JP4041951B2 - 継手構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は軸と軸とを同軸上で連結する継手構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば長いシャフトを持つ製品においては、そのシャフトの長さの相違による製品タイプの数が増えることを避けるために、シャフト部分のみを継手により選択的に長くできる構造とし、その他の複雑な機構部分等を一種類にする手法が採用されることが多い。
【0003】
このような用途における継手構造、つまり軸と軸とを同軸上で連結する継手構造としては、従来、図5〜図10に示すような構造が知られている。
【0004】
図5および図6に示す継手構造はいわゆるスプライン継手であって、図5に示す構造では、2本のスプラインシャフト41aと41bを共通のスプラインスリーブ42の両側から挿入して相互に連結するとともに、各スプラインシャフト41a,41bとスプラインスリーブ42とをそれぞれスプリングピン43a,43bによって軸方向への移動が生じないようにしている。また、図6に示す構造では、スプラインシャフト51a,51bの先端部に段部Cを設け、段部よりも先端側のみの外周面にスプラインを形成してスプラインスリーブ52内に挿入して連結するとともに、スプラインシャフト51a,51bの外周面およびスプラインスリーブ52の内周面にそれぞれ環状溝511a,511bおよび521a,521bを形成してスナップリング53a,53bを嵌め込み、このスナップリング53a,53bと各シャフト51a,51bの段部により軸方向への移動を阻止するように構成している。
【0005】
一方、スプライン継手以外の継手として、図7に示すように各シャフト61a,61bの先端にフランジ62a,62bを形成し、そのフランジ62a,62bを突き合わせた状態でボルトBで締結するフランジ継手や、図8に示すように、各シャフト71a,71bの先端部を矩形断面に加工し、これらを角パイプ72に挿入することによって回転を伝達する構造のもの、更には図9に示すように、シャフト81a,81bをチューブ82の両端部に溶接した、いわゆるプロペラチューブ溶接構造、更にまた図10(A)に軸平行断面図を、同図(B)にそのB−B断面図を示すように、各シャフト91a,91bとスリーブ92にそれぞれキー溝を形成してキー93を挿入した構造のものなどが使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上の従来の各継手構造では、以下に示すようにいずれも問題がある。
すなわち、従来のスプライン継手によれば、図5に示すものではスプリングピン43a,43bを挿入するための孔に、また、図6に示すものでは段部Cに、それぞれ応力集中が生じるため、いずれも連結部分を強化すべくシャフト径を太くする必要があって、質量増大により危険回転速度(曲げ共振点)が低下し、高速回転させることが困難となる。
【0007】
また、図7に示すフランジ継手においても、フランジ部分がスプライン継手の場合に比して大径となり、危険回転速度が低下するという問題がある。
更に、図8に示す各チューブを使用した構造では、高速回転で使用するとアンバランスによる振れの発生が懸念されるとともに、スプライン継手に比して強度的に回転径を大きくする必要が生じ、図9に示すプロペラチューブ溶接構造では、溶接強度を考えた場合、チューブ径を大きくしなければならず、また、図10に示すキーを用いた構造では、伝達力の面でスプライン継手に比して不利になるなど、スプライン継手以外の継手構造を採用した場合においても、危険回転速度が低下して高速回転させることが困難とななる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、比較的簡単な構成のもとに、シャフト径を太くすることなく、従って質量増大を伴うことなく所要の伝達力を得ることができ、もって従来の各継手構造に比してより高速で回転させることのできる継手構造の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の継手構造は、軸と軸とを同軸上で連結する継手構造であって、各軸をそれぞれ継手部近傍で段部を有さないスプラインシャフトとし、これらを共通のスプラインスリーブの両端側から挿入するとともに、上記各スプラインシャフトの外周面に、それぞれスナップリングを嵌め込むための環状溝を形成し、上記スプラインスリーブの内周面に、上記各スナップリングが嵌まり込む共通の環状溝を形成し、そのスプラインスリーブの環状溝の両側壁を、軸心側ほど開く向きのテーパ面として形成して、各スプラインシャフトが、各スナップリングの拡径途中で上記各テーパ面に対して当接するように構成したことによって特徴づけられる(請求項1)。
【0010】
ここで、本発明の継手構造においては、上記スプラインスリーブの内周面の両端に、上記テーパ面よりも傾斜の緩い斜面からなる面取りを施した構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0011】
本発明は、基本的には伝達力に優れたスプライン継手を採用し、そのスプライン継手における各スプラインシャフトとスプラインスリーブとの軸方向への移動を阻止するための機構を、従来のようにスプラインシャフトにスプリングピン用の孔や段部を設ける必要のない機構とすることによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0012】
本発明においては、互いに連結すべき軸をそれぞれ継手部近傍で段差を有さないスプラインシャフトとして、スプラインスリーブによって相互に係合させるスプライン継手を採用し、その軸方向への移動を阻止するための機構として、以下に示すように、スナップリングの拡径方向への弾性力を利用して各スプラインシャフトを互いに接近する向きに押圧する機構を採用する。
【0013】
すなわち、各スプラインシャフトの外周面にスナップリングを嵌め込むための環状溝を形成する一方、スプラインスリーブの内周面には各スプラインシャフトの環状溝に嵌め込まれたスナップリングが嵌まり込む共通の環状溝を形成する。そして、そのスプラインシャフトの環状溝の両側壁を、軸心に向けて開いたテーパ面として、各スプラインシャフトの先端がスプラインスリーブ内で当接した状態において、各スナップリングが拡径途中で各テーパ面に対して当接するように構成することで、スナップリングの拡径時の弾性力を各スプラインシャフトを相互に接近させる向きに作用させる。
【0014】
この構成により、各スプラインシャフトには組立状態において互いの先端が当接し、かつ、先端どうしが押し合う向きに弾性的に押圧された状態となり、各スプラインシャフトがスプラインスリーブに対して軸方向に移動することを確実に阻止することができる。しかも、各スプラインシャフトに貫通孔や段差を設ける必要がないために応力集中が生じず、また、スプラインシャフトに形成されたスナップリング用の環状溝の位置は伝達トルクが負荷される部位ではなく、更にはスプラインスリーブにも応力集中が発生する箇所がないため、シャフト径やスリーブ径を太くすることなく所要の伝達力を得ることができる。その結果、継手構造に起因する質量増大を可及的に少なくすることができ、危険回転数を低下させることがないために高速回転が可能となる。
【0015】
また、請求項2に係る発明のように、スプラインスリーブの内周面両端に、スナップリングが当接するテーパ面よりも傾斜の緩い斜面からなる面取りを施しておくことにより、スプラインシャフトをその環状溝にスナップリングを嵌め込んだ状態でスプラインスリーブに挿入する際、スナップリングが面取りに当接してスプラインシャフトの挿入に伴って自動的に縮径されるため、特殊な治具などを用いることなくスナップリング付きのスプラインシャフトをスプラインスリー部内に挿入することが可能となる。また、面取りの傾斜をテーパ面の傾斜よりも緩くしているが故に、一方のスプラインシャフトを挿入した後に他方のスプラインシャフトを挿入するに当たって、スナップリングが面取りに当接して縮径する際の反力でスプラインスリーブを軸方向に移動させる力が、先に挿入したスプラインシャフトに嵌め込まれているスナップリングがテーパ面を越えて縮径してしまうに必要な力よりも大きくなることがないため、後のスプラインシャフトを挿入する際に特にスプラインスリーブを支持することなく、簡単に挿入・組み込みが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の軸平行断面図であり、図2はそのA部拡大図である。
【0017】
外周面にそれぞれインボリュートスプラインSが形成されてなる2本のスプラインシャフト1a,1bは、それぞれ段差を持たない一様な径を有している。このうち、一方のスプラインシャフト1aは、基本シャフトであり、他方のスプラインシャフト1bは延長用のシャフトである。すなわち、シャフトの長さが相違する複数種類のタイプからなる製品シリーズにおいて、基本シャフトのみを用いることによって最短のシャフトを持つタイプの製品が構築され、図示のように延長用のシャフトを継ぐことによってこれとは別のより長いシャフトを持つタイプの製品が構築される。
【0018】
さて、以上の2本のスプラインシャフト1a,1bは、内周面に上記のインボリュートスプラインSとモジュール等の諸元を同一とした内歯のインボリュートスプラインsが形成されてなるスプラインスリーブ2に挿入されてスプライン結合され、各スプラインシャフト1a,1bの先端どうしが当接した状態で3つの部材1a,1bおよび2が相互に一体化されている。
【0019】
各スプラインシャフト1a,1bの外周面には、スナップリング3a,3bを嵌め込むための環状溝11a,11bが形成されているとともに、スプラインスリーブ2の内周面には、同じくスナップリング3a,3bが嵌まり込む環状溝21が形成されている。
【0020】
スプラインスリーブ2の環状溝21の両側壁は、軸心側ほど開く向きに傾斜したテーパ面211a,211bとなっており、これらの各テーパ面211a,211b間の距離は、各スプラインシャフト1a,1bに形成されている環状溝11a,11bとの関連において、以下のように設定されている。
【0021】
すなわち、各スプラインシャフト1a,1bをそれぞれの環状溝11a,11bにスナップリング3a,3bを嵌め込んだ状態でスプラインスリーブ2に挿入し、先端どうしが当接した状態において、各スナップリング3a,3bが拡径途中でテーパ面211a,211bに当接するように、各テーパ面211a,211b間の距離、および各スプラインシャフト1a,1bの先端から各環状溝11a,11b間の距離が設定されている。
【0022】
また、スプラインスリーブ2の内周面の両端部には、それぞれ外側に向けて開いた斜面からなる面取り22a,22bが形成されており、この各面取り22a,22bの角度αは、テーパ面211a,211bの角度βよりも小さい。
【0023】
以上の本発明の実施の形態によると、各スプラインシャフト1a,1bは、スプラインスリーブ2内に挿入されてその先端どうしが当接した状態で、各スナップリング3a,3bが拡径途中において各テーパ面211a,211bに当接しているので、図3に示すように、各スナップリング3a,3bが拡径途中でテーパ面211a,211bに当接した状態となることにより、各スナップリング3a,3bの拡径方向への弾性力Fexは、スナップリング3a,3bをテーパ面211a,211bに押し付ける力Ftと、各スプラインシャフト1a,1bを互いに接近させる向きへの押圧力Fpに分解される。従って、各スプラインシャフト1a,1bは、組立状態において互いに先端を当接させた状態で常に互いに接近する向きに押圧され、スプラインスリーブ2に対する各スプラインシャフト1a,1bの軸方向への移動は確実に阻止される。
【0024】
また、以上の本発明の実施の形態を組み立てるには、各スプラインシャフト1a,1bの環状溝11a,11bにそれぞれスナップリング3a,3bを嵌め込んだ状態で、スプラインスリーブ2に対して一方のシャフト、例えばスプラインシャフト1aを挿入する。このとき、スプラインスリーブ2の内周面の端部に形成されている面取り22aにスナップリング3aが当接することによって、スナップリング3aはスプラインシャフト1aの挿入に伴って自動的に縮径されつつスプラインスリーブ2内に挿入され、環状溝21に嵌まり込むことによって拡径する。
【0025】
次に、その状態で他方のスプラインシャフト1bを反対側から挿入する。このとき、スナップリング3bは上記と同様に面取り22bに当接することによって縮径してスプラインスリーブ2内に入り込んでいく。このとき、各テーパ面211a,211bの傾斜角βは面取り22a,22bの傾斜角αよりも大きいため、スナップリング3bが面取り22bにより縮径されるときにスプラインスリーブ2に作用する力によって、先に挿入したスプラインシャフト1aのスナップリング3aが環状溝21から離脱することがなく、従って後でスプラインシャフト1bを挿入する際に特にスプラインスリーブ2を支持する必要がなくなり、組立作業が容易となる。
【0026】
そして、以上の実施の形態において特に注目すべき点は、各スプラインシャフト1a,1bには段差や部分的な大径部分がない点であり、これによりストレートの丸棒からスプライン歯切りおよび環状溝の加工のみで製造することができ、低コストのもとに製造することができる。また、各スプラインシャフト1a,1bには段差や貫通孔がないため、シャフト径を太くすることなく必要なトルクの伝達が可能であり、危険回転数を低下させることがない。更に、スリーブ2の内周面についても、環状溝21の加工とスプラインのブローチ加工を1回ほど施すだけでよく、この点においても製造コストを低く抑えることができる。
【0027】
なお、以上の実施の形態では、2つのスナップリング3a,3bはともに一つの環状溝21に嵌まり込むようにした例を示したが、図4に示すように、スプラインスリーブ2の環状溝21を2つの環状溝21a,21bとして、それぞれの溝にスナップリング3a,3bがそれぞれ嵌まり込むようにしてもよい。この図4のようにすると、スプラインスリーブ2の肉厚が薄い範囲を少なくすることができ、スプラインスリーブ2の強度を上げることができるとともに、スプラインシャフト1a,1bの先端当接部分もスプラインスリーブ2で支持されるので、結合部分の剛性をより向上させることができる。
【0028】
また、以上の実施の形態においては、シャフト1a,1bおよびスリーブ2にインボリュートスプラインを形成した例を示したが、本発明は特にこれに限定されることなく、角スプラインであってもよいことは勿論である。
【0029】
また、図1〜図4において、スナップリング3a,3bの断面を円形としたが、矩形断面であってもよいことは言うまでもない。
【0030】
更に、スプラインスリーブ2とスプラインシャフト1a,1b間のバックラッシュを生じさせないためには、スプラインにねじれ角を設ければよい。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、軸と軸とを連結する継手構造として、伝達力に優れたスプライン継手を採用するとともに、各スプラインシャフトの外周面に形成した環状溝に嵌め込んだスナップリングを、スプラインスリーブの内周面に形成した環状溝に嵌め込むことによって各スプラインシャフトとスプラインスリーブとの軸方向への移動を阻止するように構成し、かつ、スプラインスリーブの環状溝の両側壁は軸心側ほど開くように傾斜したテーパ面として、スプラインスリーブ内に挿入した各スプラインシャフトの先端が当接した状態で、各テーパ面にスナップリングが拡径途中で当接するように構成しているので、組立状態において各スプラインシャフトは互いの先端が当接した状態で更にスナップリングの弾性力によって互いに接近する向きに押圧された状態となり、軸方向への移動を確実に阻止することができる。しかも、従来のスプライン継手構造のように、各スプラインシャフトにはスプリングピンを貫通させるための貫通孔や段差を形成する必要がないため継手による質量増大を可及的に少なくすることができ、危険回転数を低下させることなく、高速回転が可能であると同時に、加工が簡単で安価に製造することができる。
【0032】
また、請求項2に係る発明のように、スプラインスリーブの内周面両端部に、スナップリングを当接させるためのテーパ面よりも傾斜角の緩い面取り部を設けておくことにより、組立作業も容易化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の軸平行断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態の作用説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の要部断面図である。
【図5】従来のスプライン継手の構造例を示す軸平行断面図である。
【図6】従来のスプライン継手の他の構造例を示す軸平行断面図である。
【図7】従来のフランジ継手の例を示す軸平行断面図である。
【図8】従来の各チューブを用いた継手の例を示す斜視図である。
【図9】従来のプロペラチューブ溶接を用いた継手の例を示す軸平行断面図である。
【図10】従来のキーを用いた継手の例を示す軸平行断面図(A)およびそのB−B断面図(B)である。
【符号の説明】
1a,1b スプラインシャフト
11a,11b 環状溝
2 スプラインスリーブ
21 環状溝
211a,211b テーパ面
22a,22b 面取り
3a.3b スナップリング
Claims (2)
- 軸と軸とを同軸上で連結する継手構造であって、各軸をそれぞれ継手部近傍で段部を有さないスプラインシャフトとし、これらを共通のスプラインスリーブの両端側から挿入するとともに、上記各スプラインシャフトの外周面に、それぞれスナップリングを嵌め込むための環状溝を形成し、上記スプラインスリーブの内周面に、上記各スナップリングが嵌まり込む共通の環状溝を形成し、そのスプラインスリーブの環状溝の両側壁を、軸心側ほど開く向きのテーパ面として形成して、各スプラインシャフトを、各スナップリングの拡径途中で上記各テーパ面に対して当接させることにより、上記各スプラインシャフトを、互いの先端が当接し、かつ、これら先端どうしが互いに押し合う向きに押圧されるように構成したことを特徴とする継手構造。
- 上記スプラインスリーブの内周面の両端に、上記テーパ面よりも傾斜の緩い斜面からなる面取りを施していることを特徴とする請求項1に記載の継手構造。
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