JP4041711B2 - 支承固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、支承固定構造に関し、さらに詳しくは、支持部材と被支持部材との間に介在配置されて支持部材の荷重を支持する支承を、支持部材及び被支持部材の少なくとも一方に固定するための支承固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋脚等の下部構造物(支持部材)に対し、いわゆるゴム支承を使用して、橋桁等の上部構造物(被支持部材)を支持させる支持構造が従来から知られている。また、このゴム支承を下部構造物及び上部構造物に固定するための支承固定構造としても、種々のものが提案されている(特開平8−134840号等参照)。
【0003】
たとえば、図5に示す支承固定構造12では、橋桁16とゴム支承14との間に、橋桁16側から順にソールプレート18及び上沓20が配置されている。そして、橋桁16から突設されたアンカーバー22によってソールプレート18が橋桁16に固定される。また、ゴム支承14の上部には取付プレート(図示省略)が固定されており、上沓20は、せん断キー又はボルト24を介して、取付プレート(すなわちゴム支承14)に取りつけられる。
【0004】
したがって、図5に示す支承固定構造12では、ゴム支承14を橋桁16に取り付けるために、3枚のプレート(ソールプレート18、上沓20及び取付プレート)が必要であり、部品点数の増加と、これに伴うコストの上昇を招くことがあった。
【0005】
これに対し、図6に示す支承固定構造32では、アンカーボルト孔38とボルト取付孔(図示省略)とが形成されたアンカープレート36が、ゴム支承34と橋桁40との間に配置されている。橋桁40から突設されたアンカーボルト42がアンカーボルト孔38に、ゴム支承34から突設されたボルトがボルト取付孔にそれぞれ挿入されて、ゴム支承34が橋桁40に固定される。実質的に、図5に示す支承固定構造12の上沓20が省略されていることになるので、部品点数が少なくなる。
【0006】
しかし、この支承固定構造32では、ゴム支承34のみを交換(あるいは取り外し)するときに、アンカーボルト孔38(またはその近傍)等を破損しなけらばならず、ゴム支承34の交換が困難であった。
【0007】
これらに対し、図7に示す支承固定構造52では、ゴム支承54と橋桁56との間に挟まれたソールプレート58が、ゴム支承54から側方にはみ出すように形成されており、このはみ出し部分の上面にはアンカーボルト孔60が形成されている。また、ソールプレート58の下面には取付ボルト孔62が形成されている。橋桁56から突設されたアンカーボルト64がアンカーボルト孔60に挿入され、さらに上沓66の取付ボルト68が取付ボルト孔62にそれぞれ挿入されて、ゴム支承54が橋桁56に固定される。したがって、この支承固定構造52では、ゴム支承54の交換時に、アンカーボルト64等を破損する必要がない。
【0008】
ところで、一般に取付ボルト68は、ゴム支承54の外側において上沓66に均等な位置に設けられることが好ましい。これに対し、橋桁56内には、たとえばコンクリート補強用のワイヤー等の埋込部材が埋め込まれていることが多く、アンカーボルト64(又は図5に示すようなアンカーバー22)は、埋込部材を避けた位置に設けられる。すなわち、図7に示す支承固定構造52では、取付ボルト孔62の位置を、アンカーボルト孔60からずらした位置にする必要があるので、結果的に、取付ボルト68の位置も制限を受けてしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、支承の取り付けや交換を容易に且つ低コストで行うことができ、取り付けの自由度も高い支承固定構造を得ることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、支持部材と被支持部材との間に介在配置される支承を、支持部材及び被支持部材の少なくとも一方に固定するための支承固定構造であって、前記支承の側方に配置され、支承から突設された第1固定用部材が挿入される第1挿入孔と、被支持部材又は支持部材から突設された第2固定用部材が挿入される第2挿入孔と、が形成されると共に、前記支持部材又は前記被支持部材に埋設され前記第2挿入孔に前記第2固定用部材が挿入されたブロック、を有し、前記支持部材又は前記被支持部材に埋設された前記ブロックに対し、前記第1挿入孔に前記第1固定用部材が挿入されることで、前記支承が支持部材又は被支持部材に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1の支承固定構造では、ブロックが支持部材又は被支持部材に埋設されて第2挿入孔に第2固定用部材が挿入されている。そして、このように支持部材又は被支持部材に埋設されたブロックに対し、第1挿入孔に、支承から突設された第1固定用部材が挿入され、支承が支持部材又は被支持部材に固定される。これにより、支承が支持部材又は被支持部材に固定され、支持部材上の支承を介して、この支承上で被支持部材が支持される。
【0012】
ブロックは、支承の側方に配置されて支持部材又は被支持部材に埋設されている。これにより、ブロックの形状を所望の形状とするが可能となり、たとえば、ブロックの厚みを十分確保すること等により、第1挿入孔及び第2挿入孔の位置や形状、数などを、互いの影響を受けることなく、高い自由度で設定することができる。このため、第2固定用部材の位置に制限されることなく、第1固定用部材の位置を設定することが可能になる。
【0013】
しかも、支承の交換あるいは取り外しは、たとえば、第1挿入孔への第1固定用部材の挿入を解除すればよく、部材を破損させる必要はないので、交換や取り外しを容易に行うことができる。
【0014】
また、支承と被支持部材又は支持部材との間に、従来のような複数のプレートを配設する必要がないので、部品点数が少なくなり、低コストとなる。
【0015】
なお、ブロックの位置は、上記した条件を満たせば特に限定されないが、たとえば、前記ブロックが、前記支承を中心としてこの両側に一対以上配置される構成とすることができる。支承を対にすることで、被支持部材又は支持部材に対してバランス良く固定することができる。
【0016】
第1挿入孔及び第2挿入孔の位置も、上記した条件を満たせば特に限定されないが、請求項2に記載のように、第1挿入孔と前記第2挿入孔とが同軸であってもよいし、請求項3に記載のように、前記第1挿入孔が、前記第2挿入孔を前記第2固定用部材の挿入方向に延長した部分を回避する位置に形成されていてもよい。請求項2の構成では、第1挿入孔と第2挿入孔の合計での深さがブロックの厚みよりも短くされている。また、請求項3の構成では、第1挿入孔と第2挿入孔のぞれぞれの深さがブロックの厚みよりも短くされている。いずれの構成でも、第1固定用部材や第2固定用部材がブロックを貫通しなくなる。また、請求項3の構成では、第1挿入孔及び第2挿入孔を、互いに影響されることなく延長し、孔の高さを高く確保できる。
【0017】
支承としては、請求項4に記載のように、前記被支持部材の支持方向と交差する方向に弾性変形して被支持部材と支持部材との相対移動のエネルギーを吸収可能な弾性支承、とされていると、被支持部材と支持部材との相対移動のエネルギーを吸収でき、たとえば、被支持部材の落下を防止することができるので、好ましい。
【0018】
また、支持部材及び被支持部材も特に限定されないが、たとえば、請求項5に記載のように、前記支持部材が橋脚又は橋台とされ、前記被支持部材が橋桁とされている構成のものを挙げることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1及び図2には、本発明の第1実施形態の支承固定構造102が示されている。本実施形態では、支承固定構造102は、支持部材である橋脚106上のゴム支承104と、被支持部材である橋桁108とを固定するために使用されている。なお、図面において、橋軸方向(橋の長手方向)を矢印Xで、橋軸直交方向を矢印Yでそれぞれ示す。
【0020】
ゴム支承104は、一定サイズに形成され、厚み方向に所定の間隙をあけて積層された複数の金属板110と、これらの間隙に配置されたゴム層112を備えた、いわゆるゴム支承とされている。ゴム層112を構成するゴムは、さらに、金属板110の縁部を取り囲むように周囲に配置されて、ゴム壁114とされており、金属板110を側方から覆っている。
【0021】
そして、金属板110とゴム層112とが、このように交互に配置されて積層された状態で、積層方向の両端面(下面及び上面)に、それぞれ下部連結板116及び上部連結板118が固定されている。
【0022】
下部連結板116の下面及び上部連結板118の上面には、中央にキー穴122が形成されている。このキー穴122に、後述するように、下沓126及び上沓128から突設されたせん断キー120が配置されることで、橋脚106と橋桁108との横方向のずれをゴム支承104に作用させて、ゴム支承104をせん断変形させることができる。
【0023】
また、本実施形態では、金属板110を四角形の板状とし、上部連結板118及び下部連結板116もこれに合わせて四角形の板状としている。これにより、ゴム支承104は全体として、扁平な略四角柱状になっているが、ゴム支承104の形状はこれに限定されず、例えば円柱状であってもよいし、四角柱以外の多角柱状(例えば六角柱状)であってもよい。
【0024】
図1に示すように、橋脚106及び橋桁108には、ゴム支承104が固定される位置に、下沓126及び上沓128が配置されている。下沓126及び上沓128はいずれも、連結ボルト130によって、それぞれ下部連結板116及び上部連結板118に連結されている。
【0025】
上沓128は、ゴム支承104と橋桁108との間に配置されると共に、その下面の中央から、せん断キー120が突設されている。せん断キー120の下部は、上部連結板118のキー穴122に収容されている。
【0026】
また、図2に示すように、上沓128は、ゴム支承104よりも橋軸方向(矢印X方向)両側に張り出しており、張出部128Dが構成されている。
【0027】
張出部128Dに対応する位置には、2本のブロック132が平行に、橋桁108内に埋設されている。ブロック132の上面には、橋桁108から突設された複数(本実施形態では5つ)アンカーボルト134が挿入されるアンカーボルト孔136が形成されている。
【0028】
ブロック132の下面には、アンカーボルト孔136と同軸で、取付ボルト孔138が形成されている、さらに、上沓128の張出部128Dには、取付ボルト孔138と対応する位置に、挿通孔142が形成されている。取付ボルト140が挿通孔142に挿通され、さらに取付ボルト孔138に螺合される。
【0029】
なお、アンカーボルト孔136と取付ボルト孔138との合計での深さは、ブロック132の厚みよりも短くされている。したがって、アンカーボルト孔136と取付ボルト孔138とによってブロック132を貫通してしまうことはない。
【0030】
下沓126は、ゴム支承104と橋脚106との間に配置され、その上面に中央から、せん断キー120が突設されている。せん断キーの上部は、下部連結板116のキー穴122に収容されている。
【0031】
下沓126は、図1に示すように、ゴム支承104よりも橋軸直角方向(矢印Y方向)の両側に張り出しており、この張出部126Dに、アンカーボルト孔146が形成されている。橋脚106から突設されたアンカーボルト144がアンカーボルト孔146に挿通され、ナット148が螺合されて、下沓126が橋脚106に固定されている。
【0032】
このような構成とされた本実施形態の支承固定構造102では、橋脚106上に、下沓126を介してゴム支承104が固定されている。そして、このゴム支承104上に、上沓128及びブロック132を介して、橋桁108が固定されている。全体として、橋脚106上のゴム支承104を介して、このゴム支承104上で橋桁108が支持されている。この状態で、橋脚106と橋桁108との相対移動によるエネルギーを、ゴム支承104のゴム層112の弾性変形による吸収することができる。例えば、地震、強風、温度変化等によって橋桁108が伸縮したり、橋桁108上を車両が通過して橋桁108が振動したりすると、これらの伸縮や振動のエネルギーが、ゴム支承104のゴム層112のせん断変形によって吸収される。
【0033】
そして、本実施形態では、ゴム支承104の側方にブロック132を配置し、このブロック132に所定の厚みを確保することで、アンカーボルト孔136及び取付ボルト孔138を、それぞれが互いの影響を受けることなく、所望の位置、形状及び数に設定することが可能になっている。たとえば、橋桁108に埋め込まれたワイヤー等の補強部材によって、アンカーボルト134の位置が制限を受けている場合でも、この影響を受けることなく、取付ボルト孔138の位置をブロック132に設定できる。したがって、複数の取付ボルト140を均等に配置する等、高い自由度で取付ボルト140の位置を設定できる。
【0034】
ゴム支承104を交換あるいは取り外しするときは、橋桁108への取り付け状態を解除する必要があるが、この解除作業は、取付ボルト140を外すのみで行うことができる。従来のように、アンカーボルト等を破損する必要がないので、作業を容易に行うことができる。
【0035】
しかも、本実施形態では、ゴム支承104と橋桁108との固定に、従来のような多数のプレートが必要とされないので、部品点数が少なくなると共に、低コストとなる。
【0036】
なお、上記説明では、ブロック132を、ゴム支承104を中心としてその両側に配置するように構成しているが、ブロック132の位置は、これに限定されない。たとえば、アンカーボルト134の位置等に応じて、ブロック132を適切な位置に配置することができる。特に、上記したように、ゴム支承104を中心としてその両側にブロック132を対となるように配置すると、バランス良くゴム支承104と橋桁108とを固定できる。ブロック132は一対以上であってもよい。
【0037】
本発明に係る支持部材、被支持部材及び支承としても、それぞれ上記した橋脚106、橋桁108及びゴム支承104に限定されない。本発明を橋に適用した場合には、支持部材として橋脚の他に橋台等を挙げることができる。支承としては、上記したいわゆるゴム支承の他に、一般的な支承であってもよいが、少なくとも、内部に弾性体を含み、この弾性体の弾性変形によって支持部材と被支持部材との相対移動のエネルギーを吸収可能な弾性支承とすることが好ましい。。
【0038】
また、上記説明では、ゴム支承104と橋桁108とを固定する箇所において、ブロック132を用いて本発明の支承固定構造を採用するようにしたが、これに代えて、あるいはこれと併用して、ゴム支承104と橋脚106とを固定する箇所に、ブロック132を用いて本発明の支承固定構造を採用してもよい。
【0039】
さらに、ブロック132は、上記説明では、アンカーボルト孔136と取付ボルト孔138とが同軸とされているものを例に挙げたが、これらは、同軸とされていなくてもよい。
【0040】
図3及び図4には、このように、アンカーボルト孔136と取付ボルト孔138とが同軸とされていないブロック154を用いた、第2実施形態の支承固定構造152が示されている。
【0041】
すなわち、第2実施形態では、アンカーボルト孔136と取付ボルト孔138とが、ブロック154の長手方向に沿って、交互に上下に形成されており、アンカーボルト孔136をアンカーボルト134の挿入方向に延長した位置を、取付ボルト孔138が回避している(これ以外は、第1実施形態と同一の構成とされているので、説明を省略する)。
【0042】
したがって、第1実施形態のブロック132と比較して、アンカーボルト孔136及び取付ボルト孔138を、ブロック154を貫通してしまうことなく深くできる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、支承の取り付けや交換を容易に且つ低コストで行うことができ、取り付けの自由度も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の支承固定構造を示す一宇破断側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の支承固定構造を示す一宇破断正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態の支承固定構造を示す一宇破断側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の支承固定構造を示す一宇破断正面図である。
【図5】従来の支承固定構造を示し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図6】従来の支承固定構造を示し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】従来の支承固定構造を示し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【符号の説明】
102 支承固定構造
104 ゴム支承(弾性支承、支承)
106 橋脚(支持部材)
108 橋桁(被支持部材)
116 下側連結板
118 上側連結板
126 下沓
128 上沓
132 ブロック
134 アンカーボルト(第2固定用部材)
136 アンカーボルト孔(第2挿入孔)
138 取付ボルト孔(第1挿入孔)
140 取付ボルト(第2固定用部材)
Claims (5)
- 支持部材と被支持部材との間に介在配置される支承を、支持部材及び被支持部材の少なくとも一方に固定するための支承固定構造であって、
前記支承の側方に配置され、支承から突設された第1固定用部材が挿入される第1挿入孔と、被支持部材又は支持部材から突設された第2固定用部材が挿入される第2挿入孔と、が形成されると共に、前記支持部材又は前記被支持部材に埋設され前記第2挿入孔に前記第2固定用部材が挿入されたブロック、
を有し、
前記支持部材又は前記被支持部材に埋設された前記ブロックに対し、前記第1挿入孔に前記第1固定用部材が挿入されることで、前記支承が支持部材又は被支持部材に固定されていることを特徴とする支承固定構造。 - 前記第1挿入孔と前記第2挿入孔とが同軸で、かつ合計での深さが前記ブロックの厚みよりも短くされていることを特徴とする請求項1に記載に支承固定構造。
- 前記第1挿入孔が、前記第2挿入孔を前記第2固定用部材の挿入方向に延長した部分を回避する位置に形成され、第1挿入孔と第2挿入孔のぞれぞれの深さが前記ブロックの厚みよりも短くされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の支承固定構造。
- 前記支承が、前記被支持部材の支持方向と交差する方向に弾性変形して被支持部材と支持部材との相対移動のエネルギーを吸収可能な弾性支承、
とされていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の支承固定構造。 - 前記支持部材が橋脚又は橋台とされ、前記被支持部材が橋桁とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の支承固定構造。
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