JP3907021B2 - 橋梁における伸縮装置の支持具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、橋梁における伸縮装置の支持具に関し、さらに詳細には、免震支承を用いた橋梁において、大地震の際に桁の変位を許すべく大きな遊間を確保しつつも、コンパクトな伸縮装置の使用を可能とした支持具に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋梁においては、温度変化や部材変形に伴う桁の伸縮を吸収するために、橋桁等の構造物間には遊間が形成されている。そして、この遊間を介して対向する桁上部間は伸縮装置で連結されている。
【0003】
平成7年1月に発生した兵庫県南部地震は、各種の構造物に多くの被害をもたらし、橋梁においても、橋脚の倒壊、橋桁の落下等、多数の被害が発生した。このため、近年では、橋梁において耐震、免震設計が採用され、橋桁には免震支承が使用される方向にある。
【0004】
ところで、新たに改訂された「道路橋示方書・同解説(V耐震設計編)」(社団法人 日本道路協会編 平成8年12月発行)によれば、耐震設計は、原則として震度法及び地震時保有水平耐力法(以下、保耐法という)によって行うものとされている。ここで、震度法とは、構造物の弾性域の振動特性を考慮して地震による荷重を静的に作用させて設計する耐震設計法のことである。また、保耐法とは、構造物の非線形域の変形性能や動的耐力を考慮して地震による荷重を静的に作用させて設計する耐震設計法のことであり、震度法よりも大きいレベルの地震を想定している。
【0005】
そして、同示方書によれば、免震支承の場合、橋桁間の遊間は、保耐法に用いる免震支承の設計変位に基づいて算出することとされた。これは、桁端に十分な遊間がないと橋桁どうし、あるいは橋桁と橋台が衝突して桁の変位が拘束され、免震支承がその機能を十分に発揮しなくなるためである。その一方、伸縮装置については、その伸縮量は震度法に用いる免震支承の設計変位に基づいて算出することとされた。これは、保耐法で想定するような規模の大きい地震が発生した場合には、伸縮装置が損傷しても、それによって落橋などの橋の致命的な被害に結びつくことはないという考え方によるものである。
【0006】
しかしながら、いずれにしても、遊間そのものは保耐法レベルの地震を想定して決定されることから大きくとらなければならず、これに伴って伸縮装置も大きなものとなる。伸縮量を仮に保耐法レベルの変位をも満足するように設計するとすれば、伸縮装置は極めて大きくなり、コストが高くついて、不経済である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
【0008】
この発明の目的は、保耐法にしたがう大きな遊間を確保し、かつ少なくとも震度法レベルの変位に対する伸縮量を満足するという条件の下で、伸縮装置がコンパクトなもので足りる橋梁における伸縮装置の支持具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
【0010】
すなわちこの発明は、橋軸方向に第1の遊間を介して対向する2つの構造物の端部間を、それらの上端で連結する伸縮装置の支持具であって、
一部が前記第1の遊間に突出するように前記構造物の上端に固定され、前記伸縮装置の片側部分が載置される水平プレートと、
前記水平プレートから垂下して設けられ、前記構造物の対向端面に固定される鉛直プレートと、
上端が前記水平プレートの前記突出部下面に当接した状態で、前記鉛直プレートに一体に設けられることにより、前記構造物の対向端面から前記第1の遊間に突出して該第1の遊間よりも狭い第2の遊間を形成し、かつ前記伸縮装置に作用する鉛直荷重を支持すべく鉛直剛性は大きいが水平剛性は小さい支持部材を備えてなることを特徴とする橋梁における伸縮装置の支持具にある。
【0011】
ここで、第1の遊間は前述した保耐法に基づいて設定され、第2の遊間は震度法に基づく伸縮装置の伸縮量に対応して設定されたとすると、常時すなわち温度変化や、乾燥収縮、クリープなどにより構造物が伸縮して変位する場合は、伸縮装置はそれに追随して伸縮し、健全に機能する。構造物が震度法レベルの変位をした場合も、伸縮装置はそれに追随して伸縮し、健全に機能する。
【0012】
そして、構造物に保耐法レベルの変位が生じると、第2の遊間が消失し、支持部材はそれどうし、あるいは対向する構造物との衝突により破壊する。また、伸縮装置も伸縮限界を超えて、破損あるいは破壊する。しかしながら、保耐法にしたがう第1の遊間は確保されているので、構造物どうしの衝突は避けられ、免震支承が健全に機能する。
【0013】
以上のように、この発明によれば、保耐法にしたがう大きな第1の遊間を確保しつつも、常時及び震度法レベルの変位においては伸縮装置は健全に機能し、したがって伸縮装置を従来と同程度のコンパクトなものとすることができる。
【0015】
前記支持部材は橋軸直角方向に間隔を置いて配置された複数の中空部材からなり、これらの支持部材は例えば一方の構造物側の前記支持部材と、他方の構造物側の前記支持部材とが互いに対向するように、あるいは千鳥状に配置されている。前記支持部材は水平剛性を小さくすべく、水平断面が例えば平行四辺形となっている。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1はこの発明の実施の形態を示し、橋軸方向Xに沿った縦断面図である。この実施の形態では、構造物としてコンクリート桁1、1が示され、桁1、1間には第1の遊間D1 が形成されている。コンクリート桁1、1は図示しない免震支承を介して橋脚上に設置され、したがって、第1の遊間D1 は保耐法に用いる免震支承の設計変位から算出される値である。
【0017】
伸縮装置の一例としてゴムジョイント2が示され、このゴムジョイント2の構造は、従来と同様である。すなわち、ゴムジョイント2は、ゴム体3の内部に補強部材として鋼板4、鋼ブロック5を埋め込んでなり、表面及び裏面には複数の切欠き6が形成されている。
【0018】
支持具7は鋼製の水平プレート8と、この水平プレート8から垂下して設けられた鋼製の鉛直プレート9とを備えている。水平プレート8は、その一部8aが第1の遊隙D1 に突出するように、コンクリート桁1の端部上端にアンカーボルト10により固定される。その際、ゴムジョイント2の片側が水平プレート8上に載置され、アンカーボルト10を介して水平プレート8に固定される。ゴムジョイント2は両端部が固定されているだけで、伸縮により水平プレート8に対し滑動自在である。コンクリート桁1、1にそれぞれ設けられた水平プレート8、8の各突出部8a、8aの先端には、互いに逆向きのテーパ8b、8cがそれぞれ形成されている。
【0019】
鉛直プレート9はコンクリート桁1の対向端面にアンカー11により固定される。この鉛直プレート9は水平プレート8とあらかじめ、一体に溶接により固着してもよいし、現場で個別にコンクリート桁1に固定するようにしてもよい。鉛直プレート9には、橋軸直角方向に間隔をおいて複数の鋼製の支持部材12が固定されている。この支持部材12は上端が水平プレート8の突出部8a下面に当接していればよいが、突出部8aに溶接により固着してもよい。
【0020】
支持部材12は第1の遊間D1 に突出し、これにより第1の遊間D1 よりも狭い第2の遊間D2 が形成されている。この第2の遊間D2 は震度法を用いる免震支承の設計変位から算出されるゴムジョイント2の伸縮量に対応している。支持部材12はゴムジョイント2上を走行する車両等の鉛直荷重を突出部8aを介して負担するため、鉛直剛性は大きく、その一方、水平剛性は小さくなっている。水平剛性を小さくすべく、支持部材12は中空の部材からなり、その水平断面形状及び配列の例が図2、図3、図4に示されている。
【0021】
図2は支持部材12の水平断面を平行四辺形とし、(a)は両桁1、1の支持部材12を互いに対向するように配列したもの、(b)は千鳥状に配列したものである。図3は支持部材12の水平断面を円形形とし、(a)はそれらを互いに対向するように配列したもの、(b)は千鳥状に配列したものである。図4は支持部材12の水平断面を楕円形とし、(a)それらを互いに対向するように配列したもの、(b)は千鳥状に配列したものである。
【0022】
次に上記実施の形態によるものの作用について説明する。常時すなわち温度変化や、乾燥収縮、クリープなどによりコンクリート桁1が伸縮して変位する場合は、ゴムジョイント2はそれに追随して伸縮し、健全に機能する。地震が発生し、コンクリート桁1が震度法レベルの変位をした場合も、ゴムジョイント2はそれに追随して伸縮し、健全に機能する。
【0023】
ここで、大地震によりコンクリート桁1、1に保耐法レベルの変位が生じると、遊間D2 が消失し、支持部材12は水平耐力が小さいことから支持部材12どうし、あるいはコンクリート桁1との衝突により破壊する。その際、一方の水平プレート8aのテーパ8bが他方の水平プレート8aのテーパ8c下に潜り込み、支持部材12の破壊は容易になされる。また、ゴムジョイント2も伸縮限界を超えて、破損あるいは破壊する。しかしながら、その一方、保耐法にしたがう遊間D1 は確保されているので、コンクリート桁1、1どうしの衝突は避けられ、免震支承が健全に機能する。なお、支持部材12の潰れ代を確保するために、鉛直プレート9の取付面は後退させてある。
【0024】
以上の説明から明らかなように、この発明による支持具7を用いることにより、保耐法にしたがう大きな遊間D1 を確保しつつも、常時及び震度法レベルの変位においてはゴムジョイント2すなわち伸縮装置は健全に機能し、したがって伸縮装置を従来と同程度のコンパクトなものとすることができる。
【0025】
図5は別の実施の形態を示す半断面図である。この実施の形態は、構造物が鋼桁21と床版22とからなる場合に、この発明による支持具7を適用した例であり、水平プレート8は床版22に設けられる。鉛直プレート9の下部には取付プレート23が設けられ、この取付プレート23はボルト・ナット24を介して鋼桁21のフランジ21aに固定されている。その他、主要部分については、前記実施の形態と同一符号を付してある。この実施の形態によるものも、前記と同様の作用をする。
【0026】
上記各実施の形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採りうる。伸縮装置はコンクリート桁間、あるいは床版間に配置されるのみならず、コンクリート桁あるいは床版と橋台との間にも配置され、この場合もこの発明を適用できる。また、伸縮装置としてゴムジョイントを示したが、これに限ることはない。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、保耐法にしたがう大きな遊間を確保し、かつ少なくとも震度法レベルの変位に対する伸縮量を満足するという条件の下で、伸縮装置をコンパクトなものとすることができる。したがって、コストを抑えることができ、経済的に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の実施の形態を示す橋軸方向に沿った縦断面図である。
【図2】図2は支持部材の水平断面形状及び配列の例を示す図である。
【図3】図3は支持部材の水平断面形状及び配列の他の例を示す図である。
【図4】図4は支持部材の水平断面形状及び配列の他の例を示す図である。
【図5】図5は別の実施の形態を示す半断面図である。
【符号の説明】
1…コンクリート桁
2…ゴムジョイント
7…支持具
8…水平プレート
8a…突出部
8b,8c…テーパ
12…支持部材
1 …第1の遊間
2 …第2の遊間

Claims (5)

  1. 橋軸方向に第1の遊間を介して対向する2つの構造物の端部間を、それらの上端で連結する伸縮装置の支持具であって、
    一部が前記第1の遊間に突出するように前記構造物の上端に固定され、前記伸縮装置の片側部分が載置される水平プレートと、
    前記水平プレートから垂下して設けられ、前記構造物の対向端面に固定される鉛直プレートと、
    上端が前記水平プレートの前記突出部下面に当接した状態で、前記鉛直プレートに一体に設けられることにより、前記構造物の対向端面から前記第1の遊間に突出して該第1の遊間よりも狭い第2の遊間を形成し、かつ前記伸縮装置に作用する鉛直荷重を支持すべく鉛直剛性は大きいが水平剛性は小さい支持部材を備えてなることを特徴とする橋梁における伸縮装置の支持具。
  2. 前記支持部材が橋軸直角方向に間隔を置いて配置された複数の中空部材からなることを特徴とする請求項1記載の橋梁における伸縮装置の支持具。
  3. 一方の構造物側の前記支持部材と、他方の構造物側の前記支持部材とが互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の橋梁における伸縮装置の支持具。
  4. 一方の構造物側の前記支持部材と、他方の構造物側の前記支持部材とが千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項2記載の橋梁における伸縮装置の支持具。
  5. 前記支持部材の水平断面が平行四辺形であることを特徴とする請求項3又は4記載の橋梁における伸縮装置の支持具。
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