気液分離室内でブローバイガスから分離されたオイルを前記上流側気液分離室側に戻すためのオイル戻し口をさらに有しており、
    前記下流側気液分離室には、前記PCVバルブの前記オイル戻し口に対向し、当該オイル戻し口から排出されたブローバイガスが当たる第2の気液分離用の壁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の内燃機関のPCV装置。
  6. 前記PCVバルブは、
    前記連通路に設けられ、所定の閉鎖位置を基準として移動することにより前記連通路を開放する弁体と、
    当該弁体を前記閉鎖位置側に付勢する弾性部材と、
    を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関のPCV装置。
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